車両用ブラインド装置
【課題】窓にブラインドシートを対応させることによって遮光性を高めた車両用ブラインド装置を提供する。
【解決手段】車両用ブラインド装置は、ドア12に設けたガラス14の第1ガラス部52の一端23から他端65へ向け引き出す第1のブラインドシート16、第1のブラインドシート16を巻き取る巻き取り軸67を有する第1の巻き取り機構41と、補助サッシ部51から引き出される第2ガラス部53用の第2のブラインドシート17を有する第2の巻き取り機構55と、第2のブラインドシート17から延長したアーム46と、アーム46に第1のラック71及び第2のラック72を連結して、第1のブラインドシート16を手で引いて巻き取り軸67が回転すると、第1のラック71及び第2のラック72をスライド量を異ならせて直動させる直動機構73とを備える。
【解決手段】車両用ブラインド装置は、ドア12に設けたガラス14の第1ガラス部52の一端23から他端65へ向け引き出す第1のブラインドシート16、第1のブラインドシート16を巻き取る巻き取り軸67を有する第1の巻き取り機構41と、補助サッシ部51から引き出される第2ガラス部53用の第2のブラインドシート17を有する第2の巻き取り機構55と、第2のブラインドシート17から延長したアーム46と、アーム46に第1のラック71及び第2のラック72を連結して、第1のブラインドシート16を手で引いて巻き取り軸67が回転すると、第1のラック71及び第2のラック72をスライド量を異ならせて直動させる直動機構73とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の左右のドアに設けた窓から車室に入る日差しを遮り、日陰を作る車両用ブラインド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ブラインド装置には、ほぼ四角の窓にほぼ三角の窓を連続させた窓に対応するものがある。四角の窓用のブラインドシートをほぼ水平に収納し、三角の窓用のブラインドシートをほぼ垂直に収納している。
この装置は、電動で、スイッチを押すと、四角窓用のブラインドシートが車両上方へ押し出され閉まる。三角窓用のブラインドシートを同じ駆動源で車両後方へ押し出し閉める際の摩擦による損失を小さくすることができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、三角窓用のブラインドシートを専用の電動駆動装置で閉めるものがある(例えば、特許文献2参照)。
さらに、四角窓用のブラインドシート(シェードシート)の巻きシャフトや三角窓用のブラインドシート(シェードシート)の巻きシャフトなどの部材をT字状の中央部材に接続することによって、装置の小型化を図ったものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかし、従来技術(特許文献1、2、3)は、三角窓用のブラインドシート(シェードシート)を三角窓の一方の縁から車両後方へ向けて三角窓の他方の縁、又は鋭角な角へ向け閉じても、ブラインドシートが対応できない他方の縁とブラインドシートとの間、つまりブラインドシートの無いところから光が入る。
三角状の窓、例えば特許文献2に記載されているように角が車両後方へ延び他方の縁が車両後方へ傾斜した窓にブラインドシートを対応させることによってブラインドシートの遮光性を高めることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−120193号公報
【特許文献2】特開2005−96529号公報
【特許文献3】特開2006−36190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、窓にブラインドシートを対応させることによってブラインドシートの遮光性を高め、構造が簡単な車両用ブラインド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両のドアのガラスは、所望の範囲の第1ガラス部と、残りの第2ガラス部と、からなり、第1ガラス部の一端の近傍から第1ガラス部の他端へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート並びに第1のブラインドシートを巻き取る巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、第1ガラス部と第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2ガラス部用の第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、第2のブラインドシートの引き端部から延長し第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、第1のブラインドシートを手で引いて巻き取り軸が回転すると、第1のラック及び第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、直動機構は、巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、第1のピニオンから第1のラックに伝達し、第2のピニオンから第2のラックに伝達する駆動部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、第1のブラインドシート並びに巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、第2のブラインドシートの引き端部から延長し第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、第1のブラインドシートを手で引いて巻き取り軸が回転すると、第1のラック及び第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えているので、第1のブラインドシート(シェードシート)を引いて閉めると、アームが直動機構の異なるスライド量によって車両後方へ倒れるように傾斜しつつ、第2のブラインドシート(シェードシート)を閉める。
その結果、第2ガラス部の形状とほぼ同じ形状の第2のブラインドシートを設けることができ、第2ガラス部のほぼ全面を第2のブラインドシートで遮蔽することができる。従って、遮光性を高めることができる。
【0010】
「遮光性」とは、ここでは、光の入る範囲をGとし、入る光を遮ることができる範囲をgとし、遮光性はg/Gとする。遮光性が大きい(高い)とブラインドシートの性能が良い。
【0011】
