説明

車両、蓄電装置の診断方法、および診断プログラム

【課題】 蓄電装置の診断を容易に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】 車両に搭載される蓄電装置(10)を放電させることにより、蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、蓄電装置の劣化診断を行う前記蓄電装置の診断装置を備える車両であって、複数の負荷(32)と、記憶部(33)と、放電制御部(30)とを有する。複数の負荷は、蓄電装置から放電される電力により動作が可能である。記憶部は、複数の負荷を動作させる順序に関する順序情報を記憶する。放電制御部は、記憶部に記憶された順序情報にしたがって、蓄電装置を放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている蓄電装置を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の電圧を診断開始電圧から診断終了電圧まで放電させ、この間の計測値に基づき二次電池の劣化を診断する方法が知られている。
【0003】
また劣化診断の従来技術として、車載電池の充電を行いながら、車載電池の充電特性を取得し、取得した充電特性とネットワーク上に保存された診断用充電特性とを比較し、車載電池の余寿命を診断する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−064571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、車載電池の充電を行いながら充電特性を取得することを要し、またネットワークを介して診断用の充電特性を取得するための端末が必要となる。よって、診断に際し、車両以外の設備が必要となり、車両のユーザ(例えば車両を購入して使用しているエンドユーザ)が気軽に電池の診断を行うことができない。
【0006】
本発明は、気軽に電池の劣化診断を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明である車両は、車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、蓄電装置の劣化診断を行う蓄電装置の診断装置を備える車両であって、蓄電装置から放電される電力により動作が可能である複数の負荷と、複数の負荷を動作させる順序に関する順序情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された順序情報にしたがって、蓄電装置を放電させる放電制御部と、を有する。
【0008】
記憶部には、複数の順序情報が記憶され、これらの順序情報は、それぞれ負荷の動作順序が異なり、放電制御部は、複数の順序情報のうちの1つの順序情報を取得し、この取得した順序情報にしたがって蓄電装置を放電させる。このようにすることで、複数のバリエーションで診断を行うことができ、様々な態様に応じた診断が可能となる。
【0009】
複数の順序情報のうちの1つは、消費電力の大きい順で定義された順序情報である。この順序情報を用いることで、早い段階で電圧値が診断終了電圧まで降下する。よって、早期に診断を完了させたい場合には有効となる。
【0010】
複数の順序情報のうちの1つは、消費電力の小さい順で定義された順序情報である。この順序情報を用いることで、診断終了電圧までの放電レートが下がる。よって緻密な測定結果が得られ、より詳細な診断結果を得ることができる。
【0011】
複数の順序情報のうちの1つは、ユーザに対する影響が少ない順で定義された順序情報である。この順序情報は、例えば車両の外見や車両の車室から動作が目立たない負荷の順で定義された順序情報である。このようにユーザに対する影響が少ない順で定義された順序情報を用いることで、ユーザは、診断に際して、突然の動作に驚くことなく診断を行うことができる等、ユーザへ診断時動作の便宜を図ることができる。
【0012】
放電制御部は、順序情報にしたがって、順次、負荷を増やすように、負荷の動作を制御することができ、また放電制御部は、順序情報にしたがって、駆動される負荷を順次に切り替えるように負荷の動作を制御することができる。
【0013】
放電制御部は、さらに、劣化診断の結果を車両の車室内に備えられるディスプレイに表示する。診断結果が表示されることで、ユーザは、診断結果を確認して蓄電装置の状況を把握することができる。またユーザは、普段は提示されない蓄電装置の状態を確認できるため、安心、信頼して運転することができる。
【0014】
記憶装置には、蓄電装置の製造直後の容量に関する情報、および蓄電装置の寿命時の容量に関する情報のうちいずれか1つまたは両方の情報が事前に記憶されており、放電制御部は、取得した容量に関する情報と、事前に記憶されている1つまたは両方の情報とを比較することで、蓄電装置の劣化診断を行う。このようにすることで、初期状態からどの程度蓄電装置が使用されているかの診断や、電池寿命までの予測を行うことができる。
【0015】
放電制御部は、車両に搭載されている選択部の操作に応じて、劣化診断を開始することを特徴とする。例えば選択部による操作がスイッチの押下という操作である場合、単純操作で診断が開始されるため、ユーザは、気軽に蓄電装置の診断を行うことができる。
【0016】
本願第2の発明である蓄電装置の診断方法は、車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、蓄電装置の劣化診断を行う蓄電装置の診断方法であって、蓄電装置から放電される電力により動作する複数の負荷の動作順序に関する順序情報を記憶部から取得し、順序情報にしたがって、蓄電装置を放電させる。
