説明

超音波診断装置及び画質条件更新用制御プログラム

【課題】心拍同期3次元画像データに対する好適な画質条件を短時間で設定する。
【解決手段】複数の3次元サブ領域によって構成される広範囲な3次元領域に対する心拍同期3次元走査と前記3次元サブ領域の何れかに対するリアルタイム3次元走査を行なう機能を有し、心拍同期3次元走査モードによる3次元画像データの収集過程でゲイン等の画質条件を更新する場合、更新タイミング検出部10は、入力部9から新たに入力される画質条件と自己の画質条件記憶部に既に保存されている最新の画質条件とを比較することによって画質条件の更新開始タイミングを検出し、走査制御部11は、この検出結果に基づいて送受信部2を制御することにより心拍同期3次元走査モードをリアルタイム3次元走査モードへ遷移させ、入力部9は、このとき得られるリアルタイム3次元画像データの観察下で好適な画質条件を入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び画質条件更新用制御プログラムに係り、特に、心電波形等の生体信号に同期させて収集したサブボリュームデータに基づいて広範囲な3次元画像データを生成する超音波診断装置及び画質条件更新用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、複数の振動素子が配列された超音波プローブを用いて被検体の複数方向に対し超音波送受信を行ない、このとき得られた反射波に基づいて生成した画像データや時系列データをモニタ上に表示するものである。この装置は、超音波プローブの先端部を体表に接触させるだけの簡単な操作で体内の2次元画像データや3次元画像データをリアルタイムで観測することができるため各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
3次元画像データの収集を目的とした従来の3次元走査では、複数の振動素子が1次元配列された超音波プローブをその配列方向に対して垂直な方向に移動あるいは回動させながら被検体の3次元領域に対して超音波を送受信し、このとき収集したボリュームデータをレンダリング処理することにより3次元画像データの生成を行なってきた。又、近年では、複数の振動素子が2次元配列された超音波プローブ(2次元アレイ超音波プローブ)が実用化されている。この2次元アレイ超音波プローブの使用により3次元領域に対する超音波送受信は全て電子的な制御で行なうことができるため、3次元走査に要する時間は大幅に短縮され、検査における操作性は著しく向上した。
【0004】
しかしながら、所望の3次元領域に対する超音波走査によって3次元データ(ボリュームデータ)を収集する場合、極めて多くの送受信を繰り返す必要があり、しかもこれらの送受信に要する時間は、被検体の体内を伝播する超音波の音速、走査領域の大きさ、走査密度等によって決定されるため空間分解能に優れた広範囲なボリュームデータを収集するためには多くの時間が要求される。
【0005】
一方、被検体内の複数方向からの反射波を同時に受信する、所謂、並列同時受信法によって画像データのリアルタイム性を向上させる方法が開発され、この方法を上述の3次元走査に適用することによりボリュームデータの収集に要する時間を短縮させることができる。しかしながら、心臓等の拍動性移動の有る臓器に対する3次元走査では多くの並列受信数が要求され、これを実現するためには装置の回路構成が極めて複雑になるという問題点を有していた。
【0006】
このような問題点を解決するために、被検体の診断対象部位を含む3次元領域を複数の3次元サブ領域に分割し、これらの3次元サブ領域から収集された時系列的なボリュームデータ(以下では、サブボリュームデータと呼ぶ。)を心拍時相に基づいて合成する心拍同期3次元走査法(Triggered Volume Scan)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
上述の方法では、3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域に対し所定期間(例えば、1心拍期間)の3次元走査を順次行ない、このとき得られたサブボリュームデータに心拍時相情報を付加して一旦保存する。そして、複数の3次元サブ領域に対するサブボリュームデータの収集が完了したならば、同一の心拍時相において収集されたサブボリュームデータを合成することによって各心拍時相における3次元領域のボリュームデータを生成し、これらのボリュームデータを処理してボリュームレンダリング画像データやサーフェスレンダリング画像データ等の3次元画像データを生成することにより、前記診断対象部位の所望心拍時相における3次元的な情報を動画像として観察することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−170047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既に述べたように、上述の心拍同期3次元走査法の適用により広範囲な3次元画像データを動画像として観察することが可能となるが、3次元画像データの収集の途中でゲイン等の画質条件を更新する場合、従来は、心拍同期3次元走査モードにおいて生成された3次元画像データの観察下でその更新を行なっていたため、更新内容が3次元画像データの全領域あるいは所望の領域に反映されるまでに多くの時間を要した。又、Bi−Plane画像データや前記ボリュームデータに基づくMPR画像データ等の2次元画像データを新たに生成し、これらの2次元画像データの観察下で前記3次元画像データの画質条件を更新する方法は、専用ソフトウエアの起動等に多大な時間を要するのみならず2次元画像データを用いて3次元画像データの好適な画質条件を得ることは困難であるという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、心拍同期3次元走査による広範囲な3次元画像データの収集過程でゲイン等の画質条件を更新する場合、更新開始タイミングの検出信号に基づいて心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへ自動切り替えすることにより、好適な画質条件への更新をリアルタイム3次元走査による狭範囲な3次元画像データの観察下にて正確かつ容易に行なうことが可能な超音波診断装置及び画質条件更新用制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、心拍同期3次元走査によって被検体の3次元領域から収集したボリュームデータに基づいて時系列的な心拍同期3次元画像データを生成する超音波診断装置において、前記心拍同期3次元画像データの収集過程で新たな画質条件を入力する画質条件入力手段と、前記画質条件入力手段によって入力された前記画質条件に基づいて画質条件の更新開始タイミングを検出する更新タイミング検出手段と、前記更新開始タイミングに基づいて前記心拍同期3次元走査からリアルタイム3次元走査へ走査モードを遷移させる走査制御手段と、前記心拍同期3次元画像データ及び前記リアルタイム3次元走査によって得られたリアルタイム3次元画像データを表示する表示手段とを備え、前記画質条件入力手段は、前記表示手段によって表示された前記リアルタイム3次元画像データに基づいて前記心拍同期3次元画像データに好適な画質条件を入力することを特徴としている。
