説明

車両の電装部品制御装置

【課題】エンジンの再始動条件が成立してエンジンを再始動させる際に、バッテリの電圧が一時的に低下することによる不具合を簡単な構成で効果的に防止できるようにする。
【解決手段】車両に搭載されたバッテリ1と、エンジンの自動停止制御および再始動制御を実行する自動停止制御手段5と、上記バッテリ1から供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品6とを有し、該電装部品6に対する入力信号が大きくなるのに応じてその出力が大きくなるように入出力特性が設定された車両の電装部品制御装置であって、上記自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる際に上記バッテリ1の電圧を昇圧して上記電装部品6に供給する昇圧手段7と、該昇圧手段7の作動時に上記電装部品6への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品6の出力変化率を低減するように上記入出力特性を変更する入出力特性制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリと、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに該エンジンの再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させる自動停止制御手段と、上記バッテリから供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品とを備えた車両の電装部品制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機の発電により得られた電力を蓄電するバッテリと、上記エンジンの運転中には、発電機の発電電圧により作動し、上記エンジンの停止時にはバッテリの放電電圧により作動して光および音の少なくとも一方を出力する電装品と、上記発電機の発電電圧を所定時間かけて低下させ、発電機の発電電圧がバッテリの放電電圧まで低下した状態であって、かつ所定のアイドルストップ許可条件が成立したときエンジンを停止させるように構成し、エンジンをアイドルストップ状態(自動停止状態)へ移行する前に電装品への供給電圧をバッテリの放電電圧まで低下させておくことにより、上記アイドルストップが実行されたときに電装品への供給電圧が急激に減少することを防止して、ライトや照明などのちらつきや、オーディオ装置等におけるポップ音の発生を抑制することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−183546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、所定条件の成立時にエンジンを自動停止させる際に、発電機の発電電圧を徐々に低下させるように構成した場合には、エンジンの停止直後にバッテリから電装部品への供給電圧が急低下することによる不具合を抑制することが可能である。しかし、上記のように自動停止状態となったエンジンの再始動条件が成立した時点で、エンジンのスタータモータを作動させてエンジンを再始動させる際には、バッテリの電力がスタータモータの作動に使用されて一時的に低下することにより、例えば音響装置の出力が低下したり、車室内に設置されたライトにちらつきが生じたりするのを防止することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、エンジンの再始動条件が成立してエンジンを再始動させる際に、バッテリの電圧が一時的に低下することにより生じる不具合を簡単な構成で効果的に防止することができる車両の電装部品制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両に搭載されたバッテリと、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに該エンジンの再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させる自動停止制御手段と、上記バッテリから供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品とを有し、該電装部品に対する入力信号が大きくなるのに応じてその出力が大きくなるように入出力特性が設定された車両の電装部品制御装置であって、上記自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる際に上記バッテリの電圧を昇圧して上記電装部品に供給する昇圧手段と、該昇圧手段の作動時に上記電装部品への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品の出力変化率を低減するように上記入出力特性を変更する入出力特性制御手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