説明

路面の滑り状態検出装置

【目的】操舵反力を検出するためのセンサのような特殊なセンサを必要とすることなく極一般的なセンサを用い、車輪と路面との滑り状態を推定し、車両がスピン状態に至る前の操舵初期の段階で早期に路面の滑り状態を検出する。
【構成】推定された基準状態量と検出された検出状態量との残差を時々刻々演算し、走行路面と基準路面との滑り状態の違いに応じた基準残差時系列データを蓄積する(39)。所定の滑りを有する他の路面と基準路面との滑り状態の相違に応じた残差モデル時系列データを蓄積する(42、43)。基準残差時系列データと残差モデル時系列データとの時系列パターンを比較することによって、走行路面が所定の滑りを有する他の路面のどれに近いかによって路面の滑り状態を推定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は路面の滑り状態検出装置に係り、特に、操舵角および運動状態量(ヨーレートや横加速度等)の観測値から推定した車両状態推定量と、車両の運動状態量の観測値との残差から路面の滑り状態を検出する路面の滑り状態検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の路面の滑り状態検出装置に関する技術としては、2WS(2輪操舵)、4WS(4輪操舵)車両に適用された特開平1−204865号公報、4WS車両に適用された特開平4−230472号公報等に記載されている技術が知られている。この従来の路面の滑り状態検出装置の原理は、操舵角に対する路面からの反力の大きさが路面摩擦係数が低下するほど小さくなることに着目し、該反力を専用に設けたロードセル等により検出し、操舵角、車速との関係より路面の滑り状態を判定するものである。そして、滑りやすい路面、すなわち低摩擦係数路面と判定された場合、車両を安全側に作動させるように制御系を構成している。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、このような従来の路面の滑り状態検出装置では、操舵角に対する操舵反力がヒステリシス特性を有するため、路面の滑りを判定するためには1周期以上にわたって操舵された反力情報を用いる必要がある。したがって、例えば特開平1−204865号公報では路面が滑りやすい状態、すなわち、低摩擦係数であると検出できても制御系が作動する以前に低μ路スピンを起こす可能性がある。
【0004】この点、特開平4−230472号公報の発明では、後輪の2〜3Hzの持続した微小操舵により、ドライバの操舵以前から路面の滑り状態が判定できる。しかしながら、この技術では、後輪を操舵するアクチュエータを必要とする。
【0005】また、これら従来の路面の滑り状態検出装置では操舵反力を検出するために専用のセンサを設ける必要がある。
【0006】更に、従来の路面摩擦係数の測定方法(特開平3−264846号公報)は、定常円旋回時に操舵角と横加速度との関係を示すスタビリティファクタが路面摩擦係数に対応して変化することを利用したものであるが、一般路を走行した場合、必ずしも定常円旋回とならないため路面摩擦係数を測定できない場合がある。
【0007】そこで、本発明は、2WS、4WS等の車両制御システムの如何にかかわらず、操舵反力を検出するためのセンサのような特殊なセンサを必要とすることなく極一般的なセンサを用い、車輪と路面との滑り状態を推定し、車両がスピン状態に至る前の操舵初期の段階で早期に路面の滑り状態が検出することができる路面の滑り状態検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の路面滑り状態検出装置は、車両の操舵量、横加速度、ヨーレート、車速を含む車両の運動に関する状態量を検出する検出手段と、所定の滑りを有する基準路面における基準車両運動モデル、及び前記基準路面と異なる滑りを有する他の路面における車両運動モデルの前記基準車両運動モデルからの変化量を予め記憶する車両運動モデル記憶手段と、前記基準車両運動モデルと前記検出手段で検出された検出状態量とに基づいて横加速度及びヨーレートの少なくとも一方を基準状態量として推定する基準状態量推定手段と、前記基準状態量推定手段で推定された基準状態量と前記検出手段で検出された検出状態量との残差を基準残差として演算する基準残差演算手段と、前記基準残差演算手段で演算された基準残差の時系列データを蓄積する基準残差時系列データ蓄積手段と、前記車両運動モデルの基準車両運動モデルからの変化量と前記検出手段で検出された検出状態量とに基づいて横加速度及びヨーレートの少なくとも一方の残差モデル値を他の路面について演算する残差モデル演算手段と、前記残差モデル演算手段で演算された残差モデル値の時系列データを蓄積する残差モデル時系列データ蓄積手段と、蓄積された基準残差時系列データと残差モデル時系列データとの時系列パターンとを比較して路面の滑り状態を推定する路面滑り状態推定手段と、からなることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明は、推定された基準状態量と検出された検出状態量との残差を基準残差として時々刻々演算し、走行路面と基準路面との滑り状態の違いに応じた基準残差の時系列データを蓄積する。また、所定の滑りを有する他の路面と基準路面との滑り状態の相違に応じた残差モデル値を演算し、この残差モデル値の時系列データを蓄積する。そして、基準残差モデル時系列データと残差モデル時系列データとの時系列パターンを比較することによって、走行路面が所定の滑りを有する他の路面のどれに近いかによって路面の滑り状態を推定する。
【0010】一般路面を走行する場合、道路の曲率等により操舵角は時々刻々変化するため、必ずしも定常円旋回とならないが、本発明においては、時々刻々変化する操舵角は、検出状態量として基準車両運動モデル中で考慮されており、基準車両運動モデルと検出状態量とに基づいて演算される基準状態量と検出状態量との残差は操舵角とは分離されているため、操舵角が変化しても支障はない。
【0011】本発明の路面滑り状態検出装置によれば、車両運動モデルを設定した路面と異なる滑り状態の路面を走行した場合は、ハンドルを操舵すると横加速度及びヨーレートの少なくとも一方に残差が発生し、その残差時系列データを残差モデル時系列データと照合することにより、2WS、4WS車両に拘らず操舵初期の段階で路面の滑り状態が検出できる。従って、スピンに至る前に各路面の滑り状態に応じた制御系に切り換えることができ安全な走行に寄与することができる。また、操舵反力の検出の必要がないため特殊なセンサを設ける必要もない。
【0012】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0013】図1には、本発明が適用された4WS車両の概略が示されている。本実施例の4WS車両は、質量m、ヨー慣性Iの車体10と、操舵装置としてのハンドル12と、コーナリングパワーCfのタイヤ特性を持つ前輪用タイヤ14と、コーナリングパワーCrのタイヤ特性を持つ後輪用タイヤ16と、タイヤ16に対する後輪制御量を算出するコントローラ18と、後輪制御量により後輪用タイヤ16を操舵・駆動するアクチュエータ62とから構成されている。
【0014】また、この4WS車両には、ヨーレートセンサ20と、加速度センサ22と、舵角センサ24と、車速センサ26と、信号処理回路28と、路面の滑り状態検出装置30とが設けられている。
【0015】


