説明

車両用ウインドウシェード装置

【課題】レイアウトの自由度に優れると共に、シートの引出動作をより確実に行うことができるようにすること。
【解決手段】隣設する第1ウインドウ及び第2ウインドウを遮蔽及び開放可能に覆う車両用ウインドウシェード装置20である。車両用ウインドウシェード装置20は、第2ウインドウシェード52の引出収納方向に沿って配設される案内レール66と案内レール66に沿って移動可能な可動部材とを有する案内支持機構60と、可動部材が連結されると共に案内レール66に沿って移動可能なラック部材72と、第1巻取装置36の巻取軸部材38に対して連動して回転可能に連結された第1傘歯車82と、第1傘歯車82と噛合う態様で配設された第2傘歯車86とを有し、それらの噛合いを通じて、巻取軸部材38の回転を、ラック部材72を案内レール66に沿って移動させる力として伝達する中継伝達機構80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のウインドウを遮蔽及び開放可能に覆う車両用ウインドウシェード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、任意の角度で互いに相対して配置される2つの巻取りシャフトを備えたウインドウシェード装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示のウインドウシェード装置では、一方の巻取りシャフトの回転に連動して他方の巻取りシャフトを回転させる構成が2つ開示されている。
【0004】
第1の構成は、一方の巻取りシャフトにねじスピンドルが結合され、このねじスピンドルにスピンドルナットが螺合されている。そして、一方のシートを開閉させるべく巻取りシャフトを回転させると、ねじスピンドルに螺合されたスピンドルナットがねじスピンドルの軸方向に沿って移動し、これにより他方のシートを開閉させるようになっている。
【0005】
第2の構成は、一方の巻取りシャフトと他方の巻取りシャフトとが傘歯車を介して同期回転可能に連結されている。他方の巻取りシャフトに巻取られたシートの先端部が引張バネにより引出方向に付勢されている。そして、一方のシートを引出す方向に一方の巻取りシャフトが回転すると、他方の巻取りシャフトがシートを引出す方向に同期回転する。これにより、他方の巻取りシャフトに巻回されたシートが引張バネの引張力により引出されるようになっている。また、他方のシートを巻取る方向に一方の巻取りシャフトが回転すると、他方の巻取りシャフトが同期回転してシートを巻取るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−182358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された第1の構成によると、一方の巻取りシャフトとねじスピンドルとを同一直線上に配設する必要があるため、レイアウトの制約が大である。
【0008】
また、特許文献1に開示された第2の構成によると、一方の巻取られたシートの回転に連動して他方の巻取りシャフトを連動させる構成であり、シートの引出しは、引張バネの引張力によってなされる。このため、引張バネの引張り力を伝達する部分が引っかかると、他方の巻取りシャフトが回転してもシートが引出されない事態が生じ得、シートの引出動作が不確実となる恐れがある。
【0009】
そこで、この発明は、レイアウトの自由度に優れると共に、シートの引出動作をより確実に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様は、車両に、隣設して設けられた第1ウインドウ及び第2ウインドウを遮蔽及び開放可能に覆う車両用ウインドウシェード装置であって、前記第1ウインドウを遮蔽可能な第1ウインドウシェードと、前記第1ウインドウシェードを巻取可能な巻取軸部材を有し、前記第1ウインドウシェードを前記巻取軸部材に引出収納可能に巻取る第1巻取装置と、前記第2ウインドウを遮蔽可能な第2ウインドウシェードと、前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸に対して交差する姿勢で配設され、前記第2ウインドウシェードを引出収納可能に巻取る第2巻取装置と、前記第2ウインドウシェードの引出収納方向に沿って配設可能な案内経路部材と、その案内経路部材に沿って移動可能に支持された可動部材とを有する案内支持機構と、前記可動部材が連結されると共に、前記案内経路部材に沿って移動可能に配設され、前記案内経路部材内に沿った移動により前記可動部材を前記案内経路部材に沿って移動させるラック部材と、前記第1巻取装置の巻取軸部材に対して連動して回転可能に連結された第1傘歯車と、前記第1傘歯車と噛合い、前記ラック部材と連動可能に配設された第2傘歯車とを有し、前記第1巻取装置の巻取軸部材の回転を、前記ラック部材を前記案内経路部材に沿って移動させる力として伝達する中継伝達機構とを備える。