請求項2に係る発明では、直動機構は、巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、第1のピニオンから第1のラックに伝達し、第2のピニオンから第2のラックに伝達する駆動部を有しているので、電動式に比べ、スイッチや押し上げる装置が必要なく、第1のブラインドシートの閉じ操作に連動させて第2のブラインドシートを第2ガラス部に対応するよう自動的に閉める構造は簡単になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用ブラインド装置を採用した車室後部の斜視図である。
【図2】実施例1に係る車両用ブラインド装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】実施例1に係る車両用ブラインド装置を示す図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6部詳細図兼作用図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図4の9矢視図である。
【図10】実施例2に係る車両用ブラインド装置を示す図である。
【図11】実施例3に係る車両用ブラインド装置を示す図で、(a)は図6に対応する図、(b)は(a)の(b)矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2、実施例3で詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る車両用ブラインド装置は、図1、図2に示すように、車両11の後部ドア12に日よけ用のブラインドシート(シェードシート)13を設けるものである。
このブラインドシート13によって後部ドア12の窓ガラス(ガラス)14からはいる太陽光などの光を遮る。
【0015】
ブラインドシート13は第1のブラインドシート16及び第2のブラインドシート17)からなる。21は車室、22は車両用ブラインド装置を設けた後部座席である。
【0016】
車両用ブラインド装置は、手動式であり、後部座席22に座った乗員が後部ドア12のガラス14の下部23に配置した操作部24を手で持って、車両11の上方へ引き上げる。そして次に、後部ドア12のサッシ枠体27に設けたフック28に第1のブラインドシート16の上部フレーム31を掛けるものである。
【0017】
また、第1のブラインドシート16を引くと、第2のブラインドシート17が自動的に引き出され、閉まるので、後部ドア12の窓ガラス(ガラス)14全体にブラインドシート13が引かれる。
【0018】
操作部24は後部座席22に座った乗員の肩の位置から車両11前方へ所定の距離だけ離して配置されている。
【0019】
後部ドア12は、ガラス14を支持するサッシ枠体27の後部33を車両11後方へ距離Lbだけ延ばしたドアである。
【0020】
後部ドア12は、図2〜図4に示す通り、ドアインナパネル35にドアアウタパネル36を接合することによってドア本体37を形成し、ドア本体37に内装ライニング38を取付けている。このドア本体37の内部に第1の巻き取り機構41を配置し、第1の巻き取り機構41のケース42の第1開口43をドア本体37の上端(中央ライン部)44に設けた。
【0021】
加えて、第1開口43の近傍から第2のブラインドシート17用のアーム46が移動するための第2開口47を形成している。
また、ドア本体37の上端(中央ライン部)44にサッシ枠体27を立設している。そして、サッシ枠体27と中央ライン部44をセンタ補助サッシ部51で接合している。
【0022】
センタ補助サッシ部51は、窓ガラス(ガラス)14の第1ガラス部52の後側の縁、第2ガラス部53の前側の縁を支持している。そして、第2の巻き取り機構55を収納するだけの空間を備える。なお、車両11側面視(図4の視点)、サッシ枠体27にほぼ垂直に取付けられている。
【0023】
サッシ枠体27は、車両11側面視(図4の視点)、前部縦サッシ部57をほぼ垂直に形成している。
一方、サッシ枠体27の後部33では、車両11側面視(図4の視点)や、車両11のほぼ側面視(図2の視点)で、前部縦サッシ部57に対し後部縦サッシ部58が車両11後方へ倒れて(所望の角度α)傾斜している。
【0024】
この後部縦サッシ部58に連ねてアールサッシ部61を形成した。アールサッシ部61の頂点62が中央ライン部44の後端63から車両11後方へ距離Lbだけ離れている。
このような後部ドア12に車両用ブラインド装置が採用されている。
【0025】
次に、実施例1に係る車両用ブラインド装置の主要構成を図1〜図9で説明する。
車両用ブラインド装置は、車両11のドア(後部ドア12)に設けたガラス14の外側から差し込まれる太陽光を遮光する。
ガラス14は、所望の範囲(長さLg1)の第1ガラス部52と、残り(長さLg2)の第2ガラス部53と、からなる。
【0026】
車両用ブラインド装置は、第1ガラス部52の一端(下部23)の近傍から第1ガラス部52の他端(上部65)へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート16並びに第1のブラインドシート16を巻き取る巻き取り軸(巻きロール芯)67(図5)を有する第1の巻き取り機構41を備える。
【0027】
さらに、第1ガラス部52と第2ガラス部53を連続的に接続する補助サッシ部(センタ補助サッシ部)51から引き出される第2ガラス部53用の第2のブラインドシート17を有する第2の巻き取り機構55を備える。
【0028】
その上、第2のブラインドシート17の引き端部68から延長し第1の巻き取り機構41の近傍へ達するアーム46と、アーム46に第1のラック71及び第2のラック72を連結して、第1のブラインドシート16を手で引いて巻き取り軸67が回転すると、第1のラック71及び第2のラック72をスライド量S1、S2(図6参照)を異ならせて車両前後方向へ直動(X軸方向)させる直動機構73と、を備えている。
【0029】
直動機構73は、巻き取り軸67の回転力を第1のピニオン75及び第2のピニオン76に伝達し、第1のピニオン75から第1のラック71に伝達し、第2のピニオン76から第2のラック72に伝達する駆動部77を有している。
【0030】
直動機構73は、駆動部77と、第1のラック71と、第1のラック71に平行な第2のラック72と、からなる。図6、図9に示すように、第1のラック71の背部81及び第2のラック72の背部82をそれぞれガイド部材83(二点鎖線で示す部位を含む)を介してドアインナパネル35に支持している。
【0031】