相当する前輪操舵角δfを検出し、車速センサ26は車速Vcを検出する。そして、これら各センサの検出記号は、信号処理回路28で増幅される。
【0016】4WS車両の操舵により発生し、ヨーレートセンサ20で検出されたヨーレー

る。コントローラ18は、アクチュエータ62を介して後輪用タイヤ16を制御し、速応性を高めている。なお、それぞれの車両定数値は実験等により予め測定されたものを用いている。本実施例では、後述する表1に示すような定数値が用いられる。
【0017】また、信号処理回路28において増幅された上記各センサの検出信号は、路面の滑り状態検出装置30へ向け出力される。路面の滑り状態検出装置30は、路面の滑りを検出すると共に、4WS車両の操舵制御系における故障を検出するものである。したがって、センサ故障が検出された場合、路面の滑り状態検出を中止し信頼性を向上することができる。路面の滑り状態検出装置30による路面の滑り状態および故障検出結果は、コントローラ18へ入力され、アクチュエータあるいはセンサが故障であることが検出されれば4WS制御および路面の滑り状態の検出を中止し、一方、路面が滑りやすい状態であることが検出されれば、4WS制御則を変化させて車両を安全側に作動させる。
【0018】本実施例では、路面の滑り状態検出装置30によって、■加速度センサ22の故障、■ヨーレートセンサ20の故障、■後輪アクチュエータ62の故障、■路面の滑り状態の検出を行なうようにしている。
【0019】以下の説明では、滑りにくい路面を基準路面、滑りやすい路面を基準路面と異なる路面あるいは単に異なる路面と呼ぶことにし、滑りやすさの度合いに応じて1つあるいは複数の基準路面と異なる路面が存在するものと仮定する。
【0020】図2には、路面の滑り状態検出装置30のブロック図が示され、図3には図2における路面の滑り状態検出回路38の詳細なブロック図が示されている。
【0021】本実施例の路面の滑り状態検出装置30は、基準路面の車両運動モデルのテーブルを記憶したメモリ32と、状態量推定回路33と、車両のすべり角推定回路34と、残差演算回路36と、路面の滑り状態検出回路38とを含んで構成されている。
【0022】また、図3に示すように、路面の滑り状態検出回路38は、基準残差時系列データ蓄積回路39と、各異なる路面における基準路面からの車両運動モデルの変化量のテーブルを記憶したメモリ40と、センサ時系列データ蓄積回路41と、残差モデル時系列データ演算回路42と、残差モデル時系列データ蓄積回路43と、路面の滑り状態推定回路44とを含んで構成されている。
【0023】状態量推定回路33は、メモリ32に記憶された基準路面のモデルおよび入力

車両のすべり角推定回路34は、信号処理回路28で増幅されたヨーレートセンサ20、加速度センサ22、車速センサ26の検出値より車両のすべり角βを推定し、路面の滑り状態検出装置38へ向け出力する。
【0024】残差演算回路36は、信号処理回路28で増幅されたヨーレートセンサ20および加速度センサ22の検出値と、状態量推定回路32の推定値との残差を演算し、路面の滑り状態検出回路38へ出力する。
【0025】路面の滑り状態検出回路38の基準残差時系列データ蓄積回路39は、残差演