【0012】
又、請求項10に係る本発明の画質条件更新用制御プログラムは、心拍同期3次元走査によって被検体の3次元領域から収集したボリュームデータに基づいて時系列的な心拍同期3次元画像データを生成する超音波診断装置に対し、前記心拍同期3次元画像データの収集過程で新たな画質条件を入力する画質条件入力機能と、前記画質条件入力手段によって入力される前記画質条件に基づいて画質条件の更新開始タイミングを検出する更新タイミング検出機能と、前記更新開始タイミングに基づいて前記心拍同期3次元走査からリアルタイム3次元走査へ走査モードを遷移させる走査制御機能と、前記心拍同期3次元画像データ及び前記リアルタイム3次元走査によって得られたリアルタイム3次元画像データを表示する表示機能を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、心拍同期3次元走査による広範囲な3次元画像データの収集過程でゲイン等の画質条件を更新する場合、更新開始タイミングの検出信号に基づいて心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへ自動切り替えすることにより、好適な画質条件への更新をリアルタイム3次元走査による狭範囲な3次元画像データの観察下にて正確かつ容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の超音波診断装置が備える送受信部及び受信信号処理部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】同実施例の3次元走査における超音波送受信方向を説明するための図。
【図4】同実施例の心拍同期3次元走査モードにおける3次元サブ領域を示す図。
【図5】同実施例の3次元サブ領域に対する心拍同期3次元走査の具体例を示す図。
【図6】同実施例の超音波診断装置が備える画像データ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図7】同実施例における画質条件の設定/更新手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0016】
本実施例の超音波診断装置は、複数の3次元サブ領域によって構成される広範囲な3次元領域に対する心拍同期3次元走査と前記3次元サブ領域の何れかに対するリアルタイム3次元走査を行なう機能を有し、心拍同期3次元走査モードによる3次元画像データの収集過程でゲイン等の画質条件を更新する場合、更新開始タイミングの検出信号に基づいて心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへの切り替えを行ない、このとき得られるリアルタイム3次元画像データの観察下で好適な画質条件への更新を行なう。
【0017】
尚、以下の実施例では、被検体から得られる受信信号を処理して超音波データとしてのBモードデータを生成し、このBモードデータに基づいて心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードのボリュームデータを生成する場合について述べるが、これに限定されるものではなく、カラードプラデータ等の他の超音波データに基づいて上述のボリュームデータを生成してもよい。
【0018】
又、リアルタイム3次元走査モードでは、心拍同期3次元走査モードの広範囲な3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域の中から選択した1つあるいは複数の3次元サブ領域に対してリアルタイム3次元走査を行なう場合について述べるが、任意に設定した狭範囲な3次元領域に対してリアルタイム3次元走査を行なっても構わない。
【0019】
(装置の構成と機能)
本発明の実施例における超音波診断装置の構成と機能につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図1は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この超音波診断装置が備える送受信部及び受信信号処理部の具体的な構成を示すブロック図である。又、図6は、前記超音波診断装置が備える画像データ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示す超音波診断装置100は、被検体の診断対象部位を含む広範囲な3次元領域に対して超音波パルス(送信超音波)を送信し、この送信によって得られた超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する複数個の振動素子が2次元配列された超音波プローブ3と、前記被検体の所定方向に対し超音波パルスを送信するための駆動信号を前記振動素子に供給し、これらの振動素子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する送受信部2と、整相加算後の受信信号を処理してBモードデータを生成する受信信号処理部4と、前記3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域に対し心拍同期3次元走査を行なって得られたボリュームデータに基づいて広範囲な3次元画像データ(以下では、心拍同期3次元画像データと呼ぶ)を生成し、更に、所定の3次元サブ領域に対しリアルタイム3次元走査を行なって得られたボリュームデータに基づいて狭範囲な3次元画像データ(以下では、リアルタイム3次元画像データと呼ぶ。)を生成する画像データ生成部5と、上述の心拍同期3次元画像データやリアルタイム3次元画像データを表示する表示部6を備えている。
【0021】
