説明

車両用ドア構造

【課題】スイング開閉式のドアパネルが開かれたときに、スライド開閉式のドアパネルがスイング開閉式のドアパネルから外れることを防止できる車両用ドア構造を提供する。
【解決手段】車両用ドア構造10は、スライドドアパネル14と、スイングドアパネル16と、スライド機構18と、ヒンジ機構20とを備えており、スイングドアパネル16が開かれたときにスライドドアパネル14をスイングドアパネル16に係止するロック機構22を備え、ロック機構22は、スイングドアパネル16に設けられ、スイングドアパネル16が開かれたときにスライドドアパネル14に向かって突出する係止部50と、スライドドアパネル14に設けられ、スイングドアパネル16が開かれたときに係止部50に係止される開口部60と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関するものであり、特に、スライド開閉式のドアパネルとスイング開閉式のドアパネルとを組み合わせた複合ドアパネルを有する車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドア構造として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の車両用ドア構造は、第1ドアパネルと第2ドアパネルとを有しており、第1ドアパネルが車体及び第2ドアパネルに対して摺動可能に構成されていると共に、第2ドアパネルが車体に対して揺動可能に構成されている。また、上記従来技術のような車両用ドア構造では、スライド開閉式のドアパネルにおけるスライド開閉時の安定性を向上させる等の理由により、スライド開閉式のドアパネルのスライド開閉時には車両にてスライド開閉式のドアパネルを支持し、スライド開閉式のドアパネルが全開状態となったときにスライド開閉式のドアパネルの車両による支持を解除することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、スライド開閉式のドアパネルの開閉時にスライド開閉式のドアパネルを車両によって支持するような車両用ドア構造では、スイング開閉式のドアパネルを開閉するときの安全性を考慮するため、また、スイング開閉式のドアパネルを揺動させる揺動部材への負荷を下げるためにスイング開閉式のドアパネルを開閉するときには、スライド開閉式のドアパネルがスイング開閉式のドアパネルに重なった状態を維持することが好ましい。しかしながら、スライド開閉式のドアパネルのハンドルは操作可能とされているため、スイング開閉式のドアパネルを開けた状態でスライド開閉式のドアパネルのハンドルを誤って操作すると、スライド開閉式のドアパネルとスイング開閉式のドアパネルとの固定が解除される。これにより、スライド開閉式のドアパネルが車両によって支持されず、スライド開閉式のドアパネルがスイング開閉式のドアパネルから外れるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スイング開閉式のドアパネルが開かれたときに、スライド開閉式のドアパネルがスイング開閉式のドアパネルから外れることを防止できる車両用ドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用ドア構造は、車体に設けられた第1開口部に配設され、当該第1開口部を開閉する第1ドアパネルと、第1開口部に連続して並設された第2開口部に配設され、当該第2開口部を開閉する第2ドアパネルと、第1ドアパネルを車体及び第2ドアパネルに対して摺動可能に取り付け、第1開口部を閉じる閉位置と第1開口部を全開にすると共に第1ドアパネルが第2ドアパネルと重なる開位置との間で第1ドアパネルを移動させる摺動機構と、第2ドアパネルを車体に対して揺動可能に支持し、第1ドアパネルが開位置のときに第2ドアパネルを揺動可能とする揺動機構と、を備える車両用ドア構造であって、第2ドアパネルが開かれたときに第1ドアパネルを第2ドアパネルに係止する係止機構を備え、係止機構は、第2ドアパネルに設けられ、当該第2ドアパネルが開かれたときに第1ドアパネルに向かって突出する係止部と、第1ドアパネルに設けられ、第2ドアパネルが開かれたときに係止部に係止される被係止部と、から構成されていることを特徴とする。
【0007】
