説明

超音波診断装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は被写体に超音波を発信し、その反射波を受信することにより、当該被写体を撮像する際に上記発信から受信までの帰投時間の遅い、遠方の弱い超音波ほど利得を上げて受信させるタイムゲインコントロール(TGC)処理を行う超音波診断装置において、TGC処理に関するTGCデータを記憶する機能及びTGCデータを表示器へ表示する機能をもたせた超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の超音波診断装置においては、操作時のスイッチ状態、ボリュームの設定値、表示モード等の撮像条件のデータを記憶させることに関し、TGCデータの記憶をさせる機能はなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】オペレータが初心者である場合や、多くの受信プローブを交換して使用する場合や同一患者の再検査を頻繁に行う場合において、過去の検査時のデータを表示できるようにすることは、操作性の向上を図るために重要な事である。
【0004】本発明は、従来記憶させることができた撮像条件データに加えて、TGCデータも記憶できるようにし、過去の撮像環境を正確かつ容易に再現できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理構成図である。図中、符号1は被写体、2は発信装置、3は受信装置、4はTGC処理部、5は画像処理部、6は出力装置、7は設定器、10はTGCデータ制御部、20はTGC表示制御部、30はTGCメモリ、40はTGCレジスタ、60はTGCデータ設定値格納制御部、70は表示器を示す。
【0006】発信装置2は超音波を被写体1に向けて発信し、受信装置3は被写体1に反射して帰って来る超音波を受信する。
【0007】TGC処理部4は、帰投時間の遅い、遠方の、弱い超音波ほど利得を上げて受信させるタイムゲインコントロール処理を行う。
【0008】設定器7はオペレータがTGCデータを設定するための装置である。
【0009】画像処理部5は上記TGC処理を施された信号を画像化し、出力装置6は当該画像を出力する。
【0010】TGCデータ制御部10は命令に応じてTGCデータをTGCレジスタ40から読み出して、TGCメモリ30に記憶させるように制御する。
【0011】TGC表示制御部20は命令に応じてTGCメモリ30に格納してある旧TGCデータ及びTGCレジスタ40に格納してある操作時のTGCデータを読み出して表示器70又は設定器7又は出力装置6に表示するように制御する。
【0012】TGCメモリ30はTGCデータを格納し、TGCレジスタ40は操作時のTGCデータを逐次記憶する。いうまでもないが、TGCメモリ30に記憶されるTGCデータは1つとは限らない。
【0013】TGCデータ設定値格納制御部60は操作時のTGCデータをTGCレジスタが逐次記憶するように制御する。
【0014】表示器70は、旧TGCデータ及び操作時のTGCデータを表示する装置であるが、上記出力装置6又は設定器7以外に別に設けなければならないわけでなく、出力装置6にその機能を持たさせても構わないし、設定器7に表示機能を持たせても構わない。
【0015】
【作用】図示しない操作子の操作によって、TGCデータの記憶命令がオペレータによってなされた時には、TGCデータ制御部10がTGCレジスタ40に格納されているその時のTGCデータをTGCメモリ30へ格納させる。
【0016】図示しない操作子の操作によって旧TGCデータの表示命令がなされた時には、TGC表示制御部20が、当該表示命令に対応する旧TGCデータをTGCメモリ30から読み出して表示するとともに、その時のTGCデータを表示する。
【0017】
【実施例】図2は、本発明のデータ表示例(1)を表す。ここでは、5個のTGCデータを調整する。設定器において、夫々のデータに対し複数のランプ80−i及びボリュームスイッチ90−iを用意する。過去のTGCデータ表示命令に従い、当該過去のTGCデータをランプによって表示する。例えば、図示の如くデータ1については左から2つ目のランプを、データ2については右から3番目のランプを、・・・、データ5については右から3番目のランプを点灯させる。そして、操作者は夫々のボリュームスイッチ90−iを図中矢印で示すようにランプの位置へ移動させることによりTGCデータの調整は完了する。また、過去のTGCデータと操作時のTGCデータとの差が予め定めた値以下になった時にそのデータについてのランプを消灯させるようにすれば、より正確な調整ができる。
【0018】図3は、本発明のデータ表示例(2)を表す。図2では、設定器においてTGCデータを表示していたが、図3では、被写体の撮影像と共に出力装置に表示する。TGCデータを数値表示し、左が過去のデータ、右が現在のデータを表している。操作者は、右の値と左の値が等しくなるように現在のデータを調整すれば、TGCデータの調整は完了する。
