説明

車両の運転支援システム

【課題】本発明は、車両の運転支援システムにおいて、車両の周囲に存在する物体について有効な運転支援処理を行うことができる技術の提供にある。
【解決手段】本発明にかかる車両の運転支援システムは、車両の周囲に存在する物体が検出されたときに、物体を起点として道路と平行に延びる補助線を設定するとともに車両または物体の状態に応じて補助線の長さを変更し、道路と平行な方向における車両の位置が補助線の範囲に入ったときに運転支援処理を実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の運転を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車両の進路上に存在する物体を障害物として検出し、検出された障害物の存在を運転者に報知する処理や障害物を回避するための運転操作を補助する処理などの運転支援処理を行う技術が提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8402号公報
【特許文献2】特開平10−031799号公報
【特許文献3】特開2001−114081号公報
【特許文献4】特開平08−016998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の周囲に存在する物体のうち、車両の進路から僅かに外れた位置に存在する物体や比較的小さい物体に対しては、有効な運転支援処理が行われない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、車両の運転支援システムにおいて、車両の周囲に存在する物体について、より有効な運転支援処理を行うことができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために、車両の周囲に存在する物体が検出されたときに、物体から車両側へ向かって前記物体以外の基準と平行に延びる補助線を設定し、設定された補助線に基づいて運転支援処理を実行するようにした。
【0007】
詳細には、本発明に係わる車両の運転支援システムは、
車両の周囲に存在する物体を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された物体から車両側へ向かって、前記物体以外の基準と平行に延びる補助線を設定する設定手段と、
前記補助線に基づいて運転支援処理を実行する実行手段と、
を備えるようにした。
【0008】
なお、ここでいう「運転支援処理」は、物体の存在を運転者に知らせる処理、物体との衝突や接近を回避するための運転操作を補助する処理、検出された物体が自車両の障害物となり得るか判別する処理、或いは検出された物体に基づいて自車両が走行可能な経路(走路)を設定する処理などを含む。
【0009】
かかる発明によれば、車両の進路から外れた位置に存在する物体や比較的小さい物体に対しても運転支援処理を実行することが可能となる。その結果、車両の進路から外れた位置に存在する物体や比較的小さな物体に対しても、有効な運転支援処理を行うことが可能となる。
【0010】
たとえば、決定手段は、前記基準と平行な方向における車両の位置が前記補助線の範囲
内に入ったときに運転支援処理を実行してもよい。すなわち、決定手段は、補助線を利用して運転支援処理の実行タイミングを決定するようにしてもよい。その場合、車両の進路から外れた位置に存在する物体や比較的小さい物体に対しても適当なタイミングで運転支援処理を実行することができる。
【0011】
また、決定手段は、運転支援処理を実行する際に必要となる障害物の認識処理において補助線の範囲に物体が存在すると仮定して障害物の認識処理を行ったり、運転支援処理を実行する際に必要となる走路の設定処理において補助線を利用して走路境界を定めたりすることも可能となる。
【0012】
本発明において、設定手段は、検出手段により検出された物体以外の基準に対する車両進行方向の傾斜角度、車両の速度(車速)、車両の運転者の意識低下度合い、物体が移動体であるか或いは静止体であるかを識別する情報、物体と車線境界との距離、検出手段による物体検出の信頼度、などをパラメータとして、補助線の長さを変更してもよい。
【0013】
たとえば、設定手段は、検出手段により検出された物体以外の基準に対する車両進行方向の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べ、前記補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、検出手段により検出された物体以外の基準に対する車両進行方向の傾斜角度が大きいときは小さいときに比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。検出手段により検出された物体以外の基準に対する車両進行方向の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べ、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量(たとえば、単位時間当たりの操舵量や単位時間当たりのブレーキ操作量など)やヨーレートが大きくなる。これに対し、検出手段により検出された物体以外の基準に対する車両進行方向の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量やヨーレートを小さくすることが可能となり、車両の姿勢を安定させつつ、物体との衝突や接近を回避することが可能になる。
【0014】