の車両の電装部品制御装置において、スピーカを備えた音響装置からなる電装部品に対する入力信号のレベルが大きくなる程、上記入力特性制御手段により音響装置の出力変化率を低減する度合を顕著化するように構成されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の電装部品制御装置において、上記自動停止制御手段が、エンジンを再始動させる制御を開始した後にバッテリの供給電圧が予め設定された基準電圧以上であるか否かを判別する判別部を有し、該判別部によりバッテリの供給電圧が基準電圧以上であると判別された場合に、上記電装部品の出力変化率を低減する度合を緩和するように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の電装部品制御装置において、上記自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる制御を開始するのと略同時に、上記昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧を開始するように構成されたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項3または4に記載の車両の電装部品制御装置において、上記入出力特性制御手段が、昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧開始後で、エンジンの再始動に応じてバッテリ電圧が低下し始める前に、上記出力変化率の低減制御を開始するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる際に上記バッテリの電圧を昇圧して上記電装部品に供給する昇圧手段と、該昇圧手段の作動時に上記電装部品への入力信号が大きい領域で、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品の出力変化率を低減するように上記入出力特性を変更する入出力特性制御手段とを設けたため、上記スタータモータを作動させてエンジンを再始動させる際に、バッテリの電力が消費されることにより該バッテリの供給電力が一時的に低下した場合においても、上記昇圧手段の作用により電装部品の出力を所定値に維持して乗員が違和感を受けるのを効果的に防止することができる。そして、上記昇圧手段の作動時に電装部品への入力信号が大きい領域では、上記入出力特性制御手段の作用により、電装部品を作動させるのに必要な高電圧が得られなくなるという事態の発生を効果的に防止することができるため、上記昇圧手段による昇圧制御を適正に実行して該電装部品を適正に作動させることができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、スピーカを備えた音響装置からなる電装部品に対する入力信号のレベルが大きくなる程、上記入力特性制御手段により音響装置の出力変化率を低減する度合を顕著化するように構成したため、音響装置への入力信号が大きい領域の中でも入力信号のレベルが比較的低い領域では、該入力信号のレベルに対応させて出力を変化させることにより音響装置の音量を通常時とほぼ同様に維持することができ、かつ上記領域の中で入力信号のレベルが比較的高い領域では、上記音響装置の出力上昇を顕著に抑制することにより、上記昇圧手段よる昇圧制御を適正に実行できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、エンジンを再始動させる制御を開始した後にバッテリの供給電圧が予め設定された基準電圧以上であると、上記自動停止制御手段の判別部において判別された場合に、上記電装部品の出力変化率を低減する度合を緩和するように構成したため、上記昇圧手段によりバッテリの電圧を充分に昇圧して上記電装部品を適正に作動させることができる電力を供給できる状態にあるにも拘わらず、該電装部品の高出力域で上記出力変化率の低減制御が実行されて電装部品の能力が充分に発揮されないという事態が継続されるのを防止することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、上記自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる制御を開始するのと略同時に、上記昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧を開始するように構成したため、上記スタータモータを作動させてエンジンを再始動させる際にバッテリの電力が低下する前に、上記昇圧手段によりバッテリの電圧を昇圧して上記電装部品を作動させるのに必要な電圧を確実に維持できるという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、上記昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧開始後に、エンジンの再始動に応じてバッテリ電圧が低下し始める前に、上記出力変化率の低減制御を開始するように構成したため、該低減制御の実行時間を極力短くして違和感の発生を効果的に抑制しつつ、上記電装部品を適正に作動させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両の電装部品制御装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】電装部品の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】通常時における電装部品の入出力特性を示すグラフである。