この車両用ドアパネルでは、第2ドアパネルが開かれたときに第1ドアパネルを第2ドアパネルに係止する係止機構を備えており、係止機構は、第2ドアパネルが開かれたときに第1ドアパネルに向かって突出する係止部と、第1ドアパネルに設けられた被係止部とから構成されている。これにより、第2ドアパネルパルが開いた状態のときには、第1ドアパネルの被係止部が第2ドアパネルの係止部に係止される。したがって、第2ドアパネルの開状態においては第1ドアパネルの移動が規制されるため、スライド開閉式の第1ドアパネルがスイング開閉式の第2ドアパネルから外れることを防止できる。
【0008】
係止部は、第2ドアパネルによって第2開口部を閉じる第2ドアパネルの閉位置において車体に当接する当接部材と、第2ドアパネルに回動可能に支持され、当接部材と連動して回動する係止部材と、係止部材が回動する方向に当該係止部材を付勢する付勢部材と、を備え、係止部材は、当接部材が車体から離間したときに、第1ドアパネルに向かって回動して突出する構成であってもよい。このような構成によれば、第2ドアパネルが開かれたときに、係止部材が自動で第1ドアパネルに向かって回動して突出する。したがって、第2ドアパネルが開かれたときに、係止部により被係止部を良好に係止できる。
【0009】
係止部は、第2ドアパネルによって第2開口部を閉じる第2ドアパネルの閉位置において車体に当接する当接部材と、当接部と一体に形成されると共に、当接部材と同じ方向に延在する係止部材とから構成される突出部と、突出部を第1ドアパネルに向かって付勢する付勢部材と、を備え、突出部は、当接部材が車体から離間したときに、第1ドアパネルに向かって突出する構成であってもよい。このような構成によれば、第2ドアパネルが開かれたときに、突出部が自動で第1ドアパネルに向かって突出する。したがって、第2ドアパネルが開かれたときに、係止部により被係止部を良好に係止できる。
【0010】
被係止部は、開口部であり、係止部材が進入して係止部材が回動するにつれて連続的に間口が狭くなる形状を有していることが好ましい。これにより、係止部材が被係止部に進入するときには被係止部の間口が広いため、係止部材が被係止部材に進入し易くなっている。また、係止部材と被係止部とが当接して係合する位置では被係止部の間口が狭くなるため、第1ドアパネルが上下方向に移動した場合であっても、係止部材が被係止部から外れることを防止できる。したがって、第2ドアパネルが開かれたときに、係止部により被係止部を良好に係止できる。
【0011】
第2ドアパネルには、第1ドアパネルが開位置のときに、当該第1ドアパネルの車体の上下方向への移動を規制する規制部材が設けられていることが好ましい。このように、第1ドアパネルの上下方向の移動を規制する規制部材により、第1ドアパネルの高さ位置が所定の範囲で維持される。これにより、係止部と被係止部との所定の位置関係が維持されるため、係止部と被係止部との係合をより確実なものとすることができる。
【0012】
規制部材には、第1ドアパネルが進入する部分に、第1ドアパネルの高さ位置を補正するガイド部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、ガイド部に沿って第1ドアパネルが進入することにより、第1ドアパネルの高さ位置が徐々に所定の高さ位置に補正される。したがって、規制部材に進入してくる第1ドアパネルの上下方向の高さ位置のばらつきを、ガイド部により補正できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイング開閉式のドアパネルが開かれたときに、スライド開閉式のドアパネルがスイング開閉式のドアパネルから外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る車両用ドア構造が適用された車体を示す側面図である。
【図2】(a)はスライドドアパネルが開かれている途中の状態を示す斜視図であり、(b)はスライドドアパネルの開位置の状態を示す斜視図である。
【図3】車両用ドア構造においてスイングドアパネルが開いた状態を示す斜視図である。
【図4】スライドドアパネルとスイングドアパネルとが結合した状態を上から見た図である。
【図5】係止部を示す図である。
【図6】上部スライド部及びラッチを搭載したベースを下方から示す斜視図である。
【図7】開口部を示す図である。
【図8】ロック機構の動作を説明する図である。
【図9】(a)は規制部材を上から見た図であり、(b)は規制部材を横から見た図である。
【図10】規制部材の機能を説明する図である。
【図11】他の形態に係る係止部を示す図である。
【図12】他の形態に係る開口部を示す図である。
【図13】他の形態に係る開口部を示す図である。
