説明

車両のクルーズコントロール装置を制御する方法及びシステム

本発明は、車両のクルーズコントロール装置を制御する方法であって、有効化されて、車両設定目標速度(Vcc set target speed)を維持するように設定された前記クルーズコントロール装置を用いて前記車両を駆動するステップと、現在の車両条件を記録するステップであって、前記現在の車両条件が、少なくとも現在の車両位置(A)、現在係合しているギヤ比、利用可能なギヤ比、現在の車両速度、利用可能な最大推進トルク、及び最も近い前方の上り坂勾配を含めこれから走行する道路の道路トポグラフィーを含む、ステップと、前記現在の車両条件に基づいて、前記前方の上り坂勾配における前方の車両位置(C)での、車両速度の低下に起因するダウンシフトを予測して、前記ダウンシフトを延期又は回避できる結果をもたらす少なくとも一つのアクティビティを選択するステップと、前記選択したアクティビティに従って前記クルーズコントロール装置を制御するステップとを含み、例えば直接ギヤからの下り坂を延期、または回避するために前記選択されたアクティビティに従って前記クルーズコントロール装置を制御することにより、燃料の節約が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の請求項1の前文に係る、車両内のクルーズコントロール装置の制御方法に関する。本発明はまた、クルーズコントロール装置の制御方法に対応した、添付の請求項8の前文に係る車両クルーズコントロールシステムにも関する。
【0002】
また、本発明は、いずれも前記方法を実行するコンピュータで利用されるコンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータの記憶媒体にも関する。
【背景技術】
【0003】
自動車、トラック、けん引車両、及びバス等の自走車には、いわゆるクルーズコントロールシステムが設けられることが多く、このクルーズコントロールシステムは、車両の速度を自動制御するもので、速度制御システムとも呼ばれる。このようなクルーズコントロールシステムは、実際の車両速度を監視する速度センサ等の手段を含む。クルーズコントロールシステムは、実際の車両速度と設定目標速度とを比較する。目標速度は、例えば、運転者が設定スイッチを起動すると、現在の実際の車両速度としてクルーズコントロールシステムに入力される。クルーズコントロールシステムは、実際の車両速度と目標速度とを比較することによってエラー信号を生成する。この後、エラー信号は、例えば、燃料ポンプ、又は車両スロットルに連結されたアクチュエータの制御に利用され、この制御は、エラー信号が実質的にゼロになるまで、すなわち、実際の車両速度が目標速度と等しくなるまでエンジン速度を変化させるように行われる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、クルーズコントロールシステムを更に発展させた従来技術の2つの例を開示している。この例において、クルーズコントロールシステムは、現在の車両位置、及びこれから走行する道路のトポグラフィー、例えば、前方の道路の勾配又は標高の値についての情報を利用して、燃料効率が向上するようにスロットルの開き度を制御する予測式クルーズコントロールシステムである。
【0005】
従来のクルーズコントロールの問題は、特定の車両走行状況において不要なダウンシフトが生じ得ることである。このような車両走行状況の3つの例を図1〜図3に示した。これらの各図に、前述の不要なダウンシフトが生じ得る典型的な例である道路区画輪郭1,21,31を示した。図1の道路区画輪郭1には、下り坂とその後の上り坂勾配が示されている。上方の曲線2に、前述の道路区画輪郭1を走行し、クルーズコントロール装置が目標速度Vcc set target speedに設定されているときの車両速度の変化を示した。開示した例において、最大許容可能超過速度Vbccは、下り坂の走行時にそのVbccを超えないように、ブレーキクルーズ装置が車両の補助ブレーキ及び/又は常用ブレーキを起動するためのものである。現行の車両状況に応じて、車両のトランスミッション内の特定のギヤが係合され、より低速のギヤ(より高いギヤ比)へのダウンシフト(Vdownshift speed)が生じる場合に対応したより低い車両速度限界が決定される。この係合されるギヤは、直結ギヤ、又はトルクがトランスミッション(変速装置)内の歯車対を介して伝達されるギヤであり得る。図1において車両が位置Aにあるとき、その車両は、加速している最中であり、最終的には、位置Aの後でVcc set target speedを若干超えるところまで加速する。車両が位置Bにあるときは、上り坂勾配の始まりであるので、車両速度が低下する。図示した例において、傾斜は、現在係合しているギヤでVcc set target speedを保持するのに利用できる車両の推進出力が不十分である程の急勾配である。位置Cでは、車両速度がVdownshift speedまで低下して、ダウンシフトが実行される。図示した例では、このダウンシフトにより車両速度が上昇し始める。このダウンシフト中、推進出力が遮断されることにより、燃料効率に損失が生じるという欠点がある。この燃料効率は、ダウンシフトが直結ギヤからのダウンシフトである場合に、より大きく低下するが、これは、直結ギヤが係合された状態での走行は、トルクが歯車対を介して伝達されるギヤと比べてより燃料効率が高いためである。
