説明

車両の風切音防止構造

【課題】アウトレットバルブの車幅方向外側に板状部材を設けるという簡単な構造によって、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを低減して、車内の静粛性を向上させることが可能な車両の風切音防止構造を提供すること。
【解決手段】アウトレットバルブ4は、キャブ2の側方を開放するドア開口9の後方のバルブ取付板部15の後面15a上に設けられ、車内から車外への空気の流出を許容し車外から車内への空気の流入を阻止する。板状シール部材5は、アウトレットバルブ4の車幅方向外側で荷台3のシール取付板部31の前面31aから前方に延び、キャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間へ車両側方から流入する走行風が当たる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内から車外への空気の流出を許容し車外から車内への空気の流入を阻止するアウトレットバルブを備えた車両の風切音防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャブの後方左隅部に縦に添設され、エンジンの空気取入用として使用されるスタックインテークパイプと、貨物室の前方右隅部に縦に添設され、曲面状に形成された長板体たる段差プロテクタとを備えた車両の構造が記載されている。スタックインテークパイプは、左外側面が平坦状をなすとともに、キャブの後方左隅部と貨物室の前方左隅部間の隙間を、ほぼ閉鎖に近い状態で塞ぐ面積を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−60427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャブの後面上に、車両のドアを閉めた際に車内から車外への空気の流出を許容するアウトレットバルブを備えた車両の構造が広く知られている。このアウトレットバルブをキャブ後面上に備えた車両の構造では、車両走行時にキャブと貨物室との間へ車両側方から流入する走行風によって発生した風切音は、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される。従って、アウトレットバルブの近傍で大きな風切音が発生すると、車内の静粛性が低下して乗員に対して違和感を与えてしまう可能性がある。
【0005】
なお、上記特許文献1に記載された車両の構造は、キャブと貨物室との間へ車両側方から走行風が流入するのを完全に阻止するものではないため、キャブと貨物室との間へ車両側方から流入する走行風によって風切音が発生した場合、上記不都合が同様に生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、アウトレットバルブの車幅方向外側に板状部材を設けるという簡単な構造によって、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを低減して、車内の静粛性を向上させることが可能な車両の風切音防止構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の車両の風切音防止構造は、キャブ後面と、アウトレットバルブと、荷台前面と、板状部材とを備える。
【0008】
キャブ後面は、キャブの後端を区画する。アウトレットバルブは、キャブの側方を開放するドア開口の後方のキャブ後面上に設けられ、車内から車外への空気の流出を許容し車外から車内への空気の流入を阻止する。荷台前面は、キャブ後面に対向配置されて荷台の前端を区画する。板状部材は、アウトレットバルブの車幅方向外側でキャブ後面又は荷台前面から前方又は後方に延び、キャブ後面と荷台前面との間へ車両側方から流入する走行風が当たる。
【0009】
上記構成では、ドア開口がドアによって閉止される際、アウトレットバルブからの空気の流出が車内の気圧の急激な上昇を抑制するので、ドアの閉止動作がスムーズに行われる。
【0010】
また、車両走行中に、ドア開口が設けられたキャブ側面に沿って後方に流れてキャブ後面と荷台前面との間へ流入した走行風は、アウトレットバルブの後方領域へ達する前に板状部材に当たる。これにより、アウトレットバルブの後方領域への走行風の流入が阻止され、又は、アウトレットバルブの後方領域へ流入する走行風に乱流が発生して流速が低下し、アウトレットバルブの近傍において、風切音の風音レベルが低減されて大きな風切音の発生が抑制される。
【0011】
また、板状部材の車幅方向外側の領域で発生した風切音が板状部材によって遮音されるため、板状部材の車幅方向外側の領域からアウトレットバルブの後方領域へ伝達される風切音の風音レベルが低減される。
【0012】
従って、アウトレットバルブの車幅方向外側に板状部材を設けるという簡単な構造によって、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを低減して、車内の静粛性を向上させることができる。
