車両接近警告システム、携帯警告端末、および車載通信機
【課題】車両が人に接近したときに、それを聴覚刺激以外の方法で人に警告できる技術を提供する。
【解決手段】携帯警告端末4は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行う。
【解決手段】携帯警告端末4は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近警告システム、携帯警告端末、および車載通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両が警笛音を発したときに聴覚障害者がその警笛音に気付くようにするための報知システムが開示されている。具体的には、車両が警笛音を発したときに、車載通信機が周囲に警報電波を送信し、聴覚障害者が携帯する携帯警報端末は、この警報電波を受信すると、バイブレータを振動させたり、警告色を発光させたりするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、人に警告を行う必要があるのは、車両が警報を発するときのみとは限らない。例えば、人の後方から車両が接近する場合、人が聴覚に障害があったり、あるいは車両の走行音が小さかったりすれば、人は車両の接近に気付かない。この場合でも、車両のドライバーは、人は自車両の走行音に気付いた上で注意して歩行していると思い込んでしまい、警報を鳴らさない可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、車両が人に接近したときに、それを聴覚刺激以外の方法で人に警告できる技術を提供することを第1の目的とする。
【0006】
また、携帯警告端末を持った歩行者が近くにいることを車両のドライバーに知らせるための技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)と、車両(3)に搭載される車載通信機(5)と、を備えた車両接近警告システムであって、前記車載通信機(5)は、車両走行データを周囲に無線送信し、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする車両接近警告システムである。
【0008】
このように、車両(3)が歩行者(2)に近づくほど増大する受信電界強度を利用することで、警告するに足るほど車両(3)が歩行者(2)に近づいている場合を検出し、聴覚刺激以外の方法で人に警告することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、前記車両(3)の走行速度を含み、前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させることを特徴とする。
【0010】
このようにすることで、歩行者(2)は、車両(3)の速度の変化も把握することができるので、車両(3)に対してより適切な注意を払うことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車載通信機(5)は、前記車両(3)の現在位置が属する道路の道路種別を特定し、特定した前記道路種別を前記車両走行データに含め、前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記道路種別が、記録されている道路条件を満たすか否かを判定し、満たされていない場合、前記歩行者(2)に対して、車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0012】
このようにすることで、車両接近の警告が不要な道路で無駄に車両接近の警告をしてしまい、歩行者(2)に煩わしいと感じさせてしまう可能性が低減される。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、バイブレータ(42)を備え、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時の電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記バイブレータ(42)を振幅S1で持続的に振動させ、さらに、前記受信電界強度が、前記閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、前記バイブレータ(42)を前記振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に毎回1周期だけ振動させることを特徴とする。
【0014】
このように、報知の開始時よりもさらに車両(3)が歩行者に接近した場合、振動の様子を質的に変化させることで、歩行者(2)に強い警告を与えることができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車両IDおよび警告対象から除外される車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0016】
このように、携帯警告端末4が、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録して警告の有無の判定に使用することで、車両IDに基づいて警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車種を示す部分を含んだ車両IDおよび警告対象から除外される車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0018】
このように、携帯警告端末4が、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録して警告の有無の判定に使用することで、車種毎に、警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)があらかじめ記録する前記車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての前記閾値Pを規定するように設定され、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDについての前記閾値Pを決定し、当該車両走行データの受信時における電界強度が当該決定した閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする。
【0020】
また、携帯警告端末(4)が、警告対象の車両IDに対して受信電界強度の閾値Pをあらかじめ記録して使用することで、車種や個別の車両毎に、警告開始のタイミングを変えることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、車両接近の警告を行う場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、前記車載通信機(5)は、前記携帯警告端末(4)から前記返信を受信した場合、ドライバーに警告報知を行うことを特徴とする。
【0022】
このように、車載通信機(5)が、歩行者(2)側の携帯警告端末(4)から返信を受信して警告報知を行うことで、車両(3)のドライバーは、携帯警告端末(4)を持った歩行者(2)が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車両IDおよび返信を行うべきでない車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする。
【0024】
このように、携帯警告端末(4)が、歩行者(2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録して返信の有無を決定することで、車両IDに基づいた返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0025】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車種を示す部分を含んだ車両IDおよび返信を行うべきでない車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする。
【0026】
このように、携帯警告端末(4)が、歩行者(2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録して返信の有無を決定することで、車種毎に返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10に記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が前記閾値Pよりも大きく、かつ、当該車両走行データの受信時における電界強度の変化率が所定の閾値Qよりも高い場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする。
【0028】
このようにすることで、警告するに足るほど車両3が歩行者2に高速で近づいている場合を選んで聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことができる。
【0029】
また、上記第1の目的を達成するための請求項11に記載の発明は、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末であって、車載通信機(5)から無線送信された車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きいか否かを判定する判定手段(440)と、前記電界強度が前記閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う歩行者側警告手段(450)と、を備えた携帯警告端末である。このように、本発明の特徴は、携帯警告端末としても捉えることができる。
【0030】
また、上記第2の目的を達成するための請求項12に記載の発明は、車両(3)に搭載される車載通信機であって、車両走行データを周囲に無線送信する送信手段(130)と、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)が、前記送信手段(130)によって送信された前記車両走行データを受信し、当該車載通信機に返信を行った場合、前記返信を受信してドライバーに警告報知を行う車両側警告手段(220)と、を備えた車載通信機である。
【0031】
このように、携帯警告端末としても捉えることができる。車載通信機が、歩行者(2)側の携帯警告端末(4)から返信を受信して警告報知を行うことで、車両(3)のドライバーは、携帯警告端末(4)を持った歩行者(2)が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。すなわち、上記第2の目的を達成することができる。
【0032】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る車両接近警告システムの全体構成を示す図である。
【図2】携帯警告端末4の構成を示すブロック図である。
【図3】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図4】車両側送信処理のフローチャートである。
【図5】車両側受信処理のフローチャートである。
【図6】携帯側設定処理のフローチャートである。
【図7】携帯側メイン処理のフローチャートである。
【図8】同じ車両から送信された車両走行データについての受信電界強度の変化を示すグラフである。
【図9】車速に応じた振動数変化を例示するグラフである。
【図10】パルス振動を例示するグラフである。
【図11】第2実施形態における車両側IDの構成を示す図である。
【図12】第2実施形態における携帯側設定処理のフローチャートである。
【図13】第2実施形態における携帯側メイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両接近警告システムの全体構成を示す。この図に示すように、道路1を歩行者2が歩行している際に、歩行者2の後方から車両(ハイブリッド自動車でもよいし、電気自動車でもよいし、それ以外の自動車であってもよい)3が接近しているとき、車両3の走行音(エンジン音等の、通常の走行によって発生する音)が十分大きく、かつ、歩行者2の聴覚が平均的なものであれば、歩行者2は、車両3の走行音を聞き取ることで、車両3の接近を感知することができる。
【0035】
しかし、聴覚に障害がある人や耳の遠い老人等は、車両3の接近を感知することができない可能性が高い。また近年では、ハイブリッド自動車、電気自動車等の、走行音が非常に小さい車両が普及しつつあるので、平均的な聴覚を持つ人でも、後方からの車両の接近を音で察知することができない場合が多くなることが予想される。
【0036】
このような、車両3の後方からの接近を歩行者2が走行音で察知することができない場合の対策として、本実施形態の車両接近警告システムは、歩行者2に携帯される携帯警告端末4と、車両3に搭載されるナビゲーション装置(車載通信機の一例に相当する)5を備えている。そして、ナビゲーション装置5が周囲に無線信号を送信し、携帯警告端末4がこの無線信号を受信することで、携帯警告端末4が車両3の接近を検出して振動するようになっている。
【0037】
図2に、携帯警告端末4の構成を示す。携帯警告端末4は、操作部40、送受信装置41、バイブレータ42、および制御装置43を備えている。操作部40は、歩行者2の入力操作を直接受け付け、受け付けた操作内容を示す信号を制御装置43に出力する装置(例えば押しボタンスイッチ)である。
【0038】
送受信装置41は、所定の通信方式(例えば、ノイズに強いFM変調を使用する方式)で無線信号の送受信を行うため、増幅、周波数変換、変調、復調等の周知の作動を行う無線通信装置である。この送受信装置41は、制御装置43の制御によって作動する。なお、送受信装置41は、受信した信号の受信電界強度を検出する回路(RSSI回路等)を備えており、この回路の検出結果を電界強度信号として制御装置43に出力するようになっている。以下、制御装置43がナビゲーション装置5と通信を行う場合は、この送受信装置41を用いて行うものとする。
【0039】
バイブレータ42は、振動することで、携帯警告端末4を持つ歩行者2に対して振動による触覚刺激を与える装置である。バイブレータ42の振動の強度および周波数は、制御装置43が制御できるようになっている。
