説明

車両の道路形状予測装置及びこれを備えた車両の走行制御装置

【課題】車車間通信により検出された他車両の情報に基づいて、車両の進路前方における道路形状を予測することができるようにした、車両の道路形状予測装置、及び、これを備えた車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】
他車両判定手段18aにより他車両2が車両1の進路前方にいると判定された場合に、他車両情報取得手段10により取得された他車両2の車速情報及び他車両2の運転操作情報に基づいて、車両1の進路前方における道路形状を予測する道路形状予測手段18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信により取得された車両前方における他車両の運転操作情報を用いて車両前方の道路形状を予測する道路形状予測装置、及び、該道路形状予測装置において予測された道路形状に基づいて車両の走行にかかる制御を実施する車両の走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車(以下、車両ともいう)とその外部との間で通信をすることにより、種々の情報を検出し取得する技術が開発されている。かかる技術を用いるものとしては特許文献1及び2が挙げられる。
【0003】
特許文献1の技術では、自車両に先行する車両(単に、先行車両ともいう)の走行軌跡をなぞるように自車両の走行を制御する際に、先行車両及び自車両に装備された通信装置を介して自車両と先行車両との間で車車間通信を行なうことにより、先行車両に装備されたGPSモジュールにより検出された走行地点のログを先行車両の走行軌跡として自車両において取得する。
特許文献2の技術では、自車両に装備された通信装置によって無線通信網(携帯電話網)を介して情報通信センタと自車両との間で通信を行なうことにより、自車両において地図情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−100738号公報
【特許文献2】特開2005−38238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、GPSモジュールにより検出された先行車両の走行地点の情報を用いて先行車両の走行軌跡を把握するため、かかる先行車両の走行軌跡の精度はGPSモジュールの測位精度に依存することになる。したがって、先行車両のGPSモジュールが人工衛星からの電波の受信精度が低い地点の場合には先行車両の走行地点を精度良く検出することができない。かかる場合には、先行車両においてGPSモジュールにより検出された先行車両の走行地点をいわゆる自律航法により補完して推測したとしても、基本的にはGPSモジュールの測位精度に依存するため、先行車両の走行地点の検出精度を確保することが難しい。
また、特許文献2の技術では、無線通信網を介して通信を行なうため、無線通信網の圏外等のインフラが整備されていない地点では通信することができず、自車両において情報を取得することができない。
【0006】
これらより、GPSモジュールの人工衛星からの電波の受信精度が低い地点やインフラが整備されていない地点においても、車両の走行制御を効率良く又は精度良く実施するために、道路情報を記憶させたものを装備又は読出すことなく簡素な構成で車両前方の道路形状を予測することが要求されている。
【0007】
この点、車車間通信では、車両の走行地点の情報に限らず種々の情報を送受信することができる。かかる情報としては、車両のアクセル開度の情報やステアリング角の情報といった運転操作情報や車速の情報といった種々の情報が挙げられる。また、車両前方の道路形状を事前に予測することができれば、車両の走行制御を効率良く又は精度良く実施することができる。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、車車間通信により検出された他車両の情報に基づいて、車両の進路前方における道路形状を予測することができるようにした、車両の道路形状予測装置、及び、これを備えた車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の車両の道路形状予測装置は、車両の周辺における他車両の情報を通信により取得する他車両情報取得手段を備え、前記他車両情報取得手段により取得される情報には、少なくとも前記他車両の位置情報と前記他車両の車速情報と前記他車両の運転操作情報とが含まれ、少なくとも前記他車両の位置情報に基づいて、前記他車両が前記車両の進路前方にいるか否かを判定する他車両判定手段と、前記他車両判定手段により前記他車両が前記車両の進路前方にいると判定された場合に、前記他車両情報取得手段により取得された前記他車両の車速情報及び前記他車両の前記運転操作情報に基づいて、前記車両の進路前方における道路形状を予測する道路形状予測手段とを備えることを特徴としている。
前記他車両判定手段は、前記他車両の位置情報と前記車両の位置情報と前記車両に備えられた道路地図情報とに基づいて、前記他車両が前記車両の進路前方の道路上にいるか否かを判定することが好ましい。
【0010】
前記運転操作情報には、前記他車両のアクセル開度の情報が含まれ、前記道路形状予測手段は、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した場合に、前記車両の進路前方に登坂路があると予測することが好ましい。
【0011】
前記道路形状予測手段は、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下中の場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加中の場合に、前記車両の進路前方に登坂路の開始地点があると予測し、前記開始地点が予測されたら、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した状態が保持される場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した状態が保持される場合に、前記車両の進路前方に一定の勾配の登坂路があると予測し、前記一定の勾配の登坂路が予測されたら、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した状態から増加中の場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した状態から低下する場合に、前記車両の進路前方に登坂路の終了地点があると予測することが好ましい。
【0012】
また、本発明の車両の走行制御装置は、上記の車両の道路形状予測装置と、前記道路形状予測手段により予測された道路形状を用いて前記車両の走行制御を実施する走行制御手段とを備え、前記走行制御手段による走行制御は、前記車両の車速を維持する定速走行制御、前記車両と該車両の進路前方における前記他車両との車間距離を保持する車間制御、カーブ路に進入する際に前記車両を減速させるカーブ進入減速制御、及び、前記車両の惰性走行を行なう惰性走行制御の少なくとも何れかであることを特徴としている。
前記走行制御手段は、前記道路形状予測手段により予測された登坂路の情報を用いて、前記定速走行制御、前記車間制御、及び、前記惰性走行制御の少なくとも何れかを実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両の道路形状予測装置は、道路形状予測手段により他車両の車速情報及び他車両の運転操作情報に基づいて車両の進路前方における道路形状を予測するため、例えばGPSの人工衛星からの電波の受信精度の低い地点やかかる電波を受信できない地点であっても、また、インフラが整備されていない地点であっても、車両の進路前方の道路形状を予測することができる。また、車両の進路前方の他車両のリアルタイム情報に基づいて車両の進路前方の道路形状を予測するため、リアルタイム性を確保した道路形状を予測することができる。
【0014】
他車両のアクセル開度が一定であり且つ他車両の車速が低下した場合、又は、他車両の車速が一定であり且つ他車両のアクセル開度が増加した場合に、車両の進路前方に登坂路があると予測すれば、簡素な構成で車両の進路前方の登坂路を予測することができる。
さらに、他車両のアクセル開度が一定であり且つ他車両の車速が低下中の場合、又は、他車両の車速が一定であり且つ他車両のアクセル開度が増加中の場合に、車両の進路前方に登坂路の開始地点があると予測し、登坂路の開始地点が予測されたら、他車両のアクセル開度が一定であり且つ他車両の車速が低下した状態が保持される場合、又は、他車両の車速が一定であり且つ他車両のアクセル開度が増加した状態が保持される場合に、車両の進路前方に一定の勾配の登坂路があると予測し、一定の勾配の登坂路が予測されたら、他車両のアクセル開度が一定であり且つ他車両の車速が低下した状態から増加中の場合、又は、他車両の車速が一定であり且つ他車両のアクセル開度が増加した状態から低下する場合に、車両の進路前方に登坂路の終了地点があると予測することができる。また、これらの車両の進路前方における登坂路の開始地点,一定の勾配の区間及び終了地点を、勾配等が記録された詳細な地図情報を用いることなく簡素な構成で予測することができる。