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る車両用ウインドウシェード装置であって、前記第1傘歯車と前記第2傘歯車とが、それぞれの回転軸を非直交姿勢に配設した姿勢で噛合うように配設され、前記ラック部材が、前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸に対して傾く方向に沿って移動可能に設けられているものである。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る車両用ウインドウシェード装置であって、前記第2傘歯車に、その回転軸と一致する回転軸を有する平歯車が一体化され、前記平歯車が前記ラック部材と噛合うように配設されているものである。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に係る車両用ウインドウシェード装置であって、前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸からずれた位置で、前記平歯車と前記ラック部材とが噛合しているものである。
【0014】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る車両用ウインドウシェード装置であって、前記第1傘歯車は、前記第1巻取装置の巻取軸部材に直接連結されているものである。
【0015】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に係る車両用ウインドウシェード装置であって、前記ラック部材のうち前記案内経路部材から延出した部分を案内する逃し用案内部材が、前記第1巻取装置に沿って設けられているものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によると、第1傘歯車と第2傘歯車との噛合いを通じて、第1巻取装置の回転による力が、ラック部材を案内経路部材に沿って移動させる力として伝達される。このため、第1巻取装置の巻取軸部材とラック部材或は案内経路部材との設置姿勢を比較的自由に設定することができ、レイアウトの自由度に優れる。
【0017】
しかも、第1巻取装置の巻取軸部材の回転に応じてラック部材が案内経路部材に沿って移動し、これに連動して第2ウインドウシェードが引出される構成であるため、シートの引出動作をより確実に行うことができる。
【0018】
第2の態様によると、前記第1傘歯車と前記第2傘歯車とが噛合う姿勢を調整することで、第1ウインドウ及び第2ウインドウの位置、それらの周辺部材のレイアウト等に合わせて、前記第1巻取装置の巻取軸部材とラック部材との移動方向を適宜調整して配設し易い。
【0019】
第3の態様によると、比較的簡易な構成で第2傘歯車の回転を、ラック部材を移動させる力として伝達することができる。しかも、第2傘歯車の回転軸上において、平歯車とラック部材とが噛合う位置を適宜調整することで、ラック部材の配設レイアウトを自由に変更することができる。
【0020】
第4の態様によると、第1巻取軸部材の軸からずれた位置で前記平歯車と前記ラック部材とが噛合しているため、第1ウインドウ及び第2ウインドウの位置、それらの周辺部材のレイアウト等に合わせて、ラック部材の移動経路、案内経路部材等を配設できる。
【0021】
第5の態様によると、第1巻取軸部材から第1傘歯車への回転伝達を比較的簡易な構成で実現できる。
【0022】
第6の態様によると、ラック部材のうち案内経路部材から延出した部分を、比較的コンパクトな構成で案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】引出し状態における車両用ウインドウシェード装置を示す側面図である。
【図2】収納状態における車両用ウインドウシェード装置を示す側面図である。
【図3】第2ウインドウシェード装置を示す説明図である。
【図4】シェード連動機構を示す一部分解斜視図である。
【図5】シェード連動機構の内部構成を示す説明図である。
【図6】シェード連動機構の内部構成を示す説明図である。
【図7】シェード連動機構の内部構成を示す説明図である。
【図8】第1巻取装置の巻取軸部材とラック部材及び案内レールとの配置関係を示す説明図である。
【図9】側方から見た状態において第1巻取装置に対するラック部材の延出状態を示す説明図である。
