説明

車両用制御装置

【課題】簡単な構成で遠隔制御ユニットから出力された始動指令信号に応じてエンジンを適正に始動できるようにする。
【解決手段】車外からエンジンの始動要求信号を送信可能な携帯機1と、該携帯機1から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニット2と、該始動指令信号に応じてエンジンの始動制御を実行する車両制御ユニット3とを備え、上記遠隔制御ユニット2と車両制御ユニット3とを接続してエンジンの始動制御に関する信号を伝送する専用の伝送回線12を設けるとともに、上記車両制御ユニット3は、遠隔制御ユニット2の出力信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合する制御と、エンジン始動条件の成立を判別する制御とを実行するとともに、上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合に、エンジンの始動制御を実行するように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの始動を要求する要求信号を送信可能な携帯機と、該携帯機から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニットと備えた車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、純正携帯機から出力される認証情報を受信することを条件に正常に動作するエンジン制御ユニットを搭載した車両においても、後付けの遠隔式エンジン始動装置により確実にエンジン始動できるようにすることを目的として、前記純正携帯機の電池収納部からその純正携帯機に対して給電する給電手段と、その給電手段による純正携帯機に対する給電のON/OFFを制御する制御手段とを備え、前記給電手段による給電は、純正携帯機が前記認証情報を出力するためのものとすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−27002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたエンジン始動装置では、純正携帯機から出力される認証情報を受信することを条件に動作可能となるエンジン制御ユニットその他の制御ユニットを搭載した車両において、後付けの遠隔式エンジン始動装置によりエンジンを始動させるに際し、純正携帯機に接続した給電手段により純正携帯機に給電することで、その純正携帯機から認証情報を出力するように構成したため、制御ユニットを確実に動作させることができるとともに、認証情報を別途取得したりする等の処理が不要であり、遠隔式エンジン始動装置の開発も容易に行うことができるという利点がある。
【0005】
上記遠隔式エンジン始動装置の携帯機を使用して車外からエンジン始動させる制御を実行する場合には、シフトレバーのポジションがパーキング位置にあるか否か等を検出する安全確認センサの検出信号に応じ、エンジンの始動が可能な状態にあるか否かを車両に取り付けられた上記遠隔式エンジン始動装置の車載器において判別することにより、安全にエンジンを始動させることかできるようにし、かつエンジンが始動しているかどうかを検出する始動検出センサの検出信号に応じてエンジンの始動処理が成功したか否かを上記車載器において確認し、必要に応じてエンジンの始動要求を再度出力できるようにすることが望まれる。このため、上記遠隔式エンジン始動装置の車載器を車両に後付けする際に、該車載器と、予め車両に搭載された制御ユニットおよび上記純正携帯の給電手段とをそれぞれ接続する配線作業を行うとともに、上記安全確認センサおよびエンジンの始動検出センサと、上記車載器とをそれぞれ接続する作業において20本以上の配線を接続する必要があり、これらの配線作業を容易化することができないという問題がある。
【0006】
また、上記遠隔式エンジン始動装置の携帯機から各車載器への各種の作動指令信号と、車両に標準装備された制御ユニットから各車載器への作動指令信号とが当時に各制御機器に入力された場合に、互いの信号が干渉して制御不良が発生する可能性があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で遠隔制御ユニットから出力された始動指令信号に応じてエンジンを適正に始動させることができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車外からエンジンを始動させることを要求する要求信号を送信可能な携帯機と、該携帯機から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニットと、該遠隔制御ユニットから出力された始動指令信号に応じてエンジンの始動制御を実行する車両制御ユニットとを備えた車両用制御装置であって、上記遠隔制御ユニットと車両制御ユニットとを接続してエンジンの始動制御に関する信号を伝送する専用の伝送回線を備え、上記車両制御ユニットが、遠隔制御ユニットの出力信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