説明

身体着用物品

【課題】面ファスナーのフック部材により着用可能であって、フック部材が止着する部分であっても柔軟性や伸縮性が阻害されにくく、フック部材による止着を繰り返しても肌触りが良好に維持されやすい身体着用物品を提供する。
【解決手段】織布または編布から構成される基材シート2と、基材シート2上に糸が縫い付けられて形成されるステッチ部5,6と、面ファスナーのフック部材3,4とを有する身体着用物品1であって、ステッチ部5,6を構成する糸は一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有し、フック部材3,4をステッチ部5,6の糸に係合することにより着用可能である身体着用物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつカバー、ショートパンツ、ズボン、ジャケット、手袋等の身体着用物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、面ファスナーのフック部材が設けられているおむつカバーが知られている。例えば、特許文献1には、前後方向の後方部から幅方向に延在する右ウェスト部と左ウェスト部と、前後方向の前方部から幅方向に延在する右フラップ部と左フラップ部を有し、右ウェスト部と左ウェスト部の少なくとも一方、および右フラップ部と左フラップ部に面ファスナーのフック部材が設けられたおむつカバーが開示されている。このようなおむつカバーは、左右ウェスト部をフック部材により着用者の腰回りに固定し、左右フラップ部をフック部材により着用者の腹側に固定して着用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−42863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
面ファスナーのフック部材は一般に、面ファスナーのループ部材や、表面にループ構造を有する部材に止着して用いられる。しかし、面ファスナーのループ部材はある程度の剛性を有するため、身体着用物品においては、ループ部材が設けられた部分で柔軟性や伸縮性が阻害され、フィット性が低下するおそれがある。また、身体着用物品の基材となるシート部材にフック部材を係合させると、シート部材の表面が毛羽立ったりして、シート部材が損傷するおそれがある。その結果、身体着用物品の肌触りが低下するおそれがある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、面ファスナーのフック部材により着用可能であって、フック部材が止着する部分であっても柔軟性や伸縮性が阻害されにくく、フック部材による止着を繰り返しても肌触りが良好に維持されやすい身体着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の身体着用物品とは、織布または編布から構成される基材シートと、基材シート上に糸が縫い付けられて形成されるステッチ部と、面ファスナーのフック部材とを有し、ステッチ部を構成する糸は一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有し、フック部材をステッチ部の糸に係合することにより着用可能であるところに特徴を有する。本発明の身体着用物品は、基材シート上にステッチ部が形成され、ステッチ部を構成する糸に面ファスナーのフック部材が係合するため、基材シートがステッチ部で柔軟性や伸縮性が阻害されにくくなり、フィット性が良好となる。また、基材シートがフック部材により損傷を受けにくく、フック部材による止着を繰り返しても肌触りが良好に維持されやすい。
【0007】
ステッチ部を構成する糸は弾性糸であることが好ましい。ステッチ部の糸として弾性糸を用いれば、ステッチ部が形成された部分で身体着用物品の伸縮性が高められる。
【0008】
ステッチ部は、帯状に設けられていることが好ましい。この場合、身体着用物品にステッチ部を設けることが容易になる。例えば、身体着用物品を製造機械によりライン生産するような場合、ステッチ部が帯状であれば身体着用物品を効率的に製造することが容易になる。
【0009】
ステッチ部では、ステッチ部を構成する1または複数の糸により閉領域(ループ)が形成されていることが好ましい。ステッチ部を構成する糸により閉領域(ループ)が形成されていれば、いずれの方向からでもフック部材をステッチ部の糸に係合させやすくなる。さらにこの場合、閉領域の最大面積が、基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間の面積よりも大きくなることが好ましい。このように閉領域が形成されれば、ステッチ部が基材シートよりも糸の密度が粗に配されることとなり、フック部材が基材シートよりもステッチ部に優先的に係合しやすくなる。