【0017】
本願第2の発明である蓄電装置の診断プログラムは、車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、蓄電装置の劣化診断を行う蓄電装置の診断プログラムであって、蓄電装置から放電される電力により動作する複数の負荷の動作順序に関する順序情報を記憶部から取得するステップと、順序情報にしたがって、蓄電装置を放電させるステップと、をコンピュータに実行させる。
【0018】
第2、第3の発明の診断方法、診断プログラムで用いられる各機器やデータは、上記第1の発明の診断装置と同様の構成とすることができ、第2、第3の発明においても、第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
蓄電装置に充電を行いながらの計測値の取得を抑止し、また診断に際しては外部機器を必要としないため、ユーザは気軽に蓄電装置の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の診断装置の構成を示す図である。
【図2】消費電力の小さい順序で負荷の駆動順序を定義した順序情報の一例を示す図である。
【図3】消費電力の大きい順序で負荷の駆動順序を定義した順序情報の一例を示す図である。
【図4】ユーザへの影響を考慮した順序で負荷の駆動順序を定義した順序情報の一例を示す図である。
【図5】診断処理の動作を説明するフローチャートである。
【図6】継続時の放電カーブと、基準となる放電カーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0022】
本実施形態の車両について説明する。図1は、本実施形態の車両に搭載された診断装置のブロック図である。車両は、ハイブリッド自動車、電気自動車であってもよい。ハイブリッド自動車は、車両を走行させる動力源として、後述する組電池に加えて、エンジン又は燃料電池を備えている。電気自動車は、車両を走行させる動力源として、後述する組電池だけを備えている。
【0023】
組電池10は、直列に接続された複数の単電池11を有する。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。単電池11の数は、組電池10の要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。本実施例では、複数の単電池11が直列に接続されているが、組電池10は、並列に接続された複数の単電池11を含んでいてもよい。
【0024】
電圧センサ21は、組電池10の端子間電圧を検出し、検出結果をコントローラ30(放電制御部に相当する)に出力する。本実施形態では、組電池10の端子間電圧を検出しているが、各単電池11の端子間電圧を検出したり、少なくとも2つの単電池11を含む電池ブロックの端子間電圧を検出したりすることもできる。電流センサ22は、組電池10に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。
【0025】
コントローラ30は、車両全体の制御を司る。コントローラ30は、CPU、MPUであってもよいし、これらのCPUなどにおいて実行される処理の少なくとも一部を回路的に実行するASIC回路を含んでもよい。CPUなどの個数は、単数であってもよいし、或いは複数であってもよい。記憶部33は、コントローラ30が所定の処理を行うための各種の情報を格納している。本実施形態では、コントローラ30の外部に記憶部33が設けられるとするが、コントローラ30に内蔵されていてもよい。またコントローラ30は、エンジンコントロールユニット(ECU)であってもよい。
【0026】
組電池10の正極ラインPLには、システムメインリレーSMR−Bが設けられている。システムメインリレーSMR−Bは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。組電池10の負極ラインNLには、システムメインリレーSMR−Gが設けられている。システムメインリレーSMR−Gは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
【0027】
システムメインリレーSMR−Gに対しては、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rが並列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。電流制限抵抗Rは、組電池10を昇圧回路23などと接続するときに、突入電流が流れるのを抑制するために用いられる。
【0028】
組電池10を負荷32と接続するとき、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Bをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、電流制限抵抗Rに電流が流れることになる。次に、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池10および負荷32の接続が完了する。組電池10および負荷32の接続を遮断するとき、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替える。
【0029】
