説明

超音波変調光計測装置および超音波変調光計測方法

【課題】通常の半導体レーザ等を用い、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置を的確に特定することが可能な超音波変調光計測装置を提供する。
【解決手段】超音波変調光計測装置1は、生体組織Bの被検部Baにおいて生体表面Bsからの所定の深さzの位置Pzで、超音波Swa、Swbを交差するようにそれぞれ照射する複数の超音波照射手段2a、2bと、被検部Baにレーザ光Lbを照射するレーザ光照射手段3と、レーザ光が当該位置Pzで反射する等して得られたスペックルパターンを検出する検出手段4とを備え、各超音波照射手段2a、2bから照射される超音波Swa、Swbが互いに異なる周波数fa、fbとされており、各超音波Swa、Swbが交差されることにより形成される合成波の干渉縞の当該位置Pzにおける振幅Amが、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれスペックルパターンを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波変調光計測装置および超音波変調光計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体組織を低侵襲計測できる手法として、生体光計測装置の開発が進められている。このような生体光計測装置では、計測された結果から生体組織の形態情報や生理情報を検出することができ、血液中の酸素濃度等を計測することができる可能性を有している。しかし、生体組織が光散乱媒体であるため、生体組織に測定光を照射しても、測定光はせいぜい皮下数mmまでしか直進できず、計測し得る範囲が、生体の表面近傍に限られてしまうという問題があった。
【0003】
そこで、近年、上記のような光計測技術と、生体内のより深い位置まで侵入することができる超音波とを組み合わせる超音波変調光計測の技術の開発が進められている(例えば特許文献1、非特許文献1等参照)。
【0004】
超音波を収束させた状態で生体組織に照射すると、測定光を照射した場合とは異なり、超音波は生体組織でさほど散乱されず、直進する状態で伝播することが知られている。そこで、超音波変調光計測の方法では、この超音波の特性を利用して、超音波で生体組織内における部分(以下、被検部という。)を特定する。
【0005】
超音波が照射された生体組織の被検部では粗密状態が形成される。そして、そこに測定光を照射すると、測定光は生体組織で散乱されながら被検部を含む生体組織内に拡がる。そして、その際に、上記のように超音波により形成された被検部の粗密状態が測定光と相互作用して、測定光が変調される。なお、以下、このように変調された測定光を超音波変調光という。
【0006】
そして、この超音波変調光を例えば生体表面に配置した光検出器で計測し、計測された超音波変調光の信号を解析し、その中から変調された成分のみを抽出することで、被検部での生体組織の情報を得ることが可能となる。超音波変調光計測の方法では、このようにして、超音波と測定光とを用いて、生体組織の形態情報や生理情報等を検出するようになっている。
【0007】
ところで、このような超音波変調光計測の方法をさらに発展させた方法として、超音波変調スペックル光計測法が知られている(非特許文献2参照)。レーザ光等の高コヒーレント光を、光を散乱反射する面に対して照射すると、斑点状の模様すなわちスペックルパターンが得られる。
【0008】
超音波変調スペックル光計測法では、この現象を利用して、上記の超音波変調光計測法における測定光としてレーザ光等の高コヒーレント光(以下、単にレーザ光という。)を用い、生体組織の被検部に超音波とレーザ光とを照射して、被検部の生体表面からの任意の深さの位置での反射光を検出して、スペックルパターンを撮影する。
【0009】
この場合、スペックルパターンは、被検部の生体表面からの任意の深さの位置に微小な面(例えば後述する図6(A)、(B)参照)が存在すると仮定した場合の、当該微小面での反射光によりもたらされる。また、当該微小面での反射光ではなく、当該微小面の透過光を検出しても、同様にスペックルパターンを撮影することができる。
【0010】
なお、本明細書では、レーザ光の反射光(或いは透過光)によるスペックルパターンと表現するが、実際には、レーザ光の反射光(或いは透過光)がさらに生体組織内で散乱される等し、その散乱される等した光によるスペックルパターンが検出される。
【0011】
そして、例えば非特許文献2に記載されているスペックルパターンの解析方法では、例えば、An,i,jを、被検部の生体表面からの深さz=0.1×n[mm](nは0以上の整数)における、撮影されたスペックルパターン画像上の座標(i,j)の位置の画素における画素値とし、nごとに、すなわち被検部の生体表面からの深さzごとに、下記の数値Sを算出する。
【0012】
【数1】

【0013】
なお、非特許文献2では、nとして、照射したパルス状の超音波が、生体表面の位置(z=0)を通過する時点をt=0とした場合に、時間t=0.1×n[μs]後に撮影されるスペックルパターンとしているが、生体組織内における超音波の音速をvとすると、被検部の生体表面からの深さzと時間tとはz=v×tで1対1に対応付けられる。そのため、上記のように、深さzで説明しても同じことである。
【0014】
そして、被検部の生体表面からの深さzを変えて(すなわち時間tを変えて)スキャンしながら、深さzごとにそれぞれスペックルパターンを撮影する。そして、上記(1)式に従って深さzにおける数値Sをそれぞれ算出すると、血液等のように光を吸収する物体が存在しない位置、すなわち血管等以外の生体組織の位置では、上記の数値Sはほぼ1になる(同文献の図5(b)参照)。
【0015】
これは、被検部の生体表面からの深さzの位置でのスペックルパターンの各画素の画素値An,i,jと深さzの位置での各画素値A0,i,jとの差異の総和(上記(1)式右辺の分子参照)と、深さzの位置での各画素値A1,i,jと深さzの位置での各画素値A0,i,jとの差異の総和(上記(1)式右辺の分母参照)とがほぼ等しいことを表す。
【0016】
しかし、被検部の生体表面からの深さzが、血液等の光を吸収する物体が存在する位置すなわち血管等の位置になると、上記の数値Sは1より有意に大きな値になる。すなわち、その位置では、深さzの位置での各画素値An,i,jと深さzの位置での各画素値A0,i,jとの差異の総和(上記(1)式右辺の分子参照)が、深さzの位置での各画素値A1,i,jと深さzの位置での各画素値A0,i,jとの差異の総和(上記(1)式右辺の分母参照)よりも有意に大きな値になることを示している。
【0017】
このように、被検部の生体表面からの深さzを変えてスキャンしながら深さzごとにスペックルパターンを撮影し、例えば上記(1)式に従って数値Sを算出する。そして、深さzごとの数値Sの信号波形を解析することで、被検部においてどの深さzの位置に血管等が存在するかが分かる。
【0018】
そして、生体組織における被検部を、例えば深さz方向に直交する方向(すなわち生体表面に平行な方向)に2次元的にスキャンすることで、生体組織内における血管等の位置を3次元的に検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−17375号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Lihong V.Wang, Geng Ku, OPTICS LETTERS, Vol.23, No.12, p.975-977(1998)
【非特許文献2】笹倉祐、外1名,「研究−反射型超音波変調スペックル光計測法−」,生体医工学,社団法人日本生体医工学会,2007年,第45巻,第4号,p.235-241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、上記の非特許文献2に記載の方法では、生体組織の被検部に、例えば周波数5.4[MHz]のパルス状の超音波を収束させた状態で照射している。すなわち、被検部では超音波により1秒間に5.4×10回の振動(主に縦波)が生じている。そして、そこに250[ns]のパルス幅のレーザ光を照射している。
