説明

車両修理シュミレーション方法およびこれを使用した車両修理支援装置

【課題】中古部品の使用に際して、損傷した車両のボディーカラーとは異なる色彩の中古部品についての使用を促進させることのできるようにした修理方法を確立し、そのための車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置および自動車を提供すること。
【解決手段】修理対象となる車両のボディーカラーとは異なる外装部品を使用した場合の修理完成イメージを観念しやすいようにすることで、かかるボディーカラーとは異なる色の中古部品でも問題なく使用できるようにした車両修理シュミレーション方法およびこれを用いた修理内容・見積作成処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の修理完成状態をシュミレーションする車両修理シュミレーション方法に関し、特に外板パネルなどの外装部品として中古部品をそのまま使用して修理した場合の画像や費用を作成する車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置、自動車の修理方法および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の整備や補修に際しては、部品の交換が行われることがあり、当該部品として新品が使用されることもあれば、リサイクルパーツやリビルトパーツと称される中古部品が使用されることもある。部品交換を伴う車両の整備や修理に際して中古部品を使用すれば、当然に部品代も安くなり、その結果トータルの修理費用も安く抑えることができるため、従前においても自動車の中古部品は頻繁に使用されている。
【0003】
よって従前においては、このような自動車の中古部品を流通させるためのシステムも提案されており、例えば以下の特許文献が存在する。
【0004】
すなわち、特許文献1では、自動車の取外部品の流通システム及び方法が提案されている。この文献に記載された流通システムは、取外部品の販売を適正に行う企業による取外部品、及びオプション品からなる取外部品の売買を合わせて行えるとともに、取外部品の状態に応じた売買が可能な自動車の取外部品の流通システム及び方法を提供することを課題としている。そしてこの課題を解決するべく、「販売対象となる、自動車の取外部品に関する情報を記憶する取外部品販売データベースと、前記取外部品の販売を適正に行う企業の情報を記憶する企業情報データベースと、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記取外部品の販売希望者の有する端末から該取外部品に関する特定のカテゴリ情報が送信された場合に、前記企業情報データベースに基づいて前記販売希望者が前記企業に該当するかを判定し、前記企業に該当すると判定した場合には、前記端末から送信された前記取外部品に関する情報を前記取外部品販売データベースに格納することを特徴とする自動車の取外部品の流通システム」が提案されている。
【0005】
また特許文献2では、自動車中古部品売買システムが提案されている。この文献に記載された自動車中古部品売買システムでは、購入者に対する自動車の中古部品の提供を効率的に行い、且つ中古部品の在庫管理の労力及び費用を低減できる自動車中古部品売買システムを提供することを課題としている。そしてこの課題を解決するべく、「部品購入者から購入希望の部品通知を受けると、購入希望部品リストに追加して提供し、前記購入希望部品リストを参照した部品提供業者から部品提供通知を受けると、該当する部品購入者に見積書情報を送信し、前記見積書情報に対する購入通知によって部品購入者と部品提供業者との間の取引を成立させる自動車中古部品取引サーバを有することを特徴とする自動車中古部品売買システム」が提案されている。
【0006】
そしてこのような中古部品の利用の促進を、修理費用の削減のみならず、環境保全、特に二酸化炭素の発生量を減じる観点から達成するものとして、特許文献3および4が提案されている。この特許文献3では、車両の整備や補修に際して部品交換を行う際に、当該部品として中古部品を積極的に使用できるように、その流通を促進させることのできる中古部品流通支援装置、中古部品流通支援システム、車両中古部品流通促進プログラムおよび中古部品流通支援方法を提供し、また特許文献4では、車両の部品交換を行う整備や補修費用の見積書を作成する際、中古部品を使用した場合の費用と、新品部品を使用した場合の費用を対比して示すだけでなく、更に中古部品を使用することにより削減することのできるCO2の発生量を検索乃至は演算して示すことにより、環境保全意識を高め、中古部品の流通を促進させるようにした車両の修理又は整備費用見積装置および見積システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−109148号公報
【特許文献2】特開2003−150817号公報
【特許文献3】特開2008−299546号公報
【特許文献4】特開2008−299547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車の外板パネルとして中古部品を使用する場合、損傷した車両と同じ色の中古部品を探すのは困難を伴っており、車種や色彩次第では中古部品を入手できない場合も有った。
【0009】
仮に損傷した車両と同じ色の中古部品を入手できない場合には、当該中古部品の塗装を剥がし、再度損傷した車両と同じ色に塗装しなければならず、その結果、新品の部品を使用する場合以上に修理費用が嵩んでしまうこともあった。また、このような塗装を行う場合には、その色合わせに熟練した感覚を要し、経験の浅い作業者にとっては技術的な困難を伴うものとなっていた。
【0010】
また運良く損傷した車両と同じ色の中古部品を入手できたとしても、車両の塗装は使用環境や経過年数により若干の変色が生じることから、損傷した車両における他の外板パネルとの間で色むらが生じることもあった。
【0011】
更に一般に流通している中古部品は、廃車された車両から取り外したものが殆どであるが、廃車されていない車両、即ち現在使用されている車両からも部品交換に伴って中古部品を入手できれば、当該中古部品の流通市場は大幅に拡大することが考えられる。
【0012】
そこで本発明では、中古部品の使用に際して、損傷した車両のボディーカラーとは異なる色彩の中古部品についての使用を促進させることのできるようにした修理方法を確立し、そのための車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置および自動車を提供することを第一の課題とする。
【0013】
また本発明では、色合わせなどの熟練を要せずとも、修理依頼者の希望に沿った修理を、簡易に行うことができるようにした修理方法を確立し、そのための車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置および自動車を提供することを第二の課題とする。
【0014】