【0040】
制御装置43は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、I/O、タイマ等を有するマイクロコンピュータであり、CPUがROM中のプログラムを実行することで、所望の処理を実行する。そして、その処理の際には、操作部40から信号を取得し、必要に応じて送受信装置41、バイブレータ42を制御する。また、制御装置43は、図示しない電源からバイブレータ42への電力供給の有無を制御することができる。この制御装置43の処理の詳細については後述する。
【0041】
図3に、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示す。このナビゲーション装置5は、車両に搭載され、位置検出器51、画像表示装置52、操作部53、スピーカ54、無線通信機55、地図データ取得部56、および制御回路57を有している。
【0042】
位置検出器51は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路57に出力する。
【0043】
画像表示装置52は、制御回路57から出力された映像信号に基づいた映像を車両の運転者に表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0044】
操作部53は、ナビゲーション装置5に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置52の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、車両の運転者によるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路57に出力する。
【0045】
無線通信機55は、所定の通信方式(例えば、ノイズに強いFM変調を使用する方式)で無線信号の送受信を行うため、増幅、周波数変換、変調、復調等の周知の作動を行う無線通信装置である。この無線通信機は、制御回路57の制御によって作動する。以下、制御回路57が携帯警告端末4と通信を行う場合は、この無線通信機55を用いて行うものとする。
【0046】
地図データ取得部56は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路57が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0047】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、リンクの道路種別情報、ノードの位置情報、ノードの種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。リンクの道路種別情報は、そのリンクの道路種別を示す情報である。道路種別としては、主要道路、生活道路等がある。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0048】
制御回路57は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部56から読み出したナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部56から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部56の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器51、画像表示装置52、操作部53、スピーカ54、および無線通信機55と信号の授受を行う。
【0049】
制御回路57がプログラムを実行することによって行う代表的な処理としては、ナビゲーション処理がある。ナビゲーション処理は、操作部53に対するドライバーの目的地入力に応じて、入力された目的地までの最適な誘導経路を算出し、算出した誘導経路に沿った経路案内を行う処理である。制御回路57が行うその他の処理については、後述する。
【0050】
以下、車両接近警告システムの作動について説明する。図4、図5に、ナビゲーション装置5の制御回路57が所定のプログラムを実行することで実現する処理のフローチャートを示し、図6、図7に、携帯警告端末4の制御装置43が所定のプログラムを実行することで実現する処理のフローチャートを示す。
【0051】
まず、携帯警告端末4の歩行者2は、携帯警告端末4に対してあらかじめ道路条件を設定しておく。このために、制御装置43は、操作部40に対して所定の設定開始操作が行われると、図6に示す携帯側設定処理を開始し、まずステップ310で、操作部40に対する歩行者2の道路条件の入力操作を受け付ける。
【0052】
道路条件とは、後述するバイブレータ42の振動制御の実行を許可する道路種別の条件である。ステップ310では、例えば、道路条件として、例えば以下の(1)〜(3)のうちいずれか1つの選択操作(道路条件の入力操作の一例に相当する)を受け付ける。
(1)常に許可する(すなわち、どの道路種別でも許可する)。
(2)生活道路のみ許可する。
(3)常に禁止する(すなわち、どのような道路種別であっても、許可しない)。
【0053】
歩行者2の道路条件の入力操作を受け付けると、続いてステップ320で、受け付けた入力操作に対応する道路条件を、RAMまたはフラッシュメモリに記録する。その際、過去に記録された道路条件があれば、その古い道路条件は削除する。ステップ320の後、携帯側設定処理は終了する。
【0054】
また、ナビゲーション装置5の制御回路57は、走行中は定期的に(例えば、0.3秒周期で)図4の車両側送信処理を実行している。そして、車両側送信処理の実行時には、まずステップ110で、位置検出器51の車速センサからの信号に基づいて、車両3の現在の走行速度を取得する。
【0055】
続いてステップ120では、位置検出器51からの信号に基づいて、車両3の現在位置を特定し、さらに地図データ取得部56の地図データに基づいて、現在位置が属する道路の道路種別(具体的には、主要道か生活道路かの区別)を特定する。
【0056】
続いてステップ130では、無線通信機55を用いて、車両走行データを周囲に無線送信し、その後、今回の車両側送信処理を終了する。車両走行データは、車両側ID(例えば、車両3のID、または、ナビゲーション装置5のID)と、ステップ110で取得した車速と、ステップ120で特定した道路種別と、を含むデータである。
【0057】
なお、車両走行データの送信時の送信電力は、あらかじめ定められた一定値に固定されている。つまり、車両走行データは、1台の車両3からは常に同じ送信電力で送信される。また、ナビゲーション装置5は、車両3のみならず複数の他の車両にも搭載されるようになっているが、どのナビゲーション装置からも常に同じ送信電力で車両走行データが送信され、その送信電力は、それらナビゲーション装置(ナビゲーション装置5も含む)間でも同じに設定されている。この送信電力の具体的な大きさは、車両3から100〜200メートル程度まで離れた携帯警告端末4がこの車両走行データを受信できる程度とする。
【0058】
このような車両側送信処理が定期的に繰り返されることで、車両3から周囲に定期的に車両3の車両走行データが送信されることになる。
【0059】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、携帯警告端末4の作動中、図示しないタイマを用いて時間の経過を計測し、その計測した時間に基づいて、図7に示す携帯側メイン処理を定期的に(例えば、0.1秒周期で)実行するようになっている。この携帯側メイン処理において制御装置43は、まずステップ410で、車両から無線送信された車両走行データを送受信装置41が受信するまで待ち、受信すると、続いてステップ420で、受信した車両走行データに基づいて、歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たすか否かを判定する。
【0060】
具体的には、受信した車両走行データ中の道路種別が、制御装置43のRAMまたはフラッシュメモリに記録されている道路条件を満たすか否かを判定する。例えば、記録されている道路条件が上述の(2)の条件である場合、車両走行データ中の道路種別が生活道路であれば道路条件を満たし、生活道路でなければ道路条件を満たさない。
【0061】
このステップ420の判定は、歩行者2が歩行している道路種別が、あらかじめ定められた道路条件を満たしているか否かを判定するための処理であるが、その判定のために使用しているデータは、車両走行データ中の道路種別、すなわち、車両3が走行している道路の道路種別である。しかし、携帯警告端末4がこの車両走行データを受信していることとから、車両3と歩行者2とは同じ道路にいる可能性が非常に高いので、車両走行データ中の道路種別と、歩行者2の歩行している道路種別とは同じであるとみなしても、ほとんどの場合で問題ない。
【0062】
歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たさない場合、歩行者2に何ら報知することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、歩行者2への車両接近の警告を禁止する。このようにすることで、歩行者が報知を必要としている道路を選んで、報知を行うことができ、車両接近の警告が不要な道路で無駄に車両接近の警告をしてしまい、歩行者2に煩わしいと感じさせてしまう可能性が低減される。そして、このような道路条件を歩行者2自身が設定することができるので、歩行者2に配慮した車両接近警告システムを構築できる。
【0063】
歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たす場合、続いてステップ430で、制御装置43から取得した電界強度信号に基づいて、当該車両走行データの受信時の電界強度を特定し、特定した電界強度をRAMまたはフラッシュメモリに記録する。
【0064】
ここで、電界強度の記録は、車両側ID毎に分けて、時系列順に、受信時刻と共に記録する。つまり、受信した車両走行データ中の車両側IDに対応する時系列データの最後尾に、当該車両走行データの受信時の電界強度および受信時刻を記録する。図4の携帯側メイン処理は、繰り返し実行されるので、道路条件に合った種別の道路で車両3が歩行者2に近づいてくる場合は、車両3から繰り返し送信される車両走行データの受信時の電界強度および受信時刻が、図8のグラフの点31〜40のように記録される。なお、所定時間(例えば10秒)以上の過去のデータは、削除するようになっていてもよい。
【0065】
続いてステップ440では、当該車両走行データ(車両3から送信されたものであるとする)の受信時の電界強度が所定の強度条件を満たすか否かを判定する。強度条件は、「(A)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、所定の閾値Pよりも大きく、かつ、(B)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い」という条件である。
【0066】
なお、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率としては、例えば、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度37から、1回前の同じ車両側IDの車両走行データの受信時における受信電界強度36を減算し、その減算結果を、これら2つの受信タイミング間の時間Δtで除算した値を採用してもよい。
【0067】
上記強度条件のうち(A)の条件は、警告するに足るほど車両3が歩行者2に近づいていることを示す条件である。所定の閾値としては、例えば、車両3が歩行者2から50メートル離れている状態における受信電界強度を採用する。
【0068】
また、上記強度条件のうち(B)の条件は、警告するに足るほど車両3が歩行者2に高速で近づいていることを示す条件である。所定の閾値としては、例えば、車両3が歩行者2に対して時速20キロメートルの速度で近づいている状態における受信電界強度の変化率を採用する。
【0069】
受信した車両走行データの電界強度が所定の強度条件を満たさない場合、歩行者2に報知する必要はないので、今回の携帯側メイン処理を終了する。受信した車両走行データの電界強度が所定の強度条件を満たす場合、続いてステップ450で、振動制御を行う。
【0070】
振動制御とは、バイブレータ42の振動の制御である。具体的には、振動制御においては、バイブレータ42を持続的に(すなわち複数周期の期間において間断することなく)振動させてその振動を歩行者2に伝えることで、歩行者2に対して車両接近の警告を行う。
【0071】
その振動の際、振動の周波数は、受信した最新の車両走行データ中の車速が大きいほど(例えば線形的に)大きくする。例えば、時速20km時の振動数を10Hzとし、時速50km時の振動数を50Hzとするよう、振幅を一定値S1に保ったまま、振動数を車速に対して線形的に変化させる。
【0072】
従って、歩行者2に近づく車両3の車速の変化に応じて、図9のグラフに例示するように、バイブレータ42の振動数が変化する。なお、図9の横軸は時間であり、縦軸は振動の振幅である。
【0073】
ただし、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、上述の所定の閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、すなわち、報知の開始時よりもさらに車両3が歩行者に接近した場合、バイブレータ42にパルス振動を発生させるようになっていてもよい。パルス振動とは、図10に示すように、上述の振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に(例えば0.2秒間隔で)毎回1周期だけ振動するような振動をいう。
【0074】
このように、報知の開始時よりもさらに車両3が歩行者に接近した場合、振動の様子を質的に変化させることで、歩行者2に強い警告を与えることができる。
【0075】
続いてステップ460では、送受信装置41を用いて車両3に返信を行う。返信する信号には、返信先として、受信した最新の車両走行データ中に含まれる車両側IDを含める。
【0076】
