説明

車両用シート

【課題】導電性を有するシートカバーと接続部材の良好な電気的な接続状態を確保することが可能な車両用シートを提供する。
【解決手段】導電性を有するシートカバー10と、このシートカバー10が電気的に接続される接続部材20と、前記シートカバー10と前記接続部材20の接続部分が内側に引き込まれる溝31が形成されたシートパッド30と、前記溝31の幅を調整可能な溝幅調整機構40と、を備える車両用シート1とした。溝幅調整機構40を構成する第一の締付部材42は、溝31の深さ方向に幅広であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有するシートカバーを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座面の加熱する発熱線や、乗員が着座しているか否か(静電容量)を検出するため電線といった導電性部材が配された導電性を有する車両用シートのシートカバーが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特許文献1に記載されるように、シートカバー(導電性部材)は、その端部が導電性を有する接続部材に接続され、この接続部材を介して電源等と電気的に接続される。特許文献1に記載の車両用シートでは、この接続部材がシートパッドに形成された吊り溝内に配される。このように吊り溝内に接続部材を配した構成とすることにより、シートの座り心地を低下させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−94283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような導電性を有するシートカバーが接続部材に電気的に接続される構造において、両者の良好な電気的な接続状態を確保することが求められている。
【0005】
上記実情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、導電性を有するシートカバーと、それに接続される接続部材の良好な電気的な接続状態を確保することが可能な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる車両用シートは、導電性を有するシートカバーと、このシートカバーに電気的に接続される接続部材と、前記シートカバーと前記接続部材の接続部分が内側に引き込まれる溝が形成されたシートパッドと、前記溝の幅を調整可能な溝幅調整機構と、を備えることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、幅調整機構によって溝の幅を小さくすれば、溝の幅方向両側面によってシートカバーと接続部材の接続部分が挟まれた状態となる。つまり、シートカバーと接続部材の接続部分がより密着した状態となるから、両者の電気的接続の信頼性が向上する。
【0008】
前記溝幅調整機構は、前記溝の幅方向における一側および他側の外側を通り、前記溝の深さ方向に幅広である第一の締付部材を有し、前記第一の締付部材における前記溝の一側の外側を通る部分と前記溝の他側の外側を通る部分との間隔を小さくすることにより、前記溝の一側と他側が近づき、前記溝の幅が小さくなるように構成されていればよい。
【0009】
上記構成によれば、第一の締付部材を操作し溝の幅を小さくすることにより、溝の幅方向両側面によってシートカバーと接続部材の接続部分が挟まれた状態となる。第一の締付部材は溝の深さ方向に幅広であるから、シートカバーと接続部材の接続部分をより広い領域で挟むことができる(局所的に挟まれた状態となることを防止できる)。したがって、シートカバーと接続部材の電気的接続の信頼性が向上する。
【0010】
前記溝幅調整機構は、前記溝の幅方向両側に設けられる板状の挟持部材と、この板状の挟持部材の外側を通る第二の締付部材と、を有し、前記第二の締付部材における前記挟持部材の一方の外側を通る部分と前記挟持部材の他方の外側を通る部分との間隔を小さくすることにより、前記挟持部材の一方と他方が近づき、前記溝の幅が小さくなるように構成されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、溝の幅、すなわち挟持部材同士の間隔を小さくすることにより、板状の挟持部材が設けられた溝の幅方向両側面によってシートカバーと接続部材の接続部分が挟まれた状態となるから、両者の電気的接続の信頼性が向上する。