【図4】エンジンの自動停止時における電装部品の入出力特性を示すグラフである。
【図5】上記電装部品制御装置の制御状態を示すタイムチャートである。
【図6】昇圧手段の具体的構成を示すブロック図である。
【図7】上記電装部品制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る車両の電装部品制御装置の実施形態を示している。該車両の電装部品制御装置は、車両に搭載されたバッテリ1と、エンジン2および該エンジン2を作動させるスタータモータ3を有するエンジンユニット4と、上記エンジン2の自動停止条件が成立したときにエンジン2を自動停止させるとともに該エンジン2の再始動条件が成立したときにエンジン2を再始動させる自動停止制御手段5と、上記バッテリ1から供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品6と、該電装部品6に供給される上記バッテリ1の電圧を必要に応じて昇圧する昇圧手段7とを有している。
【0018】
上記エンジン2の自動停止制御手段5は、アクセルペダルの踏込操作量が0であるとともに、エンジン回転数が所定値以下、例えば3000rpm以下であり、かつ自動変速機のシフトレンジ位置がDレンジまたはNレンジ位置となったエンジン2のアイドル運転状態でエアコンユニットのコンプレッサが作動していないこと等が確認された場合に、エンジン2の自動停止条件が成立したと判断して図外の燃料噴射ポンプに燃料の噴射を停止させる制御信号を出力することにより、イグニッションキー等を操作することなくエンジン2を自動的に停止させるように構成されている。
【0019】
そして、上記エンジン2の自動停止状態でアクセルペダルが踏込状態となったことが確認される等によりエンジン2の再始動条件が成立したと上記自動停止制御手段5において判断された場合に、上記スタータモータ3を作動させる制御信号が出力されるとともに、所定のタイミングで燃料の噴射および点火が開始されることにより、エンジン2の再始動が自動的に行われるようになっている。また、上記自動停止制御手段5には、エンジン2を再始動させる制御の開始後に、バッテリ1の供給電圧が予め設定された基準電圧Vr以上であるか否かを判別し、その判別結果を示す信号を電装部品6に出力する判別部51が設けられている。
【0020】
上記電装部品6は、図2に示すように、音波を出力するスピーカ8と、CDプレイヤー等のデータ読取機から出力された音響信号Iを増幅するアンプ9とを有する音響装置等からなっている。該アンプ9は、上記データ読取機等から出力された音響信号(アナログ信号)Iをデジタル信号に変換するA/D変換器10と、該A/D変換器10の出力信号に所定の処理を行うDSP(デジタルシグナルプロセッサ)11と、該DPS11の出力信号をアナログ信号に変換するD/A変換器12と、該D/A変換器12の出力信号およびバッテリ1から供給される電力Pに対応した振幅の音波等を出力するように上記スピーカ8を制御するパワーIC13とを有している。
【0021】
上記アンプ9のDPS11は、上記データ読取機等から電装部品6に入力された入力信号に応じて該電装部品6の出力を変化させる入出力特性制御手段としての機能を有し、通常時には、図3に示すように、上記入力信号が大きくなるのに応じて該電装部品6の出力をリニアに上昇させる制御を実行するように構成されている。また、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧する昇圧制御の実行時には、図3に示す通常時の入出力特性に基づく制御状態から図4に示す自動停止時の入出力特性の制御状態に移行することにより、上記電装部品6への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品6の出力変化率を一時的に低減する制御が上記DPS11からなる入出力特性制御手段により実行されるようになっている。
【0022】
すなわち、図5に示すように、上記自動変速制御手段5からエンジン2を再始動させる再始動信号が入力された時点t1で、上記昇圧手段7を作動状態としてバッテリ電圧の昇圧制御を開始する昇圧指令信号を出力するとともに、その後に所定時間が経過した時点t2で、上記電装部品6の入出力特性を図3に示す通常時の特性から、図4に示す自動停止時の特性に切り換える特性切換信号を出力することにより、高レベル信号の出力を抑制するように構成されている。上記特性切換信号の出力時点t2は、昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧させる制御の開始時点t1以後であって、エンジン2の再始動制御に応じてバッテリ1の電圧が低下し始める前の時点、例えば開始時点t1から20ms程度の時間が経過した時点に設定されている。