合する制御と、エンジンの始動条件が成立しているか否かを判別する制御とを実行するとともに、上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合に、エンジンの始動制御を実行するように構成されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両用制御装置において、上記車両制御ユニットが、車室内に配設されたエンジン始動用操作部から出力された始動指令信号によるエンジンの始動制御を実行する際に、該エンジンの始動指令信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合し、上記識別情報と登録情報とが一致していると判別された場合にエンジンを始動させる制御を実行するように構成されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両用制御装置において、上記遠隔制御ユニットが取り付けられる後付け用取付部を車体に設けるととともに、該後付け用取付部に上記専用の伝送回線が配設されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用制御装置において、上記専用の伝送回線を、車両制御ユニットから上記遠隔制御ユニットに対する信号の伝送が可能な双方向シリアル通信回線により構成したものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用制御装置において、車両の空調装置を作動させるための操作スイッチが上記携帯機に設けられるとともに、該空調装置用の操作スイッチが操作された場合に、上記遠隔制御ユニットと上記車両制御ユニットとを接続する伝送回路を介して該車両制御ユニットに上記空調装置の作動指令信号が伝送され、上記車両制御ユニットにより上記空調装置の作動制御が実行されるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、上記遠隔制御ユニットと車両制御ユニットとを接続してエンジンの始動制御に関する信号を伝送する専用の伝送回線を備えるとともに、上記車両制御ユニットにより、遠隔制御ユニットの出力信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合する制御と、エンジンの始動条件が成立しているか否かを判別する制御とを実行するとともに、上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合に、エンジンの始動制御を実行するように構成したため、上記遠隔制御ユニットを取り付ける際における配線の接続作業を著しく簡略化することができるとともに、上記携帯機に設けられた操作スイッチから出力された制御信号と、車両に標準装備された各種の操作スイッチから出力された制御信号とが同時に出力された場合においても、何れの操作スイッチから出力された制御信号かを上記車両制御ユニットにおいて明確に判別することができるため、上記両信号が干渉することに起因した制御不良が発生するのを簡単かつ効果的に防止できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、車室内に配設されたスタータスイッチ等からなるエンジン始動用操作部から出力された始動指令信号によるエンジンの始動制御を実行する際に、該エンジンの始動指令信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合し、上記識別情報と登録情報とが一致していると判定された場合にエンジンを始動させる制御と、上記携帯機から出力された始動要求信号に基づくエンジンの始動制御との両方を、上記車両制御ユニットにおいて実行するように構成したため、上記識別情報と登録情報とを照合する機能およびエンジンの始動制御を実行する機能等を上記車両制御ユニットに集約させることができ、効果的にシステムを簡略化することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、上記遠隔制御ユニットが取り付けられる後付け用取付部を車体に設けるととともに、該後付け用取付部に上記専用の伝送回線を配設したため、上記遠隔制御ユニットが装備されていない車両と、該遠隔制御ユニットが装備された車両との基本構成を共通化しつつ、上記遠隔制御ユニットを必要に応じて車両に後付けする作業を迅速かつ正確に行うことができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、上記専用の伝送回線を、車両制御ユニットから上記遠隔制御ユニットに対する信号の伝送が可能な双方向シリアル通信回線により構成したため、上記車両制御ユニットから遠隔制御ユニットを介して携帯機に各種のメッセージ信号を送信することにより、車体側の情報を携帯機の所有者に伝達して適正に把握させることができるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、車体の空調装置を作動させるための操作スイッチを上記携帯機に設けるとともに、該空調装置用の操作スイッチが操作された場合に、上記遠隔制御ユニットと上記車両制御ユニットとを接続する伝送回路を介して該車両制御ユニットに上記空調装置の作動指令信号を伝送し、上記車両制御ユニットにより上記空調装置の作動制御を実行するように構成したため、上記遠隔制御ユニットから伝送された信号を車両制御ユニットで集約して受け付けるとともに、各車載機器に作動指令信号を出力することにより、簡単な構成で乗車前に車室内の空調制御を適正に実行できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両用制御装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】携帯機の指示に応じた車両用制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】エンジン始動用操作部の指示に応じた車両用制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る車両用制御装置の実施形態を示している。該車両用制御装置は、車外からエンジンを始動・停止させることを要求する要求信号を送信可能な携帯機1と、該携帯機1から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニット2と、該遠隔制御ユニット2の出力信号に応じてエンジンの始動制御を実行する車両制御ユニット3と、エンジンの制御を実行する駆動制御モジュール4と、リヤディフォッガの作動制御等および車体に設けられた各ドアの開閉制御等を実行する車体制御モジュール5と、携帯用送信機等を所持した運転者により操作されるスタータスイッチ6等からなるエンジン始動用操作部とを備えている。なお、上記車両制御ユニット3と、車体制御モジュール5とを一体化することも可能である。
【0020】
上記携帯機1には、電波信号を送受信するアンテナ8と、該アンテナ8を介してエンジンの始動要求信号、停止要求信号および車両に設けられた空調装置の作動信号等を上記遠隔制御ユニット2に出力することを指示する操作スイッチ9と、液晶モニター等からなる表示ユニット10とが設けられている。そして、携帯機1の所持者が車外において上記操作スイッチ9を操作することにより、エンジンを始動させること等を要求する要求信号と上記携帯機1に記憶された識別情報とが、アンテナ8を介して車両の遠隔制御ユニット2に向けて送信されるように構成されている。
【0021】
また、上記エンジンの始動要求信号に対応した返送信号等が遠隔制御ユニット2から出力された場合には、該出力信号が上記携帯機1のアンテナ8により受信され、その内容が上記表示ユニット10において表示されるようになっている。具体的には、後述するようにエンジンの始動要求信号に応じてエンジンの始動が適正に行われた場合には、「エンジンの始動完了」というメッセージが上記表示ユニット10において表示される。一方、エンジンの始動制御が失敗したときには、その理由とともにエラーが生じたことを示すメッセージ、例えば「ドアが開放状態にあるためにエンジンの始動不可」というメッセージが上記表示ユニット10において表示される。
【0022】
上記遠隔制御ユニット2は、エンジンルームや車室内のインストルメントパネル等に設けられた後付け用取付部にオプション部品として取り付けられるとともに、該後付け用取付部に予め設けられた双方向シリアル通信回線12からなる専用の伝送回線を介して上記車両制御ユニット3に接続されるように構成されている。また、上記遠隔制御ユニット2は、携帯機1との間で電波信号の送受信を行うアンテナ13を有し、該アンテナ13において携帯機1から送信された始動要求信号を受信した場合に、エンジンの始動指令信号を上記始動要求信号に付された識別情報とともに、上記車両制御ユニット3に出力する機能を有している。
【0023】
上記遠隔制御ユニット2を後付け用取付部に取り付ける際には、図示を省略した電源用配線を介してバッテリと遠隔制御ユニット2とを接続するとともに、該遠隔制御ユニット2に図外のアース用配線を接続した後、予め定められた所定条件の成立を前提として、上記携帯機1に対応した識別情報の登録が行われるようになっている。例えば、予め特定された入力装置を使用することを条件とし、あるいは予め設定された特定の暗号を入力することを条件として、上記携帯機1が有する固有の識別情報を登録情報として車両制御ユニット3に記憶させることができるように構成されている。
【0024】
上記車両制御ユニット3は、予め車両に標準装備されたものであり、上記遠隔制御ユニット2から出力されたエンジンの始動指令信号に付された識別情報と、予め記憶された上記登録情報とを照合する制御を実行するとともに、予め定められたエンジンの始動条件が成立しているか否かを上記車体制御モジュール5の状態から判別する制御を実行し、また上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合にエンジンを始動する制御や、携帯機1の入力操作に応じて空調装置を作動させる制御等を実行する機能を備えたものである。
【0025】