設定手段は、車速が高い場合は低い場合に比べ、補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、車速が高い場合は低い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。車速が高い場合は低い場合に比べ、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量やヨーレートが多くなる。また、車速が低い場合において、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、運転者が運転支援処理の実行対象を認識することができない可能性もある。これに対し、車速が高い場合は低い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、物体との衝突や接近を回避するために必要となる操作量やヨーレートを少なく抑えることが可能となり、車両の姿勢を安定させつつ、物体との衝突や接近を回避することが可能になる。さらに、運転者が運転支援処理の実行対象を認識し易くなる。
【0015】
設定手段は、車両の運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、運転者が物体を認識するタイミングや、運転者が物体との衝突や接近を回避するための運転操作を開始するタイミングが遅くなる可能性がある。これに対し、運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されるようになると、意識低下度合いが高い運転者に対して物体の存在を早期に報知することが可能とな
り、或いは意識低下度合いが高い運転者の運転操作を早期に補助することが可能となる。
【0016】
設定手段は、物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、物体と車両との相対距離が短時間で縮まる可能性がある。これに対し、物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、物体と車両との相対距離が縮まる前に運転支援処理を実行することができる。
【0017】
設定手段は、物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、車両が車線を逸脱してから物体に接近するまでの猶予期間が短くなる。これに対し、物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、物体との衝突や接近を回避することが可能になるとともに、車線からの逸脱も回避することが可能になる。
【0018】
設定手段は、検出手段による物体検出の信頼度が高い場合は低い場合に比べ、補助線の長さを長くするようにしてもよい。かかる構成によると、たとえば、補助線に基づいて運転支援処理実行タイミングが決定されるシステムにおいて、検出手段による物体検出の信頼度が高い場合は低い場合に比べ、車両と検出物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されることになる。検出手段による物体検出の信頼度が低い場合は、検出物体が実在しない可能性もある。そのため、物体検出の信頼度が低く、且つ車両と検出物体との相対距離が長いときに運転支援処理が実施されると、車両の運転者は運転支援処理の実行対象を認識することができず、違和感や煩わしさを覚える可能性がある。これに対し、検出手段による物体検出の信頼度が高い場合は低い場合に比べ、運転支援処理が実行される時点における車両と検出物体との相対距離が長くされると、上記したような問題を回避することができる。
【0019】
なお、本発明に係わる設定手段は、上記した複数のパラメータの少なくとも2つを組み合わせて補助線の長さを決定してもよい。さらに、設定手段は、上記したパラメータに加え、または上記したパラメータの代わりに、車外の天候に相関するパラメータや車外の明るさに相関するパラメータを利用して補助線の長さを変更してもよい。たとえば、雨滴センサにより検出される雨滴が多い場合は少ない場合(雨滴が検出されない場合も含む)に比べ、補助線の長さが長くされてもよい。また、照度センサにより検出される照度が低い場合は高い場合に比べ、補助線の長さが長くされてもよい。雨滴が多い場合や照度が低い場合は、雨滴が少ない場合や照度が高い場合に比べ、運転者が物体を視認し難くなる。よって、雨滴が多い場合や照度が低い場合に雨滴が少ない場合や照度が高い場合より補助線の長さが長くされると、運転者が視認し難い物体との衝突や接近を回避することが可能になる。
【0020】
本発明において、検出手段により検出される物体以外の基準としては、連続的に延在または点在する指標を用いることができる。ここでいう「指標」は、車線境界を示す白線や黄色線などの道路標示に加え、道路脇に延在または点在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなどの立体物を含むものである。このような基準に従って補助線が設定されると、補助線を道路や車線と略平行に設定することができる。
【0021】
本発明において、検出手段により複数の物体が検出された場合に、設定手段は、車両との相対距離が最も短い物体について補助線を設定するようにしてもよい。その場合、車両に最も近い位置の物体に対して、車両が接近しないように走路が設定されたり、該物体へ車両が接近する可能性があることを運転者へ事前に報知したり、或いは該物体へ車両が接近しないように運転操作を補助したりすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両の運転支援システムにおいて、車両の周囲に存在する物体について、より有効な運転支援処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用する車両の運転支援システムの構成を機能別に示すブロック図である。
