説明

超音波モータの駆動装置

【課題】超音波モータの異常を検出する際の電力の損失を低減することが可能な超音波モータの駆動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】超音波モータの駆動装置101は、圧電素子5と、交流発振器10及び圧電素子5に接続され圧電素子5に送る電圧信号を周期的に切り換えるD級スイッチング段3と、D級スイッチング段3及び圧電素子5の間に接続される出力コイル4と、出力コイル4及び圧電素子5の間に接続され出力コイル4及び圧電素子5の間の電圧信号を検出する検知装置7と、検知装置7が検出した電圧信号の周波数が圧電素子5を駆動する電圧信号の周波数より高い場合に、圧電素子5の異常、及び/もしくは出力コイル4と圧電素子5との間の断線を判定するCPU30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子に超音波振動を発生させて駆動する超音波モータは、小型で高トルクを出力するため、様々な用途に使用されている。そして、超音波モータには、圧電素子に周期的に変動する電圧を印加するための駆動装置が備えられている。そして、駆動装置の状態を検出する様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、超音波モータの駆動部及びその駆動回路を備える駆動装置の状態を検出する方法に関する発明が記載されている。超音波モータの駆動部は、電圧が印加されると伸縮する圧電素子と、圧電素子に一端が固定されており圧電素子の伸縮によって軸方向に往復変位することができる振動部材と、振動部材に摩擦係合しており振動部材の往復変位によって振動部材に対してすべり変位する摩擦係合部材とを有している。また、駆動回路は、圧電素子の電極を所定の振動周期で電源に接続する充電スイッチング素子と、電極を接地する放電スイッチング素子とを有し、さらに、電源と圧電素子との間の電路又は圧電素子と接地点との間の電路に検出抵抗を有している。そして、検出抵抗の両端の電位差を検出し、検出した電位差に基づき、駆動装置の異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の駆動装置は、電源と圧電素子との間の電路又は圧電素子と接地点との間の電路に検出抵抗を設けているため、検出抵抗において電力の損失が発生し、電源の電力を超音波モータの駆動に効率的に利用できないという問題がある。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、超音波モータの異常を検出する際の電力の損失を低減することが可能な超音波モータの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る超音波モータの駆動装置は、圧電素子と、交流発振器及び圧電素子に接続され圧電素子に送る電圧信号を周期的に切り換えるスイッチング装置と、スイッチング装置及び圧電素子の間に接続される出力コイルと、出力コイル及び圧電素子の間に接続され出力コイル及び圧電素子の間の電圧信号を検出する検知装置と、検知装置が検出した電圧信号の周波数が圧電素子を駆動する電圧信号の周波数より高い場合に、圧電素子の異常、及び/もしくは出力コイルと圧電素子との間の断線を判定する異常判定装置とを備える。
【0008】
出力コイル及び圧電素子は、出力コイルに入力する電圧信号のうち第一所定周波数以下の周波数の電圧信号を通過させるローパスフィルタ回路を構成し、第一所定周波数は、上記圧電素子を駆動する電圧信号の周波数以上であり、検知装置は、第一所定周波数より高い周波数をもつ電圧信号を検出してもよい。
さらに、検知装置は、圧電素子に入力する電圧信号のうち第二所定周波数以上の周波数をもつ電圧信号を通過させるハイパスフィルタ回路を有し、第二所定周波数は、第一所定周波数より高くなっていてもよい。
【0009】
異常判定装置は、検知装置のハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が第一閾値以上の場合、出力コイル及び圧電素子の間の電路に断線があると判定し、検知装置のハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が第二閾値より大きく第一閾値未満の場合、圧電素子の容量に欠損があると判定し、検知装置のハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が第二閾値以下の場合、出力コイル及び圧電素子の間の電路、及び圧電素子に異常がないと判定してもよい。
上記超音波モータの駆動装置は、交流発振器による交流電圧信号と、交流電圧信号より高い周波数をもつ三角波状の搬送波電圧信号とが入力される比較器をさらに備え、比較器は、交流電圧信号及び搬送波電圧信号からパルス波形のパルス電圧信号を生成してスイッチング装置に送り、スイッチング装置は、出力コイルに流れる電流をオンまたはオフするスイッチング素子を有し、パルス電圧信号によりスイッチング素子をオンまたはオフさせてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の超音波モータの駆動装置によれば、超音波モータの異常を検出する際の電力の損失を低減することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波モータの駆動装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】図1の比較器に入力する電圧信号及び入力した電圧信号を比較器で変調した電圧信号の状態を示す図である。
【図3】図1の2つのMOSFETに入力する電圧信号の状態を示す図である。
【図4】図1のHPF回路での処理後の電圧信号の状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る超音波モータの駆動装置におけるLPF回路の特性の変化を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1に係る超音波モータの駆動装置101の構成を説明する。
