説明

車両用パッキン

【課題】車両におけるボディパネルに対して締結部材によって部品を固定する構造において、被シール部を容易かつ確実にシールすることができる車両用パッキンを提供する。
【解決手段】ボディパネル8に対して締結部材6によって取付部品7を固定する際に、ボディパネル8と取付部品7との間に介在させる車両用パッキン1。締結部材6を貫通させる貫通穴11、12を有するパッキン本体部10と、シール部材2とよりなる。シール部材2は、取付部品7側に立設する立設部を有する。シール部材2は、ボディパネル8の塗装焼付処理時の加熱によって流動化する材料により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボディパネルに対して締結部材を用いて固定する際に、上記ボディパネルと上記取付部品との間に介在させる車両用パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両のドア等をボディパネルに回動可能に固定する場合には、これらの間にヒンジを配置する構造がとられている。
ヒンジは、通常、回転軸となる軸体に相対回動可能に係合してなる2つの連結片から構成される。そして、それぞれの連結片をドアとボディパネルにそれぞれ固定することによって、両者を回動可能に繋ぐことができる。この場合のヒンジの連結片とボディパネルとの固定は、ボルト等による締結部品によって行われる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すごとく、ヒンジの連結片とボディパネルとを締結部品によって固定する場合には、緩み防止と貫通穴からの雨水の浸入を防止するために、両者の間に車両用パッキンを介在させる。使用する車両用パッキンは、適度な硬度を有する板状体よりなり、締結部品を貫通させる貫通穴を有するものが一般的である。
【0004】
ところで、車両のボディパネル等はドア等を組み付けた状態で、外観特性の向上と防錆を兼ねた塗装が行われる。しかしながら、ボディパネルとヒンジの連結片との間などの狭い隙間には、十分に塗料が供給されず、未塗装のまま金属素材がそのまま剥き出しの状態となった部位が残りやすい。この未塗装部分をそのまま露出させた状態のまま放置した場合には、この部分の防錆が困難となる。そのため、このような部位には、塗装完了後に防錆用のシーラーを塗布したり、スプレーワックスを塗布したり、あるいは、塗装前に予め成形したシール材を配置するなどの対策がとられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−160383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、締結固定部位は、形状的に塗装しづらい部位であるので、塗装後におけるシーラーの塗布やスプレーワックスの塗布の作業も容易ではない。そのため、必ずしも確実に未塗装部位をシーラーやワックスで覆うことができない場合がある。また、車両用パッキンの組付作業性を向上するために、貫通穴が、締結部品(ボルト)の直径に対して大きく設定されている。そのため、貫通穴とボルトとの間には隙間が生じ、車両用パッキンの位置がずれやすい。車両用パッキンの位置がずれることにより、シーラーの塗布やスプレーワックスの塗布の作業性がさらに悪化する傾向にある。それゆえ、シール性能が悪化し、必要とする防錆及び防水性能が得られない場合がある。
【0007】
このような問題は、ヒンジ固定部に限らず、車両におけるボディパネルに対して締結部材によって部品を固定する構造部分には同様に起こりうる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、車両におけるボディパネルに対して締結部材によって部品を固定する構造において、被シール部を容易かつ確実にシールすることができる車両用パッキンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両におけるボディパネルに対して締結部材によって取付部品を固定する際に、上記ボディパネルと上記取付部品との間に介在させる車両用パッキンであって、
上記締結部材を貫通させる貫通穴を有する板状体よりなるパッキン本体部と、
該パッキン本体部の外周端面の周囲に配されたシール部材とよりなり、
該シール部材は、上記ボディパネルの塗装焼付処理時の加熱によって流動化する材料により構成されており、該シール部材の外周部には、上記取付部品の側面に対向するよう上記取付部品側に立設する立設部を有していることを特徴とする車両用パッキンにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記車両用パッキンは、上述のごとく、従来のパッキンと同様の機能を有する上記パッキン本体部と、該パッキン本体部の外周端面の周囲に配置されるシール部材とよりなる。そして、該シール部材は、ボディパネルの塗装焼付処理時の加熱によって流動化する材料により構成されていると共に、上記取付部品の側面に対向するよう上記取付部品側に向けて立設する立設部を外周部に有している。