【図14】他の形態に係る規制部材を示す図である。
【図15】他の形態に係る規制部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る車両用ドアパネルが適用された車両を示す側面図である。なお、以下の説明においては、「前」、「後」、「上」、「下」などの語を使用することがあるが、これは車両(自動車)の前後・上下に対応するものである。
【0017】
図1に示す車両1は、一実施形態に係る車両用ドア構造10が適用された例えばワンボックスカーである。以下の説明では、図1に示す車両1の一側面(左側面)に車両用ドア構造10を適用した一例を説明するが、同様の構成が他側面に設けられていてもよい。
【0018】
図2(a)は、スライドドアパネルが開かれている途中の状態を示す斜視図であり、図2(b)は、スライドドアパネルの開位置の状態を示す斜視図である。図3は、車両用ドア構造においてスイングドアパネルが開いた状態を示す斜視図である。図4は、スライドドアパネルとスイングドアパネルとが結合した状態を上から見た図である。
【0019】
各図に示すように、車両用ドア構造10は、フロントドアパネル12と、スライドドアパネル(第1ドアパネル)14と、スイングドアパネル(第2ドアパネル)16と、スライド機構(摺動機構)18と、ヒンジ機構(揺動機構)20と、ロック機構(係止機構)22とを含んで構成されている。
【0020】
最初に、フロントドアパネル12が配設される前方開口部24と、スライドドアパネル14及びスイングドアパネル16が配設される後方開口部26について説明する。
【0021】
前方開口部24及び後方開口部26は、車体5の一側面に設けられている。前方開口部24は、車体5の前方に設けられており、例えば運転席や助手席への乗り降りを行う部分である。フロントドアパネル12は、前方開口部24を開閉するドアパネルであり、ヒンジ機構21により車体5に対してスイング可能に設けられている。
【0022】
後方開口部26は、車体5の後方に設けられており、例えば後方座席への乗り降りや荷室への荷物の出し入れを行う部分である。後方開口部26は、ピラー27により前方開口部24と区画されている。後方開口部26は、第1開口部28と、第2開口部30とから構成されている。第1開口部28と第2開口部30とは、車体5の前後方向において連続して並設されている。第1開口部28は、後方開口部26において車体5の前方側に設けられており、第2開口部30は、後方開口部26において車体5の後方側に設けられている。
【0023】
スライドドアパネル14は、第1開口部28に配設されている。スライドドアパネル14は、第1開口部28を開閉するドアパネルである。スライドドアパネル14は、スライド機構18により、車体5及びスイングドアパネル16に対して前後方向にスライド(摺動)可能に設けられている。スライドドアパネル14にはハンドル15が設けられており、ハンドル15を操作することにより、スライドドアパネル14の開閉が行われる。
【0024】
スイングドアパネル16は、第2開口部30に配設されている。スイングドアパネル16は、第2開口部30を開閉するドアパネルである。スイングドアパネル16は、ヒンジ機構20により、車体5に対してスイング可能に設けられている。スイングドアパネル16にはハンドル17が設けられており、ハンドル17を操作することにより、スイングドアパネル16の開閉が行われる。スライドドアパネル14及びスイングドアパネル16により、後方開口部26全体が開閉される。
【0025】
スライド機構18は、スライドドアパネル14を車体5に対してスライド可能に取り付け、第1開口部28を閉じる閉位置と、第1開口部28を全開にすると共にスライドドアパネル14がスイングドアパネル16と重なる開位置との間で、スライドドアパネル14を移動させる機構である。スライド機構18は、上部スライドレール32と、下部スライドレール34と、中間スライドレール36と、上部スライド部38と、下部スライド部40と、中間スライド部42とから構成されている。
【0026】
上部スライドレール32は、第1開口部28において、車体5の上部(ルーフサイドレール)に配置されている。上部スライドレール32は、車体5の前後方向に沿って延在している。下部スライドレール34は、第1開口部28において、車体5の下部(床側)に配置されている。下部スライドレール34は、車体5の前後方向に沿って延在している。
【0027】
