説明

超音波センサを使用する駐車スペースの奥行き限度を確定する方法およびこの方法を実行するための装置

【解決手段】この発明は、車両の少なくとも1つの超音波車両センサを使用する駐車スペースの奥行き限度を確定する方法に関する。この方法では、車両が駐車スペースを長手方向に通過する際に、以下のステップ、すなわち、
a)超音波を発信すること、
b)発信された超音波の反響信号を測定ウィンドウ内で集めること、
c)反響信号の分散、および/またはこの分散内での反響信号の分布を決定すること、
d)分布内での集中を形成する全ての、および/または複数の反響信号の分散幅が、所定のしきい値より小さい場合に、奥行き限度を確定すること、が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の複数の超音波センサによって駐車スペースの奥行き限度を確定する方法に関する。駐車スペースの奥行き限度の確定は、隙間駐車過程の際に衝突をもたらすであろう物体が、駐車スペースにあるか否かを確定するために必要である。さらに、駐車スペースの奥行き限度を定めるために、通常は、縁石が複数の超音波センサによって検知され、基準線として用いられる。車両を駐車スペースに隙間駐車する際に、車両後部、および/または車両前部も、縁石を覆うように突き出ている状況が生じることがある。このことは通常問題ない。何故ならば、縁石が、通常、車両のこのような突出部との衝突をもたらさない高さを有するからである。しかし、縁石の代わりに、駐車スペースの奥行き限度をもたらす、より高い物体、例えば壁があるときは、隙間駐車過程の際の衝突または隙間駐車過程の中止が生じる。
【背景技術】
【0002】
従来の技術からは、奥行き限度をもたらす物体の高さを検知することができる装置が公知である。例えば、DE 101 46 712 A1からは、2つのセンサを互いに90°ずらして設けることが公知である。ここでは、一方のセンサは、物体の高さを認識するために用いられ、他方のセンサは、垂直方向でのスキャンのために用いられる。さらに、従来の技術からは、物体の高さを確定するために、機械式に調整されることが可能である複数のセンサ(EP 0 904 552 A1またはDE 103 22 601)が公知である。
【0003】
公知の装置および方法は、両者が比較的コストがかかるという欠点を有する。複数のセンサがあるか、あるいは、複数のセンサを旋回するための機械的な装置が必要となる。前者は、追加のコストと結びついている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確実な情報を容易に提供する車両の複数の超音波センサによって、駐車スペースの奥行き限度を確定するための方法を提供するという課題が、この発明の基礎になっている。特に、車両後部、および/または車両前部が縁石を覆うようにして突き出ているので隙間駐車過程の際に車両の衝突をもたらす奥行き限度を認識することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下のステップ、すなわち、
a)超音波を発信すること、
b)発信された超音波の反響信号を測定ウィンドウ内で集めること、
c)反響信号の分散、および/またはこの分散内での反響信号の分布を決定すること、
d)分布内での集中を形成する全ての、および/または複数の反響信号の分散幅が、所定のしきい値より小さい場合に、奥行き限度を確定すること、を実行することを特徴とするこの発明に係る方法によって解決される。
【0006】
すべての反響信号の、および/または特に1つの信号集中である複数の反響信号の分散幅の比較に基づき、或る物体が、駐車スペースの奥行きを限定するか否かの情報を提供することが可能である。例えば、駐車スペースが、壁によって限定されるとき、一方では、すべての反響信号が壁で跳ね返されるので、次に、全信号の分散幅が非常に狭くて、しきい値より小さいという場合が生じることがある。他方では、発信される超音波が、壁のみならず、壁の手前に位置している舗装路面または車道マークで跳ね返されることも考えられる。例えば、車道マークが長手方向に延びているとき、すべての反響信号の観察の際に、都合1つの、より幅の広い分散幅が生じる。しかしながら、分散内での反響信号の分布が観察されるとき、壁で跳ね返される複数の反響信号に基づき、分散内で、信号の集中が確定されることが可能である。反射信号の分散幅は、しきい値より小さい。したがって、この場合、駐車スペースの奥行き限度を認識することができる。
【0007】
この発明に係る方法は、この場合、一方では、ただ1つのセンサで済ますことができ、他方では、駐車スペースの奥行き限度を判断するための機械を必要としないという利点を有する。
【0008】
この発明によれば、反響信号の分散、およびこれらの反響信号の分布を、反響信号の実行時間に関して、および/または反響信号を跳ね返す物体との空間的な距離に関して、観察することが可能である。この場合、センサ、したがってまた車両からの空間的な距離を、特に、発信される超音波から結果として生じ、かつ集められた反響信号の実行時間の測定によって、確定することができる。
【0009】