駆動部77は、図4〜図9に示す通り、巻き取り軸67(後述の回転部97の出力軸94)に一体的に嵌合した入力はすば歯車86と、この入力はすば歯車86に噛み合う従動第1はすば歯車87、従動第2はすば歯車88と、従動第1はすば歯車87に一体的に嵌合した第1軸91と、従動第2はすば歯車88に一体的に嵌合した第2軸92と、第1軸91に一体的に嵌合した第1のピニオン75と、第2軸92に一体的に嵌合した第2のピニオン76と、からなる。
【0032】
第1のピニオン75は、ピッチ円径(直径)をd1とする。
第2のピニオン76は、ピッチ円径(直径)をd2とする。直径d2は第1のピニオン75のピッチ円径(直径)d1より小さい(d1>d2)。
【0033】
第1軸91、第2軸92を回転自在にドアインナパネル35に支持している。
なお、ドアインナパネル35は第1の巻き取り機構41を支持するパネル部が分割されている。
【0034】
第1の巻き取り機構41は、既存の構成に入力はすば歯車86を嵌める出力軸94を設けたものである(図5)。
ドアインナパネル35に固定したケース42内に巻き取り軸(巻きロール芯)67を設けている。
【0035】
巻き取り軸(巻きロール芯)67は、図5に示す通り、ケース42に、図左の固定部96を取付け、固定部96に回転部97を取付け、回転部97をばね98で回転させる。
固定部96はケース42に一端固定部101を固定し、一端固定部101にシートガイド端102、片持ち軸103を固定し、片持ち軸103にばね掛止部104を固定している。
【0036】
回転部97は、シートガイド端102にロール芯本体106を回転自在に支持し、ロール芯本体106のシートガイド端107にばね掛止部108を固定し、ばね掛止部108を回転自在に片持ち軸103に嵌合し、ばね掛止部108にばね98を掛止している。
そして、シートガイド端107に出力軸94を設けた。
ロール芯本体106に第1のブラインドシート16の端を取付けている。
【0037】
このような第1の巻き取り機構41は、第1のブラインドシート16を引くと、ロール芯本体106、ばね掛止部108が回転するので、ばね98が捩られ、第1のブラインドシート16に引っ張り力を付与する。
第1の巻き取り機構41には、図1、図4に示す通り、直動機構73を介して第2の巻き取り機構55を連結している。
【0038】
第2の巻き取り機構55は、第2のブラインドシート17にばね111で引っ張り力を付与する機構は第1の巻き取り機構41とほぼ同様である。
【0039】
詳しくは、第2のブラインドシート17及び第2のブラインドシート17の端を取付けた巻き取り軸(巻きロール芯)は、アーム46の回動、傾き(角度α)に対応する構成である。巻き取り軸(巻きロール芯)はわずかに円錐形であり、第2のブラインドシート17はわずかに扇状である。
第2のブラインドシート17の引き端部68を直動機構73にアーム46で連結している。
【0040】
アーム46は、第1のラック71の側部114及び第2のラック72の側部115に連結ピン116で可動自在(矢印a1の方向)に連結している。
【0041】
アーム46は、車両11側面視(図4の視点)、第2のブラインドシート17を閉めた状態(前進限位置E)で、後部縦サッシ部58の傾斜(角度α)に一致し、角度αだけ傾斜している。Spはアーム46の原点位置である。
【0042】
次に、実施例1に係る車両用ブラインド装置の作用を説明する。
まず、遮光性を高める機構を説明する(図1、図2参照)。
【0043】
車両用ブラインド装置は、第1のブラインドシート16を矢印a2のように引いて閉めると、第2のブラインドシート17が自動的に矢印a3のように引かれて閉められる。
閉められた第2のブラインドシート17は、車両11後方へ傾斜したサッシ枠体27の後部縦サッシ部58に到達するので、後部縦サッシ部58と第2のブラインドシート17との間から日差しなどの光りはほとんど入らない。従って、遮光性が高まる。
【0044】
次に、第2のブラインドシート17が傾斜した後部縦サッシ部58まで自動的に引かれる機構を説明する(図1〜図9参照)。
【0045】
後部座席22に座った乗員が手で第1のブラインドシート16を矢印a2のように引くと、巻き取り軸(巻きロール芯)67が矢印a4(図9)のように回転するので、巻きロール芯67に一体的に嵌合した入力はすば歯車86が回転(矢印a4の方向)する。
この入力はすば歯車86に噛み合う従動第1はすば歯車87が回転(図6の矢印a5の方向)し、従動第2はすば歯車88が同時に回転(図6の矢印a6の方向)する。
【0046】
従動第1はすば歯車87に一体的に嵌合した第1軸91の回転によって第1のピニオン75が回転(矢印a5の方向)するので、第1のピニオン75が第1のラック71を車両11の後方へ向け距離S1だけ前進スライドさせる。
【0047】
一方、従動第2はすば歯車88に一体的に嵌合した第2軸92の回転によって第2のピニオン76が回転(図6の矢印a6の方向)するので、第2のピニオン76が第2のラック72を車両11の後方へ向け距離S2だけ前進スライドさせる。なお、原点位置Spから動くことを前進と呼称する。逆に、原点位置Spへ向かって動くことを後退とする。車両の前進する方向、後退する方向とは一致していない。
【0048】
第1のラック71及び第2のラック72が前進スライドすると、これらに連結しているアーム46が原点位置Spから後部縦サッシ部58(前進限位置E)まで移動する。
【0049】
その際、この移動する過程では、第1のラック71が距離S1だけ前進スライドし、第2のラック72が距離S2だけ前進スライドすると、アーム46及び第2のブラインドシート17の引き端部68は後方へ矢印a7のように倒れるように傾斜して(角度α)止まるので、後部縦サッシ部58に達し、且つ、後部縦サッシ部58の角度に一致する。
距離S1は第1のピニオン75のピッチ円径(直径)d1によって設定され、距離S2は第2のピニオン76のピッチ円径(直径)d2によって設定されている。
【0050】
なお、第1のブラインドシート16を矢印a2のように引くと、ばね98が捩られるので、第1のブラインドシート16に張力を付与し続ける。
第2のブラインドシート17には、同様にばね111が張力を付与し続けるので、第2のブラインドシート17のたるみを抑制することができる。
【0051】
次にブラインドシート13(第1のブラインドシート16、第2のブラインドシート17)を開けるときの機構を説明する。
第1のブラインドシート16を開けるときには、フック28から第1のブラインドシート16の上部フレーム31を外すと、第1のブラインドシート16はばね98の力で逆回転する巻き取り軸(巻きロール芯)67に自動的に巻き取られる。
【0052】