【0011】
そのため、上記ボディパネルと上記取付部品との間に上記車両用パッキンを介在させ、該車両用パッキンの上記パッキン本体部に設けた貫通穴にボルトを貫通させて締結することにより、まずは、上記パッキン本体部により、従来と同様のパッキンの機能、つまり緩み防止とボルト穴からの雨水の浸入を防止する機能を得ることができる。
【0012】
さらに、上記車両用パッキンは、上記パッキン本体部の周囲に上記シール部材を有している。そして、該シール部材は加熱することで流動化する材料により構成されている。そのため、上記ボディパネルと上記取付部品との間に上記車両用パッキンを介在させた状態で、上記ボディパネルの塗装焼付処理を行った際には、上記シール部材が加熱されて流動化する。
【0013】
一方、上記ボディパネルの塗装によって形成される塗装膜は、少なくとも、上記ボディパネルと上記取付部品の表面及びこれらが対向する部分の周囲までは容易に形成されるが、両者が対向する隙間の部分には塗装膜が形成されにくく、未塗装部分が残りやすい。
ここで、本発明の車両用パッキンにおいては、上記シール部材が上記のごとく流動化するので、流動化した上記シール部材がその周囲にある未塗装部分を覆い、かつ、上記ボディパネルと上記取付部品との固定部に面する塗装膜の端部まで達してこれを覆う状態となる。これにより、未塗装部分が露出したままとなることを防ぎ、防錆効果を高めることができる。
【0014】
また、上記車両用パッキンは、上記シール部材の外周部に上記立設部を設けてあり、該立設部は、上記取付部品の側面に対向するよう配されている。上記取付部品に対して上記車両用パッキンの平面方向における位置決めを行うことができる。この立設部の存在により、上記車両用パッキンと上記取付部品との位置ずれを防止することができる。これにより、上記シール部材を適正な位置に配し、上記シール部材が流動化した際に、上記取付部品と上記ボディパネルの間を確実に覆うことができる。それゆえ、防錆性能及び防水性能を確実に向上させることができる。尚、上記立設部は、上記取付部品側面の全外周を囲むように連続して設けても良いし、部分的に設けても良い。
【0015】
このように、本発明の車両用パッキンによれば、車両におけるボディパネルに対して締結部材によって取付部品を固定する構造において、被シール部を容易かつ確実にシールできる車両用パッキンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、車両用パッキンを示す平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1のB−B線矢視断面図。
【図4】実施例1における、塗装焼付処理前のシール部材を示すA−A線矢視部分拡大断面図。
【図5】実施例1における、塗装焼付処理前のシール部材を示すC−C線矢視部分拡大断面図。
【図6】実施例1における、塗装焼付処理後のシール部材を示すA−A線矢視部分拡大断面図。
【図7】実施例1における、塗装焼付処理後のシール部材を示すC−C線矢視部分拡大断面図。
【図8】実施例2における、車両用パッキン示す平面図。
【図9】実施例2における、立設部を示す部分拡大斜視図。
【図10】実施例3における、車両用パッキンの(a)シール部材を示す平面図、(b)パッキン本体部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、長方形等の形状の表現は、いずれも幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に上記の形状と認識できる形状を含むものであり、各辺が若干曲線となったり、角部や面に成形上必要な丸み等が生じるいわゆるフィレットといわれる曲面を設けたりすることも当然に許容される。
【0018】
また、本発明の車両用パッキンは、上記パッキン本体部と上記シール部材とよりなる。上記パッキン本体部としては、従来から締結部に使用されているパッキンと同様のものを適用することができる。例えば、アスベストを含まない無機繊維やアラミド繊維に、無機充填材を加え、バインダーに耐油性合成ゴムを用いて成形したもの等がある。
また、上記パッキン本体部は、必ずしも1枚だけで構成する必要はなく、複数のものを組み合わせてもよい。例えば、ボルトを貫通させる貫通穴が2つ必要な場合には、貫通穴を1つずつ有する2枚の部位によってパッキン本体部を構成してもよい。
【0019】
また、上記車両用パッキンは、上記パッキン本体部の外周端面に上記シール部材を配置する構造をとれば、必ずしも両者が一体化していなくてもよい。但し、上記シール部材が流動化した際に、必ず、上記パッキン本体部の外周面全周を覆うようにするため、予めシール部材を適切な位置に配置する必要がある。
【0020】
また、シール部材をなす加熱により流動化する材料とは、熱により溶融し粘度が低下することで、容易に形状を変化させることができる材料を指すものである。加熱により流動化する材料としては、公知の様々な材料を適用可能である。例えば、合成ゴム又は熱可塑性樹脂あるいは両者を主成分として用いることができる。
