説明

超音波診断装置

【課題】呼吸動に起因する画質の低下を抑制した超音波画像を容易に取得することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】呼吸動検出部14により、フレーム間における超音波画像の追尾を行うことにより被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを検出し、操作者により操作部15を介してフリーズの指示が入力されると、本体制御部13は、呼吸動検出部14で検出された画像の動きに基づいて被検体の呼吸動の時間的変化量が所定値以下となったときに静止画像取得タイミングと判断して画像生成部17で生成されたBモード画像信号に基づき静止画像を表示部15に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置は、被検体内の呼吸器や心臓といった動きのある臓器の動きをリアルタイムに表示することができるため、診断および治療に有効に使われている。
例えば、特許文献1には、被検体の動きのある臓器が表示された超音波画像から、診断のために、特定部位の動きの速度を算出することが示されている。また、操作者自らが操作し、特定の超音波画像をフリーズさせ画面に表示させることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−66399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、被検体の呼吸動にかかる超音波画像に基づいて静止画像を取得したい場合、呼吸動の影響による画像の画質低下を抑制するため被検体に息止め動作を要求することが多い。
しかしながら、被検体が息止め動作を自ら行えない場合、例えば被検体が動物である場合には、操作者が被検体の呼吸動のタイミングをみてフリーズ操作を行わなければ、取得される画像の画質が低下してしまい診断が精度よくできないおそれがある。また、被検体が体格の小さい小動物である場合、呼吸の動きが速いため、操作者は呼吸動のタイミングをつかむことが特に難しくなる。
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、呼吸動に起因する画質の低下を抑制した超音波画像を容易に取得することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した振動子アレイから出力された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像が生成され、表示部に表示される超音波診断装置であって、フレーム間における超音波画像の追尾を行うことにより被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを検出する呼吸動検出部と、操作者によるフリーズの指示を入力するための操作部と、操作部を介してフリーズの指示が入力されると、呼吸動検出部で検出された画像の動きに基づいて被検体の呼吸動の時間的変化量が所定値以下となったときに静止画像取得タイミングと判断して画像生成部で生成された超音波画像を表示部に表示する制御部とを備える。
【0007】
呼吸動検出部は、予め設定された監視領域内において超音波画像の追尾を行うことができる。また、呼吸動検出部は、深さ方向の画像の動きまたは2次元方向の画像の動きを検出することもできる。
制御部は、被検体の吸気量が最大または最小となったときに静止画像取得タイミングと判断することが好ましい。
また、制御部は、呼吸動検出部で検出された画像の動きが所定量以下になったときに静止画像取得タイミングと判断することもできる。
さらに、制御部は、前記呼吸動検出部で検出された画像の動きが振幅に対して所定の比率以下になったときに静止画像取得タイミングと判断することもできる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、呼吸動に起因する画質の低下を抑制した超音波画像を取得することができるため、容易に操作者は高画質の画像に基づいて適切な診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明における一実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを説明するための図であり、(A)は被検体の吸気量が最小のときの超音波画像を示し、(B)は被検体の吸気量が最大のときの超音波画像を示す。
【図3】被検体の呼吸動に起因する特定部位の移動量の時間的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、この発明の一実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1に接続された診断装置本体2とを備えている。
超音波プローブ1は、複数の超音波トランスデューサが一次元配列された振動子アレイ3を有しており、この振動子アレイ3に送信回路4と受信回路5が接続され、これら送信回路4および受信回路5にプローブ制御部6が接続されている。
【0011】
診断装置本体2は、超音波プローブ1の受信回路5に接続された信号処理部7を有し、この信号処理部7にDSC(Digital Scan Converter)8、画像処理部9、表示制御部10および表示部11が順次接続され、画像処理部9に画像メモリ12が接続されている。そして、信号処理部7、DSC8、画像処理部9および表示制御部10に本体制御部13が接続されている。さらに、本体制御部13には、呼吸動検出部14、操作部15および格納部16がそれぞれ接続されている。
