説明

超音波診断装置

【課題】 簡易な回路構成で送波信号の異常検出が可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 送波信号を生成し探触子2を励振し被検体へ超音波を送波する送波回路3と、探触子2により受波される前記被検体からの反射エコー信号を信号処理する受波回路4と、信号処理された受波信号から超音波画像を構成する超音波画像構成部5と、前記超音波画像を表示する表示部6と、前記送波部3乃至表示部6を制御する制御部7と、制御部7に操作者からの指示を与えるコントロールパネル200と、送波部3の出力に設けられ、ダイオードと抵抗及びキャパシタの直列接続で構成され前記キャパシタの充電電圧を検出する電圧検出回路100を具備し、制御部7は、前記充電電圧に基づいて送波信号を異常検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に係り、特に探触子を駆動するための送波信号の異常検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波診断装置は、生体に超音波を照射して生体の内部の画像を得るものであるので、超音波が生体に及ぼす影響に配慮している。
【0003】
超音波が生体に及ぼす影響とは、超音波の加熱現象と機械的影響がある。超音波の加熱現象とは、生体へ超音波を照射することにより生体の一部が加熱されることである。超音波の機械的影響とは、生体への超音波照射により生体が物理的に変位することである。このような超音波の生体に及ぼす影響を制御するために超音波診断装置では音響パワーを計測し安全基準を超えないように送波信号の振幅値・波数等の制御が行われている。
【0004】
また、制御ソフトウェアの誤動作やハードウェアの故障等が生じ送波信号のパワーが増加した場合には、超音波を停止して安全性を確保している。
【0005】
送波信号の異常を検出技術は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では励振される探触子に印加される送波信号を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-136725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1は、電気信号である送波信号を監視するために、一般的に超音波診断装置は数十〜数百チャンネルの送波回路を有するため送波信号の監視を行うには、チャンネル数と同様のA/Dコンバータを設け監視する必要があり、回路規模の観点から現実的でない。
そこで、本発明の目的は、簡易な回路構成で送波信号の異常検出が可能な超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の超音波診断装置は、送波信号を生成し探触子を励振し被検体へ超音波を送波する送波部と、前記探触子により受波される前記被検体からの反射エコー信号を信号処理する受波部と、信号処理された受波信号から超音波画像を構成する超音波画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、前記送波部乃至表示部を制御する制御部と、制御部に操作者からの指示を与える操作卓と、を備えた超音波診断装置であって、前記送波部の出力に、ダイオードと抵抗及びキャパシタの直列接続し、前記制御部は、前記キャパシタの充電電圧に基づいて送波信号の正常又は異常を判定することを特徴とする。
制御部は、前記キャパシタの充電電圧に基づいて送波信号の正常又は異常を判定するので、簡易な回路構成で送波信号の異常検出できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な回路構成で送波信号の異常検出が可能な超音波診断装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】各実施例で共通する超音波診断装置の構成を示すブロック図
【図2】実施例1の検出回路を示す図
【図3】キャパシタの充放電がバランスした定常状態の電圧―時間の関係を示すグラフ
【図4】実施例2の検出回路を示す図
【図5】実施例3の検出回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の各実施例を具体的に説明する。
図1は各実施例で共通する超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
超音波診断装置1は、送波回路3、受波回路4、超音波画像構成部5、表示部6、制御部7、コントロールパネル200、検出回路100から構成されている。
【0013】
