説明

足場板スライド防止部材

【課題】足場板スライド防止部材の製造コストの低減及び取り付け時の作業性の改善を図る。
【解決手段】足場板スライド防止部材1は、仮設構造体の水平方向に各々延びる互いに対向した一組の単管14どうしの間に、両端のフック状の架け渡し部15を介して架け渡すように載置された足場板12のスライドを防止するためのものである。すなわち、足場板スライド防止部材1は、一対のフック状のストッパ部3及び取っ手部2を備えている。各ストッパ部3は、単管14の長手方向から架け渡し部15を挟んで互いに対向する位置で単管14の周面に対して内径部分を撓ませつつ装着される。取っ手部2は、単管14の長手方向から架け渡し部15を跨いで一対のストッパ部3どうしを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設構造体の作業足場で用いる足場板のスライドを防止する足場板スライド防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業などを行うために枠組みされた仮設構造体では、フレーム部分となる単管どうしの間に足場板が水平方向に架け渡されて作業足場が構成されている。この足場板は、作業時に単管上をスライドすると危険であるため、ボルト、ナットなどを含む係止具を用いて単管に固定される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、図9、図10に示すように、足場板のスライド防止には、足場板スライド防止部材21なども利用されている。足場板スライド防止部材21は、単管27の外周面に装着される円環帯状に構成された樹脂製の内側保持部材22と、内側保持部材22をその外周面側から単管27の中芯部側に押圧するリング状に構成された金属製の外側押圧部材25と、で構成されている。
【0004】
図9、図10に示すように、外側押圧部材25は、ヒンジ部24を介して基端部側が内側保持部材22と連結されている。また、外側押圧部材25の先端部側には、内側保持部材22の先端部側の凸部23に係止される係止部26が設けられている。
【0005】
この足場板スライド防止部材21を適用する場合、足場板は、その長手方向の両端部にそれぞれ一対のフック状の架け渡し部が形成された構造のものが主に使用される。すなわち、合計四つの架け渡し部を介して単管27どうしの間に足場板が架け渡された状態において、架け渡し部近傍の所定位置に足場板スライド防止部材21を二つ以上装着することで、一方及び他方の両スライド方向において、足場板スライド防止部材21が、架け渡し部と側面で当接するストッパとして機能し、これにより足場板のスライドが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−159133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような足場板スライド防止部材21は、材料の異なる二種類のパーツがヒンジ機構を介して連結される比較的複雑な構造であるため、単価の高い部品となる。さらに、足場板スライド防止部材21は、上述したように、単管の長手方向に沿った(一方及び他方の)両スライド方向への足場板のスライドを防止するために、足場板一つに対して少なくとも二つ以上の足場板スライド防止部材21を装着する必要がある。このため、製造コストの面で課題を抱えている。
【0008】
また、足場板スライド防止部材21は、前述したように、足場板一つに対して複数個、取り付ける必要があることに加え、内側保持部材22を単管に装着した後、さらに、内側保持部材22の凸部23に外側押圧部材25の係止部26を係止させる必要があるため、取り付け時の作業性の改善も求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製造コストの低減及び取り付け時の作業性の改善を図れる足場板スライド防止部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の足場板スライド防止部材は、仮設構造体の水平方向に各々延びる互いに対向した一組の単管どうしの間に、両端のフック状の架け渡し部を介して架け渡すように載置された足場板のスライドを防止する足場板スライド防止部材であって、前記単管の長手方向から前記架け渡し部を挟んで互いに対向する位置で前記単管の周面に対して内径部分を撓ませつつ装着される一対のフック状のストッパ部と、前記単管の長手方向から前記架け渡し部を跨いで前記一対のストッパ部どうしを連結する取っ手部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明では、架け渡し部を介して単管どうしの間に足場板が水平方向に架け渡された状態において、少なくとも一つの足場板スライド防止部材を用意し、作業者が取っ手部をハンドリングしつつ、一対のストッパ部を単管周面の架け渡し部を挟んで互いに対向する各位置に装着することで、足場板のスライドを防止することができる。