【0026】また、センサ時系列データ蓄積回路41は、残差時系列データと同じ一定時間

タを蓄積する。残差モデル時系列データを演算する残差モデル時系列データ演算回路42は、メモリ40に記憶されている各路面の基準路面からのモデル変化量

系列データと同じ一定時間毎にサンプリングした同じデータ長の残差モデル時系列データとして残差モデル時系列データ蓄積回路43に記憶する。さらに、残差モデル時系列データ蓄積回路43には、加速度センサ22、ヨーレートセンサ20、後輪アクチュエータ62の故障時の3つの残差モデルが同じく残差モデル時系列データとして予め記憶されている。したがって、基準路面と異なる路面モデルおよび故障モデルとして計m組(m≧4)の残差モデルが用意されることになる。
【0027】4WS車両の操舵制御系が正常な場合には、センサ20、22の検出値と、状態量推定回路33の推定値の値は略等しくなるため、残差演算回路36から出力される残差は略0となる。これに対し、操舵制御系における何らかの故障の発生、あるいは異なる路面での操舵開始と共に、センサ20、22の検出信号と推定値との値が異なったものとなり、残差が発生する。そこで、残差を過去の時点から現時点までをある時間に区切って取り出し(Window(ウインド))、残差を時系列パターンとして捉えると、各路面、各故障に応じて特有の残差パターンを示すことになる。
【0028】路面の滑り状態検出回路44は、入力される残差時系列データと異なる各路面および各故障に応じた1〜m組の残差モデル時系列データとから、操舵制御系に発生した故障箇所および路面の滑り度合いを特定するよう構成されている。すなわち、本実施例の路面の滑り状態検出回路38は、基準残差時系列データ蓄積回路39の残差時系列パターンと残差モデル時系列データ蓄積回路43の残差モデル時系列パターンとを、所定のルーチンに従ってパターン照合演算処理し、最も一致度の高い残差モデルより、発生した故障がヨーレートセンサ20の故障であるか、加速度センサ22の故障であるか、後輪アクチュエータ62の故障であるかを判断するか、あるいは路面の滑り度合いを判定するよう構成されている。
【0029】このようにして、本実施例の路面の滑り状態検出装置によれば、操舵初期の段階で路面の滑り度合いが検出できる。したがって、スピンに至る前に路面の滑り度合いに応じた制御系に切り換えることができ安全な走行に寄与することができる。また、操舵制御系において発生するヨーレートセンサ20、加速度センサ22、および後輪アクチュエータ62のわずかな故障を迅速かつ正確に検出することができ、コントローラを安全側に作動させることができる。さらに路面の滑り状態検出に用いる加速度センサ、ヨーレートセンサの故障が検出できることにより、路面の滑り状態検出に対する信頼性を向上することが可能となる。ただし、本実施例では故障検出についても述べるため、4WS車両を採り上げたが、2WS車両についても同様に適用することが可能である。また、推定する基準状態量

て推定しても同様に適用することが可能である。
【0030】次に、本実施例の具体的な構成および動作を詳細に説明する。本実施例では、

、GLR(Generalized Likelihood Ratio)手法を用いている。このGLR手法の詳細は以下の文献等で述べられている。
【0031】1)著者名:A.S.Willsky文献名:A Survey of Design Methods for Failure Detection in Dynamic Systems,Automatica,Vol.12,pp601〜611,19762)著者名:A.S.Willsky and H.L.Jones文献名:A Generalized Likelihood Ratio Approach to the Detection and Estimation of Jumps in Linear Systems,IEEE Trans.Auto.Contr. Vol.AC−21.NO.2,pp108〜,1976このGLR法の概略を図4を参照して説明する。GLR法は故障検出を目的に開発されたもので、まず、故障検出対象を数学モデルで表しカルマンフィルタにより状態推定系を構成する。そして、各故障に対して、対象のセンサ出力Yとカ

故障モデルとして計算しておく。そこで、GLR法では実際に得られた残差時系列パターンと各故障モデルの残差時系列パターンとの統計的な照合によって故障箇所、故障の大きさ、故障発生時刻の特定を行う。
【0032】まず、故障・路面の滑り状態検出を行なうための検出系の設計を行う。故障・路面の滑り状態検出系の設計は以下の手順で行う。以下の具体的な設計における車速Vc は、Vc =22.22m/s(=80km/h)を用いた。
【0033】1)車両モデル化車両の運動方程式は、方式で表される。
【0034】
【数1】


【0035】次の表1は、(1)、(2)式で用いた記号の定義および各定数を示したもの

、Vc は車速[m/s]、δfは前輪操舵角[rad]、uは後輪制御量[rad]である。
【0036】
【表1】


【0037】後輪制御量uは次式により算出する。
【0038】
【数2】


【0039】さらに、車両のすべり角がβがβ≪1[rad]が成り立つ範囲では横加速度

【0040】
【数3】


【0041】


【0042】上記(1)式〜(4)式を用いて車両の運動モデルを状態方程式で表すと次式のようになる。
【0043】
【数4】


【0044】ただし、
【0045】
【数5】


【0046】であり、X,U,Yにおける添え字Tは転置を表す。そして、qはシステムノイズ、wはセンサノイズを表し、F,Gはシステムノイズベクトルである。(5)、(6)式におけるA,B,C,Dは次のとおりのマトリックスである。
【0047】
【数6】