また本発明では、現在使用されている車両の部品交換に伴って、何ら損傷していない中古部品を入手できるようにした修理方法を確立し、そのための車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置および自動車を提供することを第三の課題とする。
【0015】
そして本発明では、同じ車両であっても色彩により部品の在庫数および販売価格が異なるといった格差をなくすことのできる修理方法を確立し、そのための車両修理シュミレーション方法・装置、車両修理支援装置および自動車を提供することを第四の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、上記課題の少なくとも何れかを解決する為に、修理対象となる車両のボディーカラーとは異なる外装部品を使用した場合の修理完成イメージを観念しやすいようにすることで、かかるボディーカラーとは異なる色の中古部品でも問題なく使用されることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0017】
即ち本発明では、前記課題の何れかを解決する為に、記憶部と処理部と表示部とを備えるコンピュータを用いて、外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション方法であって、少なくとも、前記処理部が、前記記憶部から車両の全体形状情報を読み出すか、或いは光学機器で撮影した損傷車両の全体形状を読み込むことにより、色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得ステップと、損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定ステップと、損傷部品特定ステップで特定された損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成ステップと、作成した修理画像を表示部に出力する修理画像表示ステップとを備えており、当該表示部に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示する車両修理シュミレーション方法を提供する。
【0018】
上記コンピュータは、現在市販されているパーソナルコンピュータやオフィスコンピュータなどのような汎用装置に限らず、この車両修理シュミレーション方法を実行する為に作成された専用の装置であっても良い。例えば、入出力装置としてキーボードを使用することなく、タッチパッドなどにより簡易に入力することのできる装置であっても良い。但し少なくとも情報を読み書き自在に保持しておく記憶部と、当該記憶部から情報を読み出してこれを処理する処理部と、処理部で処理した情報などを表示する表示部とを具備する必要がある。
【0019】
また、本発明において使用する中古部品は、特に四輪自動車や二輪自動車などの各種自動車における外装部品についての中古部品である。かかる外装部品としては、車両のボディーを構成する各種パネルの他、ミラー、泥除け、エアロパーツ、タイヤホイールなども含まれる。
【0020】
そして本明細書において、色彩乃至は色とは、明度および彩度の少なくとも何れかを意味し、色彩が異なる或いは色が異なるとは、明度が異なる場合、彩度が異なる場合、および明度と彩度が異なる場合を意味する。
【0021】
上記車両修理シュミレーション方法において、損傷車両画像取得ステップでは、予め記憶部に保持されている情報を読み出すか、或いはデジタルカメラなどの光学機器で撮影した車両の画像を読み込むことにより、色彩情報を含む損傷車両画像を取得する。記憶部に保持されている情報を読み出す際には、車両の形状を特定するラインアート情報だけでなく、車体の色彩を含めた情報として取得する必要がある。
【0022】
損傷部品特定ステップでは、損傷している部分を含む部品を部品単位で、名称をキーボードなどから入力したテキスト情報で指定するか、或いはディスプレイなどの表示部に表示した損傷車両画像において、損傷部分や領域をタッチパッドやマウスを含むポインティングデバイスで指定することにより行うことができる。ここで、部品単位とは、例えばフロントバンパー、右ドアミラー、左ドアミラー、右フェンダーパネル、左フェンダーパネル、ボンネットパネル、右前ドアパネル、右後ドアパネル、左前ドアパネル、左後ドアパネル、ルーフパネル、リア・クォーター・パネル、リアバンパー、フロンスポイラー、リアスポイラー、サイドステップなどの単位であることができる。
【0023】
修理画像生成ステップでは、上述の損傷部品特定ステップで特定した損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する。具体的には、損傷した部分を含む部品を、現在流通している中古部品で交換した場合の画像を作成する。この交換に使用する中古部品は、必ずしも修理対象となる車両のボディーカラーと同じである必要は無い。例えばボディーカラーが白であり、入手可能な中古部品が黒、赤、灰色および金色などである場合、当該入手可能な中古部品を塗装せずにそのまま使用した場合の修理画像を作成する。
【0024】
そして修理画像表示ステップで、上記のように作成した修理画像を表示部に出力することにより、損傷部分がある外板パネルを他の外板パネルとは別の色に変更した場合のイメージを、修理依頼者は直接的に理解して確認することができる。
【0025】
上記本発明の車両修理シュミレーション方法において、前記修理画像生成ステップでは、損傷部品特定ステップで特定された損傷部品と関連付けられた他の部品についても入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する事が望ましい。
【0026】
特定された損傷部品と他の部品との関連付けは、フロントバンパーとリヤバンパーおよびボンネットパネルとトランクパネル、フロントフェンダーとリア・クォーター・パネルのように、車両の前後で対を成す部品同士を関連付けしておいたり、或いは右ドアパネルと左ドアパネルおよび右フェンダーパネルと左フェンダーパネルなどのように、車両の左右で対を成す部品同士を関連付けておくことができる。即ち、本明細書における特定された損傷部品と他の部品との関連付けとは、異なる色彩の外板パネルを使用する事が望ましい部品同士をを関連させることを意味し、当該関連付けは任意に設定することができる。
【0027】
このように、損傷部品だけでなく、意匠のバランス上等の観点から他の部品についても中古部品に交換することにより、取り外した部品を新たな中古部品として流通させることができる。例えば損傷した車両がのボディーカラーが白で、損傷した部分がリアバンパーであり、入手可能な中古部品が黒いリアバンパーである場合、リアバンパーだけを黒にしてしまうと、車両全体の色彩バランスで問題が生じる可能性がある。この様な場合に、何ら損傷の無いフロントバンパーについても黒い中古部品に交換することで、全体の色彩バランスもまとまったものとなる。そして、取り外した白いフロントバンパーについては、新たに中古部品として提供することができるようになる。