【0022】
すなわち、上記の方法では、パルス状のレーザ光が照射される間に、被検部では、超音波により5.4×10[Hz]×2.5×10−7[s]=1.35回の振動、すなわち1回(すなわち位相が0°〜360°)以上の振動が生じていることになる。
【0023】
そのため、上記のように、被検部の生体表面からの深さzの位置でのスペックルパターンを撮影したとしても、撮影されるスペックルパターンは、深さzで生体組織が一定の振幅の超音波で振動した場合における0°〜360°の各位相ごとのスペックルパターンが平均化されたスペックルパターンになる。また、スペックルパターンの各画素の画素値An,i,jも、各位相ごとの画素値の平均値になる。
【0024】
そのため、上記(1)式に従って数値Sを算出しても、例えば血管等が存在する位置における数値Sと血管等以外の生体組織の位置における数値Sとで、さほど大きな差が現れなくなっていると考えられる。
【0025】
そこで、例えば非特許文献2では、レーザ光照射手段としてフェムト秒のパルス幅でレーザ光を照射できるフェムト秒チタンサファイアレーザを用いること等が提案されているが、フェムト秒チタンサファイアレーザは一般的に高価であり、超音波変調光計測装置のコスト高を招く虞れがある。
【0026】
そのため、超音波変調スペックル光計測法を用いた超音波変調光計測装置では、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等を用い、しかも、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置を的確に特定することができることが望まれる。
【0027】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、通常の半導体レーザ等を用い、しかも、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置を的確に特定することが可能な超音波変調光計測装置および超音波変調光計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記の問題を解決するために、本発明の超音波変調光計測装置は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波が互いに異なる周波数とされており、
前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれ前記スペックルパターンを検出することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の超音波変調光計測装置は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波の位相を変えて、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする。
【0030】
さらに、本発明の超音波変調光計測装置は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波の交差角度を変えて、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の超音波変調光計測方法は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程で前記位置に照射される超音波が互いに異なる周波数とされており、
前記検出工程では、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれ前記スペックルパターンを検出することを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明の超音波変調光計測方法は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程では、前記位置に照射される超音波の位相を変えて、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射し、
前記検査工程では、前記位置に照射される超音波の位相を変えて前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする。
【0033】
さらにまた、本発明の超音波変調光計測方法は、
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程では、前記位置に照射される超音波の交差角度を変えて、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射し、
前記検査工程では、前記位置に照射される超音波の交差角度を変えて前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明のような方式の超音波変調光計測装置および超音波変調光計測方法によれば、被検部の所定の位置に、血液等の光を吸収する物体が存在する場合には、血液等がレーザ光を吸収するため、レーザ光の反射光や透過光の強度が弱まる。そのため、当該位置で交差するように照射された超音波の合成波の干渉縞の振幅が大きい場合と小さい場合とで、得られるスペックルパターンの情報に現れる変化が比較的小さくなる。
【0035】
また、当該位置に血管以外の光を吸収しにくい生体組織が存在する場合には、各超音波の合成波の干渉縞の振幅が大きい場合と小さい場合とで、得られるスペックルパターンの情報に比較的大きな変化が現れるようになる。
【0036】
そのため、例えば、このようなスペックルパターンの情報に現れる変化の違いを検出することで、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0037】
また、本発明のような方式の超音波変調光計測装置では、レーザ光照射手段として、フェムト秒チタンサファイアレーザ等の高価で大型な光源を用いる必要がなく、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等を用いて上記の構成を実現することができる。そのため、超音波変調光計測装置を低コストで製造することが可能となる。また、通常、半導体レーザは小型であるため、超音波変調光計測装置をより小型に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】各実施形態に係る超音波変調光計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の超音波変調光計測装置を横から見た場合の図である。
【図3】干渉縞を有する各超音波の合成波を表すグラフである。
【図4】第1の実施形態において被検部の所定の位置に形成される各超音波の合成波に形成された干渉縞を示す図である。
【図5】(A)は図4の拡大図であり、(B)は(A)の状態から所定時間が経過した後の状態を示す図である。
【図6】(A)所定の位置を含み深さ方向に直交する仮想的な微小面上で当該位置の周囲に形成される合成波の干渉縞を説明する図であり、(B)は(A)の状態から所定時間が経過した後の状態を示す図である。
【図7】第2および第3の実施形態において被検部の所定の位置に形成される各超音波の合成波を表すグラフであり、(A)は振幅が大きい場合、(B)は振幅が小さい場合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る超音波変調光計測装置および超音波変調光計測方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0040】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波変調光計測装置の構成を示すブロック図である。超音波変調光計測装置1は、複数の超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3、検出手段4、制御手段5および解析手段6等で構成されている。