挟持部材同士の間隔は、第二の締付部材の操作によって調整することができるため、作業性にも優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる車両用シートによれば、溝の幅を調整可能な溝幅調整機構により溝の幅を小さくし、溝の幅方向両側面によってシートカバーと接続部材の接続部分を挟むことにより、両者の電気的な接続状態を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートの外観斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートが備えるメインカバーと接続部材の組立体の正面図、図2(b)はメインカバーと接続部材の組立体の断面図(図2(a)のB−B線断面図)、図2(c)は接続部材の断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートが備えるシートパッドおよびそれに組み込まれた溝幅調整機構の正面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートが備える溝幅調整機構(第一の締付部材)の外観斜視図である。
【図5】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートが備えるシートパッドに形成された吊り溝付近の断面図(図1のA−A線断面図)であり、図5(a)が第一の締付部材によって吊り溝が締め付けられる前の状態を示し、図5(b)が第一の締付部材によって吊り溝の幅が小さくなるように締め付けられた状態を示している。
【図6】本発明の第二の実施形態にかかる車両用シートが備えるシートパッドおよびそれに組み込まれた溝幅調整機構の正面図である。
【図7】本発明の第二の実施形態にかかる車両用シートが備えるシートパッドに形成された吊り溝付近の断面図(図1のA−A線断面図)であり、図7(a)が第二の締付部材によって吊り溝が締め付けられる前の状態を示し、図7(b)が第二の締付部材によって吊り溝の幅が小さくなるように締め付けられた状態を示している。
【図8】本発明の第二の実施形態にかかる車両用シートの変形例(固定部材を用いた構成)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。第一の実施形態にかかる車両用シート1は、シートカバー10と、接続部材20と、シートパッド30と、溝幅調整機構40と、を備える。以下各構成について詳細に説明する。なお、車両用シート1は、一般的な車両用シート1と同様にシートクッション91(着座部)およびシートバック92(背もたれ部)を備える。以下では、シートクッション91を例に各構成について説明するが、シートバック92にも同様の構成が適用可能である。
【0015】
シートカバー10(表皮)は、シートパッド30の少なくとも一部を覆うシート外観を構成する部材である。本実施形態におけるシートカバー10は、シートクッション91の幅方向中央部分を構成するメインカバー11と、このメインカバー11の幅方向外側に設けられるサイドカバー12と、を有する。メインカバー11は、複数の導電性繊維111を含む導電性を有する部材である。具体的には、各導電性繊維111が略等間隔に幅方向(シートの幅方向のこと。以下単に幅方向というときは当該方向をいうものとする)に沿うようにしてメインカバー11の本体部分に編み込まれている。なお、本発明における「導電性を有する」とは、シートカバー10が後述する接続部材20に電気的に接続される導電性材料を含むという意味であって、上記のような導電性繊維111が編み込まれた構成に限られない。例えば、カバーが導電性材料によってコーティングされてなるものであってもよい。
【0016】
各導電性繊維111の幅方向両端部は、メインカバー11の幅方向両側から突出(露出)している。メインカバー11には、この露出した端部を挟み込むように断面略「U」字状にされた接続部材20が取り付けられている(図2(a)、図2(b)参照)。接続部材20は、少なくとも一方の面が導電性を有する(以下かかる面を導電面と称する)シート部材である。この導電性のシート部材としては、導電性材料(例えば銅)がシート状に形成された部材や、導電性材料で形成された糸21を含む導電性布帛が例示できる。導電性布帛の一例としては、図2(c)に示すような縦糸に導電性材料で形成された糸21を用い、横糸に合成樹脂等の非導電性材料で形成された糸22を用いた織物が挙げられる。図示されるように、一方側の面(図2(c)では上側の面)に導電性材料で形成された糸21がより多く露出するようにすれば、当該一方側の面が導電面として機能する。このような接続部材20が、その導電面で導電性繊維111の両端部を挟み込むようにしてメインカバー11に取り付けられる(例えば縫い付けられる)ことにより、導電性繊維111と接続部材20の導電面が接触した状態となる。このようにしてシートカバー10(メインカバー11)と接続部材20が電気的に接続される。
【0017】