【0028】
また上記車両修理シュミレーション方法においては、更に、前記修理画像生成ステップの前に、夫々の中古部品について、少なくとも部品名と色彩の情報を保持する中古部品データベースから、損傷部品に対応する中古部品の有無と色彩の情報とを取得する中古部品検索ステップを備える事が望ましい。かかる中古部品検索ステップは、車両修理シュミレーション方法を実行するコンピュータがネットワークを通じて、他のコンピュータが保持する中古部品データベースから、損傷部品に対応する中古部品の有無と色彩の情報を検索、抽出してこれを取得することができる。なお、修理に必要な中古部品が入手可能か否かや、その色彩などの情報は、予めリストなどを作成しておけばこれを参照して特定することもできる。
【0029】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記の車両修理シュミレーション方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。かかるプログラムはインターネットなどの情報通信ネットワークを介して提供する他、コンパクトディスクやフラッシュメモリー等の情報保持媒体に記録して提供することができる。
【0030】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記の車両修理シュミレーション方法を実行する為の車両修理シュミレーション装置を提供する。
【0031】
即ち、外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション装置であって、車両毎に、その全体形状を記録した記憶部と、当該記憶部から車両の全体形状情報を読み出すと共に、車体の色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得手段と、当該損傷車両画像取得手段が取得した損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定手段と、少なくとも、当該損傷部品特定手段で特定した損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成手段と、作成した修理画像を表示装置に出力する修理画像表示手段とを備えており、当該表示装置に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示する車両修理シュミレーション装置である。
【0032】
かかる車両修理シュミレーション装置では、予め複数の車両について全体形状を記憶部に記憶しておき、損傷した車両の修理画像を形成する場合には、当該記憶部に保持している画像を読み出してシュミレーションを行い、修理画像を作成することができる。
【0033】
また本発明では、上記車両修理シュミレーション装置に関連し、損傷した車両の実際の画像を撮影し、これに対して修正・加工を行うようにした車両修理シュミレーション装置を提供する。
【0034】
即ち、外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション装置であって、損傷した車両における損傷部分を含む全体画像を読み込むことにより、車体の色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得手段と、当該損傷車両画像取得手段が取得した損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定手段と、少なくとも、当該損傷部品特定手段で特定した損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成手段と、作成した修理画像を表示装置に出力する修理画像表示手段とを備えており、当該表示装置に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示する車両修理シュミレーション装置である。
【0035】
かかる車両修理シュミレーションでは、損傷した実際の写真画像を使用することから、より正確なイメージを作成することができ、修理依頼者は自己の使用する車両について、修理の完成によるイメージチェンジを期待することができる。
【0036】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかの課題を解決する為に、従前のように中古部品を塗装し直して使用した場合と中古部品をそのまま使用した場合との、それぞれの修理内容と修理費用を提示することで、修理依頼者における修理内容についての意思決定をし易くするようにした車両修理支援装置を提供する。
【0037】
即ち、外装が損傷した車両についての修理内容および修理費用を2通り以上算出する車両修理支援装置であって、損傷した車両における外装を、元通りの色彩に塗装して補修した場合の修理内容とその修理費用を作成する通常修理費用算出手段と、損傷した車両における外装を、損傷した部位を部品単位で、中古部品に交換した場合の修理内容とその修理費用を作成する中古部品修理費用算出手段とを備えており、当該中古部品修理費用算出手段は、交換に使用した中古部品に対する塗装を行わないで装着した状態の修理内容と修理費用を作成する車両修理支援装置である。
【0038】
かかる車両修理支援装置によれば、2通りの完成状態を示す修理内容や修理費用を比較することで、従前のような修理が良いか、或いは敢えて外板パネルなどを他とは異なる色にするかなどを容易に判断できるようになる。
【0039】
かかる車両修理支援装置においては、前記中古部品に交換した場合の修理内容は、前述した本発明に係る車両修理シュミレーション装置で作成された修理画像として作成することができる。修理を行った状態をシュミレーションして画像として提供することにより、何れの部品を中古部品に交換するかや、如何なる色彩の中古部品に交換するかを、操作しながら選択していくことができる。
【0040】
更に、上記車両修理支援装置で修理内容や修理費用を算出するに際し、損傷していない部品も中古部品荷交換した場合には、取り外した部品を引き取った価格を加味するようにすることもできる。
【0041】
即ち、前記中古部品修理費用算出手段は、更に中古部品に交換する損傷した部品に関連付けられた部品を交換した場合の修理内容と、当該関連付けられた部品の引き取り価格を含んだ修理費用を作成するように構成した車両修理支援装置である。かかる関連付けられた部品としては、フロントバンパーとリヤバンパーおよびボンネットパネルとトランクパネルなどの車両の前後で対応する部品、並びに右ドアパネルと左ドアパネルおよび右フェンダーパネルと左フェンダーパネルなどの車両の左右で対応する部品とすることができる。
【0042】
例えば損傷した右ドアパネルを別の色の中古部品に変更した場合、これに関連して損傷していない左ドアパネルも交換した方が全体のデザイン上、望ましい場合もある。この様な場合に、取り外した左ドアパネルを引き取り、その価格を全体の修理費用から減じるようにするものである。これは同じ左ドアパネルであっても、その色彩次第では交換する中古部品よりも高額になることもあり、また交換する中古部品と同じ価格であっても、当該中古部品とは異なる色彩の中古部品を中古部品市場に供給できるとのメリットも得られる。
