超電導機器
【課題】表裏面に超電導層が形成された超電導線材において、2つの超電導層のそれぞれに十分な電流を流すことが可能な超電導機器を提供する。
【解決手段】超電導機器は、超電導線材3と、当該超電導線材3と電気的に接続される部材としての端子部材2と、第1接続部材7および第2接続部材(接続部8に配置された導電性の接着部材)とを備える。超電導線材3は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層5および第2超電導層6を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材3の第1超電導層5を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材3の第2超電導層6とを接続する。
【解決手段】超電導機器は、超電導線材3と、当該超電導線材3と電気的に接続される部材としての端子部材2と、第1接続部材7および第2接続部材(接続部8に配置された導電性の接着部材)とを備える。超電導線材3は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層5および第2超電導層6を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材3の第1超電導層5を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材3の第2超電導層6とを接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導機器に関し、より特定的には、表裏面に超電導層が形成された超電導線材を含む超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ状のベース基板の表裏面に超電導層が形成された超電導線材が知られている(たとえば、特開2005−56591号公報(特許文献1)参照)。このような超電導線材では、従来から知られているベース基板の片面のみに超電導層が形成された超電導線材よりも、線材の断面における電流密度を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−56591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような超電導線材を用いた超電導機器においては、超電導線材を外部と電気的に接続するための接続端子を当該超電導線材に接続したり、複数の超電導線材を互いに接続したりする場合がある。しかし、上記特許文献1においては、そのような接続構造について特に開示はなされていない。また、ベース基板の片面のみに超電導層が形成された超電導線材における接続端子や線材同士の接続構造では、ベース基板の片面に形成された超電導層と接続端子、あるいは2本の超電導線材の超電導層同士を接続するが、そのような片面に形成された超電導層を前提とした接続構造を上記のような表裏面に超電導層が形成された超電導線材に適用しても、超電導線材における2つの超電導層のうちの一方だけを接続端子などと接続することになるので、2つの超電導層の両方に十分な電流を流すことは難しかった。
【0005】
上記のような表裏面に超電導層を有する超電導線材の全面を、導電性の保護膜で覆うことにより、表面側の超電導層と裏面側の超電導層とを導通させることも考えられるが、この場合には保護膜の厚さや電気抵抗値などにより損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、表裏面に超電導層が形成された超電導線材において、2つの超電導層のそれぞれに十分な電流を流すことが可能な超電導機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った超電導機器は、超電導線材と、当該超電導線材と電気的に接続される部材と、第1接続部材および第2接続部材とを備える。超電導線材は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層および第2超電導層を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材の第1超電導層を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材の第2超電導層とを接続する。
【0008】
このようにすれば、超電導線材の2つの第1および第2超電導層と部材とを電気的に接続することができるので、当該部材を介して超電導線材の第1および第2超電導層の両方に十分な電流を流すことができる。したがって、両面に第1および第2超電導層が形成された超電導線材における電流密度を十分大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部材を介して超電導線材の第1および第2超電導層の両方に十分な電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による超電導機器の実施の形態1を構成する超電導線材の端子部を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した端子部の変形例を示す断面模式図である。
【図3】本発明による超電導機器の実施の形態2を構成する超電導線材の接続部構造部を説明するための上面模式図である。
【図4】本発明による超電導機器の実施の形態3を構成する超電導線材の接続構造部を説明するための上面模式図である。
【図5】図4に示した接続構造部の側面模式図である。
【図6】本発明による超電導機器の実施の形態4を構成する超電導線材の接続構造部を示す斜視模式図である。
【図7】図6に示した接続構造部を超電導線材の延在方向側から見た模式図である。
【図8】本発明による超電導機器の実施の形態5を示す断面模式図である。
【図9】図8に示した超電導機器に用いられるコイルの一部を示す斜視模式図である。
【図10】本発明による超電導機器の実施の形態6を示す断面模式図である。
【図11】図10に示した超電導機器のロータを示す斜視模式図である。
【図12】図10に示した超電導機器のステータを示す斜視模式図である。
【図13】図10に示した超電導機器に用いられるコイルの側面模式図である。
【図14】図13に示した超電導機器の接続部を示す拡大斜視模式図である。
【図15】図14に示した接続部の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による超電導機器を構成する超電導線材の端子部の構造を説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明による超電導機器の端子部1は、導電体からなる部材としての端子部材2と、当該端子部材2に接続される超電導線材3と、超電導線材3と端子部材2と接続する接続部材7とを備える。超電導線材3は、厚み方向の中央に位置するベース基板4と、ベース基板4の一方の主表面上に形成された第1超電導層5と、ベース基板4の他方の主表面上に形成された第2超電導層6とを備える。なお、ベース基板4と第1および第2超電導層5、6との間に中間層を形成してもよい。超電導線材3の第2超電導層6と端子部材2とは接続部8においてたとえば導電性の接着部材により接続されている。接続部材である導電性の接着部材としては、たとえばはんだを用いることができる。また、超電導線材3の第1超電導層5の表面と接続部材7とは接続部9において電気的に接続されている。接続部9にはたとえば導電性の接着部材が配置されていてもよい。