上記車体制御モジュール5は、車両に設けられた各種のライトやドアロック機構等を一括して制御する機能を有するものであって、車両に標準装備されるものである。
【0026】
図2は、上記車両用制御装置の車両制御ユニット3等において実行される制御動作を示している。該制御動作がスタートとすると、上記携帯機1から送信されたエンジンの作動要求信号に応じて上記遠隔制御ユニット2から出力された作動指令信号が車両制御ユニット3により受信されたか否かを判定し(ステップS1)、YESと判定された場合には、上記作動指令信号に付された識別情報と、車両制御ユニット3に予め記憶された登録情報とを照合して両情報が一致しているか否かを判定する(ステップS2)。該ステップS2でNOと判定され、上記両情報が一致していないことが確認された場合には、エンジンの始動制御を実行することなく、上記識別情報と登録情報とが一致していないことを示すメッセージ信号(エラーメッセージ)を上記遠隔制御ユニット2から携帯機1に送信する(ステップS3)。
【0027】
上記ステップS2でYESと判定され、識別情報と登録情報とが一致していることが上記車両制御ユニット3により確認された場合には、上記車体制御モジュール5から出力される制御信号に応じ、エンジンの始動条件が成立しているか否かを上記車両制御ユニット3において判定する(ステップS4)。具体的には、上記車体制御モジュール5において、エンジンフード、リヤゲートまたはサイドドアからななる各ドアが開放状態にあるか否かを検出する各ドアセンサの出力信号に応じて各ドアの少なくとも一つが開放状態にあることが確認された場合、シフトレバーのシフトホジションを検出するホジションセンサの出力信号に応じてシフトポジションがパーキング位置にないことが確認された場合に、上記車両制御ユニット3においてエンジンの始動条件が成立していないと判定される。
【0028】
上記ステップS4でNOと判定されてエンジンの始動制御が成立していないことが確認された場合には、エンジンの始動制御を禁止する制御信号を車両制御ユニット3から上記駆動制御モジュール4に出力するとともに(ステップS5)、エンジンの始動制御が実行されなかったことを示すメッセージ信号(エラーメッセージ)を、その理由とともに、上記遠隔制御ユニット2から携帯機1に送信する制御を実行した後(ステップS6)、リターンする。
【0029】
一方、上記車体制御モジュール5において、各ドアの全てが閉止状態にあり、かつシフトホジションがパーキング位置にあること等が確認された場合には、上記ステップS4でYESと判定され、携帯機1の指示に基づいてエンジンを始動させる制御の実行を許可する制御信号を上記車両制御ユニット3から駆動制御モジュール4に出力し(ステップS7)、該駆動制御モジュール4により携帯機1の指示に基づくエンジンの始動制御を実行する。このようにして車両全体の様子が上記車両制御ユニット3により一括して把握され、エンジンの始動条件が成立しているか否かが判定されるとともに、該判定結果に基づいたエンジンの始動制御が上記車両制御ユニット3において実行される。
【0030】
次いで、上記携帯機1の指示に基づいてエンジンを始動させる制御を実行した後に、エンジンの始動が完了したか否かを、上記駆動制御モジュール4の出力信号等に応じて車両制御ユニット3により判別し(ステップS8)、該ステップS8でYESと判定された場合には、エンジンの始動が完了したことを示すメッセージ信号を上記遠隔制御ユニット2から携帯機1に送信した後(ステップS9)、リターンする。
【0031】
一方、上記ステップS8でNOと判定された場合、例えば一定時間が経過してもエンジンの始動が完了したことが確認できなかった場合、あるいはエンジンの始動直後にエンジンストールが発生したことが上記駆動制御モジュール4の出力信号に応じて確認された場合には、上記ステップS3に移行してエンジンを始動できなかったことを示すメッセージ信号(エラーメッセージ)を上記遠隔制御ユニット2から携帯機1に送信する制御を車両制御ユニット3により実行する。
【0032】
次に、車室内に搭乗した運転者がスタータスイッチ6等からなるエンジン始動用操作部を操作した場合に実行されるエンジンの始動制御動作を、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。該制御動作がスタートすると、上記スタータスイッチ6から車両制御ユニット3にエンジンの始動指令信号が出力されたか否かを判定し(ステップS11)、YESと判定された場合には、上記作動指令信号に付された識別情報と、車両制御ユニット3に予め記憶された登録情報とを照合して両情報が一致しているか否かを判定する(ステップS12)。該ステップS12でNOと判定された場合には、エンジンの始動制御を実行することなく、そのままリターンする。
【0033】