【0043】
更に本発明では、前記課題の少なくとも何れかの課題を解決する為に、上気した車両修理シュミレーション方法を実施して行う自動車修理方法を提供する。
【0044】
即ち、外板パネルが損傷した自動車を修理する自動車の修理方法であって、損傷した外板パネルを部品単位で入手可能な中古部品に交換した場合の画像を作成する車両修理シュミレーションステップを含み、当該車両修理シュミレーションステップは、前記した本発明に係る車両修理シュミレーション方法を実施する自動車の修理方法である。
【0045】
かかる修理方法によれば、修理する車両のボディーカラーとは異なる色の中古部品をそのまま使用して修理を行った場合のイメージを明確に把握することができる上、部品交換で済み、色合わせなどの特殊技能や多くの経験を要する工程を省略することができることから、熟練を要せずとも車両を修理できるようになる。
【0046】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかの課題を解決する為に、複数の外板パネルを用いて外装が形成された自動車であって、外板パネル単位で、他の外板パネルとは異なる色彩が施された異色外板パネルが1つ以上存在しており、上記本発明に係る車両修理シュミレーション方法により、当該異色外板パネルとして何れの外板パネルを選択するか、および当該異色外板パネルの色彩が選定されている自動車を提供する。
【0047】
かかる自動車は、少なくとも1つ以上の外装部品が、他とは異なる色彩であり、望ましくはボディーを構成する何れか1つ以上の外板パネルが、他の外板パネルとは異なる色彩である異色外板パネルで構成される。更にボディーを構成する複数の外板パネルにおいて、隣り合う外板パネルを相互又は交互に異なる色彩にすることができる。また、ボディーを構成する複数の外板パネルの夫々を全て異なる色彩に形成することもできる。
【0048】
この点、従来ツートーンカラー等、車両のサイドモール部分を境に上下に色分けた車両も存在するが、部品単位で色彩を異ならせた車両は存在しない。しかしながら、今後の多様化する利用者のニーズに対応していく為には、オリジナリティーの高い色彩を施した自動車も提供することが望ましく、利用者の希望に沿って随時色彩を変更できることが望ましい。これを実現する為には、色彩の変更を部品交換で行うことが望ましい。したがってかかる本発明の自動車は、自動車の外装部品、特に外板パネルを部品単位で異なる色彩にしたものである。
【0049】
なお、上記本発明では、中古部品をそのまま使用した場合を特徴としているが、これは中古部品の流通や利用を促進させることを目的とするためである。したがって、このような中古部品流通の普及などを目的としない場合、具体的には、単純に車両の色彩を基調としたデザインの改良を目的とする場合には、中古部品に限らず新品部品を使用することができ、これも本発明と均等な技術に属する。更に、このような車両の色彩を基調としたデザインの改良に着目した場合には、部品の交換を伴わず、車両の外板パネルの何れかを他の外板パネルとは異なる色彩に着色することもでき、この様な車両および改良方法も本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係る中古部品流通ネットワークシステムの構成略図
【図2】コンピュータのハードウェア構成を示す略図
【図3】車両修理シュミレーション処理を示すフローチャート
【図4】修理内容・見積作成処理を示すフローチャート
【図5】中古部品販売サーバに保持された在庫情報
【図6】修理内容・見積作成処理における画面遷移図
【図7】中古部品在庫照会における画面遷移図
【図8】本実施の形態で修理された自動車
【図9】本実施の形態で修理された他の自動車であり、(A)右側面斜視図、(A)左側面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明に関する幾つかの実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0052】
図1は、本実施の形態に係る車両修理シュミレーション方法を実施する為の車両修理シュミレーション装置を用いて形成した中古部品流通ネットワークシステムを示しており、具体的にはこの車両修理シュミレーション装置10と、この車両修理シュミレーション装置に対して入手可能な中古部品の有無やその色などの情報を提供する車両中古部品販売サーバ20とをインターネットを始めとする情報通信ネットワークで接続して構築された中古部品流通ネットワークシステム100を示している。かかる構成において、ネットワークに接続されている車両修理シュミレーション装置と、車両中古部品販売サーバとは、ぞれぞれ1つづつの構成になっているが、これらは複数であってよい。なお、これら車両修理シュミレーションと車両中古部品販売サーバとの間における具体的な情報通信は後述する。
【0053】
図2はこの車両修理シュミレーション装置と車両中古部品販売サーバを構成するコンピュータのハードウエア構成の一例を示している。この図2に基づいて本実施の形態に係る車両修理シュミレーション装置として用いられるコンピュータ(クライアント)、および車両中古部品販売サーバとして用いられるコンピュータのハードウエア構成の例について説明する。ただし、図2のコンピュータ500は、車両修理シュミレーション装置、中古部品販売サーバの代表的な構成を例示したにすぎない。
【0054】
コンピュータ500は、CPU501、メモリ502、音声出力装置503、ネットワークインタフェース504、ディスプレイコントローラ505、ディスプレイ506、入力機器インタフェース507、キーボード508、マウス509、外部記憶装置510、外部記録媒体駆動装置511、およびこれらの構成要素を互いに接続するバス512を含んで構成されている。
【0055】
CPU501は、コンピュータ500の各構成要素の動作を制御し、OSの制御下で、WEBサーバやWEBブラウザの実行をコントロールし、本発明に係る車両中古部品流通促進ネットワークシステムの各構成要素(サーバ、クライアント端末)において、その動作を制御するものであり、本明細書における処理部に相当する。メモリ502は通常、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、および揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)から構成され、本明細書における記憶部に相当する。ROMには、コンピュータ500の起動時に実行されるプログラム等が格納される。RAMには、CPU501で実行され、本発明における車両修理シュミレーション方法などを実現するためのプログラムや、それらのプログラムが実行中に使用するデータ(たとえば、データベースやWEBページのデータ)が一時的に格納される。