上記合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリルニトリル・ブタジエンゴムなどがある。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・プロピレン・ジエンコポリマー、エチレン・ビニルアセテート、エチレン・エチルアクリレート、エチレン・メチルメタクリレート、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロックコポリマーなどがある。
【0021】
また、塗装焼付処理の加熱温度はおよそ150℃〜210℃であるので、上記シール部材が流動化する温度を設定する必要がある。この調整は、材料の化学成分の配合を調整することによって行うことができる。
また、上記シール材は、加熱前の状態において、非粘着性であることが好ましい。この場合には、上記車両用パッキンの位置決めを容易とし、取付作業性を向上することができる。
【0022】
上記車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記ボディパネルの塗装焼付処理時の加熱によって発泡膨張する発泡性材料により構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記シール部材が発泡膨張し、その体積が増大するため、より広範囲を発泡膨張した上記シール部材により覆うことができる。そのため、より確実に防水及び防錆性能を向上することができる。
【0023】
発泡材料としては、公知の様々な材料を適用可能である。例えば、上述した合成ゴム又は熱可塑性樹脂あるいは両者を主成分とし、これらに化学発泡剤を含有させた構成とすることができる。
上記化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどがある。
【0024】
また、上記シール部材には、架橋剤や充填材を含有させることが好ましい。これにより、発泡膨張後のシール部材の強度を向上させることができる。
上記架橋剤としては、例えば、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシケタールなどがある。
上記充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、生石灰などの無機フィラーがある。
また、上述のごとく、塗装焼付処理の加熱温度はおよそ150℃〜210℃であるので、上記シール部材が流動化し発泡膨張する温度をこの加熱温度の範囲内に設定する必要がある。この調整は、材料の化学成分の配合調整及び発泡剤の選択によって行うことができる。
【0025】
また、上記車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記パッキン本体部の外周端面に接合され、該パッキン本体部と一体化していることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記車両用パッキンを1つの部品として扱うことができる。そのため、取り扱いが容易となり、組付作業性を向上することができる。
【0026】
また、上記パッキン本体部と上記シール部材とを一体化した上記車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記パッキン本体部の外周に射出成形により形成してあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記車両用パッキンに上記シール部材及び上記立設部を容易に形成することができ、かつ形状精度を向上することができる。そのため、上記取付部品に対する上記車両用パッキンの位置決め精度を向上し、より確実に位置ずれを防止することができる。
【0027】
また、上記車両用パッキンは、上記立設部を上記取付部品の側面に当接させた状態で配設できるよう構成されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記立設部による位置決め効果をより向上させることができる。そのため、上記取付部品に対する上記車両用パッキンの位置ずれをより確実に防止することができる。
【0028】
また、上記車両用パッキンにおいて、上記立設部の上記取付部品と対向する面には、その先端側に、上記取付部品との間に空隙を形成するための立設凹段部が設けられていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、塗装焼付処理により加熱され、流動化した上記シール部材を、上記取付部品に施した塗装膜上に確実に形成することができる。すなわち、塗装焼付処理前の状態において塗装を行う際、上記空隙が存在することにより、上記取付部品には上記空隙の内側まで塗装が施される。そして、塗装焼付処理を行うことにより、流動化した上記シール部材が上記空隙を埋め、塗装膜上にシール体が形成される。そのため、防錆性能をより向上することができる。
【0029】