送波回路3は送波信号を生成し探触子2を励振し被検体(図示省略)へ超音波を送波する。受波回路4は探触子2により受波される被検体からの反射エコー信号を増幅する。超音波画像構成部5は受波信号に信号処理を施し超音波画像を構成する。表示部6は超音波画像構成部5において構成された超音波画像を表示する。制御部7は送波回路3乃至表示部6の各要素を制御する、例えばCPUからなる。コントロールパネル200は操作卓とも呼ばれ、制御部7に操作者からの指示を与える。検出回路100はダイオードと抵抗及びキャパシタの直列接続で構成され送波時に送波回路3からの入力に応じて前記キャパシタの充電電圧をコンパレータに出力する。コンパレータは一端に基準電圧を、他端に前記キャパシタの充電電圧をそれぞれ入力し、各電圧の値を比較した結果を制御部7に出力する。制御部7は、前記キャパシタの充電電圧が基準電圧を超えていれば送波回路3に超音波の送波を停止する信号を供給する。次に各実施例で検出回路100の詳細を説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は、実施例1の検出回路を示す。
送波回路3により生成された送波信号は、ダイオード8及び抵抗9を介してキャパシタ10に電流を流し、キャパシタ10に電荷を蓄える。ここで抵抗9はキャパシタ10に蓄えられる電荷を調整するために設けられた電流制限用の抵抗である。一方、受波時のように送波信号が無い時はキャパシタ10に蓄えられた電荷は抵抗11を介して放電される。この様な充放電を繰り返し、最終的にキャパシタ10の両端電圧+Vは上記充放電の状態が均等され、定常状態となる。
【0015】
図3はキャパシタの充放電がバランスした定常状態の電圧―時間の関係を示すグラフである。グラフはキャパシタ充放電のバランスが取れた定常状態における+Vの電圧と送波時間及び受波時間との関係を示す。グラフ中の送波期間t1ではキャパシタ10に電荷が蓄えられるため、その両端電圧はVaからVbに上昇する。
【0016】
一方、受波期間t2においてはキャパシタ10に蓄えられた電荷は抵抗11を介して放電されるため、電圧がVbからVaへと降下する。
【0017】
リップル量はVbとVaの差となり、リップル量はまた抵抗9とキャパシタ10、及び抵抗11とキャパシタ10の時定数により決まる。すなわち、これら時定数をt1及びt2より大きくすることにより、電圧Vb-Vaを低く制御することができ、キャパシタ10の両端電圧+Vはほぼ充電電圧+V1であると看做せる。
【0018】
なお、時定数を大きくすると、キャパシタの充放電の均等状態までには時間が要してしまうが、一般的に、t1は数usec程度でありt2は数百usec程度であるため、時定数をこれより大きな値であったとしても、従来技術の温度センサーによる異常検出の検出時間より短い時間にて検出を行うことが可能である。
【0019】
一方、送波信号の振幅が大きくなった場合や波数が多くなった場合のような異常が検出されるときには、キャパシタに充電により蓄積される電荷量が増加するため、定常状態における充電電圧+V1は大きくなる。
【0020】
従って、キャパシタ10の両端電圧+Vの電圧値を検出することにより間接的に送波信号の振幅や波数を検出することが可能となり、送波信号の異常を検出することができる。
【0021】
さらに、キャパシタ両端電圧+V、すなわち充電電圧+V1の出力を、図2の実施例1に示すようにダイオード12を介して他チャンネルと並列に接続することにより、複数のチャンネルの中で最大の充電電圧を検出することができる。
【0022】
例えば、ここで仮に2ch目の送波回路になんらかの異常が生じ、設定された振幅以上の送波信号が出力されたと仮定する。すると前述の動作原理よりキャパシタ15の両端電圧+V’は他チャンネルより大きな充電電圧を出力するため、ダイオード17のみ順バイアスされる。そのため、コンパレータ18には+V’の値が入力されることになり、予め設定されている閾値電圧と比較し、閾値を超えるようであれば送波停止信号を出力する。
【0023】
実施例1によれば、簡易な回路構成で送波信号の異常検出ができる。
また、実施例1ではキャパシタ10や15の充電に寄与するので、送波波形の正側の波形の異常信号の検出に好適である。
【0024】
また、実施例1では、抵抗9や14の値を振動子19のインピーダンスに比べて大きな値にすることで検出回路が負荷となることが無いため、検出回路を用いても性能劣化等を引き起こすことはない。
【実施例2】
【0025】
図4は実施例2の検出回路を示す。
実施例2では送波波形の正側の波形に加えて、負側の送波波形の検出回路を設けたものである。例えば、送波回路3の1CH目に着目すると、送波波形が正側の波形である場合、ダイオード8が順バイアスとなりキャパシタ10に電荷を蓄積し、+Vの電圧を生じさせる。一方、送波波形が負側の波形である場合、ダイオード20が順バイアスとなりキャパシタ22に電荷を蓄積し、-Vの電圧を生じさせる。このようにして得られたキャパシタの両端電圧+Vと―Vはそれぞれ実施例2で示した回路と同様にダイオードを介して他チャンネルと接続される。