【0012】
すなわち、単管の長手方向に沿った足場板についての一方及び他方の両スライド方向において、単一の足場板スライド防止部材の一対のストッパ部各々が、架け渡し部と側面で当接可能となり、これにより足場板のスライドが防止される。
【0013】
したがって、この足場板スライド防止部材によれば、一つの足場板のスライド防止に必要な部品単価を実質的に低減することができる。また、この足場板スライド防止部材では、取っ手部を保持しつつ各ストッパ部を単管周面に装着するだけで、取り付け作業が完了するため、取り付け時の作業性を高めることができる。さらに、この足場板スライド防止部材は、一対のストッパ部どうしを取っ手部で連結するといった比較的簡易な構造で実現されているため、製造コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コストの低減及び取り付け時の作業性の改善を図れる足場板スライド防止部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る足場板スライド防止部材を示す斜視図。
【図2】図1の足場板スライド防止部材を異なる方向からみた斜視図。
【図3】仮設構造体の単管に足場板が架け渡された状態を示す平面図。
【図4】図1の足場板スライド防止部材が、仮設構造体の単管に装着されて足場板のスライドが防止された状態を示す斜視図。
【図5】図3の平面図を矢視B方向からみた矢視図。
【図6】図3の平面図を矢視C方向からみた矢視図。
【図7】図6と異なる足場板スライド防止部材の装着位置を例示した図。
【図8】図6、図7と異なる足場板スライド防止部材の装着位置を例示した図。
【図9】従来の足場板スライド防止部材の構造を示す側面図。
【図10】図9の足場板スライド防止部材が単管に装着された状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づき説明する。
図1〜図5に示すように、本実施形態の足場板スライド防止部材1は、高所作業などを行うために枠組みされた仮設構造体において、フレーム部分となる単管(円環状の鉄パイプ)14どうしの間に足場板12が水平方向に架け渡されて構成される作業足場で用いられる。仮設構造体は、図3、図5に示すように、単管連結部材16を介して単管14どうしを縦横に連結して格子状に枠組みされる。
【0017】
図1〜図4に示すように、足場板スライド防止部材1は、足場板12が作業時に単管14上をスライドすると危険であるため、仮設構造体の水平方向に各々延びる互いに対向した一組の単管14どうしの間に、架け渡すように載置された足場板12の矢印E方向、矢印F方向へのスライドを防止(図3、図6参照)するためのものである。
【0018】
足場板12の長手方向の両端部には、それぞれ一対のフック状(断面C字状)の架け渡し部15が形成されている。つまり、足場板12は、合計四つの架け渡し部15を介して単管14どうしの間に水平方向に架け渡されている。
【0019】
このような足場板12のスライド(滑動)を防止するために、足場板スライド防止部材1は、図1、図2に示すように、2つの棒状部分で構成された取っ手部2と、一対のフック状のストッパ部3と、接合部7と、折曲部5と、を主に備えている。
【0020】
足場板スライド防止部材1は、人為的な加圧力で弾性変形可能(撓ませることの可能な)な金属材料が母材として適用されている。接合部7は、各ストッパ部3と各取っ手部2とを溶接などによって接合している部位である。折曲部5は、一対のフック状のストッパ部3の先端部四か所を、互いに対向する他方のストッパ部側に折曲することで構成されている。
【0021】
接合部7及び折曲部5が形成された後、ストッパ部3及び取っ手部2を含む金属製の全母材表面に、ディッピングにより樹脂もしくはゴムがコーティングされて、足場板スライド防止部材1が得られる。
【0022】
各ストッパ部3は、図1、図4、図6に示すように、断面C字状に形成されており、単管14の長手方向から架け渡し部15を挟んで互いに対向する位置で、単管14の外周面に対して内径部分を撓ませつつ(弾性変形させつつ)装着される。(二つの)取っ手部2は、単管14の長手方向から架け渡し部15を跨いで一対のストッパ部3どうしをクランク状に連結している。