昇圧回路23は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して、組電池10と接続されており、組電池10の出力電圧を昇圧する。昇圧回路23は、昇圧後の電力をインバータ24に出力する。また、昇圧回路23は、インバータ24の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力することができる。本実施形態では、昇圧回路23を用いているが、昇圧回路23を省略することもできる。
【0030】
インバータ24は、昇圧回路23から出力された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ25に出力する。モータ・ジェネレータ25としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータ25は、インバータ24から出力された交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ25によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
【0031】
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ25は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ24は、モータ・ジェネレータ25が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を昇圧回路23に出力する。昇圧回路23は、インバータ24の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力する。これにより、組電池10は、回生電力を蓄えることができる。
【0032】
正極ラインPLおよび負極ラインNLには、DC/DCコンバータ31が接続されている。DC/DCコンバータ31は、組電池10の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を負荷32に出力する。DC/DCコンバータ31は、コントローラ30からの制御信号を受けて動作する。
【0033】
負荷32は、組電池10からの電力を受けて作動することができる電子機器である。負荷32は、例えば、システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pを駆動する回路、エアコン、断熱設備、ランプ、音響設備、車室内のディスプレイ、パワーウィンドウ駆動回路、ドアミラー駆動回路、ワイパー駆動回路等であってもよい。図1では、負荷32は1つのブロックとして示されているが、上記のように、種別の異なる複数の負荷がある。負荷32は、それぞれコントローラ30からの制御信号に応じてオンまたはオフすることができる。また負荷32は、コントローラ30からの制御信号に応じて、出力を調整することができる。
【0034】
記憶部33は、コントローラ30が行う組電池10の診断処理において、負荷32を動作させる手順についての情報(以下、順序情報という)を記憶する。図2乃至図4を参照しながら、記憶部33に記憶される順序情報について説明する。図2の順序情報は、消費電力の小さい順序で負荷32の駆動順序を定義している。消費電力の小さい順序で負荷32を駆動することにより、診断処理に要する時間は長くなるが、寿命診断の診断精度を高めることができる。つまり、消費電力が小さくなることにより、放電レートが下がるため、時々刻々と変化する組電池10の電圧をより正確にモニターすることができる。
【0035】
図3の順序情報は、消費電力の大きい順序で負荷32の駆動順序を定義している。消費電力の大きい順序で負荷32を駆動することにより、図2の駆動順序に従って負荷32を駆動させた場合よりも、寿命診断の精度は低下するが、診断処理に要する時間を短くすることができる。つまり、消費電力が大きくなることにより、放電レートが上がるため、寿命診断の時間を短くすることができる。図4の順序情報は、ユーザへの影響を考慮した順序で負荷32の駆動順序を定義している。ユーザへの影響は、種々の観点から定義でき、車両の外見や車室から動作が目立たない順序で負荷32の駆動順序を定義してもよい。例えば突然パワーウィンドウが動作したり、オーディオが大音量で突然動作したりすると、ユーザが驚くことも考えられる。したがって、ユーザへの影響を考慮して、パワーウィンドウ、オーディオなどの駆動順序を後に設定してもよい。
【0036】
記憶部33に記憶された順序情報は、車両製造時に記憶部33に記憶させておくことができる。また、順序情報は、車両製造後に更新することができる。更新方法は、例えば、ディーラ等に設置されたサーバに蓄積された最新の順序情報をダウンロードし、記憶部33に記憶する方法、或いは可搬型の記録媒体に記憶された最新の順序情報を記憶部33にインストールする方法であってもよい。
【0037】
図1の説明に戻る。選択部34は、診断起動スイッチのオン/オフを検知するとともに、記憶部33に記憶された複数の順序情報のうちいずれの順序情報を用いて負荷32を作動させるかをユーザに選択させるために設けられる。選択部34は、車両に搭載されたディスプレイであってもよい。また、選択部33は、例えば、車両のブレーキを所定時間以上踏みながら、アクセルの所定時間以上の踏み込みを所定回数以上行うなど通常の乗員が行わない特殊な操作を検知することにより、診断開始および順序情報を選択できる方法であってもよい。この場合、選択部34は、アクセル、ブレーキ及びコントローラ30が協同することにより実現される。
【0038】