上記車両用パッキンにおいて、上記シール部材が上記ボディパネルと当接する面には、その外周端部に、上記ボディパネルとの間に空隙を形成するための底面凹段部が設けられていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、塗装焼付処理により加熱され、流動化した上記シール部材を、上記ボディパネルに施した塗装膜上に確実に形成することができる。すなわち、塗装焼付処理前の状態において塗装を行う際、上記空隙が存在することにより、上記ボディパネルには上記空隙の内側まで塗装が施される。そして、塗装焼付処理を行うことにより、流動化した上記シール部材が上記空隙を埋め、塗装膜上にシール体が形成される。そのため、防錆性能をより向上することができる。尚、上記底面凹段部は、上記シール部材の外周端部の全周に設けても良いし、部分的に設けてもよい。
【0030】
上記車両用パッキンにおいて、上記立設部には、上記取付部品に上記車両用パッキンを係合保持させるための係止部を設けてあることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記車両用パッキンを上記取付部品又は上記ボディパネルへ、接着剤等を用いて仮固定する必要が無くなる。そのため、組付作業を容易とし、組付作業性を向上することができる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる車両用パッキンにつき、図1〜図7を用いて説明する。
本例の車両用パッキン1は、図1〜図3に示すごとく、車両におけるボディパネル8に対して締結部材6(ボルト61、ナット62)によって取付部品7を締結固定する際に、ボディパネル8と取付部品7との間に介在させるものである。車両用パッキン1は、締結部材6を貫通させる2つの貫通穴11、12を有する板状体よりなるパッキン本体部10と、該パッキン本体部10の外周端面の周囲に配されたシール部材2とよりなる。該シール部材2は、ボディパネル8の塗装焼付処理時の加熱によって流動化する材料により構成されている。また、シール部材2の外周部には、取付部品7の側面に対向するよう第1立設部21及び第2立設部22を有する。
【0032】
以下詳説する。
本例の車両用パッキン1は、図1〜図3に示すごとく、車両におけるボディパネル8に対してボルト61及びナット62を用いて取付部品7を締結固定する際に、ボディパネル8と取付部品7との間に介在させるパッキンである。本例の取付部品7は、図示しない跳ね上げ式バックドアを固定するためのヒンジである。取付部品7(ヒンジ)は、図2に示すごとく、回転軸となる軸体70に相対回動可能に係合してなる2つの連結片(第1連結片71と第2連結片72)とから構成される。そして、第1連結片71を上記バックドアに固定し、第2連結片72をボディパネル8に固定するよう構成されている。本例は、取付部品7(ヒンジ)の第2連結片72とボディパネル8との締結固定部位に適用した例である。
【0033】
図2に示すごとく、第2連結片72には、2本のボルト61を貫通させるための連結片貫通穴721、722が設けられており、ボディパネル8にも、これらに対応する位置にボディ貫通穴81、82が設けられている。
【0034】
本例の車両用パッキン1は、図1に示すごとく、ボルト61を貫通させる貫通穴11、12を有する板状体よりなるパッキン本体部10と、パッキン本体部10の外周端面の周囲に配置されるシール部材2とよりなる。貫通穴11、12は、上述した部品貫通穴721、722及びボディ貫通穴81、82に対向する位置に設けられている。また、貫通穴11、12の内径は、作業性を確保するため、ボルト61のネジ部の外形よりも大きく設定してある。また、パッキン本体部10の外形は、第2連結片72の当接面と略同一の長方形形状とした。材質は、アラミド繊維に無機充填材を加え、バインダーに耐油性合成ゴムを用いて成形したものを採用した。
【0035】
シール部材2は、射出成形によりパッキン本体部10の外周端面の周囲全周に配置され、パッキン本体部10の外周端面に接合し一体化されている。シール部材2の材料は、具体的には、エチレン・メチルメタクリレートよりなる主成分に、化学発泡剤としての4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドと、架橋剤としてのジアルキルペルオキシドと、充填材としての炭酸カルシウムを加えたものである。このシール部材2は、温度140℃の加熱によって膨張を開始するように調整されている。また、シール部材2は、加熱前の状態において、非粘着性を有しており、ボディパネル8及び第2連結片72に当接させても粘着接合することなく、容易に摺動させることが可能である。
【0036】
また、シール部材2の外形は、図1に示すごとく略長方形状とし、その外周寸法は、第2連結片72の輪郭線より大きく設定してある。図2及び図3に示すごとく、シール部材2におけるボディパネル8と当接する底面26には、その外周端部に、ボディパネル8との間に空隙を形成するための底面凹段部25が設けてある。この底面凹段部25は、ボディパネル8から離れる方向に、底面26から後退させて形成してある。また、シール部材2の上面には、2つの第1立設部21と、2つの第2立設部22とを有している。
