説明

超音波診断装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波診断装置、特に、反射エコー信号に基づいて生体内の血流情報を表示する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】医用分野で用いられる超音波診断装置では、たとえば心臓部の断層データをリアルタイムでモニターに表示したり、またパルスドップラー法により特定部位の血流速度を測定し、この分布を前記同様にモニターに表示することが行われている。
【0003】このような超音波診断装置において、血流速度を2次元的に把握するために、2次元血流断層方式が採用されている。この2次元血流断層方式は、断層データに血流速度を合成し、血流速度を2次元で、しかもリアルタイムに表現するものである。すなわち、断層情報及び血流情報が、それぞれディジタル化されて合成され、R、G、Bのテレビジョン信号に変換されて、通常の断層像の上に血流速度が重ねて表示される。またこれとともに、検出された血流の平均速度プロフィールがカラー表示されるようになっている。そして、通常の断層像の上に血流情報の数値が重ねて表示されるとともに、検出された血流情報のプロフィールがカラー表示される。なお、血流情報としては、通常、血流速度やパワーや分散が表示される。たとえば、時間平均された血流速度プロフィールが、プローブに向かってくる方向を青色でカラー表示され、また、血流速度プロフィールの表示の濃淡により血流速度の大きさが表示される。
【0004】このような超音波診断装置の従来装置を図2R>2により説明する。図2において、1は制御回路、2は発振回路、3は送受波回路、4はプローブ、5は断層用信号処理部、6はドップラー用信号処理部、7は90°移相器、8、9は乗算器、10、11は積分器、12、13はA/D変換器、14はMTIフィルタ、15は血流パラメータ演算部、16は平均演算部、17は分散演算部、18はディジタルスキャンコンバータ(DSC)、19は表示装置である。
【0005】次に、この従来の超音波診断装置の動作を説明する。制御回路1の制御により発振回路2からプローブ駆動用の信号(参照波信号)が出力されると、この信号は送受波回路3に送出され、これによりプローブ4の各振動子が駆動される。プローブ4から超音波ビームが生体内に送波されると、その反射エコーがプローブ4により受波され、この反射エコー信号が送受波回路3により処理されて、断層用信号処理部5及びドップラー用信号処理部6に入力される。
【0006】断層用信号処理部5に入力された反射エコー信号は、増幅、波形整形、フィルタ処理等の信号処理を施された後、ディジタル情報に変換されてディジタルスキャンコンバータ18のメモリに格納される。
【0007】一方、ドップラー用信号処理部6では送受波回路3からのエコー信号と、発振回路2からの参照波信号及びこれを90°移相器7により90°移相した信号とが、それぞれ乗算器8、9で乗算、検波されてドップラーシフト信号になる。これらのドップラーシフト信号は積分器10、11でそれぞれ深さ方向の数点で積分され、A/D変換器12、13で実部、虚部のディジタル信号に変換された後、MTIフィルタ14に入力されて生体組織(クラッタ)からの信号が除去され、血流データのみが検出される。このとき、血流速度に比較して生体組織の移動速度は遅いため、MTIフィルタ14のカットオフ周波数を低く設定することによって生体組織によるドップラ−シフト信号を除去することが可能である。そして、MTIフィルタ14の出力は血流パラメータ演算部15に入力され、血流スペクトラムS(f)が算出される。算出された血流スペクトラムのデータは、平均演算部16と分散演算部17とに与えられ、平均演算部16は血流スペクトラムから平均周波数f´を求める。また、分散演算部17は、血流スペクトラムをS(f)、血流スペクトラムS(f)の平均周波数をf´、分散をσとしたとき、
【数1】


により分散σを求める。
【0008】そして、このようにして得られたデータはディジタルスキャンコンバータ(DSC)18に入力され、色付が行われるとともに、断層用信号処理回路で得られた断層データと重ね合わされて表示装置19に表示される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の血流情報と断層情報とを表示する超音波診断装置は上記のように構成されており、流速・分散・ドップラー信号のパワー値などの情報を得るために、超音波のビームを同一方向に数回ずつ発射して、これを方向を変えながら繰り返すことにより2次元状に血流情報を得ている。そして、同一方向にビームを送波する場合、その回数を増加させるほどドップラー信号の検出能が向上し、S/Nの良い血流カラー情報を得ることができる。しかし、ビームを送波する回数が増加するほど血流情報を得るための時間が長くなり、単位時間に得られるフレーム数(フレームレート)が小さくなりリアルタイム性の悪い画像となり、心臓などの血流動態の診断に不利である。
【0010】すなわち、腹部の臓器の細い血管などの微弱な血流による反射波の場合には、ビームを送波する回数を増やさないと、S/Nのよい血流情報データを得ることができず、また、心臓の心腔内の血流などドップラー信号のパワー値が大きいような場合ではビームの送波回数が少なくともS/Nのよい血流情報データを得ることができる。
【0011】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、腹部臓器などパワーの弱いエコー信号からの血流情報の検出能を向上させるとともに、心腔内などエコー信号に十分な強度がある場合にはフレームレートを向上させることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の超音波診断装置は、生体内で得られた超音波反射信号に基づいて生体内の血流情報及び断層情報を得、得られた血流情報と断層情報とを表示画面に重ねて表示するものにおいて、生体内に超音波パルスを放射して得られるドップラー信号のパワー値を演算するパワー演算部と、パワー演算部で得られたパワー値から超音波の送波回数を決定する送波回数演算部とを備え、ドップラー信号のパワー値に応じて超音波の送波回数を決定することを特徴とする。
【0013】
