説明

車両用ドア

【課題】補強部材やラッチスチフナなどの部品の共通性を図ることを可能にする。
【解決手段】車両10の後部の後部開口21を開閉自在に閉塞する車両用ドア20において、インナパネル31に、下端31aに設けられ後部開口21に設けられた係合部22に係合するラッチ機構28と、ラッチ機構28とインナパネル31との間に介在するラッチ補強部材42と、インナパネル31の高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネル32の車幅方向中央で且つ裏面32aに当接する当接部53を有し、ラッチ補強部材42に連結するアウタパネル支持部材43と、を備え、アウタパネル支持部材43が、当接部53の上端53aからラッチ補強部材42に向かって延びる第1の支持部材51と、第1の支持部材51のラッチ補強部材42側の端部51aに接合されるとともに、ラッチ補強部材42に接合される第1の支持部材51とは別体の第2の支持部材52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内側に配置されるインナパネルと、インナパネルの車外側に設けられるアウタパネルとを有し、車両の後部の後部開口を開閉自在に閉塞する車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアは、車体の後部開口を開閉自在に覆うドア本体と、このドア本体に形成された窓枠部と、この窓枠部に設けられたリヤガラスとからなるテールゲートである。
さらに、ドア本体は、車内側に配置されるインナパネルと、車外側に配置されるアウタパネルと、窓枠部の下枠部分を形成する横ビームと、インナパネルの下部に設けられるラッチスチフナと、アウタパネルの裏面にシール部材を介して当接する補強部材と、ドア本体の下部を車体側に係止(ラッチ)するラッチ機構と、ラッチ機構を操作するドアハンドルと、を備える。
【0003】
この車両用ドアによれば、アウタパネルの裏面にシール部材を介して当接する補強部材を設けたので、アウタパネルの支持剛性の向上が図れる。さらに、ラッチスチフナを介してラッチ機構を取付けたので、ドア本体を車体側に強固に係止することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4690961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車両用ドア(テールゲート)は、ラッチスチフナと横ビームとを連結するとともに、アウタパネルの裏面にシール部材を介して当接する補強部材を設けることが開示されている。
【0006】
例えば、同一車種の別モデル又は類似車種等で、車両用ドア(テールゲート)の後部開口の形状が異なる場合がある。同一車種で介護車両(福祉車両)を設ける場合には、後部開口からスロープを車外に延出するために、後部開口の下部を下げることが行われる。このため、後部開口の高さが変化するので、車両用ドアを新規に設計する必要に迫られる。
【0007】
この場合、類似車種なので車両用ドア(テールゲート)もできるだけ共用することが望ましい。しかし、車両用ドアの高さが変わると、インナパネルやアウタパネルを新規にしなくてはならない。また、ラッチ機構(ロック機構)の取付位置も変わるので補強部材も新規にしなくてはならなかった。
【0008】
本発明は、補強部材やラッチスチフナなどの部品の共通性を図りつつ、アウタパネルの振動を抑制できるとともに全体の剛性の向上を図ることができる車両用ドアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車内側に配置されるインナパネルと、インナパネルの車外側に設けられるアウタパネルとを有し、車両の後部の後部開口を開閉自在に閉塞する車両用ドアにおいて、インナパネルに、下端に設けられ後部開口に設けられた係合部に係合するラッチ機構と、ラッチ機構とインナパネルとの間に介在するラッチ補強部材と、インナパネルの高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネルの車幅方向中央で且つ裏面に当接する当接部を有し、ラッチ補強部材に連結するアウタパネル支持部材と、を備え、アウタパネル支持部材が、当接部の上端からラッチ補強部材に向かって延びる第1の支持部材と、第1の支持部材のラッチ補強部材側の端部に接合されるとともに、ラッチ補強部材に接合される第1の支持部材とは別体の第2の支持部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、第1の支持部材に、互いに離間した状態で上下方向に延びる一対の第1支持壁と、第1