説明

超音波診断装置

【目的】 操作者が超音波探触子からの距離を意識できるような3次元表示を行う。短い演算時間で複雑な構成を必要とせずに、実用的な3次元表示を行う。
【構成】 Bモード音線データまたはCFM音線データを格納する原音線メモリ5と、その原音線メモリ5に格納された原音線データを深さ方向にシーケンシャルに読み書きしうるアドレス制御部6と、そのアドレス制御部6に従って前記原音線メモリ5から読み出した原音線データを用いて3次元音線データを生成する3次元演算回路7と、その3次元音線データを格納する3次元音線メモリ8と、前記3次元音線データを画面フォーマットにフォーマット変換するDSC9と、CRT10とを具備する。
【効果】 超音波探触子からの距離に応じた表示の歪により超音波探触子からの距離を意識できるようになる。ボリュームデータを作成する場合に比べて処理すべきデータ量が少なくなり、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに、実用的な3次元超音波画像の表示を行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波診断装置に関し、さらに詳しくは、超音波探触子からの距離を操作者に意識させるような3次元超音波画像を表示しうる超音波診断装置に関する。また、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに実用的な3次元超音波画像を表示できる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図9に、従来の超音波診断装置の一例を示す。この超音波診断装置500は、超音波パルスを被検体内へ送信し被検体内からの超音波エコーを受信する超音波探触子1と、被検体の内部を平面的に走査するように音線方向を変えると共に各音線方向の音線信号を生成するビームフォーマ2とを具備している。また、前記音線信号の強度に基づいてBモード音線データを生成するBモード処理部3と、前記音線信号のドプラ成分に基づいてCFM(カラーフローマッピング)音線データを生成するCFMモード処理部3とを具備している。また、前記Bモード音線データまたは前記CFM音線データ(以下、これらを原音線データという)を格納する原音線メモリ5と、前記原音線データを画面フォーマットにフォーマット変換するDSC(デジタルスキャンコンバータ)9と、通常表示(点線時)と3次元表示(実線時)とを切り替える通常/3次元表示切替部51と、CRT10とを具備している。さらに、前記超音波探触子1を用いて被検体の内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向に当該超音波探触子1を移動して得られた複数フレームの通常表示画像からボリュームデータを作成し記憶するボリュームデータ保持部52と、与えられた視線方向に沿って前記ボリュームデータを貫くような位置にあるデータの組を前記ボリュームデータ保持部52から読み出すアドレスを発生するアドレス制御部53と、与えられた3次元演算方式(例えば、サーフェースレンダリング,ボリュームレンダリング,Intensity Projection 処理など)の3次元演算を前記データの組に対して施し3次元超音波画像データを構築する3次元演算部54と、前記3次元超音波画像データを格納する3次元画像メモリ55とを具備している。
【0003】図10は、前記原音線データに対応する空間位置の概念図である。音線番号N=0からN=nまでの多数の音線の原音線データd0〜dnは、放射状に配列され、セクタ状の走査平面を形成している。
【0004】図11は、画面フォーマットの概念図である。画面フォーマットは、水平座標hと垂直座標vで規定される2次元直交座標系である。前述のように原音線データd0〜dnはセクタ状の走査平面を形成しているので、DSC9により、この2次元直交座標系のデータにフォーマット変換される。
【0005】図12は、3次元表示を行うためのスキャニングの説明図である。超音波探触子1を用いて被検体Kの内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向Zsに超音波探触子1を移動し、フレームF0〜Ffの原音線データを蓄積する。
【0006】図13は、フレームF0〜Ffに対応する空間位置の概念図である。Fは、フレーム番号である。Dは、フレーム間の距離である。走査平面をxy平面とし、それに直交する方向をz方向とする。
【0007】図14は、ボリュームデータVolの概念図である。各フレームF0〜Ffの原音線データからDSC9により各フレームの2次元直交座標系のデータが得られ、それらからボリュームデータ保持部52で3次元直交座標系のデータであるボリュームデータVolが作成される。
