超音波造影剤注入装置
【課題】気泡の量や大きさの制御が容易な超音波造影剤の注入装置を提供する。
【解決手段】飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により気体過飽和水中に気泡を発生させて気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入する。
【解決手段】飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により気体過飽和水中に気泡を発生させて気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波造影剤注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を体外から照射し、その反射を利用して体内の構造、血液の流れ、病変などを診断する超音波診断の造影剤として微小な気泡が利用されてきた。気泡は不安定であることから、気泡の外縁に脂質、界面活性剤、アルブミン等でシェル(殻)を形成し、ガスを封じ込めることで気泡の安定化を図った超音波造影剤がこれまでに開発されている(特許文献1、非特許文献1)。
また、気泡を構成する気体成分が血液等の体液中へ拡散することをできるだけ防ぐために酸素や炭酸ガス等の水に対する溶解度の高い気体の代わりにフッ化炭素等の難水溶性の気体が使用されてきた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3614445号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】森安史典、飯島尋子、映像情報Medical、2006年5月、p.570-578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の超音波造影剤は投与直前に調整されるが、気泡の量や大きさの制御が容易でないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、気泡の量や大きさの制御が容易な超音波造影剤の注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に超音波を照射することにより微小気泡が発生することを見出し、それに基づき超音波造影剤の注入装置に係る本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明に係る超音波造影剤注入装置は、飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により前記気体過飽和水中に気泡を発生させて前記気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、前記気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入することを特徴とする。
【0008】
本発明のある形態では、気泡発生装置は、気体過飽和水を超音波振動させる超音波振動子を含む。
【0009】
本発明のある形態では、超音波造影剤注入装置は、前記気体過飽和水を内部に溜める筒容器と、該筒容器の一端から筒内部に挿入される可動押子と、前記筒内部に連通する注入チューブとを更に備え、
前記超音波振動子は前記注入チューブを流れる気体過飽和水を超音波振動させる。
【0010】
本発明のある形態では、前記超音波振動子と該筒容器の間に設けられた、筒内部の気体過飽和水への超音波振動伝達を抑制する超音波吸収体をさらに含む。
【0011】
本発明のある形態では、前記超音波造影剤を通過させる微細孔を有するフィルタをさらに備え、該フィルタが超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去する。
【0012】
本発明のある形態では、前記フィルタの前記微細孔に気泡に脂質二重層膜を形成する物質が塗布される。
【0013】
本発明のある形態では、前記フィルタの微細孔の径が1μm以下である。
【0014】
本発明のある形態では、前記気泡発生装置内の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成された本発明によれば、気泡の量や大きさの制御が容易な超音波造影剤の注入装置を提供することができる。
すなわち、本発明に係る注入装置によれば、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に体外で超音波を照射することができるので、目的とする診断に応じて気体過飽和水に印加する超音波振動の振動数や強度を調整することが可能であり、気泡の量や大きさの制御が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態1の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施形態2の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】気体過飽和水製造装置の一例を示すブロック図である。
【図4】気体過飽和水製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ、気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図7】(a)〜(d)はそれぞれ、気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図8】気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図9】気体過飽和水の製造温度と気体発生量との関係を示す図である。
【図10】気体過飽和水を4、20、37℃の各温度で製造し、37℃にした後発生する気体発生量を示す図である。
【図11】溶媒による気体発生量の変化を示す図である。
【図12】溶媒混合時の気体発生量の変化を示す図である。
【図13】気体過飽和水に超音波照射をした様子を示す写真であり、(a)は照射前、(b)は照射後の状態を示す。
【図14】気体過飽和水の空気の過飽和度とシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図15】気体過飽和水の空気の過飽和度と超音波照射後の最大輝度の関係を示す図である。
【図16】標準化輝度1.40におけるシリコンチューブ断面の造影像と、標準化輝度1.91におけるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図17】空気、酸素、二酸化炭素、窒素の過飽和度と超音波照射後の最大輝度の関係を示す図である。
【図18】過飽和度1.82の酸素の気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像と、過飽和度1.95の窒素の気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図19】グリセリン40vol%水溶液中を気体過飽和水を流動させた際のシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図20】グリセリン40vol%水溶液中を流動する気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図21】気体過飽和水の注入速度とシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図22】各注入速度での気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図23】超音波周波数50kHzおよび1MHzにおける微小気泡の大きさを示す。
【図24】寒天ファントムの外側から超音波プローブにより超音波を照射する状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態の超音波造影剤注入装置について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態1の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
実施形態1の超音波造影剤注入装置は、飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水6を超音波振動させる超音波振動子1が設けられている。この実施形態1の超音波造影剤注入装置に使用される気体過飽和水6は、詳細後述するように、超音波振動などによる溶液の高速振動や高速流動に伴う圧力低下により、微少な気泡が発生するように調整された本発明者らの発明に係る水溶液であり、超音波振動に限られずキャビテーションが発生するような圧力低下を生じる種々の物理的刺激によって微少な気泡が発生する。また、物理的刺激により圧力を低下させる方法としては、超音波振動のような気体過飽和水の微視的な位置変化を伴う振動の他、例えば、スクリューを高速で回転させたり、細く絞った吹出口から高速で吹き出すようにして気体過飽和水を高速流動させて圧力低下を生じさせることが挙げられる。
以下、実施形態1の超音波造影剤注入装置の具体的な構成について説明する。
【0018】
実施形態1の超音波造影剤注入装置は、気体過飽和水6を筒内部に溜める筒容器4と、筒容器4の一端から筒内部に挿入される可動押子5と、筒内部に連通する注入チューブ3とを備え、その注入チューブ3の外周部分を囲むように超音波振動子1が設けられており、注入チューブ3を流れる気体過飽和水6を超音波振動させる。
また、実施形態1の超音波造影剤注入装置では、超音波振動子1と筒容器4の間に、筒内部に収容された気体過飽和水6への超音波振動の伝達を抑制する超音波吸収体7をさらに備えている。
【0019】
超音波振動子1には、超音波振動子1の振動数及び強度を所定の値に設定する超音波振動制御装置10が接続されている。この超音波振動制御装置10は、例えば、使用する気体過飽和水6の情報が記憶されるメモリを有しており、気体過飽和水6の情報に基づいて所望の気泡径及び気泡量の気泡6aが気体過飽和水6に生じるように超音波振動子1の振動数及び強度を調整する。
【0020】
また、図1には図示していないが、実施形態1の超音波造影剤注入装置では、可動押子5の移動量を制御する流速制御装置をさらに備えていても良く、この流速制御装置によって気体過飽和水6の注入チューブ3内の流速を調整することにより、気体過飽和水6に生じる気泡6aの気泡径及び気泡量を調整することも可能である。
【0021】
さらに、実施形態1の超音波造影剤注入装置は、体外で気泡6aを発生させて超音波造影剤を調整して体内に注入するように構成されていることから、気泡6aを発生させる際の気体過飽和水の温度を所定の温度に設定する温度制御装置を取り付けることも可能である。気泡を発生させる際の気体過飽和水の温度を調整することができれば、効率良く気泡を発生させることが可能になることに加え、気泡径や気泡量の制御が容易になる。本発明では、超音波振動制御装置10にこの温度制御機能を持たせるようにしても良い。尚、気泡を含む超音波造影剤を、体内に注入する際には体内に注入するのに適した温度にすればよい。
【0022】
また、超音波振動子1と筒容器4の間に、筒内部の気体過飽和水への超音波振動の伝達を抑制する超音波吸収体7を含んでいるので、筒内部の気体過飽和水は安定して存在し、必要な時に必要な量だけ超音波造影剤を生成して体内に注入できる。
【0023】
尚、本発明では、超音波振動子1として種々の超音波振動子を用いることができるが、例示すれば、例えば、圧電セラミックス、圧電ポリマー、圧電薄膜などが挙げられる。
また、超音波吸収体として種々の超音波吸収体を用いることができるが、例示すれば、例えば、シリコンゴム、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ゴムなどが挙げられる。
【0024】
以上のように、本実施形態1の超音波造影剤注入装置は、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に体外で超音波を照射するように構成しているので、人体への影響を考慮することなく、気体過飽和水に印加する超音波振動の振動数や強度を調整することが可能であり、目的とする診断に応じて気泡6aの量や大きさの制御が容易になる。
【0025】
実施形態2.
