説明

車両搭載機器の取外構造

【課題】取り外し作業性を向上させることができる車両搭載機器の取外構造を提供する。
【解決手段】取付部材(2)に取り付け固定された状態で車両に搭載された搭載機器(3A)を取り外すための車両搭載機器の取外構造であって、取付部材(2)の表裏いずれか一方の面(2a)に形成され、全体として搭載機器(3A)を取り囲むように形成された除肉部(22)と、取付部材(2)の表裏いずれかの面のうち除肉部(22)が形成されない他方の面(2b)であって除肉部(22)に対向する位置に形成された突起部(23)とを備え、突起部(23)に力が加えられることにより突起部(23)が根元から折れて、取付部材(2)の除肉部(22)に対応する箇所に貫通孔(25)が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載機器の取外構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用空調装置における各種機器(送風機モータやエアフィルタ等)の取外構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−62454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、車両用空調装置における送風機モータに故障等が生じた場合には、送風機モータを新しい物に交換する必要がある。
【0004】
その際、特に、送風機モータのハウジング部が車両側の樹脂ケースと一体化して構成されているものでは、送風機モータのハウジングが取り付けられる樹脂ケースに予め形成された案内溝に沿ってカッターを入れ、送風機モータの外周部を樹脂ケースから切り取って送風機モータを取り外した後、新しい別の送風機モータを取り付けて交換するようにしている。
【0005】
しかし、送風機モータは、通常、インストルメントパネル内に搭載されており、送風機モータの交換にあたっては、例えば、インストルメントパネルの下側開口から内部に手を伸ばして実施せざるを得ない場合があり、上記のようにカッター等の道具を用いて行う作業は、特にそうした狭いスペース内において非常に煩雑であり、時間を要していた。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、取り外し作業性を向上させることができる車両搭載機器の取外構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、取付部材(2)に取り付け固定された状態で車両に搭載された搭載機器(3A)を取り外すための車両搭載機器の取外構造であって、取付部材(2)の表裏いずれか一方の面(2a)に形成され、全体として搭載機器(3A)を取り囲むように形成された除肉部(22)と、取付部材(2)の表裏いずれかの面のうち除肉部(22)が形成されない他方の面(2b)であって除肉部(22)に対向する位置に形成された突起部(23)とを備え、突起部(23)に力が加えられることにより突起部(23)が根元から折れて、取付部材(2)の除肉部(22)に対応する箇所に貫通孔(25)が形成されることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、除肉部(22)および突起部(23)が全体として搭載機器(3A)を取り囲むように形成されているため、突起部(23)に力が加えられて突起部(23)が折れると、貫通孔(25)が搭載機器(3A)を取り囲むように形成されることになる。これにより、貫通孔(25)が連続して環状になっている場合は、そのまま搭載機器(3A)を取付部材(2)から取り外すことができる。また、貫通孔(25)が不連続である場合は、搭載機器周りの取付部材(2)の強度が弱くなり、あとは、搭載機器(3A)を取付部材(2)の厚み方向に一押ししてやるだけで、簡単に搭載機器(3A)を取付部材(2)から取り外すことができる。したがって、本構成によれば、搭載機器(3A)の取り外し作業性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、突起部(23)は、一方の面(2a)に対して略垂直に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、例えば指によって力を加えやすく、突起部(23)を折りやすいため、さらに、搭載機器(3A)の取り外し作業性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、突起部(23)は、複数形成されるものであって、かつ、薄板状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、薄板状の突起部(23)に指で力を加える際に、例えば棒状の突起部等と比較して指に荷重が集中しないため、指が痛くなるといった問題を回避できる。また、突起部(23)が1つ1つ分割形成されているため、1つの突起部(23)を折るために必要な荷重が小さくてすみ、力を加えやすく折りやすい構成にできる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、突起部(23)の根元には、溝部(26)が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、突起部(23)に力が加えられた際に、溝部(26)が形成された部位に応力集中が生じるため、突起部(23)を根元(取付部材(2)側の基端部)から確実に折れるように構成できる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、搭載機器(3A)はモータであって、取付部材(2)はハウジングケースであることを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、ハウジングケース(2)に取り付けられたモータ(3A)を取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態である取外構造1を、ハウジングケース2(取付部材)に取り付け固定された状態で車両に搭載される送風機モータ3A(車両搭載機器。例えば、車両用空調装置における送風機モータであって、以下、単に「モータ」という。)の取外構造1に適用した第1実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明中、図1における上下方向を便宜上、「上下」として説明する。また、本実施形態におけるモータ3Aは円筒状をなす周知の電動モータである。
