説明

車両用リフト装置

【課題】 左右のリフトテーブルのための左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーと、ピットリフトのための中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーとを併せ備える車両用リフト装置において、それらピットカバーを簡易に上下動すること。
【解決手段】 車両用リフト装置10において、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに中央ピットカバー60を掛け渡すように連結してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用リフト装置として、特許文献1に記載の如く、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルを有するとともに、左右のリフトテーブルに掛け渡されるピットリフトを有し、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルとピットリフトのそれぞれを左右のピットと中央ピットのそれぞれに格納可能にし、左右のリフトテーブル及びピットリフトがそれらのピットの上方に位置するときに、中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備えるものがある。中央ピットカバーに荷重がかかっても沈むことがなく、中央ピットカバーとその周囲床面とを平らに連続し、車両の下への作業者の出入り、車両の下への工具台車の搬入等が容易になる。
【特許文献1】特許第3373393号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の車両用リフト装置では、中央ピットカバーの下面と中央ピットの底部との間に、該中央ピットカバーのために専用となる上下動手段を設置している。
【0004】
従って、左右のリフトテーブルが左右のピットの上方に位置するときに該左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーを備えるとともに、ピットリフトが中央ピットの上方に位置するときに該中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備える場合には、左右のピットカバーのための上下動手段と、中央ピットカバーのための上下動手段を格別に設置する必要があり、複雑になる。
【0005】
本発明の課題は、左右のリフトテーブルのための左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーと、ピットリフトのための中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーとを併せ備える車両用リフト装置において、それらピットカバーを簡易に上下動することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルを有するとともに、左右のリフトテーブルに掛け渡されるピットリフトを有し、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルとピットリフトのそれぞれを左右のピットと中央ピットのそれぞれに格納可能にし、左右のリフトテーブルが左右のピットの上方に位置するときに該左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーを備えるとともに、ピットリフトが中央ピットの上方に位置するときに該中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備える車両用リフト装置において、左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに中央ピットカバーを掛け渡すように連結してなるようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルを有するとともに、左右のリフトテーブルに掛け渡されるピットリフトを有し、左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルとピットリフトのそれぞれを左右のピットと中央ピットのそれぞれに格納可能にし、左右のリフトテーブルが左右のピットの上方に位置するときに該左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーを備えるとともに、ピットリフトが中央ピットの上方に位置するときに該中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備える車両用リフト装置において、左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに、伸縮支持体の両端部のそれぞれをピン