支持壁の下端を連結する下部連結壁とを備え、第2の支持部材が、下部連結壁に接合されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、第2の支持部材に、下部連結壁に沿って延びる接合壁を備え、下部連結壁と接合壁とが、互いに離間した複数の第1接合点で接合され、接合壁は、第1接合点間に下部連結壁から離れる方向に突出したビード部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、第2の支持部材に、互いに離間した状態で上下方向に延びるとともに一対の第1支持壁にそれぞれ連結される一対の第2支持壁を備え、接合壁は、第2支持壁の上端が連結されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、第1支持壁と第2支持壁とが、第2接合点で接合されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、第2の支持部材に、第2支持壁を連結するとともにラッチ補強部材に接合されるラッチ側連結壁を備え、ラッチ側連結壁及び接合壁が、車体前後方向に関してインナパネルから離間して配置され、ラッチ機構が、インナパネルと、第2の支持部材の第2支持壁、接合壁及びラッチ側連結壁と、で囲まれた空間内に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、第1支持壁に、下部連結壁の近傍に第1開口部を備え、第2支持壁に、ラッチ側連結壁の近傍に第2開口部を備え、下部連結壁と第1開口部との距離と、ラッチ側連結壁と第2開口部との距離をほぼ同一にすることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、第1の支持部材の車外側に、第2の支持部材を重ね合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両用ドアが、車内側に配置されるインナパネルと、インナパネルの車外側に設けられるアウタパネルとを有し、車両の後部の後部開口を開閉自在に閉塞する。
インナパネルに、下端に設けられ後部開口に設けられた係合部に係合するラッチ機構と、ラッチ機構とインナパネルとの間に介在するラッチ補強部材と、インナパネルの高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネルの車幅方向中央で且つ裏面に当接する当接部を有し、ラッチ補強部材に連結するアウタパネル支持部材と、を備える。
インナパネルに、インナパネルの高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネルの車幅方向中央で且つ裏面に当接する当接部を有し、ラッチ補強部材に連結するアウタパネル支持部材を備えたので、アウタパネルの車幅方向中央がインナパネルで支持される。この結果、アウタパネルの強度及び剛性の向上を図ることができる。すなわち、アウタパネル(外面部材)のベコ付きを防止できる。
インナパネルに備えたアウタパネル支持部材はラッチ補強部材に連結したので、アウタパネル(外面部材)の振動を抑制することができるとともに、車両用ドアの全体の剛性を高めることができる。
アウタパネル支持部材が、当接部の上端からラッチ補強部材に向かって延びる第1の支持部材と、第1の支持部材のラッチ補強部材側の端部に接合されるとともに、ラッチ補強部材に接合される第1の支持部材とは別体の第2の支持部材と、を備える。
例えば、介護車両などでは車両用ドア(テールゲート)から車椅子を車内に乗せることがあるため、踏み台(スロープ)を車内から車外に延出できるように当該部分車体フロアが低く設計される。この結果、後部開口が車体の低い位置まで開口する。従って、一般車両に比べて介護車両の車両用ドア(テールゲート)は、車体高さ方向で背の高いものが必要となる。
すなわち、アウタパネル支持部材(外面支持部材)を、第1の支持部材と第2の支持部材とに分割構成したので、介護車両では、車両用ドアに第1の支持部材及び第2の支持部材を使用し、一般車両では、車両用ドアに第1の支持部材を使用することができる。この結果、アウタパネル支持部材の共用化を図ることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、第1の支持部材に、互いに離間した状態で上下方向に延びる一対の第1支持壁と、第1支持壁の下端を連結する下部連結壁とを備える。
第2の支持部材が、下部連結壁に接合されるので、第1の支持部材と第2の支持部材との接合強度を高めることができる。