図1を参照すると、超音波モータの駆動装置101には、正弦波の波形を有した基準電圧の交流電圧信号を発生する交流発振器10と、三角波の波形を有した搬送波からなる電圧信号である搬送波電圧信号を発生する三角波発生器20と、CPU30とが接続されている。CPU30は、交流発振器10及び三角波発生器20の動作を制御する。
【0013】
また、駆動装置101は、D級増幅回路を構成している。駆動装置101は、出力電圧信号と基準電圧の交流電圧信号との誤差を増幅し出力電圧信号を安定化させるように交流電圧信号を変換し制御する誤差増幅器1と、2つの信号を比較し変調することで電圧のパルス波からなるパルス電圧信号を生成するコンパレータである比較器2とを有している。さらに、駆動装置101は、比較器2が生成したパルス電圧信号を増幅した電圧信号で内部の2つのスイッチング素子を周期的に切り換えて駆動するD級スイッチング段3を有している。そして、駆動装置101は、D級スイッチング段3に電路8aを介して接続された出力コイル4と、出力コイル4に電路8bを介して直列に接続されると共に接地された圧電素子5とを有している。
ここで、D級スイッチング段3は、スイッチング装置を構成している。
【0014】
D級スイッチング段3は、比較器2と出力コイル4との間に、D級ドライブ回路3aとD級出力段3bとを有している。
D級出力段3bは、スイッチング素子としてトランジスタの一種であるMOSFETを2つ有している。MOSFETは、ハイサイドMOSFET3b1とローサイドMOSFET3b2とから構成されている。
ハイサイドMOSFET3b1は、高く設定された所定の電圧が印加されるとON(オン)状態となって電流を流し、印加される電圧が上記所定の電圧未満ではOFF(オフ)状態となって電流を流さない。
ローサイドMOSFET3b2は、低く設定された所定の電圧が印加されるとON状態となって電流を流し、印加される電圧が上記所定の電圧未満ではOFF状態となって電流を流さない。
【0015】
ハイサイドMOSFET3b1は、nチャンネル型であり、ドレインが正電圧を有する直流の電源電圧Vccに接続され、ソースが出力コイル4及びローサイドMOSFET3b2のドレインに接続され、ゲートがD級ドライブ回路3aに接続されている。ローサイドMOSFET3b2は、nチャンネル型であり、ドレインが出力コイル4及びハイサイドMOSFET3b1のソースに接続され、ソースが負電圧を有する直流の電源電圧−Vccに接続され、ゲートがD級ドライブ回路3aに接続されている。
【0016】
D級ドライブ回路3aは、比較器2に接続されてパルス電圧信号にデッドタイムを生成するデッドタイム生成回路3a1を有している。デッドタイムでは、ハイサイドMOSFET3b1とローサイドMOSFET3b2とを同時にON状態にする現象を防ぐために、いずれのMOSFETにも電圧が印加されない。
【0017】
さらに、D級ドライブ回路3aは、デッドタイム生成回路3a1に接続されたレベルシフタ3a2を有している。レベルシフタ3a2は、デッドタイムが加えられたパルス電圧信号を、ハイサイドMOSFET3b1のソース電位、つまりハイサイドMOSFET3b1及びローサイドMOSFET3b2の間の点Fでの電位を基準に振幅するパルス電圧信号に電位変換する。
また、D級ドライブ回路3aは、パルス電圧信号を、ハイサイドMOSFET3b1及びローサイドMOSFET3b2のそれぞれをON状態にするのに必要な電圧に増幅するゲートドライバ3a3及び3a4を有している。ゲートドライバ3a3は、ハイサイドMOSFET3b1のゲート及びレベルシフタ3a2に接続され、ゲートドライバ3a4は、ローサイドMOSFET3b2のゲート及びデッドタイム生成回路3a1に接続されている。
【0018】
圧電素子5は、電圧が印加されると電圧の印加方向に応じた歪みを発生する板状の圧電体5aと、圧電体5aの両側に設けられた電極板5b及び5cとを有している。電極板5bは電路8bを介して出力コイル4に接続され、電極板5cは接地されている。このため、圧電素子5は、キャパシタと同様の性質つまり容量性を有している。よって、出力コイル4及び圧電素子5は、D級スイッチング段3より出力される電圧信号から高周波成分を除去するローパスフィルタ(LPF)回路6を構成している。
【0019】
なお、LPF回路6では、出力コイル4のインピーダンスの値をL、圧電素子5の電気容量値をCとすると、カットオフ周波数が、1/(2πL)となる。LPF回路6は、カットオフ周波数以下の低い周波数の電圧信号を通過させ、カットオフ周波数より高い周波数の電圧信号に対しては、通過を制限又は遮断する。そして、本実施の形態1のLPF回路6は、誤差増幅器1によって交流電圧信号から変換・生成された電圧信号の周波数より高い周波数の電圧信号の通過を制限又は遮断する。
ここで、LPF回路6のカットオフ周波数は、第一所定周波数または、第一所定周波数より高い周波数を構成している。
【0020】
また、圧電素子5の電極板5bに接触させてステータ40が設けられている。さらに、ステータ40において圧電素子5と反対側に形成された爪部40aに接触させて、ロータ50が設けられている。このため、電極板5b及び5cに超音波領域の周波数で正電圧及び負電圧が交互に印加されると、圧電体5aが相対する方向に交互に歪んで超音波振動を発生し、それにより、ステータ40の爪部40aがロータ50を引っ掻くように運動し、ロータ50を回転させる。そして、圧電素子5、ステータ40及びロータ50は、超音波モータ100を構成している。
また、超音波モータ100は、搭載される機器の駆動部分に配置される。そして、出力コイル4は、超音波モータ100から離れて配置され、誤差増幅器1、比較器2及びD級スイッチング段3等と共に1つの回路基板に収められてケース等で防護された状態で機器に搭載されている。このため、電路8bは、少なくとも一部が搭載される機器の中で露出して配置されている。