また記憶部33には、診断用の基準となるデータとして、組電池10の製造直後の放電カーブ、および、寿命時の放電カーブが予め記憶されており、診断が行われた場合、そのとき得られる放電カーブも蓄積される。ただし、診断用の基準となるデータは、組電池10の製造直後の放電カーブ、および、寿命時の放電カーブのうちいずれか一方であってもよい。なお、本実施例での寿命時とは、組電池10が著しく容量劣化した状態を意味し、当業者が適宜設定することができる。
【0039】
診断結果は、車室内のディスプレイ上に表示してもよい。ユーザはこの診断結果を確認することにより、メンテナンスの要否や時期を判断できる。診断結果は、車両外部の機器(例えば、携帯電話)に表示してもよい。
【0040】
次に、図5のフローチャートを参照しながら、コントローラ30が行う診断処理について説明する。尚、図5は、電流積算量を算出し、電流積算量に基づき組電池10の診断を行う実装例が示されている。
【0041】
コントローラ30は、車両のイグニッションスイッチがオンされ、READY−ON状態となったか否かを判別する(ステップS101)。ここで、車両がREADY−ONになると、システムメインリレーSMR−G,SMR−P,SMR−Bがオンされ、組電池10から負荷32に対する電力の供給が可能な状態となる。
【0042】
車両のイグニッションスイッチがオンされ、かつ、READY−ON状態になると、選択部34は、車室内の診断起動スイッチが押下されたかを判定する。(S102)。この診断起動スイッチは、車室内にある物理的なスイッチボタンとするが、車室内のタッチパネル形式のディスプレイに表示されているスイッチボタンのアイコン等であってもよい。また、上記通り特殊な操作を検知してもよい。
【0043】
診断起動スイッチが押下されるまで、ステップS102で待機となる(S102、Noのループ)。診断起動スイッチが押下されている場合(S102、Yes)、選択部34は、この診断起動スイッチの押下に応じて、車室内のディスプレイ上に、図2乃至図4に示す順序情報を選択させる案内画面を表示する。選択部34は、表示した複数の順序情報のうち、いずれかが選択されたか否かを判定する(S103)。また高速診断、詳細診断、ユーザに影響を与えない診断、等のカテゴリを案内画面に表示し、ユーザに選択させてもよい。
【0044】
いずれかの順序情報が選択されるまで、ステップS103で待機となる(S103、Noのループ)。順序情報のうちのいずれかが選択された場合(S103、Yes)、コントローラ30は、各負荷32のオフ操作や、データのイニシャライズ化等、使用部品の初期化を行う(S104)。コントローラ30は、自己診断システムを起動し(S105)、以降、組電池10の診断動作を行う。
【0045】
コントローラ30は、組電池10を放電させる(S106)。例えば、組電池10の電力を、予め規定された負荷32に供給することにより、組電池10を放電させることができる。
【0046】
コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて、組電池10の電圧Vcを取得する。コントローラ30は、検出電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも高いかを判定する(S106A)。劣化診断処理を開始するときには、例えば組電池10が満充電状態となるまで、組電池10を充電しておくなどを事前に行い、組電池10の電圧Vcを、診断開始電圧Vs以上としておくことが好ましい。尚、ステップS106Aで検出電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも低いと判定される場合(S106A、No)、コントローラ30は、組電池10の電圧が診断開始電圧Vsを超えるまで充電制御し(S106B)、再度S106Aの判定を行う。
【0047】
診断開始電圧Vsの値は、適宜設定することができる。本実施形態では、後述するように、組電池10を放電したときの電流積算量を取得するため、電流積算量を取得しやすいように、診断開始電圧Vsは、組電池10のSOCが高い状態にあるときの電圧値に設定しておくことが好ましい。診断開始電圧Vsに関する情報は、記憶部33に記憶させておく。
【0048】
そしてコントローラ30は、検出電圧Vcが開始電圧Vsになるまで組電池10での電力供給を制御する(S106C、S107)。本例では、コントローラ30は、ステップS103で取得される順序情報で最初にエントリされている負荷32に電力が供給されるように制御し(S106C)、検出電圧Vcが開始電圧Vsとなる場合(S107、Yes)、ステップS108に進む。
【0049】
コントローラ30は、ステップS103で選択された順序情報で定義されている順で、負荷32が順次動作状態(組電池10から電力が負荷32に供給される状態)となるように制御し(S108)、組電池10の現在の電流値、電圧値を取得する(S109)。
【0050】
ステップS108、ステップS109は、ステップS103で選択された順序情報に従い順次繰り返し実行され、コントローラ30は、診断の実施日時とともに、得られる電流情報、電圧情報を対応づけて記憶部33に時系列に記憶する。ステップS103で、例えば消費電力の小さい負荷32から動作させる順序情報(図2参照)が選択される場合、コントローラ30は、ステップS108でルームランプをオンにし、ステップS109でルームランプがオンのときの電流値、電圧値を取得する。その後、コントローラ30は、ステップS108でポジションランプをオンにし、ステップS109でルームランプ、ポジションランプが共にオンのときの電流値、電圧値を取得する。以下同様に、順序情報で定義されている順序で、負荷32が順次動作状態となり、そのときの電流値、電圧値が取得される。また本例では、電圧降下を計測するため、同時に動作可能な負荷32については、一旦オンとなった場合は以降もオン状態とし、診断処理中はオフにしない。また一方で、図2の「7.オーディオ(Volume10)」、「8.オーディオ(Volume20)」は、1つのオーディオで異なる音量出力となるものであるため、いずれか一方の音量状態(例えばVolume20)を維持して以降の負荷32に対しての動作制御が行われる。