また、ナビゲーション装置5の制御回路57は、図5に示す車両側受信処理を繰り返し実行するようになっており、ステップ210で、携帯警告端末4から、自車両3の車両側IDを含む返信を受信するまで待ち、受信した場合、続いてステップ220で、音声および画像の一方または両方を用いて、ドライバーに警告報知を行う。警告報知の内容は、携帯警告端末4を有する人が近くにいる旨を知らせる内容となっていてもよい。このように、車両3のナビゲーション装置5が、歩行者2側の携帯警告端末4から返信を受信して警告報知を行うことで、車両3のドライバーは、携帯警告端末4を持った歩行者2が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。
【0077】
以上説明した通り、携帯警告端末4の制御装置43は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、最新の車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっている。
【0078】
このように、車両3が歩行者2に近づくほど増大する受信電界強度を利用することで、警告するに足るほど車両3が歩行者2に近づくと共に、警告するに足るほど車両(3)が歩行者(2)に高速で近づいている場合を検出し、聴覚刺激以外の方法で人に警告することができる。
【0079】
また、車両走行データは、車両3の走行速度を含み、携帯警告端末4は、受信した車両走行データ中の走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させる。このようにすることで、歩行者2は、車両3の速度の変化も把握することができるので、車両3に対してより適切な注意を払うことができる。
【0080】
なお、上記実施形態においては、制御装置43が、図7のステップ440を実行することで判定手段の一例として機能し、ステップ450を実行することで歩行者側警告手段の一例として機能する。また、ナビゲーション装置5の制御回路57が、図4のステップ130を実行することで送信手段の一例として機能し、図5のステップ220を実行することで車両側警告手段の一例として機能する。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態において車両3に搭載されるナビゲーション装置5の構成および作動は、第1実施形態と同じである。すなわち、ナビゲーション装置5は、図3に示したような構成となっており、制御回路57が、図4、図5に示したような処理を実行する。
【0082】
ただし、本実施形態では、制御回路57が図4のステップ130で送信する車両側IDとして、車両IDを採用する。この車両IDは、車両を個別に識別するため、車両個別に割り当てられているデータである点は、第1実施形態の車両のIDと同じだが、さらに、自車両の種別が特定できるデータも含んでいる。
【0083】
図11に、本実施形態における車両IDの構成例を示す。この図に示すように、車両IDは、第1種別部61、第2種別部62、および個別ID部63という3つの部分を含んでいる。
【0084】
第1種別部61は、自車両が路線バス、タクシー、大型トラック、一般乗用車、2輪車、警察車両、消防車、救急車等(すなわち、車両の用途に関する種別)のいずれであるかを示す第1種別のデータである。第2種別部62は、自車両が、燃料エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車(すなわち、走行用動力源の種別)のいずれであるかを示す第2種別のデータである。個別ID部63は、車両を個々に識別するため、車両個別に割り当てられているデータである。
【0085】
また、本実施形態の携帯警告端末4の構成は、第1実施形態と同じである。また、本実施形態の携帯警告端末4の作動については、制御装置43は、図6に示した携帯側設定処理の代わりに、図12に示す携帯側設定処理を実行し、図7に示した携帯側メイン処理の代わりに、図13に示す携帯側メイン処理を実行するようになっている。
【0086】
なお、図6と図12で同じ内容の処理には、互いに同じステップ番号を付し、図7と図13で同じ内容の処理には、互いに同じステップ番号を付し、それらについての説明は省略または簡略化する。
【0087】
図12の携帯側設定処理において制御装置43は、まずステップ305で、操作部40に対する歩行者2の車両ID条件の設定操作を受け付ける。車両ID条件には、車両ID警告条件と車両ID返信条件の2種類があり、このステップ305では、それらのうちの一方のみまたは両方の設定操作を受け付けることができる。
【0088】
車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての警告態様を規定する条件である。
【0089】
警告対象となる車両IDと警告対象から除外される車両IDの設定の組み合わせとしては、例えば、警告対象となる車両IDの条件を「任意の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「無し(すなわち、どの車両IDも条件を満たさない)」に設定することもでき、また、警告対象となる車両IDの条件を「タクシーの第1種別部61を有する任意の車両IDまたは特定の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「警告対象となる車両ID以外の任意の車両ID」に設定することもでき、また、警告対象となる車両IDの条件を「警告対象から除外される車両ID以外の任意の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「特定の車両ID」に設定することもできる。
【0090】
また、警告対象となる車両IDについては、警告態様として、受信電界強度の閾値Pの値を設定することができる。例えば、警告対象となる車両IDのすべてについて、受信電界強度の閾値Pを同じ値に設定してもよいし、警告対象となる車両IDのうちでも、特定の車種(例えば、大型トラック、タクシー)に該当する車両IDの受信電界強度の閾値Pを、他の車両IDよりも低くするようになっていてもよい。
【0091】
車両ID返信条件は、車両3へ返信を行うべき車両ID、返信を行うべきでない車両IDを規定する条件である。
【0092】
返信を行うべき車両IDと返信を行うべきでない車両IDの設定の組み合わせとしては、例えば、上述の車両ID警告条件と同様の組み合わせを設定できるほか、「どのような車両IDであっても車両3へ返信を行うべきでない」という条件を設定できるようになっていてもよい。
【0093】
ステップ305に続いては、ステップ310で、第1実施形態と同様に道路条件の設定を受け付ける。続いてステップ315では、ステップ305で受け付けた(設定された)車両ID条件を、RAMまたはフラッシュメモリに記録する。その際、過去に記録された車両ID条件があれば、その古い車両ID条件は削除する。ステップ315の後、第1実施形態と同じ内容のステップ320に進む。
【0094】
また制御装置43は、図13に示す携帯側メイン処理において、ステップ410で車両から無線送信された車両走行データを受信すると、続いてステップ415に進む。そしてステップ415では、受信した車両走行データ中の車両IDが、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件によれば、警告対象であるか否か判定する。
【0095】
例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「タクシーの第1種別部61を有する任意の車両ID」が警告対象になっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61がタクシーを示していれば、第2種別部62、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象であると判定する。
【0096】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「タクシーの第1種別部61を有すると共に電動車両の第2種別62を有している任意の車両ID」が警告対象になっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61がタクシーを示しており、かつ第1種別部62が電動車両を示していれば、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象であると判定する。
【0097】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「燃料エンジン車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が警告対象から除外される車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第2種別部62が燃料エンジン車を示していれば、第1種別部61、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象でないと判定する。
【0098】
警告対象であると判定した場合は、ステップ420に進み、警告対象でないと判定した場合は、歩行者2に何ら報知することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、歩行者2への車両接近の警告を禁止する。
【0099】
また、ステップ420に進んだ後は、ステップ420で道路条件を満たすと判定し、ステップ430は、ID毎に受信電界強度を記録する。続いてステップ440では、車両3から受信した当該車両走行データの受信時の電界強度が所定の強度条件を満たすか否かを判定する。強度条件は、第1実施形態と同様、「(A)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、所定の閾値Pよりも大きく、かつ、(B)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い」という条件であるが、ここで用いる閾値Pは、車両ID警告条件において、車両3から受信した当該車両走行データ中の車両IDに対して設定されている閾値Pを採用する。ただし、車両ID警告条件において、車両3から受信した当該車両走行データ中の車両IDに対して閾値Pが設定されていなければ、あらかじめ定められたデフォルト値を閾値Pとして採用する。ステップ440で強度条件を満たすと判定した後は、続いてステップ450で振動制御を実行する。
【0100】
このように、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録してステップ415で使用することで、車種や個別の車両毎に、バイブレータ42を用いた警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0101】
例えば、車両ID警告条件において、特定の車両ID(例えば、家族の所有する車の車両ID、送迎車の車両ID)を警告対象に設定しておけば、当該特定車両の接近を確実に認知できる。
【0102】
また例えば、タクシーを拾いたい場合は、車両ID警告条件において、タクシーの第1種別部61を有する任意の車両IDを警告対象に設定しておけば、はタクシーの接近を確実に認知することができる。
【0103】
また例えば、車両ID警告条件において、特定の車両IDとして、携帯警告端末4のユーザ自身が現在乗車している車両の車両IDを警告対象から除外する車両IDに設定しておけば、無駄な警告が発生するのを防止できる。
【0104】
また、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、警告対象の車両IDに対して受信電界強度の閾値Pをあらかじめ記録してステップ440で使用することで、車種や個別の車両毎に、警告開始のタイミングを変えることができる。
【0105】
例えば、車両ID警告条件において、大型トラックの第1種別部61を有する任意の車両IDを警告対象に設定し、大型トラックの第1種別部61を有する任意の車両IDに対して他の車両IDよりも低い閾値Pを設定しておけば、大型トラックの接近を、電界強度の弱い遠い距離からいち早く優先的に認知し、早めに歩道の隅に寄るなど安全行動を取ることができる。
【0106】
ステップ450に続いては、ステップ455で、受信した車両走行データ中の車両IDが、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件によれば、返信すべき車両IDであるか否か判定する。
【0107】
例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「ハイブリッド車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が返信すべき車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第2種別部62がハイブリッド車を示していれば、第1種別部61、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ455では返信すべき車両IDであると判定する。
【0108】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「一般乗用車の第2種別部61を有すると共に燃料エンジン車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が返信すべきでない車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61が一般乗用車を示しており、かつ、第2種別部62が燃料エンジン車を示していれば、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では返信すべき車両IDでないと判定する。
【0109】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「任意の車両IDが車両3へ返信を行うべきでない」という条件を設定されている場合、受信した車両走行データ中の車両IDがどのようなものであっても、ステップ455では返信すべきでない車両IDでないと判定する。
【0110】