【0014】
接続部材7は、超電導線材3の端部において第1超電導層5の端部上に位置する領域から端子部材2の表面にまで屈曲した状態で延在している。また、接続部材7は、好ましくは超電導線材3の端面に沿って屈曲していてもよい。接続部材7において、超電導線材3と接続された一方端部と反対側の他方端部は、端子部材2の表面と接続されている。当該他方端部における接続部材7と端子部材2との接続部には、たとえば導電性の接着部材を配置してもよい。
【0015】
このような構造により、超電導線材3の第1超電導層5および第2超電導層6の両方を端子部1の端子部材2と電気的に接続することができる。
【0016】
図2を参照して、図1に示した超電導機器の端子部の変形例を説明する。
図2に示した端子部1は、基本的には図1に示した端子部1と同様の構造を備えるが、端子部材2に凹部11が形成され、当該凹部11の内部に超電導線材3が接続されている点が異なっている。具体的には、端子部材2の一方端部に凹部11が形成されている。そして、この凹部11に超電導線材3の端部がはめ込まれた状態で固定されている。超電導線材3の第2超電導層6と端子部材2とは、凹部11の内部に位置する接続部8において電気的に接続されている。接続部8には上述したように導電性の接着部材を配置してもよい。
【0017】
また、超電導線材3の第1超電導層5と端子部材2とは接続部材7により電気的に接続されている。接続部材7と第1超電導層5との接続部9には導電性の接着部材を配置してもよい。また、接続部材7と端子部材2との接続部(接続部材7と端子部材2の外周表面との接合部)にも、導電性の接着部材を配置してもよい。このような構造により、図1に示した端子部1よりも当該端子部1の高さ(図2における上下方向での端子部1の高さ、あるいは超電導線材3の厚み方向に沿った端子部1の高さ)を小さくすることができる。
【0018】
なお、凹部11の深さ(図2における上下方向における凹部11の深さ)を調節することにより、超電導線材3の第1超電導層5の上部表面と端子部材2の表面との高さがほぼ同じになるようにすることが好ましい。この場合、接続部材7を単純な板状の形状とすることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図3を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態2を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0020】
図3に示すように、2つの超電導線材3、13の接続部である接続構造部10は、超電導線材3、13の端面を付き合わせた状態で、当該超電導線材3、13を2つの接続部材7で挟み込んだ構造となっている。具体的には、ベース基板4の表面側および裏面側にそれぞれ第1超電導層5、第2超電導層6が形成された超電導線材3の端面に、もう一方の超電導線材13を付き合わせた状態で配置する。超電導線材13は、超電導線材3と同様にベース基板14の表面側および裏面側に第1超電導層15および第2超電導層16が形成された構成となっている。そして、互いに対向する第1超電導層5、15の表面上に延在するように一方の接続部材7が配置される。接続部材7と第1超電導層5、15との接続部9には、たとえば導電性の接続部材(はんだなど)が配置されていてもよい。つまり、接続部材7と第1超電導層5、15とは当該接続部材によって電気的に接続されていてもよい。また、第2超電導層6、16の上部表面上に延在するように他方の接続部材7が配置されている。接続部材7と第2超電導層6、16との接続部8にも、接続部9と同様に導電性の接続部材が配置されていてもよい。
【0021】
このようにすれば、2本の超電導線材3、13の表面および裏面のそれぞれにおいて、第1超電導層5、15同士、および第2超電導層6、16同士をそれぞれ確実に接続することができる。
【0022】
(実施の形態3)
図4および図5を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態3を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0023】
図4および図5を参照して、超電導線材3、13の接続構造部10は、2本の超電導線材3、13の端部を2つの接続部材7、17で接続している。また、図4および図5に示した接続構造部10においては、超電導線材3の第1超電導層5と超電導線材13の第2超電導層16とが(つまり互いに超電導線材3、13において反対側に位置する超電導層同士が)接続部材7によって接続されている。また、超電導線材3の第2超電導層6と超電導線材13の第1超電導層15とが接続部材17によって接続されている。すなわち、図4および図5に示した接続構造部10においては、超電導線材3、13が転位接続されている。
【0024】
接続部材7は、図4および図5に示すようにその外形が帯状であって超電導線材3、13の延在方向に沿って延びるような形状になっている。ただし、図4に示すように、上方から見た場合、接続部材7はその形状がほぼS字状に屈曲している。
【0025】
一方、接続部材17は、2つの接続片18、19を接続部20において接続することにより構成されている。接続片18の一方端部は超電導線材13の第1超電導層15に接続されている。また、接続片19の一方端部は、超電導線材3の第2超電導層6に接続されている。図4から分かるように、超電導線材13の第1超電導層15と超電導線材3の第2超電導層6とは、互いに反対側に配置されている。また、接続片18、19は、上記一方端部から他方端部に向けて、図5に示すように超電導線材3、13の中心軸から離れるように斜めに延びている。そして、接続片18、19の他方端部において接続された部分である接続部20はもう一方の接続部材7の上方(超電導線材3、13の主表面に沿った方向)において、図4に示すように重なる位置に配置されている。
【0026】
このように接続部材7、17が交差するように配置されることで、超電導線材3、13を転位接続することができる。このような転位接続構造とすることにより、たとえばこれらの超電導線材3、13を用いてコイルを形成するような場合に、超電導線材3、13の第1および第2超電導層5、6、15、16のうち直接差接続された超電導層の組み毎にインダクタンスが異なるといった問題の発生を抑制できる。
【0027】
(実施の形態4)
図6および図7を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態4を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0028】
図6および図7に示すように、接続構造部10においては、超電導線材3、13の端部が2つの接続片21、22により電気的に接続されている。導電体からなる接続片21は、超電導線材3の第2超電導層6と超電導線材13の第2超電導層16とにそれぞれ接続されている。一方、導電体からなる接続片22は、超電導線材3の第1超電導層5と超電導線材13の第1超電導層15とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