【0051】
コントローラ30は、検出電圧Vcと診断終了電圧Veとを比較し、検出電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低いかを判定する(S110)。検出電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低くなった場合、(S110、Yes)、ステップS111の処理に進む。すなわち、検出電圧Vcが、診断開始電圧Vsから診断終了電圧Veに変化(低下)するまで、電圧値、電流値が取得される。
【0052】
診断終了電圧Veは、診断開始電圧Vsよりも低い電圧値であり、適宜設定することができる。診断終了電圧Veを低くしすぎると、組電池10を過放電させてしまうことになる。また、診断終了電圧Veを高くしすぎると、後述する電流積算量を取得し難くなってしまう。これらの点を考慮して、診断終了電圧Veを設定することができる。診断終了電圧Veに関する情報は、記憶部33に記憶させておくことができる。
【0053】
コントローラ30は、組電池10の放電を停止する(S111)。具体的には、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替えることができる。
【0054】
コントローラ30は、ステップS109で取得した電流値Iを積算して、電流積算量ΣIを算出する(S112)。記憶部33には、診断を行う毎に、電流積算量ΣIが蓄積して記憶される。このように、診断を行うごとに電流積算量ΣIが随時蓄積されるため、この蓄積データは統計データとして利用することができる。
【0055】
またコントローラ30は、ステップS112で算出した電流積算量ΣIを、基準となる電流積算量ΣIと比較することにより、組電池10が劣化しているか否かを判別する(S113)。
【0056】
基準となる電流積算量ΣIは、組電池10の劣化を判断するときに基準となる電流積算量ΣIである。基準となる電流積算量ΣIとしては、例えば、上記のように初期状態の組電池10を放電させたときに取得された電流積算量ΣIや、組電池10の寿命時の電流積算量ΣIを用いることができる。ここでの初期状態とは、組電池10を製造した後の状態をいう。基準となる電流積算量ΣIを算出するときにも、組電池10の電圧Vcを、診断開始電圧Vsから診断終了電圧Veまで変化させながら、電流値Iを取得する。
【0057】
図6は、製造直後、寿命時の放電カーブ、および組電池10を放電させたときの放電カーブを示す図である。図6の縦軸は、組電池10の電圧を示す。図6の横軸は、組電池10の放電容量[Ah]を示す。図6の実線は、基準となる製造直後、寿命時の放電カーブであり、図6の点線は、計測時での放電カーブを示す。
【0058】
図6に示すように、組電池10が劣化すると、組電池10の容量は製造直後から低下する。言い換えれば、組電池10が劣化すると、電流積算量ΣIは低下する。本例では、この電流積算量ΣIが経時使用により低下することを用いて、組電池10の劣化診断を行う。
【0059】
診断の具体例としては、例えば、現在取得された電流積算量ΣIが、放電カーブ上製造直後の電流積算量、寿命時の電流積算量のいずれの放電カーブにどの程度寄っているかを導出することで、劣化の度合いを得ることができる。また製造直後や寿命時の電流積算量、および統計データとして蓄積されている電流積算量を用いることで、組電池10の寿命年月の予測や交換時期も得ることができ、急激に劣化が進んでいる等の劣化進度に関しても得ることができる。
【0060】
負荷32を動作させる順序により電流積算量の曲線形状が異なるため、本例では、順序情報ごとに、製造直後の放電カーブ、および寿命時の放電カーブが事前に用意され、記憶部33に事前に記憶される。
【0061】
図5の説明に戻る。コントローラ30は、このようにして得られた診断結果を、記憶部33に記憶する(S114)。コントローラ30は、記憶部33に記憶された組電池10の診断結果を車室内のディスプレイに出力することで(S115)、ユーザは組電池10の現状を確認することができる。ここでディスプレイに出力される情報は、例えば組電池10の製造直後からの劣化率(%)や組電池10の寿命年月の予測、交換時期の情報が考えられる。コントローラ30は、使用部品を初期状態へ戻して(S116)、一連の診断処理が終了する。
【0062】
また、上記は、順次動作させる負荷32を増やしていく方法を説明したが、動作させる負荷32を順次に切り替えていく実装(動作している負荷32が常に一つ)であってもよい。この場合、コントローラ30は、1つの負荷32を一定期間動作させて、電圧値、電流値等を取得し、その後動作している負荷32をオフにして、順序情報で定義されている順序に従い次の負荷32をオンにする。
【0063】
上記では、診断結果の表示のみならず、診断結果に基づき組電池10の劣化を低減させるためのアドバイスをディスプレイ上に表示させることも可能となるため、ユーザは、より安心して運転をすることができ、システムの信頼度も増す。
【0064】
実施例1の組電池診断を行う際、負荷32も同時に動作するため、例えばランプの点灯状態を確認する等、負荷32の点検も同時に行うことができる。
【0065】