【0037】
第1立設部21及び第2立設部22は、図2中の矢印の方向から見た面視(平面視)における第2連結片72の輪郭線よりも外側の位置から、第2連結片72側に立設するように配してある。また、図2及び図3に示すごとく、第1立設部21及び第2立設部22は、第2連結片72の側面に対向する第1対向面211及び第2対向面221が、第2連結片72の側面に当接するように配してある。
【0038】
図3に示すごとく、第1立設部21の第1対向面211には、第2連結片72に車両用パッキン1を係合保持させるための係止部212を設けてある。該係止部212は、第1対向面211の先端側の位置から第2連結片72に向かって突出し、第2連結片72の上面と係合するように構成してある。
また、図2に示すごとく、第2立設部22の第2対向面221には、その先端側に、第2連結片72との間に空隙を形成するための立設凹段部222が設けてある。この立設凹段部222は、取付部品7の側面から離れる方向に、第2対向面221から後退させて形成してある。また、シール部材2の上面と第2対向面221とがなす角部には、第2連結片72の形状に沿うように、曲面形状を施してある。
【0039】
次に、上記構成の車両用パッキン1を用いて、取付部品7とボディパネル8とを固定する方法を説明する。
まず、図3に示すごとく、車両用パッキン1を、上述した係止部212を用いて、第2連結片72に係合保持させる。このとき、第1立設部21及び第2立設部22の第1対向面211と第2対向面221が第2連結片72の側端面と当接することにより、第2連結片72に対する車両用パッキン1の位置が決まる。それと同時に、貫通穴11、12と、部品貫通穴721、722とが同じ軸線上にそろった状態が実現される。次に、車両用パッキン1を保持した第2連結片72とボディパネル8とに、2本のボルト61をそれぞれ部品貫通穴721、722、貫通穴11、12、及びボディ貫通穴81、82の順に通す。そして、図2に示すごとく、ボディ貫通穴81、82から突出したボルト61の先端部側にナット62を締結し固定する。これにより、第2連結片72とボディパネル8との間に車両用パッキン1を介在させた締結固定構造が得られる。
【0040】
次に、ボディパネル8の塗装及び塗装焼付処理を行う。本例では、ボディパネル8およびこれに固定した全ての部品の全体を塗料中に浸漬し、全表面に塗料を塗布すると共に電着させるいわゆる電着塗装を行う。このとき、図4に示すごとく、シール部材2に設けた立設凹段部222及び底面凹段部25により、第2連結片72及びボディパネル8と、シール部材2との間には、それぞれ略U字型の空隙が形成されている。そのため、空隙の内側に位置する第2連結片72及びボディパネル8の表面には、上記空隙の開口部側において塗装膜723、83が形成される。一方、上記空隙の底部側の表面においては、十分に塗料が侵入せず、塗装膜723、83が形成されない。そのため、焼き付け処理の加熱を行う前には、塗装膜端面724、84と上記固定部との間に未塗装部79、89が存在する。
【0041】
また、図5に示すごとく、少なくとも、第2連結片72がシール部材2の上面と対向する面及びボディパネル8の上面とシール部材2の側面とがなす角部には、十分に塗料が浸入せず、塗装膜723、83が形成されない。そのため、上記空隙と同様に、焼き付け処理の加熱を行う前には、塗装膜端面724、84と上記固定部との間に未塗装部79、89が存在する。未塗装部79、89は、ボディパネル8又は第2連結片72の金属素材がそのまま剥き出しの状態となった部位である。
【0042】
次に、塗装焼付処理を行う。これにより、塗装膜723、83が焼付られると共に、図6及び図7に示すごとく、車両用パッキン1のシール部材2が徐々に発泡膨張する。そして、シール部材2は、ボディパネル8と第2連結片72との隙間に充填されながら、未塗装部79、89を覆い、最終的に塗装膜723、83の端面724、84を覆い、塗装膜723、83とシール部材2とが連なった状態が得られる。また、図6に示すごとく、立設凹段部222及び底面凹段部25においては、流動化すると共に発泡膨張したシール部材2が塗装膜723の上面を覆い、塗装膜723と発泡したシール部材2とが積層した状態が得られる。
【0043】
次に、本例の作用効果を説明する。
車両用パッキン1は、図1に示すごとく、従来のパッキンと同様の機能を有するパッキン本体部10と、該パッキン本体部10の外周端面の周囲に配置されるシール部材2とよりなる。そして、該シール部材2は、ボディパネル8の塗装焼付処理時の加熱によって発泡膨張する発泡材料により構成されている。また、シール部材2は、第2連結片72と車両用パッキン1が当接する領域よりも外側の位置から第2連結片72側に立設する第1立設部21及び第2立設部22を有している。
【0044】