更に、超音波診断装置100は、当該被検体の心電波形を計測する生体信号計測ユニット7と、検出された心電波形に基づいて心拍同期信号を生成する心拍同期信号生成部8と、被検体情報の入力、画質条件の入力、ボリュームデータ生成条件の設定、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部9と、入力部9から新たに入力される画質条件の情報に基づいて画質条件の更新開始タイミング及び更新終了タイミングを検出する更新タイミング検出部10と、更新タイミング検出部10から供給される検出結果に基づいて心拍同期3次元走査及びリアルタイム3次元走査を行なうための走査制御信号を生成する走査制御部11と、上述の各ユニットを統括的に制御し心拍同期3次元画像データ及びリアルタイム3次元画像データの生成と表示を実行させるシステム制御部12を備えている。
【0022】
次に、上述の各ユニットにつき更に詳細な説明を行なう。
【0023】
超音波プローブ3は、2次元配列されたM個の図示しない振動素子をその先端部に有し、前記先端部を被検体の体表に接触させて超音波の送受信を行なう。振動素子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルス(駆動信号)を超音波パルス(送信超音波)に変換し、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気的な受信信号に変換する機能を有している。そして、これら振動素子の各々は、図示しないMチャンネルの多芯ケーブルを介して送受信部2に接続されている。尚、本実施例では、M個の振動素子が2次元配列されたセクタ走査用の超音波プローブ3を有する超音波診断装置100について述べるが、リニア走査やコンベックス走査等に対応した超音波プローブを用いても構わない。
【0024】
次に、図2に示す送受信部2は、超音波プローブ3の振動素子に対して駆動信号を供給する送信部21と、振動素子から得られる受信信号に対して整相加算(所定方向から得られる受信信号の位相を一致させて加算合成)を行なう受信部22を備えている。
【0025】
送信部21は、レートパルス発生器211、送信遅延回路212及び駆動回路213を備え、レートパルス発生器211は、走査制御部11から供給される走査制御信号に基づいて心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおける送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを生成する。
【0026】
一方、送信遅延回路212は、上述の走査制御部11から供給される走査制御信号に基づき、送信超音波を所定の深さに集束するための集束用遅延時間と所定方向(θp、φq)に送信するための偏向用遅延時間をレートパルス発生器211から供給されるレートパルスに与えて駆動回路213へ供給する。
【0027】
駆動回路213は、送信遅延回路212と同数の独立な駆動回路を有し、上述の遅延時間が与えられたレートパルスに基づいて駆動信号を生成する。そして、超音波プローブ3において2次元配列されたM個の振動素子の中から選択されたMt個の送信用振動素子を前記駆動信号で駆動し、被検体内に送信超音波を放射する。
【0028】
一方、受信部22は、超音波プローブ3に内蔵されたM個の振動素子の中から受信用として選択されたMr個の振動素子に対応するMrチャンネルのA/D変換器221及び受信遅延回路222と加算器223を備え、受信用の振動素子から供給されたMrチャンネルの受信信号は、A/D変換器221にてデジタル信号に変換され受信遅延回路222に送られる。
【0029】
受信遅延回路222は、走査制御部11から供給される制御信号に基づき、所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と所定方向(θp、φq)に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器221から出力されるMrチャンネルの受信信号の各々に与え、加算器223は、受信遅延回路222からの受信信号を加算合成する。即ち、受信遅延回路222と加算器223により、所定方向から得られた受信信号は整相加算される。
【0030】
又、受信部22の受信遅延回路222及び加算器223は、その遅延時間の制御によって複数方向に対する受信指向性を同時に形成する所謂並列同時受信を可能とし、並列同時受信の適用により3次元走査に要する時間は大幅に短縮される。尚、上述の送受信部2が備える送信部21及び受信部22の一部は、超音波プローブ3の内部に設けられていても構わない。
【0031】
図3は、超音波プローブ3の中心軸をz軸とした直交座標(x−y−z)における超音波送受信方向(θp、φq)の具体例を示したものであり、振動素子はx軸方向及びy軸方向に2次元配列され、θp及びφqは、x−z平面及びy−z平面に投影された超音波送受信方向のz軸に対する角度を示している。そして、走査制御部11から供給される走査制御信号に従って送信部21の送信遅延回路212及び受信部22の受信遅延回路222における遅延時間は制御され、複数の3次元サブ領域あるいはこれらの3次元サブ領域の中から選択された所定の3次元サブ領域に対して超音波送受信が行なわれる。
【0032】
次に、当該被検体の3次元領域に対して設定される複数の3次元サブ領域と、これらの3次元サブ領域に対する心拍同期3次元走査につき図4及び図5を用いて説明する。
【0033】
図4は、被検体の診断対象部位を含む3次元領域S0に設定された心拍同期3次元走査モードにおける複数の3次元サブ領域を示しており、入力部9において設定されたセグメント数Sn(例えば、Sn=4)に基づいて3次元領域S0をy方向に分割することにより4つの3次元サブ領域S1乃至S4が設定される。そして、走査制御部11から供給される走査制御信号に基づいて送信部21の送信遅延回路212及び受信部22の受信遅延回路222における遅延時間を制御することにより3次元サブ領域S1乃至S4の各々に対する心拍同期3次元走査が行なわれる。
【0034】
一方、図5は、上述の3次元サブ領域S1乃至S4に対する心拍同期3次元走査の具体例を示したものであり、図5(a)は、生体信号計測ユニット7によって計測された心拍周期Toを有する心電波形、図5(b)は、この心電波形のR波を基準として心拍同期信号生成部8が生成した心拍同期信号、図5(c)は、前記心拍同期信号に基づき、3次元サブ領域S1乃至S4(図4参照)の各々に対して行なわれる心拍同期3次元走査の順序を示している。
【0035】