【0056】
音声出力装置503は、スピーカ等の、音声を出力する機器であり、たとえばクライアント端末側で再生ソフトウエアを用いて音声データ、または音声データを含む動画データ等を再生する場合などに必要になる。ネットワークインタフェース504は、ネットワーク520に接続するためのインタフェースである。ネットワーク520は、図1に示すネットワークに対応する。
【0057】
ディスプレイコントローラ505は、CPU501が発する描画命令を実際に処理するための専用コントローラである。ディスプレイコントローラ505で処理された描画データは、一旦グラフィックメモリに書き込まれ、その後、本明細書における表示部としてのディスプレイ506に出力される。かかるディスプレイ506は、たとえば、LCDやCRTで構成される表示装置である。クライアント端末が再生ソフトウエアを用いて動画データや静止画データを再生したり、サーバに対する指示を特定する場合、更にサーバから送信される処理結果などを表示する場合に必要となる。
【0058】
入力機器インタフェース507は、キーボード508やマウス509、或いはタッチパッドなどの入出力デバイスから入力された信号を受信して、その信号パターンに応じて所定の指令をCPU501に送信する。キーボード508やマウス509は、クライアント端末においてサーバーに送信する指令を指示したり、プログラムの実行や操作を行う場合に必要となる。
【0059】
外部記憶装置510も本明細書における記録部の一部を構成し、これは、たとえばハードディスクドライブ(HDD)のような記憶装置で構成することができる。この装置内には上述したプログラムやデータが記録され、実行時に、必要に応じてそこからメモリ502のRAMにロードされる。特に、車両修理シュミレーション装置においては、車両の全体形状データや、車両修理シュミレーション方法を実行するプログラムを格納しておくことができ、車両中古部品販売サーバでは、中古部品についての在庫やその色彩などの情報と、当該中古部品の在庫を検索する為のプログラムを格納しておくことができる。
【0060】
外部記録媒体駆動装置511は、CD(Compact Disc)、MO(Magnet−Optical Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの可搬型の外部記録媒体530の記録面にアクセスして、そこに記録されているデータを読み取る装置である。
【0061】
次に、車両修理シュミレーション装置における動作、即ち車両修理シュミレーション方法を、図3のフローチャートを参照しながら説明する。即ち、この実施の形態における車両修理シュミレーション方法は、クライアントとして位置づけられる車両修理シュミレーション装置において、当該方法に従って動作するように構築されたプログラムが実行されることにより達成される。
【0062】
かかる車両修理シュミレーション方法の実行に際して、車両修理シュミレーション装置10は、最初に損傷した車両に関する情報(即ち車両情報)の入力を要求し、これを取得する(ステップS11)。かかる車両情報の入力は、キーボードなどの操作により入力する他、OCRで車検証を読み取ることによっても実施することができる。但し、この車両情報としては、少なくともその車両の外板パネルなどの外装部品を特定する為の情報、例えば車種名、型式、年式などの情報を取得する必要がある。
【0063】
車両修理シュミレーション装置10は、かかる車両情報を取得すると、次に損傷した車両の画像を取得する為の処理を行う(ステップS12)。この損傷した車両画像の取得は、当該車両修理シュミレーション装置の記憶部に保存しておいた車両全体形状を特定する情報を読み取って、これに着色を施して表示部に描画する他、デジタルカメラなどの光学機器で実際の損傷車両を撮影し、これを読み込むこともできる。特に記憶部に車両全体形状を特定する情報を記憶しておく場合には、ラスタデータ形式であっても良いが、望ましくは輪郭などを規定するベクタデータ形式で保存されるのが望ましい。また、デジタルカメラなどで実際のの損傷車両を撮影した車両画像を取得する場合には、そのまま使用しても良いが、レタリングなどにより輪郭をトレースして、任意に色彩を変更できるように加工することが望ましい。
【0064】
次に、取得した車両画像に対して、実際に損傷している部品を選択する(ステップS13)。かかる損傷部品の選択は、マウスやタッチパッドなどのポインティングデバイスを操作することにより行うことができる。特に、この損傷部品の選択に際しては、車両において損傷している部分(ポイント)を特定することにより、その部分が含まれている部品全体を選択できるように構成することが望ましい。そのためには、表示装置に表示される部品単位で領域情報を有する事が必要であり、ポインティングデバイスで選択された部分(ポイント)の座標から、その座標を含む領域を有する部品が選択されるように関連付けられることが必要である。但し、この部品の選択は、表示部上におけるポインティングデバイスによる選択に限らず、テキスト形式で部品の名称や部品番号を入力して特定することもできる。
【0065】
そして損傷部品が選択されることにより、処理部はそのリストを作成する(ステップS14)。車両修理シュミレーション装置が保持する部品情報が、予め部品番号などの情報を伴っている場合には、このリストの作成に際して部品番号を含めることができる。
【0066】
そして損傷部品リストが作成されると、当該リストに基づいて車両修理シュミレーション装置の処理部は、関連部品リストを作成する(ステップS15)。この関連部品リストは、予め部品同士で関連付けて記憶部に保持されている部品リストとすることが出来、例えば右ドアパネルと左ドアパネルを関連付けておくことができる。この様な関連付けが行われている場合、仮に右ドアパネルが損傷部品リストに含まれているとすると、それに関連して左ドアパネルが関連リストに読み込まれることになる。但し、この関連リストは、必ずしも必要なものではなく、例えば損傷した車両についての全ての外装部品の在庫を検索する場合には、このような関連部品リストの作成を省略することもできる。
【0067】
そして以上のようにして、損傷部品りすとや関連部品リストとして、損傷した車両に使用したい部品のリスト、即ち現在入手可能な中古部品の在庫を確認したい部品についてのリストを作成すると、これを前記図1に示した中古部品販売サーバ20との情報通信ネットワークを確立し(ステップ22)、当該リストを中古部品販売サーバ20に送信する。
【0068】
このリストを取得した中古部品販売サーバ20では、図3(B)に示すような中古部品検索処理が実行される。即ち、前記車両修理シュミレーション装置10から送信された損傷部品リスト及び関連部品リストを取得すると(ステップS25)、このリストに記載された何れかの情報(例えば部品番号)に基づいて、中古部品販売サーバ20を構成する記憶部に設けられた在庫データから、中古部品の在庫を検索する(ステップS26)。
【0069】