【0023】
ここで、上述した足場板スライド防止部材1表面の樹脂は、単管14の周面にストッパ部3が装着された状態において、単管14周面に対するストッパ部3の位置ずれを防止するための摩擦力を得るためにコーティングされている。また、図1、図2に示す折曲部5は、ストッパ部3を単管14周面に装着する際のストッパ部先端でのかじりなどを抑制するための装着案内部として設けられている。
【0024】
本実施形態では、架け渡し部15を介して単管14どうしの間に足場板12が水平方向に架け渡された状態において、少なくとも一つの足場板スライド防止部材1を用意し、作業者が取っ手部2を保持しつつ、一対のストッパ部3を単管14の周面の架け渡し部15を挟んで互いに対向する各位置に装着することで、図3、図5に示すように、高所での作業時などに足場板12が矢印E方向、矢印F方向へスライドすることを防止できる。
【0025】
つまり、本実施形態では、単管14の長手方向に沿った足場板12についての矢印E方向及び矢印F方向の両スライド方向において、図6に示すように、単一の足場板スライド防止部材1の一対のストッパ部3各々が、架け渡し部15と側面で当接可能となり、これにより足場板12のスライドが防止される。
【0026】
したがって、足場板スライド防止部材1によれば、一つの足場板スライド防止部材1で、足場板12のスライドを防止できるので、足場板一つのスライド防止に必要な部品単価を実質的に低減することが可能である。さらに、この足場板スライド防止部材1によれば、取っ手部2を保持しつつ各ストッパ部3を単管14周面に装着するだけで、取り付け作業が完了するため、取り付け時の作業性を向上させることができる。また、足場板スライド防止部材1は、一対のストッパ部3どうしを取っ手部2で連結するといった比較的簡易な構造で実現されているため、製造コストの削減を期待できる。
【0027】
以上、実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は例示であり、その形態に限定されるものではなく適宜変更を加えてもよい。例えば、図6に示すように、足場板スライド防止部材1を単管14の上部及び底部のいずれから装着した場合でも、同様のスライド防止効果を得ることかできる。また、一対のストッパ部3が単管14周面の架け渡し部15を挟んで互いに対向する各位置に足場板スライド防止部材1を装着する場合において、足場板一つに対し二つの足場板スライド防止部材1を装着するようにしてもよい。
【0028】
さらに、図7、図8に示すように、単管14周面上の二つの架け渡し部15の両外側(図7参照)、若しくは両内側(図8参照)に二つの足場板スライド防止部材1を装着するようにしてもよい。これらの場合も、前記同様、足場板12のスライド防止効果を得ることかできる。
【符号の説明】
【0029】
1…足場板スライド防止部材、2…取っ手部、3…ストッパ部、5…折曲部、12…足場板、14…単管、15…架け渡し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設構造体の水平方向に各々延びる互いに対向した一組の単管どうしの間に、両端のフック状の架け渡し部を介して架け渡すように載置された足場板のスライドを防止する足場板スライド防止部材であって、
前記単管の長手方向から前記架け渡し部を挟んで互いに対向する位置で前記単管の周面に対して内径部分を撓ませつつ装着される一対のフック状のストッパ部と、
前記単管の長手方向から前記架け渡し部を跨いで前記一対のストッパ部どうしを連結する取っ手部と、
を具備することを特徴とする足場板スライド防止部材。
【請求項2】
前記一対のフック状のストッパ部は、先端部が、互いに対向する他方のストッパ部側に折曲されている、
ことを特徴とする請求項1記載の足場板スライド防止部材。
【請求項3】
金属製の母材の表面に樹脂もしくはゴムをコーティングした材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の足場板スライド防止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−140829(P2012−140829A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−741(P2011−741)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(503404648)株式会社シミズオクト (1)