返信すべき車両IDであると判定した場合は、ステップ460に進んで、第1実施形態と同様に車両3に返信する。返信すべき車両IDでないと判定した場合は、車両3に返信することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、車両3への返信を禁止する。
【0111】
このように、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録してステップ455で使用することで、車種や個別の車両毎に、バイブレータ42を用いた警告後の車両3への返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0112】
例えば、車両ID返信条件において、歩行者2自身の存在を特に知らせたい特定の車両(例えば、待ち合わせ車両)の車両IDを返信すべき車両IDとして設定し、他の車両IDを返信すべきでない車両IDとして設定しておけば、当該特定の車両に歩行者2自身の存在を確実に知らせることができるとともに、返信不要な車両には返信しないので、無線通信のトラフィックを軽減できたり、不特定多数の車両にユーザ自身の存在を知らせないことにより、誘拐などの犯罪を防止できる可能性が高くなる。
【0113】
また例えば、車両ID返信条件において、歩行者2の自宅の周囲に住む人が所有する車両の車両IDを、返信すべきでない車両IDとして設定しておけば、無線通信のトラフィックを軽減でき、注意勧告不要な車載機への返信を禁止することができる。
【0114】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0115】
例えば、上記実施形態においては、携帯警告端末4は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっている。
【0116】
しかし、閾値Qに関する条件は、必須ではない。すなわち、携帯警告端末4は、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合は、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率に関わりなく、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっていてもよい。
【0117】
また、携帯警告端末4は、振動制御において、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が大きくなるほど、振動の振幅を大きくするようになっていてもよい。また、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が大きくなるほど、振動の周波数を大きくするようになっていてもよい。
【0118】
また、上記実施形態においては、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う具体例として、バイブレータ42の振動を用いて触覚刺激を例示している。しかし、聴覚刺激以外の方法としては、このようなものに限らず、例えば、視覚刺激を用いてもよい。具体的には、LED等のランプを点灯または点滅させることで、車両接近の警告を行うようになっていてもよい。
【0119】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、振動以外で車両接近の警告を行う場合でも、受信した車両走行データ中の走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させるようになっていてもよい。例えば、走行速度が大きくなるほど発光の輝度を大きくしてもよい。
【0120】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、振動以外で車両接近の警告を行う場合でも、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させるようになっていてもよい。例えば、当該受信電界強度が大きくなるほど発光の輝度を大きくしてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、1つのナビゲーション装置5において、車両走行データの送信時の送信電力は常に一定であり、また、複数のナビゲーション装置間において、車両走行データの送信時の送信電力は同じであった。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、車両走行データの送信時の送信電力は、ナビゲーション装置間で異なっていてもよいし、1つのナビゲーション装置5において、車両走行データの送信時の送信電力は時間的に変化するようになっていてもよい。ただしその場合は、ナビゲーション装置5は車両走行データの送信時に、その車両走行データの送信時の電界強度の情報も含めるようになっている。そして、携帯警告端末4の制御装置43は、ステップ440では、受信電界強度(およびその時間変化率)を閾値P、Qと比較するのは同じだが、閾値P、Qの値は上記実施形態と異なる。
【0122】
具体的には、閾値Pは、車両走行データ中の送信電界強度に1未満の定数Kを乗じた値とする。この定数Kは、車両走行データの信号が50メートル伝搬したときの電界強度の減衰率と同程度にする。また、閾値Qは、上記実施形態の閾値Qに上記定数Kを乗じた値とする。このように、所定の閾値K、Qは、必ずしも定数とは限らない。
【0123】
また、上記実施形態においては、車載通信機の一例として、ナビゲーション装置5が挙げられていたが、車載通信機は、必ずしもナビゲーション装置の機能を有しておらずともよく、信号を携帯警告端末4に送信する機能を備えているだけでもよい。
【0124】
また、上記実施形態においては、車両走行データに含める車両3の走行速度の情報としては、走行速度を示す値そのものを用いているが、走行速度の情報としは、上記車速センサから出力される車速パルス信号の周波数を、人間が周波数の変化を体感できる程度の周波数帯域(例えば、10Hz〜100Hz)中の周波数に変換し、その変換結果の周波数の波形データを、走行速度の情報として車両走行データに含めるようになっていてもよい。
【0125】
また、上記第2実施形態においては、車両ID条件(車両ID警告条件、車両ID返信条件)に設定する車両IDは、ユーザが操作部40を用いて入力するようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば、制御装置43は、無線通信によって携帯警告端末4の外部から車両ID条件を受信するようになっていてもよい。あるいは、制御装置43は、送受信装置41を介して周囲の車両から受信した走行データ中の車両IDを、車両ID条件に設定する車両IDとして用いてもよい。
【0126】
なお、ナビゲーション装置5は、車両側送信処理において、常に定期的に車両走行データを送信するようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両3に、車両3の前方にいる人を検知する装置が搭載されていれば、当該装置が車両3の前方にいる人を検知した場合に限り、繰り返し車両走行データを送信するようになっていればよい。あるいは、当該装置が車両3の前方にいる人を検知した場合に限り、1回だけ車両走行データを送信するだけでもよい。
【0127】
また、上記の実施形態において、制御装置43、制御回路57がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 道路
2 歩行者
3 車両
4 携帯警告端末
5 ナビゲーション装置
42 バイブレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近警告システム、携帯警告端末、および車載通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両が警笛音を発したときに聴覚障害者がその警笛音に気付くようにするための報知システムが開示されている。具体的には、車両が警笛音を発したときに、車載通信機が周囲に警報電波を送信し、聴覚障害者が携帯する携帯警報端末は、この警報電波を受信すると、バイブレータを振動させたり、警告色を発光させたりするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、人に警告を行う必要があるのは、車両が警報を発するときのみとは限らない。例えば、人の後方から車両が接近する場合、人が聴覚に障害があったり、あるいは車両の走行音が小さかったりすれば、人は車両の接近に気付かない。この場合でも、車両のドライバーは、人は自車両の走行音に気付いた上で注意して歩行していると思い込んでしまい、警報を鳴らさない可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、車両が人に接近したときに、それを聴覚刺激以外の方法で人に警告できる技術を提供することを第1の目的とする。
【0006】
また、携帯警告端末を持った歩行者が近くにいることを車両のドライバーに知らせるための技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)と、車両(3)に搭載される車載通信機(5)と、を備えた車両接近警告システムであって、前記車載通信機(5)は、車両走行データを周囲に無線送信し、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする車両接近警告システムである。
【0008】
このように、車両(3)が歩行者(2)に近づくほど増大する受信電界強度を利用することで、警告するに足るほど車両(3)が歩行者(2)に近づいている場合を検出し、聴覚刺激以外の方法で人に警告することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、前記車両(3)の走行速度を含み、前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させることを特徴とする。
【0010】
このようにすることで、歩行者(2)は、車両(3)の速度の変化も把握することができるので、車両(3)に対してより適切な注意を払うことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車載通信機(5)は、前記車両(3)の現在位置が属する道路の道路種別を特定し、特定した前記道路種別を前記車両走行データに含め、前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記道路種別が、記録されている道路条件を満たすか否かを判定し、満たされていない場合、前記歩行者(2)に対して、車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0012】
このようにすることで、車両接近の警告が不要な道路で無駄に車両接近の警告をしてしまい、歩行者(2)に煩わしいと感じさせてしまう可能性が低減される。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、バイブレータ(42)を備え、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時の電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記バイブレータ(42)を振幅S1で持続的に振動させ、さらに、前記受信電界強度が、前記閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、前記バイブレータ(42)を前記振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に毎回1周期だけ振動させることを特徴とする。
【0014】
このように、報知の開始時よりもさらに車両(3)が歩行者に接近した場合、振動の様子を質的に変化させることで、歩行者(2)に強い警告を与えることができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車両IDおよび警告対象から除外される車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0016】
このように、携帯警告端末4が、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録して警告の有無の判定に使用することで、車両IDに基づいて警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車種を示す部分を含んだ車両IDおよび警告対象から除外される車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする。
【0018】
このように、携帯警告端末4が、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録して警告の有無の判定に使用することで、車種毎に、警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)があらかじめ記録する前記車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての前記閾値Pを規定するように設定され、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDについての前記閾値Pを決定し、当該車両走行データの受信時における電界強度が当該決定した閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする。
【0020】
また、携帯警告端末(4)が、警告対象の車両IDに対して受信電界強度の閾値Pをあらかじめ記録して使用することで、車種や個別の車両毎に、警告開始のタイミングを変えることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、車両接近の警告を行う場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、前記車載通信機(5)は、前記携帯警告端末(4)から前記返信を受信した場合、ドライバーに警告報知を行うことを特徴とする。
【0022】
このように、車載通信機(5)が、歩行者(2)側の携帯警告端末(4)から返信を受信して警告報知を行うことで、車両(3)のドライバーは、携帯警告端末(4)を持った歩行者(2)が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車両IDおよび返信を行うべきでない車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする。