かかる中古部品販売サーバ20が保持する中古部品の在庫情報としては、例えば図4に示すように、当該部品に付与された一意のコード51と、車種名52、型式53、年式54、部品ナンバー55、価格56、色57、色番号58、実際の写真画像59からなる中古部品情報50として構成することができる。即ち、中古部品販売サーバ20の記憶部には、このようなレコードが記述された複数の中古部品情報50が保持されることが必要である。なお、この中古部品情報50において、色57又は色番号58は、本発明において重要なレコードである。また、かかる中古部品情報50は、必ずしもデータベース10により管理される必要はなく、フラットファイルやXMLなど、他の形態のデータ管理システムでも対応可能である。
【0070】
そして中古部品販売サーバ20は、このような中古部品情報50の検索により、現在提供できる中古部品のリストを作成し(ステップS27)、これを車両修理シュミレーション装置10に、情報通信ネットワークを介して送信する。
【0071】
よってこの実施形態に示す様に構築されたネットワークシステム100では、中古部品販売サーバ20における中古部品の検索乃至は照会は、車両修理シュミレーション装置からなるクライアント端末10からの操作により、当該クライアント端末10が中古部品販売サーバ20にアクセスし、中古部品の在庫の有無を確認する事によって行うことができる。
【0072】
次に再び図3(A)に示す車両修理シュミレーション処理に戻り、中古部品販売サーバ20から現在入手可能な中古部品リストを取得すると(ステップS23)、処理部はこれを一旦目のリーに書き込み、さらに使用者に知らせる為にこれを表示部に表示させる(ステップS16)。
【0073】
利用者においては、抽出された現在入手可能な中古部品の中から、価格や色などのを考慮した上で、必要な部品を任意に選択する(ステップS17)。当然のことながら、茲で選択する部品は、損傷部を含む部品に対応する中古部品を含んでおり、その他にも損傷していない部品に対応する中古部品を選択することもできる。この選択は、修理依頼者等の好み、すなわちデザイン上のセンスに基づいて、任意に行われれば良い。
【0074】
そして、この交換する中古部品の選択により、処理部は、ステップ12で取得した車両画像における該当する部品を当該中古部品で置き換えた画像(シュミレーション画像)を作成し(ステップS18)、これを表示部に修理画像として表示させる(ステップS19)。
【0075】
そこ車両修理シュミレーション装置は、利用者において、この表示部に示された修理画像を参照した上で、更に他の部品を交換するか否か、或いは他の部品(リアスポイラーなどの装飾目的の外装部品)を新たに付け加えるか否かの判断を待つ(ステップS20)。そして、更に他の部品の交換などを行うとの指示を得た場合には、交換する中古部品を選択するステップ17に処理を戻し、更に他の交換部品などが無いとの指示を得た場合には、今回の修理に使用する中古部品のリストおよび損傷車両から取り外すことになった部品(損傷の無い部品)のリストを作成して、これをメモリーに保存し(ステップS24)、最終的な修理画像を表示装置に表示させて(ステップS21)処理を終了する。
【0076】
次に、図4に示す車両修理支援装置において実行される処理を示すフローチャートを参照しながら、その処理を説明する。かかる処理は、前記した車両修理シュミレーション装置を構成するコンピュータにおいて、車両の修理内容及び修理費用の見積もりを作成する処理(プログラム:モジュール)を更に実行することにより実現できる。また、この外装部品についての中古部品を使用して修理内容や修理費用の見積もりを作成する処理において、前記車両修理シュミレーション方法が実行される。よって、以下ではハードウエア構成が車両修理シュミレーション装置と同じであるから、当該車両修理支援装置についても符号10を使用する。
【0077】
かかる修理内容・見積もり作成処理の実効に際しては、最初に修理依頼者である顧客情報の入力を要求し、当該車両修理支援装置10は、当該顧客情報をキーボードなどから入力された情報から取得する(ステップS31)。
【0078】
次に、この車両修理支援装置10における処理部は、修理対象となる車両情報の入力を要求し、これもキーボードなどからの入力情報に基づいて取得し(ステップS32)、メモリーなどに保存する。なお、このステップS32で取得した車両情報は、後に車両修理シュミレーション方法を実行する場合に、そのまま当該車両修理シュミレーションプログラムに渡すこともできる。
【0079】
次に、当該車両修理支援装置10の処理部は、交換部品があるか否かの指示を待ち(ステップS33)、部品交換を伴わない修理の場合には、その処理を終了する。一方で、外板パネルが凹んだり損傷した場合等には、部品交換を伴う修理と判断し、次に使用する部品として中古部品を使用するか否かの指示を待つ(ステップS34)。ここで交換する外板パネルとして中古部品を使用し無いとの指示を受けた場合には、当該損傷した車両の修理に必要な新品部品のリストを作成し(ステップS35)、その上で使用する新品部品の費用を集計する(ステップS36)。一方、中古部品を使用するとの指示を受けた場合には、前記の車両修理シュミレーション方法を実行するプログラムを動作させ、修理対象となる車両本来のボディーカラーとは異なる色彩の中古部品を使用して修理を行った場合の車両修理シュミレーションを行う。なお本実施の形態では、このように中古部品を使用するとの指示を得た場合でも、比較対照の為に新品部品を使用して修理を行った場合の処理を実施するように構成されている。
【0080】
そしてこの車両修理シュミレーションを終えると、当該車両修理支援装置は、当該シュミレーションによって作成された修理内容で使用する中古部品のリストを取得し(ステップS37)、当該使用する中古部品費用の集計を行う。また、シュミレーションの結果、車両全体のデザイン上の観点から、本来であれば修理を要しない部品(即ち損傷していない部品)についても、それとは異なる色彩の中古部品に交換することとした場合には、当該取り外した部品についての引き取り価格を算定し、集計する(ステップS39)。この取り外した部品は、新たに取り付ける部品との交換とすることもできる他、中古部品市場に流通させた場合の買い取り価格で引き受けることもできる。このような同じ部品であっても、色彩や状態次第では取り外した部品が交換する中古部品よりも高価になることもある為である。
【0081】
そして、このようにして交換に伴って取り外した部品を新たに中古部品の市場に供給することにより、中古部品市場の在庫量は増加し、より一層、様々な色彩の部品が供給されることになり、修理依頼者においても様々なデザインを楽しむことが可能になる。このような修理方法は、従前において一切提供されておらず、本発明により始めて提供されるものである。
【0082】
以上のようにして、新品部品を使用した場合に使用する部品とその価格、ならびに中古部品を使用した場合に使用する部品とその価格および取り外した部品とその価格を集計し、更に夫々について工賃を集計する(ステップS40)。特に、色の異なる中古部品を使用して修理を行った場合には、その修理画像を観念しやすいように、前記車両修理シュミレーション処理から最終修理画像を取得して(ステップS41)、そして見積書を作成する(ステップS42)。