【0041】
なお、必要に応じて、例えば制御手段5や解析手段6にメモリやプリンタ等の外部装置が接続される。また、例えば制御手段5と解析手段6とを図示しない1つのコンピュータ上に構成することも可能である。さらに、図1や後述する図2に示す超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3、検出手段4等を一体的に構成することも可能であり、或いはそれらと制御手段5とを一体的に構成することも可能である。
【0042】
また、図1中のδについては、後述する第3の実施形態で説明する。
【0043】
超音波変調光計測装置1では、超音波照射手段2が複数設けられている。なお、以下では、超音波照射手段2が2つ設けられている場合について説明するが、超音波照射手段2を3つ以上設けることも可能であり、同様に説明される。
【0044】
図1に示すように、複数の超音波照射手段2a、2bは、生体組織Bの被検部Baにおいて、生体表面Bsからの所定の深さzの位置Pzで、照射された各々の超音波Swa、Swbが交差するように、超音波Swa、Swbをそれぞれ照射するようになっている。
【0045】
本実施形態では、超音波照射手段2a、2bは、超音波Swa、Swbをそれぞれ照射する超音波振動子21a、21bと、超音波振動子21a、21bをそれぞれ駆動する超音波振動子ドライバ22a、22bと、超音波振動子21a、21bから照射する超音波Swa、Swbの周波数fSW[MHz]や位相θ等をそれぞれ設定するファンクションジェネレータ23a、23bとを備えている。
【0046】
また、本実施形態では、各超音波照射手段2a、2bには、超音波振動子21a、21bから照射された各超音波Swa、Swbを、上記の被検部Baにおける所定の位置Pzで収束させるための収束器24a、24bがそれぞれ設けられている。
【0047】
レーザ光照射手段3は、図1に示すように、被検部Baに、測定光であるレーザ光Lbを照射するようになっている。なお、図1や後述する図2では、レーザ光照射手段3が、各超音波照射手段2a、2bから照射された各超音波Swa、Swbが交差する被検部Baの位置Pzに向けて、測定光であるレーザ光Lbを照射するように構成されている場合が示されている。しかし、レーザ光照射手段3から被検部Baにレーザ光Lbが到達するように照射すれば、生体組織B内でレーザ光Lbが散乱して当該位置Pzに到達する。そのため、必ずしも当該位置Pzに向けてレーザ光Lbを照射するように構成する必要はない。
【0048】
本実施形態では、レーザ光照射手段3は、レーザ光Lbを照射する光源31と、光源31を駆動する光源ドライバ32と、光源31から照射するレーザ光Lbの周波数f[MHz]等を設定するファンクションジェネレータ33とを備えている。
【0049】
本実施形態では、光源31として、フェムト秒チタンサファイアレーザ等の高価で大型な光源ではなく、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等が用いられている。また、本実施形態では、レーザ光照射手段3には、光源31から照射されたレーザ光Lbを、上記の被検部Baにおける所定の位置Pzに集光するための集光レンズ34が設けられている。
【0050】
なお、レーザ光照射手段3から照射したレーザ光Lbは、生体組織B内で拡散するため、集光レンズ34を必ずしも設ける必要はない。しかし、集光レンズ34を用いると、例えば生体表面Bs(図1参照)の近傍(例えば皮下数[mm])の位置の光吸収領域の分布を高空間分解能で検出することが可能となる。そこで、例えば、集光レンズ34をレーザ光照射手段3に着脱可能に取り付けられるように構成することも可能である。
【0051】
また、図1では、レーザ光照射手段3が、2つの超音波照射手段2a、2bの間の位置に設けられるように表現されているが、被検部Baにレーザ光Lbを照射することができる位置であれば、レーザ光照射手段3は任意の位置に設けることが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、2つの超音波照射手段2a、2bからそれぞれ照射される各超音波Swa、Swbや、レーザ光照射手段3から照射されるレーザ光Lbは、いずれも連続波(CW:continuous wave)である場合が想定されているが、例えば前述した非特許文献2のように、いずれもパルス波(PW:pulse wave)とすることも可能である。また、超音波Swa、Swbやレーザ光Lbの一方を連続波とし、他方をパルス波とすることも可能である。
【0053】
さらに、超音波Swa、Swbやレーザ光Lbのいずれか一方或いは両方をパルス波とする場合には、例えば後述する制御手段5からパルス波を照射する超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3にトリガ信号を送信するように構成して、照射されるパルス波の同期をとるように構成することが可能である。
【0054】
連続波として超音波Swやレーザ光Lbを照射する超音波照射手段2やレーザ光照射手段3は、パルス波として超音波Sw等を照射する超音波照射手段2等に比べて一般的に安価である。そのため、連続波として超音波Swやレーザ光Lbを照射する超音波照射手段2やレーザ光照射手段3を用いれば、超音波変調光計測装置1を低コストで製造することが可能となるといった利点がある。
【0055】
検出手段4は、図1に示すように、被検部Baの前記位置Pzでレーザ光Lbが反射された反射光Lrによるスペックルパターンを検出するようになっている。
【0056】
なお、スペックルパターンは、各超音波Swa、Swbが交差する被検部Baの位置Pzに微小面(例えば後述する図6(A)、(B)の微小面M参照)が存在すると仮定した場合の、当該微小面での反射光Lrによってももたらされるが、前述したように、当該微小面の透過光(図示省略)を検出しても、同様にスペックルパターンを撮影することができる。そのため、以下では、反射光Lrを検出してスペックルパターンを撮影する場合について説明するが、透過光を検出して透過光によるスペックルパターンを撮影するように構成することも可能である。
【0057】
また、検出手段4は、例えば図1に示した構成を図中左側から見た図2に示すように、各超音波照射手段2a、2bから照射される超音波Swa、Swbやレーザ光照射手段3から照射されるレーザ光Lbを遮断しない位置に設けられる。
【0058】
検出手段4としては、例えば前述した非特許文献2に記載されているような多素子光検出器としてのCCD(Charge Coupled Device)カメラ等を用いてスペックルパターンを撮影するように構成することが可能である。また、検出手段4として、例えば光電子増倍管(Photomultiplier Tube。フォトマルともいう。)を用いるように構成することも可能である。
【0059】
本実施形態では、検出手段4は、検出したスペックルパターンの情報(すなわち例えば多素子光検出器としてのCCDカメラを用いた場合には前述した各画素の画素値An,i,j)を後述する解析手段6に送信するようになっている。
【0060】
制御手段5は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、専用の制御回路で構成されており、各超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3、検出手段4等の起動や停止、動作等を制御するようになっている。
【0061】
また、制御手段5は、図示しない入力手段を備え、各超音波照射手段2a、2bのファンクションジェネレータ23a、23bに対して、超音波振動子21a、21bから照射する超音波Swa、Swbの周波数fSWや位相θ等をそれぞれ設定したり、レーザ光照射手段3のファンクションジェネレータ33に対して、光源31から照射するレーザ光Lbの周波数f等を設定することができるようになっている。
【0062】
なお、制御手段5は、その他、例えば前述したように超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3からパルス波の超音波Swa、Swbやレーザ光Lbを照射する場合には、パルス波を照射する超音波照射手段2a、2bやレーザ光照射手段3に対してトリガ信号を送信するなど、各手段に対して適宜の制御を行うように構成されている。