【0048】この(8)式に表1の各数値を代入し、サンプリング周期8msで零次ホールドにより離散化すると次のようになる。
【0049】
【数7】


【0050】ただし、kは時間刻み(時刻)を表す。また、(9)、(10)式におけるA〜Gの各マトリックスは、連続系表現された(5)、(6)式と同じ表記を用いているが、内容は異なるので注意されたい。
【0051】また、A,B,C,Dマトリックスは次のとおりになる。
【0052】
【数8】


【0053】2)車両状態量の推定系設計状態量推定回路33は上記(9)、(10)式を用い、車両のヨーレートおよび横加速度を推定演算するが、運動状態の推定演算には次式のカルマンフィルタを用いる。
【0054】
【数9】


【0055】上記(13)式のKがカルマンフィルタゲインであり、カルマンフィルタでは、システムノイズ分散Qとセンサノイズ分散Rとを用いてゲイン算出を行う。まず、システムノイズとして前輪に横力q(q=2000N)が加わるとして、次のシステムノイズベクトルF,Gを想定した。
【0056】
【数10】


【0057】システムノイズベクトルF,Gを(11)式のAマトリックスを用い、サンプリング周期8msで零次ホールドにより離散化すると次式となる。
【0058】
【数11】


【0059】また、システムノイズ分散Qは次のように設定する。
Q=4×106 (17)
一方、センサのノイズ分散Rは実車走行データをもとに算出した結果、次のようであった。
【0060】
【数12】


【0061】以上のもとで算出されたカルマンフィルタゲインKを次に示す。
【0062】
【数13】


【0063】また、アップデート後の残差の共分散Vは次のようになった。
【0064】
【数14】


【0065】3)故障のモデル化上記(9)、(10)式の車両モデルを用いてセンサ、アクチュエータ故障を離散系で表すと次式となる。
【0066】
【数15】


【0067】ただし、fはアクチュエータ故障を表すイベントベクトルであり、gはアクチュエータ故障およびセンサ故障を表すイベントベクトルである。そして、添え字iは故障箇所を表し、アクチュエータ(i=1)、加速度センサ(i=2)、ヨーレートセンサ(i=3)とする。また、τは故障発生時刻を表し、νは故障の大きさを表すスカラである。そして、τ、νはともに未知パラメータで、これは後述のGLR値を計算する際に明らかとなる。
【0068】故障が生じた場合次のようになる。
【0069】
【数16】


【0070】


式において、fi ν=0,gi ν=0(故障がない)として計算した値である。αi (k),βi (k),μi (k),pi (k)は故障に応じた修正項で、以下の式により事前に計算できる。
【0071】
【数17】


【0072】以上より、故障モデルとして故障発生時刻τを起点に、横加速度およびヨーレートの残差パターンρi (k)を作成する。ただし、計算機メモリの制約上から作成する残差時系列パターンの長さ(Window)は40サンプリングとする。
【0073】まず、アクチュエータ故障のイベントベクトルf1,g1は次のように表される。
【0074】
【数18】


【0075】(31)、(32)式に車両諸元を代入すると次式のようになる(なお、f1についてはサンプリング周期8ms、零次ホールドで離散化した)。
【0076】
【数19】


【0077】アクチュエータ故障モデルρ1 作成の際、初期値は次のように設定する。
【0078】
【数20】


【0079】ただし、
【0080】
【数21】


【0081】加速度センサおよびヨーレートセンサの故障ベクトルを次式に示す。
加速度センサ故障 :g2=[1 0]T (39)
ヨーレートセンサ故障:g3=[0 1]T (40)
センサ故障モデルp2,3 の初期値は、次のとおりである。
【0082】
【数22】


【0083】ただし、β2,3 は次のとおりである。
【0084】
【数23】


【0085】以上、得られたアクチュエータ故障モデルρ1 を図5、加速度センサ故障モデルρ2 を図6、ヨーレートセンサ故障モデルρ3 を図7に示す。
【0086】4)基準路面と異なる路面モデル滑りやすい路面の走行ではコーナリングフォースの低下を生じるが、この低下を平均的なコーナリングパワーCf,Crの低下と仮定する。これを、図8に示す。この仮定を確認するため、低摩擦係数路面(μ=0.25〜0.35)走行時の実験結果をもとに、コーナリングパワーCf,Crを試行錯誤に合わせ込み調べた。その結果、表1の車両諸元に対しCf,Crは0.5倍に低下していることがわかった。図9は、高摩擦係数路面走行結果に対して(9)〜(11)式の車両モデルの一致度合いを調べたものであり、図10は低摩擦係数路面走行結果に対してCf,Crを0.5倍として同じように車両モデルの一致度合いを調べたものである(車速はいずれも80km/h)。ただし、実験データからの入力としては前輪操舵角のみを用い、後輪制御量uは計算されたヨーレートを0.1倍((3)式)して算出したものを用いた。図9、10より、高、低摩擦係数路面走行ともに、実験結果に対して車両モデルは良好な一致度合いを示している。
【0087】したがって、高摩擦係数路面(基準路面)で設定されたCf,Crが、路面μの変化によりΔCf,ΔCrだけ変化したとすると、車両は次式で表される(ただし、連続系で表した)。
【0088】
【数24】