【0083】
なお、上記の処理において見積もり費用を算出する為の夫々の部品(交換する部品及び取り外した部品を含む)の価格は、当該車両修理支援装置10の記憶部、または中古部品販売サーバ20から供給された価格を使用することができ、また工賃についても、当該車両修理支援装置10の記憶部に保存してある情報を読み出すか、或いは外部のサーバからネットワークを介して取得することができる。
【0084】
次に、上記各処理をより具体的に観念できるようにするため、クライアント10における操作画面を参照しながら説明する。
【0085】
先ず、図6は車両修理シュミレーションを行いながら、車両の修理内容及び修理費用の見積もりを作成する処理画面を示しており、これは車両修理支援装置10(車両修理シュミレーション装置)の表示部に表示される画面である。先ず図6(A)は、前記車両修理シュミレーション処理における、損傷部品選択処理(ステップS13)に相当するものであり、この画面70には、ステップS11で取得した車両情報と共に、ステップS12で取得した車両画像73を表示している。そしてこの車両画像上で、何れかの損傷箇所Pをポイントすると、当該ポイントした地点を含む部品が部品単位でマーカー表示される。この図では、特に右ドアパネルが選択されている。また、この選択した部品は、その名称が名称表示欄74にテキスト表示される。そしてこのテキスト表示に伴い、処理部のメモリーには、その部品の部品番号リストが保持される。そして、この画面における在庫照会ボタンを押下することにより、当該部品番号情報は中古部品販売サーバ20に送信される。
【0086】
この中古部品販売サーバ20を使用した中古部品の検索画面は図7に示す。この図7に示すように、送信された部品番号、又は車名、型式、年式の何れかの検索キーに基づいて、中古部品販売サーバ20は、自己の記憶部が保持する在庫情報を検索し、そのリストを作成して入手可能な中古部品リストとして、HTML形式などにより車両修理支援装置10荷送信する。図7は、この送信された情報を車両修理支援装置10の表示部に表示した状態を示す。この入手可能な中古部品リスト画面60に示すように、同じ右ドアパネルであっても、その状態や色によって価格が相違しており、また在庫数も相違している。そこで使用者はこのリストを参照しながら、車両修理シュミレーションに使用したい部品をチェックボックスで選択する。なお、ここでリストアップされる中古部品は、右ドアパネルや左負ドアパネルなど、必要な部品を特定して検索する他、車種名、型式、年式に基づいて、使用可能な全ての外装部品をリストアップするように構成しても良い。
【0087】
そしてこの入手可能な中古部品リスト画面60において、車両修理シュミレーションに必要な部品をチェックし、リストを作成するボタン67を押下することにより、当該情報を確認する為の使用する中古部品リストを作成し、車両修理支援装置10の表示部に表示させる。この表示内容を確認してダウンロードボタン68を押下することにより、その価格情報や色情報等を、車両の修理内容及び修理費用の見積もり作成処理情報に取り込む。具体的には、図6(B)の車両修理シュミレーション画面71における中古部品リスト欄76に反映させる。
【0088】
この車両修理シュミレーション画面71では、ステップS12で取得した車両画像73に基づいて、中古部品リスト欄76に列記された部品であって、任意に選択した部品と交換した場合の画像を作成し(ステップS18に相当)、これを車両修理シュミレーション画像欄78に表示させる。なお、このシュミレーション画像は、車両における複数方向から見た図面を作成する事が望ましく、これらはサムネイル表示欄77に表示する事が望ましい。なお、当該サムネイル表示欄に表示された画像は、選択により車両修理シュミレーション画像欄78に拡大表示することができる。なお、この処理は修理依頼者や作業者が納得がいくまでシュミレーションすることができる。
【0089】
そして最終的な修理完成状態が出来上がった状態で、確定ボタン79を押下することにより、修理に必要となる中古部品、取り外した交換部品、および工賃などを集計し、また修理完成様相図を読み込んで、図6(C)の見積画面72に表示するような見積書を作成する。この見積書中には、読み込んだ修理完成状態を示す図面80と、修理内容の明細81と、合計金額82が表示され、これらは中古部品を使った場合と、新品の部品を使った場合との2通りの見積もりを作成している。
【0090】
次に、上記の方法で修理される自動車の例を図8および9を参照しながら説明する。図8に示す自動車90は、フェンダー、前席ドアパネル、後席ドアパネルの全てを異なる色彩のパネルに置き換えた状態を示しており、特に外板パネル単位で、トーン差を出すような色彩の外装となるように仕上げている。また、図9に示した自動車は、前記車両自体は前記図8に示したものと同じであるが、車両の右側を構成するパネルと、左側を構成するパネルとで、異なる色彩となるように仕上げている。なお、図9(B)は右側面斜視図、(C)は左側面斜視図である。
【0091】
この図8および9との対比からも明らかであるが、同じ車両であっても、パネル単位で色彩を異ならせることにより、両者は全く異なる印象を醸し出すことから、人とは違う自動車に乗りたいなど、利用者における多様なニーズにも対応できる修理方法が本発明により提供されることになる。
【0092】
なお、上記クライアント10として位置づけられる車両修理シュミレーション装置や車両修理支援装置は、一般的には家庭や企業に配置されているPC(パーソナルコンピュータ)を想定しているが、携帯電話やページャのような、ネットワーク接続可能な携帯端末であってもよい。携帯電話等を用いたネットワークへの接続は、公衆電話網(携帯電話網)を経由して行われる。
【0093】
また、上記した処理をコンピュータで実現するためのプログラムの他の流通形態としては、ネットワーク上の所定のサーバから、ネットワーク520およびネットワークインタフェース504を介して外部記憶装置510に格納され、あるいは直接実行されるということも考えられる。このようなルートで格納されたプログラムは、上記と同様に、実行時にメモリ502のRAMにロードされ、実行される。
【0094】
また、前記図1では特にインターネットなどを利用したネットワーク構成による車両中古部品流通促進システムについて説明を行ったが、例えばネットワークに接続されていないコンピュータ(スタンドアローン型)で使用することも可能である。この場合、入手可能な中古部品のリストなどは、、ファックスその他の情報送信手段などで入手することもできる。
【0095】
更に本発明の車両修理シュミレーション装置および車両修理支援装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は自動車の修理方法における、新たな修理方法を提供するのみならず、中古部品の流通促進の側面や、外板パネルの装飾を変更することにより、飽きを解消して、長年使用することのできる自動車の修理方法を提供するものである。
