説明

車両用冷凍サイクル装置

【課題】可変容量型圧縮機の所定箇所の圧力を簡易な構成で正確に推定する。
【解決手段】車両に搭載されたエンジン11により駆動され、冷媒の吐出容量を可変させる吐出容量可変手段15を有する可変容量型圧縮機2と、可変容量型圧縮機2の冷媒の吸入側に接続される蒸発器6とを有する冷凍サイクル1と、可変容量型圧縮機2の吸入圧力Psの目標値となる設定吸入圧力Psoを算出し、吸入圧力Psが設定吸入圧力Psoとなるように吐出容量可変手段15を作動させて可変容量型圧縮機2の吐出容量を制御する吐出容量制御手段と、冷凍サイクル1の熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、冷凍サイクル1を循環する冷媒流量Grを検出する冷媒流量検出手段8と、熱負荷検出手段により検出された検出値と冷媒流量検出手段8により検出された冷媒流量Grに基づいて可変容量型圧縮機2の所定箇所の圧力を推定する圧力推定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用冷凍サイクル装置に用いられる可変容量型圧縮機は、車両のエンジンを駆動源として駆動され、冷媒の吐出容量を可変させる容量可変装置を有している。空調制御装置で行なう可変容量型圧縮機の吐出容量制御は、可変容量型圧縮機の吸入圧力が設定吸入圧力(吸入圧力の目標値)となるように容量可変装置を作動させて吐出容量の制御を行なうものがある(吸入圧力制御方式)。
【0003】
この吸入圧力制御方式を採用した可変容量型圧縮機を備える車両用冷凍サイクル装置では、車速が急激に変化し圧縮機の回転速度が急変する過渡状態において、可変容量型圧縮機の加速カット制御等の非常時制御を行なうことで、車両エンジン負荷を軽減しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−47856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の吐出容量制御では、加速カット制御(非常時制御)を終了して通常制御への移行する際に、容量可変装置に出力する制御信号を、非常時制御から通常制御への移行経過時間と制御信号との相関関係を定めた複数の制御マップの中から最適な制御マップを1つ選択して決定している。この制御マップは、非常時制御の終了時の圧縮機吸入圧力に基づいて選択されている。ここで、圧縮機の吸入圧力を正確に検出するために、吸入圧力を検出する吸入圧力センサを用いているが、圧縮機内部の構成配置、部品点数の増加等から、圧力センサを追加するとコストアップに繋がる問題がある。
【0005】
このため、一般的に可変容量型圧縮機の吐出容量制御においては、例えば吸入圧力を検出する際に、蒸発器の温度センサで検出された蒸発器温度より蒸発器圧力を算出し、この蒸発器圧力を圧縮機吸入圧力として推定している。この場合、圧縮機の吸入圧力は蒸発器圧力であるため、実際の圧縮機の吸入圧力と乖離するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、可変容量型圧縮機の所定箇所の圧力を簡易な構成で正確に推定することを第1の目的とする。また、車両エンジンが高負荷時において適切な圧縮機の設定吸入圧力を算出することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するため、本発明では、車両に搭載されたエンジン(11)により駆動され、冷媒の吐出容量を可変させる吐出容量可変手段を有する可変容量型圧縮機(2)と、可変容量型圧縮機(2)の冷媒の吸入側に接続され、冷媒を蒸発させて車室内を流れる空気を冷却する蒸発器(6)とを有する冷凍サイクル(1)と、可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)の目標値となる設定吸入圧力(Pso)を算出し、吸入圧力(Ps)が設定吸入圧力(Pso)となるように吐出容量可変手段を作動させて可変容量型圧縮機の吐出容量を制御する吐出容量制御手段と、冷凍サイクル(1)の熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、冷凍サイクル(1)を循環する冷媒流量(Gr)を検出する冷媒流量検出手段(8)と、熱負荷検出手段により検出された検出値と冷媒流量検出手段(8)により検出された冷媒流量(Gr)に基づいて可変容量型圧縮機(2)の所定箇所の圧力を推定する圧力推定手段とを備えることを第1の特徴とする。
【0008】
これによると、冷凍サイクル(1)における熱負荷のみから可変容量型圧縮機(2)の所定箇所の圧力を推定する場合に比べて、冷凍サイクル(1)における熱負荷と冷媒流量(Gr)に基づいて可変容量型圧縮機(2)の所定箇所の圧力を推定することで、冷凍サイクル(1)内の冷媒流量(Gr)の増減により発生する圧力変化を所定箇所の圧力の推定に反映させることができる。
【0009】
さらに、冷凍サイクル(1)において熱負荷検出手段と冷媒流量検出手段(8)との構成で、可変容量型圧縮機(2)の所定箇所の圧力を推定できるため、冷凍サイクル(1)における構成配置、部品点数増加等を抑制できる。
【0010】
その結果、可変容量型圧縮機(2)における所定箇所の圧力を簡易な構成で正確に推定することができる。
【0011】
また、第1の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、所定箇所の圧力は、可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)であることを第2の特徴とする。