【0063】
解析手段6は、コンピュータ等で構成されており、検出手段4が検出し送信してきたスペックルパターンの情報を解析して、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置を特定する等の処理を行うようになっている。この解析手段6における処理については、後で説明する。
【0064】
[本実施形態に特徴的な構成等について]
以下、本実施形態に特徴的な構成等について説明する。また、本実施形態に係る超音波変調光計測装置1および超音波変調光計測方法の作用についてもあわせて説明する。
【0065】
本実施形態に係る超音波変調光計測装置1では、図1に示したように、レーザ光照射手段3から被検部Baに測定光であるレーザ光Lbを照射する(レーザ光照射工程)。そして、上記のように、複数の超音波照射手段2a、2bからそれぞれ超音波Swa、Swbを照射する。そして、生体組織Bの被検部Baにおいて、生体表面Bsからの所定の深さzの位置Pzで、照射された各々の超音波Swa、Swbが交差するように、超音波Swa、Swbをそれぞれ照射するようになっている(超音波照射工程)。
【0066】
その際、本実施形態では、各超音波照射手段2a、2bからそれぞれ照射する各超音波Swa、Swbの周波数fa、fbとして、互いに僅かに異なる周波数になるように設定されるようになっている。
【0067】
いま、各超音波Swa、Swbの周波数をそれぞれfa、fbとし、各超音波Swa、Swbの波形が仮にsin(2πfat)、sin(2πfbt)で表されるとした場合、被検部Baの位置Pzでの各超音波Swa、Swbの合成波は、
sin(2πfat)+sin(2πfbt)
=2cos{2π(fa−fb)t/2}×sin{2π(fa+fb)t/2}…(2)
と表される。
【0068】
そして、上記のように各超音波Swa、Swbの周波数fa、fbが互いに僅かに異なる周波数である場合、図3に破線で示すように、それらの合成波に、ビート周期Tbが1/(fa−fb)[s](ビート周波数はその逆数のfa−fb[Hz])の干渉縞が現れる。
【0069】
このように、本実施形態では、各超音波照射手段2a、2bからそれぞれ互いに僅かに周波数fa、fbが異なる超音波Swa、Swbを、被検部Baの所定の位置Pzで交差するように照射させるように構成することにより、図4に示すように、生体組織Bの被検部Baの所定の位置Pzに形成される各超音波Swa、Swbの合成波に干渉縞を形成するようになっている。
【0070】
なお、図4や後述する図5(A)、(B)、図6(A)、(B)では、各超音波Swa、Swbの干渉縞の振幅Am(図3参照)の大小を濃淡で表しており、黒く表されている部分では振幅Amが小さく、白くなるほど振幅Amが大きいことを表している。また、図4や図5(A)、(B)、図6(A)、(B)では、超音波Swa、Swbが連続波である場合が示されているが、超音波Swa、Swbがパルス波である場合にも、位置Pzでの合成波に干渉縞が現れる。
【0071】
また、超音波は、気体中や液体中では縦波(すなわち波の伝搬方向と振動方向が同一方向)のみであるが、固体中では縦波と横波(すなわち波の伝搬方向と振動方向が直角方向)或いはさらにはねじり波や表面波等を含む波になる。また、本実施形態では、2つの超音波Swa、Swbを交差させるように照射しているため、各超音波Swa、Swbの伝搬方向は同じではない。
【0072】
そのため、実際には、各超音波Swa、Swbの合成波を上記(2)式のように簡単に表すことができないが、以下では、説明を簡単にするために、上記(2)式に基づいて説明する。
【0073】
さらに、各超音波Swa、Swbの周波数fa、fbが互いに近接した値になるほど、それらの合成波の干渉縞のビート周波数fa−fb[Hz]が小さくなり、その逆数であるビート周期Tb(=1/(fa−fb)[s])は長くなる。そして、ビート周期Tbが長くなり緩慢に増減を繰り返す干渉縞の中で、図3に実線で示した合成波自体が、元の超音波Swaの周波数fa(或いは元の超音波Swbの周波数fb)と同様に、MHzオーダで激しく振動する状態になる。
【0074】
なお、図3および後述する図7(A)、(B)において、縦軸は、被検部Baの位置Pzに形成される合成波における伝搬方向の変位を表す。従って、上記の振幅Amは、合成波における伝搬方向の振幅を表している。
【0075】
一方、図3や上記(2)式(右辺の2cos{2π(fa−fb)t/2}の項参照)に示すように、被検部Baの位置Pzにおける各超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amは、時間tに応じて変化する。
【0076】
すなわち、異なる時刻tにおける干渉縞の振幅Amの大小を濃淡で表した図5(A)、(B)の拡大図に示すように、被検部Baの位置Pzでは、時刻tに応じて各超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが変わる。なお、図5(B)は、図5(A)の状態から所定時間が経過した後の状態を示している。
【0077】
また、被検部Baの位置Pzを含み、深さz方向に直交する前述した仮想的な微小面について見た場合、各超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞は、図6(A)に示すように、微小面M上の位置Pzの周囲の部分にも形成される。そして、微小面M上の干渉縞も、図6(B)に示すように、時刻tに応じて変化する。
【0078】
なお、図6(B)は、図6(A)の状態から所定時間が経過した後の状態を示している。また、図6(A)、(B)では、微小面M上の干渉縞が見やすくなるように、微小面Mを大きく表現しているが、実際には、この微小面Mは、被検部Baの位置Pzに収束された各超音波Swa、Swbのフォーカスサイズ程度のごく微小な大きさの面として仮想される。
【0079】
そこで、本実施形態では、上記のように、各超音波照射手段2a、2bからそれぞれ互いに僅かに周波数fa、fbが異なる超音波Swa、Swbを、被検部Baの所定の位置Pzで交差するように照射して、位置Pzで合成波に干渉縞を形成させる。そして、干渉縞の位置Pzにおける干渉縞の振幅Am(図3参照)が異なる振幅になる複数のタイミングで(すなわち複数の異なる時刻tで)、それぞれ検出手段4でスペックルパターンを検出するように構成される(検出工程)。
【0080】
すなわち、本実施形態では、被検部Baの所定の位置Pzからの反射光Lrによるスペックルパターンを、検出手段4でタイミングをずらしてそれぞれ検出することで、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報と、干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報を、それぞれ検出するようになっている。
【0081】
そして、各スペックルパターンには、このように、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合の差のみならず、図6(A)、(B)に示したような微小面Mに照射される合成波の干渉縞の変化も反映される。
【0082】
このように構成すると、以下のような作用効果が得られる。
【0083】
上記の非特許文献2に記載の方法では、生体組織Bの被検部Baに、パルス状の超音波とパルス状のレーザ光を照射しているが、パルス状のレーザ光が被検部Baの位置Pzに照射される間に、当該位置Pzでは、超音波により1周期以上の振動が生じている。そのため、検出されるスペックルパターンの情報は、当該位置Pzにおいて超音波により生じた生体組織や血液等の振動の1周期分以上の平均化されたデータになる。
【0084】
そのため、それらの情報に基づいて上記(1)式に従って数値Sを算出しても、例えば血液が流れる血管等が存在する位置における数値Sと、血管等以外の生体組織の位置における数値Sとで、さほど大きな差が現れなくなると考えられた。
