説明

超音波診断装置

【課題】適切に超音波画像のゲイン調整を行う。
【解決手段】送信部12は、プローブ10を制御することにより超音波ビームを形成し、受信部14は、プローブ10から得られる信号に基づいて超音波ビームに対応した受信ビーム信号を形成する。受信部14において形成された受信ビーム信号は、ゲイン調整部16においてゲイン調整されてから、超音波画像形成部20へ出力される。超音波画像形成部20は、複数の超音波ビームから得られる複数の受信ビーム信号に基づいて超音波画像データを形成する。必要に応じて、超音波画像形成部20において形成された超音波画像データはデータ記憶部24に記憶される。ゲイン調整部16は、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから得られる基準ゲインに基づいてゲインの自動調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に超音波画像のゲイン調整に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を利用することにより、診断の対象となる部位に対して超音波を送受波してその部位を含んだ超音波画像を形成することができる。超音波診断装置により形成される超音波画像は、例えば診断の対象となる部位や患者の体質などに応じて超音波の減衰に差があることなどから、ゲイン調整されることが望ましい。例えば、超音波診断装置のユーザが超音波画像を確認しつつゲイン調整の操作を行って、その超音波画像に適したゲイン調整を行う。
【0003】
このようなゲイン調整を超音波診断装置が自動調整する技術も知られている。従来からよく知られている自動調整の技術は、例えば診断中の画像データに関する統計的なデータとゲイン調整のための基準値との比較に基づいて、診断中の画像のゲイン調整を行うものである(特許文献1〜5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−152422号公報
【特許文献2】特開平2−218353号公報
【特許文献3】特許第3518910号公報
【特許文献4】特開平5−245147号公報
【特許文献5】特開平5−146446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来から存在するゲインの自動調整技術では、必ずしも適切なゲイン調整ができるとは限らない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みて成されたものであり、その目的は、適切に超音波画像のゲイン調整を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様の超音波診断装置は、超音波を送受波する複数の振動素子を備えたプローブと、プローブを制御することにより各超音波ビームごとに受信信号を得る送受信部と、複数の超音波ビームから得られる複数の受信信号に基づいて画像データを形成する画像形成部と、画像データに対応した超音波画像を表示する表示部と、超音波画像のゲイン調整を行うゲイン調整部と、を有し、前記ゲイン調整部は、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから得られる基準ゲインに基づいて、画像形成部において形成される画像データに対応した超音波画像のゲイン調整を行うことを特徴とする。
【0008】
上記態様によれば、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから得られる基準ゲインに基づいて超音波画像のゲイン調整が行われるため、過去に行われたゲイン調整の結果を反映させたゲイン調整が可能になる。例えば保存蓄積された画像のゲイン調整結果に近づくようにゲイン調整することにより、施設(病院)や検査者(ユーザ)の意図や好みなどに応じたゲイン調整が複雑なユーザ操作を必要とせずに容易に実現される。
【0009】
望ましい態様において、前記基準ゲインは、過去に形成された複数の画像データに含まれる複数の画素データに基づいて算出されることを特徴とする。
【0010】
望ましい態様において、前記基準ゲインは、各画像データに対して設定されたサンプル領域内の画素データの平均値に基づいて算出されることを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、各画像データごとに複数のサンプル領域が設定され、前記基準ゲインは、前記複数のサンプル領域から得られる複数の平均値のうちの特異的な平均値を除外した残りの平均値に基づいて算出されることを特徴とする。
【0012】