【0015】
このように、アクセル開度が一定の条件下で登坂路等の道路の存在やこの開始地点及び終了地点を判定したり、車速が一定の条件下で登坂路等の道路の存在やこの開始地点及び終了地点を判定することにより、極めてシンプルなロジックで道路形状の予測にかかる精度を確保することができる。
【0016】
また、本発明の車両の走行制御装置によれば、走行制御手段により道路形状予測手段により予測された道路形状を用いて車両の走行制御を実施するため、GPSの人工衛星からの電波の受信精度の低い地点やインフラが整備されていない地点においても、簡素な構成で例えば定速走行制御や車間制御やカーブ進入減速制御といった車両の走行制御を効率良く又は精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置及びこれを備える車両の走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置の登坂路の判定を説明する図であり、自車両及び他車両と他車両の走行路に合わせた他車両の車速及びアクセル開度とを示し、(a)は走行路を示し、(b)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びアクセル開度の第1例を示し、(c)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びアクセル開度の第2例を示す。
【図3】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置の降坂路の判定を説明する図であり、自車両及び他車両と他車両の走行路に合わせた他車両の車速及びアクセル開度とを示し、(a)は走行路を示し、(b)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びアクセル開度の第1例を示し、(c)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びアクセル開度の第2例を示す。
【図4】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置のカーブ路の判定を説明する図であり、自車両及び他車両と他車両の走行路に合わせた他車両の車速及びステアリング角とを示し、(a)は走行路を示し、(b)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びステアリング角の第1例を示し、(c)は(a)に示す走行路を走行中の他車両における車速及びブレーキスイッチのON/OFF状態の第2例を示す。
【図5】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置及びこれを備える車両の走行制御装置において実施される車両の進路前方における登坂路及び降坂路の道路形状予測を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置及びこれを備える車両の走行制御装置において実施される車両の進路前方におけるカーブ路の道路形状予測を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例にかかる車両の道路形状予測装置における道路形状予測を説明するモデル図であり、(a)は車両の進路前方における他車両の走行する2つの走行ルートを示し、(b)は一方の走行ルートを走行する他車両の車速,アクセル開度及びステアリング角を示し、(c)は他方の走行ルートを走行する他車両の車速,アクセル開度及びステアリング角を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
〈一実施形態〉
[構成]
まず、一実施形態にかかる車両の道路形状予測装置及びこれを備えた車両の走行制御装置の構成を説明する。本実施形態にかかる車両は、例えばトラック又はバスといったいわゆる大型又は中型の自動車である。
【0019】
図1に示すように、車両(自車両)1は、アンテナ10aに接続され、車両1の周辺における他車両2の情報を取得する車車間通信装置(他車両情報取得手段)10と、各種のセンサ類と、車両1の走行にかかる制御を実施する走行制御ECU(走行制御手段)16とを備える。
車車間通信装置10と走行制御ECU16とは接続され、走行制御ECU16と各種センサ類とは接続される。
【0020】
車車間通信装置10は、車両1の周辺における他車両2との間で情報を通信し、車両1ではこの通信により他車両の情報を取得する。この車車間通信装置10には、周辺の他車両2と通信するためのアンテナ10aが接続され、通信により取得した他車両2の情報を伝達すべく走行制御ECU16に接続される。
【0021】
ここで、車両1の車車間通信による通信対象である他車両2の構成を説明する。
図1に示すように、他車両2は、アンテナ20aに接続され、他車両2の周辺における車両1に情報を発信する車車間通信装置20と、この車車間通信装置20に接続される各種のセンサ類とを備える。
他車両2に備えられた各種センサ類には、GPS21,車速センサ22,ステアリング角センサ23,ウインカースイッチ(SW)24,アクセルポジションセンサ(APS)25及びブレーキスイッチ(SW)26が含まれる。以下、これらのセンサ類を説明する。
【0022】
GPS21は、他車両2の位置情報を検出するものである。このGPS21は、図示しないGPSアンテナを介して他車両2の緯度・経度の情報を、車両2の位置情報として検出する。なお、この緯度・経度の情報を、後述する車速センサ22やステアリング角センサ23等により検出された情報を累積して方向を検出するいわゆる自律航法により補完して、他車両2の位置情報として扱うことができる。また、GPS21により検出された他車両2の位置情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0023】
なお、他車両2における位置情報の検出は、これに限らない。例えば、他車両2に装備された路車間通信装置を用いて、路側に設置された通信装置(路側装置ともいう)と他車両2との間で通信することにより、路側装置の位置情報を取得すれば他車両2の位置情報を検出することができ、また、この路側装置との通信により取得した位置情報によりGPS21により検出された他車両2の位置情報を補完することができる。
【0024】
車速センサ22は、他車両2の車速を検出するものである。この車速センサ22としては、例えば各従動輪の回転速度を検出する車輪速センサを適用することができ、この車輪速センサの場合、検出された各従動輪の回転速度の平均速度を算出することにより車速を検出することができる。また、車速センサ22により検出された他車両2の車速の情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0025】
ステアリング角センサ23は、他車両2の図示しないステアリングホイールの操舵角(ステアリング角)θSTを検出するものである。ここでは、ステアリング角θSTは、ステアリングホイールが右旋回操作されると正の値をとり、左旋回操作されると負の値をとる。例えば、このステアリング角センサ23としては、ステアリングホイールにその端部を接続されたステアリングシャフト近傍に付設される電磁誘導方式やエンコーダ方式のものを用いることができる。また、ステアリング角センサ23により検出されたステアリング角θSTの情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0026】
ウインカースイッチ24は、図示しないウインカー(方向指示器)に接続され、このウインカーを点滅させるものである。ウインカーが点滅していればウインカーによる方向指示がされている。すなわち、ウインカーが操作されていれば他車両2は車線変更や右左折を予定しており、ウインカーが操作されていなければ他車両2は車線変更等を予定していない。また、ウインカースイッチ24の操作情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0027】
アクセルポジションセンサ25は、他車両2の運転者によるアクセルペダルの踏込量に対応するアクセル開度θACCを検出するものである。このアクセルポジションセンサ25により検出されたアクセル開度θACCの情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0028】
ブレーキスイッチ26は、他車両2の運転者により操作されるフットブレーキ操作の有無を検出するものである。このフットブレーキスイッチ26は、フットブレーキ操作があればON状態となり、フットブレーキ操作がなければOFF状態となる。このブレーキスイッチ26のON/PFF情報は車車間通信装置20に伝達される。
【0029】
車車間通信装置20には、伝達される種々の情報は通信により他車両2から周辺の車両1に所定の周期で発信される。車車間通信装置20に伝達される種々の情報には、上述のように他車両2の位置情報及び車速情報や、ステアリング角θSTの情報,ウインカーの操作情報,アクセル開度θACCの情報及びブレーキスイッチ26のON/PFF情報といった運転操作情報が挙げられ、さらに他車両2の車両諸元にかかる情報が含まれる。かかる車両諸元の情報としては、他車両2のステアリングギヤ比や、乗用車やトラックといった車両種別の情報が挙げられる。
【0030】
このように、他車両2は車車間通信装置20を有し、車両1は車車間通信装置10を有することにより、他車両2の種々の情報を車両1に発信することができ、車両1において他車両2の種々の情報を取得することができる。なお、この他車両2の情報の取得は、車車間通信を行なっている際、即ち車両1の始動中には常時周期的に実施される。
【0031】
以下、車両1の構成の詳細を説明する。
車両1に備えられた各種センサ類には、GPS11,車速センサ12,ステアリング角センサ13,ウインカースイッチ(SW)14及び勾配センサ15が含まれる。以下、これらのセンサ類を説明する。
GPS11は、車両1の位置情報を検出するものである。このGPS11のその他の構成は他車両2のGPS21と同様である。また、GPS11により検出された車両1の位置情報は走行制御ECU16に伝達される。
【0032】
車速センサ12は、車両1の車速を検出するものである。この車速センサ12のその他の構成は他車両2の車速センサ22と同様である。また、車速センサ12により検出された車両1の車速の情報は走行制御ECU16に伝達される。
【0033】
ステアリング角センサ13は、車両1の図示しないステアリングホイールの操舵角(ステアリング角)θSTを検出するものである。このステアリング角センサ13のその他の構成は他車両2のステアリング角センサ23と同様である。また、ステアリング角センサ13により検出されたステアリング角θSTの情報は走行制御ECU16に伝達される。
【0034】
ウインカースイッチ14は、図示しないウインカー(方向指示器)に接続され、このウインカーを点滅させるものである。このウインカースイッチ14のその他の構成は他車両2のウインカースイッチ24と同様である。また、ウインカースイッチ14の作動は走行制御ECU16により制御される。
【0035】
勾配センサ15は、車両1が現時点で走行している走行路の勾配を勾配値θsとして検出する。この勾配センサ15としては、傾斜センサを適用することができ、この場合、路面に対する車両の傾斜(前上がり,後上がり等)を推定し、これにより傾斜センサにより検出された値を補正すれば、より高精度に勾配値θsを検出することができる。
【0036】
勾配センサ15により検出された勾配値θsが正であれば走行路が登坂路であることを示し、勾配値θsが負であれば走行路が降坂路であることを示す。また、勾配センサ15により検出された勾配値θsの情報は走行制御ECU16に伝達される。
【0037】
走行制御ECU16には、車車間通信装置10により取得された他車両2の種々の情報と、上述のように車両1に装備された各種センサ類の情報とが所定の周期で伝達される。走行制御ECU16は、伝達されるこれらの情報を用いて車両1の走行にかかる制御を所定の周期で実施する。なお、走行制御ECU16は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。
【0038】
また、走行制御ECU16は、地図情報データベース17aから車両1の周辺における地図情報を読出し可能な周辺道路検出部(周辺道路検出手段)17と、他車両判定部(他車両判定手段)18aと、道路形状予測部(道路形状予測手段)18と、走行制御部(走行制御手段)19とを有する。
【0039】
地図情報データベース17aは、緯度・経度情報と対応付けされた道路データが記録されたものである。この道路データとしては、例えば交差点等の複数のノード間をリンクにより接続して地図を構成したものであって、交差点の座標に対応するリンクの始点と終点との座標,交差点間の距離に対応するリンクの長さを示すリンク長,リンクの道路種別(有料道路等),リンクの車線情報等を記録させたものを用いることができる。
周辺道路情報検出部17は、GPS11により検出された車両1の位置情報と地図情報データベース17aとに基づいて、車両1の周辺における道路情報を検出し、車両1が位置し走行する道路を検出する。
【0040】
他車両判定部18aは、自車両1の進路前方に他車両2がいるか否かを判定するものである。例えば、他車両判定部18aは、他車両2の位置情報と自車両1の周辺における道路情報とに基づいて、他車両2が自車両1の進路前方にいるか否かを判定する。なお、この場合の進路とは、自車両1が走行する道路のうち自車両1がこれから進入する部分である。
【0041】
ここでは、他車両判定部18aは、周辺道路検出部17により地図情報データベース17aを用いて検出された道路情報に基づいて他車両2の位置が自車両1の進路前方にいるか否かを判定するものを示すが、これに替えて、他車両判定部18aは、地図情報データベース17a及び周辺道路検出部17の何れも用いずに、車車間通信装置10を介して伝達された他車両2の位置情報と自車両1の位置情報とに基づいて、他車両2の位置が自車両1の進路前方にいるか否かを判定してもよい。この場合、自車両1の位置情報の履歴から自車両1の進行方向を推定し、この推定された自車両1の進行方向側(自車両1の位置情報の履歴が無い領域)にいる他車両2を自車両1の進路前方にいるものとして判定することができる。したがって、地図情報データベース17a及び周辺道路検出部17は、車両1に必須の構成ではない。
道路形状予測部18は、他車両2の車速情報及び運転操作情報(単に他車両2の情報ともいう)の変化を判定する。以下、道路形状予測部18による変化の判定について説明する。
【0042】
道路形状予測部18は、他車両2の情報の履歴を記憶し、他車両2の情報の履歴から、車速或いは運転操作情報の変化を判定する。この変化の判定は、所定時間に亘って他車両2の情報が変化している場合に変化ありと判定され、所定時間に亘って他車両2の情報が一定である場合には変化なし(一定)と判定される。この所定時間は、例えば数秒(3秒や5秒)といった運転操作の継続した意思が認められる時間をいう。なお、他車両2の車速情報とアクセル開度θACCの情報やステアリング角θSTの情報等の各運転操作情報とのそれぞれについて変化が判定される。
また、道路形状予測部18は、上記の他車両2の情報の変化の判定結果を、道路形状の予測に用いる。
【0043】
以下、道路形状予測部18による車両1の進路前方における道路形状の予測について説明する。
道路形状予測部18は、他車両判定部18aにより他車両2が自車両1の進路前方にいると判定された場合に、車車間通信装置10を介して検出された他車両2の車速情報及び他車両2のアクセル開度θACCの情報やステアリング角θSTの情報等の運転操作情報に基づいて、車両1の進路前方における道路形状を予測する。
【0044】
この道路形状予測部18は、他車両2のアクセル開度θACCの情報及び車速情報に基づいて、車両1の進路前方における登坂路又は降坂路の存在を予測する第1道路形状予測と、他車両2のステアリング角θSTの情報と車速情報又はブレーキスイッチ14のON/OFF情報とに基づいて、車両1の進路前方におけるカーブ路の存在を予測する第2道路形状予測とを実施する。
【0045】
まず、道路形状予測部18による第1道路形状予測について具体的に説明する。
第1道路形状予測は、他車両2の情報に基づいて車両1の進路前方における登坂路又は降坂路の存在を予測するものである。
他車両2が平坦路から登坂路に進入すると、それまでの車速を保持するためにはそれまでのアクセル開度θACCを増加させることが必要になり、逆に、それまでのアクセル開度θACCを一定に保持していたのではそれまでの車速を保持することはできず、車速は低下してしまう。
【0046】
したがって、車速が一定であるにもかかわらずアクセル開度θACCが増加中の場合には、道路形状予測部18により車速情報は変化なし(一定)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化(増加)ありと判定され、他車両2が平坦路から登坂路に進入したものと予測することができる。また、アクセル開度θACCが一定であるにもかかわらず車速が低下中の場合にも、道路形状予測部18により車速情報は変化(低下)ありと判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定され、他車両2が平坦路から登坂路に進入する地点(登坂路の開始地点)を予測することができる。
【0047】