【0006】
図2及び図3に開示した例に、更に2つの発生し得る異なる道路区画輪郭21及び31についての対応するダウンシフトCを示した。道路区画輪郭21は、水平な道路から始まり、続いて上り坂勾配になる。道路区画輪郭31は、軽い上り坂勾配から始まり、その後上り坂勾配になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1439976号明細書
【特許文献2】米国特許第6,990,401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、現在の車両位置、及びこれから走行する道路のトポグラフィーについての情報が、車両速度を制御するクルーズコントロール装置によって利用される、クルーズコントロールシステムを更に発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の主な目的は、上り坂勾配における不要なダウンシフトを回避できる、改善されたクルーズコントロール方法を提示することである。この目的は、導入部に記載した方法によって達成され、該方法の特徴は請求項1によって定義される。上記目的はまた、導入部に記載したシステムによっても達成され、システムの特徴は請求項8によって定義される。
【0010】
本発明に係る方法は、車両の走行中にクルーズコントロール装置を制御する方法である。本方法は、下記のステップを含む(下記のステップを有するが、必ずしも限定されるものではない)。
【0011】
−有効化されて、車両の設定目標速度を維持するように設定されたクルーズコントロール装置を用いて車両を駆動するステップ。
【0012】
−現在の車両条件を記録するステップであって、車両条件が、少なくとも現在の車両位置、現在係合しているギヤ比、利用可能なギヤ比、現在の車両速度、利用可能な最大推進トルク、及び最も近い前方の上り坂勾配を含めこれから走行する道路の道路トポグラフィーを含む、ステップ。
【0013】
−現在の車両条件に基づいて、前方の上り坂勾配における前方の車両位置での、車両速度の低下に起因するダウンシフトを予測して、ダウンシフトを延期又は回避できる結果をもたらす少なくとも一つのアクティビティを選択するステップ。
【0014】
−選択したアクティビティに従ってクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0015】
本発明の第1の代替実施形態によれば、アクティビティは下記のステップを含む。
【0016】
−現在係合しているギヤのダウンシフト限界を、所定の実現可能な大きさで一時的に低くして、低減ダウンシフト速度限界にするステップ。
【0017】
本発明の方法の更に他の実施形態によれば、アクティビティは下記のステップを更に含む。
【0018】
−ダウンシフトが十分に延期される、又は回避されるかどうかを予測するステップ。
【0019】
−ダウンシフトが十分に延期されない、又は回避されないことが予測される場合に、ダウンシフト限界を一時的に低くすることを実行するステップ。
【0020】
−加えて、車両が上り坂勾配において減速し始める場所である第1車両位置での最低車両速度であって、ダウンシフトを十分に延期できる、又は回避できる結果をもたらす最低車両速度を、現在の車両条件に基づいて算出するステップ。
【0021】
−第1車両位置に向かって車両が走行している間に車両速度を上昇させて、車両が最終的に第1車両位置に到達したときに最低車両速度になるように、現在の車両条件に基づいてクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0022】
本発明の他の実施形態において、アクティビティは下記のステップを含む。
【0023】
−車両が上り坂勾配において減速し始める場所である第1車両位置での最低車両速度であって、ダウンシフトを十分に延期できる、又は回避できる結果をもたらす最低車両速度を、現在の車両条件に基づいて算出するステップ。
【0024】
−車両が第1車両位置に向かって走行している間に車両速度を上昇させて、車両が最終的に第1車両位置に到達したときに最低車両速度になるように、現在の車両条件に基づいてクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0025】
本発明の更に他の実施形態において、最低車両速度まで車両速度を上昇させることは、車両の設定目標速度と最低車両速度との差が所定の値を下回る場合にのみ許可される。
【0026】
本発明は、制御ユニット、運転者入力インターフェイス、車両位置特定装置、道路トポグラフィー特定装置を含む(これらを有するが、これらには限定されない)車両クルーズコントロールシステムにも関する。このシステムは、制御ユニットが、第1実施形態の前述した方法のステップを実行するように構成されることを特徴とする。