【0008】図15は、3次元超音波画像データP(T)の概念図である。アドレス制御部53および3次元演算部54は、z方向を基準とした左右視角Tの視線方向に沿ってボリュームデータVolを貫くような位置にあるデータの組に対して3次元演算を施し、3次元超音波画像データP(T)を構築する。なお、視角とは、視線方向を表わす角度をいう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の超音波診断装置500では、3次元直交座標系のデータであるボリュームデータVolを作成し、そのボリュームデータVolに対して3次元演算を施して3次元超音波画像データP(T)を構築し、それを表示している。しかし、その3次元超音波画像の表示は、超音波探触子1からの距離を反映した表示になっていなかったため、超音波探触子1からの距離を操作者が意識しにくい問題点があった。また、3次元直交座標系のデータであるボリュームデータVolを作成する必要があるため、演算時間がかかると共に構成が複雑になる問題点があった。そこで、本発明の第1の目的は、超音波探触子からの距離を操作者に意識させるような3次元超音波画像の表示を行いうる超音波診断装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに実用的な3次元超音波画像の表示を行いうる超音波診断装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の観点では、本発明は、超音波探触子を用いて被検体の内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向に超音波探触子を移動して得られた3次元的なデータに基づいて、被検体の組織等を所望の視線方向から見た如き3次元超音波画像を生成し表示する超音波診断装置において、前記超音波探触子からの距離に応じて表示に歪を与える歪付与手段を具備したことを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第1の観点による超音波診断装置では、超音波探触子からの距離に応じて表示に歪を与えるようにした。これにより、超音波探触子からの距離に応じて少し違った態様で3次元超音波画像が表示されることになる。従って、超音波探触子からの距離を操作者が意識できるようになる。
【0011】第2の観点では、本発明は、超音波探触子を用いて被検体の内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向に超音波探触子を移動して得られた3次元的なデータに基づいて、被検体の組織等を所望の視線方向から見た如き3次元超音波画像を生成し表示する超音波診断装置であって、複数フレーム分の原音線データを格納する原音線メモリと、その原音線メモリに格納された原音線データを深さ方向にシーケンシャルに読み書きしうるアドレス制御部と、そのアドレス制御部に従って前記原音線メモリから読み出した原音線データを用いて3次元音線データを生成する3次元演算回路と、前記3次元音線データを格納する3次元音線メモリまたはラインメモリと、その3次元音線メモリまたはラインメモリに格納した前記3次元音線データを画面フォーマットにフォーマット変換するデジタルスキャンコンバータとを具備することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第2の観点による超音波診断装置では、ボリュームデータVolを作成しそのボリュームデータVolに3次元演算を施すことはせずに、原音線データに3次元演算を施して3次元音線データを生成するようにした。例えば、ボリュームデータVolではxyz空間(図14)に500×500×50程度のデータとするが、原音線データでは、アドレス(音線番号)−エコー時間(深さ)−z空間に、100×500×50程度のデータとなる。従って、データ量が少なくなり、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに実用的な3次元超音波画像の表示を行うことが出来る。なお、原音線データに3次元演算を施して3次元音線データを生成し、その3次元音線データをフォーマット変換して表示することにより、超音波探触子からの距離に応じた表示の歪を与えることが出来る。従って、超音波探触子からの距離を操作者が意識できるようになる。
【0012】第3の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、物理的に同一のメモリを前記原音線メモリまたは前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリとして用いうることを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第3の観点による超音波診断装置では、物理的に同一のメモリを、原音線メモリまたは3次元音線メモリまたはラインメモリとして共用するため、構成を簡単化できる。
【0013】第4の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、前記原音線メモリと前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから前記原音線データと前記3次元音線データを同時に読み出し、前記3次元演算回路は 前記同時に読み出した原音線データと3次元音線データを用いて前記3次元音線データを生成することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第4の観点による超音波診断装置では、原音線データと3次元音線データの組を次々に作って3次元演算していくため、処理を高速化できる。
