説明

身体洗浄装置

【課題】被洗浄者の皮膚面の洗浄を行う洗浄液を皮膚面に対して優しく噴射すると共に、皮膚面に接触させた洗浄済廃水を外部へ漏水させることなく回収することができる身体洗浄装置を提供する。
【解決手段】身体皮膚面を洗浄する洗浄液を貯留する給水部、該給水部の洗浄液を配水ポンプにより搬出し身体皮膚面に供給する洗浄アダプタ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引装置により吸引し貯留する排水部とからなり、前記洗浄アダプタは操作者が把持する把持部、洗浄液を皮膚面に噴射する噴射口と洗浄後の廃液を吸引除去する吸引口とを有するノズル本体とからなり、前記把持部には操作者が操作する真空度調節スイッチ、水量調節スイッチが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を洗浄する身体洗浄装置に関するもので、例えば寝たきり老人や足の怪我等で動けない患者、乳幼児等の被洗浄者に対して身体の一部または全身を効果的に洗浄することができる身体洗浄装置に関するもので、特に、被洗浄者に対する洗浄液の供給量、噴射強度、吸引強さを操作者がその手元で任意に調整可能な身体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の体を洗う一般的な手段は風呂、シャワー等であるが、例えば寝たきりで起きることが困難である人、あるいは歩行等が困難な人、リハビリ患者等にあっては、身体洗浄のための入浴又はシャワーを浴びることが困難な場合が多く、身体を清潔に保つことに苦慮している。また健康な人であっても、例えば体臭を有し、あるいは腋臭を有する人にとっては、身体の部分的洗浄を頻繁に行なうことが望ましいが、頻繁に入浴やシャワーを浴びることは事実上困難である。
【0003】
また、寝たきり老人や足の怪我等で動けない患者の排泄にはおむつが使用されるが、排泄後おむつを外した後の排泄部分を簡便に洗浄する必要がある。このため、濡れた布やガーゼ、脱脂綿等で払拭しているが、看護に当たる人々の労力は大変である。
そこで、簡便に身体を洗浄する装置が多数考案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には水、温水その他の洗浄液を貯留する給液槽と、略吸盤状をなし、開口縁が人体の洗浄すべき部位の周辺に密着する外形形状を備えた洗浄器本体と、前記給液槽内の洗浄液を洗浄器本体内に給水する給液管と、洗浄器本体内の気液を吸引して排出するための吸引装置とを備え、吸引装置で洗浄器本体内を減圧することにより給液槽から洗浄液を供給して局部を洗浄すると共に洗浄器本体内の廃液を吸引廃棄するように構成した人体洗浄機が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、身体の皮膚面に対して洗浄液を射出させることができる射水ノズル、及び該射水ノズルから皮膚に向けて射出された後の洗浄済水を回収するバキューム口を有する洗浄アダプタと、該洗浄アダプタに設けられているバキューム口を負圧とすると共に上記射水ノズルより圧力水を噴射せしめるためのポンプ、及び該ポンプの駆動力で上記射水ノズルから射出せしめるための洗浄液を封入する洗浄液タンク、及び上記バキューム口から吸引された洗浄済水を回収する回収タンクを備えた洗浄装置本体とからなる身体の洗浄装置が開示されている。
【0006】
しかし、ここに提案されている装置は、洗浄器本体が人体に密着するように構成され、吸引装置の吸引力により洗浄液を局部に供給しているために人体の局部に強い吸引力が作用し、皮膚を傷める危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−225169号公報
【特許文献2】特開2001−145682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題を解消したもので、身体の洗浄を行う洗浄液を皮膚面に対して優しく噴射すると共に、身体皮膚面に接触させた洗浄済水を外部へ漏水させることなく回収することができる身体洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の身体洗浄装置は、身体皮膚面を洗浄する洗浄液を貯留する給水部、該給水部の洗浄液を身体皮膚面に供給する洗浄アダプタ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引し貯留する排水部とからなり、前記洗浄アダプタは操作者が把持する把持部、洗浄液を皮膚面に噴射する噴射口と洗浄後の廃液を吸引除去する吸引口とを有するノズル本体とからなり、前記把持部には操作者が操作する真空度調節スイッチ、水量調節スイッチが設けられている。