【図10】下方から見た状態において第1巻取装置に対するラック部材の延出状態を示す説明図である。
【図11】側方から見た状態において第1巻取装置に取付けられた逃し用案内部材を示す説明図である。
【図12】下方から見た状態において第1巻取装置に取付けられた逃し用案内部材を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<全体構成>
以下、実施形態にかかる車両用ウインドウシェード装置について説明する。図1は引出し状態における車両用ウインドウシェード装置20を示す側面図であり、図2は収納状態における車両用ウインドウシェード装置20を示す側面図である。なお、図1及び図2は車両内側から見た状態を示している。
【0025】
この車両用ウインドウシェード装置20は、車両に隣接して設けられたウインドウ10、12に組込まれ、当該ウインドウ10、12を車室内側から遮蔽及び解放可能に覆うように構成されている。ここでは、車両に略方形状のリアサイドウインドウ10(第1ウインドウ)が設けられ、このリアサイドウインドウ10からさらに車両の後方側に隣接して略三角状のリアクオーターウインドウ12(第2ウインドウ)が設けられている。
【0026】
この車両用ウインドウシェード装置20は、リアサイドウインドウ10を覆うための第1ウインドウシェード機構30と、リアクオーターウインドウ12を覆うための第2ウインドウシェード機構50とを備えている。そして、第1ウインドウシェード機構30の引出収納動作に連動して、第2ウインドウシェード機構50が引出収納動作するようになっている。
【0027】
下記では、第1ウインドウシェード機構30及び第2ウインドウシェード機構50を説明してから、動作を連動させるためのシェード連動機構70に係る構成について説明する。
【0028】
<第1ウインドウシェード機構>
第1ウインドウシェード機構30は、第1ウインドウシェード32と、第1巻取装置36とを備えている。
【0029】
第1ウインドウシェード32は、布或は樹脂シート等によりリアサイドウインドウ10を遮蔽可能な形状に形成されている。ここでは、第1ウインドウシェード32は、リアサイドウインドウ10と略同じ大きさ及び形状に形成されている。また、第1ウインドウシェード32の先端部には、樹脂或は金属等によって形成された略棒状のステイ34が取付けられている。このステイ34には、第1ウインドウシェードを引出した状態で、リアサイドウインドウ10の上方に存在する車両側部位に引っかけることが可能なフック部34aが設けられている。
【0030】
なお、ここでは、第1ウインドウシェード32をリアサイドウインドウ10に沿って引出した状態で、第1ウインドウシェード32の先端縁部が下方に向けて順次傾斜する形状に形成されている。そして、第1ウインドウシェード32の先端縁部のうち中間部から前方部分にかけてステイ34が設けられ、第1ウインドウシェード32の先端縁部のうちの後方部分にはステイ34が設けられていない。このため、第1ウインドウシェード32を引出した状態で、第1ウインドウシェード32の後方部分が垂下がってしまう恐れがある。そこで、第1ウインドウシェード32の上側後方コーナー部分から前方に向けてステイ34と略平行姿勢で、樹脂板又は金属板等で形成された長尺片状の補助ステイ35が取付けられている。これにより、第1ウインドウシェードを引出した状態で、第1ウインドウシェードの後方部分の垂下がりを抑制している。なお、補助ステイ35は、ステイ34及び第1巻取装置36の巻取軸部材38と略平行姿勢であるため、第1ウインドウシェード32の巻取収納時には特に邪魔になることなく、当該第1ウインドウシェード32と共に巻取られる。
【0031】
第1巻取装置36は、第1ウインドウシェード32を巻取可能な巻取軸部材38を有し、第1ウインドウシェード32を引出収納可能に巻取るように構成されている(巻取軸部材38については図4等参照)。
【0032】
すなわち、第1巻取装置36は、樹脂或は金属等で形成されたケース37内に、第1ウインドウシェード32を巻取可能な巻取軸部材38が引出収納方向に回転可能に支持されている。この巻取軸部材38は、図示省略のコイルバネ等の巻取付勢部材によって第1ウインドウシェード32を巻取る方向に付勢されている。そして、上記ステイ34を引張ると、第1ウインドウシェードが第1巻取装置36から引出される。また、ステイ34を引張る力を解除すると、巻取軸部材38に対する巻取方向への付勢力によって第1ウインドウシェード32が巻取収納されるようになっている。また、この第1巻取装置36は、リアサイドウインドウ10の下縁部に沿って車両に組込まれる。この組込状態でリアサイドウインドウ10の下方から第1ウインドウシェード32を引出すことによって、当該第1ウインドウシェード32がリアサイドウインドウ10の略全体を遮蔽できるようになる。