【0013】
なお、板状部材の突出量は、上記風音レベルの低減効果を奏する範囲で任意に設定可能であり、キャブ後面と荷台前面との間の領域を板状部材が遮蔽している場合を含む。
【0014】
また、板状部材は、柔軟性を有し、アウトレットバルブの上端よりも上方からアウトレットバルブの下端よりも下方まで延びていてもよい。
【0015】
上記構成では、キャブ後面と荷台前面との間へ流入した走行風はアウトレットバルブの後方領域へ達する前に確実に板状部材に当たり、アウトレットバルブの後方領域へ直接流入し難い。従って、アウトレットバルブの後方領域へ流入する走行風の流速が確実に低下し、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される風切音の風音レベルが確実に低減される。
【0016】
また、板状部材が柔軟性を有するため、車両走行時、キャブと荷台とが相対的に移動して板状部材がキャブ後面又は荷台前面と接触した場合であっても、キャブ後面又は荷台前面が傷付き難く、また、板状部材も損傷し難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アウトレットバルブの車幅方向外側に板状部材を設けるという簡単な構造によって、アウトレットバルブを介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを低減して、車内の静粛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る荷台を斜め前方から視た斜視図である。
【図2】図1の要部拡大斜視図である。
【図3】アウトレットバルブと板状シール部材との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る荷台を斜め前方から視た斜視図、図2は図1の要部拡大斜視図、図3はアウトレットバルブと板状シール部材との位置関係を示す図である。以下の説明において、前後方向は車両の進行方向の前後を示し、内外方向は車幅方向の内外を示す。また、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。なお、図3ではキャブの左側後端部の構造を図示している。また、図1及び図3では、右側のアウトレットバルブと右側の板状シール部材の図示を省略している。
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るピックアップトラック1は、キャブ2と荷台3と左右一対のアウトレットバルブ4と左右一対の板状シール部材(板状部材)5等を備えている。
【0021】
キャブ2は、左右一対のキャブサイドパネル6と左右一対のドアパネル7とキャブバックパネル8等を有し、ピックアップトラック1の前部に配置されている。なお、キャブ2は略左右対称構造であるため、左側のキャブサイドパネル6、左側のドアパネル7及びキャブバックパネル8の左端部の形状について説明し、右側のキャブサイドパネル6、右側のドアパネル7及びキャブバックパネル8の右端部の形状についてはその説明を省略する。
【0022】
キャブサイドパネル6は、キャブ2の前端を区画するキャブフロントパネル(図示せず)の車幅方向外端部からそれぞれ後方に延びる略板状部材であり、略矩形状のドア開口9を区画している。キャブサイドパネル6は、キャブ2の車幅方向外端を区画するキャブサイドパネルアウタ10と、キャブサイドパネルアウタ10よりも車幅方向内側に離間して設けられたキャブサイドパネルインナ11等を有している。
【0023】
ドアパネル7は、前端部がキャブサイドパネル6の前端部に回転自在に支持され、ドア開口9を車両側方から覆っている。
【0024】
キャブバックパネル8は、キャブサイドパネル6の後方に車幅方向に沿って立設され、後面(キャブ後面)8aがキャブ2の後端を区画している。キャブバックパネル8は、左側のキャブサイドパネル6の後端部に接合されるサイドパネル接続部12と、サイドパネル接続部12の車幅方向内端から車幅方向内側後方に僅かに傾斜して延びる傾斜板部13と、傾斜板部13の車幅方向内端から曲折して車幅方向内側後方へ延びる第1屈曲板部14と、第1屈曲板部14の車幅方向内端部から車幅方向内側に延びるバルブ取付板部15と、バルブ取付板部15の車幅方向内端部から曲折して車幅方向内側後方へ延びる第2屈曲板部16等を左側の端部に有している。
【0025】
バルブ取付板部15は、車内と車外とを連通する略矩形状のバルブ開口部17を有している。また、バルブ取付板部15の前方であってバルブ開口部17の車幅方向内側には、キャブサイドパネルインナ11の後端部11aが接合されている。
【0026】