【図2】自車両の進路と物体との相対位置を示す図である。
【図3】補助線の設定イメージを示す図である。
【図4】複数の物体が存在する場合における補助線の設定イメージを示す図である。
【図5】補助線が設定された物体を対象とする運転支援処理の実行タイミングをイメージ化した図である。
【図6】補助線の長さを決定する手順をイメージ化した図である。
【図7】傾斜角度θと補助線の長さとの関係を示す図である。
【図8】運転支援処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】車速と補助線の長さとの関係を示す図である。
【図10】運転者の意識低下度合いと補助線の長さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ここでは、車両の走路や障害物を判定し、判定された走路からの逸脱や障害物との衝突を回避するための運転支援処理を行う運転支援システムについて説明する。なお、ここでいう「運転支援処理」は、車両が障害物を回避可能なタイミングで実行される処理であり、車両と障害物との衝突が不可避な場合に実行される衝突被害軽減処理より早い時期に実行される。また、以下の実施例において説明する構成は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。
【0025】
図1は、本発明を適用する車両の運転支援システムの構成を機能別に示すブロック図である。図1に示すように、車両には、運転支援用の制御ユニット(ECU)1が搭載されている。
【0026】
ECU1は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/Oインターフェイスなどを備えた電子制御ユニットである。ECU1には、レーダ装置2、車外用カメラ3、ドライバー用カメラ4、ヨーレートセンサ5、車輪速センサ6、ブレーキセンサ7、アクセルセンサ8、ウィンカースイッチ9、舵角センサ10、操舵トルクセンサ11などの各種センサが電気的に接続され、それらセンサの出力信号がECU1へ入力されるようになっている。
【0027】
レーダ装置2は、たとえば、車両の前部に取り付けられ、車両の前方へミリ波を送信するとともに車外の物体により反射された電波(反射波)を受信することにより、車両に対する物体の相対位置に関する情報(たとえば、相対距離や相対角度)を出力する。車外用カメラ3は、たとえば、車室内において車両前方を視野に捉えることができる位置に配置され、車両前方の画像を出力する。ドライバー用カメラ4は、たとえば、車室内において
運転者を視野に捉えることができる位置に配置され、運転者の画像を出力する。ヨーレートセンサ5は、たとえば、車体に取り付けられ、車両のヨーレートに相関する電気信号を出力する。車輪速センサ6は、車両の車輪に取り付けられ、車両の走行速度(車速)に相関する電気信号を出力するセンサである。
【0028】
ブレーキセンサ7は、たとえば、車室内のブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作トルク(踏力)に相関する電気信号を出力する。アクセルセンサ8は、たとえば、車室内のアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作トルク(踏力)に相関する電気信号を出力する。ウィンカースイッチ9は、たとえば、車室内のウィンカーレバーに取り付けられ、ウィンカーレバーが操作されたときにウィンカー(方向指示器)が示す方向に相関する電気信号を出力する。舵角センサ10は、たとえば、車室内のステアリングホイールに接続されたステアリングロッドに取り付けられ、ステアリングホイールの中立位置からの回転角度(回転角度)に相関する電気信号を出力する。操舵トルクセンサ11は、ステアリングロッドに取り付けられ、ステアリングホイールに入力されるトルク(操舵トルク)に相関する電気信号を出力する。
【0029】
また、ECU1には、ブザー12、表示装置13、電動パワーステアリング(EPS)14、電子制御式ブレーキ(ECB)15などの各種機器が接続され、それら各種機器がECU1によって電気的に制御されるようになっている。
【0030】
ブザー12は、たとえば、車室内に取り付けられ、警告音などを出力する装置である。表示装置13は、たとえば、車室内に取り付けられ、各種メッセージや警告灯を表示する装置である。電動パワーステアリング(EPS)14は、電動モータが発生するトルクを利用して、ステアリングホイールの操作を補助する装置である。電子制御式ブレーキ(ECB)15は、各車輪に設けられた摩擦ブレーキの作動油圧(ブレーキ油圧)を電気的に調整する装置である。
【0031】
ECU1は、上記した各種センサの出力信号を利用して各種機器を制御するために、以下のような機能を有している。すなわち、ECU1は、障害物情報処理部100、車線情報処理部101、意識低下判定部102、運転者意図判定部103、統合認識処理部104、共通支援判定部105、警報判定部106、制御判定部107、および制御量演算部108を備えている。
【0032】
障害物情報処理部100は、前記レーダ装置2から出力される物体の情報に基づいて、自車両を原点とする座標系における物体の位置座標を演算する。障害物情報処理部100は、物体の位置座標や物体に対する自車両のヨー角などを含む障害物情報を生成する。なお、障害物情報処理部100は、車外用カメラ3により撮像された画像に基づいて、障害物情報を生成してもよい。
【0033】