この場合、走査制御部11は、心拍同期信号生成部8から供給される心拍同期信号の信号間隔(心拍周期)Toと入力部9において予め設定された心拍時相数Hn(例えば、Hn=4)に基づいて心拍時相τ1乃至τ4の各々におけるサブボリュームデータのデータ収集時間δτを設定し、更に、このデータ収集時間δτに基づいて3次元領域S0に対する3次元サブ領域のセグメント数Sn(Sn=4)を設定する。但し、心拍時相τ1は、3次元サブ領域S1に対して心拍同期3次元走査が開始される心拍時相であり、心拍時相τ2乃至τ4は、3次元サブ領域S2乃至S4の各々に対して心拍同期3次元走査が開始される心拍時相を示している。
【0036】
そして、走査制御部11は、上述の設定情報に基づいて送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222を制御し、先ず、期間[t1−t2]において心拍時相τ1乃至τ4の3次元サブ領域S1に対する心拍同期3次元走査を順次行ない、更に、期間[t2−t3]、期間[t3−t4]、期間[t4−t5]の各々において心拍時相τ1乃至τ4の3次元サブ領域S2乃至S4に対する心拍同期3次元走査を行なう。
【0037】
一方、画像データ生成部5が備える後述のボリュームデータ生成部52は、期間[t1−t2]乃至期間[t4−t5]の心拍時相τ1における超音波送受信に基づいて生成された3次元サブ領域S1乃至S4のサブボリュームデータを合成して心拍時相τ1におけるボリュームデータを生成し、同様にして、期間[t1−t2]乃至期間[t4−t5]の心拍時相τ2乃至τ4における超音波送受信に基づいて生成された3次元サブ領域S1乃至S4のサブボリュームデータを合成して心拍時相τ2乃至τ4の各々におけるボリュームデータを生成する。
【0038】
図2へ戻って、受信信号処理部4は、Bモードデータを生成する機能を有し、増幅回路41と包絡線検波器42と対数変換器43を備えている。増幅回路41は、受信部22の加算器223から供給される整相加算後の受信信号を増幅あるいは減衰させることにより心拍同期3次元画像データ及びリアルタイム3次元画像データのゲインを調整し、包絡線検波器42は、増幅回路41から出力された受信信号を包絡線検波する。一方、対数変換器43は、包絡線検波された受信信号の振幅を対数変換し、更に、上述の画像データとして表示される受信信号の振幅範囲(ダイナミックレンジ)を調整してBモードデータを生成する。尚、包絡線検波器42と対数変換器43は順序を入れ替えて構成してもよく、ゲインやダイナミックレンジ等の画質条件の調整は、他のユニットあるいは他の方法によって行なっても構わない。
【0039】
次に、図1に示した画像データ生成部5の具体的な構成につき図6を用いて説明する。この画像データ生成部5は、図6に示すようにサブボリュームデータ生成部51、ボリュームデータ生成部52及びボリュームデータ処理部53を備えている。
【0040】
サブボリュームデータ生成部51は、超音波データ記憶部511、補間処理部512及びサブボリュームデータ記憶部513を備え、超音波データ記憶部511には、3次元サブ領域S1乃至S4の各々に対する心拍同期3次元走査あるいは3次元サブ領域S1乃至S4の何れかに対するリアルタイム3次元走査によって得られた受信信号に基づいて受信信号処理部4が生成したBモードデータが超音波送受信方向(θp、φq)を付帯情報として順次保存される。
【0041】
一方、補間処理部512は、超音波データ記憶部511から3次元サブ領域単位で読み出した複数のBモードデータを超音波送受信方向(θp、φq)に対応させて配列することにより3次元Bモードデータを形成し、更に、この3次元Bモードデータを構成する不等間隔のボクセルを補間処理してx方向、y方向及びz方向に対し等方的なボクセルで構成されるサブボリュームデータを生成する。そして、3次元サブ領域S1乃至S4の各々に対して順次生成されるサブボリュームデータは、システム制御部12から供給されるサブ領域情報や心拍同期信号を付帯情報としてサブボリュームデータ記憶部513に保存される。
【0042】
又、3次元サブ領域S1乃至S4の何れか(例えば、3次元サブ領域S2)に対してリアルタイム3次元走査が行なわれる場合、補間処理部512は、超音波データ記憶部511から読み出した3次元サブ領域S2のBモードデータを超音波送受信方向に対応させて配列することにより3次元Bモードデータを形成し、更に、この3次元Bモードデータのボクセルを補間処理して生成した3次元サブ領域における狭範囲なボリュームデータをボリュームデータ生成部52に設けられた後述のボリュームデータ記憶部522に一旦保存する。
【0043】
ボリュームデータ生成部52は、演算部521とボリュームデータ記憶部522を備えている。そして、3次元サブ領域S1乃至S4に対して心拍同期3次元走査が行なわれる場合、演算部521は、サブボリュームデータ生成部51のサブボリュームデータ記憶部513に保存されているサブボリュームデータとその付帯情報である心拍時相情報及びサブ領域情報を読み出し、3次元サブ領域S1乃至S4の各々にて収集されたサブボリュームデータを上述の付帯情報に基づいて合成することにより広範囲な3次元領域S0における時系列的なボリュームデータを生成する。次いで、得られたボリュームデータをボリュームデータ記憶部522に一旦保存する。即ち、ボリュームデータ記憶部522には、心拍同期3次元走査によって収集された3次元領域S0における広範囲なボリュームデータとリアルタイム3次元走査によって収集された3次元サブ領域S2における狭範囲なボリュームデータが保存される。
【0044】
次に、ボリュームデータ処理部53は、ボリュームデータ生成部52から順次供給される心拍同期3次元走査モードのボリュームデータあるいはリアルタイム3次元走査モードのボリュームデータをレンダリング処理してボリュームレンダリング画像データやサーフェスレンダリング画像データ等の心拍同期3次元画像データ及びリアルタイム3次元画像データを生成する機能を有し、例えば、不透明度・色調設定部531、レンダリング処理部532及びプログラム保管部533を備えている。不透明度・色調設定部531は、ボリュームデータのボクセル値に基づいて各ボクセルの不透明度や色調(輝度)を設定し、レンダリング処理部532は、不透明度・色調設定部531によって設定された不透明度及び色調(輝度)の情報を有するボリュームデータをプログラム保管部533から読み出した所定の処理プログラムに基づいてレンダリング処理し時系列的な3次元画像データを生成する。
【0045】