結合し、伸縮支持体はそれら相対するフレームの間での高低差の発生に起因する相対するフレームの間隔の変化に応じて伸縮でき、この伸縮支持体の上に中央ピットカバーを支持してなるようにしたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、前記伸縮支持体が、左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれにピン結合される左右のエンドバーと、左右のエンドバーが伸縮自在に挿入される中央バーとの組立体からなり、中央バーの上に中央ピットカバーを支持するようにしたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において更に、前記左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに左右のフックのそれぞれを設けるとともに、中央バーの左右のフックのそれぞれに対応する位置に左右のストッパを設け、左右のピットカバーの相対するフレームの一方に対して他方が下降したとき、中央バーの左右一方のストッパが左右一方のフックに係止し、左右一方のエンドバーと中央バーとを伸縮ロックし、中央バーの左右他方のストッパは左右他方のフックに係止することなく、左右他方のエンドバーと中央バーとを互いに伸長可能にするようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1)
(a)車両用リフト装置において、左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに中央ピットカバーを掛け渡すように連結した。従って、左右のピットカバーが上下動装置により左右のピットの開口〜ピット内を上下動するとき、これら左右のピットカバーに掛け渡されている中央ピットカバーも左右のピットカバーの上下動に追従して中央ピットの開口〜ピット内を上下動する。中央ピットカバーに専用となる上下動装置を格別に設ける必要がなく、簡易である。
【0011】
(請求項2)
(b)左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに中央ピットカバーの伸縮支持体をピン結合したから、中央ピットカバーが左右のピットカバーの上下動に追従して中央ピットの開口〜ピット内を上下動するものとすることができる。このとき、左右のピットカバーの上下動が互いに同期せず、左右のピットカバーの相対するフレームの間に高低差を生じ、相対するフレームの間隔が変化しても、この高低差〜間隔の変化を伸縮支持体の伸長動作により吸収する。中央ピットカバーは高低差を生じた左右のピットカバーの上下動にも追従して上下動する。
【0012】
(請求項3)
(c)伸縮支持体を左右のエンドバーと中央バーの組立体により簡易に構成できる。
【0013】
(請求項4)
(d)左右のピットカバーの相対するフレームが高低差を生じ、左右のピットカバーの相対するフレームの一方に対して他方が下降したとき、中央バーの左右一方のストッパが左右一方のフックに係止し、左右一方のエンドバーと中央バーとを伸縮ロックし、中央バーの左右他方のストッパは左右他方のフックに係止することなく、左右他方のエンドバーと中央バーとを互いに伸長可能にする。中央ピットカバー及び中央バーは、高位の側のストッパがフックに係止することにより、低位の側に向けて下り勾配をなすように傾くだけで、落ちることがない。中央ピットカバーは、高低差を生じた左右のピットカバーの上下動に安定的に追従して上下動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は車両用リフト装置のリフトテーブルを上昇させた斜視図、図2は車両用リフト装置のリフトテーブルを格納した斜視図、図3は車両用リフト装置のリフトテーブルを上昇させた側面図、図4は車両用リフト装置のリフトテーブルを下降させた側面図、図5は車両用リフト装置のリフトテーブルを格納させた状態を示し、(A)は側面図、(B)は模式断面図、図6はトグルリンクからなる脚柱を示し、(A)は起立状態を示す側面図、(B)は傾倒状態を示す側面図、(C)は折りたたみ状態を示す側面図、図7は中央ピットカバーを示し、(A)は模式平面図、(B)は模式正面図、(C)は傾き状態を示す模式正面図、図8は左右のピットカバー及び中央ピットカバーの上下動作を示す模式正面図である。
【実施例】
【0015】
車両用リフト装置10は、図1〜図5に示す如く、自動車整備場の床面11に設けた左右のピット12、12のそれぞれに、左右一対の昇降装置20、20と、各昇降装置20により昇降されるリフトテーブル30を格納可能にする。
【0016】