【0012】
これによると、冷凍サイクル(1)内の冷媒流量の増減により発生する冷凍サイクル(1)内における蒸発器(6)と可変容量型圧縮機(2)間の圧力変化を、可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)の推定に反映させることができる。その結果、吸入圧力(Ps)を検出する吸入圧力センサを設けることなく、冷凍サイクル(1)内における吸入圧力を簡易な構成で正確に推定することができる。
【0013】
また、第2の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、熱負荷検出手段は、蒸発器(6)内の冷媒温度に関連する物理量である蒸発器温度(Te)を検出する蒸発器温度検出手段(13)であって、圧力推定手段は、蒸発器温度検出手段(13)で検出された蒸発器温度(Te)により蒸発器(6)内の冷媒圧力である蒸発器圧力(PL)を推定し、冷媒流量検出手段(8)で検出された冷媒流量(Gr)により蒸発器(6)と可変容量型圧縮機(2)間における冷媒の圧力損失(ΔP)を推定し、蒸発器圧力(PL)から圧力損失(ΔP)を減ずることにより可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)を推定することを第3の特徴とする。
【0014】
これにより、冷媒流量検出手段(8)により、蒸発器(6)−可変容量型圧縮機(2)間の圧力損失(ΔP)を推定して、蒸発器圧力(PL)から圧力損失(ΔP)を減ずることで、蒸発器(6)−可変容量型圧縮機(2)間の圧力損失(ΔP)を考慮した可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)を推定することができる。ここで、蒸発器温度(Te)は、蒸発器(6)内の冷媒温度に関連する物理量であって、蒸発器(6)内の冷媒温度に限らず、例えば蒸発器(6)で冷却される空気の温度(蒸発器吹出温度)を含むものである。
【0015】
また、第2の目的を達成するため、本発明では、第2、第3の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、エンジン(11)の負荷状態を検出するエンジン負荷検出手段と、エンジン負荷検出手段により検出された負荷状態に基づいて、エンジン(11)が高負荷状態か否かを判定する負荷状態判定手段とを備え、圧力推定手段は、負荷状態判定手段によりエンジン(11)の負荷状態が高負荷状態であるとの判定後に推定吸入圧力(Ps1)を推定し、吐出容量制御手段は、推定吸入圧力(Ps1)に基づいて設定吸入圧力(Pso)を算出し、可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)が設定吸入圧力(Pso)となるように容量可変手段(15)を作動させて可変容量型圧縮機の吐出容量を制御することを第4の特徴とする。
【0016】
これにより、エンジン(11)負荷が高負荷であると判定された後に、正確に推定された推定吸入圧力(Ps1)に基づいて設定吸入圧力(Pso)を算出し、この設定吸入圧力(Pso)となるように容量可変手段(15)を作動させ、吐出容量を制御することで、車両エンジン(11)が高負荷時において正確に推定された推定吸入圧力(Ps)に基づいて設定吸入圧力(Pso)を算出することができる。
【0017】
また、第4の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、負荷状態は、車両速度およびアクセル開度あって、エンジン負荷状態判定手段は、車両速度が所定速度以下かつアクセル開度が所定開度以上である場合にエンジン(11)が高負荷状態と判定することで、エンジン(11)の負荷状態の判定を正確に行なうことができる。
【0018】
また、第4の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、設定吸入圧力(Pso)は、推定吸入圧力(Ps1)に所定圧力(α)を加算して算出することを第5の特徴とする。
【0019】
これにより、設定吸入圧力(Pso)は、推定吸入圧力(Ps1)よりも所定圧力(α)増加させることができるため、確実に圧縮機トルクを低減することができる。
【0020】
また、第5の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、所定圧力(α)を、冷媒流量検出手段(8)で検出される冷媒流量(Gr)に比例して増減することで、冷媒流量が多い場合は、所定圧力(α)を増加させ、より圧縮機トルクを減少させることができる。また、冷媒流量が少ない場合は、所定圧力(α)を減少させることで、圧縮機トルクの減少とともに、空調変化による乗員の不快感を抑制することができる。
【0021】
また、第4の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、容量可変手段(15)は、負荷状態検出手段によりエンジン(11)の負荷状態が高負荷状態であると判定され、推定吸入圧力(Ps1)に基づいて算出される設定吸入圧力(Pso)となるように吐出容量を制御した後、徐々に設定吸入圧力(Pso)を減少させることで、車両エンジンの負荷増大による急激な加速性の減少、圧縮機への急激な高負荷によるショックを抑制することができる。
【0022】