なお、車両が進入した登坂路の勾配が略一定であれば、車両が登坂路に進入後、この登坂路を走行している間は、車速を一定にするには、アクセル開度θACCを登坂路の勾配に応じた大きさまで増加した状態に保持する必要があり、アクセル開度θACCが一定であれば、車速が登坂路の勾配に応じた速度まで低下した状態に保持されることになる。
【0048】
したがって、他車両2が登坂路に進入した後、車速が一定に保持され且つアクセル開度θACCが登坂路の勾配に応じた大きさまで増加した状態に保持されれば、道路形状予測部18により車速情報は変化なし(一定)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は増加した状態で変化なし(保持)と判定され、他車両2が一定勾配の登坂路を走行中であると予測することができ、他車両2が登坂路に進入した後、アクセル開度θACCが一定に保持され車速が低下した状態に保持されれば、同様に道路形状予測部18により車速情報は低下した状態で変化なし(保持)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定され、車両1が一定勾配の登坂路を走行中であると予測することができる。
【0049】
そして、他車両2が登坂路から平坦路に進入すると、それまでの車速を保持するためにはそれまでの登坂路におけるアクセル開度θACCを低下させることが必要になり、逆に、それまでのアクセル開度θACCを一定に保持していれば、登坂路において低下した車速が平坦路に応じた速度に次第に増加回復していくことになる。
【0050】
したがって、他車両2が登坂路に進入した後、車速が一定に保持されながらアクセル開度θACCが低下されれば、道路形状予測部18により車速情報は変化なし(一定)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化(低下)ありと判定され、他車両2が登坂路から平坦路に進入する地点(登坂路の終了地点)を推定することができ、他車両2が登坂路に進入した後、アクセル開度θACCが一定に保持され車速が増加回復したら、道路形状予測部18によりアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定されるとともに車速情報は変化(増加)ありと判定され、他車両2が登坂路から平坦路に進入する地点(登坂路の終了地点)を推定することができる。
【0051】
一方、他車両2が平坦路から降坂路に進入すると、それまでの車速を保持するためにはそれまでのアクセル開度θACCよりも低下させることが必要になり、逆に、それまでのアクセル開度θACCを一定に維持していたのではそれまでの車速を保持することはできず、車速は増加してしまう。
【0052】
したがって、車速が一定であるにもかかわらずアクセル開度θACCが低下した場合には、道路形状予測部18により車速情報は変化なし(一定)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化(低下)ありと判定され、他車両2が平坦路から降坂路に進入する地点(降坂路の開始地点)を予測することができる。また、アクセル開度θACCが一定であるにもかかわらず車速が増加した場合にも、同様に道路形状予測部18により車速情報は変化(増加)ありと判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定され、他車両2が平坦路から降坂路に進入する地点(降坂路の開始地点)を予測することができる。
【0053】
なお、車両が進入した降坂路の勾配が略一定であれば、車両が降坂路に進入後、この降坂路を走行している間に車速を一定にするには、アクセル開度θACCを降坂路の勾配に応じた大きさまで低下した状態に保持する必要があり、アクセル開度θACCが一定であれば、車速が降坂路の勾配に応じた速度まで増加した状態に保持されることになる。
【0054】
したがって、車速が一定であるにもかかわらずアクセル開度θACCが低下した状態が保持される場合には、道路形状予測部18により車速情報は変化なし(一定)と判定されるとともにアクセル開度θACCの情報は低下した状態で変化なし(保持)と判定され、他車両2が一定勾配の降坂路を走行中であると予測することができる。また、アクセル開度θACCが一定であるにもかかわらず車速が増加した状態である場合にも、同様に道路形状予測部18によりアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定されるとともに車速情報は増加した状態で変化なし(保持)と判定され、他車両2が一定勾配の降坂路を走行中であると予測することができる。
【0055】
そして、他車両2が降坂路から平坦路に進入すると、それまでの車速を保持するためにはそれまでの降坂路におけるアクセル開度θACCよりも増加させることが必要になり、逆に、それまでのアクセル開度θACCを一定に保持していれば、降坂路において増加した車速が平坦路に応じた速度に次第に低下回復していくことになる。
【0056】
したがって、他車両2が降坂路に進入した後、アクセル開度θACCが一定に保持されながら車速が低下したら、道路形状予測部18によりアクセル開度θACCの情報は変化なし(一定)と判定されるとともに車速情報は変化(低下)ありと判定され、他車両2が降坂路から平坦路に進入する地点(降坂路の終了地点)を予測することができる。また、他車両2が降坂路に進入した後、車速が一定に保持されながらアクセル開度θACCが増加されれば、同様に道路形状予測部18によりアクセル開度θACCの情報は変化(増加)ありと判定されるとともに車速情報は変化なし(一定)と判定され、他車両2が降坂路から平坦路に進入する地点(降坂路の終了地点)を予測することができる。
【0057】
これらより、道路形状予測部18は、登坂路から平坦路に進入した地点を前方の登坂路が終了する頂上と予測することができ、降坂路から平坦路に進入した地点を降坂路が終了する底と予測することができる。
【0058】
このように、道路形状予測部18は、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が低下した場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが増加した場合に、車両1の前方に登坂路があると予測する。
【0059】
また、道路形状予測部18は、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が増加した場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが低下した場合に、車両1の前方に降坂路があると予測する。
【0060】
なお、ここでいうアクセル開度θACCが一定とは、所定時間に亘ってアクセル開度θACCが一定に保持されることをいう。このアクセル開度θACCが一定に保持されるとは、予め設定された単位時間当たりの微小変化量以下の微小な踏込量変化(雑音成分)は無視することとする。
【0061】
また、ここでいう車速が一定とは、所定時間以上に亘って車速が一定に保持されることをいう。また、車速が一定に保持されるとは、例えば車速を維持するいわゆるオートクルーズ制御中に生ずる車速の変化等の若干の車速の変化分(雑音成分)に対応する微小なアクセル開度θACCの変化は無視することを意味する。
【0062】
これらの車速やアクセル開度θACCの情報の雑音成分は、ローパスフィルタにより除去することができる。このローパスフィルタとしては、情報取得時点の車速やアクセル開度θACCの情報をI(n)とし、この情報I(n)の微分値をd(n)とし、この情報取得時点の1周期直前の車速やアクセル開度θACCの情報の微分値をd(n−1)とし、フィルタ係数をkとすれば、下記の式(1)で表すことができる。
I(n)=k・I(n)+(1−k)・d(n−1)・・・(1)
【0063】
また、道路形状予測部18は、車両1前方の登坂路又は降坂路の勾配も予測する。以下、この勾配の予測について説明する。
道路形状予測部18は、車両1前方の他車両2のアクセル開度θACC及び車速の履歴を記憶し、この履歴が記憶された地点を自車両1が通過する際の自車両1の勾配センサ15により勾配値θsを記憶し、同地点の他車両2のアクセル開度θACC及び車速と車両1における勾配値θsとの関係に基づいて、今後の車両1前方の登坂路又は降坂路の勾配を予測する。
【0064】
次に、道路形状予測部18による第2道路形状予測について具体的に説明する。
第2道路形状予測は、他車両2の情報に基づいて車両1の進路前方におけるカーブ路の存在を予測するものである。ここでいうカーブ路とは、進入する際に減速又は制動が必要な曲率を有する道路をいう。すなわち、道路形状予測部18は、車両1の制御要求が高い特定のカーブ路を予測するものといえる。
他車両2が直線路からカーブ路に進入すると、カーブ路に沿って走行するにはステアリング操作とともに減速又は制動操作が必要になる。
【0065】