【0010】
本発明の第二の身体洗浄装置は、身体皮膚面を洗浄する洗浄液を貯留する給水部、該給水部の洗浄液を配水ポンプにより搬出し身体皮膚面に供給する洗浄アダプタ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引装置により吸引し貯留する排水部とからなり、前記洗浄アダプタは操作者が把持する把持部、洗浄液を皮膚面に噴射する噴射口と洗浄後の廃液を吸引除去する吸引口とを有するノズル本体とからなり、前記把持部には操作者が操作する真空度調節スイッチ、水量調節スイッチが設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の身体洗浄装置は、給水部の洗浄液を身体皮膚面に供給するので身体皮膚面の洗浄を行う洗浄液を皮膚面に対して優しく噴射することができ、皮膚面を洗浄した廃液を排水部で吸引するので外部へ漏水させることなく回収することができる。
また、配水ポンプと吸引ポンプとを別々に設けることで洗浄液の供給量、廃液の吸引力を洗浄アダプタの把持部で操作でき、洗浄箇所の皮膚の状態によって適宜に配水量、廃液吸引量の調整が手元で容易にでき、従ってベッド等に寝かせたままでの身体洗浄あるいは衣服を着用しているままでの身体の部分的洗浄が可能となる優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】身体洗浄装置の一実施形態を示す説明図である。
【図2】洗浄アダプタの一実施形態を示す断面図である。
【図3】洗浄手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、図示した一実施形態により詳細に説明する。
図1は本発明身体洗浄装置の全体像を示す説明図で、身体洗浄装置は人体の皮膚面を洗浄する石鹸水、消毒液等の洗浄液やすすぎの水等の洗浄水(以下これらを洗浄液という)11を貯留するとともに該洗浄液11を皮膚面に搬送供給する給水部1、該給水部1から身体皮膚面に供給された洗浄液11で皮膚を洗浄する洗浄アダプタ2、皮膚面を洗浄した廃液を吸引し貯留する排水部3とからなっている。
【0014】
給水部1
給水部1は所定量の洗浄液11を貯留する洗浄液タンク12、配水ポンプ13、必要により洗浄液11を暖める電熱器あるいは熱交換器等からなる加温装置14とで構成されている。
洗浄液タンク12内の洗浄液11は該タンク12とアダプタ2とを接続する給水配管15によりアダプタ2へ供給される。洗浄液11をアダプタ2に送る方法としては、後述する排水部3の吸引力によって吸い上げる方法もあるが、本実施形態では給水ポンプ13を用いて供給する。給水ポンプ13の操作は後述するアダプタ2の把持部21に設けた水量調節スイッチ213により行う。水量の調節は水量調節スイッチ213を操作して配水ポンプ13の出力を制御し配水量を調整する。
洗浄液11は皮膚に直接当たるため特に冬場は冷たく感じる場合がある。そのようなときには加温装置14、例えばヒータにより洗浄液11を温めて供給することが好ましい。
【0015】
洗浄アダプタ2
洗浄アダプタ2は把持部21とノズル本体22とで構成されている。把持部21とノズル本体22とは一体に成型してもよく、別々に成型して組み立てるように構成しても良い。
図2は洗浄アダプタ2の一実施形態を示す断面図で、把持部21には洗浄液11の供給通路211と排水通路212とが設けられ、把持部表面には給水量を制御する水量調節スイッチ213、ノズル本体内部の真空度と廃液回収強度を調整する吸引強さ(真空度)調節スイッチ(以下真空度調節スイッチという)214とが設けられている。また、後述する吸引装置32の出力が強く、真空度調節スイッチ214の操作のみでは吸引の強さの調整が困難な場合はエアーコントロールスイッチ215を操作し、外気を取り込むことで真空度を調整するようにしても良い。
【0016】