また、第4の特徴の車両用冷凍サイクル装置において、吐出容量制御手段は、フィードバック制御により可変容量型圧縮機の吸入圧力(Ps)が、推定吸入圧力(Ps1)に基づいて算出された設定吸入圧力(Pso)となるように制御することで、設定吸入圧力(Pso)と実際の吸入圧力(Ps)の乖離を抑制することができるため、正確にエンジン高負荷時における可変容量型圧縮機(2)の吐出容量の制御をすることができる。
【0023】
また、設定吸入圧力(Pso)は、蒸発器温度(Te)により推定される蒸発器圧力(PL)としてもよい。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態では、車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置1に適用している。図1は本発明の車両空調用冷凍サイクル装置1の全体構成図である。
【0026】
図1に示すように車両空調用冷凍サイクル装置1には、車両空調用冷凍サイクル装置1の冷媒圧縮機として可変容量型圧縮機2が備えられている。可変容量型圧縮機2は動力伝達機構9、ベルト10等を介して車両走行用エンジン11から駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0027】
本実施形態では、後述する空調用制御装置14からの制御信号(制御電流In)により吐出容量を連続的に可変する外部可変容量型圧縮機2を使用している。この外部可変容量型圧縮機2は公知のものであり、例えば、斜板型圧縮機において吐出圧力Pdと吸入圧力Psを利用して斜板室の圧力を制御する電磁式圧力制御装置(図示せず)を持つ容量可変装置15を備えている。なお、容量可変装置15が、本発明における容量可変手段に相当している。
【0028】
この容量可変装置15で斜板室の圧力を制御することにより、斜板の傾斜角度を可変してピストンのストローク、すなわち圧縮機吐出容量を略0〜100%の範囲で連続的に変化させることができる。
【0029】
この容量可変装置15の電磁式圧力制御装置は、可変容量型圧縮機2の吐出圧力Pdと吸入圧力Psを利用して制御圧力Pc(斜板室圧力)を変化させるものである。
【0030】
この電磁気式圧力制御装置は、制御電流Inにより電磁力が調節される電磁機構、およびこの電磁機構の電磁力と吸入圧力Psとの釣り合いによって変位する弁体を有し、この弁体により可変容量型圧縮機2の吐出圧力Pdを斜板室内に導く通路の圧力損失を調節して、制御圧力を変化させるようになっている。
【0031】
容量可変装置15の電磁式圧力制御装置への通電は空調用制御装置14により制御されており、容量可変装置15の制御電流Inを増大させると圧縮機吐出容量が増大するようになっている。
【0032】
ここで、圧縮機吐出容量が増大すると吸入圧力(低圧側圧力)Psは低下する。つまり、容量可変装置15の制御電流Inは実際の吸入圧力Psの目標値である設定吸入圧力Psoを決めており、設定吸入圧力Psoは制御電流Inの増加に反比例して低下する(図5参照)。
【0033】
従って、制御電流Inの増減により可変容量型圧縮機2の吐出容量、ひいては吐出冷媒流量が増減して実際の吸入圧力Psを上下させて、後述する蒸発器6の吹出温度(蒸発器温度Te)が所定の最終目標温度TEO(設定吸入圧力Psoに対応した温度)となるように蒸発器6の冷却能力を制御できる。
【0034】
ここで、制御電流Inは具体的にはデューティ制御により可変するが、制御電流Inの値をデューティ制御によらず直接連続的(アナログ的)に増減してもよい。
【0035】
斜板式可変容量型圧縮機2は制御圧力Pcの調整により吐出容量を100%から略0%付近まで連続的に変化させることができる。そして、吐出容量を略0%付近に減少することにより、可変容量型圧縮機2が実質的に作動停止状態になる。したがって、可変容量型圧縮機2の回転軸をプーリ、ベルト等を介して車両エンジン側のプーリに常時連結するクラッチレスの構成とすることができる。
【0036】
また、可変容量型圧縮機2内の吐出側領域には、可変容量型圧縮機2から吐出される気相冷媒の冷媒流量Grを検出する流量センサ8が設けられている。なお、流量センサ8が、本発明における流量制御手段に相当している。
【0037】
本実施形態における流量センサ8は、絞り部(図示せず)および差圧検出器(図示せず)を備えている。絞り部は、可変容量型圧縮機2の吐出冷媒の冷媒流量を絞るために設けられており、絞り部の前後の二点間での圧力損失(差圧)を差圧検出器により検出する。
【0038】
流量センサ8は、後述する空調制御装置14により、差圧検出器で検出された二点間の圧力損失と吐出冷媒密度とに基づいて冷媒流量を推定することで、車両空調用冷凍サイクル装置1における冷媒流量を間接検知している。
【0039】
ここで、吐出冷媒密度は、吐出圧力(高圧圧力)と1対1で特定される関係にあるため、流量センサ8で検出される圧力損失と後述する高圧センサ18で検出される吐出圧力との相関関係を定めた制御マップ(図示せず)を後述する空調制御装置のROM等に予め記憶しておき、この制御マップに基づいて推定することができる。
【0040】
可変容量型圧縮機2の吐出側は、凝縮器3入口側に接続されている。この凝縮器3は、エンジンルーム内にてエンジン11と車両フロントグリル(図示せず)との間に配置されており、可変容量型圧縮機2から吐出された冷媒と送風ファン(図示せず)により送風された外気とを熱交換させて、冷媒を冷却する放熱器である。
【0041】