奥行き限度を生じさせるしきい値は、実行時間の観察に関して4msec、特に3.2msecであり、特に2msecを下回ることがある。64μsecの反響信号の実行時間のずれは、通常の条件下では、約1cmの、物体と車両との空間的な距離に対応する。このとき、4msecより下の反響信号の時間的なずれは、約62.5cmの空間的な距離に対応する。3.2msecは約50cmに対応し、2msecは約31.25cmに対応する。空間的な距離の観察の際に、奥行き限度が存在するのは、複数の、または全ての空間的な距離の分散幅が、65cmより下であり、特に、50cmより下にあるときである。実際的な試みでは、約50cmのしきい値が好都合であることが明らかになった。
【0010】
この発明によれば、超音波が発信されてなる測定ウィンドウでは、発信された超音波の反響信号を、3回ないし20回、特に4回ないし8回集めることは好ましい。4回ないし8回集められた反響信号によって、この発明では、反響信号の実行時間の分散幅、および/または反響信号を生起する物体との空間的な距離を確定することができる。特に、最後に受信された反響信号が、小さな分散幅にあるとき、妨害的な奥行き限度が存在することが前提となる。
【0011】
さらに、この発明では、請求項1に記載の個々のステップを、駐車スペースを通過する際に、駐車スペースの全長または駐車スペースの一部分に亘って実行することが好ましい。したがって、奥行き限度を、駐車スペースの相応の長さに亘って確定することができる。
【0012】
この発明の、他の好ましい実施の形態では、超音波は、実質的に円錐形に、しかも、10°ないし30°、特に約20°の円錐軸角度をもって発信される。円錐形状の開き角は、円錐軸角度の倍の値である。信号の円錐形の発信に基づき、超音波が、駐車スペースの長手方向軸に平行にあって、かつ駐車スペースを区画する壁に当たるときでさえ、時間的にずれた反響信号が生じる。
【0013】
この発明は、さらに、駐車スペースの奥行き限度を確定するための装置に関する。この装置は、この発明に係る方法で作動し、少なくとも1つの超音波センサと、この超音波センサに関連する信号処理手段とを有する。この信号処理手段は、反響信号の実行時間の分散幅、および/または反響信号を生起する物体の空間的な距離の分散幅を確定する。
【0014】
この発明のさらなる詳細および好ましい実施の形態は、以下の記述から読み取られる。この発明を、図面に示した実施の形態を参照して詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には、側方に設けられた超音波センサ12を有する車両10が示されている。車両の側方には、駐車スペース14があって、縁石16によって区画される。縁石16には、歩道18が続き、歩道上には、物体20がある。
【0016】
超音波センサ12によって、円錐形に形成された超音波が発信される。この超音波は、約20°の円錐軸角度(Kegelachswinkel)αを有する。測定ウィンドウには、超音波が発信され、超音波の反響信号は4回ないし8回集められる。図1では、例えば3つの反響信号22,24および26が示されている。これらの反響信号は、発信された超音波から結果として生じる。第1の反響信号22は、縁石16で跳ね返される。第2の反響信号24は、歩道18で跳ね返され、第3の反響信号26は物体20で跳ね返される。
【0017】
図2では、受信された反響信号22,24,26の実行時間tが、車両10が進む距離sに亘って描かれている。走行時間tの代わりに、この発明では、走行時間にリニアにしたがう、物体との距離dを、車両が進む距離sに亘って示すことも考えられる。物体では、反響信号22,24,26が跳ね返される。図2では、さらに、超音波センサ12の検知区域28が示されている。
【0018】
図2から明らかなように、集められた反響信号22,24、26の時間的ずれの分散幅bは、比較的大きい。駐車スペース14の、認識される奥行き限度が存するのは、分散幅bが所定のしきい値Wよりも小さい場合である。実際には、駐車スペース14の奥行き限度が前提とされるのが、しきい値Wが約3.2msecであるときであることが明らかになった。立体的な物体との距離に関して反響信号を評価する際に、奥行き限度が発生するのは、反響信号を引き起こす物体との空間的な距離の分散幅bが50cmよりも小さいか同じであるときである。
【0019】
図1および2に示された状況では、反響信号の時間的なずれに関する分散幅bが、3.2msecよりも大きく、物体との距離に関する分散幅が50cmよりも大きい。したがって、分散幅の決定に基づいて、隙間駐車の際に、後部または前部が万一縁石を覆うように突き出るとき、駐車スペース14の、衝突をもたらす奥行き限度が存しないことが確定されることができる。
【0020】
図2に示すように、駐車スペースの全長に亘る分散幅bが観察される。駐車スペースの全長に亘る分散幅bが実質的に同じであるので、駐車スペースの長さに亘って奥行き限度が存しないことが前提となる。
【0021】
図3は、図1とは、垂直方向に延びている壁30が、縁石16の区域に存するという点で異なる。
【0022】
図1に対応して、図3では、例えば3つの反響信号32,34,36が示されており、これらの反響信号は、測定ウィンドウ内で集められる。壁の長手方向長さの故に駐車スペースの長さに亘って生じる反響信号32,34,36に追加して、舗装路面で跳ね返される他の反響信号31が短時間に生じるという場合が生じる。しかし、この信号は駐車スペースに亘って生じるのではなく、局所的な妨害信号としてのみ生じる。このことは、図4に示されている。このような局所的に生じる信号は、使用されず、この発明の方法では、無視される。