【0027】
本発明の更に他の有利な実施形態は、特許請求項1に続く従属特許請求項から明らかになる。
【0028】
本発明について、例示目的の添付図面を参照しながら下記において詳細に説明する。図面には、本発明の更に他の好ましい実施形態と共に、技術背景も示されている。図面は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、既知の技術に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図2】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、既知の技術に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図3】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、既知の技術に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図4】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図5】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図6】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図7】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図8】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図9】車両速度グラフ及び対応する走行条件を示す図で、速度グラフに、本発明の実施形態に係るクルーズコントロールを示した図である。
【図10】コンピュータ環境に適用された本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
車両の速度を自動制御するクルーズコントロールシステムは、既知の技術に従って車両に設けることができる。クルーズコントロールシステムは、入力信号を継続的に処理して、例えば、推進ユニットを制御する推進ユニットコントロール装置、及びブレーキ制御ユニットが搭載されている場合はブレーキ制御ユニットにも出力信号を送信する制御ユニットを含み、ブレーキ制御ユニットは、車両のブレーキ制動装置を制御して設定車両速度を維持する。ブレーキ制動装置は、常用ブレーキ、補助ブレーキ、及び電動機/発電機(例えば、車両にハイブリッド推進システムが搭載されている場合)のうちの少なくともいずれかであってよい。車両クルーズコントロールシステムは、更に、運転者入力インターフェイスを少なくとも含む。制御ユニットは、後述する本発明の機能のステップを、現在の車両条件についての情報を利用して実行するように構成される。
【0031】
推進ユニットコントロール装置は、自動機械式トランスミッション(AMT)を介して従動輪に駆動接続される推進ユニットを少なくとも含む推進ユニットを制御するように構成できる。AMTが自動モードにあると、車両の走行中、最も適切なギヤが自動的に選択(複数のギヤの中から選択)されて係合する。
【0032】
車両内のクルーズコントロールは、Vcc set target speedを維持するように設定される。これは、運転者が設定できる。したがって、クルーズコントロールシステム内の制御ユニットは、Vcc set target speedを維持するように構成される。最大の車両超過速度Vbccも運転者が設定でき、これにより、制御ユニットは、車両の速度がVbccに近付いた場合に車両のブレーキ制動を開始する。この機能は、前述したように既知であり、ブレーキクルーズコントロールとも呼ばれている。この車両クルーズコントロールの最大の車両超過速度Vbccは、少なくともVcc set target speed以上に設定できる。後述する本発明の実施形態において、VbccはVcc set target speedよりも高く設定される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、クルーズコントロールシステム内の制御ユニットは、有効化されたクルーズコントロール装置を用いて車両を駆動し、下記のステップを実行するようにプログラムされる。
・有効化されて、車両設定目標速度(Vcc set target speed)を維持するように設定されたクルーズコントロール装置を用いて車両を駆動するステップ。
・現在の車両条件を記録するステップであって、現在の車両条件は、少なくとも現在の車両位置(A)、現在係合しているギヤ比、利用可能なギヤ比、現在の車両速度、利用可能な最大推進トルク、及び最も近い前方の上り坂勾配を含めこれから走行する道路の道路トポグラフィーを少なくとも含むステップ。
・現在の車両条件に基づいて、前方の上り坂勾配における車両位置(C)での、車両速度の低下に起因するダウンシフトを予測して、ダウンシフトを延期できる、又は回避できる結果をもたらす少なくとも一つのアクティビティを選択するステップ。