【0010】
ステッチ部では、ステッチ部を構成する糸が波形状に縫い付けられていることも好ましい。ステッチ部を構成する糸が波形状に縫い付けられていれば、糸が規則的に様々な方向に延びながらステッチ部を帯状に設けることができる。従って、フック部材をいずれの方向からでもステッチ部の糸に係合させやすくなる。さらにこの場合、波形の振幅および周期が、基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間長さよりも大きくなることが好ましい。このように波形状が形成されれば、ステッチ部が基材シートよりも糸の密度が粗に配されることとなり、フック部材が基材シートよりもステッチ部に優先的に係合しやすくなる。
【0011】
ステッチ部を構成する糸は、基材シートの織布または編布を構成する糸より単位長さ質量が大きいことが好ましい。この場合、フック部材がステッチ部を構成する糸に係合しても、ステッチ部の糸が破断しにくくなる。
【0012】
本発明の身体着用物品はおむつカバーに好適に適用できる。おむつカバーは着用者へのフィット性や伸縮性が特に求められるため、本発明の身体着用物品として好適に適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の身体着用物品は、基材シート上にステッチ部が形成され、ステッチ部を構成する糸に面ファスナーのフック部材が係合するため、基材シートがステッチ部で柔軟性や伸縮性が阻害されにくくなり、フィット性が良好となる。また、基材シートがフック部材により損傷を受けにくく、肌触りが良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の身体着用物品の一実施態様としてのおむつカバーを外面側から見た平面図を表す。
【図2】図1に示したおむつカバーを内面側(肌面側)から見た平面図を表す。
【図3】図1に示したおむつカバーの着用方法の例を表す。
【図4】図1に示したおむつカバーの着用時の形状を表す。図4(a)は着用者の前側から見たおむつカバーを表し、図4(b)は着用者の後側から見たおむつカバーを表す。
【図5】ステッチ部の形成例を表す。
【図6】ステッチ部の形成例を表す。
【図7】図2に示したおむつカバーの右フラップ部に設けられるステッチ部の変形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の身体着用物品は、織布または編布から構成される基材シートと、基材シート上に糸が縫い付けられて形成されるステッチ部と、面ファスナーのフック部材を有する。本発明の身体着用物品は、フック部材をステッチ部の糸に係合することにより着用可能となる。本発明の身体着用物品は、例えば、織布または編布に面ファスナー(フック・ループ・ファスナー)のフック部材とループ部材が設けられ、身体に着用可能な物品に適用可能であり、このような物品においてループ部材がステッチ部に置き換えられるものである。身体着用物品としては、例えば、おむつカバー、ショートパンツ、ズボン、ジャケット、手袋等が挙げられる。特に、本発明の身体着用物品は、肌触りが良好で身体の凹凸に対する追従性が良いことから、着用者の肌に直接触れるような着用物品に好適に適用できる。
【0016】
基材シートは、織布または編布から構成されるものであれば、特に限定されない。基材シートが織布または編布から構成されることにより、身体着用物品は、基材シートが使用される部分で伸縮性を有することとなる。従って、本発明の身体着用物品は、基材シートを引っ張りながら着用することにより、身体へのフィット性を高めることが容易になる。
【0017】
基材シートは、身体着用物品の全部の領域に存在してもよく、身体着用物品の一部の領域に存在するものでもよい。しかし、少なくともステッチ部が形成される部分には基材シートが存在する。
【0018】
基材シートを構成する織布の織り方は特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。基材シートを構成する編布の編み方も特に限定されず、例えば、平編、ゴム編、両面編、ハーフ編、パワーネット編、ラッセル編等が挙げられる。
【0019】
織布または編布を構成する繊維(具体的には、織布または編布を形成する糸を構成する繊維)の材質は特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維;ビスコース等の半合成繊維;綿、羊毛、絹等の天然繊維を用いればよい。また、合成繊維として複合繊維を用いてもよい。さらに、織布または編布を構成する糸として複合糸を用いてもよい。
【0020】