昇降装置20は、X字状に交差する第1と第2のリンク21、22をX字の交差部でピン結合してXリンク機構からなる昇降部20Aを構成する。昇降部20Aは、第1リンク21(内リンク)の下端ローラ21A(摺動点)をピット12の底部に埋設した架台13内で往復直線動可能に連結し、第2リンク22(外リンク)の下端枢着点22Aを架台13にピン結合するとともに、第1リンク21の上端枢着点21Bをリフトテーブル30の主テーブル31にピン結合し、第2リンク22の上端ローラ22B(摺動点)を主テーブル31の下面内で往復直線動可能に連結することで、リフトテーブル30を水平状態で昇降できるようにしている。そして、昇降装置20は、架台13と第1リンク21の長手方向の中間部との間に油圧シリンダ23を介装し、油圧シリンダ23の収縮動作により昇降部20AのXリンク機構を上下に縮め、リフトテーブル30をピット12に格納し、リフトテーブル30を床面11と同一レベルに設定し、車両の通り抜けを可能にする。油圧シリンダ23の伸長動作により昇降部20AのXリンク機構を上下に伸ばし、リフトテーブル30をピット12から上方に上昇させる。尚、ピット12に格納されたリフトテーブル30の主テーブル31は、ピット12内の前後2位置に立設されている棒状の下限ストッパ14の上面に対し、その下面の前後2位置のそれぞれを衝合して下降端を規制される。
【0017】
車両用リフト装置10は、左右のリフトテーブル30の主テーブル31の前後2位置のそれぞれに、ピットリフト32を前後方向に移動自在に掛け渡す。ピットリフト32は、左右のリフトテーブル30の主テーブル31に支持される昇降装置32Aにより昇降されるリフトテーブル32Bを備え、RV車や小型トラック等をリフトテーブル30の上から更にリフトアップさせてフリーホイール作業を可能にする。車両用リフト装置10は、床面11に設けた左右のピット12、12の前後端部に挟まれてそれらのピット12に連続する前後の中央ピット15に、各ピットリフト32を格納可能にする。車両用リフト装置10は、左右のリフトテーブル30が左右のピット12に格納されるとき、同時に、前後のピットリフト32を前後の中央ピット15に格納可能にする。尚、左右のピット12により左右から挟まれ、前後の中央ピット15により前後から挟まれる部分には、床面11と面一をなす固定台16が配置されている。
【0018】
以下、車両用リフト装置10が備える、(A)左右のピットカバー40、(B)ピットカバー40の上下動装置50、(C)中央ピットカバー60のそれぞれについて詳述する。
【0019】
(A)左右のピットカバー40(図1〜図6)
車両用リフト装置10は、図1に示す如く、左右のリフトテーブル30が左右のピット12の上方に位置するときに、それらピット12の開口12Aを塞ぐ左右のピットカバー40を有する。ピットカバー40は、昇降装置20の第1リンク21、第2リンク22が挿通して出入する矩形状小開口40Aを中央部に切欠かれ、第1リンク21と第2リンク22の長手方向の中間部の周囲であって、リフトテーブル30をピット12に格納して伏臥状態にある第1リンク21と第2リンク22に挟まれることとなる範囲に延在される。ピットカバー40は、伏臥状態にある第1リンク21と第2リンク22の交差部の側傍を小開口40Aに通し、その交差部の前後両側で第1リンク21と第2リンク22が挟んで区画する狭小なV字スペースのV字の奥深くまで延在される(図5)。
【0020】
ピットカバー40のフレーム41は、図1に示す如く、ピット12の底部の4隅に立設されている圧縮ばね支持体42の上端部に支持される。昇降装置20がリフトテーブル30をピット12の上方に位置付けるときには、図1、図3に示す如く、ピットカバー40はピット12の開口12Aに位置してこれを塞ぐ。また、昇降装置20がリフトテーブル30をピット12に格納したときには、図2、図5に示す如く、ピットカバー40はピット12内の収納位置に位置付けられる。
【0021】
本実施例では、ピットカバー40は、後述する上下動装置50の作動により、昇降装置20によるリフトテーブル30の下降動作に連動し、ばね支持体42を圧縮させつつ、ピット12の開口12A〜ピット12内の収納位置に下動する。昇降装置20がリフトテーブル30をピット12の上方に位置付けたとき、ピットカバー40は、圧縮ばね支持体42のばね力によりピット12内の収縮位置から上動し、ピット12の開口12Aに位置付けられて開口12Aを塞ぐ。このピットカバー40の上下動時に、ピットカバー40はリフトテーブル30のための前述の下限ストッパ14の側部に設けたガイド部14Aに沿って転動するガイドローラ43を備える(図3〜図5)。ピットカバー40は、ピットカバー40の上下動時にリフトテーブル30のための下限ストッパ14が突き抜ける孔44を備え、この孔44に開閉蓋45を備える(図5)。尚、上下動装置50によるピットカバー40の上下動作については後述する。
