説明

足場構造体

【課題】軽量化を促進しながら作業者の足滑りを抑制する。
【解決手段】矩形板状をなしかつ上下面2Sa、2Sbが足場構造体1の踏み面S1及び底面S2をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材5と、このスキン部材5内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材6とからなる足場板本体2、及び前記足場板本体2の幅方向の両側端部に設けられ、長さ方向に連続してのびるとともに前記足場板本体2の上面2Saを越えて上方に立ち上がる踏み外し防止板部3を一体に具えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場などで使用する足場構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場などでは、一般に、金属パイプを格子状に組立てた枠組み体の横枠材間に、長尺(約2m)な矩形板状の足場構造体を架け渡すことにより足場が形成されている。この足場構造体は、高所で使用されるため、できるだけ軽量であることが必要であり、そのため図5に略示するように、繊維強化プラスチック製のスキン部材aの内部に、長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材bを埋設させた複合構造のものが多用されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしこの複合構造だけでは、足場構造体に要求される強度や耐撓み性を確保するために、ある程度の厚さが必要であり、軽量化に限界をもたらしている。
【0004】
他方、前記足場構造体では、足場構造体上で作業する作業員が、足を踏み外して転倒や落下するのを防止して安全性を確保することも重要である。そのため、前記特許文献1、2では、足場構造体上にゴム製、合成樹脂製などの滑り防止材を取り付けて作業者の足滑りを抑えることが提案されている。しかしこのものは、足滑りを抑えられるものの、足の踏み外しの抑制には効果がなく、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−182362号公報
【特許文献2】登録実用新案第3002873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、軽量化をさらに促進しながら、作業者の足滑りを抑制して作業の安全性を高めうる足場構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、長尺な矩形板状をなしかつ上下面が足場構造体の踏み面及び底面をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材と、このスキン部材内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材とからなる足場板本体、
及び前記足場板本体の幅方向の両側端部に設けられ、長さ方向に連続してのびるとともに前記足場板本体の上面を越えて上方に立ち上がる踏み外し防止板部を一体に具えたことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記踏み外し防止板部は、前記足場板本体の上面と同高さで開口することにより該上面に溜まる雨水を排出しうる少なくとも1以上の排水口を具えることを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記足場板本体の長さ方向両端部は、前記踏み外し防止板部の長さ方向両端部よりも長さ方向両側に突出していることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記踏み外し防止板部は、前記足場板本体の上面からの突出高さH1が、前記足場板本体の厚さtの0.5〜5倍、かつ前記踏み外し防止板部の厚さT1が4〜30mmであることを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明では、前記踏み外し防止板部は、繊維強化プラスチック製の板状体、又は踏み外し防止板部の両側面をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材と、このスキン部材内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材とからなる複合板状体をなすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、繊維強化プラスチック製のスキン部材内に、発泡樹脂製のコア部材を埋設してなる足場板本体の両側端部に、長さ方向に連続してのびる踏み外し防止板部を一体に設けている。
【0013】
この踏み外し防止板部は、足場板本体の上面を越えて上方に立ち上がるため、作業者の足の踏み外しを抑制することができ、作業の安全性を向上しうる。又踏み外し防止板部は、前記足場板本体の厚さを越える上下幅を有するため断面2次モーメントが大であり、曲げ剛性を高め鉛直撓みを大幅に低減できる。そのため、足場構造体全体の強度や耐撓み性を確保しながら、足場板本体の厚さを減じることができ、足場構造体全体の軽量化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の足場構造体の一実施例を示す斜視図である。
【図2】その拡大断面図である。
【図3】足場構造体の側面図である。
【図4】コア部材を拡大して示す断面図である。
【図5】従来の足場構造体を示す断面図である。
【図6】表1の耐撓み性の測定方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の足場構造体1は、長尺な矩形板状の足場板本体2と、この足場板本体2の幅方向の両側端部に設けられる踏み外し防止板部3、3とを一体に具える。図1中の符号4は、建築現場などで格子状に組立てられた例えば金属パイプの周知の枠組み体であって、前記足場構造体1は、この枠組み体4に配される横枠材4a、4a間に架け渡されることにより足場が形成される。