本発明に係る実施形態2の超音波造影剤注入装置は、図2に示すように、実施形態1の超音波造影剤注入装置においてさらに、気泡6aを含む超音波造影剤を通過させる多数の微細孔を有するフィルタ2をさらに備えている以外は、実施形態1の超音波造影剤注入装置と同様に構成される。
これにより、実施形態2の超音波造影剤注入装置では、超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去することが可能になる。
【0026】
実施形態2のフィルタ2の微細孔は、目的とする超音波診断に応じた気泡径になるように設定されたもの(例えば、1μm以下に調整される。)が用いられる。このようなフィルタ2を用いてフィルタ径よりも大きな気泡を除いたり、注出される気泡径のばらつきを少なくすることにより、気泡径が不適切であることにより生じる検査誤差を小さくすることができる。
【0027】
また、実施形態2のフィルタ2はさらに、微細孔の内部、微細孔の吹き出し口若しくは微細孔の吹き出し口のある面などに脂質二重膜を形成できるような物質(例えばアルブミンなど)を塗布することにより、超音波造影剤に含まれる気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせることも可能である。
この機能は、例えば、図2に示す脂質供給装置20からフィルタ2に脂質を注入してフィルタ2の微細孔に注入することにより容易に実現できる。尚、図2において、脂質二重膜で包まれた気泡には6bの符号を付して示している。
このようにフィルタ2に、気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせるようにすることにより、気泡寿命を向上させることができ、より的確な超音波診断が可能になるとともに、気体過飽和水選択の範囲が広がる。
気泡を包む脂質二重膜が形成されたかの確認方法としては、非特許文献 Kodamta etal. J.Electron Micorscopy 2010にある、Dark Field microscopy、TEMなどの手法により確認することが可能であり、その方法により脂質二重膜の形成状況をモニタリングして、そのモニタリング情報を超音波制御装置等にフィードバックすることにより気泡を包む脂質二重膜を効果的かつ確実に形成することが可能になる。
【0028】
また、フィルタ2として種々のフィルタを用いることができるが、例示すれば、例えば、中空糸フィルタ、セラミックフィルタ、高分子膜フィルタなどが挙げられる。
【0029】
尚、実施形態2では、フィルタ2に気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィルタ2に代えて脂質二重膜形成装置を設けるようにしても良い。
【0030】
また、本発明の超音波造影剤注入装置では、各部分ごとに適切な温度に保つ温度制御装置を備えることもできる。例えば、気泡6aを発生させる際の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置の他に、筒容器4に注入された気体過飽和水6の液温を保存に適した温度に保つため筒容器4部分に温度制御装置を具備することで、例えば、気体の溶存量を一定に保つとともに温度変化による気化を防ぐことが可能である。また、ノズル部分に温度制御装置を具備することで、体温程度(37℃前後)に超音波造影剤の温度を調整することにより、超音波造影剤が体内に入ったときの急激な温度変化による超音波造影剤の変質(気泡そのものの変化や気泡の分散状態の変化などを含む)を防ぐことも可能である。
【0031】
以下、本発明に係る超音波造影剤注入装置に好適に用いられる気体過飽和水6について説明する。
【0032】
<気体過飽和水>
本発明者らは、気体過飽和水に超音波を照射することにより微小気泡が発生することを見出し、本発明の超音波造影剤注入装置に好適な気体過飽和水を作製した。
この気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、これにより超音波造影を可能とするものである。
【0033】
気体過飽和水とは、気体が飽和溶解量を超えて含まれる水性液体である。気体過飽和水には、気体が過飽和量存在している。
【0034】
飽和溶解量とは、気体について言う場合には、本発明を実施する環境下で液体に溶解する最大体積を意味する。液体に対する気体の飽和溶解量は、液体および気体の種類、温度、気圧等により変化する。よって、飽和溶解量は、気体、その媒体となる液体の種類は同じであっても、環境により相違する。
例えば、1気圧での酸素の水1Lに対する飽和溶解量は、0℃で48.9mL、15℃で37.5mL、20℃で35.7mL、25℃で33.5mLと変化する。
飽和溶解量の例としては、以下が挙げられる:
(1)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、36.18mg/L;
(2)20℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、23.80mg/L;
(3)25℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、21.95mg/L;
(4)37℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、18.68mg/L;
(5)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する窒素の飽和溶解量は、14.68mg/L;
(6)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する酸素の飽和溶解量は、14.16mg/L;
(7)25℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する水素の飽和溶解量は、14.39mg/L。
気体の飽和溶解量はヘンリーの法則から算出できる。
【0035】
水性液体とは、溶媒が水である溶液である。水性液体の種類は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。本発明においては、細胞と浸透圧が等しい、所謂等張液を使用してもよい。
等張液の例としては、生理食塩水、PBS(PBS(+)およびPBS(−)を含む)、2.6%グリセロール水溶液、5%デキストロース水溶液が挙げられる。
【0036】
上記のとおり、液体に対する気体の飽和溶解量は、気体の種類、温度、気圧等により変化するので、気体過飽和水に含まれる気体の体積も、環境により相違する。例えば、気体過飽和水に含まれる気体の体積は、25℃、1気圧で測定され得る。
気体過飽和水は、例えば、0.6MPaの圧力下で気体を水に混合させて作成することができる。気体過飽和水に物理的刺激(例えば、超音波刺激、熱刺激等)が付与されると包含されている気体が溶媒から分離され、微小気泡となって出現する。
例えば、気体が空気である気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡が発生し、微小気泡の気体の総体積は、1Lの水中に20mL〜65mL、20mL〜40mL、または30mL〜40mL(1気圧、25℃での体積)となる。
また、気体がC3F8ガスである気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、その総体積は、1Lの水中に、10mL〜30mL、10mL〜25mL(1気圧、25℃での体積)となる。
気体過飽和水に含まれる気体の量は、その気体の飽和溶解量に対する比で表すことができる。例えば、空気が、25℃、0.1MPa(約1気圧)で43.90mg/Lの量含まれている気体過飽和水は、25℃、0.1MPa(約1気圧)の飽和溶解量が21.95mg/Lであるから2倍の気体量が含まれていると表すことができる。また、飽和溶解量に対する比を過飽和度と表現してもよい。つまり、25℃、0.1MPa(約1気圧)の飽和溶解量の2倍の気体量が含まれていれば、過飽和度は2である。
本発明に用いる超音波造影剤については、適宜、気体過飽和水に含まれる気体量を設定できる。例えば、血管造影または血流の造影には、体内投入後に飽和溶解量の1.5倍以上の気体量の空気または窒素ガスを含ませた水溶液、飽和溶解量の1.1倍以上の酸素ガスまたは炭酸ガスを含ませた水溶液を使用することができる。性質が異なる4種のガスで、造影が可能な過飽和度の下限値が1.1または1.5であったことから(図16参照)、他の気体についても飽和溶解量の1.5倍以上の気体を含ませた水溶液を造影に使用した場合に、造影が可能であると推測できる。例えば、飽和溶解量の1.5倍以上4倍以下、1.5倍以上3倍以下、1.5倍以上2倍以下、2倍を超えて4倍以下または3倍を超えて4倍以下の気体を含ませた水溶液を造影に使用することができる。
【0037】
気体は、易溶性のものであっても難溶性のものであってもよく、液体として水を使用する場合は、空気または空気よりも水に対する溶解度が低い気体であっても高い気体であってもよい。本発明において使用できる気体の例としては、フルオロカーボン、6フッ化硫黄、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、水素、塩素、メタン、プロパン、ブタン、一酸化窒素、亜酸化窒素、オゾンが挙げられ、それらの任意の混合気体であってもよい。フルオロカーボンの例としては、CF4、C2F6、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、C5F12、C6F14が挙げられる。
【0038】
気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡が発生する。超音波照射は、例えば、ソニトロン2000V、ソノポール4000、ソノビスタMSC1585プローブ(持田シーメンス製)、超音波洗浄槽VS-F100(Velvo-clear製)等の当業者に知られている任意の装置を用いて与えることができる。超音波照射に代えて、他の物理的刺激を付与して、気体過飽和水中に微小気泡を発生させることもできる。物理的刺激は、キャビテーションが発生する刺激であれば特に限定されず、例えば、振動刺激、衝撃刺激が挙げられる。
超音波刺激の強度と周波数は当業者が適宜設定できる。
例えば、超音波の強度を0.06〜0.1W/cm2、0.03〜1W/cm2、0.03〜5W/cm2または0.5〜10W/cm2と設定してもよい。また、超音波の周波数を、例えば、50kHz〜3.4MHz、50kHz〜1MHz、50kHz〜5MHzまたは50kHz〜10MHzの範囲に設定してもよい。
【0039】
微小気泡とは、微小な大きさの泡のことである。微小気泡の大きさは特に限定されないが、直径が、1nm以上1000μm以下、10nm以上100μm以下、10nm以上10μm以下、100nm以上10μm以下または1μm以上10μm以下であり得る。例えば、微小気泡は、その直径が1μm以上20μm以下であり得る。
超音波照射により発生する微小気泡の密度は、特に限定されないが、例えば、溶液1mL中1×106〜1×109個または1×107〜1×108個であってもよい。
【0040】
本発明に用いる気体過飽和水には、シェル(殻)に囲まれた気泡は存在してもしなくてもよい。よって、本発明に用いる気体過飽和水は、殻を形成する物質として、アルブミン、γグロブリン、ゼラチン、コラーゲン、卵由来の物質(例えば、水素添加卵黄)、脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルセリンナトリウム等のリン脂質)、ポリマー(例えば、ポリサッカリド(例えば、キトサンまたはキチン)、PLA、PLGA等)、糖類(例えば、βラクトース、ガラクトース)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸)、界面活性剤、および/またはリポソームを含んでも、含まなくてもよい。
また、本発明に用いる気体過飽和水は、アルブミン、γグロブリン、ゼラチン、コラーゲン、卵由来の物質(例えば、水素添加卵黄)、脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルセリンナトリウム等のリン脂質)、ポリマー(例えば、ポリサッカリド(例えば、キトサンまたはキチン)、PLA、PLGA等)、糖類(例えば、βラクトース、ガラクトース)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸)、界面活性剤、および/またはリポソームを含んでも、含まなくてもよい。
【0041】
本発明において、気体過飽和水は、例えば、以下の工程:
(i)液体を圧送する工程;
(ii)圧送された液体に気体を注入する工程;
(iii)気体を注入された液体を加圧し気体を溶存する工程;および
(iv)気体が溶存した液体を圧送しながらその圧力を大気圧まで減圧する工程、
を含む方法により製造される。
図3は、気体過飽和水の作成手順の一例を示す。
上記(i)−(iv)の工程を実施する温度は特に限定されない。例えば溶媒に水を用いるのであれば、液体として存在する0℃〜100℃において気体過飽和水は作成可能である。
微小気泡の発生量を多くするためには、加圧時の圧力を一定とするならば、より低温で作成するのが好ましい。
本発明者らは後述の実験により、上記(i)−(iv)の工程を実施する温度が低いほど、微小気泡の発生量が多いことを確認した。
例えば、溶媒を水とするならば、水溶液が凍らない低温、0℃〜10℃、4℃〜20℃または4℃〜10℃で上記(i)−(iv)の工程を実施すれば微小気泡の発生量を増加させることができる。
また、上記工程は使用温度よりも低い温度で実施されることが好ましい。
一般的に、生体内や細胞に薬物を適用する場合、約37℃で使用すること想定されるので、37℃より低い温度(例えば、0℃より高く37℃より低い温度)で気体過飽和水を作成してもよい。
本発明者らは後述の実験により、想定使用温度である37℃で上記(i)−(iv)の工程を実施した組成物と4℃で上記(i)−(iv)の工程を実施し、37℃まで加温した組成物とを比較し、後者の方が微小気泡の発生量が多いことを確認した。よって、本発明は、一つの態様として、37℃より低い温度(例えば、0℃より高く20℃より低い、0℃より高く10℃より低い、または4℃より高く10℃より低い温度)で、上記(i)−(iv)の工程を実施することを含む、気体過飽和水の製造方法を提供する。
【0042】
また、気体過飽和水の製造は、装置を用いて機械的に製造することができる。例えば、給水配管や液体貯留槽などの液体供給源から液体を取り入れる入液部と、入液部から入った液体に気体を供給する気体供給部と、気液を混合する気液混合部と、気体が供給された液体を加圧する加圧部と、この気液混合液から余分な気体を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液を溶液内に気体がとどまるように大気圧まで減圧する減圧部と、減圧された溶液を吐出する吐出部と備えており、各部は流路に接続して設けられている装置を使用して製造することができる。
該装置は、減圧部の流出側から直径1μmを越える気泡の発生のない気体溶存液を連続的に吐出させる装置であってもよい。よって、気体過飽和水は、直径1μmを越える気泡の存在しない水溶液であってもよい。
このような装置の例としては、図4に示されるような製造装置Xが挙げられる。
図3は、気体過飽和水の製造装置Xの一例を示すブロック図である。気体過飽和水を製造する装置Xは、気体Gsと液体Lqとを混合する気液混合部53と、この混合された気液を加圧する加圧部51と、混合された気液から余分な気体を分離する気体分離部54と、混合し加圧された気液混合体を減圧する減圧部55とが備えられており、最終的に気体過飽和水が得られる。
【0043】