車線情報処理部101は、車外用カメラ3により撮像された画像に基づいて、車線に関する情報や車線に対する車両の姿勢に関する情報を含む車線情報を生成する。車線に関する情報は、たとえば、車線境界(または、道路境界)を示す指標(たとえば、車線境界を示す白線や黄色線などの道路標示や、道路脇に延在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなどの立体物など)に関する情報や、車線幅に関する情報である。車線に対する車両の姿勢に関する情報は、たとえば、車線境界を示す指標と車両との距離に関する情報、車線中央部に対する車両位置のオフセット量に関する情報、車線境界を示す指標に対する車両進行方向のヨー角に関する情報である。なお、車両がナビゲーションシステムを搭載している場合には、車線情報処理部101は、ナビゲーションシステムが有する地図情報とGPS情報から走路に関する情報を生成してもよい。
【0034】
意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮影された画像に基づいて、運転者の意識低下度合い(覚醒度)を判定する。たとえば、意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮影された画像から運転者の閉眼時間や閉眼頻度を演算し、閉眼時間または閉眼頻度が上限値を超えたときに運転者の意識が低下していると判定(覚醒度が低いと判定)する。また、意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮影された画像から運転者の顔の向きや視線の方向が車両進行方向から逸脱している時間を演算し、算出された時間が上限値を超えたときに運転者が脇見をしていると判定してもよい。
【0035】
運転者意図判定部103は、車輪速センサ6、ブレーキセンサ7、アクセルセンサ8、ウィンカースイッチ9、舵角センサ10、および操舵トルクセンサ11の出力信号に基づいて、ブレーキペダルの操作量の変化、アクセルペダルの操作量の変化、或いはステアリングホイールの操作(操舵)量の変化が運転者の意図に因るものであるか否かを判別する。
【0036】
統合認識処理部104は、前記障害物情報処理部100により生成された障害物情報と前記車線情報処理部101により生成された車線情報とに基づいて、車両が走行可能な領域(走路)を特定し、走路境界に対する車両のヨー角や、走路中央部に対する車両のオフセット量を求める。統合認識処理部104は、前記障害物情報により特定される物体を起点として道路と平行な補助線を設定し、設定された補助線の長さや位置に関する情報と前記車線情報とに基づいて走路を特定したり、補助線が設定された物体が自車両の障害物(運転支援処理の実行対象となる物体)となり得るか否かを判別したりする。なお、前記障害物情報により特定される物体について補助線を設定する方法については後述する。
【0037】
ところで、車線の幅が狭い道路においては、運転者は、車両を車線から逸脱させざるを得ない場合がある。これに対し、統合認識処理部104は、車線の幅が狭い道路については、車線境界を示す道路標示(白線や黄色線など)や車線脇に延在する立体物(縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなど)に関する情報に基づいて走路を設定するようにしてもよい。たとえば、車線の両側に道路標示が存在する場合には、統合認識処理部104は、車線中央部(車線両側に存在する道路標示間の中心)を基準にして当初の車線より広い走路を設定してもよい。また、車線の片側のみに道路標示が存在する場合には、車線情報処理部101は、道路標示より外側に基準位置を設定し、その基準位置から所定幅の範囲を走路に設定してもよい。ただし、拡大された走路内に物体が存在する場合には、走路の拡大設定を制限することが望ましい。
【0038】
共通支援判定部105は、前記統合認識処理部104により生成された情報と、前記意識低下判定部102の判定結果と、前記運転者意図判定部103の判定結果と、に基づいて、運転支援処理の実行を制限するか否かを判別する。たとえば、前記意識低下判定部102により運転者の意識が低下している、或いは運転者が脇見をしていると判定された場合は、運転支援処理の実行を許可する。また、前記運転者意図判定部103により運転者が意図的な操作を行っていると判定された場合は、運転支援処理の実行を制限する。
【0039】
警報判定部106は、前記共通支援判定部105により運転支援処理の実行が許可された場合に、ブザー12の鳴動タイミングや、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示タイミングを決定する。たとえば、警報判定部106は、車両幅方向における車両と走路境界との距離が所定距離以下となったときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示を行う。
【0040】
また、警報判定部106は、車両が走路境界に到達するまでの時間が所定時間以下となったときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表
示を行うようにしてもよい。なお、走路幅が狭い場合は、警報判定部106は、車両幅方向における車両と立体物(走路脇に存在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなど)との距離が所定距離以下となったときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示を行うようにしてもよい。車両がカーブに進入する場合や車両がカーブを走行している場合は、警報判定部106は、車両進行方向における車両と走路境界との距離が所定距離以下となったときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示を行うようにしてもよい。また、車両がカーブに進入する場合や車両がカーブを走行している場合は、警報判定部106は、車両が走路境界に到達する時間が所定時間以下となったときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示を行うようにしてもよい。