そして、接続片21、22は、超電導線材3、13の端面側において互いに近づくように屈曲し、接続部20において電気的に接続されている。接続部20はたとえば導電性の接着部材によって接続されていてもよい。このようにすれば、超電導線材3、13を接続構造部10により接続することができるとともに、超電導線材3、13の表面側および裏面側の第1超電導層5、15と第2超電導層6、16のそれぞれを当該接続構造部10において電気的に接続することで同電位とすることができる。
【0030】
(実施の形態5)
図8および図9を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態5を説明する。
【0031】
図8に示すように、本発明による超電導機器の一例であるモータ100は超電導モータであって、円筒形状のハウジング31内に回転軸34を中心として回転可能なロータ33が配置されている。ハウジング31の内壁にはコア32が2組配置され、それぞれのコア32の周囲には本発明による超電導線材を用いたコイル30、40がそれぞれ巻回された状態で配置されている。1組のコイル30は互いに対向するように配置されている。また、もう一方の1組のコイル40も互いに対向するように配置されている。なお、ロータ33の内部にもコイルが配置されている。当該コイルは、本発明による超電導線材を用いたものであってもよいが、通常の導体を用いたコイルであってもよい。
【0032】
図9に示すように対向配置された1組のコイル30では、コイル30を構成する超電導線材3の端部が当該コイル30から引き出され、引き出された超電導線材3の端部が接続構造部10によって電気的に接続されている。当該接続構造部10としては、本発明の実施の形態2〜実施の形態4に示した接続構造部10のいずれかを適用することができる。
【0033】
特に、本発明の実施の形態3において示した接続構造部10を図9のコイル30における接続構造部10に適用した場合には、1組のコイル30における超電導線材3の第1超電導層と第2超電導層との間のインダクタンスの均一化を図ることができる。
【0034】
(実施の形態6)
図10〜図15を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態6を説明する。
【0035】
図10に示すように、本発明による超電導機器の一例であるモータ100は、超電導モータであって、回転子であるロータ500と、ロータ500の周囲に配置された固定子であるステータ600とを備える。図10および図11に示すように、ロータ500は、本発明による超電導線材の接続構造部を含む超電導コイルであるコイル100Sと、回転軸518と、ロータコア513と、ロータ軸516と、冷媒617とを含んでいる。コイル100Sは、いわゆるレーストラック型のコイルであるが、一方面120Pが凸状となり、この一方面120Pと対向する他方面120Fが凹状となるように構成されている。つまりコイル100Sは鞍型の形状を有する。ロータ軸516は、回転軸518の長軸方向に延びる外周面の周囲に形成されている。ロータ軸516の外表面は円弧状である。ロータコア513は、ロータ軸516の、回転軸518に交差する断面における中央部分(回転軸518が配置されている領域)から放射状に、ロータ軸516の外周面から突出するように延びている。コイル100Sは、ロータコア513を囲むように、かつロータ軸516の円弧状の外表面に沿うように配置されている。冷媒617は、コイル100Sを冷却する。コイル100Sと冷媒617とは、断熱容器の内部に配置されている。
【0036】
ロータ500の周囲には、モータ100の固定子としてのステータ600が形成されている。ステータ600は、本発明による超電導線材の接続構造部を含むコイル100Sと、ステータヨーク623と、冷媒627と、ステータコア621とを含んでいる。
【0037】
ステータヨーク623は、ロータコア513の外周を取囲んでいる。ステータヨーク623の外表面は円弧状である。超電導コイルであるコイル100Sは、ステータヨーク623の円弧状の外表面に沿うように配置されている。冷媒627は、コイル100Sを冷却する。なお図12においてはステータコア621は記載されていない。
【0038】
次に、図13〜図15を参照して、図10に示したモータに用いられるコイル100Sの構造を具体的に説明する。なお、図13〜図15においては、説明の便宜上コイルを平坦な外形を有するものとして記載している。
【0039】
図13〜図15に示すように、コイル100Sは、2つの超電導コイル100a、100bを電気的に接続することにより構成されている。一方の超電導コイルであるコイル100aは平面視においてたとえば半径方向に内周側から外周側に向けて超電導線材を巻くことによって構成されている。一方、他方のコイル100bは、上述したコイル100aとは逆方向に内周側から外周側に向けて超電導線材を巻くことによって構成されている。これらのコイル100a、100bを構成する超電導線材13、3は、本発明の実施の形態1〜4において示したようなベース基板14、4の表面および裏面のそれぞれに第1および第2超電導層15、5、16、6が形成されたものである。
【0040】
これらのコイル100a、100bを、その外周側に位置する超電導線材3、13の端部において接続部材7、17により転位接続する。具体的には、コイル100aを構成する超電導線材13の内周側に位置する第1超電導層15と、他方のコイル100bを構成する超電導線材3の外周側に位置する第2超電導層6とを接続部材17により接続する。一方、超電導線材13において接続部材17が接続された位置よりもより端部に近い位置において、超電導線材13の外周側に位置する第2超電導層16と、他方のコイル100bを構成する超電導線材3の内周側に位置する第1超電導層5とを接続部材7により電気的に接続する。超電導線材3、13における第1および第2超電導層5、6、15、16と接続部材7、17との接続部は、たとえば導電性の接着部材を介して電気的に接続することができる。そして、図14および図15に示すように、接続部材7、17は、超電導線材3、13の端面側(コイル100a、100bを平面視する側)から見たときに、互いに交差するようにS字状に湾曲した状態になっている。
【0041】
このようにすれば、一方のコイル100aと他方のコイル100bとで第1超電導層5、15と第2超電導層6、16とを互いに交差して接続する(転位接続する)ことができるので、コイル100S全体として見たときのインダクタンスを均一化することができる。
【0042】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0043】
この発明に従った超電導機器(モータ100)は、超電導線材3と、当該超電導線材3と電気的に接続される部材(端子部材2または超電導線材13)と、第1接続部材(図1および図2の接続部材7または図3〜図5の一方の接続部材7、または図6の接続片21)および第2接続部材(図1および図2に示される接続部8に配置された導電性の接着部材、または図3〜図5に示された他方の接続部材7または接続部材17、図6の接続片22)とを備える。超電導線材3は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層5および第2超電導層6を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材3の第1超電導層5を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材3の第2超電導層6とを接続する。