【0014】第5の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記3次元演算回路で生成された3次元音線データを一時的に格納するラインメモリと、そのラインメモリに格納された3次元音線データを前記3次元音線メモリへ次のタイミングで転送するアドレス制御部とを具備することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第5の観点による超音波診断装置では、ラインメモリを用いて、いわゆるキャッシュメモリのライトバック動作を行うため、処理を高速化できる。
【0015】第6の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、BモードやCFMモードでのデータ転送に用いるバスを用いて、前記原音線データや前記3次元音線データの転送の全て又は一部を行うことを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第6の観点による超音波診断装置では、バスを用いるため、構成を簡単化できる。
【0016】第7の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記3次元演算回路は、RAMまたはROMから構成されるLUT(ルックアップテーブル)であって、そのLUTには前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから入力される前記3次元音線データに応じた内容のLUT情報および前記3次元音線データを無視した内容のLUT情報が格納されており、どのLUT情報を用いるかは前記アドレス制御部が制御することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第7の観点による超音波診断装置では、LUTを用いるため、処理を高速化できる。また、3次元音線データを無視した内容のLUT情報をLUTに格納しておくため、有効な3次元音線データが存在しない初回の3次元演算でもLUTを利用でき、制御が簡単になる。
【0017】第8の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、原音線データのフレーム番号をF,音線アドレスをNとし、フレーム間隔をDとし、左右視角をTとし、左右方向の調整量をToffsetとするとき、前記原音線データから3次元音線データを生成するために前記3次元音線メモリ又は前記ラインメモリから読み出すべき3次元音線データの音線アドレスを、N+F・D・tan{T}+Toffsetにより算出することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第8の観点による超音波診断装置では、左右視角Tが与えられたとき、原音線データと組になる3次元音線データの音線アドレスを好適に算出できる。
【0018】第9の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、原音線データのフレーム番号をF,深さアドレスをMとし、フレーム間隔をDとし、上下視角をUとし、上下方向の調整量をUoffsetとするとき、前記原音線データから3次元音線データを生成するために前記3次元音線メモリ又は前記ラインメモリから読み出すべき3次元音線データの深さアドレスを、M+F・D・tan{U}+Uoffsetにより算出することを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第9の観点による超音波診断装置では、上下視角Uが与えられたとき、原音線データと組になる3次元音線データの深さアドレスを好適に算出できる。
【0019】第10の観点では、本発明は、上記構成の超音波診断装置において、原音線データが、Bモードまたはカラーフローマッピングにより得られる流速,パワーまたはセカンドハーモモックから得られる流速,パワーのいずれか又はそれらの複合であることを特徴とする超音波診断装置を提供する。上記第10の観点による超音波診断装置では、Bモードまたはカラーフローマッピングにより得られる流速,パワーまたはセカンドハーモモックから得られる流速,パワーのいずれか又はそれらの複合の3次元超音波画像を表示することが出来る。
【0020】なお、上記第2の観点および第3の観点による超音波診断装置においては、データの転送は、深さ方向にシーケンシャルである必要はない。一方、上記第4の観点から第9の観点による超音波診断装置においては、データの転送は、深さ方向にシーケンシャルであるのが好ましい。その際、深さ方向にはクロック数で同期処理すれば、アドレス制御部は、音線のアドレスのみ、または、音線のアドレスと深さ開始アドレスのみを転送すれば良い。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0022】−第1の実施形態−図1に、本発明の第1の実施形態にかかる超音波診断装置を示す。この超音波診断装置100は、超音波パルスを被検体内へ送信し被検体内からの超音波エコーを受信する超音波探触子1と、被検体の内部を平面的に走査するように音線方向を変えると共に各音線方向の音線信号を生成するビームフォーマ2とを具備している。また、前記音線信号の強度に基づいてBモード音線データを生成するBモード処理部3と、前記音線信号のドプラ成分に基づいてCFM音線データを生成するCFMモード処理部3とを具備している。また、原音線データ(前記Bモード音線データまたは前記CFM音線データ)を格納する原音線メモリ(シネメモリ)5と、その原音線メモリ5に格納された原音線データを深さ方向にシーケンシャルに読み書きしうるアドレス制御部6と、そのアドレス制御部6に従って前記原音線メモリ5から読み出した原音線データを用いて3次元音線データを生成する3次元演算回路7と、その3次元音線データを格納する3次元音線メモリ8とを具備している。さらに、前記原音線データまたは前記3次元音線データを画面フォーマットにフォーマット変換するDSC9と、CRT10とを具備している。