【0024】
このように、携帯警告端末(4)が、歩行者(2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録して返信の有無を決定することで、車両IDに基づいた返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0025】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の車両接近警告システムにおいて、前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車種を示す部分を含んだ車両IDおよび返信を行うべきでない車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする。
【0026】
このように、携帯警告端末(4)が、歩行者(2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録して返信の有無を決定することで、車種毎に返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10に記載の車両接近警告システムにおいて、前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が前記閾値Pよりも大きく、かつ、当該車両走行データの受信時における電界強度の変化率が所定の閾値Qよりも高い場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする。
【0028】
このようにすることで、警告するに足るほど車両3が歩行者2に高速で近づいている場合を選んで聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことができる。
【0029】
また、上記第1の目的を達成するための請求項11に記載の発明は、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末であって、車載通信機(5)から無線送信された車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きいか否かを判定する判定手段(440)と、前記電界強度が前記閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う歩行者側警告手段(450)と、を備えた携帯警告端末である。このように、本発明の特徴は、携帯警告端末としても捉えることができる。
【0030】
また、上記第2の目的を達成するための請求項12に記載の発明は、車両(3)に搭載される車載通信機であって、車両走行データを周囲に無線送信する送信手段(130)と、歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)が、前記送信手段(130)によって送信された前記車両走行データを受信し、当該車載通信機に返信を行った場合、前記返信を受信してドライバーに警告報知を行う車両側警告手段(220)と、を備えた車載通信機である。
【0031】
このように、携帯警告端末としても捉えることができる。車載通信機が、歩行者(2)側の携帯警告端末(4)から返信を受信して警告報知を行うことで、車両(3)のドライバーは、携帯警告端末(4)を持った歩行者(2)が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。すなわち、上記第2の目的を達成することができる。
【0032】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る車両接近警告システムの全体構成を示す図である。
【図2】携帯警告端末4の構成を示すブロック図である。
【図3】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図4】車両側送信処理のフローチャートである。
【図5】車両側受信処理のフローチャートである。
【図6】携帯側設定処理のフローチャートである。
【図7】携帯側メイン処理のフローチャートである。
【図8】同じ車両から送信された車両走行データについての受信電界強度の変化を示すグラフである。
【図9】車速に応じた振動数変化を例示するグラフである。
【図10】パルス振動を例示するグラフである。
【図11】第2実施形態における車両側IDの構成を示す図である。
【図12】第2実施形態における携帯側設定処理のフローチャートである。
【図13】第2実施形態における携帯側メイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両接近警告システムの全体構成を示す。この図に示すように、道路1を歩行者2が歩行している際に、歩行者2の後方から車両(ハイブリッド自動車でもよいし、電気自動車でもよいし、それ以外の自動車であってもよい)3が接近しているとき、車両3の走行音(エンジン音等の、通常の走行によって発生する音)が十分大きく、かつ、歩行者2の聴覚が平均的なものであれば、歩行者2は、車両3の走行音を聞き取ることで、車両3の接近を感知することができる。
【0035】
しかし、聴覚に障害がある人や耳の遠い老人等は、車両3の接近を感知することができない可能性が高い。また近年では、ハイブリッド自動車、電気自動車等の、走行音が非常に小さい車両が普及しつつあるので、平均的な聴覚を持つ人でも、後方からの車両の接近を音で察知することができない場合が多くなることが予想される。
【0036】
このような、車両3の後方からの接近を歩行者2が走行音で察知することができない場合の対策として、本実施形態の車両接近警告システムは、歩行者2に携帯される携帯警告端末4と、車両3に搭載されるナビゲーション装置(車載通信機の一例に相当する)5を備えている。そして、ナビゲーション装置5が周囲に無線信号を送信し、携帯警告端末4がこの無線信号を受信することで、携帯警告端末4が車両3の接近を検出して振動するようになっている。
【0037】
図2に、携帯警告端末4の構成を示す。携帯警告端末4は、操作部40、送受信装置41、バイブレータ42、および制御装置43を備えている。操作部40は、歩行者2の入力操作を直接受け付け、受け付けた操作内容を示す信号を制御装置43に出力する装置(例えば押しボタンスイッチ)である。
【0038】
送受信装置41は、所定の通信方式(例えば、ノイズに強いFM変調を使用する方式)で無線信号の送受信を行うため、増幅、周波数変換、変調、復調等の周知の作動を行う無線通信装置である。この送受信装置41は、制御装置43の制御によって作動する。なお、送受信装置41は、受信した信号の受信電界強度を検出する回路(RSSI回路等)を備えており、この回路の検出結果を電界強度信号として制御装置43に出力するようになっている。以下、制御装置43がナビゲーション装置5と通信を行う場合は、この送受信装置41を用いて行うものとする。
【0039】
バイブレータ42は、振動することで、携帯警告端末4を持つ歩行者2に対して振動による触覚刺激を与える装置である。バイブレータ42の振動の強度および周波数は、制御装置43が制御できるようになっている。
【0040】
制御装置43は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、I/O、タイマ等を有するマイクロコンピュータであり、CPUがROM中のプログラムを実行することで、所望の処理を実行する。そして、その処理の際には、操作部40から信号を取得し、必要に応じて送受信装置41、バイブレータ42を制御する。また、制御装置43は、図示しない電源からバイブレータ42への電力供給の有無を制御することができる。この制御装置43の処理の詳細については後述する。
【0041】
図3に、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示す。このナビゲーション装置5は、車両に搭載され、位置検出器51、画像表示装置52、操作部53、スピーカ54、無線通信機55、地図データ取得部56、および制御回路57を有している。
【0042】
位置検出器51は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路57に出力する。
【0043】
画像表示装置52は、制御回路57から出力された映像信号に基づいた映像を車両の運転者に表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0044】
操作部53は、ナビゲーション装置5に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置52の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、車両の運転者によるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路57に出力する。
【0045】
無線通信機55は、所定の通信方式(例えば、ノイズに強いFM変調を使用する方式)で無線信号の送受信を行うため、増幅、周波数変換、変調、復調等の周知の作動を行う無線通信装置である。この無線通信機は、制御回路57の制御によって作動する。以下、制御回路57が携帯警告端末4と通信を行う場合は、この無線通信機55を用いて行うものとする。
【0046】
地図データ取得部56は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路57が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0047】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、リンクの道路種別情報、ノードの位置情報、ノードの種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。リンクの道路種別情報は、そのリンクの道路種別を示す情報である。道路種別としては、主要道路、生活道路等がある。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0048】
制御回路57は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部56から読み出したナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部56から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部56の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器51、画像表示装置52、操作部53、スピーカ54、および無線通信機55と信号の授受を行う。
【0049】
制御回路57がプログラムを実行することによって行う代表的な処理としては、ナビゲーション処理がある。ナビゲーション処理は、操作部53に対するドライバーの目的地入力に応じて、入力された目的地までの最適な誘導経路を算出し、算出した誘導経路に沿った経路案内を行う処理である。制御回路57が行うその他の処理については、後述する。
【0050】
以下、車両接近警告システムの作動について説明する。図4、図5に、ナビゲーション装置5の制御回路57が所定のプログラムを実行することで実現する処理のフローチャートを示し、図6、図7に、携帯警告端末4の制御装置43が所定のプログラムを実行することで実現する処理のフローチャートを示す。
【0051】
まず、携帯警告端末4の歩行者2は、携帯警告端末4に対してあらかじめ道路条件を設定しておく。このために、制御装置43は、操作部40に対して所定の設定開始操作が行われると、図6に示す携帯側設定処理を開始し、まずステップ310で、操作部40に対する歩行者2の道路条件の入力操作を受け付ける。
【0052】
道路条件とは、後述するバイブレータ42の振動制御の実行を許可する道路種別の条件である。ステップ310では、例えば、道路条件として、例えば以下の(1)〜(3)のうちいずれか1つの選択操作(道路条件の入力操作の一例に相当する)を受け付ける。
(1)常に許可する(すなわち、どの道路種別でも許可する)。
(2)生活道路のみ許可する。
(3)常に禁止する(すなわち、どのような道路種別であっても、許可しない)。
【0053】
歩行者2の道路条件の入力操作を受け付けると、続いてステップ320で、受け付けた入力操作に対応する道路条件を、RAMまたはフラッシュメモリに記録する。その際、過去に記録された道路条件があれば、その古い道路条件は削除する。ステップ320の後、携帯側設定処理は終了する。
【0054】
また、ナビゲーション装置5の制御回路57は、走行中は定期的に(例えば、0.3秒周期で)図4の車両側送信処理を実行している。そして、車両側送信処理の実行時には、まずステップ110で、位置検出器51の車速センサからの信号に基づいて、車両3の現在の走行速度を取得する。
【0055】
続いてステップ120では、位置検出器51からの信号に基づいて、車両3の現在位置を特定し、さらに地図データ取得部56の地図データに基づいて、現在位置が属する道路の道路種別(具体的には、主要道か生活道路かの区別)を特定する。
【0056】
続いてステップ130では、無線通信機55を用いて、車両走行データを周囲に無線送信し、その後、今回の車両側送信処理を終了する。車両走行データは、車両側ID(例えば、車両3のID、または、ナビゲーション装置5のID)と、ステップ110で取得した車速と、ステップ120で特定した道路種別と、を含むデータである。
【0057】
なお、車両走行データの送信時の送信電力は、あらかじめ定められた一定値に固定されている。つまり、車両走行データは、1台の車両3からは常に同じ送信電力で送信される。また、ナビゲーション装置5は、車両3のみならず複数の他の車両にも搭載されるようになっているが、どのナビゲーション装置からも常に同じ送信電力で車両走行データが送信され、その送信電力は、それらナビゲーション装置(ナビゲーション装置5も含む)間でも同じに設定されている。この送信電力の具体的な大きさは、車両3から100〜200メートル程度まで離れた携帯警告端末4がこの車両走行データを受信できる程度とする。