望ましい態様において、前記基準ゲインは、過去に形成された複数の画像データの各々に関する統計データを各画像データが形成された日時に応じて重み付け加算して算出されることを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記基準ゲインは、診断の対象となる部位ごとに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、適切に超音波画像のゲイン調整を行うことが可能になる。例えば、本発明の好適な態様により、過去に行われたゲイン調整の結果を反映させたゲイン調整が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す機能ブロック図である。プローブ10は、例えば生体内組織などに対して超音波を送受波する超音波探触子である。プローブ10は、送信部12により送信制御されて受信部14により受信制御される。
【0016】
送信部12は、プローブ10が備える図示しない複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力する。そして、各振動素子に対する送信信号の出力タイミングなどを適宜制御することにより、プローブ10から特定の方向に向けられた超音波ビームを形成し、さらにその超音波ビームを二次元平面内に亘ってあるいは三次元空間内に亘って走査させる。
【0017】
受信部14は、プローブ10を受信制御することにより、プローブ10が備える複数の振動素子の各々から受信信号を収集して整相加算処理などを行い、プローブ10から特定の方向に向けられた各超音波ビームに対応した受信ビーム信号を形成する。必要に応じて受信部14において受信ビーム信号に対して検波処理などが施される。
【0018】
受信部14において各超音波ビームごとに形成された受信ビーム信号(整相加算処理後の受信信号)は、ゲイン調整部16においてゲイン調整されてから、超音波画像形成部20へ出力される。
【0019】
超音波画像形成部20は、複数の超音波ビームから得られる複数の受信ビーム信号に基づいて超音波画像データを形成し、その超音波画像データに対応した超音波画像が表示部26に表示される。超音波画像は、例えば、Bモード断層画像、三次元画像などの既知の超音波画像のうちのいずれでもよい。
【0020】
操作デバイス18は、ユーザ操作を受け付けるデバイスである。操作デバイス18は、例えば、トラックボール、マウス、キーボード、タッチパネル、ダイヤルなどであり、例えば本超音波診断装置の装置本体に設けられる。
【0021】
制御部22は、例えば制御手順を記述したプログラムなどに従って本超音波診断装置内の各部を制御する。また、制御部22は、操作デバイス18を介して入力されるユーザ操作に応じて装置内の各部を制御する。
【0022】
例えば、操作デバイス18を介してユーザが超音波画像データの保存を指示すると、超音波画像形成部20において形成された超音波画像データがデータ記憶部24に記憶される。さらに、ユーザ操作に応じて、データ記憶部24に記憶された超音波画像データが超音波画像形成部20によって読み出されて表示部26にそのデータに対応した超音波画像が表示されてもよい。データ記憶部24は、例えば、ハードディスクドライブや光ディスクドライブやメモリなどである。
【0023】
また、本実施形態においては、操作デバイス18を介してユーザが超音波画像のゲイン調整を行うことができる。例えば、ユーザは、表示部26に表示される超音波画像を見ながら、ゲイン調整用の操作デバイス18であるダイヤルを操作してその超音波画像のゲイン調整を行う。さらに、本実施形態においては、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから、ゲイン調整部16がゲインの自動調整を行う。
【0024】
統計データは、超音波画像形成部20において形成された超音波画像データに基づいて統計データ算出部23によって算出される。算出の対象となる超音波画像データは、例えば、ユーザ操作に応じてフリーズ表示した超音波画像の画像データである。統計データ算出部23によって算出された統計データは、データ記憶部24に記憶される。その際、統計データに対応した超音波画像データがデータ記憶部24に記憶されてもよいし、統計データのみが記憶されてもよい。なお、統計データは、例えば、ユーザ操作に応じてデータ記憶部24に保存された超音波画像データに基づいて、制御部22において算出されてもよい。さらに制御部22において算出された統計データがデータ記憶部24に記憶されてもよい。
【0025】
以下に本実施形態におけるゲイン調整について説明する。なお、以下の説明において、図1に示した部分(構成)については図1の符号を利用する。
【0026】
ゲイン調整部16は、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから得られる基準ゲインに基づいてゲインの自動調整を行う。その基準ゲインは、過去に形成された画像データに含まれる複数の画素データに基づいて算出される。
【0027】