【0023】図2は、前記原音線データに対応する空間位置の概念図である。音線番号N=0からN=nまでの多数の音線の原音線データd0〜dnは、放射状に配列され、セクタ状の走査平面を形成している。図3は、前記原音線メモリ5の構成概念図である。原音線データdNは、フレームごとに、音線番号Nをアドレスとして格納されている。
【0024】通常表示時および3次元表示のための原音線データを蓄積している間(図12参照)は、Bモード処理部3およびCFM処理部4から出力される原音線データは、原音線メモリ5に転送されて蓄積されると共にDSC9に送られる。そして、DSC9にて、原音線データは画面フォーマットにフォーマット変換され、CRT10上に超音波画像が表示される。
【0025】3次元表示を行わせる時は、操作者は、超音波探触子1によるスキャニングを停止し、画像表示をフリーズする。そして、3次元超音波画像の構築を指示する。これにより、操作者の指示したパラメータ又はプリセットされたパラメータに従って3次元超音波画像の構築が開始される。前記パラメータとは、例えば、原音線データのフレーム数f,3次元演算方式,開始視角,視角範囲または終了視角,3次元超音波画像の枚数などである。まず、アドレス制御部6は、1枚目のフレーム(F=0)の原音線データdのアドレスを順に原音線メモリ5に与えて、原音線メモリ5から1枚目のフレーム(F=0)の原音線データdを出力させる。この1枚目のフレーム(F=0)の原音線データdは、3次元演算部7に保持される。次に、アドレス制御部6は、2枚目のフレーム(F=1)の原音線データdのアドレスを順に原音線メモリ5に与えて、原音線メモリ5から2枚目のフレーム(F=1)の原音線データdを出力させる。3次元演算部7は、保持していた1枚目のフレーム(F=0)の原音線データdと入力された2枚目のフレーム(F=1)の原音線データdの間で3次元演算を行い、3次元音線データqを生成し、それを保持する。次に、アドレス制御部6は、3枚目のフレーム(F=2)の原音線データdのアドレスを順に原音線メモリ5に与えて、原音線メモリ5から3枚目のフレーム(F=2)の原音線データdを出力させる。3次元演算部7は、保持していた3次元音線データqと入力された3枚目のフレーム(F=2)の原音線データdの間で3次元演算を行い、3次元音線データを生成(更新)し、保持する。以下、同様にして、続くフレームの原音線データdを入力しながら3次元音線データqを生成(更新)する。そして、全てのフレームの原音線データdを処理したら、当該3次元音線データqを3次元演算部5から3次元音線メモリ8へ転送する。
【0026】なお、図4に示すように、フレーム番号F=Fの音線番号N=Nの原音線データdNとの間で3次元演算を行う3次元音線データの音線アドレス(音線番号)は、フレーム間隔をDとし、左右視角をTとし、左右方向の調整量をToffsetとするとき、N+F・D・tan{T}+Toffsetである。但し、図4では、Toffset=0としている。また、同様に、フレーム番号F=Fの深さMの原音線データとの間で3次元演算を行う3次元音線データの深さアドレスは、フレーム間隔をDとし、上下視角をUとし、上下方向の調整量をUoffsetとするとき、M+F・D・tan{U}+Uoffsetである。
【0027】図5に示すように、1つの視角Tにおける1フレーム分の3次元音線データQ(T)を生成すると、視角を変えて上記処理を繰り返し、数枚から数10枚の3次元音線データQを構築し、3次元音線メモリ8内に格納する。
【0028】図6に示すように、DSC9は、3次元音線メモリ8から1フレームづつ3次元音線データQを読み出しながら、画面フォーマットにフォーマット変換し、3次元超音波画像データP(T)を構築し、動画のごとく、これらを表示する。
【0029】以上の超音波診断装置100によれば、ボリュームデータVolを作成しそのボリュームデータVolに3次元演算を施すことはせずに、原音線データdに3次元演算を施して3次元音線データqを生成するから、処理すべきデータ量が少なくなり、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに実用的な3次元超音波画像の表示を行うことが出来る。また、図6から理解されるように、3次元音線データQをフォーマット変換して3次元超音波画像データP(T)を構築するため、深さ方向すなわち超音波探触子1からの距離に応じた表示の歪(距離が大きくなるほど、視角が大きくなるような歪)が与えられる。従って、操作者が表示を見て、超音波探触子1からの距離を意識できるようになる。