図4は、気体過飽和水の製造装置Xの具体的な一例を示す概略図である。図4の装置Xは、液体を圧送して連続的に気体過飽和水を製造するものであり、給水配管や液体貯留槽などの液体供給源から液体を取り入れる入液部63と、入液部63から入った液体に気体を供給する気体供給部52と、気体が供給された液体を加圧する加圧部51と、気体と液体を混合する気液混合部53と、この気液が混合した液体(気液混合液)から余分な気体を分離する気体分離部54と、加圧状態の気液混合液を大気圧まで減圧する減圧部55と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部57とを備えており、各部は流路56に接続して設けられている。
【0044】
流路56は、装置Xの各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプなどの管体で構成される。加圧部51と気液混合部53と気体分離部54と減圧部55とは、上側に向かって径が小さくなるテーパ状の円筒型の筐体62にこの順で下側から上側に配置して収容されている。流路56は、筐体62より上流側の流路56a、筐体内の流路56b、筐体62より下流側の流路56cにて構成されている。流路56bは筐体全体として上方向に向かって液体が流れるように形成されている。
【0045】
入液部63は、装置Xの外部にある液体供給源から装置の内部に液体を入れるためのものであり、図4の形態では液体供給源と接続する流路56aの管体の入口として構成されている。この入液部63には、開閉して液体の流入量や圧力を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0046】
気体供給部52は、液体を流れる流路56(流路56aまたは56b)などに接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、図示の形態では管体などにより構成されている。そして、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路56に接続して気体供給部52を形成することができる。あるいは気体として、フルオロカーボン、6フッ化硫黄、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、塩素、メタン、プロパン、ブタン、一酸化窒素、亜酸化窒素、オゾン、水素等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路56に接続して気体供給部52を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部52をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。流路56への気体供給部52の接続位置は、気液混合部53よりも上流側の位置であればよい。この装置のように、加圧部51と気液混合部53とが同体となってポンプ61で構成されている場合は加圧部51より上流側の流路56に接続することになる。また、加圧部51と気液混合部53とが別体で構成されている場合は、加圧部51より上流側の流路56に接続するようにしても、あるいは加圧部51より下流側の流路56に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0047】
ここで、薬物を超音波照射により発生する微小気泡に付着させる場合には、予め薬物を液体に分散・混合しておき、この液体を入液部63に送ってもよく、気体過飽和水を製造した後に薬物を溶解させてもよい。
【0048】
加圧部51は液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、液体供給源から送られた液体を加圧して下流側に送りだすポンプ61などで構成することができる。また、ポンプ61により構成した場合は、このポンプ61で液体貯留槽に常圧で貯留された液体を汲み上げるようにしてもよい。
【0049】
気液混合部53は圧送された液体とこの液体に注入された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部53としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路56を流れているのであれば単に流路56で構成することもできる。図4の形態では、加圧部51と気液混合部53とが兼用されてポンプ61で構成されて設けられている。気液混合部53内においては液体と気体が高圧条件で混合される。
【0050】
上記のような加圧部51および気液混合部53を構成するポンプ61により、気体が注入された液体に急激に圧力が加わって、飽和溶解量を超える気体が液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧にする際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、また、気液混合部53から気体分離部54に送り出される際の液圧を0.15MPa以上にすることにより、飽和溶解量を超える気体が液体に分散することができる。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された水溶液の圧力の上限は50MPaである。
【0051】
図5は、ポンプ61の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ61aは回転体71の回転により液体を加圧するものであり、回転体71に取り付けられた回転翼72が連続的に回転してポンプ入口76からポンプ流路室73を介してポンプ77への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図5において白抜き矢印は液体方向の流れ方向を示し、実線矢印は回転体71の回転方向を示している。このポンプ61aでは4枚の回転翼72が備えられている。また回転体71の回転軸75は、円筒状に形成されたポンプ壁74の円筒中心よりもポンプ出口77側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸71の偏心によりポンプ流路室73の第二流路室73bの容積は、第一流路室73aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室73の容積が順次小さくなっている。
【0052】
そして、ポンプ流路室73に送りだされた液体は、回転翼72で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細な気泡BNが液体中に分散される。すなわち、回転体71の回転と共に第一流路室73aから第二流路室73bに送られた液体は、ポンプ流路室73の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力により気泡BNが生成される。また、図示のポンプ61aでは、ポンプ壁74の内面と回転翼72の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細な気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁74の内面と回転翼74の内面と回転翼72の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体71を用いたポンプ61aによれば、回転体71で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断して微細な気泡を形成することができる。なお、ポンプ61中では、高圧液体中に気体が高濃度で含まれた状態となっている。
ポンプ61の回転体71の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度を超える気体を液体に注入させることができる。
【0053】
加圧部51および気体混合部53による加圧は、加圧部51または気液混合部53を複数設けて、複数回加圧することができる。具体的には、加圧部51を図4のようにポンプ61で構成すると共に、気液混合部53を一つ又は二つ以上のポンプ61又はベンチュリ管で構成することができるものである。
【0054】
気体分離部54は上記のようにして気体が混合された液体から、液体に微細に混合されていなかったり溶存できなかったりする気体を取り除くものである。このような過剰の気体は径の比較的大きい気泡として存在しており、この気泡を取り除けば過剰の気体を分離し除去することが可能である。
【0055】
気体分離部54は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので。この除去された気体を気体除去部58により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡は、浮力により上昇するので、取り除くことができる。
【0056】
気体分離部54としては、具体的には、図6のような構成にすることができる。(a)は、地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を水平方向から下方向(重力方向と略同方向)に変化させて液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。気体分離部54によって分離された気泡は、管体などで構成された気体除去部58から外部に排出される。
【0057】
減圧部55は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、キャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部55で大気圧まで徐々に減圧した後に吐出するようにしているものである。減圧部55は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、キャビテーションが発生することなく溶液を取りだすことができるものである。
【0058】
減圧部55としては、図7のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路56や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路56や、(c)のように加圧された液体が流路56内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように長さ(L)が調整された流路56や(d)のように流路56に設けられた複数の圧力調整弁59などにより構成することができる。
【0059】
例えば図7(a)又は(b)のような減圧部55を用いた場合、減圧部55よりも上流側の流路56を内径20mmにし、減圧部55を、流路の長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部55は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部55に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、キャビテーションを発生させることなく1.0MPa減圧することができ、液体を大気圧にまで減圧することができる。
【0060】
減圧された液体は吐出液57から外部に吐出される。なお、その際、図8のように、流路56bと流56cとの間に、加圧部51における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路60を設けることができる。すなわち、減圧部55を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部51からの押し込み圧によって気液混合部53内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路60を流路56に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路60を設ければキャビテーションの発生なく、気体過飽和水を吐出することができる。
【0061】
上記のように構成された装置Xにあっては、入液部63から入った液体に、気体供給部52により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ61で構成された加圧部51及び気液混合部53によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部53から気液分離部54へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部54で液中の余分な気体を取り除いた後、該液体を減圧部55及び下流側の流路56に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、キャビテーションの発生なく、気体過飽和水を連続的に生成することができる。
【0062】
なお、気液混合部53よりも下流側の流路56は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気体過飽和水を吐出することができ、細路により流路56を構成する場合のような配管の詰まりを防止できる。
【0063】
そして、吐出部57から吐出された気体過飽和水は、適切な剤形の製剤に加工される。例えば、静脈内投与するために注射器に封入されたり、経口投与するためにアンプルやバイヤルに詰められたり、経皮投与するために袋体に封入されたりすることができる。このように製造された製剤は、容器内においても気泡が発生することなく安定に存在するものであるので、気泡を要時調製するなどの手間を必要とすることなく、簡単に効率よく多量の気泡を体内に投与することができる。
【0064】
本発明に用いる気体過飽和水は、超音波造影剤として当業者により適宜製剤化され得る。超音波造影剤は、上記のように作成できる気体過飽和水に加え、必要であれば添加剤を含ませることができる。添加剤としては、例えば、pH調整剤(例えば、塩酸、クエン酸等)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸イソブチル等のp−ヒドロキシ安息香酸エステル等)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、トコフェロール等)、緩衝剤(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸等)、粘度増強剤(例えば、ソルビトール、スクロース等)、浸透圧調整剤(例えば、糖、糖アルコール等)が挙げられる。
【0065】
以上の超音波造影剤を用いた生体組織の画像作成方法は、生体組織の境界面あるいは臓器の構造によって音響インピーダンスが異なることを利用したものである。ここで、対象とする生体の組織は、特に限定されず、例えば、血管、心臓、肝臓、腎臓が挙げられる。生体は、哺乳動物の生体であり得、例えば、ヒトである。音響インピーダンスは伝播する媒体の密度と音速の積で表される。例えば空気中(20℃)の音の伝播速度は344m/s、密度は1.205kg/m3、水(20℃)の伝播速度は1482m/s、密度は999.69kg/m3である。生体組織の音の伝播速度は例えば、脂肪組織1450m/s、血液1570m/s、骨(頭骨)4080m/s程度、密度は脂肪組織920kg/m3、血液1060kg/m3,骨2010kg/m3程度である。ここに例示した数値から理解できるように、生体組織の境界面あるいは臓器の構造によって音響インピーダンスが異なっており、これを利用して生体組織の画像が作成できる。