【0041】
ここで、前記した所定距離や所定時間は、車輪速センサ6の出力信号(車速)やヨーレートセンサ5の出力信号(ヨーレート)に応じて変更される値である。たとえば、車速が高いときは低いときに比べ、所定距離が長く設定されてもおく、もしくは所定時間が長く設定されてもよい。また、ヨーレートが大きいときは小さいときに比べ、所定距離が長く設定されてもよく、もしくは所定時間が長く設定されてもよい。
【0042】
なお、運転者に対する警告の方法は、ブザー12の鳴動や表示装置13における警告メッセージまたは警告灯の表示に限られず、たとえば、シートベルトの締め付けトルクを断続的に変化させる方法などを採用してもよい。
【0043】
制御判定部107は、前記共通支援判定部105により運転支援処理の実行が許可された場合に、走路からの逸脱や障害物との衝突を回避するために、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるタイミングを決定する。たとえば、制御判定部107は、車両幅方向における車両と走路境界または障害物との距離が所定距離以下となるときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。
【0044】
また、制御判定部107は、車両が走路境界または障害物に到達するまでの時間が所定時間以下となるときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。なお、走路幅が狭い場合は、制御判定部107は、車両幅方向における車両と立体物(走路脇に存在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなど)との距離が所定距離以下となるときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。
【0045】
車両がカーブに進入する場合や車両がカーブを走行している場合は、制御判定部107は、車両進行方向における車両と走路境界との距離が所定距離以下となるときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。なお、車両がカーブに進入する場合や車両がカーブを走行している場合は、制御判定部107は、車両が走路境界に到達する時間が所定時間以下となるときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。
【0046】
制御判定部107が使用する所定距離や所定時間は、前記警報判定部106が使用する所定距離や所定時間と同様に車速やヨーレートに応じて変更されるが、前記警報判定部106が使用する所定距離や所定時間より短く設定される。
【0047】
制御量演算部108は、前記制御判定部107により電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動要求が発生したときに、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算するとと
もに、算出された制御量と前記制御判定部107により判定されたタイミングとに従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。たとえば、制御量演算部108は、統合認識処理部104により生成された情報と、車輪速センサ6の出力信号(車速)と、ヨーレートセンサ5の出力信号(ヨーレート)と、をパラメータとして、走路逸脱を回避するために必要な目標ヨーレート、または障害物を回避するために必要な目標ヨーレートを演算する。詳細には、制御量演算部108は、走路境界または障害物と車両との相対距離をD、車両が走路境界または障害物へ到達する時間をT、走路境界または障害物に対する車両のヨー角をθとした場合に、以下の式により目標ヨーレートYtrgを演算する。
Ytrg=(θ・V・sinθ)/D
【0048】
制御量演算部108は、目標ヨーレートYtrgを引数として、電動パワーステアリング(EPS)14の制御量(操舵トルク)と電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量(ブレーキ油圧)を求める。その際、目標ヨーレートYtrgと操舵トルクとの関係、および目標ヨーレートYtrgとブレーキ油圧との関係は、予めマップ化されていてもよい。なお、目標ヨーレートYtrgが所定値(走路逸脱の回避や障害物の回避を操舵のみで達成し得るヨーレートの最大値)より小さいときは、電子制御式ブレーキ(ECB)15のブレーキ油圧は零に設定されてもよい。また、電子制御式ブレーキ(ECB)15が作動する際に、車両の左右輪の摩擦ブレーキに対して異なるブレーキ油圧が印加されると、電動パワーステアリング(EPS)14により発生させられるヨーレートと干渉するヨーレートが発生してしまう。そのため、左右輪の摩擦ブレーキに対して同等のブレーキ油圧が印加されることが望ましい。
【0049】
なお、車両を減速させる方法は、電子制御式ブレーキ(ECB)15により摩擦ブレーキを作動させる方法に限られず、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換(回生)させる方法や、変速機の変速比を変更させてエンジンブレーキを増大させる方法を用いてもよい。