したがって、車速が低下中又はブレーキスイッチがON状態であり、且つ、ステアリング角θSTが所定角以上である場合には、道路形状予測部18によりステアリング角θSTの情報は変化ありと判定され、他車両2が直線路からカーブ路に進入したものと予測することができる。
このように、道路形状予測部18は、他車両2の車速が低下し且つ車両のステアリング角θSTが所定角以上である場合に、車両1の前方にカーブ路があると予測する。
【0066】
なお、ここでいうステアリング角θSTが所定角とは、運転者による操舵意思のない微小なステアリング角θSTの情報(雑音成分)を無視するために用いる微小角よりも大きい角度をいう。この雑音成分についても、ローパスフィルタを用いて除去することができる。また、ここでいうステアリング角θSTが所定角以上とは、ステアリング角θSTが正の所定角以上、又は、負の所定角以下であることをいう。
【0067】
また、道路形状予測部18は、カーブ路の曲率も予測する。この曲率の予測は、他車両2の車両諸元にかかる情報が車両1において検出された場合と、他車両2の車両諸元にかかる情報が車両1において検出されない場合とでそれぞれ曲率を予測する。
【0068】
他車両2の車両諸元にかかる情報が車両1において検出された場合、道路形状予測部18は、検出された他車両2のステアリングギヤ比等の車両諸元にかかる情報と、他車両2の車速情報と及びステアリング角θSTの情報とに基づいて、カーブ路の曲率を直接予測する。
【0069】
他車両2の車両諸元にかかる情報が車両1において検出されない場合、道路形状予測部18は、他車両2のステアリング角θST及び車速の履歴を記憶し、この履歴が記憶された地点を自車両1が通過する際の自車両1のステアリング角センサ13により検出されたステアリング角θSTと自車両1の車速やステアリングギヤ比等に基づいて曲率を算出し、この算出された同地点の曲率と他車両2のステアリング角θST及び車速との関係に基づいて他車両2のステアリングギヤ比を推定することにより、今後のカーブ路の曲率を予測する。
【0070】
また、道路形状予測部18は、他車両2のアクセル開度θACCの情報及び車速情報に基づいて、車両1の前方における平坦路も予測する。
他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が一定である場合に、道路形状予測部18は車両1の前方に平坦路があると予測する。
なお、道路形状予測部18は、他車両2の位置と自車両1の位置や車速に基づいて、現時点の車両1から進路前方の登坂路,降坂路,カーブ路及び平坦路までの距離又は到達時間を算出することができる。
【0071】
また、道路形状予測部18は、乗用車やトラックといった車両種別の車両諸元にかかる情報が検出された場合には、車両種別によって道路形状の予測ロジックを使い分ける。
例えば、乗用車よりも重量があるトラック等の車両種別では、運転者のアクセルペダルの踏込みによる加速操作等の運転操作に対する車両挙動のレスポンスが比較的悪いため、道路形状予測部18は、トラック等の重量のある種別の車両から取得された運転操作情報を用いる場合には、アクセル開度の変化に対して乗用車よりも大きく遅延して車速が変化することを補正し、道路形状を予測する。
【0072】
走行制御部19は、道路形状予測部18により予測された道路形状を用いて車両1の走行制御を実施するものである。この走行制御部19により実施される走行制御には、例えば、車速を目標車速に維持する定速走行制御、車両1と車両1の前方における他車両2との車間距離を保持する車間制御、カーブ進入減速制御、及び、登坂路の頂上手前又は降坂路の底手前において惰性走行を行なう惰性走行制御等が挙げられる。
【0073】
従来の技術では、定速走行制御や車間制御は燃料噴射弁やブレーキアクチュエータ等を作動させることにより駆動及び制動のフィードバック制御を行なうものであるが、本実施形態の走行制御部19は、これらの定速走行制御や車間制御にフィードフォワード制御を併用することができる。
【0074】
例えば、車両1の前方に登坂路があると予測された場合、走行制御部19による定速走行制御では、車両1前方の登坂路手前から駆動力を増加させ、又は、車両1前方の登坂路手前からフィードバックゲインを増加させる。これにより、定速走行制御における車速の変動を抑制することができ、車両1の走行制御を効率良く又は精度良く実施することができる。
【0075】
また、車両1の前方に降坂路があると予測された場合、走行制御部19による車間制御では、車両1前方の降坂路手前からフィードバックゲインを増加させる。これにより、車間制御における車間距離の変動を抑制することができ、車両1の走行制御を効率良く又は精度良く実施することができる。
【0076】
カーブ進入減速制御とは、カーブ路に進入する際に車両1を減速させ、車両1の安全を確保する制御である。このカーブ進入減速制御を実施するには、現時点の車両がカーブ路の手前にいることを判別する必要がある。本車両1は、地図情報データベース17a及び周辺道路検出部17を備えて無くても、又は、カーブ路の曲率の情報が記録された詳細な地図情報データベースを備えてなくても、前方のカーブ路を予測することができるため、簡素な構成でカーブ進入減速制御を実施することができる。
【0077】
惰性走行制御とは、登坂路の頂上手前又は降坂路の底の手前において惰性走行を行なうことにより燃費を向上させる制御である。この惰性走行制御を実施するには、現時点の車両が登坂路の頂上手前又は降坂路の底手前にいることを判別する必要がある。本車両1は、地図情報データベース17a及び周辺道路検出部17を備えて無くても、又は、道路勾配の情報が記録された詳細な地図情報データベースを備えてなくても、前方の登坂路の頂上及び降坂路の谷を予測することができるため、簡素な構成で惰性走行制御を実施することができる。
【0078】
[作用・効果]
本発明の一実施形態に係る車両の道路形状予測装置及びこれを備えた車両の走行制御装置は、上述のように構成されるため、図2に例示される状況では、以下のような制御を実施する。
図2(a)には、自車両1の前方を他車両2が走行している状況を示す。また、自車両1では他車両判定部18aにより他車両2が自車両1の進路前方にいると判定されており、道路形状予測部18は、車車間通信装置10を介して検出された他車両2の情報に基づいて車両1の前方における道路形状を予測する。なお、自車両1及び他車両2は図面左から右に向かって走行する。
【0079】
まず、図2(b)に例示する状況について説明する。
地点P1から地点P2は平坦路である。この区間を走行する他車両2のアクセル開度θACC及び車速vは何れも一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に平坦路を予測する。
【0080】
地点P2は平坦路から登坂路に変化する地点(登坂路の開始地点)であり、地点P2から地点P8は登坂路である。また、地点P2から地点P4に向けて走行路の勾配が増加する。
地点P2から地点P4の他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは低下中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に登坂路の開始地点を予測する。
【0081】
地点P4は走行路の勾配が変化しなくなる地点であり、地点P4から地点P6は勾配が一定の登坂路である。地点P4から地点P6の他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは低下した状態を保持している。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に一定の勾配の登坂路を予測する。
地点P6から地点P8に向けて走行路の勾配が低下する。この区間を走行する他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは増加中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に登坂路の終了地点を予測する。
【0082】
次に、図2(c)に例示する状況について説明する。なお、走行路については、上述の図2(b)の説明と同様である。
地点P1から地点P2までの他車両2のアクセル開度θACC及び車速vは、何れも一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に平坦路を予測する。
地点P2から地点P4の他車両2の車速は一定であり、他車両2のアクセル開度θACCは低下中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に登坂路の開始地点を予測する。
【0083】
地点P4から地点P6の他車両2のアクセル開度θACCは増加した状態を保持しており、他車両2の車速vは一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に一定の勾配の登坂路を予測する。
地点P6から地点P8の他車両2のアクセル開度θACCは低下中であり、他車両2の車速vは一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に登坂路の終了地点を予測する。