図1へ戻って、表示部6は、図示しない表示データ生成部、データ変換部及びモニタを備え、前記表示データ生成部は、画像データ生成部5が生成した心拍同期3次元画像データやリアルタイム3次元画像データを所定の表示フォーマットに変換した後、生体信号計測ユニット7から供給される心電波形や入力部9にて入力される被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成する。そして、前記データ変換部は、前記表示データ生成部によって生成された表示データに対しD/A変換やTVフォーマット変換等の変換処理を行なって前記モニタに表示する。
【0046】
一方、当該被検体の心電波形を計測する生体信号計測ユニット7は、前記被検体の体表面に装着され心電波形を検出するECG電極と、このECG電極によって検出された心電波形を所定の振幅に増幅する増幅部と、増幅された心電波形をデジタル信号に変換するA/D変換器(何れも図示せず)を備えている。そして、心拍同期信号生成部8は、心電波形の振幅と所定の閾値とを比較することにより心電波形のR波を検出し、このR波に基づいて心拍同期信号を生成する。尚、心拍同期信号の生成は、通常、R波の発生と同一のタイミングにて行なわれるが、R波より所定時間遅れたタイミングにおいて生成しても構わない。
【0047】
次に、入力部9は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス、選択ボタン、入力ボタン等の入力デバイスや表示パネルを備え、心拍同期3次元画像データ及びリアルタイム3次元画像データに対する画質条件を入力する画質条件入力機能91と心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおける走査領域等を設定するボリュームデータ生成条件設定機能92を有している。又、心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおける3次元画像データ生成条件及び3次元画像データ表示条件の設定、3次元サブ領域のセグメント数Snや心拍時相数Hnの設定、被検体情報の入力、更には、各種コマンド信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。
【0048】
更新タイミング検出部10は、例えば、図示しない画質条件記憶部と画質条件比較部を備え、前記画質条件記憶部には、入力部9において既に入力された画質条件が順次保存される。一方、前記画質条件比較部は、入力部9において入力されシステム制御部12を介して供給される新たな画質条件と前記画質条件記憶部に保存されている最新の画質条件とを比較することにより画質条件の更新開始タイミング及び更新終了タイミングを検出し、その検出結果をシステム制御部12へ供給する。
【0049】
走査制御部11は、入力部9から供給される心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおけるボリュームデータ生成条件に基づいて送信遅延回路212及び受信遅延回路232の遅延時間を制御することにより各々の走査モードにおける超音波送受信方向を制御する。
【0050】
特に、心拍同期3次元走査モードの途中で画質条件の更新開始タイミング情報が更新タイミング検出部10から供給された場合、心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへ遷移させるための走査制御信号を前記更新開始タイミング情報に基づいて生成し送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222に対して供給する。又、画質条件の調整を目的としたリアルタイム3次元走査モードの途中で画質条件の更新終了タイミング情報が更新タイミング検出部10から供給された場合、リアルタイム3次元走査モードから心拍同期3次元走査モードへ遷移させるための走査制御信号を更新終了タイミングから所定時間経過したタイミングにて生成し、上述の送信遅延回路212及び受信遅延回路222に対して供給する。
【0051】
システム制御部12は、図示しないCPUと記憶回路を備え、前記記憶回路には、入力部9において入力/設定された上述の各種情報が保存される。そして、前記CPUは、上述の入力情報及び設定情報に基づいて超音波診断装置100の各ユニットを統括的に制御することにより当該被検体の心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおけるボリュームデータを収集し、更に、得られたこれらのボリュームデータに基づいて当該被検体の診断を目的とした心拍同期3次元画像データ及び画質条件の調整を目的としたリアルタイム3次元画像データの生成とその表示を行なう。
【0052】
(画質条件の設定/更新手順)
次に、本実施例における画質条件の設定/更新手順につき、図7のフローチャートに沿って説明する。尚、ここでも心拍同期3次元走査モードでは、3次元サブ領域S1乃至S4において収集した心拍時相τ1乃至τ4のサブボリュームデータを合成してボリュームデータを生成し、得られたボリュームデータをレンダリング処理して広範囲な心拍同期3次元画像データを生成する。又、リアルタイム3次元走査モードでは、3次元サブ領域S1乃至S4の中から選択した3次元サブ領域S2において収集されるボリュームデータを処理して狭範囲なリアルタイム3次元画像データを生成する。
【0053】
心拍同期3次元画像データの生成に先立ち、超音波診断装置100の操作者は、生体信号検出部7に設けられたECG電極を被検体の体表面に装着した後、入力部9において被検体情報の入力、心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードにおけるボリュームデータ生成条件、3次元画像データ生成条件及び3次元画像データ表示条件の設定、心拍同期3次元走査モードにおけるセグメント数Sn及び心拍時相数Hnの設定等を行なう。そして、これらの入力情報及び設定情報は、システム制御部12の記憶回路に保存される(図7のステップS1)。
【0054】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、生体信号検出部7を動作状態にして当該被検体の心電波形計測を開始し、更に、入力部9において3次元画像データの生成開始コマンドを入力する。そして、このコマンド信号がシステム制御部12へ供給されることにより画質条件の調整を目的とした3次元サブ領域S2に対するリアルタイム3次元画像データの収集が開始される(図7のステップS2)。
【0055】