【0022】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)リフトテーブル30がピット12の上方に位置するときに該ピット12の開口12Aを塞ぐピットカバー40が、第1と第2のリンク21、22の長手方向の中間部の周囲であって、リフトテーブル30をピット12に格納して伏臥状態にある第1と第2のリンク21、22に挟まれることとなる範囲に延在される。Xリンク機構を構成する第1と第2のリンク21、22の下端部をピット12の底部の側に連結した昇降装置20を1段だけ用いる車両用リフト装置10において、この昇降装置20により昇降されるリフトテーブル30のためのピット12にピットカバー40を設けることができる。しかも、ピットカバー40が、第1と第2のリンク21、22の長手方向の中間部の周囲であって、リフトテーブル30をピット12に格納して伏臥状態にある第1と第2のリンク21、22に挟まれる範囲に延在されてなるようにしたから、ピットカバー40の第1と第2のリンク21、22が挿通する小開口40Aの開口幅を可及的に狭くしながら、ピット12の開口12Aを塞ぐピットカバー40のカバー面積をより広く延在できる。作業環境、安全性が向上する。
【0023】
(b)昇降装置20はピット12の底部の側に設置され、リフトテーブル30を昇降させるだけであり、小容量で足りる。
【0024】
(c)昇降装置20を構成するXリンク機構及び油圧シリンダ23をピット12内に設置するものになり、これらの床面上への露出を少なくし、ピット12への格納率を高くすることができる。
【0025】
(d)ピットカバー40を昇降装置20によるリフトテーブル30の下降動作に連動させて、下動させるものであり、ピットカバー40のための駆動源を別途必要としない。
【0026】
尚、左右のピットカバー40は、左右のリフトテーブル30の昇降装置20に対する独立の駆動源、例えば左右のピットカバー40に専用となるエアシリンダにより、左右のピット12の開口12A〜ピット12内の収納位置の間を上下動するものとすることもできる。ピットカバー40を昇降装置20とは独立の駆動源により上下動させることにより、ピット12内に装備されるピットカバー40の上下動装置50を単純化できる。
【0027】
(B)ピットカバー40の上下動装置50(図1〜図6)
上下動装置50は、図3〜図6に示す如く、ピットカバー40を起倒自在であって起立位置でロックするトグルリンクからなる脚柱51によって支持する。脚柱51は2本の折れ棒52、53を連結点aでピン結合して構成され、折れ棒52の上端部を連結点bでピットカバー40のフレーム41にピン結合し、折れ棒53の下端部を連結点cでピット12の架台13にピン結合する。脚柱51は、ピットカバー40のフレーム41に設けたスプリング受との間に付勢手段54を構成する引張ばねを張設され、折れ棒52の付勢手段54による引張方向に対する背面に設けた凹部52Aと、折れ棒53の付勢手段54による引張方向に対する背面に設けた凸部53Aとを付勢手段54の引張力により係合されて起立される。脚柱51が起立位置にあるとき、連結点aは、連結点bと連結点cを結ぶ直線より付勢手段54の引張側に位置し、トグルリンクからなる脚柱51をロックする。上下動装置50は、脚柱51の起立時に、ピットカバー40によってピット12の開口12Aを塞ぎ、脚柱51の上述の起立位置からの傾倒時にピットカバー40をピット12内に収納する。
【0028】
上下動装置50は、脚柱51を上述の如くに付勢手段54により起立位置に向けて付勢するとともに、昇降装置20によるリフトテーブル30のピット12への下降動作に連動する傾倒手段55により脚柱51を付勢手段54の引張力に抗して上述の起立位置から傾倒させる。
【0029】
傾倒手段55は、図6に示す如く、ピットカバー40のフレーム41に揺動自在に設けられた解除レバー55からなる。解除レバー55は、本実施例では、脚柱51の折れ棒52のための連結点bでフレーム41にピン結合されている。解除レバー55は、昇降装置20によるリフトテーブル30のピット12への下降動作に連動する。本実施例では、解除レバー55はフレーム41へのピン結合点bから一定半径をなす位置に押動ピン55Aを備え、起立位置にある脚柱51の折れ棒52の正面に押動ピン55Aを衝合して待機位置に位置付けられる(図3)。解除レバー55は、昇降部20AのXリンク機構が上下に縮む過程で、昇降装置20の第2のリンク22の中間部に設けてある解除ローラ56により押圧されて揺動力を付与され、待機位置から揺動する。解除レバー55はピットカバー40のフレーム41に設けてある揺動ストッパ57に衝合するまで揺動される(図4)。解除レバー55は、待機位置から揺動ストッパ57に衝合するまでの揺動の過程で、押動ピン55Aにより付勢手段54のばね力に抗して起立状態にある脚柱51の折れ棒52を押動することにより、脚柱51に傾倒力を付与し、脚柱51を傾倒させる(図4)。解除レバー55は、ピットカバー40のフレーム41の揺動ストッパ57への衝合後に、昇降部20AのXリンク機構が更に上下に縮んで第1リンク21と第2リンク22を伏臥状態に位置付け、リフトテーブル30をピット12に格納する過程で、昇降装置20の第2のリンク22の解除ローラ56により更に押圧される。この結果、解除レバー55は、揺動ストッパ57を介して、ピットカバー40にピット12内への押し込み力を付与して該ピットカバー40をピット12内に収納する(図5)。
【0030】