基材シート上には糸が縫い付けられてステッチ部が形成されている。ステッチ部では、ステッチ部を構成する糸により所定のパターンや模様が形成されている。ステッチ部は、いわば面ファスナーのループ部材の代替として設けられる。つまり、本発明の身体着用物品は、面ファスナーのフック部材を、ステッチ部を構成する糸に係合することにより、着用することができる。
【0021】
例えば、織布または編布から構成される基材シートに面ファスナーのループ部材が設けられる場合、ループ部材が設けられた部分で基材シートの柔軟性や伸縮性が阻害されて、当該部分で身体へのフィット性が低下するおそれがある。また、織布または編布はそれ自体が面ファスナーのフック部材を係合し得るが、この場合、基材シートに直接フック部材を係合することで基材シートの表面が毛羽立ったりして、基材シートが損傷するおそれがある。その結果、身体着用物品の肌触りが低下するおそれがある。しかし、本発明の身体着用物品は基材シート上にステッチ部が形成され、ステッチ部を構成する糸に面ファスナーのフック部材を係合するため、基材シートがステッチ部で柔軟性や伸縮性が阻害されにくくなるとともに、基材シートがフック部材により損傷を受けにくくなる。従って、本発明の身体着用物品は、着用者へのフィット性と肌触りが良好なものとなる。
【0022】
ステッチ部の糸を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維;ビスコース等の半合成繊維;綿、羊毛、絹等の天然繊維を用いることができる。
【0023】
ステッチ部の糸としては弾性糸であることが好ましい。ステッチ部の糸として弾性糸を用いれば、基材シートの伸縮性と相まって、ステッチ部が形成された部分で身体着用物品の伸縮性が高められる。弾性糸としては糸状のエラストマーを用いればよく、例えば、天然ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン等の合成ゴム;ポリウレタン、ポリエーテル・ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成樹脂等を用いればよく、特にポリウレタン(ポリウレタン糸)を用いることが好ましい。
【0024】
弾性糸は単一成分から構成されるものに限定されず、複合糸であってもよい。弾性複合糸としては、ポリウレタン糸を含む複合糸を用いることが好ましい。このような複合糸は、ポリウレタン糸由来の弾性が発現するとともに、肌触りが改善され、好ましい。ポリウレタン糸を含む複合糸としては、ポリウレタン糸と綿等の天然繊維との複合糸を用いることが好ましく、ポリウレタン糸が綿等の天然繊維で被覆されたコアスパンヤーンを用いることがより好ましい。
【0025】
ステッチ部では、ステッチ部を構成する糸が一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有する。すなわち、ステッチ部を構成する糸は、一方向のみに延びる直線状には設けられない。ステッチ部の糸は、例えば、基材シート上に曲線状に設けられたり、2以上の直線が組み合わされた形状に設けられたり、曲線と直線が組み合わされた形状に設けられたり、不連続点を有する曲線状に設けられたりする。なお、ステッチ部の糸が曲線状に設けられる場合は、曲線の接線が複数形成されるため、ステッチ部の糸が、曲線の接線として一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有する。ステッチ部の糸が一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有していれば、フック部材がステッチ部の糸に係合しやすくなる。すなわち、身体着用物品を着用する際、フック部材がステッチ部に対向する方向に関わらず、フック部材がステッチ部の糸に係合しやすくなる。
【0026】
身体着用物品は面ファスナーのフック部材を有している。フック部材は、ステッチ部が形成される基材シートに取り付けられてもよく、ステッチ部が形成される基材シートとは別の部材に取り付けられてもよい。すなわち、フック部材は、身体着用物品に設けられる限り、設置対象となる部材や設置箇所は特に限定されない。
【0027】
フック部材としては、錨形や鉤形やきのこ形等の形状のフックを多数表面に有する部材を採用すればよい。フック部材は、例えば、平面状の基盤と、基盤から突出する複数のフックを有し、基盤は、フックが設けられる面と反対側の面で、基材シートやその他の部材に固定されている。
【0028】