図2は、基準ゲインの算出手順を説明するための図であり、図2には、過去に形成された超音波画像データに対応した超音波画像40が示されている。基準ゲインを算出する際には、まず、超音波画像(データ)40に対して複数のサンプル領域42が設定される。サンプル領域42の個数や位置は図示される態様に限定されない。なお、通常は診断の対象となる部位が超音波画像40の中央付近に配置されるため、複数のサンプル領域42は超音波画像40の中央付近に配置されることが望ましい。
【0028】
複数のサンプル領域42が設定されると、各サンプル領域42ごとにその領域内の複数の画素の輝度値の平均値が算出される。その平均値は、超音波画像形成部20において形成された超音波画像データに基づいて統計データ算出部23において算出され、データ記憶部24に記憶される。また、平均値は、データ記憶部24に保存された超音波画像データに基づいて、制御部22において算出されてもよい。そして、全てのサンプル領域42についての平均値が算出されると、それらのうちの特異的な平均値が除去される。例えば、全てのサンプル領域42の平均値のうち、値が大きい上位数個の平均値と値が小さい下位数個の平均値が除去される。そして、特異的な平均値が除去された残りの全ての平均値についての平均値(画像平均値とする)が算出される。こうして算出された超音波画像40に関する画像平均値が基準ゲインとなる。
【0029】
基準ゲインは、例えばデータ記憶部24に記憶された平均値に基づいて制御部22において算出される。もちろん、データ記憶部24に保存された超音波画像データに基づいて制御部22が平均値と基準ゲインを算出してもよい。ゲイン調整部16は算出された基準ゲインに基づいて、受信部14から出力される受信ビーム信号のゲインを調整する。例えば、受信部14から出力される受信ビーム信号に基づいて形成される超音波画像の画像平均値が、データ記憶部24に記憶された超音波画像の画像平均値と一致するように、受信部14から出力される受信ビーム信号のゲインを調整する。
【0030】
なお、受信部14から出力される受信ビーム信号に基づいて形成される超音波画像の画像平均値も、例えば図2に示す複数のサンプル領域42を利用して算出される。また、ゲイン調整部16が超音波画像形成部20において形成される超音波画像データを直接的にゲイン調整してもよい。
【0031】
このように、ゲイン調整部16は、基準ゲインに基づいてゲイン調整を行う。その基準ゲインは、過去に形成された複数の超音波画像データから算出される。さらに、過去に形成された各超音波画像データは、表示部26に表示されるその超音波画像データの画像を見ながらユーザが操作デバイス18を操作してゲインを微調整して最適化したものが望ましい。
【0032】
そして、過去に形成された各超音波画像データごとに、図2を利用して説明したように複数のサンプル領域42を設定して画像平均値を算出し、さらに、複数の超音波画像データに対応した複数の画像平均値の平均値を算出して、その平均値を基準ゲインとする。これにより、ユーザが以前に最適化した複数の超音波画像データのゲイン調整結果が基準ゲインに反映されることとなり、その基準ゲインに基づいてゲインが自動調整された超音波画像は、そのユーザにとっての最適化された状態に極めて近いものとなる。もちろん、自動調整された超音波画像に対してユーザが操作デバイス18を利用してさらに微調整できる構成としてもよい。
【0033】
なお、自動調整の開始等の操作をユーザが入力するようにしてもよい。例えば、ユーザが操作デバイス18を操作して自動調整を開始させ、仮に自動調整の結果が意図したものとならなかった場合に、ユーザが再び同じ操作を行うことにより自動調整前の状態に画像を戻すようにしてもよい。その再操作を受け付ける時間は、例えば数秒以内などに設定される。また、自動的に一定の周期(例えば数秒間隔)で繰り返し自動調整を行うようにしてもよい。
【0034】
また、基準ゲインを算出する際に利用される超音波画像(データ)の枚数は、例えば、20枚、40枚、100枚などのうちから選択可能な構成としてもよい。さらに、複数の超音波画像データに対応した複数の画像平均値から基準ゲインを算出する際に、各超音波画像データが形成された日時に応じた重み付け処理を行って複数の画像平均値に関する重み付け平均値を算出してもよい。例えば、最近形成された超音波画像データの画像平均値を重視した重み付け処理を行うことにより、最近形成された超音波画像データのゲイン調整結果が基準ゲインに比較的大きく反映されるようになる。
【0035】
さらに、基準ゲインは、診断の対象となる部位ごとに設定されてもよい。図3は、診断部位ごとに設定される基準ゲインを説明するための図であり、データ記憶部24に記憶されたデータの記憶状態を示したものである。
【0036】
複数の腹部画像40Aは、腹部を診断対象として得られた超音波画像である。そして、これらの腹部画像40Aの各々に対して複数のサンプル領域(図2参照)が設定されて、各腹部画像40Aごとに画像平均値が算出され、複数の腹部画像40Aから得られる複数の画像平均値をさらに平均化することにより、腹部画像40Aに関する基準ゲインYiが算出される。なお、データ記憶部24には、各腹部画像40Aごとに算出された画像平均値のみが記憶されてもよいし、各腹部画像40Aの画像データが記憶されてもよいし、算出された基準ゲインYiのみが記憶されてもよい。