上記ステップS12でYESと判定され、上記識別情報と登録情報とが一致していると判別された場合には、上記スタータスイッチ6等からなるエンジン始動用操作部の指示に基づいて駆動制御モジュール4によりエンジンを始動させる制御を実行する(ステップS13)。その後、車外の天候を検出するセンサの出力信号に応じて雨天であるか否かを判定し(ステップS14)、YESと判定された場合には、自動車のワイパーを自動的に作動させる制御を実行する(ステップS15)。次いで、車外の明るさを検出するセンサの出力信号に応じて夜間であるか否かを判定し(ステップS16)、YESと判定された場合には、自動車のライトを自動的に点灯させる制御を実行した後(ステップS17)、リターンする。
【0034】
このように車外からエンジンを始動させることを要求する要求信号を送信可能な携帯機1と、該携帯機1から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニット2と、該遠隔制御ユニット2から出力された始動指令信号に応じてエンジンの始動制御を実行する車両制御ユニット3とを備えた車両用制御装置において、上記遠隔制御ユニット2と車両制御ユニット3とを接続してエンジンの始動制御に関する信号を伝送する専用の伝送回線(双方向シリアル通信回線12)を備えるとともに、上記車両制御ユニット3により、遠隔制御ユニット2の出力信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合する制御と、エンジンの始動条件が成立しているか否かを判別する制御とを実行するとともに、上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合に、エンジンの始動制御を実行するように構成したため、車外における携帯機1の操作に応じて遠隔制御ユニット2から出力された始動指令信号に応じてエンジンを始動させるとともに、運転者が車両に搭乗する前に空調装置を作動させる等の制御を簡単な構成で適正に実行できるという利点がある。
【0035】
すなわち、上記実施形態では、アンテナ13において携帯機1から送信された始動要求信号を遠隔制御ユニット2が受信した場合に、エンジンの始動指令信号を上記始動要求信号に付された識別情報とともに上記車両制御ユニット3に出力し、該車両制御ユニット3において上記エンジンの作動指令信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合し、上記識別情報と登録情報とが一致していると判別された場合に、上記車体制御モジュール5から出力される制御信号に応じ、エンジンの始動条件が成立しているか否かを判定するように構成したため、上記車体制御モジュール5と遠隔制御ユニット2を接続する配線を設けることなく、該遠隔制御ユニット2から専用の双方向シリアル通信回線12を介して車両制御ユニット3に出力された始動指令信号に応じてエンジンを適正に始動させることができる。
【0036】
したがって、エンジンルームや車室内のインストルメントパネル等に設けられた後付け用取付部に遠隔制御ユニット2を取り付ける際に、該後付け用取付部に予め設けられた双方向シリアル通信回線12と、図略の電源用配線およびアース用配線とからなる3本の配線を接続するだけでよく、後付けの車載器に20本以上の配線を接続する必要があった従来装置に比べて、上記配線の接続作業を著しく簡略化することができる。しかも、上記携帯機1に設けられた操作スイッチ9から出力された制御信号と、車両に標準装備されたエンジン始動用の操作スイッチから出力された制御信号とが同時に出力された場合においても、何れの操作スイッチから出力された制御信号かを上記車両制御ユニット3において明確に判別することができるため、上記両信号が干渉することに起因した制御不良が発生するのを簡単かつ効果的に防止できるという利点がある。
【0037】
例えば、従来装置のように、車両に後付けされた遠隔制御ユニット(後付の車載器)により、携帯機から出力されたエンジンの始動要求信号に応じたエンジンの始動制御を実行し、かつ車室内に配設されたスタータスイッチ等からなるエンジン始動用操作部から出力されたエンジンの始動指示信号に応じて車両に予め標準装備された車両制御ユニットによりエンジンの始動制御を実行するように構成した場合には、上記携帯機に設けられた操作スイッチとエンジン始動用操作部とが同時に操作されると、遠隔制御ユニットから出力された制御信号と、車両側制御ユニットから出力された制御信号とが衝突することに起因した制御不良が発生する虞があった。
【0038】
これに対して上記実施形態に示すように、車室内に配設されたスタータスイッチ6等からなるエンジン始動用操作部から出力された始動指令信号によるエンジンの始動制御を実行する際に、該エンジンの始動指令信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合し、上記識別情報と登録情報とが一致していると判別された場合にエンジンを始動させる制御と、上記携帯機1から出力された始動要求信号に基づくエンジンの始動制御との両方を、上記車両制御ユニット3において実行するように構成した場合には、上記携帯機1の操作スイッチ9とスタータスイッチ6とが同時に操作されたとしても、このような事態が発生したことを上記車両制御ユニット3により正確に認識してその一方をキャンセルすることができる。したがって、上記携帯機1の出力信号に基づくエンジンの始動制御と、上記スタータスイッチ6の出力信号に基づくエンジンの始動制御とが両方が実行されることに起因して、エンジンの始動後にスタータモータが何度も駆動されるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0039】