【0044】
このようにすれば、超電導線材3の2つの第1および第2超電導層5、6と端子部材2や他の超電導線材13とを電気的に接続することができるので、当該部材を介して超電導線材3の第1および第2超電導層5、6の両方に十分な電流を流すことができる。したがって、両面に第1および第2超電導層5、6が形成された超電導線材3における電流密度を十分大きくすることができる。
【0045】
上記超電導機器において、図1や図2に示すように、上記部材は導電体からなる端子部材2であってもよい。この場合、端子部材2と上記超電導線材3の第1超電導層5および第2超電導層6とを、第1の接続部材7および第2接続部材(図1、図2の接続部8に配置された導電性の接着部材)を介して確実に接続することができる。このため、端子部材2と第1超電導層5および第2超電導層6との間で確実に電流を流すことができる。
【0046】
上記超電導機器において、図2に示すように端子部材2には凹部11が形成されていてもよい。超電導線材3の端部は端子部材2の凹部11の内部に挿入された状態で固定されていてもよい。この場合、端子部材2の平坦な表面上に超電導線材3を直接接合する場合より、端子部材2を含む端子部1のサイズを小さくすることができる。
【0047】
上記超電導機器において、図3〜図5に示すように上記部材は他の超電導線材13であってもよい。他の超電導線材13は2つの対向する主面を有し、2つの主面のそれぞれに形成された、第3超電導層(超電導線材13の第1超電導層15)および第4超電導層(超電導線材13の第2超電導層16)を含んでいてもよい。第1接続部材(図3の上側の(一方の)接続部材7または図4の接続部材7)は、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第3超電導層および第4超電導層のいずれか一方(超電導線材13の第1超電導層15および第2超電導層16のいずれか一方)とを接続してもよい。第2接続部材(図3の他方の接続部材7または図4の接続部材17)は、超電導線材3の第2超電導層6と他の超電導線材13の第3超電導層および第4超電導層のいずれか他方(超電導線材13の第1超電導層15および第2超電導層16のいずれか他方)とを接続してもよい。
【0048】
この場合、超電導線材3の第1および第2超電導層5、6と、他の超電導線材13の第3および第4超電導層(第1超電導層15および第2超電導層16)とを電気的に接続できるので、超電導線材3および他の超電導線材13における電流密度を高くした状態でこれらの超電導線材3、13を接続することができる。このため、超電導線材3または他の超電導線材13において超電導層5、6、15、16の一部に十分な電流が流れず、結果的に超電導線材3(または他の超電導線材13)の電流密度が低下するといった問題の発生を抑制できる。
【0049】
上記超電導機器において、超電導線材3および他の超電導線材13は、それぞれ巻回されてコイル30、40、100a、100b、100Sを構成してもよい。この場合、コイル30、40、100a、100b、100Sに電流を流すことにより発生する磁界の強度はコイル30、40、100a、100b、100Sに流れる電流値に比例するため、上記のようにコイルを構成する超電導線材3、13の電流密度の低下を防ぐことで、コイルで発生する磁界の強度の低下を防ぐことができる。
【0050】
上記超電導機器では、超電導線材3と他の超電導線材13とが第1および第2接続部材7、17により接続される部分(接続構造部10)において、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第3超電導層(第1超電導層15)とが同じ側に向くように、超電導線材3と他の超電導線材13とは配置されていてもよい。第1接続部材(接続部材7)は、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第4超電導層(第2超電導層16)とを接続してもよい。第2接続部材(接続部材17)は、超電導線材3の第2超電導層6と他の超電導線材13の第3超電導層(第1超電導層15)とを接続してもよい。
【0051】
ここで、超電導線材3においては第1超電導層5と第2超電導層6とで配置の相違に起因してインダクタンスが異なる。そのため、当該超電導線材3と他の超電導線材13とを接続するときに、上記のようにいわゆる転位接続を行なうことで、接続された超電導線材3および他の超電導線材13の全体として超電導層のインダクタンスの差を小さくすることができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、表裏面に超電導層が形成された超電導線材を含む超電導機器に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0054】
1 端子部、2 端子部材、3,13 超電導線材、4,14 ベース基板、5 第1超電導層、6 第2超電導層、7 接続部材、8,9,20 接続部、10 接続構造部、11 凹部、18,19,21,22 接続片、30,40,100S,100a,100b コイル、31 ハウジング、32 コア、33,500 ロータ、34,518 回転軸、100 モータ、120F 他方面、120P 一方面、513 ロータコア、516 ロータ軸、600 ステータ、617,627 冷媒、621 ステータコア、623 ステータヨーク。
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導機器に関し、より特定的には、表裏面に超電導層が形成された超電導線材を含む超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ状のベース基板の表裏面に超電導層が形成された超電導線材が知られている(たとえば、特開2005−56591号公報(特許文献1)参照)。このような超電導線材では、従来から知られているベース基板の片面のみに超電導層が形成された超電導線材よりも、線材の断面における電流密度を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−56591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような超電導線材を用いた超電導機器においては、超電導線材を外部と電気的に接続するための接続端子を当該超電導線材に接続したり、複数の超電導線材を互いに接続したりする場合がある。しかし、上記特許文献1においては、そのような接続構造について特に開示はなされていない。また、ベース基板の片面のみに超電導層が形成された超電導線材における接続端子や線材同士の接続構造では、ベース基板の片面に形成された超電導層と接続端子、あるいは2本の超電導線材の超電導層同士を接続するが、そのような片面に形成された超電導層を前提とした接続構造を上記のような表裏面に超電導層が形成された超電導線材に適用しても、超電導線材における2つの超電導層のうちの一方だけを接続端子などと接続することになるので、2つの超電導層の両方に十分な電流を流すことは難しかった。