【0084】
また、図3に例示される状況では、以下のような制御を実施する。
図3(a)には、自車両1の進路前方を他車両2が走行している状況を示す。また、自車両1では他車両判定部18aにより他車両2が自車両1の進路前方にいると判定されており、道路形状予測部18は、車車間通信装置10を介して検出された他車両2の情報に基づいて自車両1の前方における道路形状を予測する。なお、自車両1及び他車両2は図面左から右に向かって走行する。
【0085】
まず、図3(b)に例示する状況について説明する。
地点P11から地点P12は平坦路である。この区間を走行する他車両2のアクセル開度θACC及び車速vは何れも一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に平坦路を予測する。
地点P12は平坦路から降坂路に変化する地点(降坂路の開始地点)であり、地点P12から地点P18は降坂路である。また、地点P12から地点P14に向けて走行路の勾配が低下する。
【0086】
地点P12から地点P14の他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは増加中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に降坂路の開始地点を予測する。
地点P14は走行路の勾配が変化しなくなる地点であり、地点P14から地点P16は勾配が一定の降坂路である。地点P14から地点P16の他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは増加して状態を保持する。このため、道路形状予測部18は車両1の進路前方に一定の勾配の降坂路を予測する。
【0087】
地点P16から地点P18に向けて走行路の勾配が増加する。この区間を走行する他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは増加中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に降坂路の終了地点を予測する。
【0088】
次に、図3(c)に例示する状況について説明する。なお、走行路については、上述の図3(b)の説明と同様である。
地点P11から地点P12までの他車両2のアクセル開度θACC及び車速vは、何れも一定である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に平坦路を予測する。
地点P12から地点P14の他車両2の車速は一定であり、アクセル開度θACCは低下中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に降坂路の開始地点を予測する。
【0089】
地点P14から地点P16の他車両2の車速vは一定であり、他車両2のアクセル開度θACCは低下した状態を保持している。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に一定の勾配の降坂路を予測する。
地点P16から地点P18の他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、他車両2の車速vは増加中である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に降坂路の終了地点を予測する。
【0090】
また、図4に例示される状況では、以下のような制御を実施する。
図4(a)には、自車両1の進路前方を他車両2が走行している状況を示す。
まず、図4(b)に例示する状況について説明する。
地点P21から地点P22は直線路である。この区間を走行する他車両2のステアリング角θSTは所定角未満であり、車速vは低下中である。
【0091】
地点P22から地点P25は曲率を有するカーブ路であり、このカーブ路は、曲率が逓増する緩和曲線形状のカーブ路の地点P22(カーブ路の開始地点)から地点P23の区間と、曲率が一定の円弧曲線形状のカーブ路の地点P23から地点P25の区間とから構成される。
【0092】
地点P22から地点P23の他車両2のステアリング角θSTは増加して所定角以上となり、車速vは低下した状態を保持している。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方にカーブ路の開始地点を予測する。
地点P23から地点P25の他車両2のステアリング角θSTは所定角以上の状態を保持し、車速vは低下した状態を保持している。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に減速を要する曲率が一定のカーブ路を予測することができる。
【0093】
次に、図4(c)に例示する状況について説明する。なお、走行路については、上述の図4(b)の説明と同様である。
地点P21から地点P22の他車両2のステアリング角θSTは所定角未満であり、ブレーキスイッチ24はON状態である。
【0094】
また、地点P22から地点P23の他車両2のステアリング角θSTは増加して所定角以上となり、ブレーキスイッチ24はOFF状態である。また、地点P23から地点P25の他車両2のステアリング角θSTは所定角以上の状態を維持し、ブレーキスイッチ24はOFF状態である。このため、道路形状予測部18は、車両1の進路前方に制動を要する曲率が一定のカーブ路を予測することができる。
【0095】
次に、図5を用いて、道路形状予測部18による登坂路又は降坂路の道路形状予測にかかる制御フローを説明する。なお、この制御フローは、道路形状予測部18により周期的に実施される。
ステップS1では、他車両2の車速情報及びアクセル開度情報等の運転操作情報を取得する。そして、ステップS10へ移行する。
【0096】
ステップS10では、他車両2のアクセル開度θACCは一定かを判定する。他車両2のアクセル開度θACCが一定であればステップS12へ移行し、他車両2のアクセル開度θACCが増加又は低下していればステップS16へ移行する。
ステップS12では、他車両2の車速vは低下しているかを判定する。他車両2の車速vが低下していればステップS14へ移行し、他車両2の車速vが一定又は増加していればステップS20へ移行する。
【0097】
ステップS14では、自車両1の前方に登坂路があると予測する。そして今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、これらのステップS10及びS12の判定は、上述の図2(b)に示す状況の道路形状予測に対応する。
【0098】
また、ステップS16では、他車両2のアクセル開度θACCは増加したかを判定する。他車両2のアクセル開度θACCが増加していればステップS18へ移行し、他車両2のアクセル開度θACCが低下していればステップS24へ移行する。
【0099】
ステップS18では、他車両2の車速vは一定であるかを判定する。他車両2の車速vが増加又は低下していれば今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、これらのステップS16及びS18の判定は、上述の図2(c)に示す状況の道路形状予測に対応する。
また、ステップS20では、他車両2の車速vは増加したかを判定する。他車両2の車速vが増加すればステップS22へ移行し、他車両2の車速vが一定であれば今回の制御周期を終了(エンド)する。
【0100】
なお、ステップS10及びS20の判定は、上述の図3(b)に示す状況の道路形状予測に対応する。
ステップS22では、自車両1の前方に降坂路があると予測する。そして今回の制御周期を終了(エンド)する。
【0101】
また、ステップS24では、他車両2の車速vは一定かを判定する。他車両2の車速vが一定であればステップS26へ移行し、他車両2の車速vが増加又は低下すれば今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、ステップS16及びS24の判定は、上述の図3(c)に示す状況の道路形状予測に対応する。
【0102】
ステップS26では、自車両1の前方に降坂路があると予測する。そして今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、図5に示す制御フローは例示であり、車両1の進路前方の登坂路及び降坂路があることを予測できればこれに限らない。
【0103】
ステップS1の後、例えば、ステップS10及びS14のみを判定し、又は、ステップS16及びステップS18のみを判定して、車両1の進路前方に登坂路があると予測してもよい。また、ステップS1の後、ステップS10及びステップS20のみを判定し、又は、ステップS16及びステップS24のみを判定して、車両1の進路前方に降坂路があると予測してもよい。これらの登坂路又は降坂路の予測にかかる判定フローは、それぞれ独立し、並行して行なうことができる。