【0033】
<第2ウインドウシェード機構>
図3は第2ウインドウシェード機構50を示す説明図である。なお、図3は車室外側から見た状態を示している。
【0034】
図1〜図3に示すように、第2ウインドウシェード機構50は、第2ウインドウシェード52と、第2巻取装置56と、案内支持機構60とを備えている。
【0035】
第2ウインドウシェード52は、布或は樹脂シート等によりリアクオーターウインドウ12を遮蔽可能な形状に形成されている。ここでは、第2ウインドウシェード52は、リアクオーターウインドウ12の形状に合わせて、先端部を丸めた略三角形状に形成されている。第2ウインドウシェード52の先端部には、樹脂等によって形成された略棒状のクオーター用ステイ54が取付けられている。
【0036】
第2巻取装置56は、第2ウインドウシェード52を略水平方向に沿って引出し収納可能に巻取っている。すなわち、第2巻取装置56は、第2ウインドウシェード52を巻取可能な巻取軸部材を有しており、当該巻取軸部材は図示省略のコイルバネ等の巻取付勢部材によって第2ウインドウシェード52を巻取方向に付勢している。また、第2巻取装置56は、上記第1巻取装置36の巻取軸部材38の軸に対して交差する姿勢、ここでは、略直交する姿勢で配設されている。ここでは、第2巻取装置56の一端部(下端部)が第1巻取装置36の一端部(後端部)にねじ止等により連結固定されることで、上記姿勢が維持されている。そして、上記クオーター用ステイ54を引張ると、第2ウインドウシェード52が第2巻取装置56から引出される。また、クオーター用ステイ54を引張る力を解除すると、巻取軸部材の巻取方向への付勢力によって第2ウインドウシェード52が巻取収納されるようになっている。また、この第2巻取装置56は、リアサイドウインドウ10とリアクオーターウインドウ12との間のピラー等に沿って取付固定されている。そして、リアクオーターウインドウ12の前方から第2ウインドウシェード52を引出すことによって、当該第2ウインドウシェード52がリアクオーターウインドウ12の略全体を遮蔽できるようになる。
【0037】
もっとも、第1巻取装置56は、第1巻取装置36の巻取軸部材38の軸に対して略直交している必要はなく、斜め姿勢であってもよい。例えば、第2巻取装置56は、リアサイドウインドウ10とリアクオーターウインドウ12との間のピラーの姿勢或はリアクオーターウインドウ12の前側縁部の姿勢に沿って配設されていてもよい。
【0038】
案内支持機構60は、案内経路部材としての案内レール66と、可動部材64とを備えている。
【0039】
案内レール66は、リアクオーターウインドウ12の引出収納方向に沿って配設可能に構成されており、可動部材64が当該案内レール66にその延在方向に沿って移動可能に支持されている。
【0040】
より具体的には、案内レール66は、略筒状(略角筒状)に形成されており、一側面(ここでは、上方に向く面)に案内レール66の長手方向に沿って延びるスリット66Sが形成されている(図4参照)。案内レール66の一端部(前端部)には、後述するシェード連動機構70が組込まれている。本案内レール66は、当該シェード連動機構70の組込部分を介して、第1巻取装置36の一端部(後端部)にねじ止等により固定されている。これにより、案内レール66は、第1巻取装置36の後方延長上に固定される。そして、案内レール66は、第1巻取装置36、第2巻取装置56等と共に車両に組込まれ、車体のうちリアクオーターウインドウ12の下方部分に、当該リアクオーターウインドウ12の下縁部に沿って配設されるようになっている。なお、第1巻取装置36に対する案内レール66及び後述するラック部材の配置関係については、後でさらに詳述する。
【0041】
可動部材64は、上記案内レール66によって第2ウインドウシェード52の引出し収納方向に沿って移動可能に支持されている。より具体的には、可動部材64は、案内レール66内に移動可能に配設されている。
【0042】
また、クオーター用ステイ54が可動部材64の移動に応じて移動可能な態様で当該可動部材64に連結されている。ここでは、クオーター用ステイ54の一端部(下端部)がスリット66Sを介して案内レール66内に導入され、可動部材64に対して一定姿勢で固定されている。可動部材64とクオーター用ステイ54とは必ずしも一定姿勢である必要はなく、可動部材64の移動に連動してクオーター用ステイ54が移動等して第2ウインドウシェード52を引出及び収納できる構成であればよい。そして、案内レール66に沿って可動部材64が後方に移動すると、これに連動してクオーター用ステイ54が第2ウインドウシェード52の引出方向に沿って移動する。これにより、第2ウインドウシェード52がリアクオーターウインドウ12を遮蔽するように引出される。一方、案内レール66に沿って可動部材64が前方に移動すると、これに連動してクオーター用ステイ54が第2ウインドウシェード52の収納方向に沿って移動する。すると、第2巻取装置56により第2ウインドウシェード52巻取収納される。