ノズル本体22は例えば円錐形あるいは長方円錐形で、例えばお椀を伏せたような形状に成型されており、お椀の淵が人体の皮膚面に当接するように構成され、お椀の淵の約半周部分には前記洗浄液11の供給通路211と連通する洗浄液噴射口221が設けられ、お椀形状の中心部分(頂上部分)には前記排水通路212と連通する廃液回収口222が設けられている。洗浄液噴射口221はお椀形状の中心部方向で皮膚面に洗浄液が噴射されるような角度で穿設され、口の大きさや形状により噴水量や噴水角度を調整する。この噴射口221から皮膚面に噴射された洗浄液11は皮膚面に触れてから減圧されている廃液回収口222に吸い込まれ排除される。
ノズル本体22は直接皮膚に接触する。このため、予め適温に保温し、或いはノズル本体にヒータを内蔵させて暖める等の工夫を施すと良い。
【0017】
ノズル本体22のお椀状の淵は人体の皮膚に密着するように構成しても良いが、後述する排水部3の吸引強度によっては皮膚に密着させると吸引力により皮膚を吸い込み、皮膚を損傷する恐れがある。排水部3の吸引力を調整して洗浄排水を十分に回収できる程度の吸引力に調整することは皮膚の柔らかさ、洗浄部位の形状等々で種々変わるためその調整が煩雑となる。そのため、お椀形状の淵で噴射口を設けていない側を少し削りとり、空気導入部を設けると、皮膚の吸い込みを緩和し、洗浄済み廃液を十分に排水できる構成とすることができ好ましい。
【0018】
なお、把持部21とノズル本体22とを分離可能とし、かつノズル本体22を、噴射口221を有する噴射部分222と減圧部分を構成する減圧部223とに別けて成型すると、噴射口の大きさを変えて洗浄部分(皮膚)の汚れ等により適した噴射部分222を適宜交換することが可能となって、被洗浄者の満足度を増すことができ、また、皮膚に接する部分を簡単に洗浄、消毒できるので、衛生的にも満足できるものとなる。
【0019】
排水部3
排水部3は皮膚面を洗浄した廃液を吸引回収し貯留する排水タンク31と、真空装置等の吸引装置32とからなる。
排水タンク31はタンク内の廃水33の量が分かるように例えば透明な密封可能なプラスチック容器を採用する。或いは液面計を付属させ、水量を自動的に或いは目視で確認できるようにし、廃液が溢れるのを予防するように構成することが好ましい。タンク31は廃液を廃棄処理できれば良く、硬質のもの、或いは真空にしてもしぼまない補強を施した可撓性の袋状のもの等を採用することができる。タンク31は廃水33を後処理するのに適した大きさに設計することが好ましい。
【0020】
排水タンク31と前記洗浄アダプタ2の把持部22に設けた排水通路212とはフレキシブル配管35で連結されている。即ち、吸引装置32を作動させるとタンク31内が減圧され、この減圧がノズル本体22のお椀形状内部を減圧することで洗浄廃水を吸い上げ、廃水をタンク31内に導くように構成されている。
排水タンク31内に回収される廃液33は体を洗浄した液体であるために汚染されている。例えば排便後の肛門近辺の洗浄時には、汚物を含む廃水が回収される。そのため廃水は臭気を伴い、便等が混入されてくる。これらの臭気、汚物は周辺の環境を害する恐れがあるため、排水タンク31に汚物対策としてタンク内に例えばバイオ剤36を添加して分解し、或いは紫外線照射装置37により紫外線を照射して分解する等の処置を加え、環境を害さないような処理の元で外部に廃棄する。また、吸引装置32の排ガスにも汚物等の臭いが混ざるために、排気口に消臭装置(例えば活性炭)35を設置する。
【実施例】
【0021】
次に、本発明の身体洗浄装置の操作(実施例)に付き図3を参照して説明する。
ステップ1(ST1)
洗浄液タンク12に例えば水、石鹸水、消毒液等、人体を洗浄する洗浄液11を供給する。冬場、或いは温水を望まれるときは加温装置14を作動させて洗浄液11を加温する。
ステップ2(ST2)
洗浄アダプタ2を洗浄する皮膚に接触させる。アダプタ2も予め皮膚に触れて冷たく感じない程度に保温しておくことが好ましい。
【0022】
ステップ3(ST3)
把持部21の水量調節スイッチ213と真空度調節スイッチ214を操作して、配水ポンプ13と吸引装置32を作動させ、洗浄液11を洗浄アダプタ2のノズル本体22先端に設けた洗浄液噴射口221へ導く。
ステップ4(ST4)
洗浄液11が洗浄液噴出口221から噴射したならばその水量、勢いを水量調節スイッチ213と真空度調節スイッチ214を操作して適量に調整し、また、洗浄アダプタ2の角度を調節して真空度を調節する。
なお、予めこの水量調整と真空度調整を事前に行い、被洗浄者の皮膚に洗浄アダプタ2を接触させるときには水量、真空度ともに最適な状態にしておくことも可能である。