【0037】
また、複数の産科画像40Bは、産科の診断において得られた超音波画像であり、各産科画像40Bごとに画像平均値が算出され、複数の産科画像40Bから得られる複数の画像平均値をさらに平均化することにより、産科画像40Bに関する基準ゲインYjが算出される。データ記憶部24には、各産科画像40Bごとに算出された画像平均値のみが記憶されてもよいし、各産科画像40Bの画像データが記憶されてもよいし、算出された基準ゲインYjのみが記憶されてもよい。同様に、循環器系の診断において得られた複数の循環器画像40Cに関する基準ゲインYkも算出される。さらに、他の診断対象部位、例えば甲状腺や乳腺や心臓や肝臓などに対応した画像から基準ゲインが算出されてもよい。
【0038】
そして、ゲイン調整部16は、診断対象に応じた基準ゲインを利用してゲイン調整を行う。例えば、腹部の診断の際に、ゲイン調整部16は、腹部画像40Aに関する基準ゲインYiに基づいて、受信部14から出力される受信ビーム信号のゲインを調整する。これにより、診断部位に応じた適切なゲインの自動調整が可能となる。
【0039】
なお、本実施形態の超音波診断装置を複数のユーザが交互に利用する場合には、各ユーザごとに基準ゲインを設定するようにしてもよい。例えば、各ユーザに対応したフォルダに、図3に示した複数の腹部画像40Aと複数の産科画像40Bと複数の循環器画像40Cからなる画像データセットを記憶させる。そして、あるユーザが本超音波診断装置を利用する場合に、そのユーザに対応したフォルダの画像データが利用されて基準ゲインが算出される。これにより、そのユーザの意図や好みなどに応じたゲイン調整が複雑なユーザ操作を必要とせずに容易に実現される。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。例えば、画像データに関する統計データとして、サンプル領域内の画素値の平均値に換えて、サンプル領域内の画素値のヒストグラムを利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【図2】基準ゲインの算出手順を説明するための図である。
【図3】診断部位ごとに設定される基準ゲインを説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
10 プローブ、12 送信部、14 受信部、16 ゲイン調整部、18 操作デバイス、20 超音波画像形成部、22 制御部、23 統計データ算出部、24 データ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受波する複数の振動素子を備えたプローブと、
プローブを制御することにより各超音波ビームごとに受信信号を得る送受信部と、
複数の超音波ビームから得られる複数の受信信号に基づいて画像データを形成する画像形成部と、
画像データに対応した超音波画像を表示する表示部と、
超音波画像のゲイン調整を行うゲイン調整部と、
を有し、
前記ゲイン調整部は、過去に形成された複数の画像データに関する統計データから得られる基準ゲインに基づいて、画像形成部において形成される画像データに対応した超音波画像のゲイン調整を行う、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記基準ゲインは、過去に形成された複数の画像データに含まれる複数の画素データに基づいて算出される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記基準ゲインは、各画像データに対して設定されたサンプル領域内の画素データの平均値に基づいて算出される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
各画像データごとに複数のサンプル領域が設定され、
前記基準ゲインは、前記複数のサンプル領域から得られる複数の平均値のうちの特異的な平均値を除外した残りの平均値に基づいて算出される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記基準ゲインは、過去に形成された複数の画像データの各々に関する統計データを各画像データが形成された日時に応じて重み付け加算して算出される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記基準ゲインは、診断の対象となる部位ごとに設定される、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−39475(P2009−39475A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210682(P2007−210682)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】