この巻き取り軸(巻きロール芯)67が逆回転すると、従動第1はすば歯車87、従動第2はすば歯車88が逆回転するので、第1のラック71、第2のラック72が後退スライドする。その結果、アーム46及び第2のブラインドシート17の引き端部68は車両11前方へ(原点位置Spへ)向かって後退する。
つまり、第1のブラインドシート16を開けるとほぼ同時に第2のブラインドシート17が開く。
【0053】
このように、車両用ブラインド装置では、後部ドア12の後部縦サッシ部58が車両11後方へ倒れて(所望の角度α)傾斜した形状に形成されても、第1のブラインドシート16の閉じ操作に連動する簡単な構造で、ブラインドシート13、詳しくは第2のブラインドシート17の遮光性を向上させることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る車両用ブラインド装置を図10で説明する。
図10は図6に対応する図である。上記図1〜図9に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0055】
実施例2に係る車両用ブラインド装置は、直動機構73Bを備え、直動機構73Bは駆動部77Bを有することを特徴とする。
【0056】
駆動部77Bは、巻き取り軸67に入力かさ歯車131を一体的に嵌合し、入力かさ歯車131に従動第1かさ歯車132、従動第2かさ歯車133を噛み合わせた。
従動第1かさ歯車132に第1小平歯車135を第3軸136で一体的に結合し、第1小平歯車135に第2小平歯車137を噛み合わせ、この第2小平歯車137に第1のピニオン75Bを第4軸138で一体的に結合した。
【0057】
一方、従動第2かさ歯車133に第2のピニオン76Bを第5軸141で一体的に結合した。
第3軸136、第4軸138、第5軸141をドアインナパネル35から延ばしたブラケット(図に示していない)によってドアインナパネル35に支持している。
【0058】
第1のピニオン75Bに噛み合う第1のラック71は、その背部81(図9)にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印b1の方向)に連結している。
第2のピニオン76Bに噛み合う第2のラック72は、その背部82にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印b1の方向)に連結してる。
【0059】
第1のラック71及び第2のラック72をそれぞれガイド部材83Bを介してドアインナパネル35に支持している。
【0060】
実施例2に係る車両用ブラインド装置は、実施例1に係る車両用ブラインド装置と同様の作用、効果を発揮する。
つまり、第1のブラインドシート16の閉じ操作に連動する簡単な構造で、ブラインドシート13の遮光性を向上させることができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3に係る車両用ブラインド装置を図11で説明する。
上記図1〜図9に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0062】
実施例3に係る車両用ブラインド装置は、直動機構73Cを備え、直動機構73Cは駆動部77Cを有することを特徴とする。
【0063】
駆動部77Cは、巻き取り軸67に入力はすば歯車86を一体的に嵌合し、入力はすば歯車86に従動第1はすば歯車87を噛み合わせた。この従動第1はすば歯車87に第1のピニオン75C並びに第2のピニオン76Cを第6軸151で一体的に結合した。
第6軸151はドアインナパネル35に支持されている。具体的な構成は任意である。
【0064】
第1のピニオン75に噛み合う第1のラック71は、その側部153にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印c1の方向)に連結してる。
第2のピニオン76に噛み合う第2のラック72は、その側部154にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印c1の方向)に連結してる。
【0065】
第1のラック71及び第2のラック72をガイド機構156でドアインナパネル35に支持している。
ガイド機構156は、構成は任意である。例えば第1のラック71及び第2のラック72にレール157、158を取付け、レール157、158に支持ガイド161を嵌合し、支持ガイド161をドアインナパネル35に支持する。
【0066】
実施例3に係る車両用ブラインド装置は、実施例1に係る車両用ブラインド装置と同様の作用、効果を発揮する。
【0067】
尚、本発明の車両用ブラインド装置は、実施の形態では4ドアセダンの後部ドアの窓に採用されているが、4ドアセダンの後部ドア以外の車両の窓にも採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車両用ブラインド装置は、4ドアセダンの後部ドアの窓に好適である。
【符号の説明】
【0069】
11…車両、12…ドア(後部ドア)、14…ガラス、16…第1のブラインドシート、17…第2のブラインドシート、23…第1ガラス部の一端(下部)、41…第1の巻き取り機構、46…アーム、51…補助サッシ部(センタ補助サッシ部)、52…第1ガラス部、53…第2ガラス部、55…第2の巻き取り機構、65…第1ガラス部の他端(上部)、67…巻き取り軸(巻きロール芯)、68…引き端部、71…第1のラック、72…第2のラック、73…直動機構、75…第1のピニオン、76…第2のピニオン、77…駆動部、S1…第1のラックのスライド量、S2…第2のラックのスライド量。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の左右のドアに設けた窓から車室に入る日差しを遮り、日陰を作る車両用ブラインド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ブラインド装置には、ほぼ四角の窓にほぼ三角の窓を連続させた窓に対応するものがある。四角の窓用のブラインドシートをほぼ水平に収納し、三角の窓用のブラインドシートをほぼ垂直に収納している。
この装置は、電動で、スイッチを押すと、四角窓用のブラインドシートが車両上方へ押し出され閉まる。三角窓用のブラインドシートを同じ駆動源で車両後方へ押し出し閉める際の摩擦による損失を小さくすることができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、三角窓用のブラインドシートを専用の電動駆動装置で閉めるものがある(例えば、特許文献2参照)。