中間スライドレール36は、スイングドアパネル16において、外面側に配置されている。中間スライドレール36は、スイングドアパネル16において、車体5の高さ方向の略中央部分に配置されている。中間スライドレール36は、車体5の前後方向に沿って延在している。
【0028】
上部スライド部38、下部スライド部40及び中間スライド部42は、スライドドアパネル14に設けられている。図2に示すように、上部スライド部38は、スライドドアパネル14の前端側の上部に配置されている。下部スライド部40は、スライドドアパネル14の前端側の下部に配置されている。中間スライド部42は、スライドドアパネル14の前端側で高さ方向の略中央部分に配置されている。
【0029】
上部スライド部38は、ローラRを備えて構成されている。また、下部スライド部40及び中間スライド部42も同様に、図示しないローラを備えて構成されている。スライドドアパネル14は、ローラRが上部スライドレール32、下部スライドレール34及び中間スライドレール36にガイドされてスライドすることにより、車体5及びスイングドアパネル16に対してスライド可能とされている。
【0030】
このような構成を有するスライド機構18により、スライドドアパネル14は、第1開口部28を閉じる閉位置と、第1開口部28を全開にすると共にスライドドアパネル14がスイングドアパネル16の外側に位置してスイングドアパネル16と重なる開位置(図2(b))との間で、車体5の前後方向に移動自在とされている。
【0031】
具体的には、スライドドアパネル14は、閉位置においては、上部、下部及び中間スライドレール32,34,36に、上部、下部及び中間スライド部38,40,42がガイドされている。また、スライドドアパネル14は、開位置においては、上部及び下部スライドレール32,34から上部及び下部スライド部38,40が離脱し(図3参照)、中間スライドレール36に中間スライド部42のみがガイドされる。
【0032】
ヒンジ機構20は、第2開口部30(後方開口部26)において後方側に設けられている。ヒンジ機構20は、車体5の上下方向において離間して一対配置されている。ヒンジ機構20により、スイングドアパネル16は、車体5に対して揺動可能に支持されており、車体5の上下方向に沿う軸を中心として、図3に示すようにスイングして開閉する。
【0033】
スライドドアパネル14は、開位置においてスイングドアパネル16に固定される。図4に示すように、スライドドアパネル14に取り付けられるベース62には、ラッチ44が設けられており、スイングドアパネル16には、ドアパネルロックストライカ46が設けられている。スライドドアパネル14が開位置(上部及び下部スライド部38,40のローラRが上部及び下部スライドレール32,34から離脱する位置)まで到達すると、スイングドアパネル16のドアパネルロックストライカ46にスライドドアパネル14のラッチ44が連結する。これにより、スライドドアパネル14とスイングドアパネル16とが固定される。
【0034】
ここで、スライドドアパネル14のラッチ44とスイングドアパネル16のドアパネルロックストライカ46との連結は、スライドドアパネル14のハンドル15の操作によって解除できる。そのため、スイングドアパネル16が開かれたときに、スライドドアパネル14とスイングドアパネル16とが固定された状態であっても、スライドドアパネル14のハンドル15が誤って操作された場合には、ラッチ44とドアパネルロックストライカ46との固定が解除されてスライドドアパネル14がスライド可能となる。このとき、スライドドアパネル14がスイングドアパネル16に対して車体5の前方側にスライドされると、中間スライドレール36から中間スライド部42が離脱し、スライドドアパネル14がスイングドアパネル16から外れるおそれがある。
【0035】
そこで、本実施形態に係る車両用ドア構造10では、ロック機構22を備えている。ロック機構22は、上述のラッチ44及びドアパネルロックストライカ46とは別に設けられており、スイングドアパネル16が開かれたときに、スライドドアパネル14をスイングドアパネル16にロックする機構である。
【0036】
図5は、係止部を示す図である。図6は、上部スライド部及びラッチを搭載したベースを下方から示す斜視図である。
【0037】
図5及び図6に示すように、ロック機構22は、スイングドアパネル16に設けられる係止部50と、スライドドアパネル14に設けられる開口部(被係止部)60とから構成されている。係止部50は、スイングドアパネル16の前方の上端部に設けられている。係止部50は、検知ピン(当接部材)52と、スイングフック(係止部材)54と、ばね(付勢部材)56とを含んで構成されている。