【0021】
また、出力コイル4と圧電素子5の間の電路8bの途中の接続部8b1から電路8cが分岐して誤差増幅器1に接続しており、誤差増幅器1には、圧電素子5を駆動する電圧信号である出力電圧信号がフィードバックされるようになっている。
【0022】
また、電路8cの途中から電路8dが分岐してCPU30に接続している。そして、電路8dの途中には、検知装置7が設けられている。検知装置7は、誤差増幅器1にフィードバックされる出力電圧信号から低周波成分を除去するハイパスフィルタ(HPF)回路7aと、低周波成分を除去した電圧信号の振幅の最大値(つまり、電圧信号の出力電圧)を検出するADコンバータ等の振幅検知装置7bとを有し、検出した振幅の最大値(出力電圧)をCPU30に送信する。さらに、検知装置7は、HPF回路7aの上流に、電圧検出器7cを有している。電圧検出器7cは、電路8dの電圧を検出することで電路8dを流れる電流の有無を検出し検出結果をCPU30に送る。
ここで、CPU30は、異常判定装置を構成している。
【0023】
なお、HPF回路7aは、例えば、HPF回路7aに入力する電圧信号及びHPF回路7aから出力する電圧信号に直列するキャパシタと、キャパシタの下流で入力する電圧信号に並列する抵抗器とから構成される。そして、HPF回路7aでは、キャパシタの電気容量値をC、抵抗器の抵抗値をRとすると、カットオフ周波数が、1/(2πR)となる。HPF回路7aは、カットオフ周波数より低い周波数の電圧信号に対しては、通過を制限又は遮断する。そして、本実施の形態1のHPF回路7aは、そのカットオフ周波数が第一所定周波数より高く、第二所定周波数より低くなっており、第一所定周波数を制限又は遮断し、第二所定周波数を通過させる。
【0024】
また、電路8c及び8d、並びに検知装置7は、超音波モータ100から離れて配置され、誤差増幅器1、比較器2、D級スイッチング段3及び出力コイル4等と共に1つの回路基板に収められてケース等で防護されている。このため、電路8bは、接続部8b1から圧電素子5の間で露出して配置されている。
【0025】
次に、この発明の実施の形態1に係る超音波モータの駆動装置101の動作を説明する。
図1を参照すると、CPU30は、超音波モータ100を駆動する指令を受けると、交流発振器10を用いて基準電圧・基準周波数での交流電圧信号(本実施の形態1では基準電圧10V[ボルト]、基準周波数80kHz[キロヘルツ]とする)を駆動装置101に入力し、同時に、三角波発生器20には、交流電圧信号より大幅に高い所定の周波数(本実施の形態1では800kHzとする)の搬送波電圧信号を発生させる。
【0026】
交流発振器10が発生した交流電圧信号は、誤差増幅器1において、後述するようにフィードバックされる出力電圧信号との差が増幅され、出力電圧信号を安定化させるように変換されて比較器2に送られる。なお、交流発振器10の交流電圧信号から変換された電圧信号は、正弦波から構成されており、この正弦波を駆動波と呼び、変換後の電圧信号を駆動波電圧信号と呼ぶこととする。
また、比較器2には三角波発生器20が発生した搬送波電圧信号が送られ、比較器2は、この搬送波電圧信号と駆動波電圧信号とを比較し、駆動波電圧信号の振幅を振幅が一定のパルスの幅に変換(変調)して、パルス電圧信号を生成する。
【0027】
ここで、図2を参照すると、各電圧信号の波形が、縦軸を電圧とし横軸を時間とした座標上に示されている。交流電圧信号の振幅をAとし周波数をfとすると、交流電圧信号を変換した駆動波電圧信号Sは、振幅A及び周波数fを有している。また、搬送波電圧信号Sは、振幅A及び周波数fを有している。さらに、比較器2(図1参照)において搬送波電圧信号Sを用いて駆動波電圧信号Sを変調したパルス電圧信号Sは、振幅Aを有し、搬送波電圧信号Sと同じ周波数fを有している。
【0028】
図1及び図2をあわせて参照すると、比較器2が生成したパルス電圧信号Sに対して、デッドタイム生成回路3a1は、ハイサイドMOSFET3b1をON状態にするためのパルス(電圧が最大のパルスP)とローサイドMOSFET3b2をON状態にするためのパルス(電圧が最小のパルスP)との間にデッドタイムを生成する。
【0029】
また、レベルシフタ3a2は、デッドタイムが設定されたパルス電圧信号Sを、ハイサイドMOSFET3b1のソース電位、つまり、ハイサイドMOSFET3b1とローサイドMOSFET3b2との間の点Fでの電位Vを基準に振幅する電圧信号に電位変換する。さらに、ゲートドライバ3a3は、電位変換されたパルス電圧信号Sに対して、パルス電圧信号Sにおいて最大電圧を有するパルスPが、ハイサイドMOSFET3b1をON状態にするのに必要な電圧Vを有するように昇圧させる変換をする。このとき、パルス電圧信号Sは、図3の状態(3A)に示すハイサイド用パルス電圧信号Sに変換される。そして、ハイサイドMOSFET3b1は、電圧Vの電圧が印加されている間ON状態となり、電圧V未満の電圧が印加されているときOFF状態となる。さらに、ON状態のハイサイドMOSFET3b1は、ドレインからソースに電流を流し、それに伴い、電源電圧VccからハイサイドMOSFET3b1を通って出力コイル4に向かう方向に電流が流れる。このとき、出力コイル4には、最大電圧を電源電圧Vccとするパルスからなる電圧パルスPVHが送られる。
【0030】
また、ゲートドライバ3a4は、デッドタイムが設定されたパルス電圧信号Sに対して、パルス電圧信号Sにおいて最小電圧(電圧=0)を有するパルスPが、ローサイドMOSFET3b2をON状態にするのに必要な電圧V(V=V−V)を有するように昇圧させる変換をする。このとき、パルス電圧信号Sは、図3の状態(3B)に示すローサイド用パルス電圧信号Sに変換される。そして、ローサイドMOSFET3b2は、電圧Vの電圧が印加されている間ON状態となり、電圧V未満の電圧が印加されているときOFF状態となる。さらに、ON状態のローサイドMOSFET3b2は、ドレインからソースに電流を流し、それに伴い、出力コイル4からローサイドMOSFET3b2を通って電源電圧−Vccに向かう方向に電流が流れる。このとき、出力コイル4には、最小電圧を電圧−Vccとするパルスからなる電圧パルスPVLが送られる。