例えば、一般車両の背の低い車両用ドアに、第1の支持部材を使用する際には下部連結壁を利用してラッチ補強部材を接合することができ、第1の支持部材の構造の簡略化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、第2の支持部材に、下部連結壁に沿って延びる接合壁を備え、下部連結壁と接合壁とが、互いに離間した複数の第1接合点で接合される。
接合壁は、第1接合点間に下部連結壁から離れる方向に突出したビード部を備えるので、接合壁の剛性を高めることができる。つまり、下部連結壁と接合壁との接合部分の剛性の向上を図ることができる。
また、ビード部によって接合壁と下部連結壁との間に隙間を形成することができる。この結果、水や電着塗装時の塗料の流れの改善をすることができ、水や塗料等が接合壁及び下部連結壁に残留することを防止できる。
【0020】
請求項4に係る発明では、第2の支持部材に、互いに離間した状態で上下方向に延びるとともに一対の第1支持壁にそれぞれ連結される一対の第2支持壁を備え、接合壁は、第2支持壁の上端が連結される。
すなわち、接合壁に第2支持壁の上端が連結されたので、接合壁を利用して第2支持壁を連結できる。これにより、第2の支持部材の構造を簡略化できるとともに、第2の支持部材の上方への大型化を抑制することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、第1支持壁と第2支持壁とが、第2接合点で接合されたので、第1の支持部材と第2の支持部材との連結強度を、さらに高めることができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、第2の支持部材に、第2支持壁を連結するとともにラッチ補強部材に接合されるラッチ側連結壁を備え、ラッチ側連結壁及び接合壁が、車体前後方向に関してインナパネルから離間して配置され、ラッチ機構が、インナパネルと、第2の支持部材の第2支持壁、接合壁及びラッチ側連結壁と、で囲まれた空間内に配置されたので、ラッチ機構をインナパネル及び第2の支持部材で保護することができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、第1支持壁に、下部連結壁の近傍に第1開口部を備え、第2支持壁に、ラッチ側連結壁の近傍に第2開口部を備えたので、第1及び第2の支持部材で構成されるアウタパネル支持部材(外面支持部材)を軽量化することができる。
下部連結壁と第1開口部との距離と、ラッチ側連結壁と第2開口部との距離をほぼ同一にしたので、例えば、介護車両の背の高い車両用ドアと、一般車両の背の低い車両用ドアとで、ラッチ機構を共通にして第1開口部若しくは第2開口部から引き出すことができ、ラッチ機構の共通化が可能となる。
【0024】
請求項8に係る発明では、第1の支持部材の車外側に、第2の支持部材を重ね合わせる。
介護車両などの後部開口を車体の低い位置まで開口させた車両では、例えば、他車両に追突された場合には、他車両のバンパ(水平方向で最も飛び出している部材)が第2の支持部材に衝突することが多い。そこで、第1の支持部材の車外側に、第2の支持部材を重ね合わせることで、第1の支持部材と第2の支持部材との接合が剥がれることを防止でき、衝突の荷重を支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両用ドアが採用された車両を示す斜視図である。
【図2】図1に示された車両の背面図である。
【図3】本発明に係る車両用ドアのドア本体の正面図(背面図)である。
【図4】図3の4ー4線断面図である。
【図5】図1に示された車両用ドアのインナパネルの正面図である。
【図6】図1に示された車両用ドアのインナパネルの斜視図である。
【図7】図1に示された車両用ドアのラッチ機構を外したインナパネルの正面図である。
【図8】図1に示された車両用ドアのラッチ機構を外したインナパネルの斜視図である。
【図9】図6の9矢視図である。
【図10】図8の10ー10線断面図である。
【図11】本発明に係る車両用ドアの比較検討図である。
【図12】図10に示された比較例の車両用ドアのインナパネルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
図1及び図2に示されたように、車両10は、車体11に、車両10の後部を開放した後部開口21と、この後部開口21を開閉自在に閉塞する車両用ドア20と、後部開口21の下部に設けられたリヤバンパ15と、後部開口21の左右に設けられたテールランプ16,16と、後部開口21から車外側に突出可能に設けられた踏み台17と、この踏み台17から車椅子(不図示)等を車内に収納する車体フロア18と、を備える。