サイドカバー12は、メインカバー11の幅方向一方側および他方側に縫い付けられている。詳しくは、メインカバー11における接続部材20が取り付けられた部分よりも内側に縫い付けられている。また、サイドカバー12とメインカバー11が縫い付けられるとともに、シートカバー10にカバー側ワイヤ14を保持する吊り布13が縫い付けられる。カバー側ワイヤ14は、後述するパッド側ワイヤ32に結束される部材である。吊り布13は、断面で見て袋状になるように両端部をつなぎ合わせるようにしてメインカバー11とサイドカバー12の縫合部分に縫い付けられている。この袋状の吊り布13内にカバー側ワイヤ14が収容されている。つまり、カバー側ワイヤ14は、メインカバー11とサイドカバー12の縫合部分に沿うようにしてシートカバー10に取り付けられている。吊り布13の先端側(袋の底側)には、複数の貫通孔(図示せず)が形成されている。当該貫通孔が形成された箇所においてカバー側ワイヤ14が露出している。
【0018】
シートパッド30は、発泡体等で形成されたシートのクッション材である。このシートパッド30には、略前後方向(シート(車両)の前後方向のこと。以下単に前後方向というときは当該方向をいうものとする)に沿う吊り溝31(本発明における溝に相当する)が形成されている。本実施形態では、シートパッド30の前後方向に沿って二本の吊り溝31が形成されており、この吊り溝31の間の部分がメインカバー11に覆われ、各吊り溝31の外側の部分がサイドカバー12に覆われる。
【0019】
シートパッド30には、吊り溝31の底側にパッド側ワイヤ32が埋め込まれている。吊り溝31は、相対的に深い部分(図示せず)が複数形成されており、当該箇所でパッド側ワイヤ32が露出している。このパッド側ワイヤ32が露出する部分は、上記吊り布13に収納されたカバー側ワイヤ14が露出する部分に合わせて(両ワイヤの露出位置が一致するように)形成されている。この露出した部分同士が結束部材Hによって結束されることにより、メインカバー11とサイドカバー12の縫合部分が吊り溝31に引き込まれた状態で、シートカバー10がシートパッド30に取り付けられる。
【0020】
溝幅調整機構40は、吊り溝31の幅を調整するための構成である。本実施形態における溝幅調整機構40は、図3〜図5に示すように、第一の締付部材42を有する(第二の実施形態おける「第二の締付部材41」と区別するため「第一の締付部材42」と称する)。第一の締付部材42は、吊り溝31の幅方向における一側および他側の外側を通り、かつ、シートパッド30の前側でUターンさせるように環状に配された紐状の部材である。具体的には、シートパッド30の吊り溝31の外側には、吊り溝31に沿う空間34(穴)が形成されており、その空間内に第一の締付部材42が配されている。この第一の締付部材42は、シートパッド30の後方で外に引き出されている。また、第一の締付部材42は、後述する第二の実施形態における第二の締付部材41と異なり、溝の深さ方向に幅広である。この幅の大きさは、特に限定されるものではないが、できるだけ大きいことが好ましい。上記シートパッド30に形成された空間は第一の締付部材42が通る大きさに形成されているため、第一の締付部材42の幅を大きくすることによってかかる空間が大きくなり、シートパッド30が容易に損傷してしまうことのない範囲であればよい。
【0021】
第一の締付部材42のパッドの外に引き出された部分には、任意の位置で紐を固定すること(紐の締付状態を調整すること)ができる紐固定具421が取り付けられている。このような紐固定具421としては、例えば実公平1−39449号公報に記載されるものと同種のものを用いることができる。これにより、任意の位置で第一の締付部材42を固定すること(締付状態を調整すること)ができる。
【0022】
溝幅調整機構40の作用は次の通りである。上述したように、シートカバー10におけるメインカバー11とサイドカバー12の縫合部分は、カバー側ワイヤ14とパッド側ワイヤ32が結束されることにより、シートパッド30に形成された吊り溝31に引き込まれる。この縫合部分よりも先端側には、メインカバー11の導電性繊維111に接触して取り付けられた接続部材20が取り付けられている。すなわち、接続部材20は吊り溝31内に位置する。
【0023】
接続部材20が吊り溝31内に位置した状態で、シートパッド30に環状に設けられた第一の締付部材42をその環の大きさが小さくなるように操作する。吊り溝31の幅を小さくさせると、吊り溝31内に位置する接続部材20が吊り溝31の両側壁に挟まれる。本実施形態のように、導電性繊維111を挟み込むように接続部材20が断面略「U」字状に取り付けられる構成であれば、吊り溝31の両側壁に押され導電性繊維111の一方側に位置する導電面と導電性繊維111の他方側に位置する導電面が近づく。つまり、導電性繊維111が、一方側に位置する導電面と他方側に位置する導電面に挟まれて両導電面に密着した状態となる。この状態で上記紐固定具421により第一の締付部材42は固定される。