アウトレットバルブ4は、バルブ開口部17に固定部材18を介して装着される枠部19と、枠部19から前方に延びるダクト20と、ダクト20に取り付けられ、上下方向に複数の開口部が形成されたバッフルプレート支持フレーム(図示せず)と、各開口部の上端縁に設けられた取付部21に上方から支持されて下方に延びる複数のバッフルプレート22等を有し、バルブ取付板部15の後面15a上であってキャブバックパネル8の上下方向略中央に配置されている。
【0027】
バッフルプレート22は、略板状の部材であり、下端部が開口部の下端縁に接触している。バッフルプレート22は、車内から車外へ空気が流れる際には、上端部を中心に後方に傾動して車内と車外を開口部を介して連通し、車外から車内へ空気が流れる際には、バッフルプレート22の下端部と開口部の下端縁とが接触して開口部を後方から閉塞する。
【0028】
このように構成されたアウトレットバルブは4、ドアパネル7を閉めた際に、車内の空気が車外に流出するのを許容し、車外の空気が車内に流入するのを阻止している。
【0029】
荷台3は、床23と、床23の前端で車幅方向に沿って立設されてキャブバックパネル8の後方に対向配置される前壁24と、床23の車幅方向両側で前後方向に沿って立設される左右一対の側壁25と、床23の後端で車幅方向に沿って立設されるテールゲート26等を有し、キャブ2の後方に配置されている。なお、荷台3は略左右対称構造であるため、左側の側壁25及び前壁24の左端部の形状について説明し、右側の側壁25及び前壁24の右端部の形状についてはその説明を省略する。
【0030】
前壁24は、バルブ取付板部15及び第2屈曲板部16の後方に対向配置されている。前壁24は、上端が、キャブ2の後上端部よりも下方であってアウトレットバルブ4の上端よりも上方に配置され、下端が、キャブ2の後下端部よりも上方であってアウトレットバルブ4の下端よりも下方に配置されている。
【0031】
側壁25は、フロントパネル27とアウタパネル28とインナパネル29等を有している。フロントパネル27は、前壁接合板部30とシール取付板部31とフロントパネル屈曲板部32とアウタパネル接合板部33等を有している。フロントパネル27は、上端が、前壁24の上端と略同じ高さに配置され、下端が、前壁24の下端よりも下方に延びている。
【0032】
前壁接合板部30は、前面30aが前壁24の車幅方向外端部後面に面接触した状態で接合されている。シール取付板部31は、前壁接合板部30の車幅方向外端から車幅方向外側に延び、バルブ取付板部15の車幅方向外端部後方に対向配置されている。また、シール取付板部31には、上下方向に所定間隔をおいて3箇所の貫通孔34が設けられている。フロントパネル屈曲板部32は、シール取付板部31の車幅方向外端から曲折して車幅方向外側前方に延び、第1屈曲板14部の後方に対向配置されている。アウタパネル接合板部33は、フロントパネル屈曲板部32の車幅方向外端から車幅方向外側へ延び、傾斜板部13の後方に対向配置されている。
【0033】
アウタパネル28は、フロントパネル接合板部35とアウタパネル平板部36等を有している。フロントパネル接合板部35は、傾斜板部13の後方に対向配置され、後面35aがアウタパネル接合板部33の前面33aに面接触した状態で接合されている。アウタパネル平板部36は、フロントパネル接合板部35の車幅方向外端から曲折して後方に延びている。
【0034】
インナパネル29は、インナパネル前板部37とインナパネル平板部38等を有している。インナパネル前板部37は、前壁接合板部30の車幅方向外端部後方に対向配置され、前面37aが前壁接合板部30の後面30bと面接触した状態で接合されている。インナパネル平板部38は、インナパネル前板部37の車幅方向外端から曲折して後方に延びている。
【0035】
このように構成された荷台3では、前壁24の前面24aとフロントパネル27の前面27aとによって荷台3の前面(荷台前面)3aが構成されている。
【0036】
板状シール部材5は、柔軟性を有する断面略L字状のゴムであり、固定板部39と突出板部40とを有している。なお、左右の板状シール部材5は略対称構造であるため、左側の板状シール部材5について説明し、右側の板状シール部材5についてはその説明を省略する。
【0037】
固定板部39は、上下方向に延びる略矩形板形状であり、上下方向に所定間隔をおいて3箇所の貫通孔41が形成されている。固定板部39は、シール取付板部31の前面31aに面接触し、このシール取付板部31の前面31aに面接触した状態で、固定板部39の3箇所の貫通孔41とシール取付板部31の3箇所の貫通孔34とは、それぞれ前後方向に重なっている。固定板部39は、シール取付板部31及び固定板部39の貫通孔34,41に前方から挿入されるクリップ42によって、シール取付板部31に対して固定される。固定板部39をシール取付板部31に対して固定した状態で、固定板部39の車幅方向内端は、前壁24の車幅方向外端よりも車幅方向外側であってアウトレットバルブ4の車幅方向外端部の後方に配置され、固定板部39の車幅方向外端は、シール取付板部31の車幅方向外端部であって第1屈曲部14の後方に配置されている。
【0038】