【0043】
<シェード連動機構について>
第1ウインドウシェード機構30の引出収納動作に連動して、第2ウインドウシェード機構50を引出収納動作させるためのシェード連動機構70について説明する。
【0044】
図4はシェード連動機構70を示す一部分解斜視図であり、図5〜図7はシェード連動機構70の内部構成を示す説明図であり、図8は第1巻取装置36の巻取軸部材38とラック部材72及び案内レール66との配置関係を示す説明図である。なお、図5及び図6はシェード連動機構70の内部構成を斜め上方から見た図であり、図7はシェード連動機構70の内部構成を上方から見た図である。
【0045】
すなわち、このシェード連動機構70は、ラック部材72と、中継伝達機構80とを備えている。
【0046】
ラック部材72は、上記案内レール66内にその長手方向に沿って移動可能に配設されている。また、案内レール66内でラック部材72と可動部材64とが連結されている。そして、ラック部材72が案内レール66に沿って移動すると、その移動方向に応じて可動部材64が案内レール66に沿って引出収納方向に移動するように構成されている。
【0047】
より具体的には、ラック部材72は、線状に形成されており、その一面に凹凸が直線状に連なるように複数の歯が形成されている。ラック部材72は、樹脂等の可撓性を有する部材によって構成されていてもよいが、押込まれた場合に容易に屈曲しない程度の剛性を有していることが好ましい。このラック部材72は、その複数の歯を所定方向(ここでは上方)に向けた姿勢で、案内レール66の溝状空間内に配設されており、当該溝状空間内で案内レール66の長手方向に沿って移動可能に配設されている。また、案内レール66内で、ラック部材72の一端部に可動部材64が固定されている。可動部材64とラック部材72との固定は、挟み込み構造、ねじ止等の各種固定構造によってなされる。また、ラック部材72は、案内レール66内を通ってその基端側開口を通って外方に延出しており、その長手方向に沿って移動可能に配設されている。ラック部材72の他端側の延出部分をガイドする構成については後述する。
【0048】
そして、ラック部材72をその長手方向に沿って進退移動させることによって、可動部材64及びクオーター用ステイ54が移動し、これにより、第2ウインドウシェード52が引出し及び収納されるようになっている。
【0049】
中継伝達機構80は、第1傘歯車82と、第2傘歯車86とを有している。これらの第1傘歯車82及び第2傘歯車86等は、案内レール66に対して第1巻取装置36側に設けられた中間ケース81に組込まれている。なお、図4では中間ケース81の上蓋を取外した状態を示している。そして、第1傘歯車82と第2傘歯車86との噛合いを通じて第1巻取装置36の巻取軸部材38の回転が、ラック部材72を案内レール66に沿って移動させる力として伝達される。
【0050】
すなわち、第1傘歯車82は、第1巻取装置36の巻取軸部材38に対して当該巻取軸部材38と連動して回転可能に連結されている。ここでは、第1傘歯車82が第1巻取装置36の巻取軸部材38に直接連結されており、巻取軸部材38と一体的に回転するようになっている。もっとも、第1傘歯車82と巻取軸部材38との間に他の平歯車、伝達ベルト等が介在していてもよい。すなわち、巻取軸部材38の回転タイミング及び回転方向に応じて第1傘歯車82が回転すればよい。
【0051】
第2傘歯車86は、上記第1傘歯車82と噛合い、前記ラック部材72と連動可能に配設されている。ここでは、第1傘歯車82の回転軸82Xと、第2傘歯車86の回転軸86Xとを非直交姿勢に配設した姿勢(つまり、軸角が非直角である姿勢)で、第2傘歯車86が配設されている(図7参照)。ここでは、第2傘歯車86の回転軸86Xを、第1傘歯車82の回転軸82Xを含む水平面内に配設すると共に、第2傘歯車86を、第1巻取装置36に対してその横側一方向より噛合い可能に配設している。そして、第1傘歯車82の回転軸82Xと第2傘歯車86の回転軸86Xとが、90度よりもθ度小さい角度(つまり、(90−θ)度)で交わるようにしている。
【0052】
また、第2傘歯車86には、その回転軸86Xと一致する回転軸を有する平歯車88が一体化されている。より具体的には、第2傘歯車86から第1傘歯車82の回転軸82X側に向けて棒状のシャフト87が突設され、そのシャフト87の先端部に平歯車88が形成されている。平歯車88は、案内レール66のうち巻取軸部材38側部分で、ラック部材72の噛合い可能に配設されている。つまり、第2傘歯車86と平歯車88とは一致する回転軸を有する状態で一体化されていればよく、間に歯が形成されないシャフト等が介在していてもよい。そして、第2傘歯車86の回転により平歯車88が回転すると、その回転運動がラック部材72を案内レール66に沿って直線移動する力として伝達されるようになっている。
【0053】
この際、第1傘歯車82と第2傘歯車86との軸角が非直角であるため、平歯車88と噛合うラック部材72を、第1巻取装置36の巻取軸部材38の軸に対してθ度傾く方向に沿って移動可能に設けることができる(図8参照)。そして、案内レール66も、当該傾きに応じて、巻取軸部材38の軸に対してθ度傾く姿勢で、第1巻取装置36に連結固定されている(図8参照)。これにより、第1巻取装置36の延在方向と案内レール66の延在方向とを傾けた位置関係で配設することが可能となる。巻取軸部材38の軸に対するラック部材72の移動方向及び案内レール66の長手方向は、上記第1傘歯車86と第2傘歯車86との軸角(90−θ)を適宜設定することによって容易に調整することができる。
【0054】
また、シャフト87の長さ寸法は、第2傘歯車86から第1傘歯車82の回転軸82Xを横切って延出する程度の長さ寸法に設定されている。従って、平歯車88とラック部材72とは、第1巻取装置36の巻取軸部材38の軸からずれた位置で噛合することができる。このように、平歯車88の位置を適宜変更することで、ラック部材72が移動する位置を容易に調整することが可能となる。
【0055】
なお、第2傘歯車86及び平歯車88は、その回転軸82X方向に沿った両端部に形成された小径突部89が中間ケース81に形成された孔部81hに嵌め込まれることによって、回転可能に支持されている(図4参照)。
【0056】
もっとも、第2傘歯車86からラック部材72に力を伝達する態様は上記例に限られず、他の歯車、伝達ベルト等を介在等させた構成であってもよい。
【0057】
ところで、上記ラック部材72は、案内レール66に沿って移動可能に配設されているところ、可動部材64が第2傘歯車86に近づいた状態では、図9及び図10に示すように、ラック部材72の他端部が案内レール66から第1巻取装置36側に延出している。そこで、図8,図11及び図12に示すように、ラック部材72のうち案内レール66から延出した部分を案内するために、逃し用案内部材90が設けられている。逃し用案内部材90は、ラック部材72を移動可能に配設可能な筒状部材に形成され、第1巻取装置36に沿って設けられている。ここでは、逃し用案内部材90は、樹脂或は金属等によって角筒状に形成されている。また、逃し用案内部材90は、案内レール66によるラック部材72の移動経路延長線上に沿って、第1巻取装置36の外周囲、より具体的には、第1巻取装置36の車両外側を向く側面にねじ止等により固定されている。そして、ラック部材72のうち案内レール66から延出した他端側部分が、当該逃し用案内部材90に沿って移動可能に案内されるようになっている。
【0058】
<全体動作>
本車両用ウインドウシェード装置20の全体動作について説明する。
【0059】
まず、初期状態では、第1ウインドウシェード32及び第2ウインドウシェード52は、収納された状態となっている(図2参照)。
【0060】
この状態で、利用者等が、第1ウインドウシェード32のステイ34を掴んで上方に移動させる。すると、第1ウインドウシェードが引出されると共に、第1巻取装置36の巻取軸部材38が引出方向に回転する。巻取軸部材38の回転に連動して第1傘歯車82が回転すると共に、第1傘歯車82に噛合う第2傘歯車86が回転する。第2傘歯車86の回転に連動して平歯車88が回転し、平歯車88と噛合うラック部材72が案内レール66側に送出される。すると、可動部材64が案内レール66に沿って引出方向側に移動し、クオーター用ステイ54を介して第2ウインドウシェード52を引出す。
【0061】
リアサイドウインドウ10の略全体を遮蔽するまで第1ウインドウシェード32が引出された状態では、可動部材64は案内レール66の後方側まで移動している。従って、リアクオーターウインドウ12の略全体を遮蔽するまで第2ウインドウシェード52が引出される状態となる。
【0062】
この後、ステイ34のフック部34aをリアサイドウインドウ10の上方に存在する車両側部位に引っかけると、第1ウインドウシェード32及び第2ウインドウシェード52がウインドウ10、12を全体的に遮蔽する状態が維持される。
【0063】