微小気泡に超音波が照射されると、微小気泡によって超音波が反射される。生体内では微小気泡の音響インピーダンスは生体組織に比べて大きく異なるため、それらの音響インピーダンスの差により気泡の存在する部分が強調されて表示される。よって、当業者に周知の超音波造影装置(例えば、持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて音響インピーダンス差分イメージングを効果的に利用することができる。
また、液体中の気泡にその直径よりも十分長い波長をもつ音波が入射すると、気泡は等方性を保ちながら呼吸振動を行う。さらに、この呼吸振動は気泡径に応じて特定の周波数において、振幅を増すことが知られている。この現象を共振と呼ぶ。ρ0を液体の密度、p0を無限遠での静水圧、paを入射音圧、R0およびRを気泡半径の平衡値および瞬間値、γを内部気体の比熱比とした場合、共振周波数ω0は、以下の式で表わされる:
【0066】
【数1】
強い駆動条件のもとでは、気泡振動に非線形現象が顕著に現れるため、微小気泡が共振することにより、通常のイメージングの造影効果に加え、ハーモニックやサブハーモニックの情報をイメージングに用いることができ、更なる造影効果がえられ効率的である。本発明に用いる超音波造影剤に1MHzの超音波を照射して微小気泡を発生させた場合の気泡径は、1μmであることにより、共振周波数は10MHz程度と計算される。この周波数は、当業者に周知の超音波造影装置で使用されている周波数帯域であり、このような周知の装置を用いてハーモニックまたはサブハーモニックイメージングを効果的に利用することができる。
本明細書において、超音波エコーとは、検査の目的の物質に超音波が入射され、反射または散乱した結果生じる超音波のことを意味する。
超音波エコーの受信、組織の画像作成等は、当業者に周知の超音波造影装置により行うことができる。
【0067】
具体的な一例として、
超音波造影方法または超音波診断方法であって、
(i)気泡を含む超音波造影剤を生体に投与する工程;
(ii)所望の部位の血管に超音波を照射する工程;
(iii)微小気泡により反射または散乱された超音波エコーを受信する工程;および
(iv)受信した超音波に基づき超音波画像を作成する工程、
を含む方法を挙げることができる。
尚、超音波造影には、生体に超音波を照射し、生体から反射または散乱された超音波を利用して生体組織を画像化することが含まれる。超音波診断には、当該画像に基づいて疾患の有無を判断すること、疾患の種類を決定すること等が含まれる。
また、超音波造影剤の投与、微小気泡を発生させる超音波の照射、超音波エコーの受信をどのように実施するかは、当業者が適宜設定できる。例えば、超音波造影剤の投与は、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与することができる。
図1又は図2に示した超音波造影剤注入装置は、上述した超音波造影方法または超音波診断方法を実施する際に、用いることができる。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
実施例1
[気体過飽和水の製造]
装置Xを用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として後述の液体をもちいて気体過飽和水を製造した。
装置Xとしては、気液混合部53がポンプ61で構成された、図4の構成のものを用いた。ポンプ61としては回転体により加圧する図5のようなポンプ61aを用いた。
【0070】
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容積比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ61の回転体71の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部53から気体分離部54に送り出される際の水溶液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入される。
【0071】
また、減圧部55よりも上流側の流路56(56b)を内径20mmのものにした。減圧部55としては図7(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部55の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部55よりも下流側の流路56および延長流路60として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路56と延長流路60とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部55において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で水溶液を減圧し、さらに、下流側の流路56および延長流路60において、1MPa/sec、時間0.5秒で水溶液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された超音波照射により気体過飽和水が得られた。
【0072】
[発生する気体量の測定]
液体として純水(超純水)を、気体として空気を用い、4℃、20℃、37℃で、上記のように0.6MPaで加圧して空気を超純水に含ませることにより気体過飽和水を作成した。作成直後に封止して、一部は37℃に加温し、その後、水溶液を25℃にした。水溶液中に過剰量含まれている気体(空気)の量を以下の(1)−(4):
(1)ナイロン樹脂製のガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に気体過飽和水を密閉し;
(2)ガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に密閉された水溶液をホットプレート上で45℃、2時間静置し;
(3)室温(25℃)で3時間静置し;および
(4)ガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に存在する気体を捕集しその体積を測定する、ことにより測定した。
その結果、水溶液から発生する気体の量は、4℃が最も多く、20℃、37℃の順に少なくなった(図9参照)。4℃で作成すれば約60mLの気体が1Lの水に含まれ、20℃で作成すれば約40mL気体が1Lの水に含まれ、37℃で作成すれば、約20mLの気体が1Lの水に含まれ、超音波付与によりこれらが微小気泡となって出現した。4℃および20℃で製造した水溶液中からの気体発生量は、37℃に加温することにより僅かに減少したが、それでも37℃で製造した水溶液に比較し気体の発生量は多かった(図10参照)。
よって、作成温度が低いほど、気体発生量が増加すること、作成時の温度の方が、作成後の温度上昇よりも気体発生量の低下に対する寄与が大きいことが明らかとなった。生体や細胞に37℃で適用する場合、低温で作成した後に加温した方が得られる気体の発生量が多いことが示された。
【0073】
[各種水溶液における気体の発生量]
液体として超純水、生理食塩水またはリン酸バッファー(PBS(+))を用い、気体として空気を用い、4℃で、実施例1の方法に従って、0.6MPaで加圧して空気を超純水に含ませることにより気体過飽和水を作成した。作成直後に封止して、その後、該水溶液中に存在する気体量を25℃にし、気体発生量を測定した(図11参照)。
また、4℃で超純水を用いて作成した気体過飽和水に4℃の10倍濃縮生理食塩水(10×生理食塩水)、10倍濃縮PBS(+)(10×リン酸バッファー)または10倍濃縮培養液(10×RPMI1640)(10×培養液)を加え、1×生理食塩水、1×リン酸バッファーおよび1×RPMI1640を作成した。作成直後に封止して、一部を37℃に加温し、その後、該水溶液を25℃にし、気体発生量を測定した。
その結果、食塩水、PBS(リン酸緩衝液)を用いて気体過飽和水を直接作成した場合、超純水に比較し気体発生量の低下は見られなかった(図11参照)。
また、10倍濃縮した溶媒と超純水を用いて作成した気体過飽和水を混合して1倍濃度に希釈した場合、気体発生量は2〜3割低下した(図12参照)。なお、図12中、「超純水」は、液体として超純水、気体として空気を用いて4℃で製造された気体過飽和水の気体発生量を表し、「10×生理食塩水」は、10倍濃縮生理食塩水を「超純水」で希釈して1倍とした生理食塩水の気体発生量を表し、「10×リン酸バッファー」は、10倍濃縮PBS(+)を「超純水」で希釈して1倍としたPBS(+)の気体発生量を表し、「10×RPMI1640」は、10倍濃縮RPMI1640培地を「超純水」で希釈して1倍としたRPMI1640培地の気体発生量を表す。
直接過飽和量の気体を混合して作成された等張液の方が、超純水を用いて気体過飽和水を一旦作成し、その気体過飽和水で希釈することにより作成された等張液に比較し、発生気体量が多くなり、微小気泡の発生量が多くなることが示された。
【0074】
実施例2
[超音波の照射]
超音波による微小気泡の崩壊の例を示す。
図13は、超音波照射の前後の気体過飽和水Aの写真であり、(a)は照射前、(b)は照射後である。図中、超音波浴槽を符号40で示している。
ビーカー(300mL)内に、液体として超純水を、気体として窒素を用いて実施例1の方法に従って作成された気体過飽和水Aを入れた。
超音波浴槽40としては、振動子40kHzボルト締めランジュバン型振動子を用いた超音波浴槽(槽の寸法は240×140×150mm)を用いた。その浴槽内に水を張り、出力100Wで超音波を照射している浴槽内の水にビーカーごと1〜2秒程度浸した。その結果、図13(b)のように、微小気泡が発生した。
【0075】
実施例3
[造影能の検討]
気体過飽和水の造影能を検討するために、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585、プローブ 7.5MHz)を用いて観察を行った。
具体的には、シリコンチューブ管をポンプに連結し、気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させた(流速74ml/min)。シリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。
1)空気の過飽和度の検討
液体として純水(超純水)を、気体として空気を用いて実施例1にしたがって、過飽和度既知の気体過飽和水を作成した。
過飽和度は、同温同圧での水に対する飽和溶解量の比で表す(なお、実験は室温:20℃、1気圧で行ったので、25℃、1気圧での飽和溶解量に対する比で表している)。
過飽和度既知の気体過飽和水を飽和水で希釈することにより、種々の過飽和度の気体過飽和水を作成した。過飽和度、1、1.18、1.38、1.80、2.41、2.96である、気体過飽和水(過飽和気体:空気)を作成し、シリコンチューブ内を流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、空気の過飽和量の増加とともに、最大輝度が増加するとともに、気泡化超音波に対する応答性が高くなった(図14)。
さらに、1〜2.5で異なる過飽和度を有する18の気体過飽和水(過飽和気体:空気)を作成した。作成した気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、シリコンチューブ内の輝度は、気体過飽和水の過飽和度に応じて上昇した(図15)。空気過飽和の場合、チューブ断面形状の造影が、過飽和度1.5以上において確認された(表1および図16)。
2)酸素、二酸化炭素、窒素の過飽和度の検討
液体として純水(超純水)を、気体として酸素、二酸化炭素または窒素を用いて実施例1にしたがって、種々の過飽和度の気体過飽和水を作成した。また、窒素に関しては、別途加圧タンクを用いて、高い過飽和度の気体過飽和水を作成した。作成した気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、酸素、二酸化炭素の場合、チューブ断面の造影が過飽和度1.1以上において、窒素の場合、チューブ断面の造影が過飽和度1.5以上において確認された(表1、図17および16参照)。空気に関しては、1)より断面形状の造影については、過飽和度1.5以上が必要であることが確認されている。
また、過飽和度4を超えると最大輝度にバラツキが見られることから、安定的に造影するためには、過飽和度4以下が好ましいことが確認された(図17参照)。
【0076】
【表1】
【0077】
3)気体過飽和水の粘度の造影能に及ぼす影響
気体過飽和水を血液に注入した場合、血液の粘性の影響によりせん断力が増加し気泡化の制御が困難になる可能性が考えられた。そこで、粘性を血液と同程度にした水溶液中に、気体過飽和水を注入・流動させた際に造影能を有するか否かを検討した。シリコンチューブをポンプに接続し、シリコンチューブ内に、粘性を血液と同程度にした40vol%グリセリン水溶液を流した(流速74ml/min)。気体過飽和水をシリンジにてチューブ内に注入し、45cm下流でシリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。その結果、血液と同じ粘性中に注入された場合においても、気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、チューブの断面形状の造影が可能であることが確認された(図19および18参照)。
4)気体過飽和水の投与と超音波照射の位置の検討
血流中に投与された気体過飽和水が、希釈されずにそのまま造影能を保持することを検討した。シリコンチューブをポンプに接続し、シリコンチューブ内に、空気で飽和させた純水(超純水)を流した(流速74ml/min)。気体過飽和水をシリンジにて1、2、10ml/secでチューブ内に注入し、3000mm下流で、シリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。
その結果、3000mm下流において、気泡が発生し、造影が可能であることが確認された(図21および20参照)。また、注入速度が速い方が、明確にチューブの断面形状を造影できた(図22参照)。
造影箇所と離れた部位で体内に投与した場合であっても、気体過飽和水は目的の箇所で十分な造影能を有すると考えられる。
実施例4
[超音波周波数の検討]
気体過飽和水に50KHzまたは1MHzの超音波を照射し微小気泡を発生させた。その結果、50KHzの超音波を照射した場合には約20μm、1MHzの超音波を照射した場合には約1μmの直径を有する微小気泡が発生した(図23参照)。
【0078】
実施例5
[超音波の間接照射の検討]
人体に超音波を照射する際には、皮膚の上から皮膚組織下にある血管に超音波を付与するので、超音波は皮下の組織を介して間接的に血管に照射される。
そこで、12cm×18cmの寒天ファントムの中心に穴を設置し(図24参照)、超音波プローブ(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を寒天ファントムの外側から接触させて、超音波を照射した(図24参照)。超純水の場合には穴内の流体は造影されなかったが、気体過飽和水の場合には穴内の流体が造影された。
【符号の説明】
【0079】
1 超音波振動子
2 フィルタ
3 注入チューブ
4 筒容器(シリンジ)
5 可動押子(プランジャー)
6 気体過飽和水
7 超音波吸収体
10 超音波振動制御装置
20 脂質供給装置
A 気体過飽和水
X 気体過飽和水の製造装置
40 超音波浴槽
51 加圧部
52 気体供給部
53 気液混合部
54 気体分離部
55 減圧部
56 流路
57 吐出部
58 気体除去部
61 ポンプ
63 入液部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波造影剤注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を体外から照射し、その反射を利用して体内の構造、血液の流れ、病変などを診断する超音波診断の造影剤として微小な気泡が利用されてきた。気泡は不安定であることから、気泡の外縁に脂質、界面活性剤、アルブミン等でシェル(殻)を形成し、ガスを封じ込めることで気泡の安定化を図った超音波造影剤がこれまでに開発されている(特許文献1、非特許文献1)。
