説明

車両の静電気発生抑制方法及び静電気発生抑制剤

【課題】 車両に発生する静電気を抑制し、かりに静電気が発生した場合でも、エンジン制御やブレーキ制御やドライブトレーン制御等に関する各種機器のセンサ類に悪影響を与えるのを防止し、各種機器の性能を100%に近い状態で発揮させることができるようにする。
【解決手段】 少なくともシリカ系の微粒子が含まれる液体セラミックにグラファイト粉末やカーボン粉末等の炭素系微粒子を混合し、この液体セラミックを車両のラジエータ内に添加することにより、シリカ系の微粒子で帯電防止を図るとともに、炭素系微粒子によりラジエータ水が循環するときの摩擦抵抗を減らし、また炭素系微粒子の導電作用により、帯電を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に発生する静電気に起因する悪影響を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両車体には、タイヤと路面との摩擦によってタイヤに生じた静電気が車体に帯電したり、乗員の衣服と座席の摩擦等によって乗員と車体に帯電したりして、乗員に不快な静電気ショックを与えたり、音響装置に雑音を与えたりするような不具合があるため、これらの帯電を防止するような各種技術が知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開平8−167495号公報
【特許文献2】特開2004−259527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車等の車両には、上記のような要因で発生する静電気以外に、エンジン内部の金属部の摩擦や、ラジエータ水の循環に伴う摩擦等によっても車体内部に静電気が発生し、エンジン制御のための各機器のセンサ類に悪影響を与えて燃焼効率を低下させたり、ブレーキ制御やドライブトレーン制御等の各機器の機能を低下させたりするような不具合があるといわれているが、このようなセンサ類に悪影響を与える静電気を抑制して各種機器の機能低下を防止するような実効性のある方策はいまだ知られていない。
【0004】
そこで本発明は、車両の乗員に対して電撃ショック等を与えるような静電気のみならず、エンジン内部の金属部の摩擦や、ラジエータ水の循環などによって車体内部に帯電する静電気の発生を抑制し、静電気が発生した場合でも、エンジン制御やブレーキ制御やドライブトレーン制御等に関する各種センサ類に悪影響を与えるのを防止し、各種機器の機能を100%発揮させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、車両のラジエータ水に少なくともシリカ系の微粒子を含む液体セラミックを添加することにより車両に発生する静電気を抑制するようにした。
ここで、液体セラミックとは、正規に定義されたものは存在しないが、本明細書では、水やアルコール等の液体に、少なくとも天然無機材料成分の微粒子が混ぜ込まれ、必要に応じて液体樹脂がバインダとして使用されるものと定義する。
なお、本発明に係るシリカ系の微粒子としては、例えば二酸化ケイ素やケイ酸アルミ等であり、また、本発明に係る液体セラミックの液体は、アルコール等を含まない水であることが好ましく、また、液体樹脂が使用されていないものが好ましい。
【0006】
このように、車両のラジエータ水の中に少なくともシリカ系の微粒子が含まれる液体セラミックを添加すれば、シリカ系微粒子は帯電防止効果を有するため、ラジエータ水が循環する際にも静電気が帯電しにくくなり、各種センサ類にノイズを与えることがなくなって検知精度が良好となり、また、各種センサ類の検知信号も安定したものとなって、各種機器の機能低下を防止できる。
この際、シリカ系の微粒子は、粒径が細かいものほど好ましく、例えば二酸化ケイ素の場合は、平均粒径が20nm程度の超微粒子の液体セラミックも存在するようであるが、本発明の場合は、このような超微粒子は当然ながら好ましく、またそれ以外にも、平均粒径10μm以下程度のものでも適用できる。なお、粒径が10μmを超えると、ラジエータ通路の流通がスムーズにいかなくなる恐れがある。
なお、ラジエータ水に対する液体セラミックの添加量としては、例えば普通乗用車クラスの場合で、80ミリリットル程度であり、あまり添加量を多くし過ぎると、冷却効果等に悪影響を与える恐れがある。
【0007】
また本発明では、前記液体セラミック内に、炭素系の微粒子を混合するようにした。
このように液体セラミック内に炭素系の微粒子を混合すれば、ラジエータ水が循環する際に、摩擦抵抗が減少して一層静電気が発生しにくくなる。すなわち、液体セラミックによって、ラジエータ水の循環通路の内壁に被膜が形成され、この被膜に含まれる炭素系微粒子の潤滑性向上の作用によって摩擦抵抗を軽減させることができ、また、たとえ、静電気が発生した場合でも炭素系の微粒子は導電性が良好なため、内壁に帯電する電荷が奪い取られて帯電しにくくなる。
なお、炭素系微粒子の粒径は、ラジエータ水の循環を円滑ならしめるため、ある程度細かいことが好ましく、例えば100〜500nmスクエアー程度が好ましい。また、液体セラミックスに対する炭素系の微粒子の混合割合は、体積比で5〜40%程度であり、炭素系の微粒子が40%を超えると、冷却効果に悪影響を与える恐れが生じる。
【発明の効果】
【0008】
車両のラジエータ水にシリカ系の微粒子を含む液体セラミックを添加することにより、ラジエータ水の循環に伴う静電気の発生が抑制され、エンジン制御やブレーキ制御やドライブトレーン制御等に関する各機器のセンサ類に悪影響を与えるのが抑制されて各種機器の機能低下を防止できる。
この際、液体セラミック内に炭素系の微粒子を混合することで、静電気の発生が一層抑制され、また、たとえ、静電気が発生した場合でも炭素系微粒子の導電効果により電荷を帯電しにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る静電気発生抑制技術は、車両が走行中、エンジン内の金属部の摩擦や、ラジエータ水の循環などによって車体内部に帯電する静電気の発生を抑制し、たとえ静電気が発生した場合でも、エンジン制御やブレーキ制御やドライブトレーン制御等に関する各種機器のセンサ類に悪影響を与えるのを防止し、各種機能を100%に近い状態で性能発揮させることができるようにされており、少なくともシリカ系の微粒子を含む液体セラミックをラジエータ水に添加することを特徴としている。
【0010】
そして、この液体セラミックに含まれるシリカ系の微粒子の帯電防止効果により、ラジエータ水が循環するときの摩擦による帯電を防止することができ、しかも、液体セラミック内に炭素系の微粒子を混合した場合には、炭素系微粒子の潤滑性向上の作用によって、ラジエータ水の循環に伴う摩擦抵抗が減少して一層静電気を発生しにくくすることができる。
また、たとえ、静電気が発生した場合でも炭素系の微粒子の導電効果により静電気が帯電しにくくなる。
【実施例1】
【0011】
まず、本液体セラミックを添加した場合の帯電防止効果を確認するため、その効果を一番把握しやすいエンジンの出力馬力とトルクで実験した。
そこで、液体セラミックとして、少なくとも平均粒径20nmの二酸化ケイ素の微粒子を含む天然無機材料を水(液体)に混ぜ合わせたものを使用するとともに、液体樹脂を含まないような液体セラミックとし、この液体セラミックを車種ベンツ190Eのラジエータ内に80cc添加するとともに、添加前と添加後の出力馬力及び出力トルクを測定した。
この結果は下記の表1の通りであった。
【0012】
【表1】