・選択したアクティビティに従ってクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0034】
このように、車両が位置Aにあるときに、前方の上り坂勾配において生じることになるダウンシフトが予測され、そのダウンシフトを延期又は回避するためにアクティビティが選択される。これにより、不要なダウンシフトは、上り坂勾配の走行中に少なくとも延期、又は完全に回避できる。現在係合しているギヤが直結ギヤである場合は、係合された直結ギヤでの走行時間を延ばすことができれば、燃料が節約される。現在係合しているギヤが、歯車対を介してトルクを伝達するギヤである場合は、ダウンシフトを回避できると、燃料が節約される。
【0035】
図4を参照すると、上り坂勾配が後に続く、図1と同様の下り坂勾配が示されている。また、車両の速度も、図1の例と同様に制御される。本発明の一実施形態によれば、アクティビティは、次のステップを含む。
・現在係合しているギヤのダウンシフト限界を所定の実現可能な大きさで一時的に低くして、低減ダウンシフト速度限界(Vlow downshift speed)にするステップ。
【0036】
図4において、低減ダウンシフト速度限界は、ラインVlow downshift speedによって示されている。図から判るように、低減ダウンシフト速度限界は、この図示した例において、上り坂勾配での最も低い予測車両速度42より低い。低減ダウンシフト速度限界は、最も低い予測車両速度よりも低いため、位置Cでのダウンシフトは起こらない。最も低い予測車両速度と低減ダウンシフト速度限界の差は、予め設定することができる。この差は、例えば、推進ユニットの構成、上り坂勾配における車両の走行抵抗、及び通常のダウンシフト速度と低減ダウンシフト速度の間の領域におけるエンジン効率(エンジン効率が劇的に低下する場合は、エンジン速度を低下させると余分な燃料を消費することになるため、エンジン速度を低減させても意味がない)によって異なり得る。ダウンシフト速度を低くする量は、例えば、エンジンが(通常の)ダウンシフト限界Vdownshift speed未満の回転速度で回転するまでの推定時間に応じて異なってよい。Vdownshift speedとVlow downshift speedの一般的な差は、100rpmであり得る。低減ダウンシフト速度は、対応する方法で、道路区画輪郭21及び31に利用することができる。道路輪郭21については図6に、道路輪郭31については図8に示されている。したがって、図6及び図8の実施形態では、図4と同様の対応するVlow downshift speedが用いられる。
【0037】
本発明の更に他の実施形態において、アクティビティは、代替として下記のステップを含むことができる。
・車両が上り坂勾配において減速し始める場所である第1車両位置(B)での最低車両速度であって、ダウンシフトを延期又は回避できる結果をもたらす最低車両速度を、現在の車両条件に基づいて算出するステップ。
・車両が第1車両位置(B)に向かって走行している間に車両速度を上昇させて、車両が最終的に第1車両位置(B)に到達したときに最低車両速度になるように、現在の車両条件に基づいてクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0038】
本実施形態は図5に示され、図において、車両速度曲線52は、図4及び図1の各車両速度曲線42,2と同一である。車両速度曲線55が示すのは、現在の車両条件の知識で予測される車両速度曲線であり、ここでは、車両が位置BをVhillの最低車両速度で通過する場合に、車両速度がVdownshift speedより下まで低下することなく上り坂勾配を走行できるかどうかが予測される。このように、位置Cにおけるダウンシフトを回避することができる。図5を見ると判るように、例えば、ダウンシフトを回避するためには、位置BにおいてVhillの最低車両速度が必要であることが位置Aで予測されると同時に、車両は、位置BにおいてVhillに達するように、位置AとBの間で相応に加速される。入力サータ(sata)として現在の車両条件を用いてシミュレーションを実行し、Vhillの最低車両速度を見つけることができる。現在の車両状況が帰結する結果として、ダウンシフトを回避又は十分に延期することができず、Vhillまで加速しない場合よりも燃料効率が低下する場合は、曲線52に従って車両速度を制御する、すなわち、Vhillへの加速を行わないように制御ユニットをプログラムすることができる。対応する方法で、Vhillを道路区画輪郭21及び31に利用することができる。道路輪郭21については図7に示され、道路輪郭31については図9に示されている。したがって、図7及び図9の実施形態では、図5と同様の対応するVhillが利用される。
【0039】
本発明の更に他の実施形態において、制御ユニットは、図4及び図5、図6及び図7、又は図8及び図9に記載した前述のアクティビティを組み合わせるようにプログラムすることができる。したがって、制御ユニットは、下記のステップを実行するようにプログラムされてよい。