そのため、図2に示すごとく、ボディパネル8と取付部品7との間に車両用パッキン1を介在させ、該車両用パッキン1のパッキン本体部10の貫通穴11、12に締結部材6を貫通させて締結することにより、まずは、従来と同様のパッキンの機能、つまり緩み防止とボディ貫通穴81、82からの雨水の浸入を防止する機能を得ることができる。
【0045】
さらに、車両用パッキン1は、パッキン本体部10の周囲にシール部材2を有している。そして、シール部材2は発泡膨張する発泡材料により構成されている。そのため、図4及び図5に示すごとく、第2連結片72とボディパネル8との間に車両用パッキン1を介在させた状態で、ボディパネル8の塗装焼付処理を行った際には、シール部材2が加熱されて発泡膨張する。
【0046】
発泡膨張したシール部材2は、図6及び図7に示すごとく、周囲にある未塗装部分79、89を覆い、かつ第2連結片72とボディパネル8との締結固定部に面する塗装膜723、83の端部まで達してこれを覆う状態となる。これにより、未塗装部分79、89が露出したままとなることを防ぎ、防錆効果を高めることができる。
【0047】
また、車両用パッキン1は、図1〜図3に示すごとく、シール部材2に第1立設部21及び第2立設部22を有している。第1立設部21及び第2立設部22は、図2及び図3に示すごとく、シール部材2の外周部には、取付部品7の側面に対向するよう第2連結片72とシール部材2とが当接する領域よりも外側の位置から、第1立設部21及び第2立設部22を第2連結片72の側面に当接させた状態で配設できるよう構成してある。また、図3に示すごとく、第1立設部21には、車両用パッキン1を第2連結片72に係合保持するための係止部212を設けてある。さらに、シール部材2は、加熱前の状態において、非粘着性を有している。
【0048】
そのため、第2連結片72に対して車両用パッキン1の平面方向における位置決めを容易かつ正確に行い、車両用パッキン1と第2連結片72との位置ずれを防止することができる。これにより、シール部材2を適正な位置に配し、シール部材2が発泡膨張した際に、第2連結片72とボディパネル8の間を確実に覆うことができる。それゆえ、防錆性能及び防水性能を確実に向上させることができる。また、車両用パッキン1を第2連結片72に係合保持することによって、組付作業性を向上できる。
【0049】
また、シール部材2は、パッキン本体部10の外周に射出成形により形成してあり、パッキン本体部10と一体化している。そのため、車両用パッキン1にシール部材2と、第1立設部21及び第2立設部22とを容易に形成することができ、かつ形状精度を向上することができる。それゆえ、取付部品7に対する車両用パッキン1の位置決め精度を向上し、位置ずれを防止することができる。また、車両用パッキン1を1つの部品として扱うことができるため、取り扱いが容易となり、組付作業性を向上させることができる。
【0050】
また、図2に示すごとく、第2立設部22の第2対向面221には、その先端側に、第2連結片72との間に空隙を形成するための立設凹段部222がそれぞれ設けられている。そのため、塗装焼付処理により加熱され、発泡膨張したシール部材2を、第2連結片72に施した塗装膜723上に確実に形成することができる。したがって、シール部材2による防錆性能をより向上させることができる。
【0051】
また、図3に示すごとく、シール部材2がボディパネル8と当接する面には、その外周端部に、ボディパネル8との間に空隙を形成するための底面凹段部25が設けられている。そのため、塗装焼付処理により加熱され、発泡膨張したシール部材2を、ボディパネル8に施した塗装膜83上に確実に形成することができる。したがって、シール部材2による防錆性能をより向上することができる。
【0052】
このように、本例においては、上記の特殊な車両用パッキン1を用い、車両用パッキン1のシール部材2に設けた第1立設部21及び第2立設部22により、第2連結片72に対する位置決めを行い、係合保持させることができる。そして、取付部品7を車両用パッキン1を介して、ボディパネル8に締結固定し、その後の塗装焼付処理時に未塗装部分79、89を発泡膨張したシール部材2によって覆うことができる。そのため、取付部品7とボディパネル8の結合作業を容易とし、車両用パッキン1の位置ずれにより発生するシール不良を防止することができる。それゆえ、優れた防水効果と防錆効果を発揮しうる構造を得ることができる。
【0053】
特に、本例のように、跳ね上げ式バックドアを固定するためのヒンジ(組付部品7)は、その軸方向が水平方向に向いているため、雨水が上記ヒンジの第2連結片72とボディパネル8との間隙に溜まりやすい。しかしながら、本例のように、シール部材2が塗装膜723を覆っている構造においては、雨水によって上記ヒンジ及びボディパネル8が錆びることを確実に防止することができる。
【0054】
(実施例2)
本例は、実施例1における車両用パッキン1のシール部材の形状を変更した例である。
本例の車両用パッキン1におけるシール部材201は、図8及び図9に示すごとく、実施例1と同様に長方形状の外形からなり、対角に位置する2つの角部上に、2つの立設部202を設けてある。また、立設部202は、平面視において略L字状の断面形状を有しており、内側に配される2つの面によって、第2連結片72の角部の位置決めを行うように構成してある。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0055】