【0050】
以上述べた運転支援システムによれば、障害物の存在や走路からの逸脱などを運転者に知らせたり、走路逸脱を回避するための操作や障害物を回避するための操作を補助したりすることが可能になる。
【0051】
次に、前記障害物情報により特定される物体について補助線を設定する方法については述べる。統合認識処理部104は、前記障害物情報処理部100から物体に関する障害物情報を受け取ったときに、その物体から自車両側へ向かって、道路と平行な補助線を設定する。詳細には、統合認識処理部104は、車線境界や道路境界を示す指標(たとえば、白線や黄色線などの道路標示、或いは道路脇に連続的に延在または点在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなどの立体物)と平行な補助線を設定する。
【0052】
このようにして補助線が設定されると、統合認識処理部104は、補助線を立体物と仮定して走路を特定したり、補助線が設定された物体が自車両の障害物(運転支援処理の実行対象となる物体)になり得るか否かの判定を行ったりすることができる。
【0053】
たとえば、統合認識処理部104は、補助線と自車両の進路(自車両が将来通過すると予測される経路)とが交差するか否かを判別する。統合認識処理部104は、補助線と自車両の進路とが交差しない場合は前記物体が障害物ではないと判定し、補助線と自車両の進路とが交差する場合は前記物体が障害物であると判定する。このような方法により障害物が判定されると、自車両の進路から僅かに外れた位置に存在する物体(自車両がその脇をすり抜ける可能性のある物体)や比較的小さい物体を障害物として認識することができる。
【0054】
なお、物体が自車両の進路から外れる場合としては、図2中の(a)に示すように物体Bが自車両Aの進路より手前(物体を基準として自車両側)に位置する場合に加え、図2中の(b)に示すように物体Bが自車両Aの進路より先(物体を基準として自車両の反対側)に位置する場合も考えられる。そのため、前記した補助線は、図3中の(a)および(b)に示すように、物体Bを起点として自車両A側および自車両Aと反対側の双方に延びるように設定されるようにしてもよい。
【0055】
また、統合認識処理部104は、障害物情報処理部100から複数の物体に関する障害物情報を受け取った場合は、自車両との相対距離が最も短い物体について補助線を設定する。たとえば、図4に示すように、2つの物体B1,B2が存在する場合は、統合認識処理部104は、自車両Aとの相対距離が短い物体B2について補助線を設定するものとする。
【0056】
このような方法により障害物の判定が行われると、自車両の進路上から僅かに外れた位置に存在する物体が障害物として扱われることになる。つまり、自車両と衝突し得る物体に加え、その近傍を自車両がすり抜ける可能性のある物体についても、障害物として扱われることになる。
【0057】
次に、上記した方法により障害物として認識された物体を対象とした運転支援処理の実行タイミングについて述べる。なお、以下の説明は、共通支援判定部105により運転支援処理の実行が許可された場合を想定したものである。
【0058】
警報判定部106は、補助線が設定された障害物に関する情報を統合認識処理部104から受け取った場合は、前記指標と平行な方向における自車両の位置が補助線の範囲内に入った時点で、運転支援処理(ブザー12の鳴動、表示装置13による警告メッセージや警告灯の表示、など)を行う。たとえば、警報判定部106は、図5に示すように、前記指標と平行な方向における自車両Aの位置が、物体Bから自車両側へ延びる補助線の終端位置(図5中のP1)に到達したときに、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージまたは警告灯の表示を行う。このように補助線を利用することにより、その近傍を自車両がすり抜ける可能性のある物体や比較的小さな物体の存在を運転者に知らせることができる。つまり、運転者に対して、前記物体との接近を回避するための運転操作を促すことが可能となる。
【0059】
ところで、物体から自車両側へ延びる補助線の長さが過剰になると、運転支援処理の実行対象を運転者が認識することができなかったり、運転支援処理の実行タイミングが運転者の運転感覚に対して過早となったりする可能性がある。
【0060】
そこで、本実施例においては、物体から自車両側へ延びる補助線の長さは、前記指標に対する自車両の進行方向の傾斜角度(言い換えると、補助線に対する自車両の進行方向の傾斜角度)θをパラメータにして決定されるようにしてもよい。たとえば、図6中の(a)に示すように傾斜角度θ1が大きい場合は、図6中の(b)に示すように傾斜角度θ2(<θ1)が小さい場合に比べ、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量(単位時間当たりの操舵量や単位時間当たりのブレーキ操作量)やヨーレートが大きくなる。
【0061】
よって、図7に示すように、傾斜角度θが大きい場合は小さい場合に比べ、補助線を長く設定することが好ましい。その場合、傾斜角度θが大きい場合は小さい場合に比べ、運転支援処理が実行される時点における自車両と物体との相対距離が長くなる。そのため、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量やヨーレートを小さくすることが可能となり、車両の姿勢を安定させつつ物体との衝突や接近を回避することが可能になる。さら