【0085】
一方、本実施形態においても、照射する超音波Swa、Swbやレーザ光Lb(図1等参照)が連続波であってもパルス波であっても、やはり被検部Baの位置Pzに超音波Swa、Swbとレーザ光Lbが照射されて検出されるスペックルパターンの情報は、当該位置Pzにおいて超音波により生じた生体組織や血液等の振動の1周期分以上の平均化されたデータになる。
【0086】
しかし、本実施形態では、上記のように、当該位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報と、干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報とをそれぞれ検出することができる。なお、各スペックルパターンの情報に、図6(A)、(B)に示したような微小面Mに照射される合成波の干渉縞の変化も反映されていることは前述した通りである(以下も同様)。
【0087】
そのため、被検部Baの当該位置Pzにおいて、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞により生体組織や血液等が大きく揺さぶられた場合(すなわち干渉縞の振幅Amが大きい場合)のスペックルパターンの情報と、干渉縞により生体組織や血液等の揺さぶられ方が小さい場合(すなわち干渉縞の振幅Amが小さい場合)のスペックルパターンの情報とを、それぞれ別々に検出することが可能となる。
【0088】
そして、被検部Baの位置Pzにおいて、上記のように、生体組織や血液等の揺さぶられ方が異なる複数のスペックルパターンの情報が得られるため、後述するように、それらを的確に用いることで、生体組織B内において血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となるのである。
【0089】
解析手段6では、上記のようにして検出手段4で複数回検出されたスペックルパターンの情報、すなわち位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合および小さい場合のスペックルパターンの各情報を解析して、生体組織内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置を特定する等の処理を行うようになっている(解析工程)。
【0090】
解析手段6では、例えば、前述した非特許文献2に記載されているスペックルパターンの解析方法を用い、上記(1)式に従って、生体組織Bの被検部Baにおける、生体表面Bsからの所定の深さzの位置Pzでの数値Sを算出するように構成することが可能である。
【0091】
本実施形態では、上記のように、スペックルパターンの情報として、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合の少なくとも2種類のスペックルパターンの情報(すなわち前述した生体組織や血液等の揺さぶられ方が異なる複数のスペックルパターンの情報)が得られる。そのため、所定の深さzの位置Pzでの数値Sとして、各場合に対応して、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sと、干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sとがそれぞれ算出される。
【0092】
そして、各超音波照射手段2a、2bから照射させた各超音波Swa、Swbを交差させる生体表面Bsからの深さzを種々に変えてスキャンし、検出手段4で、被検部Baの各位置Pzについて、それぞれ複数のスペックルパターンの情報が検出される。なお、各超音波Swa、Swbのスキャンは、深さz方向に直交する方向(すなわち生体表面に平行な方向)にも行われる。
【0093】
そして、解析手段6は、検出手段4から位置Pzにおける複数のスペックルパターンの情報が送信されてくるごとに、当該位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sと、干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sとをそれぞれ算出していく。
【0094】
そのため、本実施形態では、被検部Baの深さz方向の数値Sの各信号波形(非特許文献2の図5(b)参照)が、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sと、干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報に基づく数値Sとで、2種類ずつ得られることになる。
【0095】
そこで、例えば、各場合の情報に基づいて得られた数値Sの各信号波形を対比して、被検部Baの各位置Pzに血管等が存在するか否かを的確に判断することが可能となる。そして、このように複数の検出結果に基づいて血管等の存在位置を検出することで、血管等の存在位置の検出の精度をより向上させることが可能となる。
【0096】
一方、解析手段6で、上記のようにして異なるタイミングで複数回検出されたスペックルパターンの情報に基づいて各回ごとに検出されたスペックルパターンの情報の変化を解析することによって、生体組織B内において血管等が存在する位置を特定するように構成することも可能である。
【0097】
すなわち、例えば、位置Pzにおける干渉縞の振幅Amが小さい場合のスペックルパターンの情報と、干渉縞の振幅Amが大きい場合のスペックルパターンの情報とを比較して、それらがどのように変化したかを見比べて、生体組織B内において血管等が存在する位置を特定するように構成することも可能である。
【0098】
具体的には、被検部Baの位置Pzに血液等の光を吸収する物体が存在する場合に比べて、当該位置Pzに血管以外の光を吸収しにくい生体組織が存在する場合には、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで(すなわち前述した揺さぶられ方が異なる各場合で)、得られるスペックルパターンの情報に比較的大きな変化が現れる。
【0099】
それに対して、被検部Baの位置Pzに血液等の光を吸収する物体が存在する場合には、血液等がレーザ光Lbを吸収してしまうため、レーザ光Lbの反射光Lr(或いは透過光)の強度が弱まる。そのため、当該位置Pzに光を吸収しにくい生体組織が存在する場合に比べて、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで、得られるスペックルパターンの情報に現れる変化が比較的小さくなる。或いは、ほとんど同じようなデータになる。
【0100】
そのため、例えば、前述した非特許文献2に記載されているスペックルパターンの解析方法を用いて上記の各場合について数値Sを算出し、数値Sの各信号波形を対比する。そして、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが小さい場合に比べて振幅Amが大きい場合に数値Sが大きく変化する部分を血管以外の生体組織が存在する部分として特定し、数値Sがさほど変化しない部分を血管等が存在する部分として特定するように構成することが可能である。
【0101】
このように構成すれば、光を吸収する血液等と光を吸収しにくい生体組織との特性に違いに基づいて、生体組織B内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0102】
なお、このように構成する場合、上記のように、非特許文献2に記載されている解析方法を用いたり、検出手段4として多素子光検出器であるCCDカメラ等を用いたりしなくてもよい。例えば、検出手段4として1つの素子からなる光電子増倍管等を用いるように構成することも可能である。
【0103】
検出手段4として多素子光検出器であるCCDカメラ等を用いる場合、前述したように、生体表面Bsからの深さzの位置Pzにおけるスペックルパターンが各画素ごとに受光され、各画素ごとに画素値An,i,jが検出される。一方、検出手段4として1つの素子からなる光電子増倍管等を用いる場合には、いわば多素子光検出器の各画素ごとのスペックルパターンの画素値An,i,jの合計値に相当する値(以下、合計値Aという。)が検出されることになる。
