説明

超音波診断装置

【目的】 超音波診断装置において、フレームレートを低下させずに、円弧状走査される超音波ビーム間においてデータの欠落を解消する。
【構成】 超音波ビーム方向に沿って直線補間が行われた後、走査方向即ち円弧状に円弧補間が実行される。その場合、直線補間により生成された補間データ102も利用される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波診断装置における画像データの補間に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断装置は、超音波の送受波によって、人体等の被検体の診断を行うものである。かかる装置において、超音波ビームの走査方式としては、各種の方式が知られており、例えばセクタ走査やコンベックス走査がある。
【0003】セクタ走査では、各超音波振動子の送受信波に電子的な遅延を与えて合成することにより、超音波ビームが円弧状(扇状)に走査される。また、コンベックス走査では、円弧状に配列された超音波振動子に対して電子リニア走査を行うことにより、超音波ビームが円弧状(扇状)に走査される。
【0004】図6に示すように、上記の超音波ビームの円弧状走査が行われる場合、超音波ビーム毎にデータが取り込まれ、サンプリングされた各データは、走査角度(ビーム位置)と半径とで特定される。すなわち、各データは極座標形式で表現される。ここで、各超音波ビームは、互いに離散的であり、また、各超音波ビーム上のサンプリングされたデータも互いに離散的である。
【0005】一方、図7に示すように、TVモニタの表示形式は、xとyとで特定される直交座標である。ここで、表示画面は、500×500画素程度であり、各画素はエコー強度を表現するため6ビット程度の階調を有する。
【0006】サンプリングされたデータをTVモニタに表示するためには、極座標形式から直交座標形式への座標変換(2次元マッピング)が必要となる。そこで、従来からデジタル・スキャン・コンバータ(DSC)が利用されている。ここで、このDSCは、上記の座標変換機能の他、データ補間機能、2次元画像の記憶機能、等を有する。
【0007】ところで、DSCにおける従来の一般的な補間方式は直線補間である。すなわち、超音波ビーム上において隣接する2つのサンプルデータの値に基づいて、その間の画素データの値を決定するものである。
【0008】図7には、その直線補間後の状態が示され、ここでは超音波ビーム方向に沿ってデータが補間されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】図7に示すように、超音波ビームに沿った補間によれば、超音波ビームに沿ってデータの欠落を解消できるが、一方、超音波ビーム間においてはデータの欠落を解消できない。
【0010】これに対し、ビームの本数を増加させることもできるが、その場合には、1枚の画像を表示するまでの時間であるフレームレートが低下してしまう。リアルタイムの表示が要望されている中において、フレームレートの低下は大きな問題となる。
【0011】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、フレームレートを低下させずに、超音波ビーム間においてデータの欠落を解消することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、円弧状の走査方向にデータの補間を行う円弧補間手段を含み、前記円弧補間が行われた画像データが表示されることを特徴とする。
【0013】請求項2記載の発明は、超音波ビームを円弧状に走査する走査手段と、前記走査により得られた極座標形式の画像データを直交座標形式の画像データに変換する座標変換手段と、前記座標変換後に、超音波ビーム方向に沿って画像データの補間を行う直線補間手段と、前記直線補間後に、前記円弧状の走査方向に沿って画像データの補間を行う円弧補間手段と、前記補間後の画像データを表示する表示手段と、を含むことを特徴とする。
【0014】
【作用】上記請求項1記載の構成によれば、超音波ビームの走査方向に沿ってデータの補間が実行される。すなわち、隣接する各超音波ビーム間にデータを補うことができ、フレームレートを低下させることなく、画像を鮮明なものにできる。
【0015】上記請求項2記載の構成によれば、最初に、超音波ビームに沿って直線補間が行われ、データが揃ったところで、走査方向に沿った円弧補間を行うことができる。よって、2種類の補間を組み合わせることにより、各方向について、データの欠落を補った良好な画像を形成できる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】まず、図1を用いて、本発明に係る超音波診断装置の基本構成について説明する。図1において、超音波プローブ10は、例えば、生体の表面に当接して使用されるものであり、超音波を生体へ送波し、生体内からの反射波を受波し、それを電気的な受信信号に変換する。なお、本実施例では、超音波ビームがセクタ走査されており、その走査は図示されていない走査制御部により制御されている。
【0018】パルス送受信部12は、超音波プローブ10に対して送信パルスを供給すると共に、超音波プローブ10からの受信信号を受け入れて増幅等の信号処理を行う。そして、受信信号は、ADC14においてサンプリングされ、デジタル信号に変換される。
【0019】デジタル信号に変換された受信信号は、DSC16に入力され、上述したように、ここで座標変換や補間処理等が実行される。本実施例のDSC16は、直線補間機能の他、円弧補間機能を有しており、これについては後に詳述する。
【0020】DSCにて座標変換され、また補間処理が行われた画像データは、DAC20において、アナログ信号に変換され、TVモニタに表示される。なお、直線補間及び円弧補間が行われた明瞭な超音波画像が表示されるので、診断精度を向上できる。
【0021】次に、DSC16について詳述する。図2にはDSC16の内部構成が図示されているが、まず、図3〜5を用いて、本発明に係る補間処理について説明する。
【0022】図3には、極座標から直交座標へ変換された後の各画素データ(サンプリングデータ)が示されている。この座標変換後、まず、超音波ビームに沿って、すなわちr方向に直線補間処理が行われる。図3では、黒の四角100がもとからあるサンプリングデータであり、内部が斜線の四角102が補間処理により生成されたデータ(補間データ)である。