・ダウンシフトが十分に延期される、又は回避されるかどうかを予測するステップ。
・ダウンシフトが十分に延期されない、又は回避されないことが予測される場合に、ダウンシフト限界を一時的に低くすることを実行するステップ。
・加えて、車両が上り坂勾配において減速し始める場所である第1車両位置での最低車両速度であって、ダウンシフトを十分に延期、又は回避できる結果をもたらす最低車両速度を、現在の車両条件に基づいて算出するステップ。
・車両が第1車両位置に向かって走行している間に車両速度を上昇させて、車両が最終的に第1車両位置に到達したときに最低車両速度になるように、現在の車両条件に基づいてクルーズコントロール装置を制御するステップ。
【0040】
ダウンシフト速度を一時的に低下させるアクティビティは、最低車両速度Vhillまで車両速度を上昇させるアクティビティと比べて燃料効率がよい。したがって、一時的に低下させるダウンシフト速度が十分であるかどうかを最初に予測し、十分でない場合には、両方のアクティビティを利用することができる。
【0041】
本発明の他の実施形態において、最低車両速度Vhillまで車両速度を増速することは、車両設定目標速度Vcc set target speedと最低車両速度Vhillの差が所定の値を下回る場合にのみ許可される。制御ユニットは、例えば、Vbcc等の所定の値を超えるVhillを許可しないように更にプログラムすることができる。
【0042】
本発明の更に他の実施形態において、現在係合しているギヤのダウンシフト限界の前述した一時的低減は、上り坂勾配を走行している間、有効であるが、この上り坂勾配は、例えば、位置Bから頂上(図示せず)、すなわち車両速度が再び加速し始めてエンジン回転速度がVdownshift speedよりも高くなった位置までを意味する。
【0043】
更に他の実施形態において、車両にアダプティブクルーズコントロール装置(ACC)を搭載することができる。ACCは、例えば、前述した車両条件のうちのいずれかでの走行時に、車両の前方に他の車両が比較的近接しているかどうかを検知する。制御ユニットは、ACCが車両の前方で比較的近接している他の車両を検知する場合には、前述した実施形態のいずれか一つに係る、最低車両速度Vhillへの車両速度の増速を開始しないようにプログラムすることができる。
【0044】
図10に、本発明の一実施形態に係る装置500を示す。この装置500は、不揮発性メモリ520、処理装置510、及び読み書き用メモリ560を含む。メモリ520は、装置500を制御するコンピュータプログラムが格納される第1記憶部530を有する。装置500を制御する記憶部530内のコンピュータプログラムは、オペレーティングシステムであってよい。
【0045】
装置500は、例えば、クルーズコントロールシステム内の前述した制御ユニット等の制御ユニット内に格納される。データ処理装置510には、例えば、マイクロコンピュータを含むことができる。
【0046】
メモリ520は、本発明に係る車両クルーズコントロール装置を制御するプログラムが格納される第2記憶部540も有する。代替の実施形態において、車両クルーズコントロール装置を制御するプログラムは、独立した不揮発性データ記憶媒体550、例えば、CDや、交換可能半導体メモリ等に格納される。プログラムは、実行可能な形式、又は圧縮状態で保存できる。
【0047】
下記において、データ処理装置510が特定の機能を実行すると言う場合、データ処理装置510は、メモリ540に格納されたプログラムの特定の部分、又は不揮発性記録媒体550に格納されたプログラムの特定の部分を実行することは明らかであろう。
【0048】
データ処理装置510は、データバス514を介してメモリ550と通信するように適合される。データ処理装置510は、データバス512を介してメモリ520とも通信するように適合される。また、データ処理装置510は、データバス511を介してメモリ560と通信するように適合される。データ処理装置510は、データバス515を利用して、データポート590とも通信するように適合される。
【0049】
本発明に係る方法は、データ処理装置510によって、メモリ540に格納されたプログラム、又は不揮発性記録媒体550に格納されたプログラムを実行するデータ処理装置510によって実行可能である。
【0050】
本発明は、上記で説明した実施形態に限定されると見なされるべきではなく、むしろ、多くの他の変更及び修正も下記の発明の請求項の範囲内であると考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のクルーズコントロール装置を制御する方法であって、
−有効化されて、車両設定目標速度(Vcc set target speed)を維持するように設定された前記クルーズコントロール装置を用いて前記車両を駆動するステップと、
−現在の車両条件を記録するステップであって、前記現在の車両条件が、少なくとも現在の車両位置(A)、現在係合しているギヤ比、利用可能なギヤ比、現在の車両速度、利用可能な最大推進トルク、及び最も近い前方の上り坂勾配を含めこれから走行する道路の道路トポグラフィーを含む、ステップと、