【0104】
しかし、この場合も、光電子増倍管等で検出される合計値Aは、被検部Baの位置Pzに血液等の光を吸収する物体が存在する場合には、当該位置Pzでの干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで合計値Aの変化は小さくなり、当該位置Pzに血管等以外の生体組織が存在する場合には、当該位置Pzでの干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで合計値Aの変化が大きくなる。
【0105】
そのため、上記と同様にして、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが小さい場合に比べて振幅Amが大きい場合に合計値Aが大きく変化する部分を血管以外の生体組織が存在する部分として特定し、合計値Aがさほど変化しない部分を血管等が存在する部分として特定することで、生体組織B内における血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る超音波変調光計測装置1および超音波変調光計測方法によれば、複数の超音波照射手段2a、2bから、周波数fa、fbが互いに僅かに異なる超音波Swa、Swbを、生体組織Bの被検部Baの生体表面Bsからの所定の深さzの位置Pzで交差するように照射し、レーザ光照射手段3から被検部Baにレーザ光Lbを照射し、しかも、各超音波Swa、Swbが交差されることにより形成される合成波の干渉縞の上記位置Pzにおける振幅Amが、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれレーザ光Lbの反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンを検出するように構成した。
【0107】
被検部Baの上記位置Pzに、血液等の光を吸収する物体が存在する場合には、血液等がレーザ光Lbを吸収するため、レーザ光Lbの反射光Lr(或いは透過光)の強度が弱まる。そのため、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで(すなわち前述した揺さぶられ方が異なる各場合で)、得られるスペックルパターンの情報に現れる変化が比較的小さくなる。
【0108】
一方、当該位置Pzに血管以外の光を吸収しにくい生体組織が存在する場合には、超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで、得られるスペックルパターンの情報に比較的大きな変化が現れる。
【0109】
また、この場合、前述したように、スペックルパターンの情報の変化には、微小面M(図6(A)、(B)参照)に照射される合成波の干渉縞の変化も反映されるが、これに起因するスペックルパターンの変化も、被検部Baの上記位置Pzに血液等の光を吸収する物体が存在する場合には変化の影響が大きく現れるが、当該位置Pzに血管以外の光を吸収しにくい生体組織が存在する場合には、現れる変化の影響が小さくなる。
【0110】
そのため、例えば、このようなスペックルパターンの情報に現れる変化の違いを検出することが可能となり、生体組織B内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0111】
また、その際、レーザ光照射手段3として、フェムト秒チタンサファイアレーザ等の高価で大型な光源を用いる必要がなく、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等を用いて上記の構成を実現することができる。そのため、超音波変調光計測装置1を低コストで製造することが可能となる。また、通常、半導体レーザは小型であるため、超音波変調光計測装置1をより小型に製造することが可能となる。
【0112】
なお、本実施形態や後述する下記の実施形態では、生体組織Bの被検部Baの各位置Pzごとに、当該位置Pzにおける合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合の2回のタイミングで、それぞれ検出手段4でスペックルパターンを検出する場合を前提にして説明したが、各位置Pzにおけるスペックルパターンの検出は2回に限定されず、3回以上行うように構成することも可能である。
【0113】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、生体組織Bの被検部Baの所定の位置Pzで交差させる超音波Swa、Swbの周波数fa、fbを互いに僅かに異なる周波数とし、当該位置Pzに形成される各超音波Swa、Swbの合成波に干渉縞を生じさせて、干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とで、それぞれスペックルパターンを検出するように構成されている場合について説明した。
【0114】
本実施形態および後述する第3の実施形態では、各超音波照射手段2a、2bから同じ周波数fの超音波Swa、Swbを照射して、被検部Baの位置Pzで交差させる場合について説明する。
【0115】
上記(2)式のような式による説明を省略するが、この場合も、超音波Swa、Swbが交差する被検部Baの所定の位置Pzの各超音波Swa、Swbの合成波に干渉縞を形成される。しかし、この場合、超音波Swa、Swbの周波数fが同じであるため、位置Pzでの干渉縞の振幅Amは、上記の第1の実施形態の場合のように時間的に変化しない。
【0116】
すなわち、本実施形態の場合、上記の第1の実施形態で示した上記(2)式での振幅Amに相当する2cos{2π(fa−fb)t/2}のように、振幅Amが時間的に変化することはない。そのため、干渉縞は、例えば前述した図5(A)に示した状態から図5(B)に示した状態に時間的に変化することがなく、位置Pzに例えば図5(A)に示した状態の干渉縞が形成されると、その干渉縞が図5(A)に示した状態のまま続く状態になる。
【0117】
すなわち、本実施形態では、合成波に現れた干渉縞は、その振幅Amが時間的に変化せず、位置Pzで見た場合、例えば図7(A)に示すように、同じ振幅Amの状態が維持される。そのため、第1の実施形態のように、合成波の干渉縞の時間的変化を利用して干渉縞の振幅Amが大きい場合と小さい場合とでそれぞれスペックルパターンを検出するという構成をとることができない。
【0118】
そこで、本実施形態では、各超音波照射手段2a、2bから照射される各超音波Swa、Swbの位相θを変えて、各超音波Swa、Swbが交差されることにより形成される合成波の前記被検部Baの位置Pzにおける振幅Amが異なる振幅になるようにして、スペックルパターンを複数回検出するように構成される。
【0119】
具体的には、各超音波Swa、Swbの位相θをθa、θbと表すと(周波数はともにf)、各超音波Swa、Swbの波形はそれぞれsin(2πft+θa)、sin(2πft+θb)で表されるため、位置Pzでの合成波は、仮に上記(2)式に従うと、
sin(2πft+θa)+sin(2πft+θb)
=2cos{(θa−θb)/2}×sin{2πft+(θa+θb)/2}…(3)
と表される。
【0120】
この場合、2cos{(θa−θb)/2}の項は時間tを含まない。そして、この2cos{(θa−θb)/2}が、被検部Baの位置Pzでの合成波の干渉縞の振幅Amを表すことになる。すなわち、
Am=2cos{(θa−θb)/2} …(4)
【0121】
また、上記(4)式は、超音波Swaの位相θaや、超音波Swbの位相θb、或いはその両方を変化させて、θa−θbを変化させることで、各超音波Swa、Swbの被検部Baの位置Pzでの合成波の干渉縞の振幅Amを、例えば図7(A)、(B)に示すように変化させることができることも表している。
【0122】
そこで、本実施形態では、まず、所定の位相θa、θb(周波数はともにf)の各超音波Swa、Swbが被検部Baの位置Pzで交差する状態になるように各超音波照射手段2a、2bから各超音波Swa、Swbを照射する(超音波照射工程)。そして、被検部Baにレーザ光照射手段3からレーザ光Lbを照射する(レーザ光照射工程)。そして、そのスペックルパターンを検出手段4で検出する(検出工程)。