【0005】
上記のような表裏面に超電導層を有する超電導線材の全面を、導電性の保護膜で覆うことにより、表面側の超電導層と裏面側の超電導層とを導通させることも考えられるが、この場合には保護膜の厚さや電気抵抗値などにより損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、表裏面に超電導層が形成された超電導線材において、2つの超電導層のそれぞれに十分な電流を流すことが可能な超電導機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った超電導機器は、超電導線材と、当該超電導線材と電気的に接続される部材と、第1接続部材および第2接続部材とを備える。超電導線材は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層および第2超電導層を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材の第1超電導層を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材の第2超電導層とを接続する。
【0008】
このようにすれば、超電導線材の2つの第1および第2超電導層と部材とを電気的に接続することができるので、当該部材を介して超電導線材の第1および第2超電導層の両方に十分な電流を流すことができる。したがって、両面に第1および第2超電導層が形成された超電導線材における電流密度を十分大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部材を介して超電導線材の第1および第2超電導層の両方に十分な電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による超電導機器の実施の形態1を構成する超電導線材の端子部を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した端子部の変形例を示す断面模式図である。
【図3】本発明による超電導機器の実施の形態2を構成する超電導線材の接続部構造部を説明するための上面模式図である。
【図4】本発明による超電導機器の実施の形態3を構成する超電導線材の接続構造部を説明するための上面模式図である。
【図5】図4に示した接続構造部の側面模式図である。
【図6】本発明による超電導機器の実施の形態4を構成する超電導線材の接続構造部を示す斜視模式図である。
【図7】図6に示した接続構造部を超電導線材の延在方向側から見た模式図である。
【図8】本発明による超電導機器の実施の形態5を示す断面模式図である。
【図9】図8に示した超電導機器に用いられるコイルの一部を示す斜視模式図である。
【図10】本発明による超電導機器の実施の形態6を示す断面模式図である。
【図11】図10に示した超電導機器のロータを示す斜視模式図である。
【図12】図10に示した超電導機器のステータを示す斜視模式図である。
【図13】図10に示した超電導機器に用いられるコイルの側面模式図である。
【図14】図13に示した超電導機器の接続部を示す拡大斜視模式図である。
【図15】図14に示した接続部の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による超電導機器を構成する超電導線材の端子部の構造を説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明による超電導機器の端子部1は、導電体からなる部材としての端子部材2と、当該端子部材2に接続される超電導線材3と、超電導線材3と端子部材2と接続する接続部材7とを備える。超電導線材3は、厚み方向の中央に位置するベース基板4と、ベース基板4の一方の主表面上に形成された第1超電導層5と、ベース基板4の他方の主表面上に形成された第2超電導層6とを備える。なお、ベース基板4と第1および第2超電導層5、6との間に中間層を形成してもよい。超電導線材3の第2超電導層6と端子部材2とは接続部8においてたとえば導電性の接着部材により接続されている。接続部材である導電性の接着部材としては、たとえばはんだを用いることができる。また、超電導線材3の第1超電導層5の表面と接続部材7とは接続部9において電気的に接続されている。接続部9にはたとえば導電性の接着部材が配置されていてもよい。
【0014】
接続部材7は、超電導線材3の端部において第1超電導層5の端部上に位置する領域から端子部材2の表面にまで屈曲した状態で延在している。また、接続部材7は、好ましくは超電導線材3の端面に沿って屈曲していてもよい。接続部材7において、超電導線材3と接続された一方端部と反対側の他方端部は、端子部材2の表面と接続されている。当該他方端部における接続部材7と端子部材2との接続部には、たとえば導電性の接着部材を配置してもよい。
【0015】
このような構造により、超電導線材3の第1超電導層5および第2超電導層6の両方を端子部1の端子部材2と電気的に接続することができる。
【0016】
図2を参照して、図1に示した超電導機器の端子部の変形例を説明する。
図2に示した端子部1は、基本的には図1に示した端子部1と同様の構造を備えるが、端子部材2に凹部11が形成され、当該凹部11の内部に超電導線材3が接続されている点が異なっている。具体的には、端子部材2の一方端部に凹部11が形成されている。そして、この凹部11に超電導線材3の端部がはめ込まれた状態で固定されている。超電導線材3の第2超電導層6と端子部材2とは、凹部11の内部に位置する接続部8において電気的に接続されている。接続部8には上述したように導電性の接着部材を配置してもよい。
【0017】
また、超電導線材3の第1超電導層5と端子部材2とは接続部材7により電気的に接続されている。接続部材7と第1超電導層5との接続部9には導電性の接着部材を配置してもよい。また、接続部材7と端子部材2との接続部(接続部材7と端子部材2の外周表面との接合部)にも、導電性の接着部材を配置してもよい。このような構造により、図1に示した端子部1よりも当該端子部1の高さ(図2における上下方向での端子部1の高さ、あるいは超電導線材3の厚み方向に沿った端子部1の高さ)を小さくすることができる。
【0018】
なお、凹部11の深さ(図2における上下方向における凹部11の深さ)を調節することにより、超電導線材3の第1超電導層5の上部表面と端子部材2の表面との高さがほぼ同じになるようにすることが好ましい。この場合、接続部材7を単純な板状の形状とすることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図3を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態2を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0020】