凝縮器3の冷媒出口側は、気液分離器4の冷媒入口側に接続されている。気液分離器4は、凝縮器3で冷却された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するものである。
【0042】
気液分離器4の冷媒出口側は、膨張弁5に接続されている。膨張弁5は、気液分離器4で分離された液相冷媒を減圧膨張させるとともに、膨張弁5出口側から流出する冷媒の流量を調整するものである。
【0043】
具体的には、膨張弁5は、可変容量型圧縮機2と後述する蒸発器6間の冷媒温度を検出する感温筒5aを有しており、可変容量型圧縮機2に吸入される冷媒の温度と圧力とに基づいて圧縮機2吸入側冷媒の過熱度を検出し、この過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度を調整している。
【0044】
膨張弁5の下流側は、蒸発器6に接続されている。蒸発器6は、空調ユニットの空調ケース7内に配置されており、膨張弁5にて減圧膨張された冷媒と空調ケース7内に配置された送風ファン12によって送風された送風空気とを熱交換させる熱交換器である。
【0045】
ここで、空調ケース7に設けられた周知の内外気切替箱(図示せず)から吸入された車室内の空気(内気)または車室外の空気(外気)が送風機12により空調ケース7内を車室内へ向かって送風される。この送風空気は、蒸発器6を通過した後に、ヒータユニット(図示せず)を通過して吹出口から車室内に吹き出すようになっている。
【0046】
また、空調ケース7内のうち、蒸発器6の空気吹出直後の部位には、蒸発器6を通過した直後の吹出空気温度(蒸発器温度Te)を検出するサーミスタからなる蒸発器温度センサ13が設けられている。なお、蒸発器温度センサ13が本発明における蒸発器温度検出手段に相当している。
【0047】
さらに、空調ケース7の空気下流端には、図示しない車室内乗員の上半身に空気を吹き出すフェイス吹出口、車室内乗員の足元に空気を吹き出すフット吹出口、フロントガラス内面に空気を吹き出すデフロスタ吹出口が形成され、これらの吹出口を切替開閉する吹出モードドア(図示せず)が備えられている。
【0048】
蒸発器6の下流側は、可変容量型圧縮機2と接続されており、蒸発後の冷媒は再び可変容量型圧縮機2に流入する。このように、車両空調用冷凍サイクル装置1では、可変容量型圧縮機2→凝縮器3→気液分離器4→膨張弁5→蒸発器6→可変容量型圧縮機2の順で冷媒が循環するようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の空調制御装置14(A/C ECU)の概要を説明する。空調制御装置14は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この空調制御装置14は、そのROM内に空調装置制御プログラムを記憶しており、その空調装置制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0050】
空調制御装置14には、上記流量センサ8および蒸発器温度センサ13の検出信号に加え、空調の自動制御のためのセンサ群16の検出信号、及び空調操作パネル17の操作スイッチ群の操作信号が入力される。
【0051】
空調用センサ群16としては、具体的には、外気温Tamを検出する外気センサ、内気温Trを検出する内気センサ、車室内に入射する日射量Tsを検出する日射センサ等が設けられている。
【0052】
さらに、車両空調冷凍サイクル装置1において、可変容量型圧縮機2の吐出側から膨張弁5の入口に至るまでの高圧回路部に高圧圧力(圧縮機吐出冷媒圧力Pd)を検出する高圧センサ18を設けて、この高圧センサ18の検出信号も空調用制御装置14に入力するようになっている。図示の例では、高圧センサ18が凝縮器3の出口側冷媒配管に設けられている。
【0053】
空調操作パネル17に設けられた各種空調操作スイッチとして、可変容量型圧縮機2の作動指令信号を出すエアコンスイッチ、吹出モードを設定する吹出モードスイッチ、空調自動制御状態の指令信号を出すオートスイッチ、車室内温度を設定する温度設定手段をなす温度設定スイッチ等が設けられている。
【0054】
次に、空調制御装置14のマイクロコンピュータの出力側には、周辺回路である各種アクチュエータ駆動用の駆動回路(図示せず)を介して、電磁クラッチ9、蒸発器6の送風ファン12等が接続され、さらに、可変容量型圧縮機10の容量可変装置15が接続される。そして、これらの各種アクチュエータ9、12、15の作動が空調制御装置14の出力信号により制御される。
【0055】
また、空調用制御装置14は、車両側のエンジン制御装置19(エンジンECU)に接続されており、これら両制御装置14、19相互間にて信号を入出力できるようになっている。
【0056】
エンジン制御装置19は周知のごとく車両エンジン11の運転状況等を検出するセンサ群19aからの信号等に基づいて車両エンジン11への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。
【0057】
エンジン用センサ群19aとしては、車両の速度を検出する車速センサ、および運転者のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ等を備えている。なお、エンジン制御装置19は、車速センサにより検出された車両速度、アクセル開度センサにより検出されたアクセル開度等を空調制御装置14に出力する。
【0058】