【実施例2】
【0013】
次に、上記のような液体セラミックに、グラファイトの微粒子を混入し、この液体セラミックを車種アクセラスポーツ(BKEP)(平成17年式LF)のラジエータ内に80cc添加して出力馬力及び出力トルクを実験した。この際、グラファイトの微粉末のサイズは150nmスクエアであり、また、液体セラミックとグラファイトの体積比は76:4であった。
この結果は下記の表2の通りであった。
【0014】
【表2】

【0015】
上記の試験の結果、いずれの場合も、本液体セラミックを添加することにより、出力馬力において3〜5%の向上、出力トルクにおいて2〜5%の向上が認められた。また、最高馬力、最高トルクが得られる際の回転数も減少しているため、実質上のエンジン効率は相当高いものと考えられる。
【0016】
なお、以上の実施例では、車両の出力馬力や出力トルクの性能だけを実験しているが、その他のエンジン性能、例えば冷却水温度の安定や、燃費の向上や、排気ガス浄化等の性能向上も図られ、また、エンジン制御以外のブレーキ制御、ドライブトレーン制御等の向上も図られる。
また、上記実施例では、炭素系の微粒子としてグラファイト粉末を利用するようにしているが、カーボン粉末やその他の炭素系微粒子でもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
車両のラジエータ内に液体セラミックを添加するだけで車両に発生する静電気を抑制でき、各種センサ類の検知精度を高めて各種性能を最大に発揮させることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラジエータ水に少なくともシリカ系の微粒子を含む液体セラミックを添加することにより車両に発生する静電気を抑制することを特徴とする車両の静電気発生抑制方法。
【請求項2】
前記液体セラミック内に、炭素系の微粒子を混合することを特徴とする請求項1に記載の車両の静電気発生抑制方法。
【請求項3】
少なくともシリカ系の微粒子を含む液体セラミック内に炭素系の微粒子を混合することを特徴とする車両の静電気発生抑制剤。


【公開番号】特開2007−109450(P2007−109450A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297152(P2005−297152)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(505381264)
【Fターム(参考)】