【0123】
続いて、各超音波Swa、Swbが被検部Baの位置Pzで交差する状態を保ったまま、超音波Swa、Swbの位相θa、θbのいずれか一方或いはその両方を変化させてθa−θbを変化させた状態で、再度、各超音波照射手段2a、2bから各超音波Swa、Swbを照射する(超音波照射工程)。そして、被検部Baにレーザ光照射手段3からレーザ光Lbを照射し(レーザ光照射工程)、検出手段4でそのスペックルパターンを検出する(検出工程)。
【0124】
なお、この場合も、上記のように、超音波Swa、Swbの位相θa、θbを変えてスペックルパターンを2回検出する場合に限定されず、3回以上変化させてスペックルパターンをそれぞれ検出するように構成することも可能である。
【0125】
上記のように構成すれば、上記の第1の実施形態の場合と同様に、被検部Baの位置Pzでの各超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合(図7(A)の場合)と小さい場合(図7(B)の場合)のそれぞれの場合について、当該位置Pzからの反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンを検出することが可能となる。
【0126】
また、この場合も、超音波Swa、Swbの位相θa、θbのいずれか一方或いはその両方を変化させることで、前述した、被検部Baの位置Pzを含み深さz方向に直交する仮想的な微小面Mにおける干渉縞も、例えば図6(A)に示した状態から図6(B)に示した状態に変化する。そして、その変化が、各スペックルパターンの情報に反映される。
【0127】
そのため、第1の実施形態の場合と同様に、本実施形態に係る超音波変調光計測装置1や超音波変調光計測方法においても、それらの情報に基づいて、生体組織B内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0128】
また、本実施形態においても、レーザ光照射手段3として、フェムト秒チタンサファイアレーザ等の高価で大型な光源を用いる必要がなく、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等を用いて上記の構成を実現することができる。そのため、超音波変調光計測装置1を低コストで製造することが可能となる。また、通常、半導体レーザは小型であるため、超音波変調光計測装置1をより小型に製造することが可能となる。
【0129】
[第3の実施の形態]
上記の第2の実施形態では、各超音波照射手段2a、2bから同じ周波数fの超音波Swa、Swbを照射して被検部Baの位置Pzで交差させ、各超音波Swa、Swbの位相θa、θbを変えることで、当該位置Pzでの合成波の干渉縞の振幅Amを変える場合について説明した。
【0130】
しかし、各超音波Swa、Swbの周波数fが同じであり、しかも、位相θa、θbを変えなくても、各超音波照射手段2a、2bから照射される各超音波Swa、Swbの相対的な交差角度δ(図1参照)を変えることで、各超音波Swa、Swbが交差されることにより形成される合成波の干渉縞の被検部Baの位置Pzにおける振幅Amを、図7(A)、(B)に示したように変化させることができる。
【0131】
この場合、上記(2)式等のように数式で説明することが必ずしも容易でないため数式を用いた説明は省略する。また、この場合も、上記の第2の実施形態の場合と同様に、被検部Baの位置Pzにおける各超音波Swa、Swbの合成波には干渉縞が現れるが、その干渉縞の位置Pzでの振幅Amは、時間的に変化しない状態になる。
【0132】
本実施形態では、例えば、図1に示した各超音波照射手段2a、2bのいずれか一方或いはその両方に図示しない位置可変手段を設けておき、まず、各超音波照射手段2a、2bの位置が、照射された各超音波Swa、Swbの交差角度δが所定の角度になるような位置に固定される。
【0133】
そして、その状態で、各超音波Swa、Swbが被検部Baの位置Pzで交差するように、各超音波照射手段2a、2bから各超音波Swa、Swbを照射する(超音波照射工程)。そして、被検部Baにレーザ光照射手段3からレーザ光Lbを照射する(レーザ光照射工程)。そして、その反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンを検出手段4で検出する(検出工程)。
【0134】
続いて、各超音波照射手段2a、2bのいずれか一方或いはその両方の位置を可変させて、各超音波照射手段2a、2bの位置が、照射された各超音波Swa、Swbの交差角度δが別の所定の角度になるような位置に固定される。そして、各超音波Swa、Swbが被検部Baの当該位置Pzで交差するように、再度、各超音波照射手段2a、2bから各超音波Swa、Swbを照射する(超音波照射工程)。そして、被検部Baにレーザ光照射手段3からレーザ光Lbを照射し(レーザ光照射工程)、検出手段4でその反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンを検出する(検出工程)。
【0135】
なお、この場合も、上記のように、各超音波照射手段2a、2bの位置を1回だけ可変させる場合に限定されず、各超音波照射手段2a、2bの位置を2回以上可変させて、スペックルパターンをそれぞれ検出するように構成することも可能である。
【0136】
このように構成すれば、上記の第2の実施形態の場合と同様に、被検部Baの位置Pzでの各超音波Swa、Swbの合成波の干渉縞の振幅Amが大きい場合(図7(A)の場合)と小さい場合(図7(B)の場合)のそれぞれの場合について、当該位置Pzからのスペックルパターンを検出することが可能となる。
【0137】
また、この場合も、照射される各超音波Swa、Swbの相対的な交差角度δ(図1参照)を変化させることで、前述した、被検部Baの位置Pzを含み深さz方向に直交する仮想的な微小面Mにおける干渉縞も、例えば図6(A)に示した状態から図6(B)に示した状態に変化する。そして、その変化が、各スペックルパターンの情報に反映される。
【0138】
そのため、第1の実施形態や第2の実施形態の場合と同様に、本実施形態に係る超音波変調光計測装置1や超音波変調光計測方法においても、それらの情報に基づいて、生体組織B内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。
【0139】
また、本実施形態においても、レーザ光照射手段3として、フェムト秒チタンサファイアレーザ等の高価で大型な光源を用いる必要がなく、連続光照射、または数十ナノ秒から数ナノ秒オーダのパルス光照射が可能な比較的安価な通常の半導体レーザ等を用いて上記の構成を実現することができる。そのため、超音波変調光計測装置1を低コストで製造することが可能となる。また、通常、半導体レーザは小型であるため、超音波変調光計測装置1をより小型に製造することが可能となる。
【0140】
[第4の実施の形態]
ところで、上記の第1〜第3の実施形態では、レーザ光照射手段3から、単一の波長のレーザ光を被検部Baの位置Pzに照射することを前提として説明した。
【0141】
しかし、例えば、図1や図2に示したレーザ光照射手段3から波長が異なるレーザ光Lbをそれぞれ照射したり、或いは、図示を省略するが、波長が異なるレーザ光Lbを照射するレーザ光照射手段3を複数備えるように構成して、被検部Baに、波長が異なるレーザ光Lbを照射する。そして、検出手段4で各レーザ光Lbの反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンをそれぞれ検出するように構成することも可能である。
【0142】
例えば、血液中のヘモグロビン(hemoglobin)は、酸素と結合している場合(以下、この状態のヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンという。)と結合していない場合(以下、この状態のヘモグロビンを還元ヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビンともいう。)という。)とで、近赤外線領域での吸収スペクトルが変化することが知られている。