本実施形態では、組電池10に対して計測し、組電池10に対しての診断を行うものとして説明したが、単電池11の単位や上記電池ブロックの単位でも上記形態を適用させることができる。すなわち、単電池11ごとや電池ブロックごとに電圧値等の計測値が得られる場合は、単電池11ごとや電池ブロックごとに計測し、診断することも可能である。
【0066】
蓄電装置の容量に関する情報とは、本実施形態では、電圧、電流やこれらを計測した時間の情報に相当し、また電流積算量ΣIに相当する。
【0067】
以上に詳説したように、外部機器を必要とせず、車両のみで組電池を診断することができるため、メンテナンス作業者のみならず、ユーザでも気軽に組電池の診断を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
10:組電池(蓄電装置) 11:単電池
21:電圧センサ 22:電流センサ
23:昇圧回路 24:インバータ
25:モータ・ジェネレータ 30:コントローラ
31:DC/DCコンバータ 32:負荷
33:記憶部 34:選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、前記蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、前記蓄電装置の劣化診断を行う前記蓄電装置の診断装置を備える車両であって、
前記蓄電装置から放電される電力により動作が可能である複数の負荷と、
前記複数の負荷を動作させる順序に関する順序情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された順序情報にしたがって、前記蓄電装置を放電させる放電制御部と、を有することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記記憶部には、複数の順序情報が記憶され、これらの順序情報は、それぞれ負荷の動作順序が異なり、
前記放電制御部は、前記複数の順序情報のうちの1つの順序情報を取得し、この取得した順序情報にしたがって前記蓄電装置を放電させることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記複数の順序情報のうちの1つは、消費電力の大きい順で定義された順序情報であることを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記複数の順序情報のうちの1つは、消費電力の小さい順で定義された順序情報であることを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記複数の順序情報のうちの1つは、ユーザに対する影響が少ない順で定義された順序情報であることを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項6】
前記放電制御部は、前記順序情報にしたがって、順次、負荷を増やすように、負荷の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項7】
前記放電制御部は、前記順序情報にしたがって、駆動される負荷を順次に切り替えるように前記負荷の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項8】
前記放電制御部は、さらに、前記劣化診断の結果を前記車両の車室内に備えられるディスプレイに表示することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項9】
前記記憶装置には、前記蓄電装置の製造直後の容量に関する情報、および前記蓄電装置の寿命時の容量に関する情報のうちいずれか1つまたは両方の情報が事前に記憶されており、
前記放電制御部は、取得した前記容量に関する情報と、前記事前に記憶されている1つまたは両方の情報とを比較することで、前記蓄電装置の劣化診断を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項10】
前記放電制御部は、前記車両に搭載されている選択部の操作に応じて、劣化診断を開始することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項11】
車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、前記蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、前記蓄電装置の劣化診断を行う前記蓄電装置の診断方法であって、
前記蓄電装置から放電される電力により動作する複数の負荷の動作順序に関する順序情報を記憶部から取得し、
前記順序情報にしたがって、前記蓄電装置を放電させる
蓄電装置の診断方法。
【請求項12】
車両に搭載される蓄電装置を放電させることにより、前記蓄電装置の容量に関する情報を取得し、この取得した情報に基づき、前記蓄電装置の劣化診断を行う前記蓄電装置の診断プログラムであって、
前記蓄電装置から放電される電力により動作する複数の負荷の動作順序に関する順序情報を記憶部から取得するステップと、
前記順序情報にしたがって、前記蓄電装置を放電させるステップと、
をコンピュータに実行させるための蓄電装置の診断プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110906(P2013−110906A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255800(P2011−255800)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】