さらに、四角窓用のブラインドシート(シェードシート)の巻きシャフトや三角窓用のブラインドシート(シェードシート)の巻きシャフトなどの部材をT字状の中央部材に接続することによって、装置の小型化を図ったものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかし、従来技術(特許文献1、2、3)は、三角窓用のブラインドシート(シェードシート)を三角窓の一方の縁から車両後方へ向けて三角窓の他方の縁、又は鋭角な角へ向け閉じても、ブラインドシートが対応できない他方の縁とブラインドシートとの間、つまりブラインドシートの無いところから光が入る。
三角状の窓、例えば特許文献2に記載されているように角が車両後方へ延び他方の縁が車両後方へ傾斜した窓にブラインドシートを対応させることによってブラインドシートの遮光性を高めることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−120193号公報
【特許文献2】特開2005−96529号公報
【特許文献3】特開2006−36190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、窓にブラインドシートを対応させることによってブラインドシートの遮光性を高め、構造が簡単な車両用ブラインド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両のドアのガラスは、所望の範囲の第1ガラス部と、残りの第2ガラス部と、からなり、第1ガラス部の一端の近傍から第1ガラス部の他端へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート並びに第1のブラインドシートを巻き取る巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、第1ガラス部と第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2ガラス部用の第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、第2のブラインドシートの引き端部から延長し第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、第1のブラインドシートを手で引いて巻き取り軸が回転すると、第1のラック及び第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、直動機構は、巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、第1のピニオンから第1のラックに伝達し、第2のピニオンから第2のラックに伝達する駆動部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、第1のブラインドシート並びに巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、第2のブラインドシートの引き端部から延長し第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、第1のブラインドシートを手で引いて巻き取り軸が回転すると、第1のラック及び第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えているので、第1のブラインドシート(シェードシート)を引いて閉めると、アームが直動機構の異なるスライド量によって車両後方へ倒れるように傾斜しつつ、第2のブラインドシート(シェードシート)を閉める。
その結果、第2ガラス部の形状とほぼ同じ形状の第2のブラインドシートを設けることができ、第2ガラス部のほぼ全面を第2のブラインドシートで遮蔽することができる。従って、遮光性を高めることができる。
【0010】
「遮光性」とは、ここでは、光の入る範囲をGとし、入る光を遮ることができる範囲をgとし、遮光性はg/Gとする。遮光性が大きい(高い)とブラインドシートの性能が良い。
【0011】
請求項2に係る発明では、直動機構は、巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、第1のピニオンから第1のラックに伝達し、第2のピニオンから第2のラックに伝達する駆動部を有しているので、電動式に比べ、スイッチや押し上げる装置が必要なく、第1のブラインドシートの閉じ操作に連動させて第2のブラインドシートを第2ガラス部に対応するよう自動的に閉める構造は簡単になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用ブラインド装置を採用した車室後部の斜視図である。
【図2】実施例1に係る車両用ブラインド装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】実施例1に係る車両用ブラインド装置を示す図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6部詳細図兼作用図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図4の9矢視図である。
【図10】実施例2に係る車両用ブラインド装置を示す図である。
【図11】実施例3に係る車両用ブラインド装置を示す図で、(a)は図6に対応する図、(b)は(a)の(b)矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2、実施例3で詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る車両用ブラインド装置は、図1、図2に示すように、車両11の後部ドア12に日よけ用のブラインドシート(シェードシート)13を設けるものである。
このブラインドシート13によって後部ドア12の窓ガラス(ガラス)14からはいる太陽光などの光を遮る。
【0015】
ブラインドシート13は第1のブラインドシート16及び第2のブラインドシート17)からなる。21は車室、22は車両用ブラインド装置を設けた後部座席である。
【0016】
車両用ブラインド装置は、手動式であり、後部座席22に座った乗員が後部ドア12のガラス14の下部23に配置した操作部24を手で持って、車両11の上方へ引き上げる。そして次に、後部ドア12のサッシ枠体27に設けたフック28に第1のブラインドシート16の上部フレーム31を掛けるものである。
【0017】
また、第1のブラインドシート16を引くと、第2のブラインドシート17が自動的に引き出され、閉まるので、後部ドア12の窓ガラス(ガラス)14全体にブラインドシート13が引かれる。
【0018】
操作部24は後部座席22に座った乗員の肩の位置から車両11前方へ所定の距離だけ離して配置されている。