そして、例えば夜間におけるエンジンの始動時に自動車のライトを自動的に点灯させる機能と、雨天時におけるエンジンの始動時にワイパーを自動的に作動させる機能とを備えた車両用制御装置において、上記携帯機1の出力信号に基づくエンジンの始動制御を実行する際には、上記両機能をキャンセルすることが望ましい。これにより、運転者が乗車する前にエンジンの始動が行われた時点で、ライトを自動的に点灯させたり、ワイパーを自動的に作動させたりする等の必要のない制御が実行されるのを防止して、上記駆動制御モジュール4によりエンジンの始動制御だけを実行する。
【0040】
また、車内に搭乗した運転者の指示に基づいてエンジンを始動させる制御の実行時、つまり車室内の乗員が上記スタータスイッチ6等からなるエンジン始動用操作部を操作することによりエンジンを始動させる制御の実行時には、上記携帯用送信機等に設けられたドアのロックスイッチまたはアンロックスイッチが操作された場合でも、当該スイッチの操作を無視してドアに設けられたロック機構の駆動を禁止する機能を備えた車両用制御装置において、当該禁止機能をキャンセルして、エンジンの始動時であってもドアのロック機構を駆動してロック状態またはアンロック状態に移行させる制御の実行を許容するように構成してもよい。
【0041】
なお、上記携帯機1に設けられたハザードランプ用ボタンを操作して車両に設けられたハザードランプを所定時間だけ点滅させるカーファインド制御の指示信号が出力された場合に、該指示信号を上記遠隔制御ユニット2から車両制御ユニット3に送信し、該車両制御ユニット3において上記カーファインド制御を実行するように構成してもよい。このように構成された車両用制御装置では、上記携帯機1のハザードランプ用ボタンと、車内に設けられたハザードランプ用ボタンの操作とが同時に行われた場合に、このような同時操作が行われたことを、上記遠隔制御ユニット2から車両制御ユニット3に入力された指示信号と、車体側に設けられたハザードランプ操作ボタンから車両制御ユニット3に入力された指示信号とに基づいて適正に判別することができる。
【0042】
したがって、上記携帯機1から出力された指示信号に応じたハザードランプの点滅制御を遠隔制御ユニット2において実行するように構成した場合のように、当該遠隔制御ユニット2によるハザードランプの点滅制御と、車室内のハザードランプ操作ボタンから出力された指示信号に応じて車両制御ユニット3により実行されるハザードランプの点滅制御とが同時に実行されることに起因して、ハザードランプが点灯状態に維持されて該ハザードランプを適正なタイミングで点滅させることができなくなるという事態の発生等を防ぐことができる。
【0043】
また、上記実施形態では、遠隔制御ユニット2が取り付けられる後付け用取付部をエンジンルームや車体のインストルメントパネル等に設けるととともに、該後付け用取付部に、上記遠隔制御ユニット2と車両制御ユニット3とを接続する双方向シリアル通信回線12からなる専用の伝送回線を配設したため、上記遠隔制御ユニット2が装備されていない車両と、該遠隔制御ユニット2が装備された車両との基本構成を共通化しつつ、上記遠隔制御ユニット2を必要に応じて車両に後付けする作業を迅速かつ正確に行うことができるという利点がある。
【0044】
さらに、上記のように車両制御ユニット3から遠隔制御ユニット2に対する信号の伝送が可能に構成された双方向シリアル通信回線12からなる専用の伝送回線により上記遠隔制御ユニット2と車両制御ユニット3とを接続した場合には、上記車両制御ユニット3から遠隔制御ユニット2を介して携帯機1に各種のメッセージ信号を送信することにより、車体側の情報を携帯機1の所有者に伝達して適正に把握させることができる。
【0045】
例えば、携帯機1から送信されたエンジンの始動要求信号に応じてエンジンの始動が適正に行われた場合に、「エンジンの始動完了」というメッセージ信号を車両制御ユニット3から遠隔制御ユニット2を介して携帯機1に送信して上記表示ユニット10において表示し、あるいはエンジンの始動制御が失敗したときに、「ドアが開放状態にあるためにエンジンの始動不可」等のメッセージ信号を車両制御ユニット3から遠隔制御ユニット2を介して携帯機1に送信して上記表示ユニット10において表示させることにより、エンジンの始動が適正に行われたいなか否か等を携帯機1の所持者に適正に把握させることができる。
【0046】
上記メッセージ信号としては、エンジンの始動制御に関するものに限られるものではなく、車室内温度等からなる車両情報、または通信装置の故障情報や、バッテリ電圧の不足情報等からなる各種情報を、車両制御ユニット3から遠隔制御ユニット2を介して携帯機1に送信し、該携帯機1の表示ユニット10において表示させるように構成することも可能である。
【0047】
