説明

超音波3次元画像表示装置

【課題】 超音波により生体内の3次元データを取得し表示する超音波3次元画像表示装置において、目的とする体内臓器のみを他の臓器に隠されることなく表示する。
【解決手段】 3次元データ内の断層像31を表示し、2次曲線による有効領域境界34を設定することで、目的とする臓器35のみを含むデータ領域を有効領域として抽出し、有効領域のみを使用して3次元画像を構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波を走査して求めた被検体の3次元データを、画像データに変換して画像表示を行う超音波3次元画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波3次元画像表示装置は、被検体への超音波パルスの送受信を3次元空間内で行い、被検体内の3次元データを取得し、投影法などのレンダリング処理をにより3次元データを2次元画像に変換しモニタ画面上に表示する。
【0003】従来の超音波3次元画像表示装置における3次元データの2次元画像へのレンダリング処理方法として、特公平5ー245146号公報に記載されているものがある。この装置は、レンダリング処理に積算処理を用い、積算範囲の開始位置、終了位置を設定することで所望の範囲のみの3次元データを可視化する。この場合、開始位置、終了位置は、積算画像に平行、すなわち視線方向に垂直な平面である。従来例での積算範囲の開始位置、終了位置の設定方法を図8に示す。視線方向に平行な断層像80を表示し、断層像80上に開始位置直線81、終了位置直線82を表示し、断層像80を参照しながら、子宮壁83を含まず、胎児84のみを含むように開始位置直線81、終了位置直線82を決定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例には以下のような課題がある。体内臓器、特に子宮内の胎児のみを3次元表示する場合、胎児の外形形状はおおよそ楕円体であり、従来例のようにレンダリング開始位置を超音波ビーム方向に垂直な平面で指定したのでは、図9に示すように、レンダリングされた画像90に子宮壁83等の不要な体内組織も表示され、明瞭に胎児84のみの画像を表示することは困難となる。
【0005】本発明は、上記従来の課題を解決するもので、おおよそ楕円体に近い形状をした体内臓器の3次元画像を、隣接した他の臓器と混合することなく、明瞭に表示することのできる超音波3次元画像表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の超音波3次元画像表示装置は、投影処理に用いる3次元エコーデータの有効領域を指定する有効領域指定手段を備え、有効領域指定手段は、3次元エコーデータの断面画像を表示し、上記断面画像上で2次曲線により有効領域境界を指定し、上記有効領域境界を上記断面画像に対し平行移動させて形成される空間領域を有効領域としたものである。この発明によれば、隣接した不要な臓器と混合することなく、目的とする臓器のみを明瞭に表示可能な超音波3次元画像表示装置が得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、生体内への超音波送受信を3次元領域に対して行い、取得した3次元エコーデータを画像表示する超音波3次元画像表示装置において、3次元エコーデータ内の有効領域のみを投影処理して画像を生成する投影処理手段と、投影処理に用いる有効領域を指定する有効領域指定手段を備え、有効領域指定手段は、3次元エコーデータの断面画像を1つ表示し、上記断面画像上で2次曲線により有効領域境界を指定し、上記有効領域境界を上記断面画像に対し平行移動させて形成される空間領域を有効領域とすることを特徴とした超音波3次元画像表示装置であり、外形が曲線で構成される体内臓器でも、不要な体内組織を混合することなく、明瞭に3次元画像を表示が可能という作用を有する。
【0008】本発明の請求項2に記載の発明は、生体内への超音波送受信を3次元領域に対して行い、取得した3次元エコーデータを画像表示する超音波3次元画像表示装置において、3次元エコーデータ内の有効領域のみを投影処理して画像を生成する投影処理手段と、投影処理に用いる有効領域を指定する有効領域指定手段を備え、有効領域指定手段は、3次元エコーデータの互いに平行な断面画像を2つ以上表示し、上記複数の断面画像上で2次曲線により有効領域境界を指定し、上記複数の有効領域境界を断面として有する空間領域を生成し、その空間領域を有効領域とすることを特徴とした超音波3次元画像表示装置であり、外形が複雑な曲面で構成される体内臓器でも、不要な体内組織を混合することなく、明瞭に3次元画像を表示が可能という作用を有する。