また、気泡を構成する気体成分が血液等の体液中へ拡散することをできるだけ防ぐために酸素や炭酸ガス等の水に対する溶解度の高い気体の代わりにフッ化炭素等の難水溶性の気体が使用されてきた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3614445号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】森安史典、飯島尋子、映像情報Medical、2006年5月、p.570-578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の超音波造影剤は投与直前に調整されるが、気泡の量や大きさの制御が容易でないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、気泡の量や大きさの制御が容易な超音波造影剤の注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に超音波を照射することにより微小気泡が発生することを見出し、それに基づき超音波造影剤の注入装置に係る本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明に係る超音波造影剤注入装置は、飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により前記気体過飽和水中に気泡を発生させて前記気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、前記気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入することを特徴とする。
【0008】
本発明のある形態では、気泡発生装置は、気体過飽和水を超音波振動させる超音波振動子を含む。
【0009】
本発明のある形態では、超音波造影剤注入装置は、前記気体過飽和水を内部に溜める筒容器と、該筒容器の一端から筒内部に挿入される可動押子と、前記筒内部に連通する注入チューブとを更に備え、
前記超音波振動子は前記注入チューブを流れる気体過飽和水を超音波振動させる。
【0010】
本発明のある形態では、前記超音波振動子と該筒容器の間に設けられた、筒内部の気体過飽和水への超音波振動伝達を抑制する超音波吸収体をさらに含む。
【0011】
本発明のある形態では、前記超音波造影剤を通過させる微細孔を有するフィルタをさらに備え、該フィルタが超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去する。
【0012】
本発明のある形態では、前記フィルタの前記微細孔に気泡に脂質二重層膜を形成する物質が塗布される。
【0013】
本発明のある形態では、前記フィルタの微細孔の径が1μm以下である。
【0014】
本発明のある形態では、前記気泡発生装置内の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成された本発明によれば、気泡の量や大きさの制御が容易な超音波造影剤の注入装置を提供することができる。
すなわち、本発明に係る注入装置によれば、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に体外で超音波を照射することができるので、目的とする診断に応じて気体過飽和水に印加する超音波振動の振動数や強度を調整することが可能であり、気泡の量や大きさの制御が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態1の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施形態2の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】気体過飽和水製造装置の一例を示すブロック図である。
【図4】気体過飽和水製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ、気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図7】(a)〜(d)はそれぞれ、気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図8】気体過飽和水製造装置の一部を示す概略図である。
【図9】気体過飽和水の製造温度と気体発生量との関係を示す図である。
【図10】気体過飽和水を4、20、37℃の各温度で製造し、37℃にした後発生する気体発生量を示す図である。
【図11】溶媒による気体発生量の変化を示す図である。
【図12】溶媒混合時の気体発生量の変化を示す図である。
【図13】気体過飽和水に超音波照射をした様子を示す写真であり、(a)は照射前、(b)は照射後の状態を示す。
【図14】気体過飽和水の空気の過飽和度とシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図15】気体過飽和水の空気の過飽和度と超音波照射後の最大輝度の関係を示す図である。
【図16】標準化輝度1.40におけるシリコンチューブ断面の造影像と、標準化輝度1.91におけるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図17】空気、酸素、二酸化炭素、窒素の過飽和度と超音波照射後の最大輝度の関係を示す図である。
【図18】過飽和度1.82の酸素の気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像と、過飽和度1.95の窒素の気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図19】グリセリン40vol%水溶液中を気体過飽和水を流動させた際のシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図20】グリセリン40vol%水溶液中を流動する気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図21】気体過飽和水の注入速度とシリコンチューブ内の輝度の経時変化を示す図である。
【図22】各注入速度での気体過飽和水によるシリコンチューブ断面の造影像を示す。
【図23】超音波周波数50kHzおよび1MHzにおける微小気泡の大きさを示す。
【図24】寒天ファントムの外側から超音波プローブにより超音波を照射する状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態の超音波造影剤注入装置について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態1の超音波造影剤注入装置の構成を模式的に示す断面図である。
実施形態1の超音波造影剤注入装置は、飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水6を超音波振動させる超音波振動子1が設けられている。この実施形態1の超音波造影剤注入装置に使用される気体過飽和水6は、詳細後述するように、超音波振動などによる溶液の高速振動や高速流動に伴う圧力低下により、微少な気泡が発生するように調整された本発明者らの発明に係る水溶液であり、超音波振動に限られずキャビテーションが発生するような圧力低下を生じる種々の物理的刺激によって微少な気泡が発生する。また、物理的刺激により圧力を低下させる方法としては、超音波振動のような気体過飽和水の微視的な位置変化を伴う振動の他、例えば、スクリューを高速で回転させたり、細く絞った吹出口から高速で吹き出すようにして気体過飽和水を高速流動させて圧力低下を生じさせることが挙げられる。
以下、実施形態1の超音波造影剤注入装置の具体的な構成について説明する。
【0018】
実施形態1の超音波造影剤注入装置は、気体過飽和水6を筒内部に溜める筒容器4と、筒容器4の一端から筒内部に挿入される可動押子5と、筒内部に連通する注入チューブ3とを備え、その注入チューブ3の外周部分を囲むように超音波振動子1が設けられており、注入チューブ3を流れる気体過飽和水6を超音波振動させる。
また、実施形態1の超音波造影剤注入装置では、超音波振動子1と筒容器4の間に、筒内部に収容された気体過飽和水6への超音波振動の伝達を抑制する超音波吸収体7をさらに備えている。
【0019】
超音波振動子1には、超音波振動子1の振動数及び強度を所定の値に設定する超音波振動制御装置10が接続されている。この超音波振動制御装置10は、例えば、使用する気体過飽和水6の情報が記憶されるメモリを有しており、気体過飽和水6の情報に基づいて所望の気泡径及び気泡量の気泡6aが気体過飽和水6に生じるように超音波振動子1の振動数及び強度を調整する。
【0020】
また、図1には図示していないが、実施形態1の超音波造影剤注入装置では、可動押子5の移動量を制御する流速制御装置をさらに備えていても良く、この流速制御装置によって気体過飽和水6の注入チューブ3内の流速を調整することにより、気体過飽和水6に生じる気泡6aの気泡径及び気泡量を調整することも可能である。
【0021】
さらに、実施形態1の超音波造影剤注入装置は、体外で気泡6aを発生させて超音波造影剤を調整して体内に注入するように構成されていることから、気泡6aを発生させる際の気体過飽和水の温度を所定の温度に設定する温度制御装置を取り付けることも可能である。気泡を発生させる際の気体過飽和水の温度を調整することができれば、効率良く気泡を発生させることが可能になることに加え、気泡径や気泡量の制御が容易になる。本発明では、超音波振動制御装置10にこの温度制御機能を持たせるようにしても良い。尚、気泡を含む超音波造影剤を、体内に注入する際には体内に注入するのに適した温度にすればよい。
【0022】
また、超音波振動子1と筒容器4の間に、筒内部の気体過飽和水への超音波振動の伝達を抑制する超音波吸収体7を含んでいるので、筒内部の気体過飽和水は安定して存在し、必要な時に必要な量だけ超音波造影剤を生成して体内に注入できる。
【0023】
尚、本発明では、超音波振動子1として種々の超音波振動子を用いることができるが、例示すれば、例えば、圧電セラミックス、圧電ポリマー、圧電薄膜などが挙げられる。
また、超音波吸収体として種々の超音波吸収体を用いることができるが、例示すれば、例えば、シリコンゴム、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ゴムなどが挙げられる。
【0024】
以上のように、本実施形態1の超音波造影剤注入装置は、過飽和量の気体が溶存する水溶液(気体過飽和水)に体外で超音波を照射するように構成しているので、人体への影響を考慮することなく、気体過飽和水に印加する超音波振動の振動数や強度を調整することが可能であり、目的とする診断に応じて気泡6aの量や大きさの制御が容易になる。
【0025】
実施形態2.
本発明に係る実施形態2の超音波造影剤注入装置は、図2に示すように、実施形態1の超音波造影剤注入装置においてさらに、気泡6aを含む超音波造影剤を通過させる多数の微細孔を有するフィルタ2をさらに備えている以外は、実施形態1の超音波造影剤注入装置と同様に構成される。
これにより、実施形態2の超音波造影剤注入装置では、超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去することが可能になる。
【0026】
実施形態2のフィルタ2の微細孔は、目的とする超音波診断に応じた気泡径になるように設定されたもの(例えば、1μm以下に調整される。)が用いられる。このようなフィルタ2を用いてフィルタ径よりも大きな気泡を除いたり、注出される気泡径のばらつきを少なくすることにより、気泡径が不適切であることにより生じる検査誤差を小さくすることができる。
【0027】
また、実施形態2のフィルタ2はさらに、微細孔の内部、微細孔の吹き出し口若しくは微細孔の吹き出し口のある面などに脂質二重膜を形成できるような物質(例えばアルブミンなど)を塗布することにより、超音波造影剤に含まれる気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせることも可能である。
この機能は、例えば、図2に示す脂質供給装置20からフィルタ2に脂質を注入してフィルタ2の微細孔に注入することにより容易に実現できる。尚、図2において、脂質二重膜で包まれた気泡には6bの符号を付して示している。
このようにフィルタ2に、気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせるようにすることにより、気泡寿命を向上させることができ、より的確な超音波診断が可能になるとともに、気体過飽和水選択の範囲が広がる。
気泡を包む脂質二重膜が形成されたかの確認方法としては、非特許文献 Kodamta etal. J.Electron Micorscopy 2010にある、Dark Field microscopy、TEMなどの手法により確認することが可能であり、その方法により脂質二重膜の形成状況をモニタリングして、そのモニタリング情報を超音波制御装置等にフィードバックすることにより気泡を包む脂質二重膜を効果的かつ確実に形成することが可能になる。
【0028】
また、フィルタ2として種々のフィルタを用いることができるが、例示すれば、例えば、中空糸フィルタ、セラミックフィルタ、高分子膜フィルタなどが挙げられる。
【0029】
尚、実施形態2では、フィルタ2に気泡を包む脂質二重膜を形成する機能を持たせるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィルタ2に代えて脂質二重膜形成装置を設けるようにしても良い。
【0030】
また、本発明の超音波造影剤注入装置では、各部分ごとに適切な温度に保つ温度制御装置を備えることもできる。例えば、気泡6aを発生させる際の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置の他に、筒容器4に注入された気体過飽和水6の液温を保存に適した温度に保つため筒容器4部分に温度制御装置を具備することで、例えば、気体の溶存量を一定に保つとともに温度変化による気化を防ぐことが可能である。また、ノズル部分に温度制御装置を具備することで、体温程度(37℃前後)に超音波造影剤の温度を調整することにより、超音波造影剤が体内に入ったときの急激な温度変化による超音波造影剤の変質(気泡そのものの変化や気泡の分散状態の変化などを含む)を防ぐことも可能である。
【0031】
以下、本発明に係る超音波造影剤注入装置に好適に用いられる気体過飽和水6について説明する。
【0032】
<気体過飽和水>
本発明者らは、気体過飽和水に超音波を照射することにより微小気泡が発生することを見出し、本発明の超音波造影剤注入装置に好適な気体過飽和水を作製した。
この気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、これにより超音波造影を可能とするものである。
【0033】
気体過飽和水とは、気体が飽和溶解量を超えて含まれる水性液体である。気体過飽和水には、気体が過飽和量存在している。
【0034】
飽和溶解量とは、気体について言う場合には、本発明を実施する環境下で液体に溶解する最大体積を意味する。液体に対する気体の飽和溶解量は、液体および気体の種類、温度、気圧等により変化する。よって、飽和溶解量は、気体、その媒体となる液体の種類は同じであっても、環境により相違する。
例えば、1気圧での酸素の水1Lに対する飽和溶解量は、0℃で48.9mL、15℃で37.5mL、20℃で35.7mL、25℃で33.5mLと変化する。