図3に示すように、2つの超電導線材3、13の接続部である接続構造部10は、超電導線材3、13の端面を付き合わせた状態で、当該超電導線材3、13を2つの接続部材7で挟み込んだ構造となっている。具体的には、ベース基板4の表面側および裏面側にそれぞれ第1超電導層5、第2超電導層6が形成された超電導線材3の端面に、もう一方の超電導線材13を付き合わせた状態で配置する。超電導線材13は、超電導線材3と同様にベース基板14の表面側および裏面側に第1超電導層15および第2超電導層16が形成された構成となっている。そして、互いに対向する第1超電導層5、15の表面上に延在するように一方の接続部材7が配置される。接続部材7と第1超電導層5、15との接続部9には、たとえば導電性の接続部材(はんだなど)が配置されていてもよい。つまり、接続部材7と第1超電導層5、15とは当該接続部材によって電気的に接続されていてもよい。また、第2超電導層6、16の上部表面上に延在するように他方の接続部材7が配置されている。接続部材7と第2超電導層6、16との接続部8にも、接続部9と同様に導電性の接続部材が配置されていてもよい。
【0021】
このようにすれば、2本の超電導線材3、13の表面および裏面のそれぞれにおいて、第1超電導層5、15同士、および第2超電導層6、16同士をそれぞれ確実に接続することができる。
【0022】
(実施の形態3)
図4および図5を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態3を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0023】
図4および図5を参照して、超電導線材3、13の接続構造部10は、2本の超電導線材3、13の端部を2つの接続部材7、17で接続している。また、図4および図5に示した接続構造部10においては、超電導線材3の第1超電導層5と超電導線材13の第2超電導層16とが(つまり互いに超電導線材3、13において反対側に位置する超電導層同士が)接続部材7によって接続されている。また、超電導線材3の第2超電導層6と超電導線材13の第1超電導層15とが接続部材17によって接続されている。すなわち、図4および図5に示した接続構造部10においては、超電導線材3、13が転位接続されている。
【0024】
接続部材7は、図4および図5に示すようにその外形が帯状であって超電導線材3、13の延在方向に沿って延びるような形状になっている。ただし、図4に示すように、上方から見た場合、接続部材7はその形状がほぼS字状に屈曲している。
【0025】
一方、接続部材17は、2つの接続片18、19を接続部20において接続することにより構成されている。接続片18の一方端部は超電導線材13の第1超電導層15に接続されている。また、接続片19の一方端部は、超電導線材3の第2超電導層6に接続されている。図4から分かるように、超電導線材13の第1超電導層15と超電導線材3の第2超電導層6とは、互いに反対側に配置されている。また、接続片18、19は、上記一方端部から他方端部に向けて、図5に示すように超電導線材3、13の中心軸から離れるように斜めに延びている。そして、接続片18、19の他方端部において接続された部分である接続部20はもう一方の接続部材7の上方(超電導線材3、13の主表面に沿った方向)において、図4に示すように重なる位置に配置されている。
【0026】
このように接続部材7、17が交差するように配置されることで、超電導線材3、13を転位接続することができる。このような転位接続構造とすることにより、たとえばこれらの超電導線材3、13を用いてコイルを形成するような場合に、超電導線材3、13の第1および第2超電導層5、6、15、16のうち直接差接続された超電導層の組み毎にインダクタンスが異なるといった問題の発生を抑制できる。
【0027】
(実施の形態4)
図6および図7を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態4を構成する超電導線材の接続構造部を説明する。
【0028】
図6および図7に示すように、接続構造部10においては、超電導線材3、13の端部が2つの接続片21、22により電気的に接続されている。導電体からなる接続片21は、超電導線材3の第2超電導層6と超電導線材13の第2超電導層16とにそれぞれ接続されている。一方、導電体からなる接続片22は、超電導線材3の第1超電導層5と超電導線材13の第1超電導層15とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
そして、接続片21、22は、超電導線材3、13の端面側において互いに近づくように屈曲し、接続部20において電気的に接続されている。接続部20はたとえば導電性の接着部材によって接続されていてもよい。このようにすれば、超電導線材3、13を接続構造部10により接続することができるとともに、超電導線材3、13の表面側および裏面側の第1超電導層5、15と第2超電導層6、16のそれぞれを当該接続構造部10において電気的に接続することで同電位とすることができる。
【0030】
(実施の形態5)
図8および図9を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態5を説明する。
【0031】
図8に示すように、本発明による超電導機器の一例であるモータ100は超電導モータであって、円筒形状のハウジング31内に回転軸34を中心として回転可能なロータ33が配置されている。ハウジング31の内壁にはコア32が2組配置され、それぞれのコア32の周囲には本発明による超電導線材を用いたコイル30、40がそれぞれ巻回された状態で配置されている。1組のコイル30は互いに対向するように配置されている。また、もう一方の1組のコイル40も互いに対向するように配置されている。なお、ロータ33の内部にもコイルが配置されている。当該コイルは、本発明による超電導線材を用いたものであってもよいが、通常の導体を用いたコイルであってもよい。
【0032】
図9に示すように対向配置された1組のコイル30では、コイル30を構成する超電導線材3の端部が当該コイル30から引き出され、引き出された超電導線材3の端部が接続構造部10によって電気的に接続されている。当該接続構造部10としては、本発明の実施の形態2〜実施の形態4に示した接続構造部10のいずれかを適用することができる。
【0033】
特に、本発明の実施の形態3において示した接続構造部10を図9のコイル30における接続構造部10に適用した場合には、1組のコイル30における超電導線材3の第1超電導層と第2超電導層との間のインダクタンスの均一化を図ることができる。
【0034】
(実施の形態6)
図10〜図15を参照して、本発明による超電導機器の実施の形態6を説明する。
【0035】
図10に示すように、本発明による超電導機器の一例であるモータ100は、超電導モータであって、回転子であるロータ500と、ロータ500の周囲に配置された固定子であるステータ600とを備える。図10および図11に示すように、ロータ500は、本発明による超電導線材の接続構造部を含む超電導コイルであるコイル100Sと、回転軸518と、ロータコア513と、ロータ軸516と、冷媒617とを含んでいる。コイル100Sは、いわゆるレーストラック型のコイルであるが、一方面120Pが凸状となり、この一方面120Pと対向する他方面120Fが凹状となるように構成されている。つまりコイル100Sは鞍型の形状を有する。ロータ軸516は、回転軸518の長軸方向に延びる外周面の周囲に形成されている。ロータ軸516の外表面は円弧状である。ロータコア513は、ロータ軸516の、回転軸518に交差する断面における中央部分(回転軸518が配置されている領域)から放射状に、ロータ軸516の外周面から突出するように延びている。コイル100Sは、ロータコア513を囲むように、かつロータ軸516の円弧状の外表面に沿うように配置されている。冷媒617は、コイル100Sを冷却する。コイル100Sと冷媒617とは、断熱容器の内部に配置されている。