【0089】
【数25】


【0090】また、(46)、(47)式を離散系で表すと次式となる。
【0091】
【数26】


【0092】なお、σはユニット・ステップ関数で、高摩擦係数路面(基準路面)走行時はσ=0、低摩擦係数路面(異なる路面)走行時はσ=1であり、τは操舵開始による残差発生時刻を表すものである。また、(49)、(50)式におけるA〜GおよびΔA〜ΔDは(46)、(47)式と同じ表記を用いているが、内容は異なるので注意されたい。
【0093】ここで、(21)、(22)式に示すようなモデル変化としてのfi , i に相当する部分を(48)式のマトリックス変化ΔA,ΔB,ΔC,ΔDで記述すると、ベクトルとマトリックスの加算になるため、ベクトル故障入力型のGLRでは、モデル変化検出が適用できない。そこで、状態量Xおよび制御量Uを用いてモデル変化を次のようにベクトル化する。
【0094】
【数27】


【0095】


の疑似積分により推定した信号を用いることにする。すなわち、車両のすべり角βは次式を用いて推定する。
【0096】
【数28】


【0097】ただし、sラプラスの演算子であり、また、T=0.6366s(カットオフ周波数f=0.25Hz)とした。(54)式を状態方程式で表し、サンプリング周期8ms、零次ホールドにより離散化すると次式となる。
【0098】
【数29】


【0099】そして、(51)〜(53)式におけるhはコーナリングパワーCf,Crの変化度合いに対応した添え字で、基準路面におけるコーナリングパワーCf,Crの0.25倍に低下した時をh=4、0.5倍に低下した時をh=5、0.75倍に低下した時をh=6とする。
【0100】Cf,Cr=0.25の場合のΔA4 〜ΔD4 を次に示す。
【0101】
【数30】


【0102】(52)、(53)式におけるgh はベクトルであり、これは(56)〜(58)式を用いて次式によりベクトル化する。
【0103】
h (k) =[ΔCh X(k)+ΔDh U(k) 0]T (59)
したがって、(51)〜(53)式、(56)〜(59)式により、モデル変化をベクトルの形で表せば、ベクトル故障入力型のGLRが適用可能となる。ただし、(51)〜(53)式では、状態量X,制御量Uといった動的な変数を含むため、センサ・アクチュエータ故障のように予め故障モデルρを作成しておくことはできず、オンラインで路面の残差モデル、すなわち路面モデルρを作成することになる。
【0104】この路面モデルの作成の方法について次に述べる。まず、基準路面と異なる路面走行によりコーナリングパワーが変化した時、車両およびカルマンフィルタにおける状態の変化および残差は、故障時と同様に次式で表される。
【0105】
【数31】


【0106】


して計算した値である。次に、αh ,βh ,μh ,ρh は、故障モデルと同様にして、以下の式により作成する。
【0107】
【数32】


【0108】すなわち、(51)〜(53)式、(56)〜(59)式によりベクトル化された時々刻々のモデル変化fh (k,τ),gh (k,τ),gh (k+1,τ)を(64)、(65)、(67)式に代入し、オンラインで、αh ,βh ,μh ,ρh を計算する。
【0109】ここで、故障モデルではパラメータ化していた故障の大きさνについては、各路面でのコーナリングパワー変化に応じてモデルを作成しているのでν=1である。
【0110】なお、(64)〜(67)式における初期値は次のように設定する。
【0111】
【数33】


【0112】上述したように、残差時系列パターンとの照合はWindowで切り出された範囲内で行う。そして、操舵開始による残差発生時点をパラメータτとし、(51)〜(53)式におけるモデル変化に関する部分は状態量X、制御量Uを図11で示すように選択していく。これは、操舵開始以前(直進)ではモデル変化ΔA〜ΔDは生じておらず、X,U側でモデル変化成分を0にすることを意味する。したがって、Window=40の場合、図11におけるτ=k−39〜k−1のX,Uの0としている区間は、モデル変化fh (k,τ),gh (k,τ),gh (k+1,τ)が0のため、(64)〜(67)式におけるαh ,βh ,μh ,ρh を計算しなくてよい。また、車両モデル変化はある程度操舵された時点よりその傾向が顕著となることから各路面モデルは操舵角δf=0.01rad(操舵角相当で8.4deg)を越えた時点より作成することとした。
【0113】5)残差と故障・異なる路面モデルとの照合方法異常(故障・異なる路面走行)なしをH0 、故障発生(ただし、ν、τは未知)による異常発生をHi あるいは異なる走行(ただし、τは未知)による異常発生をHh とする仮説を立てる。すなわち、残差γN が、平均0、分散Vのガウス確立分布に従うものとすると、H0 ,Hi ,Hh は次式となる。
【0114】
異常なしH0 : γ(k) =0 (71)
異常ありHi : γ(k) =ρi (k,τ)ν (72)
h : γ(k) =ρh (k,τ) (73)
そこで、γ(1),γ(2),γ(3)・・・,γ(k)に関する尤度比検定を行なう。まず、故障に関する尤度比は、ガウス確立密度関数を用い次式で表される。
【0115】
【数34】