【0058】
このような車両側送信処理が定期的に繰り返されることで、車両3から周囲に定期的に車両3の車両走行データが送信されることになる。
【0059】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、携帯警告端末4の作動中、図示しないタイマを用いて時間の経過を計測し、その計測した時間に基づいて、図7に示す携帯側メイン処理を定期的に(例えば、0.1秒周期で)実行するようになっている。この携帯側メイン処理において制御装置43は、まずステップ410で、車両から無線送信された車両走行データを送受信装置41が受信するまで待ち、受信すると、続いてステップ420で、受信した車両走行データに基づいて、歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たすか否かを判定する。
【0060】
具体的には、受信した車両走行データ中の道路種別が、制御装置43のRAMまたはフラッシュメモリに記録されている道路条件を満たすか否かを判定する。例えば、記録されている道路条件が上述の(2)の条件である場合、車両走行データ中の道路種別が生活道路であれば道路条件を満たし、生活道路でなければ道路条件を満たさない。
【0061】
このステップ420の判定は、歩行者2が歩行している道路種別が、あらかじめ定められた道路条件を満たしているか否かを判定するための処理であるが、その判定のために使用しているデータは、車両走行データ中の道路種別、すなわち、車両3が走行している道路の道路種別である。しかし、携帯警告端末4がこの車両走行データを受信していることとから、車両3と歩行者2とは同じ道路にいる可能性が非常に高いので、車両走行データ中の道路種別と、歩行者2の歩行している道路種別とは同じであるとみなしても、ほとんどの場合で問題ない。
【0062】
歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たさない場合、歩行者2に何ら報知することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、歩行者2への車両接近の警告を禁止する。このようにすることで、歩行者が報知を必要としている道路を選んで、報知を行うことができ、車両接近の警告が不要な道路で無駄に車両接近の警告をしてしまい、歩行者2に煩わしいと感じさせてしまう可能性が低減される。そして、このような道路条件を歩行者2自身が設定することができるので、歩行者2に配慮した車両接近警告システムを構築できる。
【0063】
歩行者2が歩行している道路が道路条件を満たす場合、続いてステップ430で、制御装置43から取得した電界強度信号に基づいて、当該車両走行データの受信時の電界強度を特定し、特定した電界強度をRAMまたはフラッシュメモリに記録する。
【0064】
ここで、電界強度の記録は、車両側ID毎に分けて、時系列順に、受信時刻と共に記録する。つまり、受信した車両走行データ中の車両側IDに対応する時系列データの最後尾に、当該車両走行データの受信時の電界強度および受信時刻を記録する。図4の携帯側メイン処理は、繰り返し実行されるので、道路条件に合った種別の道路で車両3が歩行者2に近づいてくる場合は、車両3から繰り返し送信される車両走行データの受信時の電界強度および受信時刻が、図8のグラフの点31〜40のように記録される。なお、所定時間(例えば10秒)以上の過去のデータは、削除するようになっていてもよい。
【0065】
続いてステップ440では、当該車両走行データ(車両3から送信されたものであるとする)の受信時の電界強度が所定の強度条件を満たすか否かを判定する。強度条件は、「(A)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、所定の閾値Pよりも大きく、かつ、(B)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い」という条件である。
【0066】
なお、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率としては、例えば、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度37から、1回前の同じ車両側IDの車両走行データの受信時における受信電界強度36を減算し、その減算結果を、これら2つの受信タイミング間の時間Δtで除算した値を採用してもよい。
【0067】
上記強度条件のうち(A)の条件は、警告するに足るほど車両3が歩行者2に近づいていることを示す条件である。所定の閾値としては、例えば、車両3が歩行者2から50メートル離れている状態における受信電界強度を採用する。
【0068】
また、上記強度条件のうち(B)の条件は、警告するに足るほど車両3が歩行者2に高速で近づいていることを示す条件である。所定の閾値としては、例えば、車両3が歩行者2に対して時速20キロメートルの速度で近づいている状態における受信電界強度の変化率を採用する。
【0069】
受信した車両走行データの電界強度が所定の強度条件を満たさない場合、歩行者2に報知する必要はないので、今回の携帯側メイン処理を終了する。受信した車両走行データの電界強度が所定の強度条件を満たす場合、続いてステップ450で、振動制御を行う。
【0070】
振動制御とは、バイブレータ42の振動の制御である。具体的には、振動制御においては、バイブレータ42を持続的に(すなわち複数周期の期間において間断することなく)振動させてその振動を歩行者2に伝えることで、歩行者2に対して車両接近の警告を行う。
【0071】
その振動の際、振動の周波数は、受信した最新の車両走行データ中の車速が大きいほど(例えば線形的に)大きくする。例えば、時速20km時の振動数を10Hzとし、時速50km時の振動数を50Hzとするよう、振幅を一定値S1に保ったまま、振動数を車速に対して線形的に変化させる。
【0072】
従って、歩行者2に近づく車両3の車速の変化に応じて、図9のグラフに例示するように、バイブレータ42の振動数が変化する。なお、図9の横軸は時間であり、縦軸は振動の振幅である。
【0073】
ただし、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、上述の所定の閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、すなわち、報知の開始時よりもさらに車両3が歩行者に接近した場合、バイブレータ42にパルス振動を発生させるようになっていてもよい。パルス振動とは、図10に示すように、上述の振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に(例えば0.2秒間隔で)毎回1周期だけ振動するような振動をいう。
【0074】
このように、報知の開始時よりもさらに車両3が歩行者に接近した場合、振動の様子を質的に変化させることで、歩行者2に強い警告を与えることができる。
【0075】
続いてステップ460では、送受信装置41を用いて車両3に返信を行う。返信する信号には、返信先として、受信した最新の車両走行データ中に含まれる車両側IDを含める。
【0076】
また、ナビゲーション装置5の制御回路57は、図5に示す車両側受信処理を繰り返し実行するようになっており、ステップ210で、携帯警告端末4から、自車両3の車両側IDを含む返信を受信するまで待ち、受信した場合、続いてステップ220で、音声および画像の一方または両方を用いて、ドライバーに警告報知を行う。警告報知の内容は、携帯警告端末4を有する人が近くにいる旨を知らせる内容となっていてもよい。このように、車両3のナビゲーション装置5が、歩行者2側の携帯警告端末4から返信を受信して警告報知を行うことで、車両3のドライバーは、携帯警告端末4を持った歩行者2が近くにいることを知り、より注意して走行することができる。
【0077】
以上説明した通り、携帯警告端末4の制御装置43は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、最新の車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっている。
【0078】
このように、車両3が歩行者2に近づくほど増大する受信電界強度を利用することで、警告するに足るほど車両3が歩行者2に近づくと共に、警告するに足るほど車両(3)が歩行者(2)に高速で近づいている場合を検出し、聴覚刺激以外の方法で人に警告することができる。
【0079】
また、車両走行データは、車両3の走行速度を含み、携帯警告端末4は、受信した車両走行データ中の走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させる。このようにすることで、歩行者2は、車両3の速度の変化も把握することができるので、車両3に対してより適切な注意を払うことができる。
【0080】
なお、上記実施形態においては、制御装置43が、図7のステップ440を実行することで判定手段の一例として機能し、ステップ450を実行することで歩行者側警告手段の一例として機能する。また、ナビゲーション装置5の制御回路57が、図4のステップ130を実行することで送信手段の一例として機能し、図5のステップ220を実行することで車両側警告手段の一例として機能する。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態において車両3に搭載されるナビゲーション装置5の構成および作動は、第1実施形態と同じである。すなわち、ナビゲーション装置5は、図3に示したような構成となっており、制御回路57が、図4、図5に示したような処理を実行する。
【0082】
ただし、本実施形態では、制御回路57が図4のステップ130で送信する車両側IDとして、車両IDを採用する。この車両IDは、車両を個別に識別するため、車両個別に割り当てられているデータである点は、第1実施形態の車両のIDと同じだが、さらに、自車両の種別が特定できるデータも含んでいる。
【0083】
図11に、本実施形態における車両IDの構成例を示す。この図に示すように、車両IDは、第1種別部61、第2種別部62、および個別ID部63という3つの部分を含んでいる。
【0084】
第1種別部61は、自車両が路線バス、タクシー、大型トラック、一般乗用車、2輪車、警察車両、消防車、救急車等(すなわち、車両の用途に関する種別)のいずれであるかを示す第1種別のデータである。第2種別部62は、自車両が、燃料エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車(すなわち、走行用動力源の種別)のいずれであるかを示す第2種別のデータである。個別ID部63は、車両を個々に識別するため、車両個別に割り当てられているデータである。
【0085】
また、本実施形態の携帯警告端末4の構成は、第1実施形態と同じである。また、本実施形態の携帯警告端末4の作動については、制御装置43は、図6に示した携帯側設定処理の代わりに、図12に示す携帯側設定処理を実行し、図7に示した携帯側メイン処理の代わりに、図13に示す携帯側メイン処理を実行するようになっている。
【0086】
なお、図6と図12で同じ内容の処理には、互いに同じステップ番号を付し、図7と図13で同じ内容の処理には、互いに同じステップ番号を付し、それらについての説明は省略または簡略化する。
【0087】
図12の携帯側設定処理において制御装置43は、まずステップ305で、操作部40に対する歩行者2の車両ID条件の設定操作を受け付ける。車両ID条件には、車両ID警告条件と車両ID返信条件の2種類があり、このステップ305では、それらのうちの一方のみまたは両方の設定操作を受け付けることができる。
【0088】
車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての警告態様を規定する条件である。
【0089】
警告対象となる車両IDと警告対象から除外される車両IDの設定の組み合わせとしては、例えば、警告対象となる車両IDの条件を「任意の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「無し(すなわち、どの車両IDも条件を満たさない)」に設定することもでき、また、警告対象となる車両IDの条件を「タクシーの第1種別部61を有する任意の車両IDまたは特定の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「警告対象となる車両ID以外の任意の車両ID」に設定することもでき、また、警告対象となる車両IDの条件を「警告対象から除外される車両ID以外の任意の車両ID」とし、警告対象から除外する車両IDの条件を「特定の車両ID」に設定することもできる。
【0090】
また、警告対象となる車両IDについては、警告態様として、受信電界強度の閾値Pの値を設定することができる。例えば、警告対象となる車両IDのすべてについて、受信電界強度の閾値Pを同じ値に設定してもよいし、警告対象となる車両IDのうちでも、特定の車種(例えば、大型トラック、タクシー)に該当する車両IDの受信電界強度の閾値Pを、他の車両IDよりも低くするようになっていてもよい。
【0091】
車両ID返信条件は、車両3へ返信を行うべき車両ID、返信を行うべきでない車両IDを規定する条件である。
【0092】
返信を行うべき車両IDと返信を行うべきでない車両IDの設定の組み合わせとしては、例えば、上述の車両ID警告条件と同様の組み合わせを設定できるほか、「どのような車両IDであっても車両3へ返信を行うべきでない」という条件を設定できるようになっていてもよい。
【0093】
ステップ305に続いては、ステップ310で、第1実施形態と同様に道路条件の設定を受け付ける。続いてステップ315では、ステップ305で受け付けた(設定された)車両ID条件を、RAMまたはフラッシュメモリに記録する。その際、過去に記録された車両ID条件があれば、その古い車両ID条件は削除する。ステップ315の後、第1実施形態と同じ内容のステップ320に進む。
【0094】
また制御装置43は、図13に示す携帯側メイン処理において、ステップ410で車両から無線送信された車両走行データを受信すると、続いてステップ415に進む。そしてステップ415では、受信した車両走行データ中の車両IDが、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件によれば、警告対象であるか否か判定する。