リヤバンパ15は、車幅方向中央に下方に向けて切り欠いた中央切り欠き15aが形成される。
【0028】
車両10は、車椅子等を車内に搬入可能な介護車両(福祉車両)である。車両用ドア20は、後部開口21を開閉自在に覆うテールゲートである。
踏み台17は、車椅子等を車内に搬入可能なスロープである。 後部開口21は、後部開口21の下端に設けられ、車両用ドア20をラッチする(係合する)係合部22が設けられる。
【0029】
図2〜図5に示されたように、車両用ドア20は、車両用ドア20の基部となるドア本体23と、このドア本体23の上部に設けられるリヤウインドガラス24と、このリヤウインドガラス24内に配置するリヤワイパ装置25と、ドア本体23の中央に設けられるナンバープレート26と、ナンバープレート26の下部に設けられるドアハンドル27と、後部開口21の係合部22に係合するラッチ機構28と、これらのドアハンドル27とラッチ機構28とを連結するラッチケーブル29と、からなる。
【0030】
リヤウインドガラス24は、車体後方を視認可能にする部材である。リヤワイパ装置25は、リヤウインドガラス24を払拭して車体後方の視界を良好に保つ装置である。
【0031】
ドア本体23は、車内12側に配置されるインナパネル31と、インナパネル31の車外側に設けられるアウタパネル32と、からなる。
インナパネル31及びアウタパネル32は、リヤウインドガラス24を取付ける窓枠33が形成される。インナパネル31には、リヤワイパ装置25、ドアハンドル27及びラッチ機構28が支持される。アウタパネル32には、ドアハンドル27を臨ますハンドル開口部35と、リヤウインドガラス24を取付けるアウタ側窓枠36が形成される。
【0032】
インナパネル31は、車内12側に膨出させたインナ本体41と、ラッチ機構28とインナ本体41との間に介在するラッチ補強部材42と、ラッチ補強部材42に連結するアウタパネル支持部材43と、とからなる。
ラッチ補強部材42は、インナパネル31の下端31a(詳細には、インナ本体41における膨出部47の下壁47b)に設けられる。
【0033】
インナ本体41は、上部に形成されたインナ側窓枠46と、下部に形成され車内12側に膨出させた膨出部47と、この膨出部47の側部及び下部に設けられる段部48と、が形成される。
【0034】
膨出部47の底壁47aには、アウタパネル支持部材43が接合される。膨出部47の下壁47bには、ラッチ機構28のラッチ28aを臨ませるインナ側ラッチ開口49が形成される。このインナ側ラッチ開口49には、ラッチ補強部材42が設けられる。
【0035】
図6〜図10に示されたように、アウタパネル支持部材43は、インナパネル31の高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネル32の車幅方向中央で且つ裏面に当接する当接部53を有する。さらに、アウタパネル支持部材43は、窓枠33側に設けられる第1の支持部材51と、インナパネル31の下端31a側に設けられる別体の第2の支持部材52と、に分割構成されている。
第1の支持部材51の車外側に、第2の支持部材52を重ね合わせている。
【0036】
第1の支持部材51は、アウタパネル32の裏面に沿って車体高さ方向に延びる第1平面部61と、この第1平面部61の左右からインナパネル31側に曲げた一対の第1支持壁62,62と、これらの第1支持壁62,62から車幅外方にそれぞれ折り曲げた第1接合フランジ63と、からなる。
第1の支持部材51は、当接部53の上端53aからラッチ補強部材42に向かって延びる部材である。
【0037】
第1平面部61は、上部に形成される上部連結壁64と、中間部に形成される中間連結壁65と、下部に形成される下部連結壁66と、一対の第1支持壁62,62側にそれぞれ形成される第1当接面67,67と、上部連結壁64及び中間連結壁65の間に形成される上開口68と、中間連結壁65及び下部連結壁66の間に形成される下開口69と、
が形成される。
【0038】
第1当接面67は、アウタパネル32(図4参照)の裏面32aに当接する部分であり、後述する第2当接面87とともに当接部53を構成する。当接部53は、アウタパネル32の車幅方向中央で且つ裏面32aに当接する。
下部連結壁66は、第1支持壁62,62の下端62a,62aを連結する部分である。また、下部連結壁66は、第2の支持部材52の接合壁84が接合される。
【0039】
第1支持壁62は、下部連結壁66の近傍に形成された第1開口部71と、第1開口部71の上方に形成された逃げ孔72,73と、が形成される。
第1支持壁62の下端62aは、第2支持壁82の上端82aが接合される。また、一対の第1支持壁62,62は、互いに離間した状態で上下方向に延びるものといえる。