【0024】
このように、吊り溝31の内壁面によって接続部材20が挟まれた状態となる。第一の締付部材42は吊り溝31の深さ方向に幅広であるから、吊り溝31の内壁面の大部分で接続部材20を挟み込むことができる。つまり、吊り溝31の深さ方向に幅広である第一の締付部材42を用いることにより、面と面との間に接続部材20を挟み込むことができるから、シートカバー10(導電性繊維111)と接続部材20の電気的接続の信頼性が向上する。
【0025】
この第一の実施形態において、シートパッド30の前側に第一の締付部材42を支持する支持部材42aが設けられていればよい(図3参照)。支持部材42aは、環状である第一の締付部材42の内側に配されるピン状の部材である。本実施形態では、第一の締付部材42のシートパッド30の前側でUターンさせた部分を支持するように配される。第一の締付部材42を吊り溝31の幅を小さくする方向に締め付けると、第一の締付部材42が吊り溝31の深さ方向に幅広であるため、シートパッド30の前側の部分が第一の締付部材42に引っ張られて潰れてしまうおそれがある。上記のような支持部材42aを設ければ、第一の締付部材42の引っ張りによるシートパッド30の潰れの発生を防止することができる。
【0026】
次に第二の実施形態にかかる車両用シート2について、図6、図7を参照して第一の実施形態と異なる点(溝幅調整機構40の構成)を中心に説明する。
【0027】
本実施形態の溝幅調整機構40は、挟持部材43および第二の締付部材41(第一の実施形態おける「第一の締付部材42」と区別するため「第二の締付部材41」と称する)を有する。挟持部材43は、吊り溝31の幅方向両側に設けられる硬質材料で形成された板状の部材である。本実施形態では、挟持部材43が吊り溝31の内壁の一部を構成するように各吊り溝31に二つずつ設けられている(以下、内側に位置する挟持部材43を一方の挟持部材431とし、外側に位置する挟持部材を他方の挟持部材432として区別して称することもある)。挟持部材43とシートパッド30は強固に接合されており、挟持部材43が互いに近づく方向に移動するとその周囲のシートパッド30が引っ張られて変形する。
【0028】
第二の締付部材41は、各吊り溝31に設けられた挟持部材43の外側を通る紐である。具体的には、挟持部材43の外側を通り、かつ、シートパッド30の前側でUターンさせるように環状に配された紐状の部材である。この第二の締付部材41は、シートパッド30の後方で外に引き出されている。シートパッド30における挟持部材43の外側には、挟持部材43に沿う空間33(穴)が形成されており、その空間内に第二の締付部材41が配されている。第二の締付部材41のパッドの外に引き出された部分には、第一実施形態で説明したものと同種の紐固定具411が取り付けられている。
【0029】
溝幅調整機構40の作用は次の通りである。上述したように、シートカバー10におけるメインカバー11とサイドカバー12の縫合部分は、カバー側ワイヤ14とパッド側ワイヤ32が結束されることにより、シートパッド30に形成された吊り溝31に引き込まれる。この縫合部分よりも先端側には、メインカバー11の導電性繊維111に接触して取り付けられた接続部材20が取り付けられている。すなわち、接続部材20は吊り溝31内に位置する。
【0030】
接続部材20が吊り溝31内に位置した状態で、シートパッド30に環状に設けられた第二の締付部材41をその環の大きさが小さくなるように操作する。換言すれば、第二の締付部材41における一方の挟持部材431の外側を通る部分と、他方の挟持部材432の外側を通る部分との間隔が小さくなるように操作する。そうすると、かかる一方側および他方側に位置する第二の締付部材41に押され、一方の挟持部材431と他方の挟持部材432が近づく方向に移動する。つまり、吊り溝31がその幅を小さくするように変形する。
【0031】
このように溝幅調整機構40によって吊り溝31の幅を小さくし、吊り溝31の両側壁を構成する挟持部材43で接続部材20を挟むことにより、導電性繊維111と接続部材20を従来よりも強く密着させることができる。したがって、シートカバー10(導電性繊維111)と接続部材20の電気的接続の信頼性向上、電気抵抗の低減につながる。
【0032】
次に、この第二の実施形態にかかる車両用シート2の変形例について説明する。この変形例にかかる車両用シートは、第二の実施形態にかかる車両用シート2の各構成要素に加え、図8に示されるような固定部材41aを備えるものである。
【0033】