【0031】
よって、LPF回路6の出力コイル4には、電圧パルスPVLと電圧パルスPVHとを交互に合成したパルス波からなる合成電圧信号Sが入力する。このとき、合成電圧信号Sの周波数は、駆動波電圧信号Sの駆動波周波数f成分と搬送波電圧信号Sの搬送波周波数f成分とを含んだものとなっている。
【0032】
LPF回路6は、出力コイル4から入力する合成電圧信号Sに対して、高周波成分である搬送波電圧信号Sの搬送波周波数f成分の大部分を除去して出力電圧信号Sを生成する。つまり、LPF回路6は、合成電圧信号Sに対して、高周波成分に対するインピーダンスが大きい出力コイル4が、高周波成分を減衰し、さらに、高周波成分に対するインピーダンスが非常に小さい圧電素子5が、高周波成分を通過させてグランド(接地点)に流すことによって、高周波成分を除去する。よって、出力電圧信号Sは、駆動波周波数f成分を主に有し且つ電圧が正負に交互に振幅する正弦波からなる信号を形成し、圧電素子5は、出力電圧信号Sにより駆動される。従って、出力電圧信号Sは、圧電素子5を駆動する電圧信号の周波数(駆動波周波数f)より高い周波数成分が合成電圧信号Sから除去されたものとなっている。
【0033】
そして、正弦波からなる出力電圧信号Sが、圧電素子5に駆動波周波数fで正負の電圧を交互に印加するため、圧電素子5は、相対する方向に交互に歪んで超音波振動を発生し、それにより、ステータ40の爪部40aにロータ50を引っ掻くように運動させてロータ50を回転させる。
また、出力電圧信号Sの一部は、電路8cを通って誤差増幅器1に送られ、誤差増幅器1は、出力電圧信号Sと交流電圧信号との誤差を増幅し、増幅した誤差に基づき、出力電圧信号Sを安定化させるように交流電圧信号を駆動波電圧信号S(図2参照)に変換する。
【0034】
また、電路8cの出力電圧信号Sの一部は、電路8dを通って検知装置7に送られ、検知装置7のHPF回路7aによって、低周波成分が除去される。
出力コイル4と圧電素子5との間の電路8bに異常がない場合、HPF回路7aには高周波成分が除去された正弦波からなる出力電圧信号Sが送られ、さらにHPF回路7aによって低周波成分の大部分、つまり正弦波を構成する駆動波周波数f成分の大部分が除去される。このため、HPF回路7aでの処理後の出力電圧信号(処理後出力電圧信号SVCと呼ぶ)は、高周波成分及び低周波成分のいずれもほとんど含まず、ほぼ一定の電圧(0V)を示す電圧信号となり、図4の状態(4A)のようになる。なお、図4は、縦軸が電圧を示し横軸が時間を示す座標を有している。
【0035】
さらに、図1及び図4をあわせて参照すると、検知装置7の振幅検知装置7bは、処理後出力電圧信号SVCにおける電圧の振幅の最大値(振幅の最大値=0、つまり出力電圧=0)を検出し、CPU30に検出結果を送る。CPU30は、電圧信号の出力電圧が検出されないことから、電路8bに異常がないと判定する。
【0036】
また、接続部8b1から圧電素子5までの間で露出した配線によって構成される電路8bは断線する可能性がある。
電路8bにおいて接続部8b1と圧電素子5との間で断線が発生した場合、LPF回路6は、圧電素子5が高周波成分を通過させてグランドに流すことができないため、ローパスフィルタを形成できない。このため、合成電圧信号Sが、高周波成分を多く含んだ状態のパルス波からなる電圧信号S’となって、電路8c及び8dを介してHPF回路7aに送られる。そして、HPF回路7aでの処理後の電圧信号S’は、低周波成分(駆動波周波数f成分)の大部分が除去されているが、高周波成分(搬送波周波数f成分)が多く残存している電圧信号(処理後電圧信号SCC’と呼ぶ)となり、図4の状態(4B)のようになる。さらに、振幅検知装置7bは、処理後電圧信号SCC’における振幅の最大値(出力電圧)を検出し、CPU30に検出結果を送る。CPU30は、処理後電圧信号SCC’が出力電圧を有することから、異常が発生したと判定し、交流発振器10及び三角波発生器20、及びD級スイッチング段3を停止する。
【0037】
また、圧電素子5に異常が発生した場合も、LPF回路6はローパスフィルタとして十分に機能することができず、検知装置7には多少減衰されているが高周波成分を多く含んだ電圧信号S’が送られる。このため、上述と同様にして、振幅検知装置7bは処理後電圧信号SCC’に出力電圧を検出し、CPU30は異常が発生したと判定する。
よって、CPU30は、検知装置7の振幅検知装置7bによって処理後電圧信号に振幅の最大値(出力電圧)が検出される場合に、接続部8b1と圧電素子5との間の電路8b又は圧電素子5に異常が発生したと判定する。
なお、接続部8b1と、出力コイル4の間に断線が発生した時は、検知装置7には如何なる信号も送られない。この時、CPU30は、接続部8b1と出力コイル4の間に断線が生じたと判断する。
【0038】
上述のように、この発明の実施の形態1に係る超音波モータの駆動装置101は、圧電素子5と、交流発振器10及び圧電素子5に接続され圧電素子5に送る電圧信号を周期的に切り換えるD級スイッチング段3と、D級スイッチング段3及び圧電素子5の間に接続される出力コイル4と、出力コイル4及び圧電素子5の間に接続され出力コイル4及び圧電素子5の間の電圧信号を検出する検知装置7と、検知装置7が検出した電圧信号の周波数が圧電素子5を駆動する電圧信号の周波数より高い場合に、圧電素子5の異常、及び/もしくは出力コイル4と圧電素子5との間の断線を判定するCPU30とを備える。
【0039】