【0143】
すなわち、波長が約800[nm]の近傍の近赤外線領域において、波長が約800[nm]以上の領域では、酸素化ヘモグロビンの方が還元ヘモグロビンよりも吸光度が高く、波長が約800[nm]以下の領域では、逆に、還元ヘモグロビンの方が酸素化ヘモグロビンよりも吸光度が高くなるという特徴がある。
【0144】
そこで、上記の超音波変調光計測装置1において、被検部Baに、例えば、波長が760[nm]前後のレーザ光Lbと、波長が840[nm]前後のレーザ光Lbとをそれぞれ照射して、各レーザ光Lbについてそれぞれ反射光Lr(或いは透過光)によるスペックルパターンを検出する。そして、レーザ光Lbの各波長ごとに、解析手段6で上記のようにスペックルパターンの情報を解析する。
【0145】
このように構成すれば、上記の第1〜第3の実施形態の場合と同様に、本実施形態に係る超音波変調光計測装置1や超音波変調光計測方法においても、それらの情報に基づいて、生体組織B内において血液等の光を吸収する物体が存在する位置、すなわち血管等が存在する位置を的確に特定することが可能となる。また、それだけでなく、特定した血管中において、酸素化ヘモグロビンが多く存在する部分や還元ヘモグロビンが多く存在する部分等の情報をも得ることが可能となる。
【0146】
例えば、生体組織B内に癌を発症している場合、癌の部分には、血管が新生されている場合がある。また、癌の部分では、酸素が多く消費されることから、癌の部分の血管や新生血管中には、酸素化ヘモグロビンよりも還元ヘモグロビンの方が多く存在することが知られている。
【0147】
従って、超音波変調光計測装置1や超音波変調光計測方法を本実施形態のように構成すれば、超音波変調光計測装置1を、生体組織Bに癌が発症しているか否かの診断等に用いることも可能となる。
【符号の説明】
【0148】
1 超音波変調光計測装置
2a、2b 超音波照射手段
3 レーザ光照射手段
31 光源
34 集光レンズ
4 検出手段
6 解析手段
Am 振幅
B 生体組織
Ba 被検部
Bs 生体表面
fa、fb 周波数
Lb レーザ光
Pz 位置
Swa、Swb 超音波
z、z 深さ
δ 交差角度
θa、θb 位相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波が互いに異なる周波数とされており、
前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれ前記スペックルパターンを検出することを特徴とする超音波変調光計測装置。
【請求項2】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波の位相を変えて、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする超音波変調光計測装置。
【請求項3】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された各々の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する複数の超音波照射手段と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出手段と、
を備え、
前記各超音波照射手段から照射される超音波の交差角度を変えて、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする超音波変調光計測装置。
【請求項4】
前記レーザ光照射手段は、光源から照射されたレーザ光を集光する集光レンズを備え、
前記光源から照射された前記レーザ光は、前記集光レンズで集光された状態で前記被検部に照射されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項5】
前記超音波照射手段は、照射する各超音波が、前記被検部の前記所定の位置において収束するようにそれぞれ超音波を照射することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項6】
前記レーザ光は、連続波であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項7】
前記各超音波は、それぞれ連続波であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項8】
前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして複数回検出された前記スペックルパターンの情報に基づいて、各回ごとに検出された前記情報の変化を解析する解析手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項9】
前記レーザ光照射手段から波長が異なる前記レーザ光をそれぞれ照射し、または、波長が異なる前記レーザ光を照射する前記レーザ光照射手段を複数備え、
前記検出手段は、前記波長が異なるレーザ光について、前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られる前記スペックルパターンをそれぞれ検出することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項10】
少なくとも前記複数の超音波照射手段と前記レーザ光照射手段と前記検出手段とが一体的に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の超音波変調光計測装置。
【請求項11】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程で前記位置に照射される超音波が互いに異なる周波数とされており、
前記検出工程では、前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が、異なる振幅になる複数のタイミングでそれぞれ前記スペックルパターンを検出することを特徴とする超音波変調光計測方法。
【請求項12】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程では、前記位置に照射される超音波の位相を変えて、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射し、
前記検査工程では、前記位置に照射される超音波の位相を変えて前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする超音波変調光計測方法。
【請求項13】
生体組織の被検部において、生体表面からの所定の深さの位置で、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射する超音波照射工程と、
前記被検部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光が前記被検部の位置で反射されまたは前記被検部の位置を透過して得られるスペックルパターンを検出する検出工程と、
を有し、
前記超音波照射工程では、前記位置に照射される超音波の交差角度を変えて、照射された複数の超音波が交差するようにそれぞれ超音波を照射し、
前記検査工程では、前記位置に照射される超音波の交差角度を変えて前記各超音波が交差されることにより形成される合成波の干渉縞の前記被検部の位置における振幅が異なる振幅になるようにして、前記スペックルパターンを複数回検出することを特徴とする超音波変調光計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200478(P2012−200478A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69452(P2011−69452)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】