飽和溶解量の例としては、以下が挙げられる:
(1)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、36.18mg/L;
(2)20℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、23.80mg/L;
(3)25℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、21.95mg/L;
(4)37℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する空気の飽和溶解量は、18.68mg/L;
(5)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する窒素の飽和溶解量は、14.68mg/L;
(6)0℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する酸素の飽和溶解量は、14.16mg/L;
(7)25℃、0.1MPa(約1気圧)で水に対する水素の飽和溶解量は、14.39mg/L。
気体の飽和溶解量はヘンリーの法則から算出できる。
【0035】
水性液体とは、溶媒が水である溶液である。水性液体の種類は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。本発明においては、細胞と浸透圧が等しい、所謂等張液を使用してもよい。
等張液の例としては、生理食塩水、PBS(PBS(+)およびPBS(−)を含む)、2.6%グリセロール水溶液、5%デキストロース水溶液が挙げられる。
【0036】
上記のとおり、液体に対する気体の飽和溶解量は、気体の種類、温度、気圧等により変化するので、気体過飽和水に含まれる気体の体積も、環境により相違する。例えば、気体過飽和水に含まれる気体の体積は、25℃、1気圧で測定され得る。
気体過飽和水は、例えば、0.6MPaの圧力下で気体を水に混合させて作成することができる。気体過飽和水に物理的刺激(例えば、超音波刺激、熱刺激等)が付与されると包含されている気体が溶媒から分離され、微小気泡となって出現する。
例えば、気体が空気である気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡が発生し、微小気泡の気体の総体積は、1Lの水中に20mL〜65mL、20mL〜40mL、または30mL〜40mL(1気圧、25℃での体積)となる。
また、気体がC3F8ガスである気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、その総体積は、1Lの水中に、10mL〜30mL、10mL〜25mL(1気圧、25℃での体積)となる。
気体過飽和水に含まれる気体の量は、その気体の飽和溶解量に対する比で表すことができる。例えば、空気が、25℃、0.1MPa(約1気圧)で43.90mg/Lの量含まれている気体過飽和水は、25℃、0.1MPa(約1気圧)の飽和溶解量が21.95mg/Lであるから2倍の気体量が含まれていると表すことができる。また、飽和溶解量に対する比を過飽和度と表現してもよい。つまり、25℃、0.1MPa(約1気圧)の飽和溶解量の2倍の気体量が含まれていれば、過飽和度は2である。
本発明に用いる超音波造影剤については、適宜、気体過飽和水に含まれる気体量を設定できる。例えば、血管造影または血流の造影には、体内投入後に飽和溶解量の1.5倍以上の気体量の空気または窒素ガスを含ませた水溶液、飽和溶解量の1.1倍以上の酸素ガスまたは炭酸ガスを含ませた水溶液を使用することができる。性質が異なる4種のガスで、造影が可能な過飽和度の下限値が1.1または1.5であったことから(図16参照)、他の気体についても飽和溶解量の1.5倍以上の気体を含ませた水溶液を造影に使用した場合に、造影が可能であると推測できる。例えば、飽和溶解量の1.5倍以上4倍以下、1.5倍以上3倍以下、1.5倍以上2倍以下、2倍を超えて4倍以下または3倍を超えて4倍以下の気体を含ませた水溶液を造影に使用することができる。
【0037】
気体は、易溶性のものであっても難溶性のものであってもよく、液体として水を使用する場合は、空気または空気よりも水に対する溶解度が低い気体であっても高い気体であってもよい。本発明において使用できる気体の例としては、フルオロカーボン、6フッ化硫黄、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、水素、塩素、メタン、プロパン、ブタン、一酸化窒素、亜酸化窒素、オゾンが挙げられ、それらの任意の混合気体であってもよい。フルオロカーボンの例としては、CF4、C2F6、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、C5F12、C6F14が挙げられる。
【0038】
気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡が発生する。超音波照射は、例えば、ソニトロン2000V、ソノポール4000、ソノビスタMSC1585プローブ(持田シーメンス製)、超音波洗浄槽VS-F100(Velvo-clear製)等の当業者に知られている任意の装置を用いて与えることができる。超音波照射に代えて、他の物理的刺激を付与して、気体過飽和水中に微小気泡を発生させることもできる。物理的刺激は、キャビテーションが発生する刺激であれば特に限定されず、例えば、振動刺激、衝撃刺激が挙げられる。
超音波刺激の強度と周波数は当業者が適宜設定できる。
例えば、超音波の強度を0.06〜0.1W/cm2、0.03〜1W/cm2、0.03〜5W/cm2または0.5〜10W/cm2と設定してもよい。また、超音波の周波数を、例えば、50kHz〜3.4MHz、50kHz〜1MHz、50kHz〜5MHzまたは50kHz〜10MHzの範囲に設定してもよい。
【0039】
微小気泡とは、微小な大きさの泡のことである。微小気泡の大きさは特に限定されないが、直径が、1nm以上1000μm以下、10nm以上100μm以下、10nm以上10μm以下、100nm以上10μm以下または1μm以上10μm以下であり得る。例えば、微小気泡は、その直径が1μm以上20μm以下であり得る。
超音波照射により発生する微小気泡の密度は、特に限定されないが、例えば、溶液1mL中1×106〜1×109個または1×107〜1×108個であってもよい。
【0040】
本発明に用いる気体過飽和水には、シェル(殻)に囲まれた気泡は存在してもしなくてもよい。よって、本発明に用いる気体過飽和水は、殻を形成する物質として、アルブミン、γグロブリン、ゼラチン、コラーゲン、卵由来の物質(例えば、水素添加卵黄)、脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルセリンナトリウム等のリン脂質)、ポリマー(例えば、ポリサッカリド(例えば、キトサンまたはキチン)、PLA、PLGA等)、糖類(例えば、βラクトース、ガラクトース)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸)、界面活性剤、および/またはリポソームを含んでも、含まなくてもよい。
また、本発明に用いる気体過飽和水は、アルブミン、γグロブリン、ゼラチン、コラーゲン、卵由来の物質(例えば、水素添加卵黄)、脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルセリンナトリウム等のリン脂質)、ポリマー(例えば、ポリサッカリド(例えば、キトサンまたはキチン)、PLA、PLGA等)、糖類(例えば、βラクトース、ガラクトース)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸)、界面活性剤、および/またはリポソームを含んでも、含まなくてもよい。
【0041】
本発明において、気体過飽和水は、例えば、以下の工程:
(i)液体を圧送する工程;
(ii)圧送された液体に気体を注入する工程;
(iii)気体を注入された液体を加圧し気体を溶存する工程;および
(iv)気体が溶存した液体を圧送しながらその圧力を大気圧まで減圧する工程、
を含む方法により製造される。
図3は、気体過飽和水の作成手順の一例を示す。
上記(i)−(iv)の工程を実施する温度は特に限定されない。例えば溶媒に水を用いるのであれば、液体として存在する0℃〜100℃において気体過飽和水は作成可能である。
微小気泡の発生量を多くするためには、加圧時の圧力を一定とするならば、より低温で作成するのが好ましい。
本発明者らは後述の実験により、上記(i)−(iv)の工程を実施する温度が低いほど、微小気泡の発生量が多いことを確認した。
例えば、溶媒を水とするならば、水溶液が凍らない低温、0℃〜10℃、4℃〜20℃または4℃〜10℃で上記(i)−(iv)の工程を実施すれば微小気泡の発生量を増加させることができる。
また、上記工程は使用温度よりも低い温度で実施されることが好ましい。
一般的に、生体内や細胞に薬物を適用する場合、約37℃で使用すること想定されるので、37℃より低い温度(例えば、0℃より高く37℃より低い温度)で気体過飽和水を作成してもよい。
本発明者らは後述の実験により、想定使用温度である37℃で上記(i)−(iv)の工程を実施した組成物と4℃で上記(i)−(iv)の工程を実施し、37℃まで加温した組成物とを比較し、後者の方が微小気泡の発生量が多いことを確認した。よって、本発明は、一つの態様として、37℃より低い温度(例えば、0℃より高く20℃より低い、0℃より高く10℃より低い、または4℃より高く10℃より低い温度)で、上記(i)−(iv)の工程を実施することを含む、気体過飽和水の製造方法を提供する。
【0042】
また、気体過飽和水の製造は、装置を用いて機械的に製造することができる。例えば、給水配管や液体貯留槽などの液体供給源から液体を取り入れる入液部と、入液部から入った液体に気体を供給する気体供給部と、気液を混合する気液混合部と、気体が供給された液体を加圧する加圧部と、この気液混合液から余分な気体を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液を溶液内に気体がとどまるように大気圧まで減圧する減圧部と、減圧された溶液を吐出する吐出部と備えており、各部は流路に接続して設けられている装置を使用して製造することができる。
該装置は、減圧部の流出側から直径1μmを越える気泡の発生のない気体溶存液を連続的に吐出させる装置であってもよい。よって、気体過飽和水は、直径1μmを越える気泡の存在しない水溶液であってもよい。
このような装置の例としては、図4に示されるような製造装置Xが挙げられる。
図3は、気体過飽和水の製造装置Xの一例を示すブロック図である。気体過飽和水を製造する装置Xは、気体Gsと液体Lqとを混合する気液混合部53と、この混合された気液を加圧する加圧部51と、混合された気液から余分な気体を分離する気体分離部54と、混合し加圧された気液混合体を減圧する減圧部55とが備えられており、最終的に気体過飽和水が得られる。
【0043】
図4は、気体過飽和水の製造装置Xの具体的な一例を示す概略図である。図4の装置Xは、液体を圧送して連続的に気体過飽和水を製造するものであり、給水配管や液体貯留槽などの液体供給源から液体を取り入れる入液部63と、入液部63から入った液体に気体を供給する気体供給部52と、気体が供給された液体を加圧する加圧部51と、気体と液体を混合する気液混合部53と、この気液が混合した液体(気液混合液)から余分な気体を分離する気体分離部54と、加圧状態の気液混合液を大気圧まで減圧する減圧部55と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部57とを備えており、各部は流路56に接続して設けられている。
【0044】
流路56は、装置Xの各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプなどの管体で構成される。加圧部51と気液混合部53と気体分離部54と減圧部55とは、上側に向かって径が小さくなるテーパ状の円筒型の筐体62にこの順で下側から上側に配置して収容されている。流路56は、筐体62より上流側の流路56a、筐体内の流路56b、筐体62より下流側の流路56cにて構成されている。流路56bは筐体全体として上方向に向かって液体が流れるように形成されている。
【0045】
入液部63は、装置Xの外部にある液体供給源から装置の内部に液体を入れるためのものであり、図4の形態では液体供給源と接続する流路56aの管体の入口として構成されている。この入液部63には、開閉して液体の流入量や圧力を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0046】
気体供給部52は、液体を流れる流路56(流路56aまたは56b)などに接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、図示の形態では管体などにより構成されている。そして、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路56に接続して気体供給部52を形成することができる。あるいは気体として、フルオロカーボン、6フッ化硫黄、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、塩素、メタン、プロパン、ブタン、一酸化窒素、亜酸化窒素、オゾン、水素等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路56に接続して気体供給部52を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部52をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。流路56への気体供給部52の接続位置は、気液混合部53よりも上流側の位置であればよい。この装置のように、加圧部51と気液混合部53とが同体となってポンプ61で構成されている場合は加圧部51より上流側の流路56に接続することになる。また、加圧部51と気液混合部53とが別体で構成されている場合は、加圧部51より上流側の流路56に接続するようにしても、あるいは加圧部51より下流側の流路56に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0047】
ここで、薬物を超音波照射により発生する微小気泡に付着させる場合には、予め薬物を液体に分散・混合しておき、この液体を入液部63に送ってもよく、気体過飽和水を製造した後に薬物を溶解させてもよい。
【0048】
加圧部51は液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、液体供給源から送られた液体を加圧して下流側に送りだすポンプ61などで構成することができる。また、ポンプ61により構成した場合は、このポンプ61で液体貯留槽に常圧で貯留された液体を汲み上げるようにしてもよい。
【0049】
気液混合部53は圧送された液体とこの液体に注入された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部53としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路56を流れているのであれば単に流路56で構成することもできる。図4の形態では、加圧部51と気液混合部53とが兼用されてポンプ61で構成されて設けられている。気液混合部53内においては液体と気体が高圧条件で混合される。
【0050】