また、上記実施形態に示すように、車体の空調装置を作動させるための操作スイッチを上記携帯機1に設けるとともに、該空調装置用の操作スイッチが操作された場合に、上記遠隔制御ユニット2と上記車両制御ユニット3とを接続する上記双方向シリアル通信回線12等からなる伝送回路を介して該車両制御ユニット3に上記空調装置の作動指令信号を伝送し、上記車両制御ユニット3により上記空調装置の作動制御を実行するように構成した場合には、上記遠隔制御ユニット2から伝送された信号を車両制御ユニット3で集約して受け付けることができるとともに、各車載機器に作動指令信号を出力することより、簡単な構成で乗車前に車室内の空調制御を適正に実行できるという利点がある。
【0048】
なお、大容量のバッテリを備えた所謂ハイブリッド車両において、上記携帯機1に設けられたリヤディフォッガ用の操作スイッチとエンジン始動用の操作スイッチ9との両方が操作された場合、あるいは上記携帯機1に設けられた空調装置用の操作スイッチとエンジン始動用の操作スイッチ9との両方が操作された場合に、車両制御ユニット3によりエンジンの始動制御を禁止して、上記リヤディフォッガもしくは空調装置のみを作動させるように構成してもよい。このように構成した場合には、エンジンの始動制御と切り離してリヤディフォッガもしくは空調装置のみを作動させることかできるので、車両の燃料が浪費されるのを抑制しつつ、運転者が車両に搭乗する前にリヤウインドの曇りを除去し、または車室内の温度を適正値に調節することができるという利点がある。
【0049】
さらに、上記ハイブリッド車両では、エンジンの始動制御とリヤディフォッガもしくは空調装置の作動とを切り離して行うことができるため、上記識別情報と登録情報との一致を条件とすることなく、上記リヤディフォッガもしくは空調装置を作動させることができる。そのため、上記携帯用送受信機等を使用したキーレスエントリーにおけるドアのロック・アンロックの操作と同期させてリヤディフォッガもしくは空調装置の作動制御を行うことも可能であり、簡単な構成で乗車前に車両のリヤウインドの曇りを除去し、または車室内の温度を適正値に調節できるという利点もある。
【符号の説明】
【0050】
1 携帯機
2 遠隔制御ユニット
3 車両制御ユニット
6 スタータスイッチ(エンジン始動用操作部)
9 操作スイッチ
10 表示ユニット
12 双方向シリアル通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外からエンジンを始動させることを要求する要求信号を送信可能な携帯機と、該携帯機から送信された始動要求信号を受信してエンジンの始動指令信号を出力する遠隔制御ユニットと、該遠隔制御ユニットから出力された始動指令信号に応じてエンジンの始動制御を実行する車両制御ユニットとを備えた車両用制御装置であって、上記遠隔制御ユニットと車両制御ユニットとを接続してエンジンの始動制御に関する信号を伝送する専用の伝送回線を備え、上記車両制御ユニットは、遠隔制御ユニットの出力信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合する制御と、エンジンの始動条件が成立しているか否かを判別する制御とを実行するとともに、上記識別情報と登録情報とが一致し、かつエンジンの始動条件が成立していると判別された場合に、エンジンの始動制御を実行するように構成されたことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
上記車両制御ユニットは、車室内に配設されたエンジン始動用操作部から出力された始動指令信号によるエンジンの始動制御を実行する際に、該エンジンの始動指令信号に付された識別情報と予め記憶された登録情報とを照合し、上記識別情報と登録情報とが一致していると判別された場合にエンジンを始動させる制御を実行するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
上記遠隔制御ユニットが取り付けられる後付け用取付部を車体に設けるととともに、該後付け用取付部に上記専用の伝送回線が配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
上記専用の伝送回線は、車両制御ユニットから上記遠隔制御ユニットに対する信号の伝送が可能に構成された双方向シリアル通信回線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
車両の空調装置を作動させるための操作スイッチが上記携帯機に設けられるとともに、該空調装置用の操作スイッチが操作された場合に、上記遠隔制御ユニットと上記車両制御ユニットとを接続する伝送回路を介して該車両制御ユニットに上記空調装置の作動指令信号が伝送され、上記車両制御ユニットにより上記空調装置の作動制御が実行されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56577(P2013−56577A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194894(P2011−194894)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)