次に、本実施形態において、空調制御装置14が実行する可変容量型圧縮機の容量制御処理を図2に基づいて説明する。ここで、図2は本実施形態の制御処理を示すフローチャートである。
【0059】
図2に示す制御ルーチンは、車両エンジン11のイグニッションスイッチが投入され、空調制御装置14、エンジン制御装置19にバッテリB(図示しない)から電源供給された状態で、空調操作スイッチからの操作信号に応答してスタートする。
【0060】
まず、ステップS10では、空調操作パネル17の操作信号、流量センサ8および蒸発器温度センサ13の検出信号、空調用センサ群16およびエンジン用センサ群19aの検出信号を読み込む。
【0061】
次に、ステップS20では、車両エンジンの負荷状態が高負荷状態であるか否かを判定する。具体的には、ステップS10で検出された車両速度が所定速度以下で、かつアクセル開度が所定アクセル開度以上である場合を高負荷状態であると判定する。なお、ステップS20が本発明におけるエンジン負荷検出手段に相当している。
【0062】
ステップS20で車両エンジンが高負荷状態と判定された場合は、圧縮機トルクを減少させ、車両の加速性を優先させる加速カット制御(ステップS30〜ステップS50)を行なう。
【0063】
まず、ステップS30では、車両エンジンが高負荷状態にあり、加速カット制御を行なうため、可変容量型圧縮機2の設定吸入圧力Psoの算出を行なう。
【0064】
本実施形態における設定吸入圧力Psoは、下記数式F1に示すように加速カット制御開始時における可変容量型圧縮機2の推定吸入圧力Ps1に所定圧力αを加えて算出する。
【0065】
Pso=Ps1+α…(F1)
まず、加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1の推定方法について図3〜4に基づいて説明する。図3は、蒸発器温度Teと蒸発器圧力PLの相関関係を示す飽和圧力線図を示しており、図4は、冷媒流量Grと蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPとの相関関係を示している。ここで、蒸発器圧力PLは、蒸発器6内の冷媒圧力を意味している。
【0066】
この推定吸入圧力Ps1は、吸入圧力センサを設ける構成とすることで正確な推定吸入圧力Ps1を推定することができるが、可変容量型圧縮機2の構成等が複雑になる等の問題がある。
【0067】
そのため、本実施形態では、流量センサ8で検出される冷媒流量Grと、蒸発器温度センサ13で検出される蒸発器温度Teより簡易な構成で推定吸入圧力Ps1を推定する。なお、ステップS30における推定吸入圧力Ps1の推定が本発明における圧力推定手段に相当している。
【0068】
具体的に、加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1の推定は、下記式F2に示すように蒸発器温度Teと冷媒流量Grとを用いて推定する。
【0069】
Ps1=f(Te)−g(Gr)…(F2)
ここで、f(Te)では、蒸発器温度Teから蒸発器圧力PLを推定している。具体的に蒸発器圧力PLは、蒸発器温度センサ13で検出される蒸発器温度Teに基づいて図3に示す飽和圧力線図により推定する。また、g(Gr)は、流量センサ8で検出される可変容量型圧縮機2の吐出側の冷媒流量Grから蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPを推定している。蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPは、流量センサ8で検出された冷媒流量Grに基づいて理論式F3により推定する。
【0070】
g(Gr)=ζρGr…(F3)
なお、ζは配管損失係数、ρは冷媒密度を示している。これらは、実験等により算出することができる。例えば、理論式F3により推定される冷媒流量と蒸発器―圧縮機間の圧力損失ΔPの相関関係は図4のようになる。
【0071】
これにより、可変容量型圧縮機2に吸入圧力センサを設けない簡易な構成により加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1を推定することができる。
【0072】
また、蒸発器圧力PLを推定吸入圧力Ps1として推定する場合に比べて、蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPを考慮している点で、より正確な加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1を推定することができる。
【0073】
次に、数式F1において設定吸入圧力Psoを算出する際に、推定吸入圧力Ps1に加算する所定圧力αについて図5に基づいて説明する。所定圧力αは、車両空調用冷凍サイクル装置1の冷媒流量Grに基づいて決定される。
【0074】
具体的に所定圧力αは、図5に示す冷媒流量Grと所定圧力αとの相関関係を定めた制御マップにより推定される。ここで、制御マップは、冷媒流量Grが多い場合は所定圧力αが増加され、冷媒流量Grが少ない場合は所定圧力αが減少される関係がある。なお、制御マップは、実験等で得られたものであり、予め空調用制御装置14のROM等に記憶されている。
【0075】
冷媒流量Grが多い状態において圧縮機トルクは、高負荷状態にありエンジン負荷が大きい状態となる。また、冷媒流量Grが少ない状態において圧縮機トルクは、低負荷状態にありエンジン負荷が小さい状態となる。
【0076】