上記のような加圧部51および気液混合部53を構成するポンプ61により、気体が注入された液体に急激に圧力が加わって、飽和溶解量を超える気体が液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧にする際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、また、気液混合部53から気体分離部54に送り出される際の液圧を0.15MPa以上にすることにより、飽和溶解量を超える気体が液体に分散することができる。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された水溶液の圧力の上限は50MPaである。
【0051】
図5は、ポンプ61の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ61aは回転体71の回転により液体を加圧するものであり、回転体71に取り付けられた回転翼72が連続的に回転してポンプ入口76からポンプ流路室73を介してポンプ77への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図5において白抜き矢印は液体方向の流れ方向を示し、実線矢印は回転体71の回転方向を示している。このポンプ61aでは4枚の回転翼72が備えられている。また回転体71の回転軸75は、円筒状に形成されたポンプ壁74の円筒中心よりもポンプ出口77側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸71の偏心によりポンプ流路室73の第二流路室73bの容積は、第一流路室73aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室73の容積が順次小さくなっている。
【0052】
そして、ポンプ流路室73に送りだされた液体は、回転翼72で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細な気泡BNが液体中に分散される。すなわち、回転体71の回転と共に第一流路室73aから第二流路室73bに送られた液体は、ポンプ流路室73の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力により気泡BNが生成される。また、図示のポンプ61aでは、ポンプ壁74の内面と回転翼72の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細な気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁74の内面と回転翼74の内面と回転翼72の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体71を用いたポンプ61aによれば、回転体71で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断して微細な気泡を形成することができる。なお、ポンプ61中では、高圧液体中に気体が高濃度で含まれた状態となっている。
ポンプ61の回転体71の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度を超える気体を液体に注入させることができる。
【0053】
加圧部51および気体混合部53による加圧は、加圧部51または気液混合部53を複数設けて、複数回加圧することができる。具体的には、加圧部51を図4のようにポンプ61で構成すると共に、気液混合部53を一つ又は二つ以上のポンプ61又はベンチュリ管で構成することができるものである。
【0054】
気体分離部54は上記のようにして気体が混合された液体から、液体に微細に混合されていなかったり溶存できなかったりする気体を取り除くものである。このような過剰の気体は径の比較的大きい気泡として存在しており、この気泡を取り除けば過剰の気体を分離し除去することが可能である。
【0055】
気体分離部54は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので。この除去された気体を気体除去部58により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡は、浮力により上昇するので、取り除くことができる。
【0056】
気体分離部54としては、具体的には、図6のような構成にすることができる。(a)は、地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を水平方向から下方向(重力方向と略同方向)に変化させて液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。気体分離部54によって分離された気泡は、管体などで構成された気体除去部58から外部に排出される。
【0057】
減圧部55は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、キャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部55で大気圧まで徐々に減圧した後に吐出するようにしているものである。減圧部55は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、キャビテーションが発生することなく溶液を取りだすことができるものである。
【0058】
減圧部55としては、図7のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路56や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路56や、(c)のように加圧された液体が流路56内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように長さ(L)が調整された流路56や(d)のように流路56に設けられた複数の圧力調整弁59などにより構成することができる。
【0059】
例えば図7(a)又は(b)のような減圧部55を用いた場合、減圧部55よりも上流側の流路56を内径20mmにし、減圧部55を、流路の長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部55は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部55に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、キャビテーションを発生させることなく1.0MPa減圧することができ、液体を大気圧にまで減圧することができる。
【0060】
減圧された液体は吐出液57から外部に吐出される。なお、その際、図8のように、流路56bと流56cとの間に、加圧部51における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路60を設けることができる。すなわち、減圧部55を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部51からの押し込み圧によって気液混合部53内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路60を流路56に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路60を設ければキャビテーションの発生なく、気体過飽和水を吐出することができる。
【0061】
上記のように構成された装置Xにあっては、入液部63から入った液体に、気体供給部52により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ61で構成された加圧部51及び気液混合部53によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部53から気液分離部54へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部54で液中の余分な気体を取り除いた後、該液体を減圧部55及び下流側の流路56に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、キャビテーションの発生なく、気体過飽和水を連続的に生成することができる。
【0062】
なお、気液混合部53よりも下流側の流路56は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気体過飽和水を吐出することができ、細路により流路56を構成する場合のような配管の詰まりを防止できる。
【0063】
そして、吐出部57から吐出された気体過飽和水は、適切な剤形の製剤に加工される。例えば、静脈内投与するために注射器に封入されたり、経口投与するためにアンプルやバイヤルに詰められたり、経皮投与するために袋体に封入されたりすることができる。このように製造された製剤は、容器内においても気泡が発生することなく安定に存在するものであるので、気泡を要時調製するなどの手間を必要とすることなく、簡単に効率よく多量の気泡を体内に投与することができる。
【0064】
本発明に用いる気体過飽和水は、超音波造影剤として当業者により適宜製剤化され得る。超音波造影剤は、上記のように作成できる気体過飽和水に加え、必要であれば添加剤を含ませることができる。添加剤としては、例えば、pH調整剤(例えば、塩酸、クエン酸等)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸イソブチル等のp−ヒドロキシ安息香酸エステル等)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、トコフェロール等)、緩衝剤(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸等)、粘度増強剤(例えば、ソルビトール、スクロース等)、浸透圧調整剤(例えば、糖、糖アルコール等)が挙げられる。
【0065】
以上の超音波造影剤を用いた生体組織の画像作成方法は、生体組織の境界面あるいは臓器の構造によって音響インピーダンスが異なることを利用したものである。ここで、対象とする生体の組織は、特に限定されず、例えば、血管、心臓、肝臓、腎臓が挙げられる。生体は、哺乳動物の生体であり得、例えば、ヒトである。音響インピーダンスは伝播する媒体の密度と音速の積で表される。例えば空気中(20℃)の音の伝播速度は344m/s、密度は1.205kg/m3、水(20℃)の伝播速度は1482m/s、密度は999.69kg/m3である。生体組織の音の伝播速度は例えば、脂肪組織1450m/s、血液1570m/s、骨(頭骨)4080m/s程度、密度は脂肪組織920kg/m3、血液1060kg/m3,骨2010kg/m3程度である。ここに例示した数値から理解できるように、生体組織の境界面あるいは臓器の構造によって音響インピーダンスが異なっており、これを利用して生体組織の画像が作成できる。
微小気泡に超音波が照射されると、微小気泡によって超音波が反射される。生体内では微小気泡の音響インピーダンスは生体組織に比べて大きく異なるため、それらの音響インピーダンスの差により気泡の存在する部分が強調されて表示される。よって、当業者に周知の超音波造影装置(例えば、持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて音響インピーダンス差分イメージングを効果的に利用することができる。
また、液体中の気泡にその直径よりも十分長い波長をもつ音波が入射すると、気泡は等方性を保ちながら呼吸振動を行う。さらに、この呼吸振動は気泡径に応じて特定の周波数において、振幅を増すことが知られている。この現象を共振と呼ぶ。ρ0を液体の密度、p0を無限遠での静水圧、paを入射音圧、R0およびRを気泡半径の平衡値および瞬間値、γを内部気体の比熱比とした場合、共振周波数ω0は、以下の式で表わされる:
【0066】
【数1】
強い駆動条件のもとでは、気泡振動に非線形現象が顕著に現れるため、微小気泡が共振することにより、通常のイメージングの造影効果に加え、ハーモニックやサブハーモニックの情報をイメージングに用いることができ、更なる造影効果がえられ効率的である。本発明に用いる超音波造影剤に1MHzの超音波を照射して微小気泡を発生させた場合の気泡径は、1μmであることにより、共振周波数は10MHz程度と計算される。この周波数は、当業者に周知の超音波造影装置で使用されている周波数帯域であり、このような周知の装置を用いてハーモニックまたはサブハーモニックイメージングを効果的に利用することができる。
本明細書において、超音波エコーとは、検査の目的の物質に超音波が入射され、反射または散乱した結果生じる超音波のことを意味する。
超音波エコーの受信、組織の画像作成等は、当業者に周知の超音波造影装置により行うことができる。
【0067】
具体的な一例として、
超音波造影方法または超音波診断方法であって、
(i)気泡を含む超音波造影剤を生体に投与する工程;
(ii)所望の部位の血管に超音波を照射する工程;
(iii)微小気泡により反射または散乱された超音波エコーを受信する工程;および
(iv)受信した超音波に基づき超音波画像を作成する工程、
を含む方法を挙げることができる。
尚、超音波造影には、生体に超音波を照射し、生体から反射または散乱された超音波を利用して生体組織を画像化することが含まれる。超音波診断には、当該画像に基づいて疾患の有無を判断すること、疾患の種類を決定すること等が含まれる。
また、超音波造影剤の投与、微小気泡を発生させる超音波の照射、超音波エコーの受信をどのように実施するかは、当業者が適宜設定できる。例えば、超音波造影剤の投与は、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与することができる。
図1又は図2に示した超音波造影剤注入装置は、上述した超音波造影方法または超音波診断方法を実施する際に、用いることができる。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
実施例1
[気体過飽和水の製造]
装置Xを用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として後述の液体をもちいて気体過飽和水を製造した。
装置Xとしては、気液混合部53がポンプ61で構成された、図4の構成のものを用いた。ポンプ61としては回転体により加圧する図5のようなポンプ61aを用いた。
【0070】
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容積比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ61の回転体71の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部53から気体分離部54に送り出される際の水溶液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入される。
【0071】
また、減圧部55よりも上流側の流路56(56b)を内径20mmのものにした。減圧部55としては図7(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部55の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部55よりも下流側の流路56および延長流路60として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路56と延長流路60とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部55において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で水溶液を減圧し、さらに、下流側の流路56および延長流路60において、1MPa/sec、時間0.5秒で水溶液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された超音波照射により気体過飽和水が得られた。