フック部材としてはきのこ形のフックを有するものが好ましい。この場合、身体着用物品を着用する際、フック部材がステッチ部に対向する方向に関わらず、フック部材がステッチ部の糸に係合しやすくなる。また、フック部材をステッチ部から脱離させる際、フック部材がステッチ部の糸に引っ掛かることによる糸のたるみが生じにくくなる。きのこ形のフックとしては、基盤から突出するピンと、ピンの頂部に設けられたキャップを有し、キャップがピンよりも断面(ピンの軸に対し垂直な面)が大きく形成されているフックが挙げられる。
【0029】
本発明の身体着用物品について、おむつカバーを例にとり、図面を参照して説明する。図1は、本発明の身体着用物品として、おむつカバーを一方面側(外面側)から見た平面図を表す。図2は、図1のおむつカバーを他方面側(内面側;肌面側)から見た平面図を表す。
【0030】
内面側とはおむつカバーを着用した際の着用者側を意味し、外面側とはおむつカバーを着用した際の着用者とは反対側すなわち外側を意味する。また、内面とは、おむつカバーの内面側の面を意味し、外面とは、おむつカバーの外面側の面を意味する。
【0031】
図では、矢印xを幅方向、矢印yを前後方向と定義付ける。前後方向yとは、おむつカバーを着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。幅方向xとは、おむつカバーと同一面上にあり、前後方向yと直交する方向を意味する。幅方向xは、おむつカバーを着用者が着用した際、着用者の左右方向に相当する。
【0032】
おむつカバー1は、前後方向yに前方部Fと後方部Bとこれらの間に位置する中間部Mとを有する。前方部Fとは、おむつカバー1の前後方向yの一方端に形成され、おむつカバー着用時に着用者の腹側に当てる部分を意味する。後方部Bとは、おむつカバー1の前後方向yの他方端に形成され、おむつカバー着用時に着用者の背側に当てる部分を意味する。中間部Mとは、前方部Fと後方部Bとの間に位置し、着用者の股間に当てる部分を意味する。なお、前方部F、中間部M、後方部Bは、後記する右ウェスト部RW、左ウェスト部LW、右フラップ部RF、左フラップ部LFを含まない部分と規定する。図1,2では、前方部F、中間部M、後方部B、右ウェスト部RW、左ウェスト部LW、右フラップ部RF、左フラップ部LFを、便宜的に二点破線で区分して表示している。
【0033】
前方部F、中間部M、および後方部Bは、例えば、それぞれおむつカバー1の前後方向yの長さの30%、30%、および40%の領域を占める。図1,2に示されるおむつカバー1では、前方部F、中間部M、および後方部Bは、このような割合で分割されている。
【0034】
おむつカバー1は、後方部Bから幅方向xに延在する右ウェスト部RWと左ウェスト部LWとを有する。右ウェスト部RWと左ウェスト部LWは、おむつカバー1の着用時にそれぞれ着用者の右側と左側の腰回りに当てる部分である。おむつカバーを外面側から見た図1では、図面の右側がおむつカバーの着用時に着用者の右側に位置し、図面の左側がおむつカバーの着用時に着用者の左側に位置する。おむつカバーを内面側から見た図2では、図面の右側がおむつカバーの着用時に着用者の左側に位置し、図面の左側がおむつカバーの着用時に着用者の右側に位置する。
【0035】
おむつカバー1は中間部Mが最も幅方向xに狭く形成される。右ウェスト部RWと左ウェスト部LWは、中間部Mの最も幅狭な部分の外縁より幅方向xの外方に位置する部分に相当する。右ウェスト部RWと左ウェスト部LWは、少なくとも後方部Bから幅方向xに延在していればよく、さらに中間部Mから幅方向xに延在していてもよい。おむつカバー1は、着用時、右ウェスト部RWと左ウェスト部LWと後方部Bとで着用者の腰回りを覆う。おむつカバー1は、着用の際、右ウェスト部RWと左ウェスト部LWが幅方向xに重なる部分の長さが、着用者の腰回りの周長の10%〜60%(より好ましくは、20%〜50%)となるように着用することが好ましい。
【0036】
おむつカバー1は、前方部Fに、幅方向xに延在する右フラップ部RFと左フラップ部LFとを有する。右フラップ部RFと左フラップ部LFは、中間部Mの最も幅狭な部分の外縁より幅方向xの外方に位置する部分に相当する。右フラップ部RFと左フラップ部LFは、少なくとも前方部Fから幅方向xに延在していればよく、さらに中間部Mから幅方向xに延在してもよい。右フラップ部RFと左フラップ部LFは、おむつカバー1の着用時に、前方部Fとともに着用者の腹部を覆う部分である。右フラップ部RFと左フラップ部LFは、おむつカバー1の着用時、着用者の背側にまで達するものであってもよい。
【0037】
おむつカバー1は、前方部F、中間部M、後方部B、右ウェスト部RW、左ウェスト部LW、右フラップ部RF、左フラップ部LFがそれぞれ基材シート2から構成されている。基材シート2は織布または編布から構成されている。
【0038】