このとき、出力コイル4は電圧信号の高周波成分を減衰し、容量性をもつ圧電素子5は電圧信号の高周波成分を通過させてグランド等に逃がしやすい特性を有している。このため、電路8b及び圧電素子5に異常がない場合、高周波成分の大部分が除去された電圧信号が圧電素子5に電圧を印加すると共に検知装置7に入力し、検知装置7は、高周波成分をほとんど検出しない。一方、電路8b又は圧電素子5に異常がある場合、除去される高周波成分が減少するため、検知装置7は電圧信号から高周波成分を検出する。よって、CPU30は、検知装置7が検出した電圧信号に高周波成分が含まれるか否かで、電路8b又は圧電素子5での異常の有無を判定する。上述のようにして異常の有無の判定する超音波モータの駆動装置101は、圧電素子5に電圧を印加するための回路の途中に、異常の判定のために電力を消費する電気抵抗等の要素を設ける必要がないため、圧電素子5に供給されるべき電力の損失を低減することを可能にする。
【0040】
また、超音波モータの駆動装置101において、出力コイル4及び圧電素子5は、出力コイル4に入力する電圧信号のうちカットオフ周波数以下の周波数の電圧信号を通過させるLPF回路6を構成し、LPF回路6のカットオフ周波数は、圧電素子5を駆動する電圧信号の周波数以上である。そして、検知装置7は、LPF回路6のカットオフ周波数より高い周波数をもつ電圧信号を検出する。さらに、検知装置7は、HPF回路7aを有し、HPF回路7aは、圧電素子5に入力する電圧信号のうちHPF回路7aのカットオフ周波数以上の周波数をもつ電圧信号を通過させ、HPF回路7aのカットオフ周波数は、LPF回路6のカットオフ周波数より高い。このとき、検知装置7はHPF回路7aを用いて電圧信号の低周波成分を除去することによって、LPF回路6が十分に機能しなくなる異常が発生した場合には、LPF回路6で除去されなかった高周波の電圧信号を検出し、LPF回路6が十分に機能して高周波の電圧信号が除去された場合には、電圧信号に出力電圧を検出しない。
【0041】
また、超音波モータの駆動装置101は、交流発振器10による交流電圧信号と、交流電圧信号より高い周波数をもつ三角波状の搬送波電圧信号とが入力される比較器2をさらに備える。そして、比較器2は、交流電圧信号及び搬送波電圧信号からパルス波形のパルス電圧信号を生成してD級スイッチング段3に送る。D級スイッチング段3は、出力コイル4に流れる電流をオンまたはオフするハイサイドMOSFET3b1及びローサイドMOSFET3b2を有し、上記パルス電圧信号によりハイサイドMOSFET3b1及びローサイドMOSFET3b2をオンまたはオフさせる。上述のような比較器2及びD級スイッチング段3を有することによって、駆動装置101は、D級増幅器の機能を有することができる。
【0042】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る超音波モータの駆動装置は、CPU30が、検知装置7の振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)の大きさによって、異常の発生箇所を特定するようにしたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図1を参照すると、圧電素子5に欠損等の異常が発生すると、キャパシタと同様の容量性を有する圧電素子5は、その電気容量値を減少させ、高周波成分を有する電圧信号を通過させる能力が減少する。このため、LPF回路6は、その高周波成分を除去する能力が低下する。
【0044】
ここで、図5を参照すると、LPF回路6(図1参照)が通過させることができる電圧信号の量を示す電圧GAIN(単位をdBとする)と電圧信号の周波数(単位をHzとする)との関係、つまりLPF回路6の特性が示されており、縦軸を電圧GAINとし、横軸を周波数としている。
なお、電圧GAINは、常用対数を使用して以下のように示される。
【0045】
電圧GAIN=20log(Vout/Vin)
Vout:LPF回路6からの出力電圧
Vin:LPF回路6への入力電圧
【0046】
LPF回路6(図1参照)は、圧電素子5(図1参照)に異常がなく正常な場合、折線実線の特性線LPF1でその特性が示される。つまり、LPF回路6は、各周波数の電圧信号について、各周波数に対応する特性線LPF1上の電圧GAIN以下の電圧GAINとなる電圧信号を、通過(出力)させることができる。特性線LPF1は、電圧信号の周波数が0以上、カットオフ周波数Cf1以下の領域では、電圧GAINが一定の値0dBをとって水平に延び、カットオフ周波数Cf1より周波数が高い領域では、周波数の増加に伴って電圧GAINを比例的に減少させる直線として延び、カットオフ周波数Cf1で屈曲している。
【0047】
そして、LPF回路6(図1参照)は、カットオフ周波数Cf1以下の周波数の電圧信号に対しては、電圧GAINが0dBとなりVoutとVinとが同一になるため、全ての電圧信号を通過させることができる。
また、LPF回路6は、カットオフ周波数Cf1より高い周波数の電圧信号に対しては、電圧信号の周波数が増加するに従い電圧GAINを低下させるため、通過させることができる電圧信号の出力電圧は、電圧信号の周波数が増加するに従い小さくなるように減衰する。
【0048】
また、圧電素子5(図1参照)に異常が発生してその電気容量値が減少した場合、LPF回路6(図1参照)の特性線は、一点鎖線で示される特性線LPF2となる。特性線LPF2は、特性線LPF1を横軸正方向(周波数増加方向)に平行にスライドさせたものであり、折点のカットオフ周波数Cf2がCf1より高くなっている。
このため、LPF回路6は、カットオフ周波数Cf2以下の周波数の電圧信号を全て通過させ、カットオフ周波数Cf2より高い周波数の電圧信号に対しては、電圧信号の周波数が増加するに従い、通過させることができる電圧信号の出力電圧を減衰させる。
【0049】