【0023】
図4に示す自動停止時の入出力特性は、電装部品6に対する出力レベルが予め設定された基準値R未満となる領域αであって、上記バッテリ1から供給される電力に応じて電装部品6の出力を充分に確保できる状態にある場合には、図3に示す通常時の入出力特性と同様に入力信号のレベルに応じ、電装部品6の出力がリニアに変化するように設定されている。そして、図4に示す自動停止時の入出力特性における上記基準値R以上となる領域βでは、例えば上記入力信号のレベルが大きくなるに応じ、電装部品6から出力される音波の出力レベル(振幅)が放物線状に変化して徐々に上昇するように上記入出力特性が設定されている。なお、この入出力関係、または領域αおよびβは、通常入力信号の周波数によって変化する。
【0024】
上記のようにして上記自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる際において、上記電装部品6に対する入力信号のレベルが基準値R以上となる領域βでは、基準値R未満となる領域αに比べて電装部品6からなる音響装置の出力変化率を低減するとともに、この出力変化率の低減度合を上記入力信号のレベルが大きくなるのに応じて顕著化する制御、つまり該入力信号のレベルがある程度大きくなると、該入力信号のレベルが上昇しても電装部品6からなる音響装置の出力音量がそれ程顕著に変化しないようにする出力変化率の低減制御が、上記アンプ9のDPS11からなる入力特性制御手段により実行されるようになっている。
【0025】
また、上記自動停止制御手段5の判別部51によりバッテリ1の供給電圧が基準電圧Vr以上であると判別された時点t3で、上記特性切換信号の出力が停止されることにより、上記入出力特性制御手段による電装部品6の出力変化率を低減する制御が緩和されるように構成されている。該基準電圧Vrは、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を充分に昇圧して上記音響装置からなる電装部品6を適正に作動させることができる値、つまり該電装部品6をその高出力域においても上記出力変化率の低減制御を実行することなく、その出力レベルを適正に維持することができる電圧に設定されている。
【0026】
当実施形態では、上記自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる制御を開始するのと略同時に、図3に示す通常時の入出力特性に基づく電装部品6の出力制御状態から、図4に示す自動停止時の入出力特性に基づく制御状態に移行するとともに、該自動停止時の入出力特性に基づく制御状態を、バッテリ1の供給電圧が基準電圧Vr以上であると判別された時点t3で停止し、図3に示す通常時の入出力特性に基づく制御状態に復帰することにより、上記出力変化率の低減状態を緩和するように構成されている。
【0027】
上記昇圧手段7は、図6に示すように、バッテリ1と電装部品6とを接続する電源ラインに設けられたリレー21と、該リレー21と並列に設置されたDC/DCコンバータ22と、上記リレー21および該DC/DCコンバータ22を制御するMPU(マイクロフロプロセッサユニット)23とを有している。該MPU23は、図5に示すように、上記自動停止制御手段5からエンジン2の再始動指令信号が入力された時点t1で出力される上記昇圧指令信号に応じ、上記リレー21を開状態とするとともに、上記DC/DCコンバータ22を作動状態とする制御を実行するように構成されている。
【0028】
上記自動停止制御手段5によりエンジン2を自動停止させた状態では、バッテリ1の充電を行う発電機の作動が停止された状態で、エンジン2の再始動条件が成立してスタータモータ3を作動させことにより、図5の実線で示すように、バッテリ電圧Vが、一時的に低下する。しかし、その前の所定時点t2で、上記DC/DCコンバータ22が作動状態となって上記バッテリ1から電装部品6に供給される電圧を昇圧する制御が実行されることにより、該電装部品6を安定して作動させることができる値、例えば12Vに高められた駆動電圧が、上記DC/DCコンバータ22を介して電装部品6等に供給されることになる(図5の破線参照)。
【0029】
そして、上記自動停止制御手段5によるエンジン2の再始動が適正に行われることによりエンジン回転数が所定値以上に上昇したことが確認された時点t4で、上記昇圧指令信号の出力が停止されることにより、リレー21を閉状態とするとともに、上記DC/DCコンバータ22の昇圧制御を終了させる制御が実行される。この結果、上記バッテリ1から電装部品6に供給されるバッテリ電圧を昇圧する上記DC/DCコンバータ22の作動が停止され、バッテリ1から上記リレー21を介して電装部品6に電流が供給される通常の制御状態に移行する。
【0030】