固定部材41aは、一方の挟持部材431と他方の挟持部材432を挟む。具体的には、固定部材41aは第二の締付部材41の下方に設けられ、一方の挟持部材431と他方の挟持部材432の下方側を挟む。本実施形態における固定部材41aは、図示されるような断面略「U」字型の部材である。シートパッド30には、かかる固定部材41aを挿入することができる穴(空間)が形成されている。吊り溝31の幅を小さくするように第二の締付部材41を操作し、吊り溝31の両側壁(挟持部材43)で接続部材20を挟み込んだ状態とした後、固定部材41aを挿入し、一方の挟持部材431と他方の挟持部材432を挟む。つまり、固定部材41aは、シートパッド30の弾性により、吊り溝31が元の大きさに戻ろうとする方向に移動しようとする挟持部材43を幅方向から押さえ込む役割を果たす。
【0034】
より詳しくは、第二の締付部材41のような細長い紐で挟持部材43を締め付けると、締め付けられた部分から離れた部分がシートパッド30の弾性により離れてしまうおそれがある(挟持部材43が断面略「ハ」の字型になってしまい、面と面との間に接続部材20が挟まれた状態とすることができないおそれがある)ところ、上記固定部材41aを用いれば、挟持部材43が離れてしまうことを防止できる(挟持部材43が平行になる)。つまり、吊り溝31の内壁面の大部分(挟持部材43の大部分)で接続部材20を挟み込むことができるから、シートカバー10(導電性繊維111)と接続部材20の電気的接続の信頼性が向上する。
【0035】
また、固定部材41aにおける一方の挟持部材431の外側に位置する部分と、他方の挟持部材432の外側に位置する部分との間隔を小さくすればするほど、吊り溝31の内壁面で接続部材20を挟み込む力を大きくすることができる。つまり、シートカバー10(導電性繊維111)と接続部材20の電気的接続の信頼性がさらに向上する。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0037】
上記第一の実施形態および第二の実施形態において、吊り溝31の内壁面には、摩擦を高めるための処理が施されているとよい。図5に示した構成のように、シートパッド30(クッション材)が吊り溝31の内壁面を構成するものであれば、当該吊り溝31の内壁面を構成する部分にこのような処理を施せばよい。例えば、シートパッド30における吊り溝31の内壁面を構成する部分に直接凹凸を形成してもよいし、ゴムシートのような摩擦力のあるシート状の部材を吊り溝31の内壁面に設けてもよい。一方、図7や図8に示した構成のように、挟持部材43が吊り溝31の内壁面を構成するものであれば、二つの挟持部材43の対向する面にこのような処理を施せばよい。例えば、挟持部材43の当該面にローレット加工のような凹凸を形成したりすればよい。
【0038】
また、第一の実施形態に用いられる第一の締付部材42は、吊り溝31の深さ方向に幅広であることを説明したが、この幅広の締付部材を、挟持部材43を用いた第二の実施形態に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,2 車両用シート
10 シートカバー
20 接続部材
30 シートパッド
31 吊り溝
40 溝幅調整機構
42 第一の締付部材
41 第二の締付部材
43 挟持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するシートカバーと、
このシートカバーに電気的に接続される接続部材と、
前記シートカバーと前記接続部材の接続部分が内側に引き込まれる溝が形成されたシートパッドと、
前記溝の幅を調整可能な溝幅調整機構と、
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記溝幅調整機構は、
前記溝の幅方向における一側および他側の外側を通り、前記溝の深さ方向に幅広である第一の締付部材を有し、
前記第一の締付部材における前記溝の一側の外側を通る部分と前記溝の他側の外側を通る部分との間隔を小さくすることにより、前記溝の一側と他側が近づき、前記溝の幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記溝幅調整機構は、
前記溝の幅方向両側に設けられる板状の挟持部材と、
この板状の挟持部材の外側を通る第二の締付部材と、を有し、
前記第二の締付部材における前記挟持部材の一方の外側を通る部分と前記挟持部材の他方の外側を通る部分との間隔を小さくすることにより、前記挟持部材の一方と他方が近づき、前記溝の幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106872(P2013−106872A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255840(P2011−255840)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)