【0095】
例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「タクシーの第1種別部61を有する任意の車両ID」が警告対象になっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61がタクシーを示していれば、第2種別部62、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象であると判定する。
【0096】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「タクシーの第1種別部61を有すると共に電動車両の第2種別62を有している任意の車両ID」が警告対象になっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61がタクシーを示しており、かつ第1種別部62が電動車両を示していれば、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象であると判定する。
【0097】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID警告条件において、「燃料エンジン車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が警告対象から除外される車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第2種別部62が燃料エンジン車を示していれば、第1種別部61、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では警告対象でないと判定する。
【0098】
警告対象であると判定した場合は、ステップ420に進み、警告対象でないと判定した場合は、歩行者2に何ら報知することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、歩行者2への車両接近の警告を禁止する。
【0099】
また、ステップ420に進んだ後は、ステップ420で道路条件を満たすと判定し、ステップ430は、ID毎に受信電界強度を記録する。続いてステップ440では、車両3から受信した当該車両走行データの受信時の電界強度が所定の強度条件を満たすか否かを判定する。強度条件は、第1実施形態と同様、「(A)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が、所定の閾値Pよりも大きく、かつ、(B)最新の車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い」という条件であるが、ここで用いる閾値Pは、車両ID警告条件において、車両3から受信した当該車両走行データ中の車両IDに対して設定されている閾値Pを採用する。ただし、車両ID警告条件において、車両3から受信した当該車両走行データ中の車両IDに対して閾値Pが設定されていなければ、あらかじめ定められたデフォルト値を閾値Pとして採用する。ステップ440で強度条件を満たすと判定した後は、続いてステップ450で振動制御を実行する。
【0100】
このように、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、どの車両IDを警告対象としてどの車両IDを警告対象から除外するかを示す車両ID警告条件をあらかじめ記録してステップ415で使用することで、車種や個別の車両毎に、バイブレータ42を用いた警告の実行、非実行を切り替えることができる。
【0101】
例えば、車両ID警告条件において、特定の車両ID(例えば、家族の所有する車の車両ID、送迎車の車両ID)を警告対象に設定しておけば、当該特定車両の接近を確実に認知できる。
【0102】
また例えば、タクシーを拾いたい場合は、車両ID警告条件において、タクシーの第1種別部61を有する任意の車両IDを警告対象に設定しておけば、はタクシーの接近を確実に認知することができる。
【0103】
また例えば、車両ID警告条件において、特定の車両IDとして、携帯警告端末4のユーザ自身が現在乗車している車両の車両IDを警告対象から除外する車両IDに設定しておけば、無駄な警告が発生するのを防止できる。
【0104】
また、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、警告対象の車両IDに対して受信電界強度の閾値Pをあらかじめ記録してステップ440で使用することで、車種や個別の車両毎に、警告開始のタイミングを変えることができる。
【0105】
例えば、車両ID警告条件において、大型トラックの第1種別部61を有する任意の車両IDを警告対象に設定し、大型トラックの第1種別部61を有する任意の車両IDに対して他の車両IDよりも低い閾値Pを設定しておけば、大型トラックの接近を、電界強度の弱い遠い距離からいち早く優先的に認知し、早めに歩道の隅に寄るなど安全行動を取ることができる。
【0106】
ステップ450に続いては、ステップ455で、受信した車両走行データ中の車両IDが、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件によれば、返信すべき車両IDであるか否か判定する。
【0107】
例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「ハイブリッド車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が返信すべき車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第2種別部62がハイブリッド車を示していれば、第1種別部61、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ455では返信すべき車両IDであると判定する。
【0108】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「一般乗用車の第2種別部61を有すると共に燃料エンジン車の第2種別部62を有する任意の車両ID」が返信すべきでない車両IDになっている場合、受信した車両走行データ中の車両IDの第1種別部61が一般乗用車を示しており、かつ、第2種別部62が燃料エンジン車を示していれば、個別ID部63の内容に関わらず、ステップ415では返信すべき車両IDでないと判定する。
【0109】
また例えば、図12のステップ315で記録した車両ID返信条件において、「任意の車両IDが車両3へ返信を行うべきでない」という条件を設定されている場合、受信した車両走行データ中の車両IDがどのようなものであっても、ステップ455では返信すべきでない車両IDでないと判定する。
【0110】
返信すべき車両IDであると判定した場合は、ステップ460に進んで、第1実施形態と同様に車両3に返信する。返信すべき車両IDでないと判定した場合は、車両3に返信することなく、今回の携帯側メイン処理を終了する。つまり、車両3への返信を禁止する。
【0111】
このように、携帯警告端末4が、ユーザ(歩行者2)の設定に基づいて、どの車両IDを返信すべき車両IDとしてどの車両IDを返信すべきでない車両IDとするかを示す車両ID返信条件をあらかじめ記録してステップ455で使用することで、車種や個別の車両毎に、バイブレータ42を用いた警告後の車両3への返信の実行、非実行を切り替えることができる。
【0112】
例えば、車両ID返信条件において、歩行者2自身の存在を特に知らせたい特定の車両(例えば、待ち合わせ車両)の車両IDを返信すべき車両IDとして設定し、他の車両IDを返信すべきでない車両IDとして設定しておけば、当該特定の車両に歩行者2自身の存在を確実に知らせることができるとともに、返信不要な車両には返信しないので、無線通信のトラフィックを軽減できたり、不特定多数の車両にユーザ自身の存在を知らせないことにより、誘拐などの犯罪を防止できる可能性が高くなる。
【0113】
また例えば、車両ID返信条件において、歩行者2の自宅の周囲に住む人が所有する車両の車両IDを、返信すべきでない車両IDとして設定しておけば、無線通信のトラフィックを軽減でき、注意勧告不要な車載機への返信を禁止することができる。
【0114】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0115】
例えば、上記実施形態においては、携帯警告端末4は、車載通信機5から無線送信された車両走行データを受信すると、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きく、かつ、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率が、所定の閾値Qよりも高い場合に、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっている。
【0116】
しかし、閾値Qに関する条件は、必須ではない。すなわち、携帯警告端末4は、車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合は、車両走行データの受信時における受信電界強度の変化率に関わりなく、歩行者2に対して、振動で車両接近の警告を行うようになっていてもよい。
【0117】
また、携帯警告端末4は、振動制御において、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が大きくなるほど、振動の振幅を大きくするようになっていてもよい。また、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度が大きくなるほど、振動の周波数を大きくするようになっていてもよい。
【0118】
また、上記実施形態においては、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う具体例として、バイブレータ42の振動を用いて触覚刺激を例示している。しかし、聴覚刺激以外の方法としては、このようなものに限らず、例えば、視覚刺激を用いてもよい。具体的には、LED等のランプを点灯または点滅させることで、車両接近の警告を行うようになっていてもよい。
【0119】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、振動以外で車両接近の警告を行う場合でも、受信した車両走行データ中の走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させるようになっていてもよい。例えば、走行速度が大きくなるほど発光の輝度を大きくしてもよい。
【0120】
また、携帯警告端末4の制御装置43は、振動以外で車両接近の警告を行う場合でも、最新の車両走行データの受信時における受信電界強度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させるようになっていてもよい。例えば、当該受信電界強度が大きくなるほど発光の輝度を大きくしてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、1つのナビゲーション装置5において、車両走行データの送信時の送信電力は常に一定であり、また、複数のナビゲーション装置間において、車両走行データの送信時の送信電力は同じであった。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、車両走行データの送信時の送信電力は、ナビゲーション装置間で異なっていてもよいし、1つのナビゲーション装置5において、車両走行データの送信時の送信電力は時間的に変化するようになっていてもよい。ただしその場合は、ナビゲーション装置5は車両走行データの送信時に、その車両走行データの送信時の電界強度の情報も含めるようになっている。そして、携帯警告端末4の制御装置43は、ステップ440では、受信電界強度(およびその時間変化率)を閾値P、Qと比較するのは同じだが、閾値P、Qの値は上記実施形態と異なる。
【0122】
具体的には、閾値Pは、車両走行データ中の送信電界強度に1未満の定数Kを乗じた値とする。この定数Kは、車両走行データの信号が50メートル伝搬したときの電界強度の減衰率と同程度にする。また、閾値Qは、上記実施形態の閾値Qに上記定数Kを乗じた値とする。このように、所定の閾値K、Qは、必ずしも定数とは限らない。
【0123】
また、上記実施形態においては、車載通信機の一例として、ナビゲーション装置5が挙げられていたが、車載通信機は、必ずしもナビゲーション装置の機能を有しておらずともよく、信号を携帯警告端末4に送信する機能を備えているだけでもよい。
【0124】
また、上記実施形態においては、車両走行データに含める車両3の走行速度の情報としては、走行速度を示す値そのものを用いているが、走行速度の情報としは、上記車速センサから出力される車速パルス信号の周波数を、人間が周波数の変化を体感できる程度の周波数帯域(例えば、10Hz〜100Hz)中の周波数に変換し、その変換結果の周波数の波形データを、走行速度の情報として車両走行データに含めるようになっていてもよい。
【0125】
また、上記第2実施形態においては、車両ID条件(車両ID警告条件、車両ID返信条件)に設定する車両IDは、ユーザが操作部40を用いて入力するようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば、制御装置43は、無線通信によって携帯警告端末4の外部から車両ID条件を受信するようになっていてもよい。あるいは、制御装置43は、送受信装置41を介して周囲の車両から受信した走行データ中の車両IDを、車両ID条件に設定する車両IDとして用いてもよい。
【0126】
なお、ナビゲーション装置5は、車両側送信処理において、常に定期的に車両走行データを送信するようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両3に、車両3の前方にいる人を検知する装置が搭載されていれば、当該装置が車両3の前方にいる人を検知した場合に限り、繰り返し車両走行データを送信するようになっていればよい。あるいは、当該装置が車両3の前方にいる人を検知した場合に限り、1回だけ車両走行データを送信するだけでもよい。
【0127】