【0038】
検知ピン52は、スイングドアパネル16の閉状態において車体5のボディ面5aに当接する部分である。検知ピン52は、略円柱状を成す部分を有しており、スイングドアパネル16が閉じた状態で、その先端が車体5のボディ面5aに当接する位置に配置されている。つまり、検知ピン52は、スイングドアパネル16が開けられると、車体5のボディ面5aから離間する。
【0039】
スイングフック54は、開口部60を係止する部材である。スイングフック54は、略L字形状を呈しており、基体部54aと、基体部54aの一端部側に設けられたフック部54bとから構成されている。基体部54aは、他端部側から一端部側に向かって先細りとなるテーパー形状を呈している。
【0040】
基体部54aの他端部は、軸心が車体5の上下方向に沿った軸により軸支されている。これにより、スイングフック54は、軸中心に、水平面に沿って回動可能に設けられている。スイングフック54は、図示しない連結部材により、検知ピン52と連結されており、検知ピン52と同期して動作する。すなわち、スイングフック54は、検知ピン52の動作に連動して回動する。フック部54bは、開口部60と当接する部分であり、車体5側に向かって延伸するように設けられている。フック部54bの先端は、検知ピン52の先端よりも短い。また、検知ピン52は、フック部54bより軸中心に近い位置に連結されている。
【0041】
ばね56は、スイングフック54が回動する方向にスイングフック54を付勢する部材であり、スイングフック54を車体5のボディ面5a側に付勢する。ばね56は、例えばねじりばねであり、スイングフック54の基体部54aの他端部側に配設されている。ばね56により、スイングフック54は、時計回りに回動するように常に付勢されている。
【0042】
このような構成により、係止部50では、スイングドアパネル16が開けられると、検知ピン52が車体5のボディ面5aから離間し、これと同時にスイングフック54がばね56の付勢力により車体5側に回動する。すなわち、係止部50では、スイングドアパネル16が開けられると、スイングフック54がスライドドアパネル14のブラケット64に向かって、つまり車体5側に自動で突出する。
【0043】
開口部60は、ベース62のブラケット64に設けられている。ベース62は、スライドドアパネル14に固定されており、上部スライド部38やラッチ44などを搭載している。ブラケット64は、ベース62の底面から下方に張り出しており、略L字形状を呈している。図7は、開口部を示す図である。図7に示すように、開口部60は、略台形形状を呈しており、ブラケット64の下方に開口している。
【0044】
開口部60は、スイングドアパネル16のドアパネルロックストライカ46とスライドドアパネル14のラッチ44との連結状態において、スイングフック54のフック部54bの車体5側に配置されている。すなわち、開口部60は、スイングフック54が回動したときのフック部54bの軌跡上に設けられている。
【0045】
開口部60は、スイングフック54が進入してスイングフック54が回動するにつれて連続的に間口が狭くなる形状を有している。開口部60は、第1面60aと、第2面60bと、第3面60cと、第4面60dとにより画成されている。第1面60aと第3面60cとは、対向しており、車体5の高さ方向に沿っている。第1面60aの寸法L1は、第2面60bの寸法L2よりも大きい(L1>L2)。なお、第2面60bの寸法L2は、スイングフック54の厚みよりも大きい。また、第2面60bは、第1面60aから第3面60cに向かって下り勾配で傾斜している傾斜面である。第4面60dは、第3面60cから第1面60a側に向かって下り勾配で傾斜している傾斜面である。
【0046】
第2面60bと水平方向(車体5の前後方向)とが成す角度をθ1、第4面60dと水平方向とが成す角度をθ2とすると、開口部60は、0°≦θ1,θ2≦45°の関係を満たしている。このような構成により、開口部60は、スイングフック54が回動するにつれて間口が狭くなる形状を成している。また、第4面60dが形成された部分において、ブラケット64には、第3面60cから第1面60a側に張り出すかえし部分61が形成されている。
【0047】