【0019】
後部ドア12は、ガラス14を支持するサッシ枠体27の後部33を車両11後方へ距離Lbだけ延ばしたドアである。
【0020】
後部ドア12は、図2〜図4に示す通り、ドアインナパネル35にドアアウタパネル36を接合することによってドア本体37を形成し、ドア本体37に内装ライニング38を取付けている。このドア本体37の内部に第1の巻き取り機構41を配置し、第1の巻き取り機構41のケース42の第1開口43をドア本体37の上端(中央ライン部)44に設けた。
【0021】
加えて、第1開口43の近傍から第2のブラインドシート17用のアーム46が移動するための第2開口47を形成している。
また、ドア本体37の上端(中央ライン部)44にサッシ枠体27を立設している。そして、サッシ枠体27と中央ライン部44をセンタ補助サッシ部51で接合している。
【0022】
センタ補助サッシ部51は、窓ガラス(ガラス)14の第1ガラス部52の後側の縁、第2ガラス部53の前側の縁を支持している。そして、第2の巻き取り機構55を収納するだけの空間を備える。なお、車両11側面視(図4の視点)、サッシ枠体27にほぼ垂直に取付けられている。
【0023】
サッシ枠体27は、車両11側面視(図4の視点)、前部縦サッシ部57をほぼ垂直に形成している。
一方、サッシ枠体27の後部33では、車両11側面視(図4の視点)や、車両11のほぼ側面視(図2の視点)で、前部縦サッシ部57に対し後部縦サッシ部58が車両11後方へ倒れて(所望の角度α)傾斜している。
【0024】
この後部縦サッシ部58に連ねてアールサッシ部61を形成した。アールサッシ部61の頂点62が中央ライン部44の後端63から車両11後方へ距離Lbだけ離れている。
このような後部ドア12に車両用ブラインド装置が採用されている。
【0025】
次に、実施例1に係る車両用ブラインド装置の主要構成を図1〜図9で説明する。
車両用ブラインド装置は、車両11のドア(後部ドア12)に設けたガラス14の外側から差し込まれる太陽光を遮光する。
ガラス14は、所望の範囲(長さLg1)の第1ガラス部52と、残り(長さLg2)の第2ガラス部53と、からなる。
【0026】
車両用ブラインド装置は、第1ガラス部52の一端(下部23)の近傍から第1ガラス部52の他端(上部65)へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート16並びに第1のブラインドシート16を巻き取る巻き取り軸(巻きロール芯)67(図5)を有する第1の巻き取り機構41を備える。
【0027】
さらに、第1ガラス部52と第2ガラス部53を連続的に接続する補助サッシ部(センタ補助サッシ部)51から引き出される第2ガラス部53用の第2のブラインドシート17を有する第2の巻き取り機構55を備える。
【0028】
その上、第2のブラインドシート17の引き端部68から延長し第1の巻き取り機構41の近傍へ達するアーム46と、アーム46に第1のラック71及び第2のラック72を連結して、第1のブラインドシート16を手で引いて巻き取り軸67が回転すると、第1のラック71及び第2のラック72をスライド量S1、S2(図6参照)を異ならせて車両前後方向へ直動(X軸方向)させる直動機構73と、を備えている。
【0029】
直動機構73は、巻き取り軸67の回転力を第1のピニオン75及び第2のピニオン76に伝達し、第1のピニオン75から第1のラック71に伝達し、第2のピニオン76から第2のラック72に伝達する駆動部77を有している。
【0030】
直動機構73は、駆動部77と、第1のラック71と、第1のラック71に平行な第2のラック72と、からなる。図6、図9に示すように、第1のラック71の背部81及び第2のラック72の背部82をそれぞれガイド部材83(二点鎖線で示す部位を含む)を介してドアインナパネル35に支持している。
【0031】
駆動部77は、図4〜図9に示す通り、巻き取り軸67(後述の回転部97の出力軸94)に一体的に嵌合した入力はすば歯車86と、この入力はすば歯車86に噛み合う従動第1はすば歯車87、従動第2はすば歯車88と、従動第1はすば歯車87に一体的に嵌合した第1軸91と、従動第2はすば歯車88に一体的に嵌合した第2軸92と、第1軸91に一体的に嵌合した第1のピニオン75と、第2軸92に一体的に嵌合した第2のピニオン76と、からなる。
【0032】
第1のピニオン75は、ピッチ円径(直径)をd1とする。
第2のピニオン76は、ピッチ円径(直径)をd2とする。直径d2は第1のピニオン75のピッチ円径(直径)d1より小さい(d1>d2)。
【0033】
第1軸91、第2軸92を回転自在にドアインナパネル35に支持している。
なお、ドアインナパネル35は第1の巻き取り機構41を支持するパネル部が分割されている。
【0034】
第1の巻き取り機構41は、既存の構成に入力はすば歯車86を嵌める出力軸94を設けたものである(図5)。
ドアインナパネル35に固定したケース42内に巻き取り軸(巻きロール芯)67を設けている。
【0035】
巻き取り軸(巻きロール芯)67は、図5に示す通り、ケース42に、図左の固定部96を取付け、固定部96に回転部97を取付け、回転部97をばね98で回転させる。
固定部96はケース42に一端固定部101を固定し、一端固定部101にシートガイド端102、片持ち軸103を固定し、片持ち軸103にばね掛止部104を固定している。
【0036】
回転部97は、シートガイド端102にロール芯本体106を回転自在に支持し、ロール芯本体106のシートガイド端107にばね掛止部108を固定し、ばね掛止部108を回転自在に片持ち軸103に嵌合し、ばね掛止部108にばね98を掛止している。
そして、シートガイド端107に出力軸94を設けた。
ロール芯本体106に第1のブラインドシート16の端を取付けている。
【0037】
このような第1の巻き取り機構41は、第1のブラインドシート16を引くと、ロール芯本体106、ばね掛止部108が回転するので、ばね98が捩られ、第1のブラインドシート16に引っ張り力を付与する。
第1の巻き取り機構41には、図1、図4に示す通り、直動機構73を介して第2の巻き取り機構55を連結している。
【0038】
第2の巻き取り機構55は、第2のブラインドシート17にばね111で引っ張り力を付与する機構は第1の巻き取り機構41とほぼ同様である。
【0039】
詳しくは、第2のブラインドシート17及び第2のブラインドシート17の端を取付けた巻き取り軸(巻きロール芯)は、アーム46の回動、傾き(角度α)に対応する構成である。巻き取り軸(巻きロール芯)はわずかに円錐形であり、第2のブラインドシート17はわずかに扇状である。