【0023】
ステップ5(ST5)
洗浄アダプタ2の洗浄液噴出口221から噴射される洗浄液11で被洗浄者の皮膚を洗浄する。このときアダプタ2の内部は吸引装置32により減圧されているので、洗浄液11は被洗浄者の皮膚に触れた後排水通路212方向に吸引され、洗浄アダプタ2から漏れることなく廃水タンク31へと導かれ、廃水タンク31に貯留される。
被洗浄者に対しては、皮膚の汚れ具合によって洗浄液11の噴射量や噴射の勢いを調整する。即ち、排泄物等で汚れの酷い箇所に対しては水量調節スイッチ213を操作して水量を多くするとともに、真空度調節スイッチ214を操作して真空度を上げ、排泄物等を除去し、肌を清潔に洗浄する。一方、比較的汚れの少ない皮膚については水量調節スイッチ213を調整して水量を絞り、真空度調節スイッチ214を操作して肌への刺激を弱める。ただし、いずれの洗浄方法においても洗浄液11を洗浄アダプタ2から漏らすことなく水量調節スイッチ213と真空度調節スイッチ214を操作することは言うまでもない。
【0024】
ステップ6(ST6)
被洗浄者の皮膚の洗浄を終えたなら、必要により綺麗な洗浄水で被洗浄者の皮膚を上記洗浄手順と同様にして洗浄し、その後、乾いたタオル等で皮膚を拭き、或いはドライヤー等で乾燥し、洗浄を完了する。
ステップ7
被洗浄者の皮膚を洗浄した洗浄廃液は廃水タンク31へ貯留される。この廃液は必要によりバイオ剤36等を加え、或いは紫外線装置37等で汚物を分解し、環境にやさしくして下水等へ廃棄する。
【0025】
上述したように本発明の身体洗浄装置は、給水部の洗浄液を配水ポンプにより搬出し身体皮膚面に供給するので身体皮膚面の洗浄を行う洗浄液を皮膚面に対して優しく噴射することができ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引ポンプにより吸引するので外部へ漏水させることなく回収することができる。
また、配水ポンプと吸引ポンプとを別々に設けたので洗浄液の供給量、廃液の吸引力を洗浄アダプタの把持部で操作でき、洗浄箇所の皮膚の状態によって適宜に配水量、廃液吸引量の調整が洗浄アダプタ2の把持部21に設けた水量調節スイッチ213、真空度調節スイッチ214、必要によりエアーコントロールスイッチでにより手元で容易にでき、従ってベッド等に寝かせたままでの身体洗浄あるいは衣服を着用したままでの身体の部分的洗浄が可能となる優れた効果を有するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 給水部
2 洗浄アダプタ
3 排水部
21 把持部
22 ノズル本体
221 洗浄液噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体皮膚面を洗浄する洗浄液を貯留する給水部、該給水部の洗浄液を身体皮膚面に供給する洗浄アダプタ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引し貯留する排水部、とからなり、
前記洗浄アダプタは操作者が把持する把持部、洗浄液を皮膚面に噴射する噴射口と洗浄後の廃液を吸引除去する吸引口とを有するノズル本体、とからなり、
前記把持部には操作者が操作する真空度調節スイッチ、水量調節スイッチが設けられている身体洗浄装置。
【請求項2】
身体皮膚面を洗浄する洗浄液を貯留する給水部、該給水部の洗浄液を配水ポンプにより搬出し身体皮膚面に供給する洗浄アダプタ、皮膚面を洗浄した廃液を吸引装置により吸引し貯留する排水部、とからなり、
前記洗浄アダプタは操作者が把持する把持部、洗浄液を皮膚面に噴射する噴射口と洗浄後の廃液を吸引除去する吸引口とを有するノズル本体、とからなり、
前記把持部には操作者が操作する真空度調節スイッチ、水量調節スイッチが設けられている身体洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−273945(P2010−273945A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130778(P2009−130778)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(509152552)株式会社コバヤシ精密工業 (1)
【Fターム(参考)】