上下動装置50は、前後各2位置、中間2位置の全6位置に設けた全6本の脚柱51によりピットカバー40を支持する。各脚柱51は、ピットカバー40に平行をなす連結リンク58で連結される。連結リンク58は各脚柱51の折れ棒52と折れ棒53の連結点aにピン結合される。これにより、各脚柱51の折れ棒52、53は、ピットカバー40及び連結リンク58とともに互いに平行リンク機構を形成する。各脚柱51の折れ棒52、53は互いに平行移動するものになる。
【0031】
車両用リフト装置10は、前述の如く、ピット12に格納されるリフトテーブル30の下限ストッパ14をピット12内に立設しており、脚柱51が起立位置から傾倒するときに、ピット12の開口12A〜ピット12内を上下動するピットカバー40の下面に設けてあるガイドローラ43を、下限ストッパ14の側部に設けたガイド部14Aに沿って転動させて案内する。
【0032】
従って、上下動装置50によるピットカバー40の上下動作は以下の如くになされる。
(1)昇降装置20がリフトテーブル30をピット12の上方に位置するとき、ピットカバー40は起立位置にある脚柱51に支持され、ピット12の開口12Aを塞ぐ(図1、図3)。
【0033】
(2)昇降装置20がリフトテーブル30をピット12に格納するため、昇降部20AのXリンク機構が上下に縮むとき、第2リンク22の解除ローラ56が解除レバー55を押圧して待機位置から揺動させると、解除レバー55の押動ピン55Aが起立位置にある脚柱51の折れ棒52を押動し、脚柱51を傾倒させる(図4)。
【0034】
(3)昇降部20AのXリンク機構が更に上下に縮み、第2リンク22の解除ローラ56が解除レバー55を更に揺動させると、解除レバー55がピットカバー40のフレーム41に設けてある揺動ストッパ57に衝合する。解除レバー55は揺動ストッパ57を介して圧縮ばね支持体42を圧縮させつつ、ピットカバー40をピット12の開口12Aから下動させてピット12内に押し込む。ピットカバー40がピット12の開口12Aから少し下動した後、ピット12内の下限ストッパ14がピットカバー40の孔44を突き抜けて開閉蓋45を開き、ピットカバー40はそのガイドローラ43を下限ストッパ14のガイド部14Aに案内されつつ更に下動する。昇降部20Aの第1のリンク21と第2のリンク22が伏臥状態に位置付けられると、リフトテーブル30がピット12の開口12Aに格納され、ピットカバー40がピット12内に収納される(図2、図5)。
【0035】
(4)昇降装置20がリフトテーブル30をピット12の開口12Aから上昇させると、ピットカバー40は、圧縮ばね支持体42のばね力により上方へ付勢され、ピットカバー40の揺動ストッパ57を昇降装置20の第2のリンク22の解除ローラ56に衝合させつつ上動する。このとき、ピットカバー40はそのガイドローラ43を下限ストッパ14のガイド部14Aに案内されつつ上動する。
【0036】
昇降装置20がリフトテーブル30を更に上昇させ、昇降装置20の第2のリンク22の解除ローラ56がピットカバー40の揺動ストッパ57から離隔するとき、上下動装置50の付勢手段54が脚柱51の折れ棒52、53を引張り、脚柱51が起立位置に位置付けられてロックされる。このとき、ピットカバー40はピット12の開口12Aに位置付けられて脚柱51により支持され、開口12Aを塞ぐ。ピットカバー40の孔44は下限ストッパ14のガイド部14Aから外れ、開閉蓋45により閉鎖され、ピット12内への異物の侵入を防止する。
【0037】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)車両用リフト装置10において、ピット12に格納されるリフトテーブル30の下限ストッパ14をピット12内に立設し、脚柱51が起立位置に対して傾倒するときにピット12の開口12A〜ピット12内を上下動するピットカバー40を上記下限ストッパ14に設けたガイド部14Aによって案内するようにした。リフトテーブル30の下限ストッパ14をピットカバー40のためのガイド部14Aとして利用し、ピットカバー40の上下動を安定的にガイドできる。
【0038】
(b)ピットカバー40にリフトテーブル30の下限ストッパ14が突き抜ける孔44を設け、該孔44に開閉蓋45を備えた。ピット12内の適宜位置に下限ストッパ14を立設しながら、ピットカバー40の孔44に下限ストッパ14を通し、該ピットカバー40の上下動を安定的にガイドできる。ピットカバー40がピット12の開口12Aを塞ぐ位置にあるときには、その孔44を開閉蓋45で閉じ、ピット12内への異物の落下を防止できる。
【0039】
(c)ピットカバー40に設けた揺動自在な解除レバー55を、ピットカバー40を支持する脚柱51のための傾倒手段55とし、脚柱51の傾倒、ピットカバー40のピット12内への押し込みを、コンパクトな構造により実現できる。
【0040】
(d)ピットカバー40に設けた解除レバー55を、昇降装置20の昇降部20Aに設けた解除ローラ56によって簡易に揺動/押し込み操作できる。
【0041】