第2のブラインドシート17の引き端部68を直動機構73にアーム46で連結している。
【0040】
アーム46は、第1のラック71の側部114及び第2のラック72の側部115に連結ピン116で可動自在(矢印a1の方向)に連結している。
【0041】
アーム46は、車両11側面視(図4の視点)、第2のブラインドシート17を閉めた状態(前進限位置E)で、後部縦サッシ部58の傾斜(角度α)に一致し、角度αだけ傾斜している。Spはアーム46の原点位置である。
【0042】
次に、実施例1に係る車両用ブラインド装置の作用を説明する。
まず、遮光性を高める機構を説明する(図1、図2参照)。
【0043】
車両用ブラインド装置は、第1のブラインドシート16を矢印a2のように引いて閉めると、第2のブラインドシート17が自動的に矢印a3のように引かれて閉められる。
閉められた第2のブラインドシート17は、車両11後方へ傾斜したサッシ枠体27の後部縦サッシ部58に到達するので、後部縦サッシ部58と第2のブラインドシート17との間から日差しなどの光りはほとんど入らない。従って、遮光性が高まる。
【0044】
次に、第2のブラインドシート17が傾斜した後部縦サッシ部58まで自動的に引かれる機構を説明する(図1〜図9参照)。
【0045】
後部座席22に座った乗員が手で第1のブラインドシート16を矢印a2のように引くと、巻き取り軸(巻きロール芯)67が矢印a4(図9)のように回転するので、巻きロール芯67に一体的に嵌合した入力はすば歯車86が回転(矢印a4の方向)する。
この入力はすば歯車86に噛み合う従動第1はすば歯車87が回転(図6の矢印a5の方向)し、従動第2はすば歯車88が同時に回転(図6の矢印a6の方向)する。
【0046】
従動第1はすば歯車87に一体的に嵌合した第1軸91の回転によって第1のピニオン75が回転(矢印a5の方向)するので、第1のピニオン75が第1のラック71を車両11の後方へ向け距離S1だけ前進スライドさせる。
【0047】
一方、従動第2はすば歯車88に一体的に嵌合した第2軸92の回転によって第2のピニオン76が回転(図6の矢印a6の方向)するので、第2のピニオン76が第2のラック72を車両11の後方へ向け距離S2だけ前進スライドさせる。なお、原点位置Spから動くことを前進と呼称する。逆に、原点位置Spへ向かって動くことを後退とする。車両の前進する方向、後退する方向とは一致していない。
【0048】
第1のラック71及び第2のラック72が前進スライドすると、これらに連結しているアーム46が原点位置Spから後部縦サッシ部58(前進限位置E)まで移動する。
【0049】
その際、この移動する過程では、第1のラック71が距離S1だけ前進スライドし、第2のラック72が距離S2だけ前進スライドすると、アーム46及び第2のブラインドシート17の引き端部68は後方へ矢印a7のように倒れるように傾斜して(角度α)止まるので、後部縦サッシ部58に達し、且つ、後部縦サッシ部58の角度に一致する。
距離S1は第1のピニオン75のピッチ円径(直径)d1によって設定され、距離S2は第2のピニオン76のピッチ円径(直径)d2によって設定されている。
【0050】
なお、第1のブラインドシート16を矢印a2のように引くと、ばね98が捩られるので、第1のブラインドシート16に張力を付与し続ける。
第2のブラインドシート17には、同様にばね111が張力を付与し続けるので、第2のブラインドシート17のたるみを抑制することができる。
【0051】
次にブラインドシート13(第1のブラインドシート16、第2のブラインドシート17)を開けるときの機構を説明する。
第1のブラインドシート16を開けるときには、フック28から第1のブラインドシート16の上部フレーム31を外すと、第1のブラインドシート16はばね98の力で逆回転する巻き取り軸(巻きロール芯)67に自動的に巻き取られる。
【0052】
この巻き取り軸(巻きロール芯)67が逆回転すると、従動第1はすば歯車87、従動第2はすば歯車88が逆回転するので、第1のラック71、第2のラック72が後退スライドする。その結果、アーム46及び第2のブラインドシート17の引き端部68は車両11前方へ(原点位置Spへ)向かって後退する。
つまり、第1のブラインドシート16を開けるとほぼ同時に第2のブラインドシート17が開く。
【0053】
このように、車両用ブラインド装置では、後部ドア12の後部縦サッシ部58が車両11後方へ倒れて(所望の角度α)傾斜した形状に形成されても、第1のブラインドシート16の閉じ操作に連動する簡単な構造で、ブラインドシート13、詳しくは第2のブラインドシート17の遮光性を向上させることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る車両用ブラインド装置を図10で説明する。
図10は図6に対応する図である。上記図1〜図9に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0055】
実施例2に係る車両用ブラインド装置は、直動機構73Bを備え、直動機構73Bは駆動部77Bを有することを特徴とする。
【0056】
駆動部77Bは、巻き取り軸67に入力かさ歯車131を一体的に嵌合し、入力かさ歯車131に従動第1かさ歯車132、従動第2かさ歯車133を噛み合わせた。
従動第1かさ歯車132に第1小平歯車135を第3軸136で一体的に結合し、第1小平歯車135に第2小平歯車137を噛み合わせ、この第2小平歯車137に第1のピニオン75Bを第4軸138で一体的に結合した。
【0057】
一方、従動第2かさ歯車133に第2のピニオン76Bを第5軸141で一体的に結合した。
第3軸136、第4軸138、第5軸141をドアインナパネル35から延ばしたブラケット(図に示していない)によってドアインナパネル35に支持している。
【0058】
第1のピニオン75Bに噛み合う第1のラック71は、その背部81(図9)にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印b1の方向)に連結している。
第2のピニオン76Bに噛み合う第2のラック72は、その背部82にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印b1の方向)に連結してる。
【0059】
第1のラック71及び第2のラック72をそれぞれガイド部材83Bを介してドアインナパネル35に支持している。
【0060】
実施例2に係る車両用ブラインド装置は、実施例1に係る車両用ブラインド装置と同様の作用、効果を発揮する。
