説明

車両の空調ダクト

【課題】レイアウト上の制約や型構造上の制約を受け難く、且つ所望の方向に空調風を分岐させて流出させることが可能な空調ダクトの提供。
【解決手段】空調ダクト1は、管状のダクト本体2と、ダクト本体2に形成された吹出穴3及び凹部4とを備える。ダクト本体2は、上流側から下流側への所定の流通方向20に沿った空調風の流通路8を内部に区画する。凹部4は、吹出穴3の下流側の周縁近傍で流通路8に突出するようにダクト本体2から一体的に曲折し、ダクト本体2の外面側から流通路8に向かって凹む。凹部4の上流側内面11は、流通路8を流通する空調風の一部を所定の流通方向20から分岐させて吹出穴3から流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空調ユニットが生成した空調風は、空調ダクトを流通してその下流端から車室内に流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−189001号公報
【特許文献2】特開2005−186924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調ダクトの下流端よりも上流側で空調風の一部を空調ダクトから車室内に流出させたい場合、空調ダクトに吹出穴を形成することが考えられる。しかし、単に吹出穴を形成しただけでは、吹出穴の上流側から下流側へ流通する空調風の影響によって吹出穴から所望の方向に空調風が流出しない。
【0005】
また、他の方法として、空調ダクトに外部へ突出する分岐ダクト部やガイド等を設けることが考えられる。しかし、空調ダクトから突出する分岐ダクト部やガイドは、レイアウト上の制約を受け易く、配置が困難な場合や型構造上(成形型の構造上)の成立性が困難な場合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、レイアウト上の制約や型構造上の制約を受け難く、且つ所望の方向に空調風を分岐させて流出させることが可能な空調ダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の空調ダクトは、管状のダクト本体と、ダクト本体に形成された吹出穴及び凹部とを備える。ダクト本体は、上流側から下流側への所定の流通方向に沿った空調風の流通路を内部に区画する。
【0008】
凹部は、吹出穴の下流側の周縁近傍で流通路に突出するようにダクト本体から一体的に曲折し、ダクト本体の外面側から流通路に向かって凹む。凹部の上流側内面は、流通路を流通する空調風の一部を所定の流通方向から分岐させて吹出穴から流出させる。
【0009】
上記構成では、ダクト本体の中間部分のうち空調風の一部を流出させたい箇所に吹出穴を形成し、吹出穴の下流側の周縁近傍に凹部を形成する。流通路を流通する空調風の一部は、凹部の上流側内面によって所定の流通方向から分岐して吹出穴から流出する。吹出穴の上流側を流通する空調風のうち吹出穴からの流出する空調風の方向は、吹出穴の周縁に対する凹部の突出高さの増減に応じて変化するため、凹部の突出高さを好適な高さに設定することによって、所望の方向に空調風を分岐させて吹出穴から流出させることができる。
【0010】
また、ダクト本体の外面から突出する部分を設ける必要がないので、レイアウト上の制約を受け難く、限られたスペースへの配置が可能である。
【0011】
さらに、分岐ダクト等のようにダクト本体の外面から突出する部分を設ける場合、空調ダクトを樹脂の射出成形によって形成するためには、分割型の合わせ面(パーティングライン)を外面からの突出部分に設定しなければならない。これに対し、上記構成では、ダクト本体の外面から突出する部分を設ける必要がないので、パーティングラインを任意に設定することができる。
【0012】
また、凹部の上流側内面は、下流側に向かって傾斜する傾斜面状であってもよい。所定の流通方向に対する吹出穴からの空調風の流出角度は、所定の流通方向に対する上流側内面の傾斜角度の増減に応じて増減する。
【0013】
上記構成では、凹部の上流側内面の傾斜角度を好適な角度に設定することによって、空調風を吹出穴から所望の方向に向けて流出させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空調ダクトによれば、レイアウト上の制約や型構造上の制約を受け難く、且つ所望の方向に空調風を分岐させて流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調ダクトの外観斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す外面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】凹部の上流側内面の傾斜角度を減少させた態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、車両用の空調ダクト1は、管状のダクト本体2と、ダクト本体2に形成された吹出穴3及び凹部4とを備える。空調ダクト1は、樹脂製であり、射出成形によって一体形成される。空調ダクト1は、車室内の運転席の前下方(運転者の足元前方)にブラケット5によって固定され、ダクト本体2の上流端6と下流端7との間の内部には、空調風の流通路8が区画される。流通路8内の空調風は、上流端6(上流側)から下流端7(下流側)へ所定の流通方向20に沿って流通する。
【0018】