(e)ピットカバー40が複数本の脚柱51により支持され、各脚柱51がピットカバー40に平行をなす連結リンク58で連結され、ピットカバー40及び連結リンク58とともに互いに平行リンク機構を形成する。複数本の互いに平行移動する脚柱51によりピットカバー40を安定的に支持し、該ピットカバー40を安定的に上下動させることができる。
【0042】
(C)中央ピットカバー60(図1、図2、図7、図8)
車両用リフト装置10は、図1に示す如く、ピットリフト32が中央ピット15の上方に位置するときに、中央ピット15の開口15Aを塞ぐ中央ピットカバー60を有する。
【0043】
車両用リフト装置10は、左右のピットカバー40の相対するフレーム41に、中央ピットカバー60をブリッジ状に掛け渡すように連結している。中央ピットカバー60の左右両縁部が左右のピットカバー40のフレーム41に概ね隙間のないように配置される。
【0044】
本実施例では、左右のピットカバー40が昇降装置20による左右のリフトテーブル30の下降動作に連動し、左右のピット12の開口12A〜ピット12内の収納位置に下動するとき、同時に、左右のピットカバー40に連結されている中央ピットカバー60が中央ピット15の開口15A〜中央ピット15内の収納位置に下動する。昇降装置20が左右のリフトテーブル30を左右のピット12の上方に位置付けるとともに、ピットリフト32を中央ピット15の上方に位置付けたとき、ピットカバー40はピット12の開口12Aに位置付けられて開口12Aを塞ぎ、中央ピットカバー60は中央ピット15の開口15Aに位置付けられて開口15Aを塞ぐ。左右のピットカバー40及び中央ピットカバー60は荷重がかかっても沈むことがなく、左右のピットカバー40及び中央ピットカバー60とその周囲床面とを平らに連続し、作業環境、安全性を確保する。
【0045】
このとき、左右のリフトテーブル30を昇降させる左右一対の昇降装置20、20は、左右独立しながら、例えば油圧にて同調制御されている。従って、左右のピットカバー40を下動させる左右のリフトテーブル30の下降動作がそれらの昇降装置20の据付け、調整等により、又は運転異常により非同期状態になる等により、左右のピットカバー40の下降タイミングにずれを生じ、それらピットカバー40の相対するフレーム41の間に高低差(段差)を生ずることがあり得る。
【0046】
そこで、車両用リフト装置10は、図7に示す如く、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに、伸縮支持体70の両端部のそれぞれをピン結合し、伸縮支持体70はそれら相対するフレーム41の間での高低差の発生に起因する相対するフレーム41、41の間隔の変化に応じて伸縮でき、この伸縮支持体70の上に中央ピットカバー60を支持する。
【0047】
本実施例では、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに、2組の伸縮支持体70、70の両端部のそれぞれをピン結合している。各1組の伸縮支持体70は、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに設けた支持ブラケット41Aの両端部のそれぞれに支軸71Aを介してピン結合される左右のエンドバー71、71と、左右のエンドバー71、71が伸縮自在に挿入される中央バー72との組立体からなる。本実施例において、中央バー72は中空管からなり、中央バー72の左右両端側から左右のエンドバー71の先端部が挿入される。2組の伸縮支持体70を構成する一方の伸縮支持体70のエンドバー72の上と、他方の伸縮支持体70のエンドバー72の上に、中央ピットカバー60の下面に設けられる左右の枠材73、73が固定され、それら中央バー72の上に中央ピットカバー60が支持されるものになる。
【0048】
車両用リフト装置10は、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに設けた支持ブラケット41Aの中央部に、左右のフック62、62を設ける。また、2組の伸縮支持体70において中央ピットカバー60を支持する中央バー72と一体をなす左右の枠材73、73の中央部であって、左右のフック62、62のそれぞれに対応する位置に左右の枠状ストッパ63、63を設ける。左右のピットカバー40の相対するフレーム41が同一高さレベルにあり、中央ピットカバー60が水平状態にあるとき(図7(A)、(B))、フレーム41側のフック62は、平面視で中央ピットカバー60側のストッパ63の枠内に位置する。相対する一方のフレーム41に対し他方のフレーム41が低位となる側に下降するとき(図7(C))、一方のフレーム41のフック62は中央ピットカバー60側のストッパ63に係止し、他方のフレーム41のフック62は中央ピットカバー60側のストッパ63との係止可能範囲から下方へずれて外れるように設定される。
【0049】