つまり、第1のブラインドシート16の閉じ操作に連動する簡単な構造で、ブラインドシート13の遮光性を向上させることができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3に係る車両用ブラインド装置を図11で説明する。
上記図1〜図9に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0062】
実施例3に係る車両用ブラインド装置は、直動機構73Cを備え、直動機構73Cは駆動部77Cを有することを特徴とする。
【0063】
駆動部77Cは、巻き取り軸67に入力はすば歯車86を一体的に嵌合し、入力はすば歯車86に従動第1はすば歯車87を噛み合わせた。この従動第1はすば歯車87に第1のピニオン75C並びに第2のピニオン76Cを第6軸151で一体的に結合した。
第6軸151はドアインナパネル35に支持されている。具体的な構成は任意である。
【0064】
第1のピニオン75に噛み合う第1のラック71は、その側部153にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印c1の方向)に連結してる。
第2のピニオン76に噛み合う第2のラック72は、その側部154にアーム46を連結ピン116で可動自在(矢印c1の方向)に連結してる。
【0065】
第1のラック71及び第2のラック72をガイド機構156でドアインナパネル35に支持している。
ガイド機構156は、構成は任意である。例えば第1のラック71及び第2のラック72にレール157、158を取付け、レール157、158に支持ガイド161を嵌合し、支持ガイド161をドアインナパネル35に支持する。
【0066】
実施例3に係る車両用ブラインド装置は、実施例1に係る車両用ブラインド装置と同様の作用、効果を発揮する。
【0067】
尚、本発明の車両用ブラインド装置は、実施の形態では4ドアセダンの後部ドアの窓に採用されているが、4ドアセダンの後部ドア以外の車両の窓にも採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車両用ブラインド装置は、4ドアセダンの後部ドアの窓に好適である。
【符号の説明】
【0069】
11…車両、12…ドア(後部ドア)、14…ガラス、16…第1のブラインドシート、17…第2のブラインドシート、23…第1ガラス部の一端(下部)、41…第1の巻き取り機構、46…アーム、51…補助サッシ部(センタ補助サッシ部)、52…第1ガラス部、53…第2ガラス部、55…第2の巻き取り機構、65…第1ガラス部の他端(上部)、67…巻き取り軸(巻きロール芯)、68…引き端部、71…第1のラック、72…第2のラック、73…直動機構、75…第1のピニオン、76…第2のピニオン、77…駆動部、S1…第1のラックのスライド量、S2…第2のラックのスライド量。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けたガラスの外側から差し込まれる太陽光を遮光する車両用ブラインド装置において、
前記ガラスは、所望の範囲の第1ガラス部と、残りの第2ガラス部と、からなり、
前記第1ガラス部の一端の近傍から前記第1ガラス部の他端へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート並びに該第1のブラインドシートを巻き取る巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、
前記第1ガラス部と前記第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2ガラス部用の第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、
前記第2のブラインドシートの引き端部から延長し前記第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、
前記アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、前記第1のブラインドシートを手で引いて前記巻き取り軸が回転すると、前記第1のラック及び前記第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えていることを特徴とする車両用ブラインド装置。
【請求項2】
前記直動機構は、前記巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、前記第1のピニオンから前記第1のラックに伝達し、前記第2のピニオンから前記第2のラックに伝達する駆動部を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用ブラインド装置。
【請求項1】
車両のドアに設けたガラスの外側から差し込まれる太陽光を遮光する車両用ブラインド装置において、
前記ガラスは、所望の範囲の第1ガラス部と、残りの第2ガラス部と、からなり、
前記第1ガラス部の一端の近傍から前記第1ガラス部の他端へ向け引き出すことによって遮光する第1のブラインドシート並びに該第1のブラインドシートを巻き取る巻き取り軸を有する第1の巻き取り機構と、
前記第1ガラス部と前記第2ガラス部を連続的に接続する補助サッシ部から引き出される第2ガラス部用の第2のブラインドシートを有する第2の巻き取り機構と、
前記第2のブラインドシートの引き端部から延長し前記第1の巻き取り機構の近傍へ達するアームと、
前記アームに第1のラック及び第2のラックを連結して、前記第1のブラインドシートを手で引いて前記巻き取り軸が回転すると、前記第1のラック及び前記第2のラックをスライド量を異ならせて直動させる直動機構と、を備えていることを特徴とする車両用ブラインド装置。
【請求項2】
前記直動機構は、前記巻き取り軸の回転力を第1のピニオン及び第2のピニオンに伝達し、前記第1のピニオンから前記第1のラックに伝達し、前記第2のピニオンから前記第2のラックに伝達する駆動部を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用ブラインド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−46076(P2012−46076A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189876(P2010−189876)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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