【0016】
前記足場板本体2は、上下面2Sa、2Sbが足場構造体1の踏み面S1及び底面S2をなす繊維強化プラスチック製の矩形板状のスキン部材5と、このスキン部材5内に埋設されてかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材6とからなる複合構造をなす。
【0017】
図2に拡大して示すように、前記スキン部材5は、前記上下面2Sa、2Sbをなす上板部分5A、下板部分5Bと、その間を長さ方向に連続してのびる複数の小スペースRに区分する壁板部分5Cとから形成される。このスキン部材5をなす繊維強化プラスチック材は、周知の如く、プラスチック材と強化繊維との複合体であってプラスチック材(マトリックス材)としては、たとえばポリエステル、エポキシ、フェノールまたはポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンまたはポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂などが採用しうる。なかでも、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレン、およびビニルエステルの群からなる少なくとも1種類以上の樹脂を用いることが強度、生産性、コスト等の観点から好ましい。
【0018】
又強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、シリカ繊維またはジルコニア繊維等の無機繊維、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高強度ビニロン繊維または高強度アクリル繊維等の有機繊維、グラファイト、窒化ケイ素またはチタン酸カリウム等のウィスカ等が用いられ得る。なかでも、炭素繊維またはガラス繊維を平行に引き揃えたシート状体を用いることが、強度、生産性、コスト等の観点から好ましい。この強化繊維は、前記長さ方向にほぼ平行、あるいは長さ方向に対してほぼ直角方向に配列され得る。特に、これらの配列を組合せた場合には、足場板本体2全体としての曲げ剛性をより高めうるため好ましい。
【0019】
前記コア部材6は、本例では断面矩形状をなし、前記小スペースR内に埋設されて、足場板本体2の全長に亘って長さ方向に連続してのびる。このコア部材6をなす発泡樹脂材としては、特に規制されることなく種々の材質の発泡プラスチックが使用しうるが、特に軽量さ、強度などの観点から発泡硬質ポリウレタンなどが好適に採用しうる。
【0020】
このような足場板本体2は、例えば図4に示すように、コア部材6の周囲に、強化繊維を配列させたシート状体10を巻き付けて強化繊維巻き付けコア部材11を形成し、かつこの強化繊維巻き付けコア部材11を成型金型内にセットするとともに、その成型金型内にマトリックスであるプラスチック材を注入しかつ硬化させることにより、プラスチック材と強化繊維と発泡樹脂材とが一体化した足場板本体2を形成することができる。又他の方法としては、予め未硬化のプラスチック材を含浸させたシート状体10を、前記コア部材6の周囲に巻き付けるととともに、このプラスチック含浸の強化繊維巻き付けコア部材11を、成型金型内で加圧しかつ硬化させ、隣り合う強化繊維巻き付けコア部材11同士を互いに接合することで、プラスチック材と強化繊維と発泡樹脂材とが一体化した足場板本体2を形成することができる。
【0021】
次に、前記踏み外し防止板部3は、前記図2の如く、前記足場板本体2の幅方向の両側端部に設けられ、前記長さ方向に連続してのびるとともに、前記足場板本体2の上面2Saを越えて上方に立ち上がる。なお踏み外し防止板部3の下端縁3Leは、前記足場板本体2の下面2Sb近傍で終端している。なお「下面2Sb近傍」とは、前記下面2Sbからの距離L1が15mm以下であることを意味し、強度の観点から、前記下面2Sbから前記範囲で下方側に突出していることが好ましい。
【0022】
本例では、図1、3の如く、前記足場板本体2の長さ方向両端部2Eは、前記踏み外し防止板部3の長さ方向両端部3Eよりも長さ方向両側に突出しており、この突出部分2Aが前記枠組み体4の横枠材4aに支持される。又突出部分2Aは、複数の足場構造体1を長さ方向に連設する際の重ね合わせ部としても用いられる。この突出部分2Aの長さL2は、50〜300mmが好ましい。又本例の踏み外し防止板部3には、前記足場板本体2の上面2Saと同高さで開口することにより該上面2Saに溜まる雨水を排出しうる少なくとも1以上の排水口12を具える。なお「上面2Saと同高さで開口する」とは、前記上面Saが排水口12の開口を横切ることを意味する。
【0023】
このような踏み外し防止板部3は、足場板本体2の上面2Saを越えて上方に立ち上がるため、作業者の足の踏み外しを抑制することができ、作業の安全性を向上しうる。又踏み外し防止板部3は、足場板本体2の厚さtを越える上下幅3Wを有するため断面2次モーメントが大であり、曲げ剛性を高め鉛直撓みを大幅に低減できる。そのため、足場構造体全体の強度や耐撓み性を確保しながら、足場板本体の厚さを減じることができ、足場構造体全体の軽量化を達成することが可能となる。
【0024】
ここで、前記踏み外し防止板部3の、前記足場板本体2の上面2Saからの突出高さH1が低すぎると、足の踏み外し抑制効果が充分に発揮されず、逆に高すぎると、軽量化を困難にするとともに、踏み外し防止板部3の上端縁3Ue上に足を乗り上げたとき、その根元部分を中心として大きな曲げモーメントが作用するため、踏み外し防止板部3が折れる、或いは足場板本体2から外れるという損傷を招き易くなる。従って、前記突出高さH1は、前記足場板本体の厚さtの0.5〜5倍の範囲が好ましい。又前記踏み外し防止板部3の厚さT1が小さすぎると、前記耐撓み性の向上効果が充分に得られず、又足を乗り上げた際の前記曲げモーメントにより踏み外し防止板部3が損傷しやすくなる。逆に厚さT1が大きすぎると、軽量化を困難にする。従って、前記厚さT1は4〜30mmの範囲が好ましい。