−前記現在の車両条件に基づいて、前記前方の上り坂勾配における前方の車両位置(C)での、車両速度の低下に起因するダウンシフトを予測して、前記ダウンシフトを延期又は回避できる結果をもたらす少なくとも一つのアクティビティを選択するステップと、
−前記選択したアクティビティに従って前記クルーズコントロール装置を制御するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記アクティビティは、
−前記現在係合しているギヤのダウンシフト限界を、所定の実現可能な大きさで一時的に低くして低減ダウンシフト速度限界(Vlow downshift speed)にするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクティビティは、
−前記ダウンシフトが十分に延期される、又は回避されるかどうかを予測するステップと、
−前記ダウンシフトが十分に延期されない、又は回避されないことが予測される場合に、前記ダウンシフト限界を前記一時的に低くすることを実行するステップと、
−加えて、前記車両が前記上り坂勾配において減速し始める場所である第1車両位置(B)での最低車両速度(Vhill)であって、前記ダウンシフトを十分に延期できる、又は回避できる結果をもたらす最低車両速度(Vhill)を現在の車両条件に基づいて算出するステップと、
−前記第1車両位置(B)に向かって車両を駆動している間に車両速度を上昇させて、前記車両が最終的に前記第1車両位置(B)に到達したときに前記最低車両速度になるように、前記現在の車両条件に基づいて前記クルーズコントロール装置を制御するステップとを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクティビティは、
−前記上り坂勾配において車両が減速し始める場所である第1車両位置(B)での最低車両速度であって、前記ダウンシフトを延期又は回避できる結果をもたらす最低車両速度を、現在の車両条件に基づいて算出するステップと、
−前記第1車両位置(B)に向かって車両が走行している間に車両速度を上昇させて、前記車両が最終的に前記第1車両位置(B)に到達したときに前記最低車両速度になるように、前記現在の車両条件に基づいて前記クルーズコントロール装置を制御するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最低車両速度(Vhill)まで車両速度を前記上昇させることは、前記車両設定目標速度(Vcc set target speed)と前記最低車両速度(Vhill)の差が所定の値を下回る場合にのみ許可される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記現在係合しているギヤのダウンシフト限界を前記一時的に低くすることは、前記上り坂勾配を走行している間有効である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記予測されたダウンシフトは、直結ギヤからのダウンシフトである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
車両設定目標速度(Vcc set target speed)を維持するように構成される制御ユニットと、運転者入力インターフェイスと、車両位置特定装置と、道路トポグラフィー特定装置とを含むクルーズコントロールシステムであって、前記制御ユニットは、請求項1記載のステップを実行するようにプログラムされることを特徴とする、クルーズコントロールシステム。
【請求項9】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されたときに請求項1記載の全てのステップを実行する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ可読媒体に格納されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラム製品がコンピュータ上で実行されたときに、請求項1の全てのステップを実行する、コンピュータプログラム製品。
【請求項11】
コンピュータ環境で用いられるコンピュータメモリ(520)、不揮発性データ記憶媒体(550)等の記憶媒体であって、前記メモリは、請求項1記載の方法を実行するコンピュータ可読プログラムコードを含む、記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−514927(P2013−514927A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545096(P2012−545096)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009169
【国際公開番号】WO2011/076226
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】