【0104】
次に、図6を用いて、道路形状予測部18によるカーブ路の道路形状予測にかかる制御フローを説明する。なお、この制御フローは、道路形状予測部18により周期的に実施される。
ステップA1では、他車両2の車速情報及びステアリング角θSTの情報及びブレーキスイッチ24のON/OFF情報を取得する。
【0105】
ステップA10では、他車両2のステアリング角θSTは所定角以上であるかを判定する。他車両2のステアリング角θSTが所定角以上であればステップA12へ移行し、他車両2のステアリング角θSTが所定角未満であればステップA16へ移行する。
ステップA12では、他車両2の車速vは低下しているかを判定する。他車両2の車速vが低下していればステップA14へ移行し、他車両2の車速vが一定又は増加していればステップA16へ移行する。
【0106】
ステップA14では、自車両1の前方にカーブ路があると予測する。そして今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、これらのステップA10及びA12の判定は、上述の図4(b)に示す状況の道路形状予測に対応する。
【0107】
また、ステップA16では、他車両2のブレーキスイッチ26はON状態かを判定する。他車両2のブレーキスイッチ26がON状態であればステップA14へ移行し、他車両2のブレーキスイッチ26がOFF状態であれば今回の制御周期を終了(エンド)する。
なお、これらのステップA10及びA12の判定は、上述の図4(c)に示す状況の道路形状予測に対応する。
【0108】
この図6に示す制御フローは例示であり、車両1の進路前方にカーブ路があることを予測できればこれに限らない。
ステップA1の後、例えば、ステップA10及びA12のみ判定し、又は、ステップA10及びA16のみ判定して、車両1の進路前方にカーブ路があることを予測してもよい。このカーブ路の予測にかかる判定フローは、それぞれ独立して、並行して行なうことができる。
【0109】
したがって、本発明の車両の道路形状予測装置及びこれを備えた車両の走行制御装置によれば、道路情報データベース17a及び周辺道路情報検出部17を必須の構成とすることなく、道路形状予測部18により他車両2の車速情報及び他車両2のアクセル開度θACCの情報ステアリング角θSTの情報やブレーキスイッチ26のON/OFF情報等の運転操作情報に基づいて車両1前方における道路形状を予測するため、例えばGPSの人工衛星からの電波の受信精度の低い地点やインフラが整備されていない地点であっても、車両1の進路前方の道路形状を予測することができる。また、車両1の進路前方の他車両2のリアルタイム情報に基づいて車両1の進路前方の道路形状を予測するため、リアルタイム性を確保しつつ、登坂路,降坂路,カーブ路又は平坦路といった詳細な道路形状を予測することができる。
【0110】
他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速vが低下した場合、又は、他車両2の車速vが一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが増加した場合に、車両1の前方に登坂路があると予測すれば、簡素な構成で車両1の進路前方の登坂路を予測することができる。
【0111】
また、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が増加した場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが低下した場合に、自車両1の進路前方に降坂路があると予測すれば、簡素な構成で車両1の進路前方の降坂路を予測することができる。
【0112】
さらに、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が低下中の場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが増加中の場合に、車両1の進路前方に登坂路の開始地点があると予測し、登坂路の開始地点が予測されたら、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が低下した状態が保持される場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが増加した状態が保持される場合に、車両1の進路前方に一定の勾配の登坂路があると予測し、一定の勾配の登坂路が予測されたら、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が低下した状態から増加中の場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが増加した状態から低下する場合に、車両1の進路前方に登坂路の終了地点があると予測することができる。
【0113】
また、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が増加中の場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが低下中の場合に、車両1の進路前方に降坂路の開始地点があると予測し、降坂路の開始地点が予測されたら、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が増加した状態が保持される場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが低下した状態が保持される場合に、車両1の進路前方に一定の勾配の降坂路があると予測し、一定の勾配の降坂路が予測されたら、他車両2のアクセル開度θACCが一定であり且つ他車両2の車速が増加した状態から低下中の場合、又は、他車両2の車速が一定であり且つ他車両2のアクセル開度θACCが低下した状態から増加する場合に、車両1の進路前方に降坂路の終了地点があると予測することができる。
これらの車両の進路前方の登坂路及び降坂路の開始地点,一定の勾配の区間及び終了地点を、勾配等が記録された詳細な地図情報を用いることなく簡素な構成で予測することができる。
【0114】
このように、アクセル開度θACCが一定の条件下で登坂路や降坂路の存在やこれらの開始地点及び終了地点を判定したり、車速が一定の条件下で登坂路や降坂路の存在やこれらの開始地点及び終了地点を判定することにより、極めてシンプルなロジックで道路形状の予測にかかる精度を確保することができる。
【0115】
他車両2のステアリング角θSTが所定角以上であり、且つ、他車両2において車速が低下又はブレーキスイッチ24がON状態の場合に、車両1の進路前方にカーブ路があると予測するため、簡素な構成で減速や制動を要するカーブ路、即ち、車両1の制御要求が高い特定のカーブ路を予測することができる。
【0116】
また、本発明の車両の走行制御装置によれば、走行制御部19により道路形状予測部18により予測された道路形状を用いて車両1の走行制御を実施するため、GPSの人工衛星からの電波の受信精度の低い地点やインフラが整備されていない地点においても、簡素な構成で例えば定速走行制御,車間制御,惰性走行制御やカーブ進入減速制御といった車両の走行制御を効率良く又は精度良く実施することができる。
【0117】
〈実施例〉
以下、図7を用いて本発明にかかる実施例を更に詳細に説明する。
まず、図7(a)に示す一方の走行ルートについて説明する。
一方の走行ルートを走行する他車両2は、地点Pa,地点Pb,地点Pc,地点Pd,地点Pe,地点Pfの順にこれらの各地点を通過する。
【0118】
地点Paから地点Pbは平坦な直線ルートであり、地点Pbから地点Pcは直線状の登坂ルートであり、地点Pcから地点Pdは平坦路を右折するルートであり、地点Pdら地点Peは直線状の降坂ルートであり、地点Peから地点Pfは平坦な直線ルートである。
図7(b)には、この一方の走行ルートを走行する他車両2の車速vの情報,アクセル開度θACCの情報及びステアリング角θSTの情報を示す。
【0119】
地点Paから地点Pbでは、他車両2の車速v及びアクセル開度θACCは一定であり、ステアリング角θSTは所定角未満である。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Paから地点Pbの間の区間を平坦路と予測する。
地点Pbから地点Pcは、他車両2の車速v及びステアリング角θSTは所定角未満であり、他車両2のアクセル開度θACCは増加する。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Pbから地点Pcの間の区間を登坂路と予測する。
【0120】
地点Pcから地点Pdは、他車両2の車速v及びアクセル開度θACCは一定であり、他車両2のステアリング角θSTは所定角以上である。この場合、道路形状予測部18は、地点Pcから地点Pdの区間を減速等が必要なカーブ路として予測しない。なお、道路形状予測部18は、他車両2のウインカースイッチ24の情報に基づいて、他車両2が車線変更したと予測することができる。