【0023】
反響信号32,34,36から結果として生じる、図4に示す分散幅bは、比較的小さい。何故ならば、反響信号32,34,36の実行時間が、駐車スペース14の長手方向軸に平行に延びている壁の存在の故に、ほぼ同じだからである。時間的な観察では3.2msec、および空間的な観察では50cmより小さい分散幅bの故に、駐車スペース14の奥行き限度を、壁によって認識することができる。この場合、壁30は、車輌が長手方向に進む駐車スペース14全体に亘って延びている。このことは、図4でほぼ同一線上に位置している信号32,34,36から見て取れる。
【0024】
したがって、この発明に基づき、隙間駐車過程を阻む、駐車スペースの奥行き限度が存するか否かが、質的に区別される。このような奥行き限度が存在するときは、駐車過程は、車両の前部、および/または後部が、縁石を覆うように突き出ないので、車両の、認識された物体との衝突が生じないように、実行されることが可能である。
【0025】
この場合、この発明は、追加のセンサ、および/またはセンサ用の追加の機械を備える必要がないという利点を有する。信号処理手段、すなわち適切なソフトウェアに基づいてのみ、奥行き限度が存在するか否かが確定されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】駐車スペースを通過する車両の背面図を示す。
【図2】略示された反響信号を有する、図1に示した車両の平面図を示す。
【図3】駐車スペースを区画する壁を有する、図1に対応する図を示す。
【図4】略示された反響信号を有する、図3の平面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の少なくとも1つの超音波センサ(12)によって駐車スペース(14)の奥行き限度を確定する方法において、
前記駐車スペース(14)を長手方向に通過する際に、以下のステップ、すなわち、
a)超音波を発信すること、
b)前記発信された超音波の反響信号(22,24,26;32,34,36)を測定ウィンドウ内で集めること、
c)前記反響信号の分散、および/またはこの分散内での前記反響信号の分布を決定すること、
d)前記分布内での集中を形成する全ての、および/または複数の反響信号の分散幅(b)が、所定のしきい値(W)より小さい場合に、奥行き限度を確定すること、を実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反響信号の分散およびこれらの反響信号の分布を、前記反響信号の実行時間に関して、および/または前記反響信号を跳ね返す物体との空間的な距離に関して観察することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記しきい値(W)は、前記反響信号の実行時間に関して4msec、特に3.2msecおよび特に2msecであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記しきい値(W)は、前記反響信号を跳ね返す前記物体との空間的な距離に関して、65cm、特に50cmおよび特に30cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定ウィンドウでは、発信された超音波の反響信号を、3回ないし20回、特に4回ないし8回集めることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記駐車スペースを通過する際に、前記奥行き限度を決定するための前記分散幅を、前記駐車スペースの全長、または前記駐車スペースの一部分に亘って観察することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記超音波を、10ないし30°、特に約20°の円錐軸角度をもって、ほぼ円錐形で発信することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの超音波センサ(12)および信号処理手段を具備し、前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法で作動する、駐車スペースの奥行き限度を確定するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502636(P2009−502636A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524373(P2008−524373)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005770
【国際公開番号】WO2007/014595
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(303049337)バレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー (18)