【0030】−第2の実施形態−図7は、本発明の第2の実施形態にかかる超音波診断装置200のブロック図である。この超音波診断装置200は、原音線メモリ5から原音線データを読み出して3次元演算部21に入力するのと同時に、前記原音線データと3次元演算する相手となる3次元音線データを3次元音線メモリ8から読み出して3次元演算部21に入力する構成である。3次元演算部21は、RAMまたはROMから構成されるLUTになっている。
【0031】原音線データを原音線メモリ5に蓄積した後、3次元表示が指示されると、第1の実施形態と同様に、1音線の3次元音線データqを生成し、それを繰り返して1つの視角の3次元音線データQを生成する。また、視角を変えて、複数の視角の3次元音線データQを生成し、それらを動画のように表示する。
【0032】3次元音線データqを生成するとき、1回目は、アドレス制御部6は、3次元演算部21に対して、3次元音線メモリ8からの3次元音線データqを無視した内容のLUT情報のアドレスを指定する。また、原音線メモリ5に対して、3次元演算の対象となる原音線データdのアドレスを指定する。3次元演算部21の出力は、ラインメモリ22に一時待機させておき、その後、バスの空いたときに、3次元音線メモリ8に転送する。2回目からは、アドレス制御部6は、3次元演算部21に対して、3次元音線メモリ8からの3次元音線データqに応じた内容のLUT情報のアドレスを指定する。また、原音線メモリ5および3次元音線メモリ8に対して、3次元演算の対象となる原音線データdのアドレスおよび3次元音線データqのアドレスを指定する。3次元演算部21の出力は、ラインメモリ22に一時待機させておき、その後、バスの空いたときに、3次元音線メモリ8に転送する。全ての演算が終わると、3次元表示が行われる。
【0033】以上の超音波診断装置200によれば、原音線データdに3次元演算を施して3次元音線データqを生成するから、処理すべきデータ量が少なくなり、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに実用的な3次元超音波画像の表示を行うことが出来る。また、超音波探触子1からの距離に応じた表示の歪が与えられるから、操作者が表示を見て、超音波探触子1からの距離を意識できるようになる。さらに、データの転送だけで、3次元演算を進めることが出来る。
【0034】−第3の実施形態−図8は、本発明の第3の実施形態にかかる超音波診断装置300のブロック図である。この超音波診断装置300は、3次元演算部21にローカルなラインメモリ32を持たせた構成である。3次元演算部21は、ローカルなラインメモリ32を用いて3次元演算を進めるため、より高速な処理が可能である。
【0035】
【発明の効果】本発明の超音波診断装置によれば、3次元表示において、超音波探触子からの距離に応じた表示の歪が与えられる。従って、操作者が表示を見て、超音波探触子からの距離を意識できるようになる。また、本発明の超音波診断装置によれば、原音線データに3次元演算を施して3次元音線データし、それを用いて3次元表示を行うから、ボリュームデータを作成する場合に比べて処理すべきデータ量が少なくなり、短い演算時間で且つ複雑な構成を必要とせずに、実用的な3次元超音波画像の表示を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる超音波診断装置のブロック図である。
【図2】原音線データに対応する空間位置の概念図である。
【図3】原音線メモリの構成概念図である。
【図4】3次元演算を行う原音線データと3次元音線データのアドレスの対応の説明図である。
【図5】1フレーム分の3次元音線データの説明図である。
【図6】1フレーム分の3次元音線データをフォーマット変換して得られる3次元超音波画像データの説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる超音波診断装置のブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる超音波診断装置のブロック図である。
【図9】従来の超音波診断装置の一例のブロック図である。
【図10】原音線データに対応する空間位置の概念図である。
【図11】画面フォーマットの概念図である。
【図12】3次元表示を行うためのスキャニングの説明図である。
【図13】複数のフレームに対応する空間位置の概念図である。
【図14】ボリュームデータの概念図である。
【図15】ボリュームデータに対する3次元演算と3次元超音波画像データの概念図である。
【符号の説明】
100,200,300 超音波診断装置
1 超音波探触子
5 原音線メモリ
6 アドレス制御部
7,21 3次元演算部
8 3次元音線メモリ
9 DSC
10 CRT
22,32 ラインメモリ
d0,dN,dn 原音線データ
q0,qN,qn 3次元音線データ
Q(T) 1フレーム分の3次元音線データ