【0040】
第2の支持部材52は、アウタパネル32(図4参照)の裏面32aに沿って車体高さ方向に延びる第2平面部81と、第2平面部81の左右からインナパネル31側に曲げた一対の第2支持壁82,82と、第2支持壁82,82から車幅外方にそれぞれ折り曲げた第2接合フランジ83,83と、からなる。
【0041】
第1及び第2接合フランジ63,83は、第3接合点78a〜78cで膨出部47の底壁47aに接合される。
なお、第3接合点78aは、第1接合フランジ63のみを膨出部47の底壁47aに接合する接合点である。第3接合点78bは、第1及び第2接合フランジ63,83を膨出部47の底壁47aに接合する接合点である。第3接合点78cは、第2接合フランジ83のみを膨出部47の底壁47aに接合する接合点である。
【0042】
第2の支持部材52は、第1の支持部材51のラッチ補強部材42側の端部51aに接合されるとともに、ラッチ補強部材42に接合される部材であるともいえる。
ここで、ラッチ補強部材42側の端部51aとは、第1の支持部材51における第1平面部61の下部連結壁66及び一対の第1支持壁62,62の下端62a,62aで構成される。
【0043】
第2平面部81は、下部連結壁66に沿って延びる接合壁84と、ラッチ補強部材42に接合されるラッチ側連結壁85と、一対の第2支持壁82,82側に形成される第2当接面87,87と、接合壁84及びラッチ側連結壁85の間に形成される開口88と、が形成される。
【0044】
接合壁84は、第2支持壁82,82の上端82a,82aが連結される。言い換えれば接合壁84の左右の端部から、第2支持壁82,82の上端82a,82aが折り曲げ形成される。下部連結壁66と接合壁84は、互いに離間した複数の第1接合点76で接合される。
接合壁84は、第1接合点76間に下部連結壁66から離れる方向に突出したビード部89,89を備える。ラッチ側連結壁85及び接合壁84は、第2支持壁82,82を連結する。
【0045】
ラッチ側連結壁85及び接合壁84は、車体前後方向に関してインナパネル31から離間して配置される。ラッチ機構28は、インナパネル31と、第2の支持部材52の第2支持壁82,82、接合壁84及びラッチ側連結壁85と、で囲まれた空間B1内に配置される。
【0046】
第2支持壁82は、ラッチ側連結壁85の近傍に形成された第2開口部91が形成される。第2支持壁82の上端82aは、第1支持壁62の下端62aが接合される。
一対の第2支持壁82,82は、互いに離間した状態で上下方向に延びるとともに一対の第1支持壁62,62にそれぞれ連結されるものといえる。
【0047】
第1支持壁62と第2支持壁82とが、第2接合点77,77で接合される。また、下部連結壁66と第1開口部71との距離と、ラッチ側連結壁85と第2開口部91との距離がほぼ同一に形成されている。
【0048】
ラッチ補強部材42は、ラッチ機構28を搭載する本体部94と、この本体部94から上方に延出された上接合壁95と、本体部94から下方に延出された下接合壁96と、からなる。
本体部94の上面にはラッチ機構28が載置され、本体部94の下面は膨出部47の下壁47bに当接される。
【0049】
本体部94は、ラッチ機構28のラッチ28aを臨ます本体側ラッチ開口99が形成される。
上接合壁95は、膨出部47の底壁47aに複数の第4溶接点79a(図8参照)で接合される。下接合壁96は、第2の支持部材52のラッチ側連結壁85とともに、インナ本体41の段部48に複数の第4溶接点79bで接合される。
【0050】
図11(a)に実施例の車両10の後部が示され、図11(b)に比較例の車両210の後部が示される。車両210は一般車両である。
介護車両10の後部開口21は、一般車両210の後部開口221に比べて車両10(車体11)の下方まで寸法S1だけ長く開口されている。従って、介護車両10の車両用ドア20は、一般車両210の車両用ドア220に比べて寸法S1だけ長いものが使用される。また、介護車両10のリヤバンパ15は、一般車両210のリヤバンパ215に比べて中央切り欠き15aが車体下方まで形成されている。
【0051】
これは、図1に示されたように、車両10に、踏み台(スロープ)17を設け、この踏み台17を利用して車椅子等を車内12に搬入可能なように配慮された結果である。
但し、介護車両10及び一般車両210では、テールランプ16、リヤウインドガラス24、リヤワイパ装置25、ナンバープレート26及びドアハンドル27は、同一品が用いられ、車体高さ方向の設定位置も同一である。
【0052】