【0121】
地点Pdから地点Peは、他車両2のアクセル開度θACCは一定であり、ステアリング角θSTは所定角未満であり、他車両2の車速vは増加する。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Pbから地点Pcの間の区間を降坂路と予測する。
地点Peから地点Pfは、他車両2の車速v及びアクセル開度θACCは一定であり、ステアリング角θSTは所定角未満である。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Peから地点Pfの間の区間を平坦路と予測する。
【0122】
次に、図7(a)に示す他方の走行ルートについて説明する。
他方の走行ルートを走行する他車両2は、地点Pa,地点Pb,地点Pc,地点Pg,地点Ph,地点Piの順にこれらの各地点を通過する。
地点Paから地点Pcまでは一方の走行ルートと同様であり、地点Pcから地点Pgは平坦な直線ルートであり、地点Pgから地点Phは直線状の登坂ルートであり、地点Phから地点Piは平坦にカーブするルートである。
【0123】
図7(c)には、この他方の走行ルートを走行する他車両2の車速vの情報,アクセル開度θACCの情報及びステアリング角θSTの情報を示す。
地点Paから地点Pcまでは上記の図7(b)の説明と同様であり、地点Pcから地点Pgでは、他車両2の車速v及びアクセル開度θACCは一定であり、ステアリング角θSTは所定角未満である。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Pcから地点Pgの区間を平坦路と予測する。
【0124】
地点Pgから地点Phでは、他車両2の車速vは一定であり、ステアリング角θSTは所定角未満であり、他車両2のアクセル開度θACCは増加する。これより、道路形状予測部18は、車速v及びアクセル開度θACCの情報に基づいて地点Pbから地点Pcの間の区間を登坂路と予測する。
【0125】
地点Phから地点Piでは、他車両2の車速v及びアクセル開度θACCは低下し、他車両2のステアリング角θSTは所定角未満である。この場合、道路形状予測部18は、車速v及びステアリング角θSTの情報に基づいて地点Phから地点Piの区間を減速等が必要なカーブ路と予測する。
【0126】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、他車両判定部は、地図情報を用いて他車両が自車両の進路前方にいることを判定するものを示したが、これに限らず、他車両の位置情報の履歴(走行履歴)と自車両の位置情報の履歴(走行履歴)とを比較することにより、他車両が自車両の進路前方にいることを判定してもよい。この場合、他車両判定部は、他車両の走行履歴と自車両の走行履歴と重複した場合に、他車両が自車両の進路前方にいると判定することができる。
【0127】
また、自車両において情報を取得される他車両は、一台に限らず、複数台でもよい。この場合、複数台の他車両の情報を組み合わせることにより、道路形状予測部による予測精度を向上させることができる。
また、道路形状予測部は、他車両のウインカースイッチのON/OFF情報と自車両のウインカースイッチのON/OFF情報とに基づいて、他車両のウインカースイッチがOFF状態且つ自車両のウインカースイッチがOFF状態の場合に道路形状を予測し、自車両及び他車両の何れか一方のみのウインカースイッチがON状態又はOFF状態であれば道路形状を予測しない構成としてもよい。これによれば、自車両及び他車両がともに右左折等を予定しておらず、自車両は他車両の走行路を続いて走行する可能性が高くなるため、より精度良く自車両の進路前方における道路形状を予測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の車両の走行制御装置は、トラック又はバスといった大型又は中型の自動車のみならず乗用車等の小型自動車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 自車両
2 他車両
10 車車間通信装置(他車両情報検出手段)
10a アンテナ
11 GPS
12 車速センサ
13 ステアリング角センサ
14 ウインカースイッチ
15 勾配センサ
16 走行制御ECU(走行制御手段)
17 周辺道路情報検出部(周辺道路情報検出手段)
17a 地図情報データベース
18 道路形状予測部(道路形状予測手段)
18a 他車両判定部(他車両判定手段)
19 走行制御部(走行制御手段)
20 車車間通信装置
20a アンテナ
21 GPS
22 車速センサ
23 ステアリング角センサ
24 ウインカースイッチ
25 アクセル開度センサ
26 ブレーキスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺における他車両の情報を通信により取得する他車両情報取得手段を備え、
前記他車両情報取得手段により取得される情報には、少なくとも前記他車両の位置情報と前記他車両の車速情報と前記他車両の運転操作情報とが含まれ、
少なくとも前記他車両の位置情報に基づいて、前記他車両が前記車両の進路前方にいるか否かを判定する他車両判定手段と、
前記他車両判定手段により前記他車両が前記車両の進路前方にいると判定された場合に、前記他車両情報取得手段により取得された前記他車両の車速情報及び前記他車両の前記運転操作情報に基づいて、前記車両の進路前方における道路形状を予測する道路形状予測手段とを備える
ことを特徴とする、車両の道路形状予測装置。
【請求項2】
前記他車両判定手段は、前記他車両の位置情報と前記車両の位置情報と前記車両に備えられた道路地図情報とに基づいて、前記他車両が前記車両の進路前方の道路上にいるか否かを判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の道路形状予測装置。
【請求項3】
前記運転操作情報には、前記他車両のアクセル開度の情報が含まれ、
前記道路形状予測手段は、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した場合に、前記車両の進路前方に登坂路があると予測する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両の道路形状予測装置。
【請求項4】
前記道路形状予測手段は、
前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下中の場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加中の場合に、前記車両の進路前方に登坂路の開始地点があると予測し、
前記開始地点が予測されたら、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した状態が保持される場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した状態が保持される場合に、前記車両の進路前方に一定の勾配の登坂路があると予測し、
前記一定の勾配の登坂路が予測されたら、前記他車両のアクセル開度が一定であり且つ前記他車両の車速が低下した状態から増加中の場合、又は、前記他車両の車速が一定であり且つ前記他車両のアクセル開度が増加した状態から低下する場合に、前記車両の進路前方に登坂路の終了地点があると予測する
ことを特徴とする、請求項3記載の車両の道路形状予測装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の道路形状予測装置と、
前記道路形状予測手段により予測された道路形状を用いて前記車両の走行制御を実施する走行制御手段とを備え、
前記走行制御手段による走行制御は、前記車両の車速を維持する定速走行制御、前記車両と該車両の進路前方における前記他車両との車間距離を保持する車間制御、カーブ路に進入する際に前記車両を減速させるカーブ進入減速制御、及び、前記車両を惰性により走行させる惰性走行制御の少なくとも何れかである
ことを特徴とする、車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記走行制御手段は、
前記道路形状予測手段により予測された登坂路の情報を用いて、前記定速走行制御、前記車間制御、及び、前記惰性走行制御の少なくとも何れかを実施する
ことを特徴とする、請求項5記載の車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89134(P2013−89134A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231037(P2011−231037)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】