ダクト本体2の上流端6は、中継ダクト(図示省略)を介して空調ユニット(図示省略)に接続され、空調ユニットが生成する空調風が空調ファン(図示省略)によってダクト本体2に供給される。本実施形態の車両は右ハンドル車であり、運転席の前下方には、アクセルペダル(図示省略)、ブレーキペダル(図示省略)及びフットレスト(図示省略)が右側から左側に向かって配置されている。空調ダクト1は、フットレストの左前方からブレーキペダルの左前方に延び、ダクト本体2の上流端6及び下流端7は、フットレストの左前方及びブレーキペダルの左前方にそれぞれ位置する。ダクト本体2の下流端7は、アクセルペダル及びブレーキペダルに向かって開口し、ダクト本体2の下流端7の開口からの空調風は、アクセルペダル又はブレーキペダルに置かれた運転者の右足の足元に向かって流出する。
【0019】
吹出穴3は、フットレストの近傍に形成されている。凹部4は、吹出穴3の下流側の周縁近傍で流通路8に突出するようにダクト本体2から一体的に曲折し、ダクト本体2の外面2a側から流通路8に向かって凹む。
【0020】
凹部4の上流側内面11は、流通路8を流通する空調風の一部を所定の流通方向20から分岐させて吹出穴3から流出させる。上流側内面11は、下流側に向かって傾斜する傾斜面状であり、吹出穴3の下流側の略180°の領域に吹出穴3の周縁に沿って半円弧状に形成されている。
【0021】
所定の流通方向20に対する吹出穴3からの空調風の流出角度θaは、所定の流通方向20に対する上流側内面11の傾斜角度θbの増減に応じて増減する。例えば、図3に示すように上流側内面11の傾斜角度θbが大きい場合(所定の流通方向20に対して直角に近い場合)、吹出穴3からの空調風の流出角度θaも大きく(直角に近く)なり、図4に示すように上流側内面11の傾斜角度θbが小さい場合(所定の流通方向20に対して直角から離れている場合)、吹出穴3からの空調風の流出角度θaも小さく(所定の流通方向20に近く)なる。本実施形態の上流側内面11の傾斜角度θbは、吹出穴3からの空調風の流出方向21がフットレストの前方(フットレストに置かれた運転者の左足の足元)に向かうように設定されている。
【0022】
吹出穴3の下流側内面12は、吹出穴3から流出せずに下流端7へ向かう空調風が円滑に流通するように、緩やかに傾斜してダクト本体2の内面2bに連続する。
【0023】
本実施形態によれば、ダクト本体2の流通路8を流通する空調風の一部は、凹部4の上流側内面11によって所定の流通方向20から分岐して吹出穴3から流出する。そして、凹部4の上流側内面11の傾斜角度θbと凹部4の突出高さHとを、それぞれ調整して設定することによって、所望の量の空調風を吹出穴3から所望の方向21(フットレストの前方)に向けて流出させることができる。
【0024】
また、ダクト本体2の外面2aから突出する部分を設ける必要がないので、レイアウト上の制約を受け難く、限られたスペースへの配置が可能である。
【0025】
また、分岐ダクト等のようにダクト本体の外面から突出する部分を設ける場合、空調ダクトを樹脂の射出成形によって形成するためには、分割型(成形型)の合わせ面(パーティングライン)を外面からの突出部分に設定しなければならないが、本実施形態では、ダクト本体2の外面2aから突出する部分を設ける必要がないので、パーティングライン13を任意に設定することができ、型構造上の制約を受け難い。なお、本実施形態のパーティングライン13は、吹出穴3を通らない位置に設定されている。
【0026】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【0027】
例えば、吹出穴3の形状は任意であり、円形状の他、例えば矩形等であってもよい。凹部4の上流側内面13は、流通方向20に対して傾斜せずに、流通方向20と略直交してもよい。空調ダクト1は、運転者の足元に空調風を流出させるものに限定されず、車両に設けられる空調ダクトであればよく、また樹脂製以外(例えば金属製等)であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1:空調ダクト
2:ダクト本体
2a:ダクト本体の外面
2b:ダクト本体の内面
3:吹出穴
4:凹部
6:上流端
7:下流端
8:流通路
11:凹部の上流側内面
12:凹部の下流側内面
13:パーティングライン
20:流通方向
21:吹出穴からの流出方向
θa:空調風の流出角度
θb:上流側内面の傾斜角度
H:凹部の突出高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側への所定の流通方向に沿った空調風の流通路を内部に区画する管状のダクト本体と、
前記ダクト本体に形成された吹出穴と、
前記吹出穴の下流側の周縁近傍で前記流通路に突出するように前記ダクト本体から一体的に曲折し、前記ダクト本体の外面側から前記流通路に向かって凹む凹部と、を備え、
前記凹部の上流側内面は、前記流通路を流通する空調風の一部を前記所定の流通方向から分岐させて前記吹出穴から流出させる
ことを特徴と車両の空調ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の空調ダクトであって、
前記凹部の上流側内面は、下流側に向かって傾斜する傾斜面状であり、
前記所定の流通方向に対する前記吹出穴からの空調風の流出角度は、前記所定の流通方向に対する前記上流側内面の傾斜角度の増減に応じて増減する
ことを特徴とする車両の空調ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49388(P2013−49388A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189495(P2011−189495)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】