に、運転者は、物体との衝突や接近を回避するための運転操作を落ち着いて行うことも可能になる。なお、図7に示すような関係は、マップとしてECU1のROMに記憶されていてもよい。
【0062】
また、物体から自車両と反対側へ延びる補助線の長さは、予め実験などを利用した適合処理によって定められた固定値であってもよく、或いは物体から自車両側へ延びる補助線と同等の長さに設定されてもよい。
【0063】
以下、自車両の周囲に存在する物体を対象とした運転支援処理の実行手順について図8に沿って説明する。図8は、ECU1によって周期的に実行されるルーチンであり、ECU1のROMなどに予め記憶されているルーチンである。
【0064】
図8のルーチンでは、ECU1は、先ずS101においてレーダ装置2の出力信号から障害物情報を生成する。すなわち、ECU1は、前述した障害物情報処理部100として機能する。このようにECU1がS101の処理を実行することにより、本発明にかかる検出手段が実現される。
【0065】
S102では、ECU1は、車外用カメラ3の出力信号から車線情報を生成する。すなわち、ECU1は、前述した車線情報処理部101として機能する。
【0066】
S103では、ECU1は、前記S101で生成された障害物情報から自車両の周囲に物体が存在するか否かを判別する。S103において否定判定された場合は、ECU1は、本ルーチンの実行を一旦終了する。一方、S103において肯定判定された場合は、ECU1は、S104へ進む。
【0067】
S104では、ECU1は、前記S102で生成された車線情報から車線境界や道路境界を示す指標の延在方向または点在方向を特定し、特定された方向に対する自車両の進行方向の傾斜角度θを求める。次いで、ECU1は、前記傾斜角度θと図7に示したようなマップとを利用して補助線の長さ(物体から車両側へ延びる補助線の長さ)を決定する。続いて、ECU1は、物体を起点として、前記指標と平行に延びる補助線を設定する。このようにECU1がS104の処理を実行することにより、本発明に係わる設定手段が実現される。
【0068】
S105では、ECU1は、前記S104で設定された補助線と自車両の進路とが交差するか否かを判別する。S105において否定判定された場合は、ECU1は、本ルーチンの実行を一旦終了する。一方、S105において肯定判定された場合は、ECU1は、S106へ進む。なお、ECU1がS103乃至S105の処理を実行することにより、前述した統合認識処理部104の機能が実現される。
【0069】
S106では、ECU1は、前記指標と平行な方向における自車両の位置が補助線の範囲内に到達したか否かを判別する。すなわち、ECU1は、前記指標と平行な方向における自車両の位置が、物体から自車両側へ延びる補助線の端部位置に到達したか否かを判別する。S106において否定判定された場合は、ECU1は、該S106の処理を再度実行する。一方、S106において肯定判定された場合は、ECU1は、S107へ進む。
【0070】
S107では、ECU1は、ブザー12の鳴動、表示装置13による警告メッセージや警告灯の表示などの運転支援処理を実行する。すなわち、ECU1は、前述した警報判定部106として機能する。このようにECU1がS107の処理を実行することにより、本発明に係わる実行手段が実現される。
【0071】
以上述べたようにECU1が図8のルーチンを実行すると、自車両の進路から僅かに外れた位置に存在する物体や比較的小さな物体についても適当なタイミングで運転支援処理を実行することができる。その結果、運転者に対して、車両と物体との接近を回避するような運転操作を促すことができる。
【0072】
なお、本実施例においては、レーダ装置2により検出されたすべての物体について補助線を設定する例について述べたが、自車両の進路上から外れた位置に存在する物体についてのみ補助線を設定するようにしてもよい。その場合、自車両の進路上に位置する物体については、前述した警報判定部106や制御判定部107の説明で述べたように、車両が走路境界に到達するまでの時間、車両幅方向における車両と立体物との距離、車両進行方向における車両と走路境界との距離、などをパラメータとして、運転支援処理の実行タイミングを決定すればよい。
【0073】
なお、本実施例では、車線境界や道路境界を示す指標と平行な方向における自車両の位置が補助線の範囲内に入ったことをトリガにして警報判定部106による運転支援処理が実行される例について述べたが、車線境界や道路境界を示す指標と平行な方向における自車両の位置が補助線の範囲内に入ったことをトリガにして制御判定部107(および制御量演算部108)による運転支援処理(電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動)が実行されるようにしてもよい。また、警報判定部106による運転支援処理の実行タイミングを決定するための補助線と、制御判定部107による運転支援処理の実行タイミングを決定するための補助線とを個別に設定し、それぞれの補助線の終端位置を基準として警報判定部106および制御判定部107のそれぞれの運転支援処理が実行されるようにしてもよい。その際、警報判定部106による運転支援処理の実行タイミングを決定するための補助線は、制御判定部107による運転支援処理の実行タイミングを決定するための補助線より長く設定されることが好ましい。
【0074】