続いて、上述の構成を有するロック機構22の動作について、図8を参照しながら説明する。図8は、ロック機構の動作を説明する図である。スライドドアパネル14が開位置、すなわちスライドドアパネル14のラッチ44と、スイングドアパネル16のドアパネルロックストライカ46とが連結した状態では、図8(a)に示すように、検知ピン52が車体5のボディ面5aと当接している。
【0048】
この状態からスイングドアパネル16が開かれると、図8(b)に示すように、検知ピン52が車体5のボディ面5aから離間する。このとき、検知ピン52に連動するスイングフック54は、ばね56の付勢により時計周りに回動し、フック部54bがスライドドアパネル14、すなわちベース62のブラケット64に向かって突出する。そして、スイングフック54が開口部60に進入し、フック部54bがブラケット64の開口部60を係止する。
【0049】
また、図9に示すように、スイングドアパネル16には、規制部材70が配設されている。図9(a)は、規制部材を上から見た図であり、図9(b)は、規制部材を横から見た図である。図9に示すように、規制部材70は、スイングドアパネル16において、ストライカベース66上に配置されている。規制部材70は、板状部材により形成されている。
【0050】
規制部材70は、固定部70aと、規制部70bと、連結部70cと、ガイド部70dとを有している。固定部70aは、ストライカベース66に固定される部分である。規制部70bは、固定部70aよりも上方に離間し且つ固定部70aと略平行に配置されており、ベース62の上下方向の移動、ひいてはスライドドアパネル14の上下方向の移動を規制する部分である。連結部70cは、固定部70aの一端から上方に起立し、固定部70aと規制部70bとを連結する部分である。ガイド部70dは、ベース62の進入する部分である規制部70bの端部から上方に向かって傾斜している。規制部材70は、固定部70a、規制部70b、連結部70c及びガイド部70dが板金などにより一体に形成されている。
【0051】
規制部材70において、ガイド部70dは、規制部材70に進入するベース62の高さ方向のばらつきを吸収する部分である。図10は、規制部材の機能を説明する図である。図10に示すように、スライドドアパネル14がスイングドアパネル16側に移動し、スライドドアパネル14のラッチ44とスイングドアパネル16のドアパネルロックストライカ46とが結合するときに、スライドドアパネル14において上下方向の高さ位置にばらつきが生じることがある。
【0052】
そこで、規制部材70では、ガイド部70dにベース62を当接させて規制部70bまでスライドさせて、ベース62(スライドドアパネル14)を所定の高さ位置に設定された規制部70bまでガイドする。規制部70bまでガイドされたベース62は、規制部70bにより上下方向の高さ位置が所定の範囲内で規制される。
【0053】
規制部材70により、ベース62は、上下方向の移動が規制され、所定の高さ位置で維持される。これにより、スイングドアパネル16を開けてスイングフック54が回動したときに、スイングフック54の軌道上にベース62の開口部60が確実に位置することになる。したがって、スイングフック54により開口部60をより確実に係止でき、スライドドアパネル14とスイングドアパネル16との固定をより確実なものにできる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用ドア構造10では、ロック機構22を備えている。ロック機構22は、スイングドアパネル16に設けられる係止部50と、スライドドアパネル14に設けられる開口部60とから構成されている。係止部50は、検知ピン52が車体5のボディ面5aから離間したときに、開口部60側に回動するスイングフック54を有している。
【0055】
このような構成により、車両用ドア構造10では、スイングドアパネル16が開かれたときに、このスイングドアパネル16に設けられたスイングフック54がスライドドアパネル14のブラケット64に向かって突出する。このとき、スイングフック54が、スライドドアパネル14のブラケット64に形成された開口部60を係止する。これにより、スイングドアパネル16が開かれたときに、スライドドアパネル14がスイングドアパネル16に固定される。したがって、スイングドアパネル16が開かれたときに、スライドドアパネル14がスイングドアパネル16から外れることを防止できる。その結果、安全性を確保できる。
【0056】