【0009】本発明の請求項3に記載の発明は、有効領域指定手段は、有効領域境界を指定するために使用する2次曲線は楕円であり、楕円の回転角、曲率、平行移動距離を調節することで有効領域境界を指定することを特徴とした請求項1記載の超音波3次元画像表示装置であり、体内臓器の外形に沿った有効領域境界を容易に設定でき、不要な体内組織を混合することなく、明瞭な3次元画像を表示が簡便に行える可能という作用を有する。
【0010】本発明の請求項4に記載の発明は、有効領域指定手段は、有効領域境界を指定するために使用する2次曲線は楕円であり、楕円の回転角、曲率、平行移動距離を調節することで有効領域境界を指定し、複数の有効領域境界を線型補間することで有効領域境界から有効領域空間を形成することを特徴とした請求項2記載の超音波3次元画像表示装置であり、体内臓器が複雑な曲面により構成される場合でも、体内臓器の外形に沿った有効領域境界を容易に設定でき、不要な体内組織を混合することなく、明瞭な3次元画像を表示が簡便に行える可能という作用を有する。
【0011】以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態の説明において、同一の部分は同一の符号を用い、重複した説明は省略する。
【0012】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1の超音波3次元画像表示装置の構成を示すブロック図である。送受信部1は、プローブ2を介して超音波パルスを生体内に送受信し、超音波エコーデータを出力する。超音波エコーデータは、A/D変換部3によりディジタル信号に変換された後、3次元データメモリ4に蓄積させれると同時に、ディジタルスキャンコンバータ(DSC)5によりリアルタイムの断層像が生成される。DSC5で生成された画像は、D/A変換部6によりビデオ信号に変換されモニタ7により表示される。プローブ2は、手動走査もしくは機械走査により、生体内の3次元領域での超音波走査を行い、そのデータは3次元データメモリ4に記憶される。
【0013】バス8を介し、3次元データメモリ4、中央処理ユニット(CPU)9、レンダリング演算部10、DSC5が接続されている。CPU9は、スイッチ群11および移動量入力装置群12からのデータによりレンダリングに用いる視線方向および有効データ領域を決定する。この有効データ領域の決定方法は後に詳述する。CPU9およびスイッチ群11および移動量入力装置群12により有効領域指定手段13を構成する。またCPU9は、図1中の全ての構成要素の動作の制御も行う。
【0014】投影処理手段であるレンダリング演算部10は、3次元データメモリ4に記憶された3次元データのうち、CPU9で指定された有効データ領域内に属する3次元データを用い、指定された視線方向に沿ってレイキャスティング法等のレンダリング処理を行い、3次元画像を生成し、DSC5を介して3次元画像をモニタ7に表示する。
【0015】スイッチ群11および移動量入力装置群12は、それぞれ複数のスイッチおよび移動量入力装置で構成され、有効データ領域を指示するためのもので、CPU9に接続されている。移動量入力装置は、方向の正負、および移動量を検出できるデバイスで、例えばロータリエンコーダやトラックボールなどが好適である。
【0016】次に、図2を用いて手動により3次元データを取得する様子を説明する。2次元断層像を取得できるプローブを用い、図2(a)に示すようにプローブを断層象とは垂直の方向に手動で移動させることにより、図2(b)に示す範囲の3次元エコーデータを取得することが可能である。以降の説明に用いる座標系を、図2(b)に示すように、プローブによる走査断面をxy平面、手動による移動方向をz軸と定義する。
【0017】図3はモニタ7に表示される画面の例であり、有効データ領域の決定方法について説明している。正面画像30は、プローブ走査により得られる断層画像であり、図2(b)でのxy断面像である。側面画像31は、正面画像30上でのグラフィック線32を通る図2R>2(b)でのxz断面像である。正面画像30と側面画像31は、たがいに直交する断面である。側面画像31上のグラフィック線33は、正面画像30に表示されている断面の位置を示している。グラフィック線32、33は、画像中央部で切断されているが、これはグラフィック線により正面画像30および側面画像31の中央部を隠さないようにするためである。グラフィック線32の位置は、移動量入力装置群12の移動量入力装置により自由に移動でき、それに合わせて側面画像31もリアルタイムで更新、表示される。同様にグラフィック線33の位置も、移動量入力装置群12の移動量入力装置により自由に移動でき、それに合わせて正面画像30もリアルタイムで更新、表示される。このようにして、操作者は有効データ領域の指定方法に好適な正面画像30および側面画像31を選択、表示する。なお、本実施の形態1では、正面画像30は参照のために用いているのみであり、正面画像30の表示は必ずしも必要でない。続いて、スイッチ群11のスイッチにより、有効データ領域指示曲線34を側面画像31上に表示させる。有効データ領域指示曲線43は楕円であり、側面画像範囲31内に存在する部分のみをが表示される。3次元表示対象の臓器35を囲むように有効データ領域指示曲線34は設定される。