また、上記の実施形態において、制御装置43、制御回路57がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 道路
2 歩行者
3 車両
4 携帯警告端末
5 ナビゲーション装置
42 バイブレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)と、車両(3)に搭載される車載通信機(5)と、を備えた車両接近警告システムであって、
前記車載通信機(5)は、車両走行データを周囲に無線送信し、
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする車両接近警告システム。
【請求項2】
前記車両走行データは、前記車両(3)の走行速度を含み、
前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両接近警告システム。
【請求項3】
前記車載通信機(5)は、前記車両(3)の現在位置が属する道路の道路種別を特定し、特定した前記道路種別を前記車両走行データに含め、
前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記道路種別が、記録されている道路条件を満たすか否かを判定し、満たされていない場合、前記歩行者(2)に対して、車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1または2に記載の車両接近警告システム。
【請求項4】
前記携帯警告端末(4)は、バイブレータ(42)を備え、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時の電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記バイブレータ(42)を振幅S1で持続的に振動させ、さらに、前記受信電界強度が、前記閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、前記バイブレータ(42)を前記振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に毎回1周期だけ振動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項5】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車両IDおよび警告対象から除外される車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、
警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項6】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、
前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車種を示す部分を含んだ車両IDおよび警告対象から除外される車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、
警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項7】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)があらかじめ記録する前記車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての前記閾値Pを規定するように設定され、
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDについての前記閾値Pを決定し、当該車両走行データの受信時における電界強度が当該決定した閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の車両接近警告システム。
【請求項8】
前記携帯警告端末(4)は、車両接近の警告を行う場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、
前記車載通信機(5)は、前記携帯警告端末(4)から前記返信を受信した場合、ドライバーに警告報知を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項9】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車両IDおよび返信を行うべきでない車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする請求項8に記載の車両接近警告システム。
【請求項10】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、
前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車種を示す部分を含んだ車両IDおよび返信を行うべきでない車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする請求項8に記載の車両接近警告システム。
【請求項11】
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が前記閾値Pよりも大きく、かつ、当該車両走行データの受信時における電界強度の変化率が所定の閾値Qよりも高い場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする請求項1ないし10に記載の車両接近警告システム。
【請求項12】
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末であって、
車載通信機(5)から無線送信された車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きいか否かを判定する判定手段(440)と、
前記電界強度が前記閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う歩行者側警告手段(450)と、を備えた携帯警告端末。
【請求項13】
車両(3)に搭載される車載通信機であって、
車両走行データを周囲に無線送信する送信手段(130)と、
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)が、前記送信手段(130)によって送信された前記車両走行データを受信し、当該車載通信機に返信を行った場合、前記返信を受信してドライバーに警告報知を行う車両側警告手段(220)と、を備えた車載通信機。
【請求項1】
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)と、車両(3)に搭載される車載通信機(5)と、を備えた車両接近警告システムであって、
前記車載通信機(5)は、車両走行データを周囲に無線送信し、
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする車両接近警告システム。
【請求項2】
前記車両走行データは、前記車両(3)の走行速度を含み、
前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記走行速度に応じて、車両接近の警告の態様を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両接近警告システム。
【請求項3】
前記車載通信機(5)は、前記車両(3)の現在位置が属する道路の道路種別を特定し、特定した前記道路種別を前記車両走行データに含め、
前記携帯警告端末(4)は、受信した前記車両走行データ中の前記道路種別が、記録されている道路条件を満たすか否かを判定し、満たされていない場合、前記歩行者(2)に対して、車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1または2に記載の車両接近警告システム。
【請求項4】
前記携帯警告端末(4)は、バイブレータ(42)を備え、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時の電界強度が閾値Pよりも大きい場合、前記バイブレータ(42)を振幅S1で持続的に振動させ、さらに、前記受信電界強度が、前記閾値Pよりも大きい閾値R以上となった場合、前記バイブレータ(42)を前記振幅S1より大きい振幅S2で、間欠的に毎回1周期だけ振動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項5】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車両IDおよび警告対象から除外される車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、
警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項6】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、
前記携帯警告端末(4)は、警告対象となる車種を示す部分を含んだ車両IDおよび警告対象から除外される車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID警告条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが警告対象であるか否か判定し、
警告対象であると判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行い、警告対象でないと判定した場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを禁止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項7】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)があらかじめ記録する前記車両ID警告条件は、警告対象となる車両ID、警告対象から除外される車両IDを規定すると共に、警告対象となる車両IDについての前記閾値Pを規定するように設定され、
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID警告条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDについての前記閾値Pを決定し、当該車両走行データの受信時における電界強度が当該決定した閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の車両接近警告システム。
【請求項8】
前記携帯警告端末(4)は、車両接近の警告を行う場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、
前記車載通信機(5)は、前記携帯警告端末(4)から前記返信を受信した場合、ドライバーに警告報知を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両接近警告システム。
【請求項9】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車両IDおよび返信を行うべきでない車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする請求項8に記載の車両接近警告システム。
【請求項10】
前記車両走行データは、車両を個別に識別するための車両IDを含み、
前記車両IDは、車種を示す部分(61、62)を含み、
前記携帯警告端末(4)は、返信を行うべき車種を示す部分を含んだ車両IDおよび返信を行うべきでない車種を示す部分を含んだ車両IDを規定する車両ID返信条件をあらかじめ記録し、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データに含まれる車両IDおよび前記車両ID返信条件に基づいて、当該車両走行データに含まれる車両IDが返信を行うべき車両IDであるか否か判定し、返信を行うべき車両IDであると判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行い、返信を行うべき車両IDでないと判定した場合、前記車載通信機(5)に返信を行わないことを特徴とする請求項8に記載の車両接近警告システム。
【請求項11】
前記携帯警告端末(4)は、前記車載通信機(5)から無線送信された前記車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が前記閾値Pよりも大きく、かつ、当該車両走行データの受信時における電界強度の変化率が所定の閾値Qよりも高い場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行うことを特徴とする請求項1ないし10に記載の車両接近警告システム。
【請求項12】
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末であって、
車載通信機(5)から無線送信された車両走行データを受信すると、当該車両走行データの受信時における電界強度が閾値Pよりも大きいか否かを判定する判定手段(440)と、
前記電界強度が前記閾値Pよりも大きい場合、前記歩行者(2)に対して、聴覚刺激以外の方法で車両接近の警告を行う歩行者側警告手段(450)と、を備えた携帯警告端末。
【請求項13】
車両(3)に搭載される車載通信機であって、
車両走行データを周囲に無線送信する送信手段(130)と、
歩行者(2)に携帯される携帯警告端末(4)が、前記送信手段(130)によって送信された前記車両走行データを受信し、当該車載通信機に返信を行った場合、前記返信を受信してドライバーに警告報知を行う車両側警告手段(220)と、を備えた車載通信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−138476(P2011−138476A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171885(P2010−171885)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]