また、開口部60は、略台形形状を呈しており、スイングフック54が回動するにつれて間口が連続的に狭くなる形状を有している。これにより、スイングフック54が開口部60に進入するときには開口部60の間口が広いため、スイングフック54が開口部60に進入し易くなっている。また、スイングフック54と開口部60とが当接して係合する位置では開口部60の間口が狭く且つかえし部分61が設けられているため、ベース62が上下方向に移動した場合であっても、スイングフック54が開口部60から外れることを防止できる。
【0057】
また、車両用ドア構造10では、規制部材70により、スイングドアパネル16にスライドドアパネル14が固定されたときに、スライドドアパネル14(ベース62)の上下方向の移動が規制されている。これにより、スイングフック54の軌道上に開口部60が位置するようにベース62の高さを維持できるため、スイングフック54と開口部60との係合をより確実にすることができる。また、ベース62の上下方向の移動を規制することにより、スイングフック54が開口部60から外れることを防止できる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、係止部50の構成の一例として、検知ピン52、スイングフック54及びばね56により構成されている形態を示したが、係止部は図11に示すような構成であってもよい。
【0059】
図11は、他の形態に係る係止部を示す図である。図11に示すように、係止部80は、突出部82と、ばね84とにより構成されている。突出部82は、上から見て略U字形状を呈しており、検知ピン(当接部材)82aと、ロックピン(形成部材)82bとを有している。検知ピン82a及びロックピン82bは、同じ方向に延伸しており、検知ピン82aの長さ寸法は、ロックピン82bの長さ寸法よりも大きい。ばね84は、突出部82をスライドドアパネル14のブラケット64側、すなわち車体5側に付勢している。
【0060】
係止部50では、検知ピン82aが車体5のボディ面5aから離間すると、ばね84により付勢されてロックピン82bがスライドドアパネル14の開口部60に向かって自動で突出する。
【0061】
また、上記実施形態では、ロック機構22における開口部60の形状が略台形形状を呈している形態について説明したが、開口部60の形状は、これに限定されない。例えば、図12に示すように、開口部60Aは、略矩形形状を呈していてもよい。さらには、開口部はスイングフック54やロックピン82bに係止される形状であればよく、ブラケット64を貫通する貫通穴であってもよい。また、貫通穴の形状は、略台形形状であってもよい。要は、スイングドアパネル16に設けられた係止部が、スライドドアパネル14に設けられた被係止部を係止する構成であればよい。
【0062】
また、上記実施形態に加えて、開口部60は、図13に示すような構成であってもよい。図13は、他の形態に係る開口部を示す図である。図13に示すように、開口部60Bには、ガイド部60eが設けられている。ガイド部60eは、スイングフック54とは反対側、すなわち車体5側に向かって斜め下方に張り出している。ブラケット64とガイド部60eとが成す角度をθ3とすると、90°≦θ3≦140°の関係を満たしている。このような構成により、スイングフック54が進入するときに、ガイド部60eによってスイングフック54の高さ方向のばらつきが補正される。したがって、スイングフック54を開口部60Bに確実に誘導できる。
【0063】
また、上記実施形態では、規制部材70をストライカベース66に設けた形態について説明したが、規制部材は図14に示すような構成であってもよい。図14は、他の形態に係る規制部材を示す図である。図14に示すように、規制部材70Aは、ドアパネルロックストライカ46に設けられている。規制部材70Aは、ドアパネルロックストライカ46において所定の高さ位置に配置されており、ベース62の車体5における上下方向の高さ方向の移動を所定の範囲に維持する。
【0064】
また、図15に示すように、規制部材70Bは、スイングドアパネル16に設けられている。規制部材70Bは、固定部70eがスイングドアパネル16に固定されている。固定部70eは、スイングドアパネル16の上端部から上方に立設されている。
【0065】
また、上記実施形態では、車両用ドア構造10を車体5の一側面(左側面)に適用した構成を一例として説明したが、車両用ドア構造10は、例えば車体5の背面(後方面)に設けられてもよい。
【0066】