【0018】以下に、有効データ領域の指定方法を詳細に説明する。図4は図3の有効データ領域指示曲線34のみを抜き出し、その変形方法を示したものである。有効データ領域指示曲線34が3次元表示を行いたい領域のみを含むように、図4(a)、(b)、(c)の3種の操作により調整される。図4(a)は回転を示しており、移動量入力装置群12の移動量入力装置でその方向および量を指定する。回転は、画面中央に近い楕円弧上の点を中心に行われる。図4(b)は平行移動を示す。この平行移動量を指定する移動量入力装置群12の移動量入力装置は、トラックボールなどの2次元座標を指定できるデバイスが好適である。図4(c)は曲率の変更である。
【0019】まず、曲率の変更方法の説明を簡単にするために、楕円の長軸、短軸がx軸、z軸に一致している場合を考える。この場合の楕円は、次式で表される。
(x/a)2 +(z/b)2 =c2 ・・・(1)
移動量入力装置群12の移動量入力装置で式(1)のbの値を増減し、式(1)のa、cの値を a+b=k1 (k1は定数) ・・・(2)
b*c=k2 (k2は定数) ・・・(3)
となるように変更して楕円の曲率を変更する。ただし、b=0となる場合は z=k2 ・・・(4)
となる直線となり、b<0となる場合は式(1)を直線z=k2に関して対称移動させた楕円とする。このようにして、楕円の曲率を変更する。この基本楕円の式が決まれば、この楕円に指定された回転と平行移動を施す。以上により、図4(c)に示すような曲率の変形が行える。
【0020】式(2)、(3)での定数k1,k2は、楕円の2/3から1/4が表示される程度に設定するのが良い。例えば画像表示領域のx方向の幅をxw、z方向の幅をzwとすると、k1=xw +zwk2=(xw +zw)/2程度にするのがよい。
【0021】次に、有効データ領域指示曲線34から3次元有効データ領域を決定する方法を説明する。有効データ領域は、図5(a)の斜線で示すように、有効データ領域指示曲線34と側面画像範囲36に囲まれた領域とする。また、スイッチ群11のスイッチにより、図5(b)のように、現在の有効データ領域とそれ以外の領域とを反転することも可能である。以上の方法でxz平面内での有効データ領域を指定し、さらにこのxz平面内の有効データ領域を全てのxz平面内に垂直なy軸方向に平行移動することにより、図6の斜線で示すように有効データ領域60を構成し、3次元データメモリ4のデータ空間内の有効データ領域を指定する。
【0022】なお、上記実施の形態1では、xz平面の側面画像31で有効データ領域指示曲線34を指定しているが、任意の断面で有効データ領域指示曲線34を行うことが可能である。その場合にも有効データ領域指示曲線を指定した断面に垂直方向に有効データ領域指示曲線を移動させ有効データ領域を構成する。
【0023】(実施の形態2)図7は本発明の実施の形態2におけるモニタ7に表示される画面の例である。以下,図7を用いて各画像について説明する。正面画像70は、プローブによる走査で得られるBモード画像であり、図2のxy断面像である。第1の側面画像71は、正面画像70上でのグラフィック線73を通る図2でのxz断面像であり、第2の側面画像72は、正面画像70上でのグラフィック線74を通る図2でのxz断面像である。正面画像70と側面画像71、72は、たがいに直交する断面である。側面画像71、72上のグラフィック線75は、正面画像70に表示されている断面の位置を示している。グラフィック線73、74の位置は、移動量入力装置群12の移動量入力装置により自由に移動でき、それに合わせて側面画像71、72もリアルタイムで更新、表示される。同様に側面画像71、72上のグラフィック線75の位置も移動量入力装置群12の移動量入力装置により自由に移動でき、それに合わせて正面画像70もリアルタイムで更新、表示される。このようにして、操作者は有効データ領域の指定方法に好適な正面画像70および側面画像71、72を選択、表示する。なお、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、正面画像70は参照のために用いているのみであり、正面画像70の表示は必ずしも必要でない。続いて、スイッチ群11のスイッチにより、有効データ領域指示曲線76を側面画像71上で、有効データ領域指示曲線77を側面画像72上で設定する。有効データ領域指示曲線76、77の設定の方法は、実施の形態1と同様に行う。