突出板部40は、上下方向に延びる略矩形板形状であり、固定板部39の車幅方向外端部から車幅方向外側前方に延びている。固定板部39をシール取付板部31に対して固定した状態で、突出板部40の前端部40aは、フロントパネル屈曲板部32の車幅方向内側であって第1屈曲板部14の後方に僅かに離れた位置に配置されている。このように構成された板状シール部材5は、シール取付板部31に対して固定した状態で、アウトレットバルブ4の上端よりも上方からアウトレットバルブ4の下端よりも下方まで延びている。
【0039】
クリップ42は、頭部43と軸部44と爪部45とを有している。頭部43は、略円板状の部材であり、外径が貫通孔41の直径よりも大きく設定されている。軸部44は、略円柱形状であり、一端(図3中の後端)が頭部43に接続されている。爪部45は、軸部44の他端に接続されて軸部44の一端側に向かって略ハ字状に延びる部材である。爪部45の一端と軸部44との間は僅かに離間しており、この爪部45の一端側を押圧することで爪部45の一端と軸部44との間の隙間が狭くなる。また、爪部45の一端と頭部43との間は僅かに離間している。
【0040】
このように構成されたクリップ42は、爪部45を貫通孔34,41に挿入することにより、爪部45と貫通孔34,41の外周縁との接触により爪部45の一端と軸部44との間の隙間が狭くなる。この爪部45の一端と軸部44との間の隙間が狭くなった状態で、頭部43を貫通孔34,41に向かってさらに押し込むと、軸部44が貫通孔34,41を貫通し、頭部43が固定板部39の前面39aと面接触する。かかる状態では、爪部45の一端と軸部44との間の隙間が元の広さに戻り、爪部45の一端がシール取付板部31の後面31bに当接する。
【0041】
本実施形態によれば、ドア開口9がドアパネル7によって閉止される際、アウトレットバルブ4からの空気の流出が車内の気圧の急激な上昇を抑制するので、ドアパネル7の閉止動作がスムーズに行われる。
【0042】
また、車両走行中に、ドア開口9が設けられたキャブサイドパネル6に沿って後方に流れてキャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間へ流入した走行風は、アウトレットバルブ4の後方領域46へ達する前に板状シール部材5に当たる。これにより、アウトレットバルブ4の後方領域46へ流入する走行風に乱流が発生して流速が低下し、アウトレットバルブ4の近傍において、風切音の風音レベルが低減されて大きな風切音の発生が抑制される。
【0043】
また、板状シール部材5の車幅方向外側の領域で発生した風切音が板状シール部材5によって遮音されるため、板状シール部材5の車幅方向外側の領域47からアウトレットバルブ4の後方領域46へ伝達される風切音の風音レベルが低減される。
【0044】
従って、アウトレットバルブ4の車幅方向外側に板状シール部材5を設けるという簡単な構造によって、アウトレットバルブ4を介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを低減して、車内の静粛性を向上させることができる。
【0045】
また、板状シール部材5が、アウトレットバルブ4の上端よりも上方からアウトレットバルブ4の下端よりも下方まで延びているため、キャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間へ流入した走行風はアウトレットバルブ4の後方領域46へ達する前に確実に板状シール部材5に当たり、アウトレットバルブ4の後方領域46へ直接流入し難い。従って、アウトレットバルブ4の後方領域46へ流入する走行風の流速が確実に低下し、アウトレットバルブ4を介して車内へ伝達される風切音の風音レベルが確実に低減される。
【0046】
また、板状シール部材5が柔軟性を有するため、車両走行時、キャブ2と荷台3とが相対的に移動して板状シール部材5がキャブバックパネル8の後面8aと接触した場合であっても、キャブバックパネル8の後面8aが傷付き難く、また、板状シール部材5も損傷し難い。
【0047】
さらに、キャブバックパネル8の車幅方向両側の後面8a上にそれぞれアウトレットバルブ4を設け、この各アウトレットバルブ4の車幅方向外側にそれぞれ板状シール部材5を配置したので、左右のドア開口9の後方の後面8a上にそれぞれアウトレットバルブ4を配置した場合であっても、左右のアウトレットバルブ4を介して車内へ伝達される風切音の風音レベルを確実に低減することができる。
【0048】
また、板状シール部材5が柔軟性を有するため、シール取付板部31の形状に追従させて固定することができる。すなわち、シール取付板部31の前面31aが平面状であっても凹凸を有する場合であっても、シール取付板部31の前面31aの形状に合わせて板状シール部材5を固定することができる。従って、例えば、取り付け面の形状に合わせて異なる形状の板状シール部材5を製造する必要がないため、製造コストを比較的低く抑えることができる。