図12には比較例の車両用ドア220のインナパネル231が示される。インナパネル231は、車内側に膨出させたインナ本体241と、ラッチ機構28とインナ本体241との間に介在するラッチ補強部材42と、ラッチ補強部材42に連結する第1の支持部材51と、からなる。
インナパネル231には、ドアハンドル27、ラッチ機構28が支持されている。ドアハンドル27とラッチ機構28は、ラッチケーブル229で連結される。
【0053】
実施例の車両用ドア20では、図6に示されたように、アウタパネル支持部材43を、当接部53の上端53aからラッチ補強部材42に向かって延びる第1の支持部材51と、第1の支持部材51のラッチ補強部材42側の端部51a(第1平面部61の下部連結壁66及び一対の第1支持壁62,62の下端62a,62a)に接合されるとともに、ラッチ補強部材42に接合される第1の支持部材51とは別体の第2の支持部材52と、から構成してあるので、図11及び図12に示されたように、一般車両210の車両用ドア220では、第1の支持部材51のみを使用することで部品の共通化を図ることができる。
【0054】
実施例の車両用ドア20では、図6に示されたように、第1支持壁62に、下部連結壁66の近傍に第1開口部71を備え、第2支持壁82に、ラッチ側連結壁85の近傍に第2開口部91を備え、下部連結壁66と第1開口部71との距離と、ラッチ側連結壁85と第2開口部91との距離をほぼ同一にしたので、図11及び図12に示されたように、第1の支持部材51のみを使用する車両用ドア220でも、第1開口部71から同一高さでラッチケーブル229を引き出すことが可能になる。
【0055】
すなわち、介護車両10の車両用ドア20と一般車両210の車両用ドア220とで、第1の支持部材51、ドアハンドル27、ラッチ機構28を共用することができる。
【0056】
図1及び図4に示されたように、車両用ドア20では、車内12側に配置されるインナパネル31と、インナパネル31の車外側に設けられるアウタパネル32とを有し、車両10の後部の後部開口21を開閉自在に閉塞する。
【0057】
図6〜図8に示されたように、インナパネル31に、下端31aに設けられ後部開口21に設けられた係合部22に係合するラッチ機構28と、ラッチ機構28とインナパネル31との間に介在するラッチ補強部材42と、インナパネル31の高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネル32の車幅方向中央で且つ裏面32aに当接する当接部53を有し、ラッチ補強部材42に連結するアウタパネル支持部材43と、を備える。
【0058】
インナパネル31に、インナパネル31の高さ方向中間から下方に延ばされ、アウタパネル32の車幅方向中央で且つ裏面32aに当接する当接部53を有し、ラッチ補強部材42に連結するアウタパネル支持部材43を備えたので、アウタパネル32の車幅方向中央がインナパネル31で支持される。この結果、アウタパネル32の強度及び剛性の向上を図ることができる。すなわち、アウタパネル(外面部材)32のベコ付きを防止できる。
インナパネル31に備えたアウタパネル支持部材43はラッチ補強部材42に連結したので、アウタパネル(外面部材)32(図4参照)の振動を抑制することができるとともに、車両用ドア20(図1参照)の全体の剛性を高めることができる。
【0059】
アウタパネル支持部材43が、当接部53の上端53aからラッチ補強部材42に向かって延びる第1の支持部材51と、第1の支持部材51のラッチ補強部材42側の端部51aに接合されるとともに、ラッチ補強部材42に接合される第1の支持部材51とは別体の第2の支持部材52と、を備える。
【0060】
例えば、図1に示されたように、介護車両10などでは車両用ドア(テールゲート)20から車椅子を車内12に乗せることがあるため、踏み台(スロープ)17を車内12から車外に延出できるように当該部分車体フロア18が低く設計される。この結果、後部開口21が車体11の低い位置まで開口する。従って、一般車両210(図11参照)に比べて介護車両10の車両用ドア(テールゲート)20は、車体高さ方向で背の高いものが必要となる。
【0061】
すなわち、図6〜図8に示されたように、アウタパネル支持部材(外面支持部材)43を、第1の支持部材51と第2の支持部材52とに分割構成したので、介護車両10(図1参照)では、車両用ドア20に第1の支持部材51及び第2の支持部材52を使用し、一般車両210(図11参照)では、車両用ドア20に第1の支持部材51を使用することができる。この結果、アウタパネル支持部材43の共用化を図ることができる。
【0062】