【0116】ここで、
【0117】
【数35】


【0118】ただし、mは残差γのサイズを表す。また、
【0119】
【数36】


【0120】この尤度比Liは、大まかには異常仮説Hi ,H0 に応じて次のように作用する。
【0121】Hi :γ(k)=ρi (k,τ)νにより(75)式のexp値は1、(76)のexp値は1よりも小さな値となり、尤度比Liは1よりも大きくなる。
【0122】H0 :γ(k)=0により(76)式のexp値は1、(75)のexp値は1よりも小さな値となり、尤度比Liは1よりも小さくなる。
【0123】ただし、(74)〜(76)式からでは故障の大きさν、故障発生時刻τが未知であるので計算できない。そこで、まず(74)式に(75)、(76)式を代入して対数を採り、対数尤度比を次のように定義する。
【0124】
li(k, τ, ν)=2ln(Li(k, τ, ν))=2νd(k,τ,i)-ν2a(k, τ,i) (77)
ただし、a(k,τ,i),d(k,τ,i)は次のとおりである。
【0125】
【数37】


【0126】そして、(77)式より故障の大きさνを次式の最尤推定により算出する。
【0127】
【数38】


【0128】


【0129】
【数39】


【0130】(80)式を(77)式に代入すると、対数尤度比li(k,τ,ν)は次式で得られる。
【0131】
【数40】


【0132】次に異なる路面走行に関する尤度比は、ガウス確率密度関数を用いて次式で表される。
【0133】
【数41】


【0134】ここで、(82)式における分母、分子項は(75)式においてνが省略された形で同様に記述される(ν=1)。
【0135】そして(77)式と同様、(82)式にν=1として(75)、(76)式を代入し対数をとった対数尤度比を次の用に定義する。
【0136】
【数42】


【0137】ただし、a(k, τ,h) 、d(k, τ,h) は次の通りである。
【0138】
【数43】


【0139】しかしながら、(81)式及び(83)式において、故障発生時刻τ及び操舵による残差発生時刻τが未知であるので、τを次の手順によって求める。図1212に故障発生時刻τの検索を例にとってその様子を示す。ただし、図12では説明

2では、時刻kに対し次の区間で故障モデルρi と残差γとの照合を行なっている。
【0140】
k−40≦Window≦k−1 (85)
すなわち、図12において、残差に対し故障モデルρi νをj=1からj=40まで順次一致するかどうか照合し、一致した時点がτ=jとなる。この照合は以下のように行う。
【0141】まず、(30)でj=1〜40まで計算した故障モデルρi を用い、(78)式のa(k,τ,i)についてj=1〜40,j=1〜39,j=1〜38,・・・,j=1〜1のそれぞれのΣを計算し、1×40のベクトルを作る。各故障は予め故障モデルρi が作成できるので、(78)式のa(k,τ,i)が事前に計算可能である。
【0142】次に(78)式のd(k,τ,i)はρi のj=1〜40のベクトルに対してγのj=1〜40のベクトル、ρi のj=1〜39のベクトルに対してγのj=2〜40のベクトル、という対応付けでΣを計算し、1×40のベクトルを作成する。
【0143】ここで、γは(85)式の範囲で切り出された残差ベクトルγであり、その先頭を1番目とする。すなわち、a(k,τ,i)、d(k,τ,i)は次式のように計算する(ただし、Window=40とする)。
【0144】
【数44】


【0145】そして、故障発生時刻τの検索では、計算したa(k,τ,i),d(k,τ,i)を用いて、( 81) 式の対数尤度比li(k,τ,ν)を計算し、1×40のベクトルを作る。そして、そのベクトル要素の中で最も大きな値をもつ点が故障発生時刻τとする。
【0146】また、異なる路面走行についても(67)式のρh を用いて(85)〜(87)式の手順で(84)式中のa(k,τ,h)及びd(k,τ,h)を計算し、(83)式の対数尤度比lh(k,τ)について1×40のベクトルを作る。そして、そのベクトル要素の中で最も大きな値を持つ点が操舵による残差発生時刻τになる。
【0147】したがって、故障・路面の滑り状態検出の手順としては、各故障(アクチュエータ、加速度センサ、ヨーレートセンサ)について(81)式をj=1〜40まで計算し、各々j=1〜40の中で対数尤度比li(k,τ,ν)、lh(k,τ)が最大となる点として時刻τを決定する。そして、この各々の時刻τにおける対数尤度比li(k,τ,ν)、lh(k,τ)をGLR値として決定する。さらに、故障については故障発生時刻τにおけるa(k,τ,i),d(k,τ,i)を用いて(80)式を計算し、その大きさνを決定する。いずれの故障であるか、また、どの程度の路面の滑り度合いであるかは、各故障、各異なる路面モデルについて計算された各GLR値を比較し、最も、大きい値を持つものとして決定する。そして、基準路面と異なる路面であると判定された場合、どの路面モデル(h=4〜6)のGLR値が最も高いかにより路面滑り度合いの検出を行う。
【0148】ただし、故障検出については図12から時刻k=τ+41のように故障発生時刻τを含まなくなると、残差γと一致する故障モデルρi はなくなり、GLRは意味がなくなる。すなわち、故障検出におけるGLRの適用範囲はWindow区間内である。そして、GLRの設計準備としては、カルマンフィルタの設計、そして、故障検出については故障モデルρi を計算し、a(k,τ,i)を求めておき、一方、路面の滑り状態検出については車両モデル変化ΔAh 〜ΔDh を計算しておくこととなる。ただし、これらの設計に用いる車両モデルはすべて車速Vc の関数であり、カルマンフィルタ、故障モデルρi 、車両モデル変化ΔAh 〜ΔDh はVc =10km/h程度毎に用意されるものとする。この故障・路面の滑り状態検出系設計のフローチャートを図13に示す。
【0149】上述した故障・路面の滑り状態検出のアルゴリズムを図14のフローチャートに基づき以下の手順で行う。
【0150】(1)刻みkのイニシャライズを行なう(ステップ112)。
(2)カルマンフィルタ、故障モデルρi 、車両モデル変化ΔAh 〜ΔDh を作成する(ステップ114)。
【0151】すなわち、図13のフローチャートに従い車速Vc =10km/h程度の刻みでカルマンフィルタ、故障モデルρi 、車両モデル変化ΔAh 〜ΔDh をテーブルとして用意する。これらは以下の計算において車速Vc に応じて選択されるものとする。
【0152】(3)残差Box、状態Boxをイニシャライズする(ステップ116)。