右ウェスト部RWと左ウェスト部LWには、ウェスト用フック部材3が設けられることが好ましい。図1,2では、右ウェスト部RWの内面にウェスト用フック部材3Rが設けられ、左ウェスト部LWの外面にウェスト用フック部材3Lが設けられている。おむつカバー1は、ウェスト用フック部材3により右ウェスト部RWと左ウェスト部LWを連結して、左右ウェスト部RW,LWを着用者の腰回りに固定することができる。
【0039】
図1,2のようにウェスト用フック部材3が設けられる場合、おむつカバー1の外面にウェスト用フック部材3Rを止着するためのステッチ部を設け、おむつカバー1の内面にウェスト用フック部材3Lを止着するためのステッチ部を設けることが好ましい。図1,2では、左ウェスト部LWの外面にウェスト用フック部材3Rを止着するためのステッチ部5Lが3つ並んで設けられ、右ウェスト部RWの内面にウェスト用フック部材3Lを止着するためのステッチ部5Rが3つ並んで設けられている。
【0040】
図3には、図1、2に示すおむつカバーの着用方法の一例を示す。左右ウェスト部RW,LWを着用者の腰回りに固定するには、後方部Bを着用者の背側に当てながら、右ウェスト部RWを着用者の右側の腰回りに当て、左ウェスト部LWを着用者の左側の腰回りに当てる。次いで、左右ウェスト部RW,LWを幅方向xに引っ張りながら、左ウェスト部LWのウェスト用フック部材3Lをステッチ部5Rに係合し、右ウェスト部RWのウェスト用フック部材3Rをステッチ部5Lに係合する(図3(a),(b)参照)。その結果、左右ウェスト部RW,LWを着用者の腰回りに固定することができる。
【0041】
図1,2では、右ウェスト部RWと左ウェスト部LWの両方にウェスト用フック部材3が設けられているが、ウェスト用フック部材3は右ウェスト部RWと左ウェスト部LWの少なくとも一方に設けられればよい。また、ウェスト用フック部材3が設けられるおむつカバー1の面(内外面)についても、適宜変更可能である。ウェスト用フック部材3を止着するためのステッチ部5は、ウェスト用フック部材3の設置数や設置位置に応じて、設置数や設置位置を調整すればよい。
【0042】
右フラップ部RFと左フラップ部LFには、フラップ用フック部材4が設けられることが好ましい。図1,2では、右フラップ部RFの内面にフラップ用フック部材4Rが設けられ、左フラップ部LFの内面にフラップ用フック部材4Lが設けられている。おむつカバー1には、右ウェスト部RWの外面にフラップ用フック部材4Rを止着するためのステッチ部6Rが3つ並んで設けられ、左ウェスト部LWの外面にフラップ用フック部材4Lを止着するためのステッチ部6Lが3つ並んで設けられている。
【0043】
左右フラップ部RF,LFを装着するには、図3に示すように、左右ウェスト部RW,LWが着用者の腰回りに固定された状態で、前方部Fと左右フラップ部RF,LFを着用者の股間を通して着用者の腹側に持ってくる。次いで、左右フラップ部RF,LFを幅方向xに拡張させながら着用者の上方向に引っ張り、右フラップ部RFのフラップ用フック部材4Rをステッチ部6Rに係合し、左フラップ部LFのフラップ用フック部材4Lをステッチ部6Lに係合する(図3(b),(c)参照)。その結果、おむつカバー1を着用することができる。
【0044】
図4には、おむつカバー1の着用時の形状を示す。図4(a)は着用者の前側から見たおむつカバーを表し、図4(b)は着用者の後側から見たおむつカバーを表す。図3,4では、左右フラップ部RW,LWのフラップ用フック部材4を着用者の背側に接合しているが、フラップ用フック部材4は着用者の腹側に接合するものでもよい。この場合、ステッチ部6は着用者の腹側に位置するようになる。
【0045】
おむつカバー1は、着用者から排泄された尿等を吸収するための吸収体を、着用者の股間に固定するために使用される。従って、おむつカバー1は、伸張させながら着用することで、着用者へのフィット性を高めることが好ましい。おむつカバー1は、フック部材3,4を止着させる部分にステッチ部5,6を設けているから、ループ部材を設ける場合と異なり、ステッチ部5,6においても基材シート2の伸縮性が阻害されにくく、着用者へのフィット性が高めることができる。また、おむつカバー1は、ステッチ部5,6でも基材シート2の柔軟性が確保され、フック部材3,4により基材シート2が損傷を受けにくくなるため、肌触りが良くなり、身体の凹凸に対する追従性も良くなる。
【0046】
図1,2に示したおむつカバーではステッチ部は前後方向に延びる帯状に設けられているが、ステッチ部が帯状に設けられていれば身体着用物品にステッチ部を設けることが容易になるため好ましい。例えば、身体着用物品を製造機械によりライン生産するような場合、ステッチ部が帯状であれば身体着用物品を効率的に製造することが容易になる。帯状としては、例えば、所定幅で一方向に延びる形状が示される。
【0047】