リアルタイム3次元画像データの収集に際し、走査制御部11は、送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222に対して3次元サブ領域S2を超音波走査するための制御信号を供給する。
【0056】
即ち、システム制御部12を介して3次元画像データの生成開始コマンドを受信した送信部21のレートパルス発生器211は、システム制御部12から供給された指示信号に基づいて所定周期のレートパルスを生成し送信遅延回路212へ供給する。送信遅延回路212は、走査制御部11から供給された走査制御信号に基づいて所定の深さに超音波を集束するための集束用遅延時間と、3次元サブ領域S2における最初の超音波送受信方向(θ1、φ1)に超音波を送信するための偏向用遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをMtチャンネルの駆動回路213に供給する。駆動回路213は、送信遅延回路212から供給されたレートパルスに基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号を超音波プローブ3に設けられたMt個の送信用振動素子に供給して被検体内に送信超音波を放射する。放射された送信超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体の臓器境界面や組織にて反射し、超音波プローブ3に設けられたMr個の受信用振動素子によって受信されてMrチャンネルの電気的な受信信号に変換される。
【0057】
次いで、上述の受信信号は、受信部22のA/D変換器221においてデジタル信号に変換され、更に、Mrチャンネルの受信遅延回路222において所定の深さからの受信超音波を収束するための集束用遅延時間と3次元サブ領域S2における超音波送受信方向(θ1、φ1)からの受信超音波に対し強い受信指向性を設定するための偏向用遅延時間が走査制御部11から供給された上述の制御信号に基づいて与えられた後加算器223にて整相加算される。そして、整相加算後の受信信号が供給された受信信号処理部4の増幅回路41、包絡線検波器42及び対数変換器43は、この受信信号に対し増幅、包絡線検波及び対数変換を行なってBモードデータを生成し、得られたBモードデータは、超音波送受信方向(θ1、φ1)を付帯情報としてサブボリュームデータ生成部51の超音波データ記憶部511に保存される。
【0058】
次いで、走査制御部11は、送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222における遅延時間を制御してθ方向にΔθ、φ方向にΔφずつ順次更新された3次元サブ領域S2の超音波送受信方向(θp、φq)(θp=θ1+(p−1)Δθ(p=1〜P)、φq=φ1+(q−1)Δφ(q=1〜Q)、但し、超音波送受信方向(θ1、φ1)を除く)に対し同様の手順で超音波を送受信して3次元走査を行なう。そして、各々の送受信方向にて得られたBモードデータも上述の超音波送受信方向を付帯情報として超音波データ記憶部511に保存される。
【0059】
上述の手順によって3次元サブ領域S2におけるBモードデータの生成と保存が終了したならば、サブボリュームデータ生成部51の補間処理部512は、超音波データ記憶部511から読み出した複数のBモードデータを3次元サブ領域S2における超音波送受信方向(θp、φq)(θp=θ1+(p−1)Δθ(p=1〜P)、φq=φ1+(q−1)Δφ(q=1〜Q))に対応させて配列することにより3次元Bモードデータを形成し、更に、この3次元Bモードデータを構成する不等間隔のボクセルを補間処理して等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成する。そして、得られたボリュームデータをボリュームデータ生成部52のボリュームデータ記憶部522に一旦保存する(図7のステップS3)。
【0060】
一方、ボリュームデータ処理部53は、ボリュームデータ生成部52のボリュームデータ記憶部522から読み出した3次元サブ領域S2のボリュームデータをレンダリング処理して狭範囲なリアルタイム3次元画像データを生成し、表示部6のモニタに表示する(図7のステップS4)。そして、上述のステップS3及びステップS4を繰り返すことにより表示部6には、3次元サブ領域S2において生成されたリアルタイム3次元画像データが動画像としてリアルタイム表示される。
【0061】
次いで、操作者は、入力部9の画質条件入力機能91を用い、表示部6に表示されたリアルタイム3次元画像データの観察下でゲインやダイナミックレンジ等の画質条件を入力する。そして、入力された画質条件は、システム制御部12を介し更新タイミング検出部10に設けられた画質条件記憶部に保存され、更に、受信信号処理部4へ供給されて画質条件の設定が行なわれる(図7のステップS5)。このようなステップS3及びS4におけるリアルタイム3次元画像データの生成及び表示とステップS5における画質条件の設定を繰り返すことにより心拍同期3次元画像データに対する画質条件が初期設定される。
【0062】
画質条件の初期設定が終了したならば、操作者は、入力部9において画質条件の初期設定終了コマンドを入力し、このコマンド信号がシステム制御部12に供給されることにより3次元領域S0に対する心拍同期3次元画像データの生成と表示が開始される。
【0063】
心拍同期3次元画像データの生成に際し、走査制御部11は、送受信部2のレートパルス発生器211と送信遅延回路212及び受信遅延回路222に対し3次元サブ領域S1乃至S4を超音波走査するための制御信号を供給する。
【0064】
即ち、被検体から得られた心電波形に基づいて心拍同期信号生成部8が生成した心拍同期信号を、システム制御部12を介して受信した送信部21のレートパルス発生器211は、この心拍同期信号に同期し所定の繰り返し周期を有するレートパルスを生成して送信遅延回路212へ供給する。そして、上述のステップS3と同様の手順によって3次元領域S0(即ち、3次元サブ領域So1乃至So4)の心拍時相τ1乃至τ4におけるサブボリュームデータを生成し、これらの心拍時相及び3次元サブ領域を付帯情報としてサブボリュームデータ生成部51のサブボリュームデータ記憶部513に保存する(図7のステップS6)。
【0065】