【0049】
なお、板状シール部材5の突出量は、上記風音レベルの低減効果を奏する範囲で任意に設定可能である。従って、本実施形態では、突出板部40の前端部40aが第1屈曲板部14の後方に僅かに離れた位置に配置されている場合を説明したが、前端部40aが第1屈曲板部14の後面に接触していてもよい。かかる場合には、キャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間へ流入した走行風は、アウトレットバルブ4の後方領域46へ達する前に板状シール部材5に当たり、アウトレットバルブ4の後方領域46への走行風の流入が阻止され、アウトレットバルブの近傍において、風切音の風音レベルが低減されて大きな風切音の発生が抑制される。また、キャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間の領域を板状シール部材5によって遮蔽することによって、キャブバックパネル8と荷台3との間に配置された他の構成部品が外部から視認され難くなるため、ピックアップトラック1の外観上の見映えを向上させることができる。
【0050】
また、板状シール部材5が、アウトレットバルブ4の上端よりも上方からアウトレットバルブ4の下端よりも下方まで延びている場合、すなわち、板状シール部材5の上端がアウトレットバルブ4の上端よりも上方に配置され、板状シール部材5の下端がアウトレットバルブ4の下端よりも下方に配置されている場合を説明したが、板状シール部材5の上端がアウトレットバルブ4の上端よりも下方に配置され、板状シール部材5の下端がアウトレットバルブ4の下端よりも上方に配置されていてもよい。
【0051】
さらに、板状シール部材5をキャブバックパネル8の車幅方向両側の後面8a上にそれぞれ配置した場合を説明したが、キャブバックパネル8の車幅方向の片側(例えば左側)の後面8a上にのみ配置されていてもよい。
【0052】
また、板状シール部材5を、左側のアウトレットバルブ4の車幅方向両側近傍にそれぞれ配置するとともに、右側のアウトレットバルブ4の車幅方向両側近傍にそれぞれ配置してもよい。かかる場合には、キャブバックパネル8の後面8aと荷台3の前面3aとの間へ流入した走行風が、左右のアウトレットバルブ4のそれぞれの車幅方向両側近傍で確実に板状シール部材5に当たるため、左右のアウトレットバルブ4の各後方領域46へ流入する走行風に確実に乱流が発生して流速が低下する。従って、左右のアウトレットバルブ4を介して車内へ伝達される風切音の風音レベルをより確実に低減することができる。
【0053】
また、板状シール部材がゴムで形成されている場合を説明したが、例えば、柔軟性を有するエラストマー系樹脂で形成されていてもよく、柔軟性を有しないプラスチックで形成されていてもよい。
【0054】
さらに、板状シール部材5をシール取付板部31に固定する場合に限られず、フロントパネル屈曲板部32に固定してもよい。
【0055】
さらに、クリップ42を用いずにリベットによって板状シール部材5を固定してもよい。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車内から車外への空気の流出を許容し車外から車内への空気の流入を阻止するアウトレットバルブを備える車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
2 キャブ
3 荷台
3a 前面(荷台前面)
4 アウトレットバルブ
5 板状シール部材(板状部材)
8a 後面(キャブ後面)
9 ドア開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの後端を区画するキャブ後面と、
前記キャブの側方を開放するドア開口の後方の前記キャブ後面上に設けられ、車内から車外への空気の流出を許容し車外から車内への空気の流入を阻止するアウトレットバルブと、
前記キャブ後面に対向配置されて荷台の前端を区画する荷台前面と、
前記アウトレットバルブの車幅方向外側で前記キャブ後面又は前記荷台前面から前方又は後方に延び、前記キャブ後面と前記荷台前面との間へ車両側方から流入する走行風が当たる板状部材と、を備えた
ことを特徴とする車両の風切音防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の風切音防止構造であって、
前記板状部材は、柔軟性を有し、前記アウトレットバルブの上端よりも上方から該アウトレットバルブの下端よりも下方まで延びている
ことを特徴とする車両の風切音防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−228709(P2010−228709A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81259(P2009−81259)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)