る。イニシャライズ時、残差Boxは2×40の0要素、状態Boxは4×40の要素で構成される。
【0153】(4)各センサ信号を読み込む(ステップ118)。


速Vc 、後輪制御量uを取り込む。ただし、本検出アルゴリズム作動前に各センサ信号の零点補正をしておく。
【0154】(5)車両すべり角βを推定する(ステップ120)。


【0155】(6)横加速度、ヨーレートの状態量を推定する(ステップ122)。


【0156】


【0157】ステップ118の加速度センサ22、ヨーレートセンサ20の検出値と、ステ

【0158】(8)残差Box、状態Boxを更新する(ステップ126)。


xの最後尾に挿入する。同様に、ステップ118の操舵角δf、後輪制御量u、

の更新を行う。
【0159】(9)刻みk値とWindow値とを比較する(ステップ128、130)。刻みkとWindowを比較し、刻みkがWindow以下の値であれば刻みkをk=k+1としてステップ118に戻りセンサ信号の入力を行う。これは、残差の時系列パターンがWindow長さ分得られていないためである。もし、刻みkがWindowを越えていればステップ132に進む。
【0160】(10)各故障モデルのGLR値および故障量を計算する(ステップ132〜146)。
【0161】ステップ114の故障モデルρi とステップ124の残差Boxを用い、各故障モデルのGLR値の計算および故障量の計算を上記で説明したように行なう。
【0162】(11)操舵開始を判定する(ステップ148、168)。路面の滑り状態検出を行うかどうか操舵角δfをもとに判定する。ここでは、操舵角δfの絶対値が0.01rad(操舵角で8.4degに相当する)を越えた時点より路面の滑り状態検出を行う。もし、操舵角δfの絶対値がが0.01rad以下の場合は路面の滑り状態検出は行わず、各路面モデルのGLR値は0とし(ステップ168)、ステップ170に進む。
【0163】(12)各路面モデルのGLR値を計算する(ステップ150〜166)。ステップ114の車両モデル変化ΔAh 〜ΔDh およびステップ126の状態Boxを用い、各路面モデルを作成し、ステップ126の残差Boxを用い各路面モデルのGLR値の計算を行う。
【0164】(13)故障・路面滑り状態を判定する(ステップ170)。計算された各GLR値の内、最大のものを現在生じている異常として仮定する。そして、最大のGLR値となった各故障モデルあるいは各路面モデルのGLR値が、設定されたしきい値を越えているかどうか調べ、越えていれば現在その異常が生じたと判定する。さらに、基準と異なる路面であると判定された場合は、どの路面モデルのGLR値(h=4〜6)が最大になっているかにより路面の滑り状態の推定を行う。ここで、故障、路面の滑り状態検出における各しきい値は、高摩擦係数路面におけるレーンチェンジ時の各故障、各路面モデルGLR値の最大値の2〜3倍とした。これを表2に示す。
【0165】
【表2】