そのため、冷媒流量Grが多い状態においては、所定圧力αを多くすることで、可変容量型圧縮機2の設定吸入圧力Psoを強制的に大きく増加させることで、圧縮機トルクを減少させてエンジン負荷を減少させることができる。
【0077】
また、冷媒流量がGr少ない状態においては、所定圧力αを少なくすることで、可変容量型圧縮機2の設定吸入圧力Psoを強制的に小さく増加させることで、圧縮機トルクを減少させてエンジン負荷を減少させるとともに、空調変化による乗員の不快感を抑制することができる。
【0078】
これにより、可変容量型圧縮機2の推定吸入圧力Ps1と冷媒流量Grに応じた所定圧力αに基づいて、エンジン11の高負荷状態における適切な可変容量型圧縮機2の設定吸入圧力Psoを算出することができる。
【0079】
次に、ステップS40では、実際の吸入圧力PsがステップS30で算出した設定吸入圧力Psoとなるような制御電流Inを容量可変装置15に出力する。制御電流Inは、図6に示す制御電流Inと設定吸入圧力Psoとの相関関係を定めた制御マップにより算出される。なお、ステップS30、およびステップS40における設定吸入圧力Psoの算出および容量可変装置15への制御電流の出力が本発明における吐出容量制御手段に相当している。
【0080】
次に、ステップS50では、上記ステップS30、およびステップS40の処理を加速優先時間T1が経過するまで継続される。ここで、通常の車両加速時において乗員が車両の加速性を感じる最大加速度の発生時間は、加速開始直後から1秒以内の短時間であることから、加速優先時間T1もこれに対応して1秒以内に設定しておく。これにより、車両の加速性を速やかに立ち上げることができる。
【0081】
ステップS50において、加速優先時間T1が経過した後、ステップS60に進む。ステップS60では、加速カット制御終了時の吸入圧力Psから加速カット制御開始時の推定吸入圧力Ps1へと移行するように、設定吸入圧力Psoの設定値を移行制御時間T2かけて徐々に減少させる移行制御を行なう。
【0082】
これにより、加速カット制御終了時から設定吸入圧力Psoを急激に減少させることで発生する、車両エンジン11の負荷増大による急激な加速性の減少、および可変容量型圧縮機2への高負荷によるショックを抑制することができる。
【0083】
ステップS60で移行制御を終了後、ステップS70に進み、可変容量型圧縮機2の通常制御を行なう。同様に、上述のステップS20で車両エンジンが高負荷状態でないと判定された場合も、ステップS70に進み可変容量型圧縮機2の通常制御を行なう。
【0084】
ここで、ステップS70で行なう通常制御では、蒸発器の目標吹出温度TAOを算出して、このTAOに基づいて可変容量型圧縮機2の容量可変装置15の制御電流Inが決定される。
【0085】
目標吹出温度TAOは空調熱負荷変動、車室内温度(内気温)Trおよび空調操作スイッチの温度設定スイッチにより設定した設定温度Tsetに基づいて、下記数式F4により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F4)
なお、Trは内気センサにより検出される内気温、Tamは外気センサにより検出される外気温、Tsは日射センサにより検出される日射量、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインおよびCは補正用の定数である。
【0086】
ここで、本実施形態における制御処理によって変化する吸入圧力Psについて図7に基づいて説明する。
【0087】
図7(a)は、本実施形態の制御処理の経過時間に基づく制御電流Inのタイミングチャートであり、図7(b)は、本実施形態の制御処理の経過時間に基づく吸入圧力Psおよび設定吸入圧力Psoのタイミングチャートであり、さらに図7(c)は本実施形態の制御処理の経過時間に基づく圧縮機トルクのタイミングチャートである。
【0088】
図7に示すように、加速カット制御が開始されると設定吸入圧力Pso(図7(b)における一点鎖線)は、加速優先時間T1が経過するまで、加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1に所定圧力αを加算して算出され、算出された設定吸入圧力Psoに対応する制御電流Inが出力される(図7(a)、図7(b)参照)。
【0089】
それに伴い、設定吸入圧力Psoとなるように実際の吸入圧力Ps(図7(b)における実線)は上昇するため(図7(b)参照)、可変容量型圧縮機2の吐出容量を減少させて、圧縮機トルク負荷を減少させることができる(図7(c)参照)。
【0090】
加速優先時間T1を経過すると、設定吸入圧力Psoは、通常制御に移行するための移行制御時間T2をかけて加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1となるように直線的に低下させるように制御電流Inが出力される(図7(a)、図7(b)参照)。
【0091】
そして、設定吸入圧力Psoとなるように実際の吸入圧力Psも直線的に減少していくため(図7(b)参照)、可変容量型圧縮機2の吐出容量を徐々に増大させて、圧縮機トルク負荷を徐々に増大させることができる(図7(c)参照)。
【0092】
以上のように本実施形態においては、蒸発器温度センサ13により検出される蒸発器温度Teと流量センサ8により検出される冷媒流量Grとに基づいて、可変容量型圧縮機2の吸入圧力Psを簡易な構成で正確に推定することができる。
【0093】