次いで、ボリュームデータ生成部52は、サブボリュームデータ記憶部513に保存されたサブボリュームデータと上述の付帯情報を読み出し、これらのサブボリュームデータを前記付帯情報に基づいて合成し広範囲な3次元領域S0のボリュームデータを生成する(図7のステップS7)。一方、ボリュームデータ処理部53は、上述のステップS4と同様の手順によってボリュームデータ生成部52から順次供給されるボリュームデータをレンダリング処理して心拍同期3次元画像データを生成し表示部6に表示する(図7のステップS8)。そして、上述のステップS6乃至ステップS8を繰り返すことにより、表示部6には3次元領域S0において生成された心拍同期3次元画像データが動画像として表示される。但し、この場合、3次元サブ領域S1乃至S4におけるサブボリュームデータは、図5に示すように時系列的に繰り返し収集され、同一の3次元サブ領域において収集された古いボリュームデータは新たに収集されたボリュームデータによって順次更新されることにより新たなボリュームデータがレート周期Toで生成される。
【0066】
一方、更新タイミング検出部10の画質条件比較部は、入力部9から新たに供給された画質条件と上述のステップS5において既に設定され自己の画質条件記憶部に保存されている画質条件とを比較し、その差異を検出することにより画質条件の更新開始タイミングを検出する(図7のステップS9)。
【0067】
即ち、入力部9の画質条件入力機能91において新たな画質条件が入力された場合、更新タイミング検出部10の画質条件比較部は、入力部9から供給された新たな画質条件と自己の画質条件記憶部に保存されている画質条件との差異を検出することにより画質条件の更新開始タイミングを検出する。次いで、システム制御部12を介してこの検出結果を受信した走査制御部11は、心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへ遷移させるための走査制御信号を送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222へ供給する。
【0068】
次いで、上述のステップS3及びステップS4と同様の手順により3次元サブ領域S2に対するボリュームデータの生成とリアルタイム3次元画像データの生成及び表示を行ない、表示部6に表示されたリアルタイム3次元画像データの観察下で入力部9の画質条件入力機能91を用いた画質条件の更新が行なわれる(図7のステップS3乃至ステップS5)。そして、所望の画質を有したリアルタイム3次元画像データが得られるまでステップS3乃至ステップS5を繰り返し行なう。
【0069】
上述の手順による画質条件の更新によって所望のリアルタイム3次元画像データが得られたならば、入力部9における画質条件の新たな入力は停止され、更新タイミング検出部10の画質条件比較部は、入力部9から供給される画質条件と自己の画質条件記憶部に保存されている画質条件との差異が所定期間において無いことを確認することにより画質条件の更新終了タイミングを検出する。
【0070】
次いで、システム制御部12を介してこの検出結果を受信した走査制御部11は、リアルタイム3次元走査モードから心拍同期3次元走査モードへ遷移させるための走査制御信号を送受信部2の送信遅延回路212及び受信遅延回路222へ供給する。そして、上述のステップS6乃至ステップS8と同様の手順により3次元領域S0におけるボリュームデータの生成と心拍同期3次元画像データの生成及び表示を行なう(図7のステップS6乃至ステップS8)。
【0071】
一方、上述のステップS9において、入力部9から供給される画質条件と更新タイミング検出部10の画質条件記憶部に保存されている画質条件との差異が認められない場合、ステップS6乃至ステップS8を繰り返すことにより3次元領域S0におけるボリュームデータの生成と心拍同期3次元画像データの生成及び表示を継続して行なう(図7のステップS6乃至ステップS9)。
【0072】
以上述べた本発明の実施例によれば、心拍同期3次元走査による広範囲な3次元画像データの収集過程でゲイン等の画質条件を更新する場合、更新開始タイミングの検出信号に基づいて心拍同期3次元走査モードからリアルタイム3次元走査モードへ自動切り替えすることにより、好適な画質条件への更新をリアルタイム3次元走査による狭範囲な3次元画像データの観察下にて正確かつ容易に行なうことができる。
【0073】
又、更新終了タイミングの検出信号に基づいてリアルタイム3次元走査モードから心拍同期3次元走査モードへ自動切り替えすることにより、その画質条件が好適な状態に調整された心拍同期3次元走査モードへ容易に復帰することができる。従って、良質な心拍同期3次元画像データを効率よく収集することが可能となる。
【0074】
特に、画質条件の設定や更新は、心拍同期3次元走査モードによって収集される心拍同期3次元画像データと同等の性能を有するリアルタイム3次元画像データに基づいて行われるため、心拍同期3次元画像データに好適な画質条件を短時間かつ容易に設定することができる。
【0075】
従って、上述の実施例によれば、検査効率あるいは診断効率が向上するのみならず超音波検査における操作者の負担を大幅に軽減することができる。
【0076】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、当該被検体から得られる受信信号を処理して超音波データとしてのBモードデータを生成し、このBモードデータに基づいて心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードのボリュームデータを生成する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、カラードプラデータ等の他の超音波データに基づいて上述のボリュームデータを生成してもよい。
【0077】
又、リアルタイム3次元走査モードでは、心拍同期3次元走査モードの広範囲な3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域の中から選択した1つあるいは複数の3次元サブ領域に対してリアルタイム3次元走査を行なう場合について述べたが、リアルタイム表示が可能なように任意に設定された狭範囲な3次元領域に対してリアルタイム3次元走査を行なっても構わない。更に、リアルタイム3次元走査モードでは、心拍同期3次元走査モードより視野深度を浅くした3次元走査あるいは走査密度を粗くした3次元走査を行なうことにより、所望の3次元領域におけるボリュームデータをリアルタイム表示が可能な時間内において収集してもよい。
【0078】
又、心拍同期3次元走査モードの3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域の中から選択した3次元サブ領域に対してリアルタイム3次元走査を行なう場合、画質条件の更新開始タイミングが検出された時点で走査が実行されていた心拍同期3次元走査モードの3次元サブ領域に対してリアルタイム3次元走査を行なう方法が望ましいが、特に限定されない。