以下に、上記電装部品制御装置による制御動作を図7に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、自動停止制御手段5から出力される制御信号に応じてエンジン2が自動停止状態にあるか否かを判定し(ステップS1)、NOと判定された場合にはリターンする。一方、上記ステップS1でYESと判定されてエンジン2が自動停止状態あることが確認された場合には、エンジン2の再始動条件が成立した再始動制御の開始時点t1であるか否かを判定し(ステップS2)、NOと判定された場合にはリターンする。
【0031】
そして、上記ステップS2でYESと判定されてエンジン2の再始動条件が成立して再始動制御が開始される時点t1であることが確認された場合には、上記昇圧手段7によりリレー21を開状態とし、かつ上記DC/DCコンバータ22を作動状態とする昇圧制御を実行する(ステップS3)。その後に所定時間が経過した時点t2で、図3に示す通常時の入出力特性に基づく電装部品6の出力制御状態から、図4に示す自動停止時の入出力特性に基づく制御状態に移行する(ステップS4)。このようにして上記電装部品6に対する入力信号のレベルが予め設定された基準値R以上となる領域βでは、電装部品6の出力変化率を低減するとともに、この出力変化率の低減度合を上記入力信号のレベルが大きくなるのに応じて顕著化する制御が上記入出力特性制御手段により実行される。
【0032】
次いで、上記自動停止制御手段5の判別部51においてバッテリ1の供給電圧Vが基準電圧Vr以上となったか否かを判別し(ステップS5)、YESと判定されたされた時点t3で、図4に示す自動停止時の入出力特性に基づく上記電装部品6の出力制御を終了して、図3に示す通常時の入出力特性に基づく制御状態に移行する(ステップS6)。これにより、上記電装部品6に対する入力信号のレベルが予め設定された基準値R以上となる領域βおいても、上記音響装置からなる電装部品6の出力変化率が低減されることなく、上記入力信号のレベルに対応した振幅を有する音波信号が上記電装部品6から出力される。
【0033】
その後、上記エンジン2の再始動が適正に行われてエンジン回転数Eが所定値Er以上に上昇したか否かが判定され(ステップS7)、YESと判定されてエンジン2の再始動が適正に行われことが確認された時点t4で、上記昇圧手段7による昇圧制御を停止した後(ステップS8)、リターンして通常の制御状態に移行する。
【0034】
上記のように車両に搭載されたバッテリ1と、エンジン2の自動停止条件が成立したときにエンジン2を自動停止させるとともに該エンジン2の再始動条件が成立したときにエンジン2を再始動させる自動停止制御手段5と、上記バッテリ1から供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品6とを有し、該電装部品6に対する入力信号が大きくなるのに応じてその出力が大きくなるように入出力特性が設定された車両の電装部品制御装置において、上記自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる際に上記バッテリ1の電圧を昇圧して電装部品6に供給する昇圧手段7と、該昇圧手段7の作動時に上記電装部品6への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品6の出力変化率を低減するように上記入出力特性を変更する入出力特性制御手段とを設けたため、エンジン2の再始動条件が成立した時点で、エンジン2を再始動させる際に、バッテリ1の電圧が一時的に低下することによる不具合を簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。
【0035】
すなわち、上記実施形態では、自動停止状態にあるエンジン2の再始動条件が成立した時点t1で、自動停止制御手段5によりスタータモータ3を作動させてエンジン2を自動的に再始動させる再始動制御の開始時に、上記DC/DCコンバータ22等を有する昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧して電装部品6に供給するように構成したため、上記スタータモータ3を作動させるためにバッテリ1の電力が消費されることに起因して、該バッテリ1の供給電力が一時的に低下した場合においても、電装部品6の出力を所定値に維持して乗員が違和感を受けるのを効果的に防止することができる。
【0036】