【0036】
ロータ500の周囲には、モータ100の固定子としてのステータ600が形成されている。ステータ600は、本発明による超電導線材の接続構造部を含むコイル100Sと、ステータヨーク623と、冷媒627と、ステータコア621とを含んでいる。
【0037】
ステータヨーク623は、ロータコア513の外周を取囲んでいる。ステータヨーク623の外表面は円弧状である。超電導コイルであるコイル100Sは、ステータヨーク623の円弧状の外表面に沿うように配置されている。冷媒627は、コイル100Sを冷却する。なお図12においてはステータコア621は記載されていない。
【0038】
次に、図13〜図15を参照して、図10に示したモータに用いられるコイル100Sの構造を具体的に説明する。なお、図13〜図15においては、説明の便宜上コイルを平坦な外形を有するものとして記載している。
【0039】
図13〜図15に示すように、コイル100Sは、2つの超電導コイル100a、100bを電気的に接続することにより構成されている。一方の超電導コイルであるコイル100aは平面視においてたとえば半径方向に内周側から外周側に向けて超電導線材を巻くことによって構成されている。一方、他方のコイル100bは、上述したコイル100aとは逆方向に内周側から外周側に向けて超電導線材を巻くことによって構成されている。これらのコイル100a、100bを構成する超電導線材13、3は、本発明の実施の形態1〜4において示したようなベース基板14、4の表面および裏面のそれぞれに第1および第2超電導層15、5、16、6が形成されたものである。
【0040】
これらのコイル100a、100bを、その外周側に位置する超電導線材3、13の端部において接続部材7、17により転位接続する。具体的には、コイル100aを構成する超電導線材13の内周側に位置する第1超電導層15と、他方のコイル100bを構成する超電導線材3の外周側に位置する第2超電導層6とを接続部材17により接続する。一方、超電導線材13において接続部材17が接続された位置よりもより端部に近い位置において、超電導線材13の外周側に位置する第2超電導層16と、他方のコイル100bを構成する超電導線材3の内周側に位置する第1超電導層5とを接続部材7により電気的に接続する。超電導線材3、13における第1および第2超電導層5、6、15、16と接続部材7、17との接続部は、たとえば導電性の接着部材を介して電気的に接続することができる。そして、図14および図15に示すように、接続部材7、17は、超電導線材3、13の端面側(コイル100a、100bを平面視する側)から見たときに、互いに交差するようにS字状に湾曲した状態になっている。
【0041】
このようにすれば、一方のコイル100aと他方のコイル100bとで第1超電導層5、15と第2超電導層6、16とを互いに交差して接続する(転位接続する)ことができるので、コイル100S全体として見たときのインダクタンスを均一化することができる。
【0042】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0043】
この発明に従った超電導機器(モータ100)は、超電導線材3と、当該超電導線材3と電気的に接続される部材(端子部材2または超電導線材13)と、第1接続部材(図1および図2の接続部材7または図3〜図5の一方の接続部材7、または図6の接続片21)および第2接続部材(図1および図2に示される接続部8に配置された導電性の接着部材、または図3〜図5に示された他方の接続部材7または接続部材17、図6の接続片22)とを備える。超電導線材3は、2つの対向する主面を有し、当該2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層5および第2超電導層6を含む。第1接続部材は、上記部材と超電導線材3の第1超電導層5を接続する。第2接続部材は、上記部材と超電導線材3の第2超電導層6とを接続する。
【0044】
このようにすれば、超電導線材3の2つの第1および第2超電導層5、6と端子部材2や他の超電導線材13とを電気的に接続することができるので、当該部材を介して超電導線材3の第1および第2超電導層5、6の両方に十分な電流を流すことができる。したがって、両面に第1および第2超電導層5、6が形成された超電導線材3における電流密度を十分大きくすることができる。
【0045】
上記超電導機器において、図1や図2に示すように、上記部材は導電体からなる端子部材2であってもよい。この場合、端子部材2と上記超電導線材3の第1超電導層5および第2超電導層6とを、第1の接続部材7および第2接続部材(図1、図2の接続部8に配置された導電性の接着部材)を介して確実に接続することができる。このため、端子部材2と第1超電導層5および第2超電導層6との間で確実に電流を流すことができる。
【0046】
上記超電導機器において、図2に示すように端子部材2には凹部11が形成されていてもよい。超電導線材3の端部は端子部材2の凹部11の内部に挿入された状態で固定されていてもよい。この場合、端子部材2の平坦な表面上に超電導線材3を直接接合する場合より、端子部材2を含む端子部1のサイズを小さくすることができる。
【0047】
上記超電導機器において、図3〜図5に示すように上記部材は他の超電導線材13であってもよい。他の超電導線材13は2つの対向する主面を有し、2つの主面のそれぞれに形成された、第3超電導層(超電導線材13の第1超電導層15)および第4超電導層(超電導線材13の第2超電導層16)を含んでいてもよい。第1接続部材(図3の上側の(一方の)接続部材7または図4の接続部材7)は、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第3超電導層および第4超電導層のいずれか一方(超電導線材13の第1超電導層15および第2超電導層16のいずれか一方)とを接続してもよい。第2接続部材(図3の他方の接続部材7または図4の接続部材17)は、超電導線材3の第2超電導層6と他の超電導線材13の第3超電導層および第4超電導層のいずれか他方(超電導線材13の第1超電導層15および第2超電導層16のいずれか他方)とを接続してもよい。
【0048】
この場合、超電導線材3の第1および第2超電導層5、6と、他の超電導線材13の第3および第4超電導層(第1超電導層15および第2超電導層16)とを電気的に接続できるので、超電導線材3および他の超電導線材13における電流密度を高くした状態でこれらの超電導線材3、13を接続することができる。このため、超電導線材3または他の超電導線材13において超電導層5、6、15、16の一部に十分な電流が流れず、結果的に超電導線材3(または他の超電導線材13)の電流密度が低下するといった問題の発生を抑制できる。
【0049】