本実施例では、物体から車両側へ延びる補助線の長さを決定するためのパラメータとして、車線境界や道路境界を示す指標に対する車両進行方向の傾斜角度θを例に挙げたが、車速をパラメータとして用いてもよい。車速が高い場合は低い場合に比べ、物体との衝突や接近を回避する際に必要な操作量やヨーレートが大きくなる。また、車速が低い場合において、車両と物体との相対距離が長い時点で運転支援処理が実行されると、運転者が運転支援処理の実行対象を認識することができず、違和感や煩わしさを覚える可能性もある。よって、車速が高い場合は低い場合に比べ、補助線の長さが長くされてもよい。ただし、車速の増加に対して補助線の長さが限りなく長くされると、運転支援処理の実行タイミングが運転者の物体認識タイミングに対して過早となる可能性があるため、図9に示すように、上限値が設けられるようにしてもよい。
【0075】
物体から車両側へ延びる補助線の長さを決定するための他のパラメータとしては、意識低下判定部102の判定結果(運転者の意識低下度合い)を用いることもできる。運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、運転者が物体を認識するタイミングや、運転者が物体との衝突や接近を回避するための運転操作を開始するタイミングが遅くなる可能性がある。よって、運転者の意識低下度合いが高い場合に低い場合に比べ、補助線の長さが長くされてもよい。その場合、意識低下度合いが高い運転者に対して物体の存在を早期に報知することが可能となり、或いは意識低下度合いが高い運転者の運転操作を早期に補助することが可能となる。
【0076】
また、物体から車両側へ延びる補助線の長さは、物体が静止体である場合より移動体である場合の方が長くされてもよい。物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、物体と車両との相対距離が短時間で縮まる可能性がある。これに対し、物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、補助線の長さが長くされると、物体と車両との相対距
離が縮まる前に運転支援処理を実行することができる。
【0077】
さらに、物体から車両側へ延びる補助線の長さは、物体と車線境界との距離が長い場合より短い場合の方が長くされてもよい。物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、車両が車線を逸脱してから物体に接近するまでの猶予期間が短くなる。これに対し、物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、補助線の長さが長くされると、物体との衝突や接近をより確実に回避することが可能になる。
【0078】
なお、物体から車両側へ延びる補助線の長さは、レーダ装置2による物体検出の信頼度が低い場合より高い場合の方が長くされてもよく、雨滴センサにより検出される雨滴量が少ない場合より多い場合の方が長くされてもよく、もしくは、照度センサにより検出される車外の照度が高い場合より低い場合の方が長くされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ECU
2 レーダ装置
3 車外用カメラ
4 ドライバー用カメラ
5 ヨーレートセンサ
6 車輪速センサ
7 ブレーキセンサ
8 アクセルセンサ
9 ウィンカースイッチ
10 舵角センサ
11 操舵トルクセンサ
12 ブザー
13 表示装置
100 障害物情報処理部
101 車線情報処理部
102 意識低下判定部
103 運転者意図判定部
104 統合認識処理部
105 共通支援判定部
106 警報判定部
107 制御判定部
108 制御量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に存在する物体を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された物体から車両側へ向かって、前記物体以外の基準と平行に延びる補助線を設定する設定手段と、
前記補助線に基づいて運転支援処理を実行する実行手段と、
を備える車両の運転支援システム。
【請求項2】
請求項1において、前記設定手段は、前記基準に対する車両進行方向の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記設定手段は、車両の速度が高い場合は低い場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、前記設定手段は、車両の運転者の意識低下度合いが高い場合は低い場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項において、前記設定手段は、前記物体が移動体である場合は静止体である場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、前記設定手段は、前記物体と車線境界との距離が短い場合は長い場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項において、前記設定手段は、前記検出手段による物体検出の信頼度が高い場合は低い場合に比べ、前記補助線の長さを長くする車両の運転支援システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項において、前記物体以外の基準は、連続的に延在または点在する指標である車両の運転支援システム。
【請求項9】
請求項8において、前記指標は、車線境界を示す道路標示または道路脇に延在する立体物である車両の運転支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−84038(P2012−84038A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231276(P2010−231276)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】