また、係止部50をスイングドアパネル16の前方の上端部に設け、開口部60を上部スライド部38やラッチ44などを搭載したベース62に設けたが、これに限らず、係止部50をスイングドアパネル16の前方下端部に設け、開口部60を下部スライド部40や下部ラッチなどを搭載したベースに設けてもよい。また、上下の両方に設けていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
5…車体、26…後方開口部、28…第1開口部、30…第2開口部、14…スライドドアパネル(第1ドアパネル)、16…スイングドアパネル(第2ドアパネル)、18…スライド機構(摺動機構)、20…ヒンジ機構(揺動機構)、22…ロック機構(係止機構)、50,80…係止部、52…検知ピン(当接部材)、54…スイングフック(係止部材)、56…ばね(付勢部材)、60,60A,60B…開口部、70,70A,70B…規制部材、70d…ガイド部、82…突出部、82a…検知ピン(当接部材)、82b…ロックピン(係止部材)、84…ばね(付勢部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた第1開口部に配設され、当該第1開口部を開閉する第1ドアパネルと、
前記第1開口部に連続して並設された第2開口部に配設され、当該第2開口部を開閉する第2ドアパネルと、
前記第1ドアパネルを前記車体及び前記第2ドアパネルに対して摺動可能に取り付け、前記第1開口部を閉じる閉位置と前記第1開口部を全開にすると共に前記第1ドアパネルが前記第2ドアパネルと重なる開位置との間で前記第1ドアパネルを移動させる摺動機構と、
前記第2ドアパネルを前記車体に対して揺動可能に支持し、前記第1ドアパネルが前記開位置のときに前記第2ドアパネルを揺動可能とする揺動機構と、
を備える車両用ドア構造であって、
前記第2ドアパネルが開かれたときに前記第1ドアパネルを前記第2ドアパネルに係止する係止機構を備え、
前記係止機構は、
前記第2ドアパネルに設けられ、当該第2ドアパネルが開かれたときに前記第1ドアパネルに向かって突出する係止部と、
前記第1ドアパネルに設けられ、前記第2ドアパネルが開かれたときに前記係止部に係止される被係止部と、
から構成されていることを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記係止部は、
前記第2ドアパネルによって前記第2開口部を閉じる前記第2ドアパネルの閉位置において前記車体に当接する当接部材と、
前記第2ドアパネルに回動可能に支持され、前記当接部材と連動して回動する係止部材と、
前記係止部材が回動する方向に当該係止部材を付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止部材は、前記当接部材が前記車体から離間したときに、前記第1ドアパネルに向かって回動して突出することを特徴とする請求項1記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記係止部は、
前記第2ドアパネルによって前記第2開口部を閉じる前記第2ドアパネルの閉位置において前記車体に当接する当接部材と、前記当接部と一体に形成されると共に、前記当接部材と同じ方向に延在する係止部材とから構成される突出部と、
前記突出部を第1ドアパネルに向かって付勢する付勢部材と、を備え、
前記突出部は、前記当接部材が前記車体から離間したときに、前記第1ドアパネルに向かって突出することを特徴とする請求項1記載の車両用ドア構造。
【請求項4】
前記被係止部は、開口部であり、前記係止部材が進入して前記係止部材が回動するにつれて連続的に間口が狭くなる形状を有していることを特徴とする請求項2記載の車両用ドア構造。
【請求項5】
前記第2ドアパネルには、前記第1ドアパネルが前記開位置のときに、当該第1ドアパネルの前記車体の上下方向への移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の車両用ドア構造。
【請求項6】
前記規制部材には、前記第1ドアパネルが進入する部分に、前記第1ドアパネルの高さ位置を補正するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112198(P2013−112198A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260764(P2011−260764)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)