図1及び図6に示されたように、車両用ドア20では、第1の支持部材51に、互いに離間した状態で上下方向に延びる一対の第1支持壁62,62と、第1支持壁62,62の下端62a,62aを連結する下部連結壁66とを備える。
第2の支持部材52が、下部連結壁66に接合されるので、第1の支持部材51と第2の支持部材52との接合強度を高めることができる。
【0063】
例えば、一般車両210(図11参照)の背の低い車両用ドア220に、第1の支持部材51を使用する際には下部連結壁66を利用してラッチ補強部材42を接合することができ、第1の支持部材51の構造の簡略化を図ることができる。
【0064】
図6〜図8に示されたように、車両用ドア20(図1参照)では、第2の支持部材52に、下部連結壁66に沿って延びる接合壁84を備え、下部連結壁66と接合壁84とが、互いに離間した複数の第1接合点76で接合される。
【0065】
接合壁84は、第1接合点76間に下部連結壁66から離れる方向に突出したビード部89,89を備えるので、接合壁84の剛性を高めることができる。つまり、下部連結壁66と接合壁84との接合部分の剛性の向上を図ることができる。
また、ビード部89,89によって接合壁84と下部連結壁66との間に隙間を形成することができる。この結果、水や電着塗装時の塗料の流れの改善をすることができ、水や塗料等が接合壁84及び下部連結壁66に残留することを防止できる。
【0066】
車両用ドア20(図1参照)では、第2の支持部材52に、互いに離間した状態で上下方向に延びるとともに一対の第1支持壁62,62にそれぞれ連結される一対の第2支持壁82,82を備え、接合壁84は、第2支持壁82,82の上端82a,82aが連結される。
【0067】
すなわち、接合壁84に第2支持壁82,82の上端82a,82aが連結されたので、接合壁84を利用して第2支持壁82,82を連結できる。これにより、第2の支持部材52の構造を簡略化できるとともに、第2の支持部材52の上方への大型化を抑制することができる。
【0068】
図6〜図8に示されたように、車両用ドア20(図1参照)では、第1支持壁62と第2支持壁82とが、第2接合点77,77で接合されたので、第1の支持部材51と第2の支持部材52との連結強度を、さらに高めることができる。
【0069】
車両用ドア20(図1参照)では、第2の支持部材52に、第2支持壁82,82を連結するとともにラッチ補強部材42に接合されるラッチ側連結壁85を備え、ラッチ側連結壁85及び接合壁84が、車体前後方向に関してインナパネル31から離間して配置され、ラッチ機構28が、インナパネル31と、第2の支持部材52の第2支持壁82,82、接合壁84及びラッチ側連結壁85と、で囲まれた空間B1内に配置されたので、ラッチ機構28をインナパネル31及び第2の支持部材52で保護することができる。
【0070】
車両用ドア20(図1参照)では、第1支持壁62に、下部連結壁66の近傍に第1開口部71を備え、第2支持壁82に、ラッチ側連結壁85の近傍に第2開口部91を備えたので、第1及び第2の支持部材52で構成されるアウタパネル支持部材(外面支持部材)43を軽量化することができる。
【0071】
下部連結壁66と第1開口部71との距離と、ラッチ側連結壁85と第2開口部91との距離をほぼ同一にしたので、例えば、介護車両10の背の高い車両用ドア20と、一般車両210(図11参照)の背の低い車両用ドア220とで、ラッチ機構28を共通にして第1開口部71若しくは第2開口部91から引き出すことができ、ラッチ機構28の共通化が可能となる。
【0072】
図6〜図8に示されたように、車両用ドア20(図1参照)では、第1の支持部材51の車外側に、第2の支持部材52を重ね合わせる。
介護車両10などの後部開口21を車体11の低い位置まで開口させた車両では、例えば、他車両に追突された場合には、他車両のバンパ(水平方向で最も飛び出している部材)が第2の支持部材に衝突することが多い。そこで、第1の支持部材51の車外側に、第2の支持部材52を重ね合わせることで、第1の支持部材51と第2の支持部材52との接合が剥がれることを防止でき、衝突の荷重を支えることができる。
【0073】
尚、本発明に係る車両用ドアは、図11に示すように、車両10は介護車両であったが、これに限るものではなく、車両用ドアの高さを変える必要のある車両ならば、一般車両や介護車両に限定されるものではない。
【0074】
尚、本発明に係る車両用ドアは、図1に示すように、テールゲートであったが、これに限るものではなく、前部ドア、後部ドア若しくはスライドドアなどに使用するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る車両用ドアは、後部ドア(テールゲート)を有した車両で、一般車両と介護車両との後部ドアを共用して製作される車両に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0076】