図1及び図5をあわせて参照すると、圧電素子5に異常がない場合、出力コイル4に送られる合成電圧信号Sに含まれる駆動波周波数f成分の電圧信号については、全ての電圧信号SC1(図5で実線表示)がLPF回路6を通過し出力される。合成電圧信号Sに含まれる搬送波周波数f成分の電圧信号については、LPF回路6によって電圧GAINが値Gf(dB)より大きくなるものが除去され、電圧GAIN値Gf(dB)以下となる電圧信号SC2(図5で実線表示)がLPF回路6を通過し出力される。
【0050】
このとき、検知装置7に送られる電圧信号は、駆動波周波数f成分を合成電圧信号Sと同様に含み且つ搬送波周波数f成分をほとんど含まない出力電圧信号Sとなる。さらに、検知装置7のHPF回路7aが出力電圧信号Sから低周波成分を除去すると、除去された電圧信号は、駆動波周波数f成分及び搬送波周波数f成分をほとんど含まないものとなり、図4の状態(4A)のようになる。そして、HPF回路7aでの処理後の電圧信号から振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)もほぼ0となる。
【0051】
また、圧電素子5に異常が発生してその電気容量値が減少した場合、合成電圧信号Sに含まれる駆動波周波数f成分の電圧信号については、全ての電圧信号SC1’(図5で一点鎖線表示)がLPF回路6を通過し出力される。合成電圧信号Sに含まれる搬送波周波数f成分の電圧信号については、LPF回路6によって電圧GAINが値Gf’(dB)より大きくなるものが除去され、電圧GAIN値Gf’(dB)以下となる電圧信号SC2’(図5で一点鎖線表示)がLPF回路6を通過し出力される。
【0052】
このとき、検知装置7に送られる電圧信号は、駆動波周波数f成分を合成電圧信号Sと同様に含み、且つ搬送波周波数f成分を、電圧GAINが値Gf(dB)の場合の数倍の量を含む。さらに、検知装置7のHPF回路7aが送られた電圧信号から低周波成分を除去すると、除去された電圧信号は、駆動波周波数f成分の電圧信号SC1’をほとんど含まないが、搬送波周波数f成分の電圧信号SC2’を含むものとなる。そして、HPF回路7aでの処理後の電圧信号は、電路8bの断線時を示す図4の状態(4B)から振幅が大きい高周波成分を除去したものとなる。このとき、HPF回路7aでの処理後の電圧信号から振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)は、電圧Vf’となる。
【0053】
また、接続部8b1と圧電素子5との間の電路8bで断線が発生した場合、検知装置7のHPF回路7aには合成電圧信号Sが高周波成分の除去を多少しか受けずに送られ、振幅検知装置7bには、上記合成電圧信号Sから低周波成分を除去した電圧信号が送られ、図4の状態(4B)と同様のものとなる。このとき、振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)は、電圧Vf’より大きい電圧Vfとなる。
【0054】
また、電圧Vf’は、欠損による圧電素子5の電気容量値の減少量によって変動し、電気容量値が減少するほど大きくなる。このため、電圧Vf’が取り得る上限値Vf2H’及び下限値Vf2L’を算出することができる。なお、上限値Vf2H’は、圧電素子5の電気容量値が0になる場合であり、下限値Vf2L’は、圧電素子5の電気容量値が減少していない100%である場合である。そして、圧電素子5の電気容量値が0の場合、LPF回路6の特性は、接続部8b1と圧電素子5との間の電路8bの断線時と同等となるため、上限値Vf2H’は電圧Vfと同等となる。
ここで、上限値Vf2H’は第一閾値を構成し、下限値Vf2L’は第二閾値を構成している。
【0055】
よって、振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)が上限値Vf2H’以上の場合、CPU30は、接続部8b1と圧電素子5との間の電路8bで断線つまり異常が発生したと判定する。また、CPU30は、振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)が下限値Vf2L’より大きく、上限値Vf2H’未満の場合、圧電素子5に損傷つまり異常が発生したと判定する。さらに、振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)が下限値Vf2L’以下の場合、CPU30は、圧電素子5及び電路8bに異常がないと判定する。
【0056】
このように、CPU30は、振幅検知装置7bが検出する振幅の最大値(出力電圧)から、圧電素子5及び電路8bのいずれで異常が発生しているかを判定することができる。
また、この発明の実施の形態2に係る超音波モータの駆動装置のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
上述のように、実施の形態2における超音波モータの駆動装置によれば、上記実施の形態1の超音波モータの駆動装置101と同様な効果が得られる。
また、CPU30は、検知装置7のHPF回路7aを通過後の電圧信号が上限値Vf2H’以上の場合、出力コイル4及び圧電素子5の間の電路8bに断線があると判定し、検知装置7のHPF回路7aを通過後の電圧信号が下限値Vf2L’より大きく上限値Vf2H’未満の場合、圧電素子5の容量に欠損があると判定し、検知装置7のHPF回路7aを通過後の電圧信号が下限値Vf2L’以下の場合、出力コイル4及び圧電素子5の間の電路8b、及び圧電素子5に異常がないと判定する。これにより、電路8b及び圧電素子5のいずれで異常が発生したかを特定することが可能になる。
【0058】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301は、実施の形態1に係る超音波モータの駆動装置101がD級増幅器を構成していたものを、E級増幅器を構成するようにしたものである。