そして、上記昇圧手段7の作動時に電装部品6への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品6の出力変化率を低減する制御を上記電装部品6のアンプ9に設けられたDPS11等からなる入出力特性制御手段により実行するように構成したため、上記昇圧手段7による昇圧制御では上記電装部品6を作動させるのに必要な高電圧が得られなくなるという事態の発生を効果的に防止することができる。したがって、上記電装部品6への入力信号が大きい領域においても、上記昇圧手段7による昇圧制御が破綻して電装部品6に対する電力の供給が不可能になるという事態を生じることがなく、上記電装部品6を適正に作動させることが可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、音響装置からなる電装部品6に対する入力信号のレベルが大きくなる程、上記入力特性制御手段により音響装置からなる電装部品6の出力変化率を低減する度合を顕著化するように構成したため、図4に示すように、電装部品6への入力信号が大きい領域βの中でも入力信号のレベルが比較的低い領域では、該入力信号のレベルに応じて出力を変化させることにより音響装置から出力される音響信号の音量を通常時とほぼ同様に維持することができる。しかも、上記領域βの中で入力信号のレベルが比較的高い領域では、上記電装部品6の出力上昇を顕著に抑制することにより、上記昇圧手段7による昇圧制御に破綻が生じるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
さらに、上記実施形態に示すように、エンジン2を再始動させる制御を開始した後にバッテリ1の供給電圧が予め設定された基準電圧Vr以上であるか否かを判別する判別部51を上記自動停止制御手段5に設け、該判別部51によりバッテリ1の供給電圧Vが基準電圧Vr以上であると判別された時点t3で、上記電装部品6の出力変化率を低減する制御を終了して通常の制御状態に移行することにより、上記出力変化率の低減度合を緩和するように構成したため、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を充分に昇圧して上記音響装置からなる電装部品6を適正に作動させることができる電力を供給できる状態にあるにも拘わらず、該電装部品6の高出力域で上記出力変化率の低減制御が実行されてその出力が抑制されることによる違和感の発生を防止できるという利点がある。
【0039】
なお、上記バッテリ1の供給電圧Vが基準電圧Vr以上であると判別された時点t3で、入出力特性制御手段による電装部品6の出力変化率を低減する制御を停止して通常の制御状態に移行するように構成した上記実施形態に代え、上記自動停止時の入出力特性に基づく電装部品6の出力制御状態から通常の制御状態に所定時間をかけて移行させる過渡領域を設け、上記バッテリ1の供給電圧が基準電圧Vr以上であると判別された時点t3から所定時間をかけて電装部品6の出力抑制状態を徐々に緩和するように構成してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる制御を開始するのと略同時点t1で、上記昇圧手段7によるバッテリ電圧の昇圧を開始するように構成したため、上記スタータモータ3を作動させてエンジン2を再始動させる際にバッテリ1の電力が低下する前に、記DC/DCコンバータ22等を有する昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧して、上記電装部品6を作動させるのに必要な電圧を確実に維持できるという利点がある。
【0041】
さらに、上記実施形態に示すように、自動停止制御手段5によりエンジン2を再始動させる際に、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧させる制御の開始後で、エンジン2の再始動制御に応じてバッテリ1の電圧が低下し始める前の時点t2で、上記入出力特性制御手段による電装部品6の出力変化率を低減する制御を開始するように構成した場合には、該低減制御の実行時間を極力短くして違和感の発生を効果的に抑制しつつ、上記電装部品6を適正に作動させることができるという利点がある。
【0042】
すなわち、上記自動停止制御手段5によりスタータモータ3を作動させてエンジン2を再始動させる際に、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧させる制御を開始する時点t1と同時またはその前に、上記入出力特性制御手段による電装部品6の出力変化率を低減する制御を開始することも考えられるが、このように構成した場合には、上記電装部品6への入力信号が大きい領域において、バッテリ電圧が該電装部品6の出力を充分に確保できる状態にあるにも拘わらず、その出力が不必要に抑制されることにより、乗員が違和感を受ける可能性がある。これに対して上記実施形態に示すように、上記昇圧手段7によりバッテリ1の電圧を昇圧させる制御の開始後に所定時間が経過した時点t2で、上記入出力特性制御手段による電装部品6の出力変化率を低減する制御を開始するように構成した場合には、該電装部品6の出力が不必要に抑制されるのを防止して、その能力を充分に発揮させることができる。
【0043】