【0024】以下、有効データ領域指示曲線76、77から3次元有効データ領域の決定方法を説明する。有効データ領域指示曲線76を決定するパラメータを、回転角:w1曲率:b1平行移動距離:(x1, z1)
とし、有効データ領域指示曲線77を決定するパラメータを、回転角:w2曲率:b2平行移動距離:(x2, z2)
とする。側面画像71、72のy座標の値がそれぞれy1, y2であるとする。このとき、y座標がYとなるxz断面での有効データ領域指示曲線を決定するパラメータを線型補間により以下の式で求める。
回転角:(w2−w1)/(y2−y1)*(Y−y1)+w1曲率:(b2−b1)/(y2−y1)*(Y−y1)+b1平行移動距離:((x2−x1)/(y2−y1)*(Y−y1)+x1 ,(z2−z1)/(y2−y1)*(Y−y1)+z1)
これにより、任意のy座標でのxz断面での有効データ領域指示曲線を生成することができ、3次元有効データ領域を決定することが出来る。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、3次元表示を行いたい体内組織が含まれる領域を、その形状に合った曲線により有効領域を指定し、有効領域のみを用いて3次元表示を行うので、隣接した他の臓器と混合することなく、明瞭な3次元画像を表示できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1における超音波3次元画像表示装置のブロック図
【図2】実施の形態1における3次元走査と取得される3次元データを説明する模式図
【図3】実施の形態1における画面表示を説明する模式図
【図4】実施の形態1における有効領域境界の設定方法を説明する模式図
【図5】実施の形態1における有効領域境界から2次元の有効領域を選択する方法を説明する模式図
【図6】実施の形態1における2次元の有効領域から3次元の有効領域を選択する方法を説明する模式図
【図7】実施の形態2における画面表示を説明する模式図
【図8】従来例における有効領域境界設定方法を説明する模式図
【図9】従来例における3次元表示画面を説明する模式図
【符号の説明】
1 送受信部
2 プローブ
3 A/D変換部
4 3次元データメモリ
5 ディジタルスキャンコンバータ
6 D/A変換部
7 モニタ
8 バス
9 CPU
10 レンダリング演算部(投影処理手段)
11 スイッチ群
12 移動量入力装置群
13 有効領域指定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体内への超音波送受信を3次元領域に対して行い、取得した3次元エコーデータを画像表示する超音波3次元画像表示装置において、3次元エコーデータ内の有効領域のみを投影処理して画像を生成する投影処理手段と、投影処理に用いる有効領域を指定する有効領域指定手段を備え、有効領域指定手段は、3次元エコーデータの断面画像を1つ表示し、上記断面画像上で2次曲線により有効領域境界を指定し、上記有効領域境界を上記断面画像に対し平行移動させて形成される空間領域を有効領域とすることを特徴とした超音波3次元画像表示装置。
【請求項2】 生体内への超音波送受信を3次元領域に対して行い、取得した3次元エコーデータを画像表示する超音波3次元画像表示装置において、3次元エコーデータ内の有効領域のみを投影処理して画像を生成する投影処理手段と、投影処理に用いる有効領域を指定する有効領域指定手段を備え、有効領域指定手段は、3次元エコーデータの互いに平行な断面画像を2つ以上表示し、上記複数の断面画像上で2次曲線により有効領域境界を指定し、上記複数の有効領域境界を断面として有する空間領域を生成し、その空間領域を有効領域とすることを特徴とした超音波3次元画像表示装置。
【請求項3】 有効領域指定手段は、有効領域境界を指定するために使用する2次曲線は楕円であり、楕円の回転角、曲率、平行移動距離を調節することで有効領域境界を指定することを特徴とした請求項1記載の超音波3次元画像表示装置。
【請求項4】 有効領域指定手段は、有効領域境界を指定するために使用する2次曲線は楕円であり、楕円の回転角、曲率、平行移動距離を調節することで有効領域境界を指定し、複数の有効領域境界を線型補間することで有効領域境界から有効領域空間を形成することを特徴とした請求項2記載の超音波3次元画像表示装置。

【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開平11−221220
【公開日】平成11年(1999)8月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−25816
【出願日】平成10年(1998)2月6日
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)