【0079】
一方、上述の実施例では、振動素子が2次元配列された超音波プローブ3を用いて心拍同期3次元走査モード及びリアルタイム3次元走査モードのボリュームデータを収集する場合について述べたが、振動素子が1次元配列された超音波プローブを機械的に高速移動することによって上述のボリュームデータを収集してもよい。
【0080】
又、受信信号に対するゲインやダイナミックレンジを調整することによって画質条件の設定及び更新を行なう場合について述べたが、これに限定されない。又、受信信号処理部4の増幅回路41、包絡線検波器42及び対数変換器43を制御することによって上述の画質条件を調整する場合について述べたが、画質条件の調整は、他のユニットあるいは他の方法によって行なっても構わない。
【符号の説明】
【0081】
2…送受信部
21…送信部
211…レートパルス発生器
212…送信遅延回路
213…駆動回路
22…受信部
221…A/D変換器
222…受信遅延回路
223…加算器
3…超音波プローブ
4…受信信号処理部
41…増幅回路
42…包絡線検波器
43…対数変換器
5…画像データ生成部
51…サブボリュームデータ生成部
52…ボリュームデータ生成部
53…ボリュームデータ処理部
6…表示部
7…生体信号計測ユニット
8…心拍同期信号生成部
9…入力部
91…画質条件入力機能
10…更新タイミング検出部
11…走査制御部
12…システム制御部
100…超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍同期3次元走査によって被検体の3次元領域から収集したボリュームデータに基づいて時系列的な心拍同期3次元画像データを生成する超音波診断装置において、
前記心拍同期3次元画像データの収集過程で新たな画質条件を入力する画質条件入力手段と、
前記画質条件入力手段によって入力された前記画質条件に基づいて画質条件の更新開始タイミングを検出する更新タイミング検出手段と、
前記更新開始タイミングに基づいて前記心拍同期3次元走査からリアルタイム3次元走査へ走査モードを遷移させる走査制御手段と、
前記心拍同期3次元画像データ及び前記リアルタイム3次元走査によって得られたリアルタイム3次元画像データを表示する表示手段とを備え、
前記画質条件入力手段は、前記表示手段によって表示された前記リアルタイム3次元画像データに基づいて前記心拍同期3次元画像データに好適な画質条件を入力することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記更新タイミング検出手段は、前記画質条件入力手段によって入力された前記画質条件に基づいて画質条件の更新終了タイミングを検出し、前記走査制御手段は、前記走査モードを前記リアルタイム3次元走査から前記心拍同期3次元走査へ復帰させるための制御を前記更新終了タイミングに基づいて行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記更新タイミング検出手段は、前記画質条件入力手段によって新たに入力された画質条件と既に入力された過去の画質条件とを比較することにより前記更新開始タイミング及び前記更新終了タイミングを検出することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記更新タイミング検出手段は、前記画質条件入力手段において新たな画質条件の入力が停止されてから所定時間後を前記更新終了タイミングとして検出することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記走査制御手段は、前記更新開始タイミングに基づき、前記心拍同期3次元走査が行われる広範囲な3次元領域より狭い3次元領域に対して前記リアルタイム3次元走査を実効させるための制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記走査制御手段は、前記心拍同期3次元走査が行われる広範囲な3次元領域を構成する複数の3次元サブ領域の中から選択した1つあるいは複数の3次元サブ領域に対して前記リアルタイム3次元走査を実効させるための制御を行なうことを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記走査制御手段は、前記更新開始タイミングが検出された時点で前記心拍同期3次元走査が実行されている前記3次元サブ領域に対してリアルタイム3次元走査を実効させるための制御を行なうことを特徴とする請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記走査制御手段は、前記更新開始タイミングに基づき、前記心拍同期3次元走査より視野深度を浅くした3次元走査あるいは走査密度を粗くした3次元走査を前記リアルタイム3次元走査として実行させるための制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記画質条件入力手段は、前記心拍同期3次元走査によって収集された受信信号に対するゲイン及びダイナミックレンジの少なくとも何れかを前記画質条件として入力することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
心拍同期3次元走査によって被検体の3次元領域から収集したボリュームデータに基づいて時系列的な心拍同期3次元画像データを生成する超音波診断装置に対し、
前記心拍同期3次元画像データの収集過程で新たな画質条件を入力する画質条件入力機能と、
前記画質条件入力手段によって入力される前記画質条件に基づいて画質条件の更新開始タイミングを検出する更新タイミング検出機能と、
前記更新開始タイミングに基づいて前記心拍同期3次元走査からリアルタイム3次元走査へ走査モードを遷移させる走査制御機能と、
前記心拍同期3次元画像データ及び前記リアルタイム3次元走査によって得られたリアルタイム3次元画像データを表示する表示機能を
実行させることを特徴とする画質条件更新用制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−87759(P2011−87759A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243459(P2009−243459)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】