左右のピットカバー40の相対するフレーム41の一方、本実施例では左方のピットカバー40のフレーム41に対して右方のピットカバー40のフレーム41が先行して下降したとき、中央ピットカバー60(中央バー72)側の左ストッパ63が左フック62に係止し、左エンドバー71と中央バー72とを伸縮ロックする。同時に、中央ピットカバー60(中央バー72)側の右ストッパ63は右フック62に係止することなく外れ、右エンドバー71と中央バー72とを互いに伸長可能にする。これにより、伸縮支持体70は左右のピットカバー40の高低差〜間隔の変化を右エンドバー71と中央バー72の伸長動作により吸収し、中央ピットカバー60は低位となる右側のピットカバー40に向けて下り勾配をなすように傾くだけで、落ちることがない。
【0050】
従って、中央ピットカバー60の上下動作は以下の如くになされる。
(1)昇降装置20が左右のリフトテーブル30及びピットリフト32を左右のピット12、中央ピット15の上方に位置するとき、左右のピットカバー40は左右のピット12の開口12Aを塞ぎ、中央ピットカバー60は左右のピットカバー40に連結されていて中央ピット15の開口15Aを塞ぐ(図8(A))。
【0051】
(2)昇降装置20が左右のピットテーブル30及びピットリフト32を左右のピット12、中央ピット15に格納させるとき、左右のピットカバー40は左右のリフトテーブル30の下降動作に連動して左右のピット12の開口12Aから下動する。同時に、左右のピットカバー40に連結されている中央ピットカバー60も中央ピット15の開口15Aから下動する。左右のピットカバー40及び中央ピットカバー60が左右のピット12、中央ピット15に収納される。
【0052】
(3)左右のリフトテーブル30の下降動作が互いに同期しない等により、左側のピットカバー40に対して右側のピットカバー40が先行して下動すると(図8(B))、中央ピットカバー60は前述の如く右側下り勾配で傾いて下動し、その後左側のピットカバー40も後続して下動することにより、左右のピットカバー40及び中央ピットカバー60が左右のピット12、中央ピット15に収納され(図8(D))、左右のリフトテーブル30及びピットリフト32が左右のピット12の開口12A、中央ピット15の開口15Aに格納される(図8(E))。
【0053】
(4)左右のリフトテーブル30の下降動作が互いに同期しない等により、右側のピットカバー40に対して左側のピットカバー40が先行して下動すると(図8(C))、中央ピットカバー60は左側下り勾配で傾いて下動し、その後右側のピットカバー40も後続して下動することにより、左右のピットカバー40及び中央ピットカバー60が左右のピット12、中央ピット15に収納され(図8(D))、左右のリフトテーブル30及びピットリフト32が左右のピット12の開口12A、中央ピット15の開口15Aに格納される(図8(E))。
【0054】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)車両用リフト装置10において、左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに中央ピットカバー60を掛け渡すように連結した。従って、左右のピットカバー40が上下動装置50により左右のピット12の開口12A〜ピット12内を上下動するとき、これら左右のピットカバー40に掛け渡されている中央ピットカバー60も左右のピットカバー40の上下動に追従して中央ピット15の開口15A〜ピット15内を上下動する。中央ピットカバー60に専用となる上下動装置50を格別に設ける必要がなく、簡易である。
【0055】
(b)左右のピットカバー40の相対するフレーム41のそれぞれに中央ピットカバー60の伸縮支持体70をピン結合したから、中央ピットカバー60が左右のピットカバー40の上下動に追従して中央ピット15の開口15A〜ピット15内を上下動するものとすることができる。このとき、左右のピットカバー40の上下動が互いに同期せず、左右のピットカバー40の相対するフレーム41の間に高低差を生じ、相対するフレーム41の間隔が変化しても、この高低差〜間隔の変化を伸縮支持体70の伸長動作により吸収する。中央ピットカバー60は高低差を生じた左右のピットカバー40の上下動にも追従して上下動する。
【0056】
(c)伸縮支持体70を左右のエンドバー71と中央バー72の組立体により簡易に構成できる。
【0057】
(d)左右のピットカバー40の相対するフレーム41が高低差を生じ、左右のピットカバー40の相対するフレーム41の一方に対して他方が下降したとき、中央バー72の左右一方のストッパ63が左右一方のフック62に係止し、左右一方のエンドバー71と中央バー72とを伸縮ロックし、中央バー72の左右他方のストッパ63は左右他方のフック62に係止することなく、左右他方のエンドバー71と中央バー72とを互いに伸長可能にする。中央ピットカバー60及び中央バー72は、高位の側のストッパ63がフック62に係止することにより、低位の側に向けて下り勾配をなすように傾くだけで、落ちることがない。中央ピットカバー60は、高低差を生じた左右のピットカバー40の上下動に安定的に追従して上下動する。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は車両用リフト装置のリフトテーブルを上昇させた斜視図である。