【作用】本発明の超音波診断装置は上記のように構成されており、パワー演算部が生体内に超音波パルスを放射して得られるドップラー信号のパワー値を演算し、このドップラー信号のパワー値に応じて送波回数演算部が超音波の送波回数を決定するので、小さいパワー値であれば送波回数が多くなり、大きいパワー値であれば送波回数が少なくなるように制御され、腹部臓器などパワーの弱いエコー信号からの血流情報の検出能を向上させるとともに、心腔内などエコー信号に十分な強度がある場合にはフレームレートを向上させることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の超音波診断装置の一実施例について図1を用いて説明する。図1において、1は制御回路、2は発振回路、3は送受波回路、4はプローブ、5は断層用信号処理部、6はドップラー用信号処理部、7は90°移相器、8、9は乗算器、10、11は積分器、12、13はA/D変換器、14はMTIフィルタ、15は血流パラメータ演算部、16は平均演算部、17は分散演算部、18はディジタルスキャンコンバータ(DSC)、19は表示装置であり、これらは従来の超音波診断装置の構成と同様で、本実施例の超音波診断装置には更に、パワー演算部20、パワー値バッファ21、パワー平均値演算部22、送波回数演算部23が付加されている。
【0015】次に、本実施例の超音波診断装置の動作を説明する。従来の超音波診断装置と同様に、制御回路1の制御により発振回路2からプローブ駆動用の信号(参照波信号)が出力されると、この信号は送受波回路3に送出され、これによりプローブ4の各振動子が駆動される。プローブ4からは超音波ビームが生体内に送波されると、その反射エコーがプローブ4により受波され、この反射エコー信号が送受波回路3により処理されて、断層用信号処理部5及びドップラー用信号処理部6に入力される。
【0016】断層用信号処理部5に入力された反射エコー信号は、増幅、波形整形、フィルタ処理等の信号処理を施された後、ディジタル情報に変換されてディジタルスキャンコンバータ18のメモリに格納される。
【0017】一方、ドップラー用信号処理部6では送受波回路3からのエコー信号と、発振回路2からの参照波信号及びこれを90°移相器7により90°移相した信号とが、それぞれ乗算器8、9で乗算、検波されてドップラーシフト信号になる。これらのドップラーシフト信号は積分器10、11でそれぞれ深さ方向の数点で積分され、A/D変換器12、13で実部、虚部のディジタル信号に変換された後、MTIフィルタ14に入力されて生体組織からの信号が除去され、血流データのみが検出される。そして、MTIフィルタ14の出力は血流パラメータ演算部15に入力され、血流スペクトラムS(f)が算出される。算出された血流スペクトラムのデータは、平均演算部16、分散演算部17に入力され、平均演算部16からの血流データの平均流速値と、分散演算部17からの分散値のデータとがディジタルスキャンコンバータ(DSC)18に入力され、色付が行われるとともに、断層用信号処理回路で得られた断層データと重ね合わされて表示装置19に表示される。
【0018】一方、パワー演算部20は乗算器8、9によってドップラー直交検波されたI、Q信号からI2 +Q2 の演算を行うことによってパワー値を求め、このパワー演算部20からのパワー値はパワー値バッファ21に入力されて関心領域でのパワー値が蓄えられる。そして、1フレームについてパワー値データが蓄えられると、パワー平均値演算部22がその関心領域の平均パワー値を演算し、さらに、送波回数演算部23が関心領域の平均パワー値に対応したビーム送波回数データを求める。このとき、小さいパワー値であれば送波回数が多くなり、大きいパワー値であれば送波回数が少なくなるように送波回数が算出される。そして、送波回数演算部23で求められたビーム送波回数が制御回路1に入力され、実際に同一方向にビームを送波する送波回数が制御される。
【0019】なお、上記実施例では血流データの平均流速値、分散値のみを表示する場合について説明したが、パワー値を表示する場合にも本発明の超音波診断装置を適用することができる。
【0020】また、上記実施例ではA/D変換器の出力からドップラー信号のパワーを演算したが、血流パラメータ演算部の出力からドップラー信号のパワーを演算することもできる。
【0021】
【発明の効果】本発明の超音波診断装置は上記のように構成されており、腹部の臓器の細い血管などの微弱な血流による反射波の場合には、自動的にビームを送波する回数が増加するので、S/Nの良い血流情報データを得ることが可能となる。また、心臓の心腔内の血流などドップラー信号のパワー値が大きいような場合では、自動的にビームを送波する回数が減らされるので、フレームレートの高いリアルタイム性の良い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波診断装置の一実施例を示す図である。
【図2】従来の超音波診断装置を示す図である。
【符号の説明】
1 制御回路 2 発振回路
3 送受波回路 4 プローブ
5 断層用信号処理部 6 ドップラー用信号処理部
18 DSC 19 表示装置
20 パワー演算部 21 パワー値バッファ
22 パワー平均値演算部 23 送波回数演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体内で得られた超音波反射信号に基づいて生体内の血流情報及び断層情報を得、得られた血流情報と断層情報とを表示画面に重ねて表示する超音波診断装置において、生体内に超音波パルスを放射して得られるドップラー信号のパワー値を演算するパワー演算部と、パワー演算部で得られたパワー値から超音波の送波回数を決定する送波回数演算部とを備え、ドップラー信号のパワー値に応じて超音波の送波回数を決定することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】特許第3353512号(P3353512)
【登録日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【発行日】平成14年12月3日(2002.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−324987
【出願日】平成6年12月27日(1994.12.27)
【公開番号】特開平8−173429
【公開日】平成8年7月9日(1996.7.9)
【審査請求日】平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【参考文献】
【文献】特開 平6−142103(JP,A)
【文献】特開 平4−210052(JP,A)