【0020】
図1は、モータ3Aの取外構造1を説明する断面模式図であって、(a)はモータ3Aが取り付けられた態様を示す図、(b)はモータ3Aを取り外す際の中間態様を示す図、(c)は、新しいモータ3Bを取り付ける際の態様を示す図である。図2は、図1におけるII方向から見た図であって、ハウジングケース2の平面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、ハウジングケース2は、例えば、渦巻き状の送風流路(図示略)を形成して、内部にはモータ3A(3B)によって回転駆動されるファン(図示略)を収容する樹脂ケースであって、モータ3A(3B)が取り付けされる側が板状に形成されている。この板状となる部位の中央には、平面視円形状のモータ取付凹部21が、他の部位よりも一段低くなるように上面2a側から凹設されている。このモータ取付凹部21内にモータ3Aが固定されている。
【0022】
図2に示すように、ハウジングケース2の上面2aにおいて、モータ取付凹部21の外周部には、平面視略細長楕円形状をなす除肉部22が、全体としてモータ3Aを取り囲むように複数個(本実施形態では10個)形成されている。この除肉部22では、ハウジングケース2の板厚の約半分程度が除肉されており、縦断面形状は矩形状となっている(図1参照)。
【0023】
図3は、ハウジングケース2を斜め上方から見た斜視図である。図3では、説明上、簡単のため、除肉部22および後述の突起部23のみ記載している。
【0024】
図1、図3に示すように、ハウジングケース2の下面2bにおいて、除肉部22に対向する位置には、円周形状に沿うように湾曲した薄板状の突起部23が、除肉部22と同じく全体としてモータ3Aを取り囲むように複数個(本実施形態では10個)形成されている。突起部23の幅(円弧に沿う長さ)は、除肉部22の長手方向の長さと同一に設定されている。また、突起部23は、ハウジングケース2(下面2b)に対して垂直に形成されている。
【0025】
さらに、図1に示すように、除肉部22の外周部には、円周状の周状凸部24が下方へ突出形成されている。モータ交換時には、この周状凸部24に、交換用モータ3Bのケース4に形成された周状凹部42(図1(c)参照)が嵌合するようになっている(詳細後述)。
【0026】
次に、交換用モータ3Bのケース4の構造について説明する。図1(c)に示すように、ケース4は、ハウジングケース2と同様に、樹脂製の板状部材であって、その中央には、平面視円形状のモータ取付凹部41が、他の部位よりも一段低くなるように上面4a側から凹設されている。このモータ取付凹部41内に交換用モータ3Bが固定されている。
【0027】
モータ取付凹部41の外周部には、モータ取付凹部41よりも深さが浅く円周状に形成された周状凹部42が上面4a側から凹設されている。この周状凹部42は、ハウジングケース2の周状凸部24と位置対応するように形成されている。周状凹部42のさらに外周部は、径方向外側へ延設されたボス部43として構成されている。
【0028】
次に、上記構成を備える取外構造1における、モータ3Aの取り外しおよび交換用モータ3Bの取り付け手順について説明する。
【0029】
まず、突起部23に指で力を加えて(径方向外側、内側のいずれの方向でも良い。)、突起部23を押し倒す。すると、突起部23に対応する位置の上面2aに除肉部22が形成されていることにより、突起部23は根元から折れて、ハウジングケース2に貫通孔25(図1(b)参照)が形成される。この貫通孔25の形状は、除肉部22の形状と略一致し、すべての突起部23を折ると、それぞれの突起部23(除肉部22)に対応する貫通孔25が、モータ3Aを取り囲むように形成される。
【0030】
これにより、モータ3Aの外周部におけるハウジングケース2の強度が弱くなりため、あとは、下から上側へハウジングケース2を一押ししてやると、あるいは、モータ3Aを下側から引っ張ってやると、モータ3Aが固定されたモータ取付凹部21の部位と他の部位とが分離して、モータ3Aをハウジングケース2の一部ごとハウジングケース2から取り外すことができる。
【0031】
そして、交換用モータ3Bを組み付ける時には、交換用モータ3Bが固定されたケース4を、組み付け方向である下から上側へ向けてハウジングケース2に接近させていく。このとき、ケース4の周状凹部42とハウジングケース2の周状凸部24の上下位置を合わせた状態で接近させる。すると、ケース4の周状凹部42がハウジングケース2の周状凸部24に嵌合する。そして、下面4b側から組み付け方向(下から上側)へ向けて挿入された左右両側のビス44をそれぞれねじ締めすることによって、ケース4(ボス部43)とハウジングケース2とは固定される。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、カッター等の道具を使わずに簡単にモータ3Aを取り外すことができ、取り外し作業性を向上させることができる。また、道具を使用しないことで、安全性においても優れ、コストも削減することができる。
【0033】
さらに、薄板状の突起部23が垂直に立っているため、指によって力を加えやすく折りやすくため、さらに、モータ3Aの取り外し作業性を向上させることができる。
【0034】