また、上記入出力特性制御手段による出力変化率の低減制御の開始時期をさらに遅らせ、上記自動停止制御手段5によりスタータモータ3を作動させてエンジン2を再始動させる際にバッテリ1の電力が消費されてバッテリ電圧が低下し始めた後に、上記出力変化率の低減制御を開始するように構成した場合には、該電装部品6の出力を充分に確保できる電圧以下にバッテリ電圧が低下しているにも拘わらず、上記電装部品6を高出力で作動させる制御が実行されて上記昇圧手段7による昇圧制御に破綻が生じる可能性がある。これに対して上記実施形態に示すように、エンジン2を再始動させる際に上記スタータモータ3の作動に応じてバッテリ1の電力が低下する前の時点t2で、上記電装部品6の出力変化率を低減する制御を開始するように構成した場合には、上記昇圧手段7による昇圧制御に破綻を生じるのを防止して、上記電装部品6を適正に作動させることができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、入力信号の大きさレベルの音波を出力するスピーカ8を備えた音響装置からなる電装部品6を有する車両の電装部品制御装置について説明したが、上記音響装置に代え、あるいは該音響装置とともに、ナビゲーション装置またはメータユニット等からなる電装部品を備えた車両の電装部品制御装置についても本発明を適用可能である。
【0045】
また、上記エンジン2の再始動制御を開始した後にバッテリ1の供給電圧が予め設定された基準電圧Vr以上であると判別された時点t3で、上記電装部品6の出力変化率を低減する制御を終了して通常の制御状態に移行するように構成した上記実施形態に代え、エンジン2の再始動が適正に行われてエンジン回転数Eが所定値Er以上に上昇したことが確認された時点、またはエンジンの再始動制御を確実に実行できるように予めタイマー等でカウントされた設定時間が経過した時点で、上記電装部品6の出力変化率を低減する制御を終了し、通常の制御状態に移行するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 バッテリ
2 エンジン
3 スタータモータ
5 始動停止制御手段
6 電装部品
7 昇圧手段
8 スピーカ
11 DSP(入出力特性制御手段)
51 判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリと、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに該エンジンの再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させる自動停止制御手段と、上記バッテリから供給される電力によって作動状態となる車載の電装部品とを有し、該電装部品に対する入力信号が大きくなるのに応じてその出力が大きくなるように入出力特性が設定された車両の電装部品制御装置であって、上記自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる際に上記バッテリの電圧を昇圧して上記電装部品に供給する昇圧手段と、該昇圧手段の作動時に上記電装部品への入力信号が大きい領域では、該入力信号が小さい領域に比べて電装部品の出力変化率を低減するように上記入出力特性を変更する入出力特性制御手段とを備えたことを特徴とする車両の電装部品制御装置。
【請求項2】
上記電装部品はスピーカを備えた音響装置であり、該音響装置に対する入力信号のレベルが大きくなる程、上記入力特性制御手段により音響装置の出力変化率を低減する度合を顕著化するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の電装部品制御装置。
【請求項3】
上記自動停止制御手段は、エンジンを再始動させる制御を開始した後にバッテリの供給電圧が予め設定された基準電圧以上であるか否かを判別する判別部を有し、該判別部によりバッテリの供給電圧が基準電圧以上であると判別された場合に、上記電装部品の出力変化率を低減する度合を緩和するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の電装部品制御装置。
【請求項4】
上記自動停止制御手段によりエンジンを再始動させる制御を開始するのと略同時に、上記昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧を開始するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の電装部品制御装置。
【請求項5】
上記入出力特性制御手段は、昇圧手段によるバッテリ電圧の昇圧開始後で、エンジンの再始動に応じてバッテリ電圧が低下し始める前に、上記出力変化率の低減制御を開始するように構成されたことを特徴とする請求項3または4に記載の車両の電装部品制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240901(P2011−240901A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117344(P2010−117344)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(591009509)ボーズ・コーポレーション (121)
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION