説明

車両用シートテーブル

【目的】 車室側面に沿うように横倒し収納するシートに付設され、シートと一体に収納可能なシートテーブルを実現することである。
【構成】 車室側面に沿うように横倒し収納するシートS1において、シートクッション2を車室中央側の端縁位置で支持するシートレッグ1を、シートクッション2の底面に沿う方向に回動可能となし、上記シートレッグ1に、その側面に固定した取付けアーム4と、該取付けアーム4に着脱可能に連結されて起立方向に伸びる中継アーム5と、該中継アーム5の先端に着脱または回転自在に支持した天板6とよりなるテーブルを付設し、シートS1横倒し収納時にシートレッグ1を回動させて、テーブルを車室側面に沿う方向に保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】車両用シートテーブル、特に車室側面に沿うように横倒し収納可能とした車両用シートに付設するテーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、飲食等の便をはかるためにテーブルを付設したシートが用いられている。例えば、実公平4─14279号公報に開示された図8に示すシートでは、シートクッション2を、その下方両側縁で支持する一対のシートレッグ1の側面に、テーブル支持アーム4Aを介して天板6を支持せしめ、アーム4Aを回動させてテーブルをシートバック3の背面に収納する構造としてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、ワゴン車などでは、荷室部の収納スペース向上のため、シートバックを後方へ水平にリクライニングしてシートクッションと一平面状をなし、車室側面に沿うように横倒し収納するシートがある。この種のシートにテーブルを付設すると、テーブルが収納時の邪魔となる。
【0004】そこで、本発明は車室側面に沿うように横倒し収納するシートに対して付設され、シート収納時の邪魔にならず、かつ制限された車室スペースにおいて使用便利なシートテーブルを実現することを課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】図1に示すように、車室側面に沿うように横倒し収納可能としたシートS1において、シートクッション2を車室中央側の端縁位置で支持するシートレッグ1を、シートクッション2の底面に沿う方向に回転可能となし、上記シートレッグ1に、その側面に固定した取付けアーム4と、該取付けアーム4に着脱可能に連結されて起立方向に伸びる中継アーム5と、該中継アーム5の上端に着脱または回転自在に支持された天板6とよりなるテーブルを付設する(請求項1)。
【0006】上記天板部6を、その中心より偏心した位置で中継アーム5により支持せしめる(請求項2)。
【0007】図6に示すように上記取付けアーム4”の前端に上下方向に延びる延出アーム41を形成し、該延出アーム41の上端に上記中継アーム5を着脱可能に連結するとともに、下端に上記延出アーム41を床面に支持する台板9を回動可能に取り付ける(請求項3)。
【0008】
【作用】シートS1を横倒し収納するとき、シートレッグ1を、シートクッション2の底面に沿う方向に回動させると、取付けアーム4および中継アーム5は、起立状態を保ち、車室側面に沿う姿勢となる。天板6を、その中心より偏心した位置で支持せしめることで、例えば、天板6が長方形の場合、テーブルの収納位置に応じて、また使用時には周囲の障害物に対応して、天板6を都合のよい方向に変えることができる。また延出アーム41の下端を台板9により床面に支持することで、使用時に天板6を安定にする。
【0009】
【実施例】図1に示す実施例において、シートS1は、車室側面側でシートクッション2を横倒し可能に軸支する図略の支持機構と、シートクッション2の車室中央側の端縁に設けたシートレッグ1とにより支持されている。上記シートレッグ1はパネル材よりなり、シートクッション2の車両前後方向に設けてあり、その上縁がシートクッション2のフレームに回動自在に軸支されている。シートS1のシートバック3はリクライニング式で、その最大リクライニング位置はシートクッション2と一平面となる位置としてある。そして、シートS1は、このシートバック3を最大リクライニング位置とし、横倒し状に回動させ、車室側面に沿い収納される。
【0010】図1および図2に示すように、上記シートレッグ1には側面に取付けアーム4が固定されている。該取付けアーム4は、パイプ材をほぼL字形に曲成したもので、基端部がブラケット7、ボルトB、およびナットNによりシートレッグ1の側面に固定してある。起立部の先端は小径に加工してあり、その位置はシートクッション2の座面2aよりも低くしてある。
【0011】上記取付けアーム4の先端には、取付けアーム4と同径のパイプ材からなる直管状の中継アーム5が、着脱自在に連結し起立方向に伸びている。取付けアーム4と中継アーム5との連結部は、小径とした取付けアーム4の先端に中継アーム5の下端を嵌挿し、中継アーム5の下端に設けられたウエルドナット51に化粧ボルト8を締め付け固定する。
【0012】上記中継アーム5の上端には、天板6が着脱自在に連結してある。該天板6は長方形板状をなす化粧合板で、その裏面の一隅付近に中継アーム5とほぼ同径のパイプ61を突設し、小径とした下端を中継アーム5に嵌挿し、化粧ボルト8により締め付け固定する。
【0013】テーブルを立てたままでシートを収納するとき、シートS1を車室側面に横倒しするとともに、シートレッグ1をシートクッション2の底面に沿うように回動させる。これにより取付けアーム4および中継アーム5は垂直となり、車室側面に沿う状態となって邪魔にならない。なお、このとき化粧ボルト8を緩めて、天板6を90度回転させて長辺が車室側面に沿うようにすれば、車室側面上部における天板6の突出度は小さくなる。
【0014】シート使用時においてテーブルを使用しないときは、中継アーム5を取付けアーム4より取り外す。勿論この状態でシートS1を横倒し収納することができる。取り外された中継アーム5および天板6を他の箇所に格納するとき、これらを分離してもよい。
【0015】このようにテーブルは取り外し自在であり、かつ取り付け状態でも、シートS1とともに車室側壁沿いに収納できる。またテーブル不使用時、取付けアーム4の先端は座面より下位置であるから邪魔にならない。
【0016】この種のシートS1は、通常、ワゴン車の最後尾に設置されることが多く、またシートS1の前方に設置されるシートは、リクライニングおよび方向転換の可能な回転式シートの場合が多い。
【0017】図3に示すようテーブル付きシートS1前方のシートS2のシートバック3を最大にリクライニングして、シートS1着座者がシートS2のシートバック3に脚を乗せたときでも、取付けアーム4および中継アーム5を、シートS1の直前位置に起立するようにすれば、テーブルを使用することが可能となる。
【0018】また図4(A)に示すように、偏心位置で回動自在に支持せしめた天板6は、シートS1、S2のレイアウトに合わせることができる。例えば、テーブルを設けたままでも、長方形の天板6を横長となる方向または後方へ長くなる方向に回動すれば、シートS2の回動動作に支障を来すことなく、その操作を行うことができる。また同様に、図4(B)に示すように、前方シートS2のシートバック3をリクライニングすることも可能である。さらに図4(C)に示すようにシートS1、S2の向き合った対座時、天板6を都合のよい方向に回動させることで、前後の双方の乗客がで天板6を共用することができる。
【0019】図5に本発明の他の実施例を示す。横倒し収納可能なシートにおいて、図5(A)に示すように、パイプ材からなるシートレッグ1’を設けたものがある。該シートレッグ1’は、パイプ材をほぼU字形に曲成し、その両先端をシートクッション2の車両中央寄りの側縁に回動自在に軸支せしめてあり、シートS1の横倒し収納時には、シートクッション2の底面に沿って重合収納される。直管状のパイプ材からなる取付けアーム4’を、シートレッグ1’の前方の起立方向レッグ部に、ブラケット70a,70bを介して固定する。即ち、取付けアーム4’の下端が溶接されたブラケット70aと、これと対向するブラケット70bとでシートレッグ1’を挟み、両ブラケット70a,70bをボルトBおよびナットNで締め付け固定するとともに、ビスVによりシートレッグ1’に対してブラケット70aを廻り止めする。他の構造および作動は先の実施例と実質的に同じであり説明を省略する。
【0020】図6に本発明の更に他の実施例を示す。本実施例では、パネル材よりなるシートレッグ1に、延出アーム41を有する取付けアーム4”を固定する。該取付けアーム4”は、パネル材のブラケット70と、その前端に上下方向に延びる直管状のパイプ材からなる延出アーム41とを溶接した構造とし、上記ブラケット70をシートレッグ1に重合するとともに図略のボルト、ナットにより締め付け固定する。
【0021】上記延出アーム41の上端には、中継アーム5が着脱可能に取付けられる。さらに上記延出アーム41の下端には、台板9が水平方向に回動自在に取り付けられている。該台板9は長方形状をなす長手方向両側縁にフランジを形成したパネル材で、その上面中央付近に延出アーム41とほぼ同径のパイプ91を突設し、小径とした上端を延出アーム41の下端に嵌挿する。上記パイプ91の小径とした上端にはネジ孔92が設けてあり、延出アーム41の下端に設けた長孔42を介してビスVをねじ込み、台板9を係止する。台板9は上記長孔42により、水平方向に回動可能である。また台板9の上面両側にそれぞれウエルドナット93が設けてあり、その下方より高さ調整ネジ94をねじ込み、シートS1の使用時に台板9を床面と当接させる。
【0022】シートS1は一般に、使用時にシートレッグ1の後方位置で床面に固定装置により着脱自在に固定される。従って、シートレッグ1の前方は床面に対して振動が起こる。その振動が取付けアーム4、中継アーム5を介して天板6に伝わり、天板6を揺らす恐れがある。そこで天板6の支軸の延長である延出アーム41の下端に台板9を設け、台板9が床面と当接し、延出アーム41、中継アーム5、天板6を床面で支持することにより、シートレッグ1の前方で起こる振動は防止され、天板6の揺れを防止することができる。さらに台板9は、シート横倒し収納時において、シートクッション底面に沿うよう90度回転させれば、突出度を少なくすることができる。他の構造および作動は上述の実施例と実質的に同じである。
【0023】図7に示すように、パイプ材からなるシートレッグ1’に固定した取付けアーム4’においては、該取付けアーム4’の前端の上下方向に延びる延出アーム41の下端に台板9を設ける。
【0024】
【発明の効果】以上の説明のように本発明の車両用シートテーブルは、車室側面に沿って横倒し収納可能なシートにおいて、使用時の状態のままで、シートと一体に車室側面に沿って収納することができる。また、天板が長方形状などの場合に、収納時および使用時において、可及的にスペースを取らないような位置とすることができる。さらにテーブル使用時の天板6の揺れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1のシートテーブルを付設した横倒し収納式車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明のシートテーブルの構成を示す図である。
【図3】本発明のシートテーブルを付設した横倒し収納式車両用シートと、前席シートのシートバックをリクライニングしたときの位置関係を示す図である。
【図4】図4(A)(B)(C)は本発明のシートテーブルと、前席シート、前席シートのシートバック、および回転式前席シートの着座者との位置関係を示す図である。
【図5】図5(A)は本発明の第2のシートテーブルを付設した横倒し収納式シートの側面図、図5(B)は図5R>5(A)のB−B線位置での取付けアーム固定部材の分解断面図である。
【図6】図6(A)は本発明の第3のシートテーブルを付設した横倒し収納式車両用シートの斜視図、図6(B)は台板の拡大斜視図である。
【図7】図7は本発明の第4のシートテーブルを付設した横倒し収納式シートの側面図である。
【図8】従来のテーブル付き車両用シートの斜視図である。
【符号の説明】
S1 テーブル付きシート
S2 前席シート
1,1’ シートレッグ
2 シートクッション
3 シートバック
4,4’,4” 取付けアーム
41 延出アーム
5 中継アーム
6 天板
7,70,70a,70b ブラケット
9 台板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車室側面に沿うように横倒し収納可能としたシートにおいて、シートクッションを車室中央側の端縁位置で支持するシートレッグを、シートクッションの底面に沿う方向に回転可能となし、上記シートレッグに、その側面に固定した取付けアームと、該取付けアームに着脱可能に連結されて起立方向に伸びる中継アームと、該中継アームの上端に着脱または回転自在に支持された天板とよりなるテーブルを付設した車両用シートテーブル。
【請求項2】 上記天板部を、その中心より偏心した位置で中継アームに支持せしめた請求項1記載の車両用テーブル。
【請求項3】 上記取付けアームの前端に上下方向に延びる延出アームを形成し、該延出アームの上端に上記中継アームを着脱可能に連結するとともに、下端に上記延出アームを床面に支持する台板を回動可能に取り付けた請求項1記載の車両用シートテーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平7−300040
【公開日】平成7年(1995)11月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−114595
【出願日】平成6年(1994)4月30日
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)