【0166】そして、故障・路面の滑り状態の判定結果をコントローラ18に出力し、ステップ118へ戻る。
【0167】車速80km/hのもとでの4WS車両を用いたスキッド路(低摩擦係数)走行時の走行データおよび故障実験データを用いて、上述の手順に基づき路面の滑り状態および故障検出シュミレーションを行った結果を説明する。
【0168】図15は高摩擦係数路面でのレーンチェンジ時の結果である。その結果、多少のモデル化誤差によりGLR値は値を持つ。一方、図16は低摩擦係数路面の判定結果で、操舵とともにGLR値が時間とともに増大し、しきい値を越えて低摩擦係数路面であると判定ができた。さらに、高摩擦係数路面走行におけるコーナリングパワーCf,Crを0.5倍したモデルが最大値となった。これは図8に示したスキッド路走行において合わせ込みを行ったコーナリングパワー値と対応し、本実施例の手法によって操舵開始の時点でスキッド路面とわかり、路面の滑り度合いが検出できる。
【0169】また、図17は加速度センサのステップ故障時走行データをもとに計算した各GLRを示したもので、その結果、加速度センサ故障のGLR値が最大値となり、正しい故障検出ができていることがわかる。また、図18に故障量の推定結果を示す。図18より、故障量の推定についても良好であることがわかる。また、図19はアクチュエータのステップ故障時の走行データをもとに計算した各GLR値を示したもので、その結果、アクチュエータ故障のGLR値が最大値となり正しい故障検出ができていることがわかる。また、図20に故障量の推定結果を示す。図20より、アクチュエータ故障の故障量の推定では、加速度センサ故障ほど、精度は高くないがオーダ的には略正しい結果となっている。
【0170】ただし、図16ではCf,Cr=0.5の路面モデルのGLR値に対し、加速度センサ故障のGLR値がに非常に接近しており、GLR値の大小の比較だけでは判別がむずかしい。一方、加速度センサ故障では低摩擦係数路面モデルと加速度センサ故障モデルのGLR値が明確に分離できる。したがって、2つの計算結果から、路面モデルのGLR値と加速度センサ故障のGLR値の差が50以内であれば加速度センサ故障ではなく、路面が滑りやすい状態にあると判定している。
【0171】これらの結果から、本方式により路面の滑り状態の推定ができることによりABS等への利用が期待できる。また、滑りやすい路面、各故障との分離が可能で路面の滑り状態検出の信頼性を上げることができる。
【0172】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、2WS、4WS等の車両制御システムの如何にかかわらず、操舵反力を検出するためのセンサのような特殊なセンサを必要とすることなく極一般的なセンサを用い、車輪と路面との滑り状態を推定し、車両がスピン状態に至る前の操舵初期の段階で早期に路面の滑り状態が検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を4WS車両に適用した実施例の概略図である。
【図2】路面の滑り状態検出装置のブロック図である。
【図3】図2における路面の滑り状態検出回路のブロック図である。
【図4】GLR法を説明するための概略図せある。
【図5】アクチュエータ故障モデルρ1 を示す線図である。
【図6】加速度センサ故障モデルρ2 を示す線図である。
【図7】ヨーレートセンサ故障モデルρ3 をを示す線図である。
【図8】仮定した各路面に対するコーナリングパワー特性を示す線図である。
【図9】高摩擦係数路面走行時の操舵角、横加速度、ヨーレートを示す線図である。
【図10】低摩擦係数路面走行時の操舵角、横加速度、ヨーレートを示す線図である。
【図11】各τにおける状態量X、制御量Uの選択状態を示す線図である。
【図12】故障発時刻τを検索する状態を示す線図である。
【図13】故障・路面のすべり状態検出系設計のフローチャートである。
【図14】故障・路面のすべり状態検出のフローチャートである。
【図15】高摩擦係数路面走行時のGLR値、異常判定結果を示す線図である。
【図16】低摩擦係数路面走行時のGLR値、異常判定結果を示す線図である。
【図17】加速センサ故障時のGLR値、異常判定結果を示す線図である。
【図18】加速センサ故障時の故障量の推定結果を示す線図である。
【図19】アクチュエータ故障時のGLR値、異常判定結果を示す線図である。
【図20】アクチュエータ故障時の故障量の推定結果を示す線図である。
【符号の説明】
18 コントローラ
20 ヨーレートセンサ
22 加速度センサ
26 車速センサ
24 舵角センサ
30 滑り状態検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の操舵量、横加速度、ヨーレート、車速を含む車両の運動に関する状態量を検出する検出手段と、所定の滑りを有する基準路面における基準車両運動モデル、及び前記基準路面と異なる滑りを有する他の路面における車両運動モデルの前記基準車両運動モデルからの変化量を予め記憶する車両運動モデル記憶手段と、前記基準車両運動モデルと前記検出手段で検出された検出状態量とに基づいて横加速度及びヨーレートの少なくとも一方を基準状態量として推定する基準状態量推定手段と、前記基準状態量推定手段で推定された基準状態量と前記検出手段で検出された検出状態量との残差を基準残差として演算する基準残差演算手段と、前記基準残差演算手段で演算された基準残差の時系列データを蓄積する基準残差時系列データ蓄積手段と、前記車両運動モデルの基準車両運動モデルからの変化量と前記検出手段で検出された検出状態量とに基づいて横加速度及びヨーレートの少なくとも一方の残差モデル値を他の路面について演算する残差モデル演算手段と、前記残差モデル演算手段で演算された残差モデル値の時系列データを蓄積する残差モデル時系列データ蓄積手段と、蓄積された基準残差時系列データと残差モデル時系列データとの時系列パターンとを比較して路面の滑り状態を推定する路面滑り状態推定手段と、からなることを特徴とする路面の滑り状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図18】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開平8−119131
【公開日】平成8年(1996)5月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−264236
【出願日】平成6年(1994)10月27日
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)