上記超電導機器において、超電導線材3および他の超電導線材13は、それぞれ巻回されてコイル30、40、100a、100b、100Sを構成してもよい。この場合、コイル30、40、100a、100b、100Sに電流を流すことにより発生する磁界の強度はコイル30、40、100a、100b、100Sに流れる電流値に比例するため、上記のようにコイルを構成する超電導線材3、13の電流密度の低下を防ぐことで、コイルで発生する磁界の強度の低下を防ぐことができる。
【0050】
上記超電導機器では、超電導線材3と他の超電導線材13とが第1および第2接続部材7、17により接続される部分(接続構造部10)において、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第3超電導層(第1超電導層15)とが同じ側に向くように、超電導線材3と他の超電導線材13とは配置されていてもよい。第1接続部材(接続部材7)は、超電導線材3の第1超電導層5と他の超電導線材13の第4超電導層(第2超電導層16)とを接続してもよい。第2接続部材(接続部材17)は、超電導線材3の第2超電導層6と他の超電導線材13の第3超電導層(第1超電導層15)とを接続してもよい。
【0051】
ここで、超電導線材3においては第1超電導層5と第2超電導層6とで配置の相違に起因してインダクタンスが異なる。そのため、当該超電導線材3と他の超電導線材13とを接続するときに、上記のようにいわゆる転位接続を行なうことで、接続された超電導線材3および他の超電導線材13の全体として超電導層のインダクタンスの差を小さくすることができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、表裏面に超電導層が形成された超電導線材を含む超電導機器に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0054】
1 端子部、2 端子部材、3,13 超電導線材、4,14 ベース基板、5 第1超電導層、6 第2超電導層、7 接続部材、8,9,20 接続部、10 接続構造部、11 凹部、18,19,21,22 接続片、30,40,100S,100a,100b コイル、31 ハウジング、32 コア、33,500 ロータ、34,518 回転軸、100 モータ、120F 他方面、120P 一方面、513 ロータコア、516 ロータ軸、600 ステータ、617,627 冷媒、621 ステータコア、623 ステータヨーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向する主面を有し、前記2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層および第2超電導層を含む超電導線材と、
前記超電導線材と電気的に接続される部材と、
前記部材と前記超電導線材の前記第1超電導層および前記第2超電導層とをそれぞれ接続する第1接続部材および第2接続部材とを備える、超電導機器。
【請求項2】
前記部材は導電体からなる端子部材である、請求項1に記載の超電導機器。
【請求項3】
前記端子部材には凹部が形成され、
前記超電導線材の端部は前記端子部材の前記凹部の内部に挿入された状態で固定されている、請求項2に記載の超電導機器。
【請求項4】
前記部材は他の超電導線材であり、
前記他の超電導線材は2つの対向する主面を有し、前記2つの主面のそれぞれに形成された、第3超電導層および第4超電導層を含み、
前記第1接続部材は、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層および前記第4超電導層のいずれか一方とを接続し、
前記第2接続部材は、前記超電導線材の前記第2超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層および前記第4超電導層のいずれか他方とを接続する、請求項1に記載の超電導機器。
【請求項5】
前記超電導線材および前記他の超電導線材は、それぞれ巻回されてコイルを構成する、請求項4に記載の超電導機器。
【請求項6】
前記超電導線材と前記他の超電導線材とが前記第1および第2接続部材により接続される部分において、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層とは同じ側に向くように、前記超電導線材と前記他の超電導線材とは配置されており、
前記第1接続部材は、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第4超電導層とを接続し、
前記第2接続部材は、前記超電導線材の前記第2超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層とを接続する、請求項4または5に記載の超電導機器。
【請求項1】
2つの対向する主面を有し、前記2つの主面のそれぞれに形成された、第1超電導層および第2超電導層を含む超電導線材と、
前記超電導線材と電気的に接続される部材と、
前記部材と前記超電導線材の前記第1超電導層および前記第2超電導層とをそれぞれ接続する第1接続部材および第2接続部材とを備える、超電導機器。
【請求項2】
前記部材は導電体からなる端子部材である、請求項1に記載の超電導機器。
【請求項3】
前記端子部材には凹部が形成され、
前記超電導線材の端部は前記端子部材の前記凹部の内部に挿入された状態で固定されている、請求項2に記載の超電導機器。
【請求項4】
前記部材は他の超電導線材であり、
前記他の超電導線材は2つの対向する主面を有し、前記2つの主面のそれぞれに形成された、第3超電導層および第4超電導層を含み、
前記第1接続部材は、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層および前記第4超電導層のいずれか一方とを接続し、
前記第2接続部材は、前記超電導線材の前記第2超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層および前記第4超電導層のいずれか他方とを接続する、請求項1に記載の超電導機器。
【請求項5】
前記超電導線材および前記他の超電導線材は、それぞれ巻回されてコイルを構成する、請求項4に記載の超電導機器。
【請求項6】
前記超電導線材と前記他の超電導線材とが前記第1および第2接続部材により接続される部分において、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層とは同じ側に向くように、前記超電導線材と前記他の超電導線材とは配置されており、
前記第1接続部材は、前記超電導線材の前記第1超電導層と前記他の超電導線材の前記第4超電導層とを接続し、
前記第2接続部材は、前記超電導線材の前記第2超電導層と前記他の超電導線材の前記第3超電導層とを接続する、請求項4または5に記載の超電導機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−248744(P2012−248744A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120497(P2011−120497)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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