図6を参照すると、超音波モータの駆動装置301は、実施の形態1における超音波モータの駆動装置101と同様にして、交流発振器10、三角波発生器20、CPU30、誤差増幅器1、及び比較器2を有している。さらに、超音波モータの駆動装置301は、比較器2が生成した電圧信号を増幅して内部のスイッチング素子を駆動するE級スイッチング段33と、E級スイッチング段33に接続された出力コイル4と、出力コイル4に直列に接続されると共に接地された圧電素子5とを有している。
【0059】
E級スイッチング段33は、比較器2に接続されたゲートドライバ33aと、ゲートドライバ33aにゲートが接続されたスイッチング素子であるMOSFET33bと、MOSFET33bのドレインに接続されたチョークコイル33cとを有している。MOSFET33bのソースは負電圧を有する直流電源電圧−Vccに接続され、チョークコイル33cにおけるMOSFET33bと反対側の端部は、正電圧を有する直流電源電圧Vccに接続されている。
さらに、E級スイッチング段33は、シャントキャパシタ33dを有している。シャントキャパシタ33dは、チョークコイル33cに対してMOSFET33bと並列になっており、一方の電極が、チョークコイル33cとMOSFET33bとの間の電路38aに、電路38bを介して接続され、他方の電極が接地されている。
【0060】
また、電路38bには、電路8aを介して出力コイル4が接続されている。互いに直列に接続されて接地されている出力コイル4及び圧電素子5は、実施の形態1と同様に、LPF回路6を構成している。
【0061】
さらに、出力コイル4と圧電素子5との間の電路8bの途中の接続部8b1から電路8cが分岐して誤差増幅器1に接続している。そして、電路8cの途中から分岐してCPU30に接続する電路8dの途中には、検知装置7が設けられている。検知装置7は、実施の形態1と同様に、HPF回路7aと、振幅検知装置7bと、電圧検出器7cとを有している。
また、この発明の実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301のその他の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
また、この発明の実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301は、以下のように動作する。
図6を参照すると、CPU30は、超音波モータ100を駆動する指令を受けると、交流発振器10を用いて交流電圧信号を誤差増幅器1に入力し、同時に、三角波発生器20に搬送波電圧信号を発生させ、比較器2へ入力させる。誤差増幅器1は、交流電圧信号を駆動波電圧信号に変換して比較器2に送る。
【0063】
比較器2は、三角波発生器20から送られた搬送波電圧信号と誤差増幅器1から送られた駆動波電圧信号とを比較して生成したパルス電圧信号をゲートドライバ33aに送る。ゲートドライバ33aは、受け取ったパルス電圧信号に対して、その最大電圧がMOSFET33bをON状態にするのに必要な電圧Vを有するように昇圧させ、MOSFET33bに入力する。
そして、MOSFET33bは、電圧Vの電圧が印加されている間ON状態となり、電圧V未満の電圧が印加されている間OFF状態となり、パルス電圧信号の周波数でON状態及びOFF状態を交互に繰り返す。
【0064】
MOSFET33bがOFF状態の時、MOSFET33bには電流が流れずに、電源電圧Vccからチョークコイル33cを通ってシャントキャパシタ33d及び出力コイル4に電流が流れる。このとき、シャントキャパシタ33dは、流れ込む電流の電荷を蓄積し、また、出力コイル4を通って電流が流れ込むことで、キャパシタと同様の構成を有する圧電素子5は、電流の電荷を蓄積する。これにより、LPF回路6には、最大電圧を電圧Vccとするパルスからなる電圧パルスPVHが送られる。
【0065】
また、MOSFET33bがON状態の時、電源電圧Vccからチョークコイル33cを通過した後、抵抗が非常に小さいMOSFET33bを通過し、電源電圧−Vccに電流が流れる。このとき、シャントキャパシタ33dは、蓄積していた電荷を放電し、シャントキャパシタ33dからMOSFET33bを通って電源電圧−Vccに向かう電流を発生させる。また、キャパシタと同様の構成を有する圧電素子5は、蓄積していた電荷を放電し、圧電素子5から出力コイル4及びMOSFET33bを通って電源電圧−Vccに向かう電流を発生させる。これにより、LPF回路6には、最小電圧を電圧−Vccとするパルスからなる電圧パルスPVLが送られる。
【0066】
よって、LPF回路6には、電圧パルスPVLと電圧パルスPVHとを交互に合成したパルス波からなる合成電圧信号Sが入力する。このとき、合成電圧信号Sの周波数は、駆動波電圧信号の駆動波周波数成分と搬送波電圧信号の搬送波周波数成分とを含んだものとなっている。
さらに、LPF回路6は、入力する合成電圧信号Sから高周波成分(搬送波周波数成分)を除去して出力電圧信号を生成する。
駆動波周波数成分を主に有し正弦波からなる出力電圧信号は、圧電素子5に駆動波周波数で電圧を印加し、それにより、圧電素子5は、相対する方向に交互に歪みを発生して超音波振動を発生し、ステータ40を介してロータ50を回転させる。
【0067】
また、検知装置7では、HPF回路7aは、LPF回路6によって搬送波周波数成分の大部分が除去された出力電圧信号から、低周波成分を除去し、振幅検知装置7bは、HPF回路7aでの処理後の電圧信号における振幅の最大値(出力電圧)を検出し、CPU30に検出結果を送る。
【0068】
また、駆動装置301でも、電路8b又は圧電素子5に異常が発生した場合、LPF回路6は十分に機能することができず、検知装置7には、高周波成分である搬送波周波数成分を多く含んだ電圧信号が送られる。
そして、CPU30は、実施の形態1と同様にして、検知装置7の振幅検知装置7bが検出する電圧信号の振幅の最大値(出力電圧)から、電路8b及び圧電素子5における異常の有無を判定する。
また、この発明の実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