また、薄板状の突起部23に指で力を加える際に、例えば棒状の突起部等と比較して指に荷重が集中しないため、指が痛くなるといった問題を回避できる。また、突起部23が1つ1つ分割形成されているため、1つの突起部23を折るために必要な荷重が小さくてすみ、力を加えやすく折りやすい構成となっている。
【0035】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態におけるハウジングケース2の除肉部近傍を示す拡大図である。
【0036】
なお、本実施形態では、第1実施形態と共通する構成部材には第1実施形態と同様の符号を付しており、以下、第1実施形態との相違部分に着目して説明することとする。
【0037】
本実施形態では、突起部23の根元(ハウジングケース2側の基端部)に、溝部26が形成されている点が上記第1実施形態とは異なっている。この溝部26は、突起部23の根元の全周を取り囲むように形成されており、縦断面形状は半円形状となっている。
【0038】
本実施形態によれば、突起部23に力が加えられた際に、溝部26が形成された部位に応力集中が生じるため、突起部23を根元から確実に折ることができる。
【0039】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、除肉部22を、それぞれ突起部23に対応するように1つ1つ設ける構成としたが、複数の除肉部22を全てつなげて環状をなすように形成しても良い。
【0040】
上記各実施形態において、指で力を加えて折ることが可能な程度であれば、除肉部22および突起部23の個数、大きさ、形状等は適宜変更することができる。除肉部22の深さについても、上記各実施形態ではハウジングケース2の厚さの約半分程度としたが、例えばハウジングケース2の板厚程度までもっと深く形成しても良い。
【0041】
さらに、例えば、図5に示すように、平面視円形状をなす多数の除肉部22bを形成するようにしても良い。この場合、除肉部22bに対応する突起部は、例えば、ピン状(棒状)に形成することができる。
【0042】
上記各実施形態における除肉部22および突起部23の一つ一つの形状は、円弧に沿わずに直線状としても良い。全体としてモータ3Aを取り囲むように形成されていれば、突起部23を折り倒した際に形成される貫通孔25によってモータ3Aを簡単に取り外すことができる。
【0043】
上記第2実施形態における溝部26の縦断面形状は半円形状であるものとしたが、その他の形状であっても良い。また、突起部23の全周に亘って形成しなくても良く、部分的に形成しても良い。
【0044】
上記各実施形態では、本発明の「車両搭載機器の取外構造」を、「送風機モータ3Aの取外構造1」として具体化したが、これに限らず、例えば、空調ケース(「取付部材」に相当する。)内に収容されるヒータコアや、エアフィルタ、蒸発器等の車両搭載機器の取外構造として具体化しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】モータの取外構造を説明する断面模式図であって、(a)はモータが取り付けられた態様を示す図、(b)はモータを取り外す際の中間態様を示す図、(c)は、新しいモータを取り付ける際の態様を示す図である。
【図2】図1におけるII方向から見た図であって、ハウジングケースの平面図である。
【図3】ハウジングケースを斜め上方から見た斜視図である。
【図4】第2実施形態におけるハウジングケースの除肉部近傍を示す拡大図である。
【図5】別な実施形態におけるハウジングケースの平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 モータ(車両搭載機器)の取外構造
2 ハウジングケース(取付部材)
2a 上面(一方の面)
2b 下面(他方の面)
3A 送風機モータ(車両搭載機器)
22 除肉部
23 突起部
25 貫通孔
26 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材(2)に取り付け固定された状態で車両に搭載された搭載機器(3A)を取り外すための車両搭載機器の取外構造であって、
前記取付部材(2)の表裏いずれか一方の面(2a)に形成され、全体として前記搭載機器(3A)を取り囲むように形成された除肉部(22)と、
前記取付部材(2)の表裏いずれかの面のうち前記除肉部(22)が形成されない他方の面(2b)であって前記除肉部(22)に対向する位置に形成された突起部(23)と
を備え、前記突起部(23)に力が加えられることにより当該突起部(23)が根元から折れて、前記取付部材(2)の前記除肉部(22)に対応する箇所に貫通孔(25)が形成されることを特徴とする車両搭載機器の取外構造。
【請求項2】
前記突起部(23)は、前記一方の面(2a)に対して略垂直に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両搭載機器の取外構造。
【請求項3】
前記突起部(23)は、複数形成されるものであって、かつ、薄板状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両搭載機器の取外構造。
【請求項4】
前記突起部(23)の根元には、溝部(26)が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の車両搭載機器の取外構造。
【請求項5】
前記搭載機器(3A)はモータであって、前記取付部材(2)はハウジングケースであることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両搭載機器の取外構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−73407(P2009−73407A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245880(P2007−245880)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】