【0025】
なお前記踏み外し防止板部3は、アルミなどの軽量金属にて形成することも可能であるが、軽量化を最大限発揮するために、前記踏み外し防止板部3を、繊維強化プラスチック材を用いて形成するのが好ましい。この場合、踏み外し防止板部3を、繊維強化プラスチック製の板状体、又は前記図2の如く、踏み外し防止板部3の両側面をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材13と、このスキン部材13内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材14とからなる複合板状体をなすことが好ましい。なおスキン部材13の繊維強化プラスチック材、及びコア部材14の発泡樹脂材として、前記足場板本体2の繊維強化プラスチック材、及び発泡樹脂材と同質のものが好適に採用しうる。
【0026】
又踏み外し防止板部3を前記複合板状体として形成する場合、前記足場板本体2と同様、前記コア部材14の周囲に、強化繊維のシート状体10を巻き付けて強化繊維巻き付けコア部材を形成し、かつこの強化繊維巻き付けコア部材を、前記足場板本体用の強化繊維巻き付けコア部材11とともに成型金型内にセットするとともに、その成型金型内にマトリックスであるプラスチック材を注入しかつ硬化させることにより、踏み外し防止板部3と足場板本体2とが一体化した足場構造体1が形成できる。又、予め未硬化のプラスチック材を含浸させたシート状体10を、前記コア部材14の周囲に巻き付け、このプラスチック含浸の強化繊維巻き付けコア部材を、前記足場板本体用の強化繊維巻き付けコア部材11とともに成型金型内で加圧し、かつ硬化させることで、踏み外し防止板部3と足場板本体2とが一体化した足場構造体1が形成できる。或いは、互いに別々に形成した硬化済みの踏み外し防止板部3と足場板本体2とを、前記プラスチック材と例えば同質の接着材で接着することで足場構造体1を形成することもできる。
【0027】
なお足場板本体2、及び踏み外し防止板部3の長さ方向の両端部2E、3E、並びに前記排水口12の内周面には、コア部材6、14への水の進入を防ぐため、プラスチック材などを用いた被覆層(図示しない)にて防水するのが好ましい。又足場板本体2の上面2Saには、ゴムなどを用いた従来と同様の周知の滑り防止層を形成することもできる。
【0028】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0029】
本発明の効果を確認するため、図2に示す構造をなす足場構造体を、表1に示す仕様にて形成するとともに、その時の耐踏み外し性、耐撓み性、及び質量を互いに比較した。なお繊維強化プラスチックとして、強化繊維材として炭素繊維、プラスチックとしてエポキシ樹脂を使用している。
【0030】
(1)耐踏み外し性:
作業者の官能評価により、比較例1を0、実施例1を3とする5点法で評価した。点数が大きい方が優れている。
【0031】
(2)耐撓み性:
「社団法人仮設工業会」規定の「仮設機材認定基準 曲げ試験」に準拠し、図6に示すように、支持スパン1800mmで支持した足場構造体の中央に、0.98Nの荷重Pを加えた時の、前記中央での鉛直撓み量δを測定した。
【0032】
(3)質量:
足場構造体の総質量を測定した。
【0033】
【表1】

【0034】
表のように、実施例の足場構造体は、軽量化をさらに促進しながら、作業者の足滑りを抑制して作業の安全性を高めうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0035】
1 足場構造体
2 足場板本体
2Sa、2Sb 上下面
3 踏み外し防止板部
5 スキン部材
6 コア部材
12 排水口
13 スキン部材
14 コア部材
S1 踏み面
S2 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な矩形板状をなしかつ上下面が足場構造体の踏み面及び底面をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材と、このスキン部材内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材とからなる足場板本体、
及び前記足場板本体の幅方向の両側端部に設けられ、長さ方向に連続してのびるとともに前記足場板本体の上面を越えて上方に立ち上がる踏み外し防止板部を一体に具えたことを特徴とする足場構造体。
【請求項2】
前記踏み外し防止板部は、前記足場板本体の上面と同高さで開口することにより該上面に溜まる雨水を排出しうる少なくとも1以上の排水口を具えることを特徴とする請求項1記載の足場構造体。
【請求項3】
前記足場板本体の長さ方向両端部は、前記踏み外し防止板部の長さ方向両端部よりも長さ方向両側に突出していることを特徴とする請求項1又は2記載の足場構造体。
【請求項4】
前記踏み外し防止板部は、前記足場板本体の上面からの突出高さH1が、前記足場板本体の厚さtの0.5〜5倍、かつ前記踏み外し防止板部の厚さT1が4〜30mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の足場構造体。
【請求項5】
前記踏み外し防止板部は、繊維強化プラスチック製の板状体、又は踏み外し防止板部の両側面をなす繊維強化プラスチック製のスキン部材と、このスキン部材内に埋設されかつ長さ方向に連続してのびる発泡樹脂製のコア部材とからなる複合板状体をなすことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の足場構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−140782(P2012−140782A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293370(P2010−293370)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)