【図2】図2は車両用リフト装置のリフトテーブルを格納した斜視図である。
【図3】図3は車両用リフト装置のリフトテーブルを上昇させた側面図である。
【図4】図4は車両用リフト装置のリフトテーブルを下降させた側面図である。
【図5】図5は車両用リフト装置のリフトテーブルを格納させた状態を示し、(A)は側面図、(B)は模式断面図である。
【図6】図6はトグルリンクからなる脚柱を示し、(A)は起立状態を示す側面図、(B)は傾倒状態を示す側面図、(C)は折りたたみ状態を示す側面図である。
【図7】図7は中央ピットカバーを示し、(A)は模式平面図、(B)は模式正面図、(C)は傾き状態を示す模式正面図である。
【図8】図8は左右のピットカバー及び中央ピットカバーの上下動作を示す模式正面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 車両用リフト装置
12 左右のピット
12A 開口
15 中央ピット
15A 開口
20 昇降装置
30 リフトテーブル
32 ピットリフト
40 左右のピットカバー
41 フレーム
60 中央ピットカバー
62 フック
63 ストッパ
70 伸縮支持体
71 エンドバー
72 中央バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルを有するとともに、左右のリフトテーブルに掛け渡されるピットリフトを有し、
左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルとピットリフトのそれぞれを左右のピットと中央ピットのそれぞれに格納可能にし、
左右のリフトテーブルが左右のピットの上方に位置するときに該左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーを備えるとともに、ピットリフトが中央ピットの上方に位置するときに該中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備える車両用リフト装置において、
左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに中央ピットカバーを掛け渡すように連結してなることを特徴とする車両用リフト装置。
【請求項2】
左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルを有するとともに、左右のリフトテーブルに掛け渡されるピットリフトを有し、
左右の昇降装置により昇降される左右のリフトテーブルとピットリフトのそれぞれを左右のピットと中央ピットのそれぞれに格納可能にし、
左右のリフトテーブルが左右のピットの上方に位置するときに該左右のピットの開口を塞ぐ左右のピットカバーを備えるとともに、ピットリフトが中央ピットの上方に位置するときに該中央ピットの開口を塞ぐ中央ピットカバーを備える車両用リフト装置において、
左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに、伸縮支持体の両端部のそれぞれをピン結合し、伸縮支持体はそれら相対するフレームの間での高低差の発生に起因する相対するフレームの間隔の変化に応じて伸縮でき、この伸縮支持体の上に中央ピットカバーを支持してなることを特徴とする車両用リフト装置。
【請求項3】
前記伸縮支持体が、左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれにピン結合される左右のエンドバーと、左右のエンドバーが伸縮自在に挿入される中央バーとの組立体からなり、中央バーの上に中央ピットカバーを支持する請求項2に記載の車両用リフト装置。
【請求項4】
前記左右のピットカバーの相対するフレームのそれぞれに左右のフックのそれぞれを設けるとともに、中央バーの左右のフックのそれぞれに対応する位置に左右のストッパを設け、
左右のピットカバーの相対するフレームの一方に対して他方が下降したとき、中央バーの左右一方のストッパが左右一方のフックに係止し、左右一方のエンドバーと中央バーとを伸縮ロックし、中央バーの左右他方のストッパは左右他方のフックに係止することなく、左右他方のエンドバーと中央バーとを互いに伸長可能にする請求項3に記載の車両用リフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−221010(P2009−221010A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70367(P2008−70367)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000114695)株式会社ヤスヰ (41)