P(T) 1フレームの3次元超音波画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波探触子を用いて被検体の内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向に超音波探触子を移動して得られた3次元的なデータに基づいて、被検体の組織等を所望の視線方向から見た如き3次元超音波画像を生成し表示する超音波診断装置において、前記超音波探触子からの距離に応じて表示に歪を与える歪付与手段を具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 超音波探触子を用いて被検体の内部を平面的に走査しながらその平面に略直交する方向に超音波探触子を移動して得られた3次元的なデータに基づいて、被検体の組織等を所望の視線方向から見た如き3次元超音波画像を生成し表示する超音波診断装置であって、複数フレーム分の原音線データを格納する原音線メモリと、その原音線メモリに格納された原音線データを深さ方向にシーケンシャルに読み書きしうるアドレス制御部と、そのアドレス制御部に従って前記原音線メモリから読み出した原音線データを用いて3次元音線データを生成する3次元演算回路と、前記3次元音線データを格納する3次元音線メモリまたはラインメモリと、その3次元音線メモリまたはラインメモリに格納した前記3次元音線データを画面フォーマットにフォーマット変換するデジタルスキャンコンバータとを具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】 請求項2に記載の超音波診断装置において、物理的に同一のメモリを前記原音線メモリまたは前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリとして用いうることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、前記原音線メモリと前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから前記原音線データと前記3次元音線データを同時に読み出し、前記3次元演算回路は 前記同時に読み出した原音線データと3次元音線データを用いて前記3次元音線データを生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】 請求項4に記載の超音波診断装置において、前記3次元演算回路で生成された3次元音線データを一時的に格納するラインメモリと、該ラインメモリに格納された3次元音線データを前記3次元音線メモリへ次のタイミングで転送するアドレス制御部とを具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】 請求項2から請求項5のいずれかに記載の超音波診断装置において、BモードやCFMモードでのデータ転送に用いるバスを用いて、前記原音線データや前記3次元音線データの転送の全て又は一部を行うことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】 請求項4から請求項6のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記3次元演算回路は、RAMまたはROMから構成されるLUTであって、そのLUTには前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから入力される前記3次元音線データに応じた内容のLUT情報および前記3次元音線データを無視した内容のLUT情報が格納されており、どのLUT情報を用いるかは前記アドレス制御部が制御することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】 請求項2から請求項7のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、原音線データのフレーム番号をF,音線アドレスをNとし、フレーム間隔をDとし、左右視角をTとし、左右方向の調整量をToffsetとするとき、前記原音線データから3次元音線データを生成するために前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから読み出すべき3次元音線データの音線アドレスを、N+F・D・tan{T}+Toffsetにより算出することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】 請求項2から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記アドレス制御部は、原音線データのフレーム番号をF,深さアドレスをMとし、フレーム間隔をDとし、上下視角をUとし、上下方向の調整量をUoffsetとするとき、前記原音線データから3次元音線データを生成するために前記3次元音線メモリまたは前記ラインメモリから読み出すべき3次元音線データの深さアドレスを、M+F・D・tan{U}+Uoffsetにより算出することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】 請求項1から請求項9のいずれかに記載の超音波診断装置において、原音線データが、Bモードまたはカラーフローマッピングにより得られる流速,パワーまたはセカンドハーモモックから得られる流速,パワーのいずれか又はそれらの複合であることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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