上述のように、E級増幅器を構成する実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301においても、上記実施の形態1の超音波モータの駆動装置101と同様な効果が得られる。
また、実施の形態3に係る超音波モータの駆動装置301は、実施の形態2と同様にして、CPU30が、検知装置7の振幅検知装置7bが検出する電圧信号の振幅の最大値(出力電圧)の大きさによって異常の発生箇所を特定するようにしてもよい。
【0070】
また、実施の形態1〜3の超音波モータの駆動装置において、誤差増幅器1及びコンパレータとしての比較器2はそれぞれ、部品であっても回路を構成していてもよい。
また、実施の形態1〜3の超音波モータの駆動装置において、LPF回路6及びHPF回路7aは、1つのコイル若しくは抵抗と、1つのキャパシタ(圧電素子5)とを有する構成であったが、これに限定されるものでなく、いずれも2つ以上あってもよい。
【0071】
また、実施の形態1〜3の超音波モータの駆動装置において、スイッチング素子としてMOSFETを使用していたがこれに限定されるものでなく、バイポーラトランジスタ、IGBTなどのスイッチング素子であってもよい。
また、実施の形態1の超音波モータの駆動装置101において、検知装置7の振幅検知装置7bが検出する電圧信号の振幅の最大値(出力電圧)が0となる場合に、電路8b及び圧電素子5に異常がないとしていたが、これに限定されるものでない。LPF回路6及びHPF回路7aのカットオフ周波数及びその特性線の状態によっては、電路8b又は圧電素子5に異常がない場合でも、振幅検知装置7bが電圧信号に出力電圧を検出することがあるが、実施の形態2のように出力電圧の閾値を設定することによって、電路8b及び圧電素子5の異常を検出してもよい。
【符号の説明】
【0072】
2 比較器、3 D級スイッチング段(スイッチング装置)、3b1 ハイサイドMOSFET(スイッチング素子)、3b2 ローサイドMOSFET(スイッチング素子)、4 出力コイル、5 圧電素子、6 LPF回路(ローパスフィルタ回路)、7 検知装置、7a HPF回路(ハイパスフィルタ回路)、8a,8b,8c,8d 電路、10 交流発振器、20 三角波発生器、30 CPU(異常判定装置)、33 E級スイッチング段(スイッチング装置)、33b MOSFET(スイッチング素子)、33c チョークコイル、33d シャントキャパシタ、100 超音波モータ、101,301 駆動装置(超音波モータの駆動装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータの駆動装置において、
圧電素子と、
交流発振器及び前記圧電素子に接続され前記圧電素子に送る電圧信号を周期的に切り換えるスイッチング装置と、
前記スイッチング装置及び前記圧電素子の間に接続される出力コイルと、
前記出力コイル及び前記圧電素子の間に接続され前記出力コイル及び前記圧電素子の間の電圧信号を検出する検知装置と、
前記検知装置が検出した電圧信号の周波数が前記圧電素子を駆動する電圧信号の周波数より高い場合に、前記圧電素子の異常、及び/もしくは前記出力コイルと前記圧電素子との間の断線を判定する異常判定装置とを備える超音波モータの駆動装置。
【請求項2】
前記出力コイル及び前記圧電素子は、前記出力コイルに入力する電圧信号のうち第一所定周波数以下の周波数の電圧信号を通過させるローパスフィルタ回路を構成し、
前記第一所定周波数は、前記圧電素子を駆動する電圧信号の周波数以上であり、
前記検知装置は、前記第一所定周波数より高い周波数をもつ電圧信号を検出する請求項1に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項3】
前記検知装置は、
前記圧電素子に入力する電圧信号のうち第二所定周波数以上の周波数をもつ電圧信号を通過させるハイパスフィルタ回路を有し、
前記第二所定周波数は、前記第一所定周波数より高い請求項2に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項4】
前記異常判定装置は、
前記検知装置の前記ハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が第一閾値以上の場合、前記出力コイル及び前記圧電素子の間の電路に断線があると判定し、
前記検知装置の前記ハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が第二閾値より大きく前記第一閾値未満の場合、前記圧電素子の容量に欠損があると判定し、
前記検知装置の前記ハイパスフィルタ回路を通過後の電圧信号が前記第二閾値以下の場合、前記出力コイル及び前記圧電素子の間の電路、及び前記圧電素子に異常がないと判定する請求項3に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項5】
前記交流発振器による交流電圧信号と、前記交流電圧信号より高い周波数をもつ三角波状の搬送波電圧信号とが入力される比較器をさらに備え、
前記比較器は、前記交流電圧信号及び前記搬送波電圧信号からパルス波形のパルス電圧信号を生成して前記スイッチング装置に送り、
前記スイッチング装置は、
前記出力コイルに流れる電流をオンまたはオフするスイッチング素子を有し、
前記パルス電圧信号により前記スイッチング素子をオンまたはオフさせる請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波モータの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74782(P2013−74782A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214707(P2011−214707)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】