また、加速カット制御時における設定吸入圧力Psoを、加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1と冷媒流量Grに相関関係のある所定圧力αを加算して算出することで、圧縮機トルクを減少させるとともに車室内の快適感を阻害することを抑制することができる。すなわち、正確に推定した推定吸入圧力Ps1に基づいて適切な設定吸入圧力Psoを算出することができる。
【0094】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、車両空調用冷凍サイクル装置1の熱負荷を蒸発器温度Teとし、蒸発器温度Teと冷凍サイクル内の冷媒流量とに基づいて、可変容量型圧縮機2の吸入圧力Psを推定しているが、これに限定されるものではなく、冷凍サイクル内の熱負荷と冷媒流量Grとに基づいて可変容量型圧縮機2内の所定の圧力を推定してもよい。
【0095】
(2)上記実施形態では、蒸発器温度Teと冷媒流量に基づいて可変容量型圧縮機2の加速カット制御開始時における推定吸入圧力Ps1を推定しているが、これに限定されるものではなく、様々な制御処理において、可変容量型圧縮機2の実際の吸入圧力Psを推定することができる。
【0096】
(3)上記実施形態では、蒸発器−圧縮機間での圧力損失ΔPを理論式(数式F3)により推定したが、これに限定されるものではない。例えば、予め電気制御部100にROM等に冷媒流量Grと蒸発器−圧縮機間での圧力損失ΔPとの相関関係を定めた制御マップを記憶しておき、この制御マップに基づいて蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPを推定してもよい。また、冷媒流量Grと蒸発器−圧縮機間の圧力損失ΔPとの関係式を予め実験等により算出しておいてもよい。
【0097】
(4)また、上記実施形態では、加速カット制御開始時に設定吸入圧力Psoを算出し、設定吸入圧力Psoとなるような制御電流Inを容量可変装置15に出力しているがこれに限定されるものではない。例えば、加速カット制御開始時は容量可変装置15に出力する制御電流Inを強制的にゼロに設定し、加速優先時間T1経過後に、加速カット制御終了時(加速優先時間T1経過時)における推定吸入圧力Ps1と所定圧力値αに基づいて設定吸入圧力Psoを算出し、実際の吸入圧力Psが設定吸入圧力Psoとなるような制御電流Inを容量可変装置15に出力しても良い。これにより、所定時間の間は確実に圧縮機トルク負荷を低減でき車両エンジンの負荷を減少させることができる。さらに、加速カット制御終了時における設定吸入圧力Psoを実際の吸入圧力Psと乖離することを抑制することができ、車両エンジンの負荷増大による急激な加速性の減少、および圧縮機への高負荷によるショックを抑制することができる。
【0098】
(5)また、所定時間かけて実際の吸入圧力Psが設定吸入圧力Psoとなるようにフィードバック制御(例えばPI制御)により制御電流Inを決定しても良い。これにより、設定吸入圧力Psoと実際の吸入圧力Psの乖離を抑制することができるため、正確な制御をすることができる。
【0099】
(6)また、上記実施形態では、本発明の車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置1に適用しているが、これに限らず、冷凍車における冷凍、冷蔵用の車両用冷凍サイクル装置に適用することができる。
【0100】
(7)また、上記実施形態では、流量センサ8を可変容量型圧縮機2内の吐出側領域に配置しているが、これに限定されるものではなく、例えば、流量センサ8を可変容量型圧縮機2の外部に配置してもよい。この場合において、流量センサ8として、質量流量計を採用することで、流量センサ8の配置自由度を高めることができるため、可変容量型圧縮機2をより簡易な構成とすることができる。
【0101】
(8)また、上記実施形態では、加速カット制御における設定吸入圧力Psoの算出を行なっているが、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機の高回転保護制御などに本実施形態の制御処理を用いてもよい。
【0102】
(9)また、上記実施形態では、設定吸入圧力Psoを推定吸入圧力Ps1と所定圧力αを加算して算出しているが、これに限定されるものではない。設定吸入圧力Psoは、実際の吸入圧力よりも増加させた圧力値であれば、圧縮機のトルクを減少させ、エンジン11の負荷を減少させることができる可能性があるため、例えば蒸発器圧力PLとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態における車両空調用冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態における制御処理を示すフローチャートである。
【図3】蒸発器圧力PLと蒸発器温度Teの関係を定めた飽和圧力線図である。
【図4】蒸発器−可変容量型圧縮機間の圧力損失ΔPと冷媒流量Grとの理論式で成立する関係を示した図である。
【図5】冷媒流量Grと所定圧力αとの相関関係を定めた特性図である。
【図6】設定吸入圧力Psoと制御電流Inの関係を示した特性図である。
【図7】車両空調用冷凍サイクル装置の動作特性を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0104】