10…車両、12…車内、20…車両用ドア、21…後部開口、22…係合部、28…ラッチ機構、31…インナパネル、31a…インナパネルの下端、32…アウタパネル、42…ラッチ補強部材、43…アウタパネル支持部材、51…第1の支持部材、51a…ラッチ補強部材側の端部、52…第2の支持部材、53…当接部、62…第1支持壁、62a…第1支持壁の下端、66…下部連結壁、71…第1開口部、76…第1接合点、77…第2接合点、82…第2支持壁、82a…第2支持壁の上端、84…接合壁、85…ラッチ側連結壁、89…ビード部、91…第2開口部、B1…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側に配置されるインナパネルと、該インナパネルの車外側に設けられるアウタパネルとを有し、車両の後部の後部開口を開閉自在に閉塞する車両用ドアにおいて、
前記インナパネルは、下端に設けられ前記後部開口に設けられた係合部に係合するラッチ機構と、
前記ラッチ機構と該インナパネルとの間に介在するラッチ補強部材と、
該インナパネルの高さ方向中間から下方に延ばされ、前記アウタパネルの車幅方向中央で且つ裏面に当接する当接部を有し、前記ラッチ補強部材に連結するアウタパネル支持部材と、を備え、
前記アウタパネル支持部材は、前記当接部の上端から前記ラッチ補強部材に向かって延びる第1の支持部材と、該第1の支持部材のラッチ補強部材側の端部に接合されるとともに、前記ラッチ補強部材に接合される前記第1の支持部材とは別体の第2の支持部材と、を備えることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
前記第1の支持部材は、互いに離間した状態で上下方向に延びる一対の第1支持壁と、前記第1支持壁の下端を連結する下部連結壁とを備え、
前記第2の支持部材は、前記下部連結壁に接合されることを特徴とする請求項1記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記第2の支持部材は、前記下部連結壁に沿って延びる接合壁を備え、
前記下部連結壁と前記接合壁とは、互いに離間した複数の第1接合点で接合され、
前記接合壁は、前記第1接合点間に前記下部連結壁から離れる方向に突出したビード部を備えることを特徴とする請求項2記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記第2の支持部材は、互いに離間した状態で上下方向に延びるとともに前記一対の第1支持壁にそれぞれ連結される一対の第2支持壁を備え、
前記接合壁は、前記第2支持壁の上端が連結されたことを特徴とする請求項3記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記第1支持壁と第2支持壁とは、第2接合点で接合されることを特徴とする請求項4記載の車両用ドア。
【請求項6】
前記第2の支持部材は、前記第2支持壁を連結するとともに前記ラッチ補強部材に接合されるラッチ側連結壁を備え、
前記ラッチ側連結壁及び接合壁は、車体前後方向に関して前記インナパネルから離間して配置され、
前記ラッチ機構は、前記インナパネルと、前記第2の支持部材の前記第2支持壁、前記接合壁及び前記ラッチ側連結壁と、で囲まれた空間内に配置されることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の車両用ドア。
【請求項7】
前記第1支持壁は、前記下部連結壁の近傍に第1開口部を備え、
前記第2支持壁は、前記ラッチ側連結壁の近傍に第2開口部を備え、
前記下部連結壁と前記第1開口部との距離と、前記ラッチ側連結壁と前記第2開口部との距離をほぼ同一にすることを特徴とする請求項6記載の車両用ドア。
【請求項8】
前記第1の支持部材の車外側に、前記第2の支持部材を重ね合わせることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の車両用ドア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−112009(P2013−112009A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257113(P2011−257113)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)