上記状態からステイ34のフック部34aの引っかけを解除すると、第1巻取装置36の巻取軸部材38の巻取力により第1ウインドウシェード32が巻取られる。この際の巻取軸部材38の回転力が、第1傘歯車82、第2傘歯車86及び平歯車88を介してラック部材72に伝達される。これにより、ラック部材72が案内レール66から移動して第1巻取装置36側に送出される。すると、可動部材64が案内レール66に沿って収納方向側に移動し、第2ウインドウシェード52の先端部を引出方向側に移動させる。すると、第2巻取装置56の巻取力によって第2ウインドウシェード52が巻取られる。そして、第1ウインドウシェード32が第1巻取装置36に完全に巻取られた状態で、第2ウインドウシェード52も第2巻取装置56に完全に巻取られた状態となる。
【0064】
以上のように構成された車両用ウインドウシェード装置20によると、第1傘歯車82と第2傘歯車86との噛合いを通じて、第1巻取装置36の回転による力が、ラック部材72を案内レール66に沿って移動させる力として伝達される。このため、第1巻取装置36の巻取軸部材38とラック部材72或は案内レール66との設置姿勢を比較的自由に設定することができ、レイアウトの自由度に優れる。
【0065】
しかも、第1巻取装置36の巻取軸部材38の回転に応じてラック部材72が案内レール66に沿って移動し、そのラック部材72の移動に応じて第2ウインドウシェード52が引出される構成であるため、ラック部材72或は可動部材64等の引っかかり等による問題が生じ難い。このため、第2ウインドウシェード52の引出動作をより確実に行うことができる。
【0066】
例えば、第1傘歯車82と第2傘歯車86との軸角を比較的自由に設定することができる。これにより、第1巻取装置36の巻取軸部材38の軸方向とラック部材72の移動方向及び案内レール66の延在方向とを比較自由に調整することができる。このため、本車両用ウインドウシェード装置20を組込む場所のレイアウトに合わせて、第1ウインドウシェード機構30と第2ウインドウシェード機構50とを一体化して容易に組込むことができる。
【0067】
例えば、リアサイドウインドウ10に対してリアクオーターウインドウ12が車両後方に向けて車室内側に傾斜しているような場合には、当該傾斜姿勢に合わせて第1巻取装置36に対して案内レール66を傾斜させた状態で一体化することも容易となる。
【0068】
また、第2傘歯車86に、その回転軸86Xと一致する回転軸を有する平歯車88が一体化され、その平歯車88がラック部材72と噛合って当該ラック部材72を移動させる構成であるため、比較的簡易な構成で、第2傘歯車86の回転を、ラック部材72を移動させる力として伝達することができる。
【0069】
しかも、シャフト87の長さを調整する等して、第2傘歯車86の回転軸86X上において、平歯車88とラック部材72とが噛合う位置を適宜調整することで、ラック部材72の配設レイアウトを自由に変更することができる。例えば、ラック部材72が巻取軸部材38の軸からずれた位置に配設することも容易である。この点からも、本車両用ウインドウシェード装置20を組込む場所のレイアウトに合わせて、第1ウインドウシェード機構30と第2ウインドウシェード機構50とを一体化して容易に組込むことができる。
【0070】
また、第1傘歯車82が第1巻取装置36の巻取軸部材38に直結されているため、巻取軸部材38から第1傘歯車82への回転伝達を比較的簡易な構成で実現できる。
【0071】
さらに、ラック部材72のうち案内レール66から延出した部分が、逃し用案内部材90によって案内されているため、ラック部材72が周辺部材と干渉することを抑制して、当該ラック部材72をスムーズに移動させることができる。しかも、逃し用案内部材90は、第1巻取装置に沿って設けられているため、比較的コンパクトな構成でラック部材72の案内を実現することができる。
【0072】
<変形例>
なお、上記実施形態は、本発明の一例として説明されたものであり、本発明は上記実施形態で説明された構成に限定されない。
【0073】
例えば、本実施形態では、第1ウインドウシェード32を手動にて開閉させる構成、即ち、第1ウインドウシェード機構30にモータ等の開閉駆動装置が無い構成について説明した。しかしながら、第1ウインドウシェード機構30を、モータ等を用いた開閉駆動装置によって開閉駆動する構成である場合についても同様に適用することができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1傘歯車82と第2傘歯車86との軸角が直角でない場合で説明しているが、必ずしもその必要はなく、第1傘歯車82と第2傘歯車86との軸角が直角であってもよく、また、ラック部材72が巻取軸部材38の軸方向に沿って平行に移動する構成であってもよい。第1傘歯車82と第2傘歯車86とがどのような角度で噛合い、また、ラック部材72がいかなる方向に沿って移動するかについては、第1ウインドウシェード機構30及び第2ウインドウシェード機構50の設置対象に応じて適宜設定するとよい。
【0075】
また、本実施形態では、平歯車88とラック部材72とが巻取軸部材38の軸からずれた位置で噛合っているが、これらが巻取軸部材38の軸上で噛合っていてもよい。この場合、ラック部材72が巻取軸部材38と干渉しないように、曲る経路に沿って移動可能に案内するとよい。
【符号の説明】
【0076】
10 リアサイドウインドウ
12 リアクオーターウインドウ
20 車両用ウインドウシェード装置
32 第1ウインドウシェード
36 第1巻取装置
38 巻取軸部材
52 第2ウインドウシェード
56 第2巻取装置
60 案内支持機構
64 可動部材
66 案内レール
70 シェード連動機構
72 ラック部材
80 中継伝達機構
82 第1傘歯車
86 第2傘歯車
88 平歯車
90 逃し用案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に、隣設して設けられた第1ウインドウ及び第2ウインドウを遮蔽及び開放可能に覆う車両用ウインドウシェード装置であって、
前記第1ウインドウを遮蔽可能な第1ウインドウシェードと、
前記第1ウインドウシェードを巻取可能な巻取軸部材を有し、前記第1ウインドウシェードを前記巻取軸部材に引出収納可能に巻取る第1巻取装置と、
前記第2ウインドウを遮蔽可能な第2ウインドウシェードと、
前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸に対して交差する姿勢で配設され、前記第2ウインドウシェードを引出収納可能に巻取る第2巻取装置と、
前記第2ウインドウシェードの引出収納方向に沿って配設可能な案内経路部材と、その案内経路部材に沿って移動可能に支持された可動部材とを有する案内支持機構と、
前記可動部材が連結されると共に、前記案内経路部材に沿って移動可能に配設され、前記案内経路部材内に沿った移動により前記可動部材を前記案内経路部材に沿って移動させるラック部材と、
前記第1巻取装置の巻取軸部材に対して連動して回転可能に連結された第1傘歯車と、前記第1傘歯車と噛合い、前記ラック部材と連動可能に配設された第2傘歯車とを有し、前記第1巻取装置の巻取軸部材の回転を、前記ラック部材を前記案内経路部材に沿って移動させる力として伝達する中継伝達機構と、
を備える車両用ウインドウシェード装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ウインドウシェード装置であって、
前記第1傘歯車と前記第2傘歯車とが、それぞれの回転軸を非直交姿勢に配設した姿勢で噛合うように配設され、
前記ラック部材が、前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸に対して傾く方向に沿って移動可能に設けられている、車両用ウインドウシェード装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用ウインドウシェード装置であって、
前記第2傘歯車に、その回転軸と一致する回転軸を有する平歯車が一体化され、
前記平歯車が前記ラック部材と噛合うように配設されている、車両用ウインドウシェード装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ウインドウシェード装置であって、
前記第1巻取装置の巻取軸部材の軸からずれた位置で、前記平歯車と前記ラック部材とが噛合している、車両用ウインドウシェード装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車両用ウインドウシェード装置であって、
前記第1傘歯車は、前記第1巻取装置の巻取軸部材に直接連結されている、車両用ウインドウシェード装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の車両用ウインドウシェード装置であって、
前記ラック部材のうち前記案内経路部材から延出した部分を案内する逃し用案内部材が、前記第1巻取装置に沿って設けられている、車両用ウインドウシェード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−255844(P2011−255844A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133847(P2010−133847)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)