【0026】
そのため、差動増幅器30の各々の入力端子には複数のチャンネルの中で最大及び最小の充電電圧を有するキャパシタ両端電圧が入力される。差動増幅器30では、その差電圧を差動−シングル変換した後にコンパレータ18に出力し、コンパレータはあらかじめ設定されていた閾値電圧と比較、異常検出した際には制御部7が停止信号を出力する。
【0027】
実施例2によれば、簡易な回路構成で送波信号の異常検出ができる。
また、実施例2では送波波形の正側及び負側の波形の異常信号の検出に好適である。
【実施例3】
【0028】
図5は実施例3の検出回路を示す。
一般に超音波診断装置はBモード、カラーモード、ドップラーモードといった診断モードを持ち、診断モード毎に送波信号の最適な波数や振幅値は異なる。さらに、接続される探触子によっても振動子を励振する送波信号の振幅値が異なる。
【0029】
そのため、ひとつの閾値では全ての振幅値に対応することが困難なため、各探触子のモード毎に閾値を可変する必要性がある。
【0030】
実施例3では上記必要性に着目したものであり、メモリ32内に各探触子のモード毎の閾値を記憶させておく。制御部7はこの閾値とADコンバータ31の出力信号とを比較し、送波回路の制御を行う。なお、超音波診断装置では各探触子のモード毎の音響パワーが安全基準値を超えないことを測定により確認しておく必要がある。安全基準値を閾値として設定する。
【0031】
また、実施例3では、モード毎に閾値を可変するので、送波信号の異常の程度を知ることが可能である。検出された充電電圧が閾値と同程度の場合には警告メッセージの表示のみに留め、明らかに閾値を超えるような異常状態の場合には即座に送波を停止するという制御方法も可能である。
【0032】
実施例3によれば、簡易な回路構成で送波信号の異常検出ができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その構成要素を組み合わせて実施しても良い。
【0033】
以上、本発明によれば性能を損なうことなく簡易な回路構成にて送波信号の異常検出をすることにより、異常が検出された送波信号を停止することができるので、安全性の高い超音波診断装置が提供できる。
【符号の説明】
【0034】
1 超音波診断装置、2 探触子、3 送波回路、4 受波回路、5 超音波画像構成部、6 表示部、7 制御部、200 コントロールパネル、100 電圧検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送波信号を生成し探触子を励振し被検体へ超音波を送波する送波部と、前記探触子により受波される被検体からの反射エコー信号を増幅する受波部と、増幅された受波信号受波信号に信号処理を施し超音波画像を構成する超音波画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、前記送波部乃至表示部を制御する制御部と、制御部に操作者からの指示を与える操作卓と、を備えた超音波診断装置であって、前記送波部の出力に設けられ、ダイオードと抵抗及びキャパシタの直列接続で構成され前記キャパシタの充電電圧を検出する電圧検出部を具備し、前記制御部は、前記充電電圧に基づいて送波信号の正常又は異常を判定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記電圧検出部は、前記探触子の各チャンネルの全てもしくは一部に設け、さらにダイオードを介して各チャンネルのキャパシタの充電電圧出力を接続して構成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置
【請求項3】
前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの充電電圧もしくは最大充電電圧を閾値として予め記憶する記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、前記閾値と比較し、送波信号の異常を検出した際には送波部を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−115352(P2011−115352A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275016(P2009−275016)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】