1…車両空調用冷凍サイクル装置、2…可変容量型圧縮機、6…蒸発器、8…流量センサ、11…エンジン、13…蒸発器温度センサ、14…空調制御装置、15…容量可変装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジン(11)により駆動され、冷媒の吐出容量を可変させる吐出容量可変手段(15)を有する可変容量型圧縮機(2)と、前記可変容量型圧縮機(2)の冷媒の吸入側に接続され、冷媒を蒸発させて車室内を流れる空気を冷却する蒸発器(6)とを有する冷凍サイクル(1)と、
前記可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)の目標値となる設定吸入圧力(Pso)を算出し、吸入圧力(Ps)が前記設定吸入圧力(Pso)となるように前記吐出容量可変手段(15)を作動させて前記可変容量型圧縮機(2)の吐出容量を制御する吐出容量制御手段と、
前記冷凍サイクル(1)の熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、
前記冷凍サイクル(1)を循環する冷媒流量(Gr)を検出する冷媒流量検出手段(8)と、
前記熱負荷検出手段により検出された検出値と前記冷媒流量検出手段(8)により検出された冷媒流量(Gr)に基づいて前記可変容量型圧縮機(2)の所定箇所の圧力を推定する圧力推定手段と、
を備えることを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記所定箇所の圧力は、前記可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)であることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記熱負荷検出手段は、前記蒸発器(6)内の冷媒温度に関連する物理量である蒸発器温度(Te)を検出する蒸発器温度検出手段(13)であって、
前記圧力推定手段は、前記蒸発器温度検出手段(13)で検出された前記蒸発器温度(Te)により前記蒸発器(6)内の冷媒圧力である蒸発器圧力(PL)を推定し、
前記冷媒流量検出手段(8)で検出された冷媒流量(Gr)により前記蒸発器(6)と前記可変容量型圧縮機(2)間における冷媒の圧力損失(ΔP)を推定し、
前記蒸発器圧力(PL)から前記圧力損失(ΔP)を減ずることにより前記可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)を推定することを特徴とする請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記エンジン(11)の負荷状態を検出するエンジン負荷検出手段と、
前記エンジン負荷検出手段により検出された負荷状態に基づいて、前記エンジン(11)が高負荷状態か否かを判定する負荷状態判定手段とを備え、
前記圧力推定手段は、前記負荷状態判定手段により前記エンジン(11)の負荷状態が高負荷状態であるとの判定後に推定吸入圧力(Ps1)を推定し、
前記吐出容量制御手段は、前記推定吸入圧力(Ps1)に基づいて前記設定吸入圧力(Pso)を算出し、前記可変容量型圧縮機(2)の吸入圧力(Ps)が前記設定吸入圧力(Pso)となるように前記容量可変手段(15)を作動させて前記可変容量型圧縮機(2)の吐出容量を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記負荷状態は、車両速度およびアクセル開度であって、
前記エンジン負荷状態判定手段は、前記車両速度が所定速度以下かつ前記アクセル開度が所定開度以上である場合に前記エンジン(11)が高負荷状態と判定することを特徴とする請求項4に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記設定吸入圧力(Pso)は、前記推定吸入圧力(Ps1)に所定圧力(α)を加算して算出されることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記所定圧力(α)は、前記冷媒流量検出手段(8)で検出される冷媒流量(Gr)に比例して増減されることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記吐出容量制御手段は、前記推定吸入圧力(Ps1)に基づいて算出された前記設定吸入圧力(Pso)となるように前記容量可変手段(15)を作動させた後、徐々に前記設定吸入圧力(Pso)を減少させることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記吐出容量制御手段は、フィードバック制御により前記可変容量型圧縮機の吸入圧力(Ps)が、前記推定吸入圧力(Ps1)に基づいて算出された前記設定吸入圧力(Pso)となるように制御することを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記設定吸入圧力(Pso)は、前記蒸発器温度(Te)により推定される前記蒸発器圧力(PL)であることを特徴とする請求項4ないし9のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6921(P2009−6921A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171523(P2007−171523)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】