【0023】本実施例では、座標変換後の2次元画像データが2次元画像メモリに書き込まれる際に、各画素データ毎に、有効な画素データか否かを示すフラグビットが付加されている。すなわち、各画素アドレスには、例えば6ビットの輝度情報の他、1ビットのフラグビットデータが格納される。ここで、フラグビットは、データ(サンプルデータ又は補間データ)が格納された画素であることを示すものであり、データが格納された位置のフラグビットはオンされる。
【0024】上記のようにして直線補間が行われた後、走査方向すなわちθ方向に沿って円弧補間が実行される。
【0025】図5には、円弧補間の例が示され、この例では超音波プローブの位置(原点)の遠方から円弧補間が実行されている。ここでは、まずある半径rを固定して円弧状にメモリアドレスが発生されてデータを探索し、前記フラグビットがオンとなっている2つの座標間で、補間を行なう。
【0026】図6には、円弧補間の例が示され、ここで黒丸104はフラグビットがオンとなっている画素を示しており、六角形106は、円弧上の画素すなわち補間により生成される画素を示している。本実施例では、隣接する2つの画素104の画素値と補間画素106の位置とに応じて、補間画素の画素値が演算されている。具体的には、2つの画素104の値がE1,E2で、その間の画素数(アドレス個数)がNの場合に、増分値ΔEが、ΔE=(E2−E1)/(N+1)
と演算され、各補間画素の値Eは、値E1をもつ画素104から当該画素までの画素数をnとして、E=E1+ΔE×nで求まる。図5において、例えば、左の画素の値E1が3で、右の画素の値E2が15であれば、その間のアドレス発生数が5であるので、(15−3)/(5+1)を演算して、増分値ΔEは2と算出される。そして、各補間画素の値は、左から順番に5、7、9、11、13と演算される。
【0027】以上の円弧補間を各半径について行えば、結果として、2次元画像の全域に渡って各ビーム間にデータを補うことができる。
【0028】なお、補間処理は、180度の半円領域について又は走査領域である扇状の領域について行われる。前者によれば、アドレス発生が簡易になり、後者によれば、無駄な探索を回避できる。
【0029】図2には、以上の補間原理を実現するDSC16の内部が示されている。ADC14からの画像データに対して、まず、座標変換器24で座標変換が実行される。すなわち、各データの座標を極座標形式から直交座標形式へ変換する。その後、直線補間器26で上述した直線補間が行われる。この直線補間器26は、超音波ビーム上において、隣接する2つのデータの値とその間のアドレス個数とを求め、それを増分生成器30で送る。増分生成器30は、それら2つの値及びアドレス個数から直線補間用の増分値を演算し、その増分値を直線補間器26へ送る。直線補間器26は、その増分値を順次加算することにより、2つの画素間の各補間画素の値を決定する。そして、サンプルデータ及び補間データは、画像メモリ28に送られ、上述のように、フラグビットが付加されて、対応するアドレスに各画素データが格納される。
【0030】このような直線補間が行われた後、円弧補間が実行される。すなわち、円弧補間器32は、走査方向に沿ってアドレスを順次発生させ、フラグビットがオンになっている互いに隣接する2つのデータを特定する。そして、それらのデータの値とデータ間のアドレス個数とから、増分生成器30が円弧補間用の増分値ΔEを演算する。一方、円弧補間器32は、その増分値ΔEに基づき、順次補間画素について補間値を求め、それが画像メモリ28に記憶される。ある半径r上のすべてのデータに対して、円弧補間が実行された後、次の半径について円弧補間が実行され、それが全域に渡って繰り返される。
【0031】以上のように直線補間及び円弧補間が行われた2次元画像データは、画像メモリ28から読み出され、図1に示したDAC20によってアナログ信号に変換された後、TVモニタ22に表示される。
【0032】以上の実施例においては、直線補間器26及び円弧補間器32を整数が減算だけで構成でき、更に増分生成器における除算もテーブル方式などを用いることができるので、高速でかつ安価なDSCを実現できるという利点がある。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、円弧補間手段によって円弧状の走査方向に沿ってデータの補間を行うことができるので、ビームの本数を増やすことなく、画素データの欠落を補って、明瞭な画像を提供できる。
【0034】また、直線補間が行われた後に、円弧補間を行うことにより直線補間で生成された補間データを基礎としてより緻密な補間を行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波診断装置のブロック図である。
【図2】デジタルスキャンコンバータの具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】エコーデータの直線補間を示す図である。
【図4】エコーデータの円弧補間を示す図である。
【図5】円弧補間の具体的な内容を示す図である。
【図6】超音波ビームと極座標との対応関係を示す概念図である。
【図7】極座標と直交座標の関係を示す概念図である。
【符号の説明】
16 デジタルスキャンコンバータ(DSC)
24 座標変換器
26 直線補間器
28 画像メモリ
30 増分生成器
32 円弧補間器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波ビームを円弧状に走査し、それにより得られた極座標形式の画像データを直交座標形式の画像データに変換し、その画像データを表示する超音波診断装置において、円弧状の走査方向にデータの補間を行う円弧補間手段を含み、前記円弧補間が行われた画像データが表示されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 超音波ビームを円弧状に走査する走査手段と、前記走査により得られた極座標形式の画像データを直交座標形式の画像データに変換する座標変換手段と、前記座標変換後に、超音波ビーム方向に沿って画像データの補間を行う直線補間手段と、前記直線補間後に、前記円弧状の走査方向に沿って画像データの補間を行う円弧補間手段と、前記補間後の画像データを表示する表示手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平7−246204
【公開日】平成7年(1995)9月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−39639
【出願日】平成6年(1994)3月10日
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)