【0072】
[発生する気体量の測定]
液体として純水(超純水)を、気体として空気を用い、4℃、20℃、37℃で、上記のように0.6MPaで加圧して空気を超純水に含ませることにより気体過飽和水を作成した。作成直後に封止して、一部は37℃に加温し、その後、水溶液を25℃にした。水溶液中に過剰量含まれている気体(空気)の量を以下の(1)−(4):
(1)ナイロン樹脂製のガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に気体過飽和水を密閉し;
(2)ガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に密閉された水溶液をホットプレート上で45℃、2時間静置し;
(3)室温(25℃)で3時間静置し;および
(4)ガスバリア袋(アズワン 5-5665-01)に存在する気体を捕集しその体積を測定する、ことにより測定した。
その結果、水溶液から発生する気体の量は、4℃が最も多く、20℃、37℃の順に少なくなった(図9参照)。4℃で作成すれば約60mLの気体が1Lの水に含まれ、20℃で作成すれば約40mL気体が1Lの水に含まれ、37℃で作成すれば、約20mLの気体が1Lの水に含まれ、超音波付与によりこれらが微小気泡となって出現した。4℃および20℃で製造した水溶液中からの気体発生量は、37℃に加温することにより僅かに減少したが、それでも37℃で製造した水溶液に比較し気体の発生量は多かった(図10参照)。
よって、作成温度が低いほど、気体発生量が増加すること、作成時の温度の方が、作成後の温度上昇よりも気体発生量の低下に対する寄与が大きいことが明らかとなった。生体や細胞に37℃で適用する場合、低温で作成した後に加温した方が得られる気体の発生量が多いことが示された。
【0073】
[各種水溶液における気体の発生量]
液体として超純水、生理食塩水またはリン酸バッファー(PBS(+))を用い、気体として空気を用い、4℃で、実施例1の方法に従って、0.6MPaで加圧して空気を超純水に含ませることにより気体過飽和水を作成した。作成直後に封止して、その後、該水溶液中に存在する気体量を25℃にし、気体発生量を測定した(図11参照)。
また、4℃で超純水を用いて作成した気体過飽和水に4℃の10倍濃縮生理食塩水(10×生理食塩水)、10倍濃縮PBS(+)(10×リン酸バッファー)または10倍濃縮培養液(10×RPMI1640)(10×培養液)を加え、1×生理食塩水、1×リン酸バッファーおよび1×RPMI1640を作成した。作成直後に封止して、一部を37℃に加温し、その後、該水溶液を25℃にし、気体発生量を測定した。
その結果、食塩水、PBS(リン酸緩衝液)を用いて気体過飽和水を直接作成した場合、超純水に比較し気体発生量の低下は見られなかった(図11参照)。
また、10倍濃縮した溶媒と超純水を用いて作成した気体過飽和水を混合して1倍濃度に希釈した場合、気体発生量は2〜3割低下した(図12参照)。なお、図12中、「超純水」は、液体として超純水、気体として空気を用いて4℃で製造された気体過飽和水の気体発生量を表し、「10×生理食塩水」は、10倍濃縮生理食塩水を「超純水」で希釈して1倍とした生理食塩水の気体発生量を表し、「10×リン酸バッファー」は、10倍濃縮PBS(+)を「超純水」で希釈して1倍としたPBS(+)の気体発生量を表し、「10×RPMI1640」は、10倍濃縮RPMI1640培地を「超純水」で希釈して1倍としたRPMI1640培地の気体発生量を表す。
直接過飽和量の気体を混合して作成された等張液の方が、超純水を用いて気体過飽和水を一旦作成し、その気体過飽和水で希釈することにより作成された等張液に比較し、発生気体量が多くなり、微小気泡の発生量が多くなることが示された。
【0074】
実施例2
[超音波の照射]
超音波による微小気泡の崩壊の例を示す。
図13は、超音波照射の前後の気体過飽和水Aの写真であり、(a)は照射前、(b)は照射後である。図中、超音波浴槽を符号40で示している。
ビーカー(300mL)内に、液体として超純水を、気体として窒素を用いて実施例1の方法に従って作成された気体過飽和水Aを入れた。
超音波浴槽40としては、振動子40kHzボルト締めランジュバン型振動子を用いた超音波浴槽(槽の寸法は240×140×150mm)を用いた。その浴槽内に水を張り、出力100Wで超音波を照射している浴槽内の水にビーカーごと1〜2秒程度浸した。その結果、図13(b)のように、微小気泡が発生した。
【0075】
実施例3
[造影能の検討]
気体過飽和水の造影能を検討するために、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585、プローブ 7.5MHz)を用いて観察を行った。
具体的には、シリコンチューブ管をポンプに連結し、気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させた(流速74ml/min)。シリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。
1)空気の過飽和度の検討
液体として純水(超純水)を、気体として空気を用いて実施例1にしたがって、過飽和度既知の気体過飽和水を作成した。
過飽和度は、同温同圧での水に対する飽和溶解量の比で表す(なお、実験は室温:20℃、1気圧で行ったので、25℃、1気圧での飽和溶解量に対する比で表している)。
過飽和度既知の気体過飽和水を飽和水で希釈することにより、種々の過飽和度の気体過飽和水を作成した。過飽和度、1、1.18、1.38、1.80、2.41、2.96である、気体過飽和水(過飽和気体:空気)を作成し、シリコンチューブ内を流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、空気の過飽和量の増加とともに、最大輝度が増加するとともに、気泡化超音波に対する応答性が高くなった(図14)。
さらに、1〜2.5で異なる過飽和度を有する18の気体過飽和水(過飽和気体:空気)を作成した。作成した気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、シリコンチューブ内の輝度は、気体過飽和水の過飽和度に応じて上昇した(図15)。空気過飽和の場合、チューブ断面形状の造影が、過飽和度1.5以上において確認された(表1および図16)。
2)酸素、二酸化炭素、窒素の過飽和度の検討
液体として純水(超純水)を、気体として酸素、二酸化炭素または窒素を用いて実施例1にしたがって、種々の過飽和度の気体過飽和水を作成した。また、窒素に関しては、別途加圧タンクを用いて、高い過飽和度の気体過飽和水を作成した。作成した気体過飽和水をシリコンチューブ内で流動させて超音波を照射し、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて最大輝度を測定した。その結果、酸素、二酸化炭素の場合、チューブ断面の造影が過飽和度1.1以上において、窒素の場合、チューブ断面の造影が過飽和度1.5以上において確認された(表1、図17および16参照)。空気に関しては、1)より断面形状の造影については、過飽和度1.5以上が必要であることが確認されている。
また、過飽和度4を超えると最大輝度にバラツキが見られることから、安定的に造影するためには、過飽和度4以下が好ましいことが確認された(図17参照)。
【0076】
【表1】
【0077】
3)気体過飽和水の粘度の造影能に及ぼす影響
気体過飽和水を血液に注入した場合、血液の粘性の影響によりせん断力が増加し気泡化の制御が困難になる可能性が考えられた。そこで、粘性を血液と同程度にした水溶液中に、気体過飽和水を注入・流動させた際に造影能を有するか否かを検討した。シリコンチューブをポンプに接続し、シリコンチューブ内に、粘性を血液と同程度にした40vol%グリセリン水溶液を流した(流速74ml/min)。気体過飽和水をシリンジにてチューブ内に注入し、45cm下流でシリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。その結果、血液と同じ粘性中に注入された場合においても、気体過飽和水は、超音波照射により微小気泡を発生し、チューブの断面形状の造影が可能であることが確認された(図19および18参照)。
4)気体過飽和水の投与と超音波照射の位置の検討
血流中に投与された気体過飽和水が、希釈されずにそのまま造影能を保持することを検討した。シリコンチューブをポンプに接続し、シリコンチューブ内に、空気で飽和させた純水(超純水)を流した(流速74ml/min)。気体過飽和水をシリンジにて1、2、10ml/secでチューブ内に注入し、3000mm下流で、シリコンチューブ管の外から超音波を照射し(50kHz、100W)、微小気泡を発生させた。超音波照射部位の直ぐ下流(25cm下流)で、超音波造影装置(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を用いて造影を確認した。
その結果、3000mm下流において、気泡が発生し、造影が可能であることが確認された(図21および20参照)。また、注入速度が速い方が、明確にチューブの断面形状を造影できた(図22参照)。
造影箇所と離れた部位で体内に投与した場合であっても、気体過飽和水は目的の箇所で十分な造影能を有すると考えられる。
実施例4
[超音波周波数の検討]
気体過飽和水に50KHzまたは1MHzの超音波を照射し微小気泡を発生させた。その結果、50KHzの超音波を照射した場合には約20μm、1MHzの超音波を照射した場合には約1μmの直径を有する微小気泡が発生した(図23参照)。
【0078】
実施例5
[超音波の間接照射の検討]
人体に超音波を照射する際には、皮膚の上から皮膚組織下にある血管に超音波を付与するので、超音波は皮下の組織を介して間接的に血管に照射される。
そこで、12cm×18cmの寒天ファントムの中心に穴を設置し(図24参照)、超音波プローブ(持田シーメンス製超音波診断装置ソノビスタMSC1585)を寒天ファントムの外側から接触させて、超音波を照射した(図24参照)。超純水の場合には穴内の流体は造影されなかったが、気体過飽和水の場合には穴内の流体が造影された。
【符号の説明】
【0079】
1 超音波振動子
2 フィルタ
3 注入チューブ
4 筒容器(シリンジ)
5 可動押子(プランジャー)
6 気体過飽和水
7 超音波吸収体
10 超音波振動制御装置
20 脂質供給装置
A 気体過飽和水
X 気体過飽和水の製造装置
40 超音波浴槽
51 加圧部
52 気体供給部
53 気液混合部
54 気体分離部
55 減圧部
56 流路
57 吐出部
58 気体除去部
61 ポンプ
63 入液部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により前記気体過飽和水中に気泡を発生させて前記気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、
前記気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入することを特徴とする超音波造影剤注入装置。
【請求項2】
気泡発生装置は、気体過飽和水を超音波振動させる超音波振動子を含む請求項1記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項3】
超音波造影剤注入装置は、前記気体過飽和水を内部に溜める筒容器と、該筒容器の一端から筒内部に挿入される可動押子と、前記筒内部に連通する注入チューブとを更に備え、
前記超音波振動子は前記注入チューブを流れる気体過飽和水を超音波振動させる請求項2記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項4】
前記超音波振動子と該筒容器の間に設けられた、筒内部の気体過飽和水への超音波振動伝達を抑制する超音波吸収体をさらに含む請求項3記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項5】
前記超音波造影剤を通過させる微細孔を有するフィルタをさらに備え、該フィルタが超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去する請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項6】
前記フィルタの前記微細孔に気泡に脂質二重層膜を形成する物質が塗布される請求項5記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項7】
前記フィルタの微細孔の径が1μm以下である請求項5又は6記載の注入装置。
【請求項8】
前記気泡発生装置内の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置をさらに備えた請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の注入装置。
【請求項1】
飽和溶解量以上の気体が溶存する気体過飽和水を圧力低下が生じるように振動又は流動させ、その圧力低下により前記気体過飽和水中に気泡を発生させて前記気体過飽和水から気泡を含む超音波造影剤を生成する気泡発生装置を備え、
前記気泡を含む超音波造影剤を生体内に注入することを特徴とする超音波造影剤注入装置。
【請求項2】
気泡発生装置は、気体過飽和水を超音波振動させる超音波振動子を含む請求項1記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項3】
超音波造影剤注入装置は、前記気体過飽和水を内部に溜める筒容器と、該筒容器の一端から筒内部に挿入される可動押子と、前記筒内部に連通する注入チューブとを更に備え、
前記超音波振動子は前記注入チューブを流れる気体過飽和水を超音波振動させる請求項2記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項4】
前記超音波振動子と該筒容器の間に設けられた、筒内部の気体過飽和水への超音波振動伝達を抑制する超音波吸収体をさらに含む請求項3記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項5】
前記超音波造影剤を通過させる微細孔を有するフィルタをさらに備え、該フィルタが超音波造影剤に含まれる所定の大きさを超える気泡を除去する請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項6】
前記フィルタの前記微細孔に気泡に脂質二重層膜を形成する物質が塗布される請求項5記載の超音波造影剤注入装置。
【請求項7】
前記フィルタの微細孔の径が1μm以下である請求項5又は6記載の注入装置。
【請求項8】
前記気泡発生装置内の気体過飽和水の温度を調整する温度制御装置をさらに備えた請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図24】
【図13】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図24】
【図13】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−213475(P2012−213475A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79957(P2011−79957)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]