【0019】図4は、本発明のデータ表示例(3)を表す。TGCデータを折れ線で表示しており、実線が過去のデータ、点線が現在のデータを示す。操作者は図3に示した場合と同様にデータを調整する。
【0020】図5は、本発明のデータ表示例(4)を表す。TGCデータを棒グラフで表示しており、上段の黒棒が過去のデータ、下段の白棒が現在のデータを示す。
【0021】また図3,図4,図5においては、タイマーを設けて表示開始から一定時間経過後にTGCデータの表示を消去する又は過去のTGCデータと操作時のTGCデータとの差が全て予め定めた値以下になった時にTGCデータについての表示を消去するようにすればデータの調整後には出力装置の画面が大きく使える。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば,過去のTGCデータを記憶及び表示する機能を設けることにより、過去のデータを呼び出すことができ、過去の検査条件を容易に再現することができ操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明のデータ表示例(1)を示す。
【図3】本発明のデータ表示例(2)を示す。
【図4】本発明のデータ表示例(3)を示す。
【図5】本発明のデータ表示例(4)を示す。
【符号の説明】
1 被写体
2 発信装置
3 受信装置
4 TGC処理部
5 画像処理部
6 出力装置
7 設定器
10 TGCデータ制御部
20 TGC表示制御部
30 TGCメモリ
40 TGCレジスタ
60 TGCデータ設定値格納制御部
70 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被写体に超音波を発信する発信装置と、上記被写体に反射して帰って来る超音波を受信する受信装置と、上記発信から受信までの帰投時間に応じて利得を調整して受信させるタイムゲインコントロール(TGC)処理部と、TGC処理に関するTGCデータを設定する設定器と、上記TGC処理を施した信号を画像化する画像処理部と、当該画像を出力する出力装置とを備え、上記被写体の撮像を行う超音波診断装置において、前記設定器の現在の設定状態に対応する現TGCデータが格納されるTGCレジスタと、前記設定器の現在の設定状態に対応する現TGCデータを前記TGCレジスタに逐次格納するように制御するTGCデータ設定値格納制御部と、前記設定器の過去の設定状態に対応する旧TGCデータが記憶されるTGCメモリと、前記TGCレジスタに格納されている現TGCデータを、前記TGCメモリに、旧TGCデータとして記憶させることを指示する第1の操作子と、操作者による前記第1の操作子の操作を受けて、前記TGCレジスタに格納されている現TGCデータを読み出して、前記TGCメモリに、旧TGCデータとして記憶させるように制御するTGCデータ制御部と、前記TGCメモリに記憶されている旧TGCデータを表示する、前記設定器あるいは前記出力装置と一体的に構成された、あるいは前記設定器および前記出力装置のいずれとも独立に構成された表示部と、前記TGCメモリに記憶されている旧TGCデータを前記表示部に表示させることを指示する第2の操作子と、操作者による前記第2の操作子の操作を受けて、前記TGCメモリに記憶されている旧TGCデータを読み出して、前記表示部に表示させるTGC表示制御部とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 前記表示部は、前記TGCレジスタに格納されている現TGCデータを、前記TGCメモリに記憶されている旧TGCデータとともに表示するものであって、前記TGC制御部は、操作者による第2の操作子の操作を受けて、前記TGCメモリに記憶されている旧TGCデータと前記TGCレジスタに格納されている現TGCデータとの双方を読み出して、読み出した旧TGCデータおよび現TGCデータの双方を、前記表示部に表示させるものであることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】 TGC表示制御部が、前記旧TGCデータと前記現TGCデータとの差が予め定めた値以下になった時に、前記表示部の表示を消去するようにした請求項1記載の超音波診断装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【特許番号】特許第3224399号(P3224399)
【登録日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【発行日】平成13年10月29日(2001.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−51569
【出願日】平成3年3月15日(1991.3.15)
【公開番号】特開平4−285544
【公開日】平成4年10月9日(1992.10.9)
【審査請求日】平成9年9月5日(1997.9.5)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−197438(JP,A)
【文献】特開 昭61−199844(JP,A)