【符号の説明】
【0097】
10 車両修理シュミレーション装置
20 車両中古部品販売サーバ
100 中古部品流通ネットワークシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュミレーション方法
記憶部と処理部と表示部とを備えるコンピュータを用いて、外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション方法であって、少なくとも、
前記処理部が、前記記憶部から車両の全体形状情報を読み出すか、或いは光学機器で撮影した損傷車両の全体形状を読み込むことにより、色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得ステップと、
損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定ステップと、
損傷部品特定ステップで特定された損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成ステップと、
作成した修理画像を表示装置に出力する修理画像表示ステップとを備えており、
当該表示装置に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示されることを特徴とする、車両修理シュミレーション方法。
【請求項2】
前記修理画像生成ステップでは、損傷部品特定ステップで特定された損傷部品と関連付けられた他の部品についても入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する、請求項1に記載の車両修理シュミレーション方法。
【請求項3】
前記損傷部品と関連付けられた他の部品は、フロントバンパーとリヤバンパーおよびボンネットパネルとトランクパネルなどの車両の前後で対応する部品、並びに右ドアパネルと左ドアパネルおよび右フェンダーパネルと左フェンダーパネルなどの車両の左右で対応する部品である、請求項2に記載の車両修理シュミレーション方法。
【請求項4】
更に、前記修理画像生成ステップの前に、夫々の中古部品について、少なくとも部品名と色彩の情報を保持する中古部品データベースから、損傷部品に対応する中古部品の有無と色彩の情報とを取得する中古部品検索ステップを備える、請求項1に記載の車両修理シュミレーション方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両修理シュミレーション方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション装置であって、
車両毎に、その全体形状を記録した記憶部と、
当該記憶部から車両の全体形状情報を読み出すと共に、車体の色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得手段と、
当該損傷車両画像取得手段が取得した損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定手段と、
少なくとも、当該損傷部品特定手段で特定した損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成手段と、
作成した修理画像を表示装置に出力する修理画像表示手段とを備えており、
当該表示装置に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示することを特徴とする、車両修理シュミレーション装置。
【請求項7】
外装が損傷した車両の修理完成状態の画像を形成する車両修理シュミレーション装置であって、
損傷した車両における損傷部分を含む全体画像を読み込むことにより、車体の色彩情報を含む損傷車両画像を取得する損傷車両画像取得手段と、
当該損傷車両画像取得手段が取得した損傷車両画像において、損傷した部分を部品単位で特定する損傷部品特定手段と、
少なくとも、当該損傷部品特定手段で特定した損傷部品を、これに対応する入手可能な中古部品で置き換えた画像を作成する修理画像生成手段と、
作成した修理画像を表示装置に出力する修理画像表示手段とを備えており、
当該表示装置に出力される修理画像中の入手可能な中古部品は、入手可能な中古部品そのままの色彩で表示することを特徴とする、車両修理シュミレーション装置。
【請求項8】
外装が損傷した車両についての修理内容および修理費用を2通り以上算出する車両修理支援装置であって、
損傷した車両における外装を、元通りの色彩に塗装して補修した場合の修理内容とその修理費用を作成する通常修理費用算出手段と、
損傷した車両における外装を、損傷した部位を部品単位で、中古部品に交換した場合の修理内容とその修理費用を作成する中古部品修理費用算出手段と、を備えており、
当該中古部品修理費用算出手段は、交換に使用した中古部品に対する塗装を行わないで装着した状態の修理内容と修理費用を作成することを特徴とする、車両修理支援装置。
【請求項9】
前記中古部品に交換した場合の修理内容は、請求項6又は7に記載の車両修理シュミレーション装置で作成された修理画像である、請求項8に記載の車両修理支援装置。
【請求項10】
前記中古部品修理費用算出手段は、更に中古部品に交換する損傷した部品に関連付けられた部品を交換した場合の修理内容と、当該関連付けられた部品の引き取り価格を含んだ修理費用を作成し、
当該関連付けられた部品は、フロントバンパーとリヤバンパーおよびボンネットパネルとトランクパネルなどの車両の前後で対応する部品、並びに右ドアパネルと左ドアパネルおよび右フェンダーパネルと左フェンダーパネルなどの車両の左右で対応する部品である、請求項8又は9に記載の車両修理支援装置。
【請求項11】
外板パネルが損傷した自動車を修理する自動車の修理方法であって、
損傷した外板パネルを部品単位で入手可能な中古部品に交換した場合の画像を作成する車両修理シュミレーションステップを含み、
当該車両修理シュミレーションステップは、前記請求項1〜4の何れか一項記載の車両修理シュミレーション方法である自動車の修理方法。
【請求項12】
複数の外板パネルを用いて外装が形成された自動車であって、
外板パネル単位で、他の外板パネルとは異なる色彩が施された異色外板パネルが1つ以上存在しており、
前記請求項1〜4の何れか一項記載の車両修理シュミレーション方法により、当該異色外板パネルとして何れの外板パネルを選択するか、および当該異色外板パネルの色彩が選定されている、自動車。





【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−81638(P2011−81638A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233943(P2009−233943)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(508160819)ITカーズ株式会社 (8)