また、超音波プローブ1のプローブ制御部6と診断装置本体2の本体制御部13が互いに接続されている。
【0012】
超音波プローブ1の振動子アレイ3は、一次元又は二次元に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0013】
送信回路4は、例えば、複数のパルサを含んでおり、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ3の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
受信回路5は、振動子アレイ3の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅してA/D変換した後、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
これら送信回路4および受信回路5により、この発明の送受信回路が構成されている。
【0014】
プローブ制御部6は、診断装置本体2の本体制御部13から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
【0015】
診断装置本体2の信号処理部7は、超音波プローブ1の受信回路5で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC8は、信号処理部7で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部9は、DSC8から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部10に出力する、あるいは画像メモリ12に格納する。
これら信号処理部7、DSC8、画像処理部9および画像メモリ12により画像生成部17が形成されている。
【0016】
表示制御部10は、画像処理部9によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部11に超音波診断画像を表示させる。
表示部11は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部10の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0017】
呼吸動検出部14は、画像生成部17で生成されたBモード画像信号に基づき、フレーム間における超音波画像の追尾を行うことにより被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを検出する。
【0018】
本体制御部13は、操作者により操作部15から入力された指令に基づいて超音波診断装置各部の制御を行う。また、本体制御部13は、操作者により操作部15を介してフリーズの指示が入力されると、呼吸動検出部14で検出された画像の周期的な動きに基づいて被検体の吸気量が最大または最小になったときに、呼吸動の時間的変化量が所定値以下の静止画像取得タイミングであると判断し、このタイミングで振動子アレイ3により取得された受信信号に基づく超音波画像を表示部11に表示する。
【0019】
操作部15は、操作者が入力操作を行うためのもので、この発明の関心領域設定部を構成し、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
格納部16は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、信号処理部7、DSC8、画像処理部9、表示制御部10および本体制御部13は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0020】
ここで、図2を参照して、呼吸動検出部14が被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを検出する動作について説明する。
呼吸動検出部14は、画像生成部17で生成されるBモード画像信号に基づき、呼吸動に起因したフレーム間における超音波画像の動きを追尾する。すなわち、超音波画像として表されている被検体の体内組織等の特定の部位に対するフレーム間の移動量が監視され、呼吸動に伴う周期的な移動量の変化が検出される。
【0021】
例えば、図2(A)に示されるように、吸気量が最小の場合と、図2(B)に示されるように、吸気量が最大の場合とでは、特定の部位Mの画像内の位置が異なる。この部位Mの移動量の時間的変化をグラフに表すと図3に示されるように、振幅Aを有する周期的な曲線を描くこととなり、被検体の吸気量が最大となる時刻T1及び最小となる時刻T2に移動量の時間的変化が最も小さくなる。
なお、被検体内の特定の部位Mは、Bモード画像において明確に認識することができる部位であれば、どのような箇所でも構わないが、被検体の呼吸動に伴って大きく移動する部位に着目して追尾する方が静止画像の取得タイミングを判断しやすくなる。
【0022】
次に、この実施の形態の動作を説明する。
Bモード画像の表示は、まず、送信回路4から供給される駆動信号に従って振動子アレイ3の複数の超音波トランスデューサから超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各超音波トランスデューサから受信信号が受信回路5に出力され、受信回路5で受信データが生成される。さらに、この受信データを入力した信号処理部7でBモード画像信号が生成され、DSC8でBモード画像信号がラスター変換されると共に画像処理部9でBモード画像信号に各種の画像処理が施された後、このBモード画像信号に基づいて表示制御部10によりBモード画像が表示部11に表示される。