本例に示す立設部の形状、配設箇所及び配設数は一つの例であり、取付部品7の形状によって適宜変更することができる。例えば、立設部が、取付部品7の側面において全外周を囲むように連続して設けても良いし、実施例1及び本例に示すごとく部分的に設けても良い。また、ボディパネルが凹凸形状を有し、位置決め可能な形状をなす場合、ボディパネル側に立設部を形成することもできる。
【0056】
(実施例3)
本例は、実施例1における車両用パッキン1の構成を変更した例である。
すなわち、本例の車両用パッキン101は、図10に示すごとく、実施例1の車両用パッキン1を図10(a)に示すシール部材2と、図10(b)に示すパッキン本体部10とを別体として分離可能に構成したものである。そして、使用時には、パッキン本体部10の周囲にシール部材2を配置して使用する。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0057】
本例においては、パッキン本体部10とシール部材2とを組み合わせる作業が増えるが、実施例1と同様の作用効果が得られる。尚、実施例2に示す車両用パッキン1においても、本例と同様の構造を採用することができる。
また、上述した固定構造は、上記のヒンジに限らず、様々な部品とボディパネルとの間の締結構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、101 車両用パッキン
10 パッキン本体部
11、12 貫通穴
2、201 シール部材
202 立設部
21 第1立設部
211 第1対向面
212 係止部
22 第2立設部
221 第2対向面
222 立設凹段部
25 底面凹段部
26 底面
6 締結部材
61 ボルト
62 ナット
7 取付部品(ヒンジ)
72 第2連結片
721、722 部品貫通穴
723、83 塗装膜
8 ボディパネル
81、82 ボディ貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるボディパネルに対して締結部材によって取付部品を固定する際に、上記ボディパネルと上記取付部品との間に介在させる車両用パッキンであって、
上記締結部材を貫通させる貫通穴を有する板状体よりなるパッキン本体部と、
該パッキン本体部の外周端面の周囲に配されたシール部材とよりなり、
該シール部材は、上記ボディパネルの塗装焼付処理時の加熱によって流動化する材料により構成されており、該シール部材の外周部には、上記取付部品の側面に対向するよう上記取付部品側に立設する立設部を有していることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記ボディパネルの塗装焼付処理時の加熱によって発泡膨張する発泡性材料により構成されていることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記パッキン本体部の外周端面に接合され、該パッキン本体部と一体化していることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用パッキンにおいて、上記シール部材は、上記パッキン本体部の外周に射出成形により形成してあることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用パッキンにおいて、上記車両用パッキンは、上記立設部を上記取付部品の側面に当接させた状態で配設できるよう構成されていることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用パッキンにおいて、上記立設部の上記取付部品と対向する面には、その先端側に、上記取付部品との間に空隙を形成するための立設凹段部が設けられていることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用パッキンにおいて、上記シール部材が上記ボディパネルと当接する面には、その外周端部に、上記ボディパネルとの間に空隙を形成するための底面凹段部が設けられていることを特徴とする車両用パッキン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用パッキンにおいて、上記立設部には、上記取付部品に上記車両用パッキンを係合保持させるための係止部を設けてあることを特徴とする車両用パッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−96658(P2012−96658A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245987(P2010−245987)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)