ステッチ部は、好ましくは、フック部材をステッチ部に係合する際のフック部材とステッチの対向方向に対し、略垂直方向に延びる帯状で設けられる。身体着用物品を着用した際、フック部材とステッチ部には互いの対向方向に対する剥離力が作用するが、ステッチ部がこの対向方向に対し略垂直方向に延びる帯状で設けられれば、剥離力に対向するフック部材とステッチ部の接地長が長くなり、フック部材がステッチ部に強固に止着されやすくなる。図1,2に示したおむつカバー1では、ステッチ部が、フック部材をステッチ部に係合する際のフック部材とステッチ部の対向方向に対し、略垂直方向に延びる帯状設けられている。
【0048】
ステッチ部は、図1,2に示すように、帯状の形状が複数並んで設けられることが好ましい。この場合、ステッチ部が形成される領域を広く設けてフック部材の止着を容易にしつつ、ステッチが形成された部分での基材シートの柔軟性を確保しやすくなる。帯状のステッチ部が複数並んで設けられる場合、隣接するステッチ部の間隔(最も近接する部分での間隔)は0.5mm以上15mm以下(より好ましくは、1mm以上10mm以下)が好ましい。
【0049】
ステッチ部を構成する糸の配設パターンの好ましい例について説明する。ステッチ部では、ステッチ部を構成する1または複数の糸により閉領域が形成されていることが好ましい。なお、閉領域とは、基材シートを平面視した状態で、ステッチ部を構成する糸により囲まれた領域を意味する。すなわち、ステッチ部ではステッチを構成する1または複数の糸によりループが形成されていることが好ましい。この際、ループは複数の糸が協同して形成されるものでもよい。つまり、ループの一部は糸が交差または絡み合って形成されてもよい。ステッチ部を構成する糸により閉領域(ループ)が形成されていれば、フック部材をいずれの方向からでもステッチ部の糸に係合しやすくなる。
【0050】
図5には、ステッチ部を構成する糸により閉領域が形成され、かつ帯状に設けられたステッチ部の例を示す。図5(a)〜(c)に示したステッチ部の形成例はいずれも、編みと縫い付けが組み合わされ、ステッチ部を構成する糸により閉領域(ループ)が形成されている。そして、所定の基本パターンが一方向に繰り返されて設けられることにより、ステッチ部が帯状に形成されている。図5に示すようなパターンでステッチ部を形成すれば、閉領域を有しかつ帯状のステッチ部を容易に形成することができる。
【0051】
ステッチ部を構成する糸により閉領域が形成される場合、閉領域の最大面積は、基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間の面積よりも大きくなることが好ましい。この場合、ステッチ部が基材シートよりも糸の密度が粗に配され、フック部材が基材シートよりもステッチ部に優先的に係合しやすくなる。
【0052】
最大領域となる閉領域は、基材シートを平面視した状態で、各閉領域の大きさを比較して決定すればよい。ステッチ部が所定の基本パターンが繰り返されて形成される場合は、基本パターンの中で最大面積となる閉領域を決めればよい。図5(a)〜(c)では、斜線で示された領域が最大面積となる閉領域を表す。
【0053】
基材シートの織布を構成する糸間の隙間の面積とは、織布の隣接する経糸と隣接する緯糸で囲まれる領域の面積を意味する。基材シートの編布を構成する糸間の隙間の面積とは、編布を構成する糸により形成されるループおよび当該糸どうしが交わる点または絡み合う点で囲まれる領域の面積を意味する。最大面積となる閉領域は、織布または編布を構成する糸間の隙間のいずれに対しても、面積が大きいことが好ましい。
【0054】
ステッチ部では、ステッチ部を構成する糸が波形状に縫い付けられていることも好ましい。波形状としては、所定の振幅で一方向に延びる形状であれば特に限定されず、例えば、正弦波(複数の正弦波の合成波を含む)、三角波、矩形波、台形波、これらの合成波等が示される。ステッチ部を構成する糸が波形状に縫い付けられていれば、糸が規則的に様々な方向に延びるように、ステッチ部を帯状に設けることができる。従って、フック部材をいずれの方向からでもステッチ部の糸に係合しやすくなる。
【0055】
図6には、波形状に糸が縫い付けられたステッチ部の例を示す。図6(a),(b)に示したステッチ部は、いずれも三角波状に糸が縫い付けられている。図6(a)では三角波の1/4周期(極大値と極小値の間の部分)が3個の縫合片により構成されている。図6(b)では三角波の1/4周期(極大値と極小値の間の部分)が1個の縫合片から構成されている。いずれの場合も、ステッチ部を構成する糸が一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有するようにしつつ、ステッチ部を帯状に設けることが容易になる。
【0056】