【0023】
また、画像生成部17で生成されたBモード画像信号は、呼吸動検出部14に入力され、ここで、呼吸動に起因したフレーム間における超音波画像の動きが追尾され、時間と共に変化する特定の部位の周期的な移動量が検出される。
ここで、操作部15を介して操作者によりフリーズ指示が入力されると、本体制御部13は、呼吸動検出部14で検出された特定の部位の周期的な移動量に基づいて、被検体の吸気量が最大または最小となったか否かを判定する。吸気量が最大または最小でない時点では、静止画像の取得に適さないと判断し、吸気量が最大または最小になると、画質の低下を抑制しながら静止画像を得ることができる静止画像の取得タイミングであると判断し、このとき画像生成部17で生成されたBモード画像信号に基づいて静止画像を表示制御部10により表示部11に表示させる。
【0024】
このようにして、吸気量が最大または最小になったときのBモード画像信号を用いて静止画像を表示部15に表示することができる。
このため、自ら息止めのできない被検体であっても、操作者が呼吸動のタイミングをつかむことなく、容易に高画質の静止画像を得ることができ、精度のよい診断を行うことができる。
【0025】
なお、被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きは、特定の部位の深さ方向の移動量に基づいて検出することができる。あるいは、2次元方向の移動量に基づいて周期的な動きを検出してもよく、このようにすれば、呼吸動の動きを様々な方向から捉えることができるため、被検体の姿勢等に関わらず、より正確な呼吸動の周期的な動きを求めることができる。
【0026】
上記実施の形態においては、被検体の吸気量が最大または最小になったときに静止画像取得のタイミングと判断したが、これに限定されず、呼吸動検出部14で検出された画像の動きが所定量以下になったとき、例えば、3.5MHzの超音波を使用して診断を行う場合、被検体の呼吸動に基づく画像の動きが1.0mm以下、望ましくは0.5mm以下となったときに、静止画像取得タイミングと判断し、このとき画像生成部17で生成されたBモード画像信号を用いて静止画像を表示することもできる。このようにしても、容易に高画質の静止画像を得ることができ、精度のよい診断を行うことが可能となる。
また、呼吸動検出部14で検出された画像の周期的な動きにおける移動量が振幅に対して所定の比率以下になったときに静止画像取得のタイミングと判断させるようにすることもできる。例えば、呼吸動に基づく画像の特定の部位のフレーム間の移動量が振幅Aの1/10以下になったときに、本体制御部13が静止画像取得のタイミングと判断し、このとき画像生成部17で生成されたBモード画像信号を用いて静止画像を表示してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 振動子アレイ、4 送信回路、5 受信回路、6 プローブ制御部、7 信号処理部、8 DSC、9 画像処理部、10 表示制御部、11 表示部、12 画像メモリ、13 本体制御部、14 呼吸動検出部、 15 操作部、16 格納部、17 画像生成部、M 特定の部位、A 振幅、T1 吸気量が最大となる時刻、T2 吸気量が最小となる時刻。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像が生成され、表示部に表示される超音波診断装置であって、
フレーム間における超音波画像の追尾を行うことにより被検体の呼吸動に基づく画像の周期的な動きを検出する呼吸動検出部と、
操作者によるフリーズの指示を入力するための操作部と、
前記操作部を介してフリーズの指示が入力されると、前記呼吸動検出部で検出された画像の動きに基づいて被検体の呼吸動の時間的変化量が所定値以下となったときに静止画像取得タイミングと判断して前記画像生成部で生成された超音波画像を前記表示部に表示する制御部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記呼吸動検出部は、予め設定された監視領域内において超音波画像の追尾を行う請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記呼吸動検出部は、深さ方向の画像の動きまたは2次元方向の画像の動きを検出する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、被検体の吸気量が最大または最小となったときに静止画像取得タイミングと判断する請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記呼吸動検出部で検出された画像の動きが所定量以下になったときに静止画像取得タイミングと判断する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記呼吸動検出部で検出された画像の動きが振幅に対して所定の比率以下になったときに静止画像取得タイミングと判断する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196390(P2012−196390A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63773(P2011−63773)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】