ステッチ部を構成する糸が波形状に縫い付けられる場合、波形の振幅および周期は、基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間長さよりも大きくなることが好ましい。この場合、ステッチ部が基材シートよりも糸の密度が粗に配され、フック部材が基材シートよりもステッチ部に優先的に係合しやすくなる。波形が1周期に複数の極大値を有する場合は、波形の極大値間の距離が基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間長さよりも大きいことが好ましい。なお、基材シートの織布を構成する糸間の隙間長さとは、織布の隣接する経糸間の長さおよび隣接する緯糸間の長さのうち長い方を意味する。基材シートの編布を構成する糸間の隙間長さとは、編布を構成する糸により形成されるループで囲まれた閉領域を横断する最大長さを意味する。
【0057】
ステッチ部を構成する糸は、基材シートの織布または編布を構成する糸より単位長さ質量が大きいことが好ましい。この場合、ステッチ部を構成する糸が、基材シートの織布または編布を構成する糸よりも径が太くなりやすくなる。あるいは、ステッチ部を構成する糸が、基材シートの織布または編布を構成する糸よりも強度が増しやすくなる。従って、フック部材がステッチ部を構成する糸に係合しても、ステッチ部を構成する糸が破断しにくくなる。
【0058】
図1,2に示したおむつカバー1では、ウェスト用フック部材3とフラップ用フック部材4はおむつカバー1の左右両側に1つずつ設けられていたが、本発明の身体着用物品では、フック部材は複数に分割されていてもよい。
【0059】
図7には、図2に示したおむつカバー1の右フラップ部RFの拡大図を示すが、図7では図2とは異なるフラップ用フック部材4の配置例を示した。図7に示したフラップ用フック部材4は3つに分割され、各フック部材が角の丸まった三角形状をしている。
【0060】
フック部材が複数に分割されていれば、フック部材が設けられた部分でもおむつカバーが着用者の身体の凹凸に対する追従性が向上しやすくなる。フック部材が複数に分割される場合、隣接するフック部材の間隔(最も近接する部分での間隔)は0.5mm以上15mm以下(より好ましくは、1mm以上10mm以下)が好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1: 身体着用物品(おむつカバー)
2: 基材シート
3,4: フック部材
5,6: ステッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布または編布から構成される基材シートと、
前記基材シート上に糸が縫い付けられて形成されるステッチ部と、
面ファスナーのフック部材を有する身体着用物品であって、
前記ステッチ部を構成する糸は、一方向に延びる部分と他方向に延びる部分を有し、
前記フック部材を前記ステッチ部の糸に係合することにより着用可能であることを特徴とする身体着用物品。
【請求項2】
前記糸が弾性糸である請求項1に記載の身体着用物品。
【請求項3】
前記ステッチ部は、帯状に設けられている請求項1または2に記載の身体着用物品。
【請求項4】
前記ステッチ部では、1または複数の前記糸により閉領域が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の身体着用物品。
【請求項5】
前記閉領域の最大面積が、前記基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間の面積よりも大きい請求項4に記載の身体着用物品。
【請求項6】
前記ステッチ部では、前記糸が波形状に縫い付けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の身体着用物品。
【請求項7】
前記波形の振幅および周期が、前記基材シートの織布または編布を構成する糸間の隙間長さよりも大きい請求項6に記載の身体着用物品。
【請求項8】
前記ステッチ部を構成する糸が、前記基材シートの織布または編布を構成する糸より、単位長さ質量が大きい請求項1〜7のいずれか一項に記載の身体着用物品。
【請求項9】
前記身体着用物品がおむつカバーである請求項1〜8のいずれか一項に記載の身体着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10755(P2012−10755A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147688(P2010−147688)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】