説明

車両用化学蓄熱システム

【課題】蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができるようにする。
【解決手段】反応器15の化学蓄熱材は、エンジン排気ガスから熱供給を受けることで、脱水反応を生じつつ蓄熱する。この脱水反応に伴って生じる水蒸気は、蒸発・凝縮部30にて凝縮される。化学蓄熱材に蓄熱した熱を放出する際には、蒸発・凝縮部30において、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、水和反応のための水蒸気を反応器16に供給する。化学蓄熱材の水和反応が生じ、該化学蓄熱材に蓄えられていた熱が放出される。ここで、車両用化学蓄熱システム10は、反応器16による蓄熱を開始するときに、蓄熱ECUによって、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を、蒸発凝縮器30から反応器16へ供給するように制御する。反応器16の化学蓄熱材の水和反応が一時的に生じ、該化学蓄熱材に蓄えられていた熱を利用して、反応器16が自己昇温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行に伴い生じる熱を有効利用するための車両用化学蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蓄熱材を充填した化学蓄熱反応器を有し、蓄熱時には温熱流体を加えることで吸熱反応により蓄熱し、放熱時には反応熱により温熱流体を発生する反応部と、溶液を充填した蒸発凝縮器を有し、蓄熱時には凝縮熱による温熱流体を発生し、放熱時には蒸発潜熱による冷熱流体を発生する蒸発凝縮部と、化学蓄熱器と蒸発凝縮器を接続するパイプ及びバルブと、を有するケミカルヒートポンプコンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、ハイブリッド車用の蓄熱システムにおける蓄熱用熱源をエンジン排気熱とした場合、エンジンの作動期間が短く、停止期間が長くなることから、蓄熱動作は間欠的となる。一方、間欠的蓄熱における停止期間中では、反応器温度が外部放熱等により低下するため、蓄熱を再開するためには脱水反応可能な温度レベルまで昇温する必要がある。
【0005】
ここで、エンジン作動初期において排気熱との熱交換により蓄熱材を昇温させる方法では、排気ガス流路と蓄熱材との隔壁を介した熱交換となるため、熱抵抗が存在する。また、昇温過程において排気ガス温度と蓄熱材との温度差が小さくなるため、熱交換量が低減し、昇温時間が大幅に増大する。
【0006】
短いエンジン作動時間に効率良く昇温させて長い蓄熱期間を確保することが、間欠的な蓄熱動作で要求される。しかし、エンジン排気などの外部熱源を利用した昇温方法では、蓄熱を再開するまでの昇温時間の短縮化が困難である、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる車両用化学蓄熱システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両からの熱供給により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を、冷媒との熱交換によって凝縮させると共に、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、前記水和反応のための水蒸気を前記反応器に供給する蒸発凝縮部と、前記反応器による蓄熱を開始するときに、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を、前記蒸発凝縮器から前記反応器へ供給するように制御する制御部と、を含んで構成されている。
【0009】
第1の発明に係る車両用化学蓄熱システムでは、反応器の化学蓄熱材は、車両の熱源から熱供給を受けることで、脱水反応を生じつつ蓄熱する。この脱水反応に伴って生じる水蒸気は、蒸発凝縮部にて凝縮される。化学蓄熱材に蓄熱した熱を放出する際には、蒸発凝縮部において、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、水和反応のための水蒸気を反応器に供給する。これにより、化学蓄熱材の水和反応が生じ、該化学蓄熱材に蓄えられていた熱が放出される。
【0010】
ここで、車両用化学蓄熱システムは、反応器による蓄熱を開始するときに、制御部によって、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を、蒸発凝縮器から反応器へ供給するように制御する。これによって、反応器の化学蓄熱材の水和反応が一時的に生じ、該化学蓄熱材に蓄えられていた熱を利用して、反応器が自己昇温する。
【0011】
このように、反応器による蓄熱を開始するときに、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を反応器に供給するように制御して、反応器の化学蓄熱材の水和反応を一時的に生じさせ、反応器を自己昇温させることにより、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる。
【0012】
第1の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る第1の冷媒パス構造と、熱源をバイパスして、前記反応平衡圧より高い水蒸気を供給させるための冷媒を循環させ得る第2の冷媒パス構造と、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造及び前記第2の冷媒パス構造で循環する冷媒の何れかに切り替える冷媒切換部と、を更に含み、前記制御部は、前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第2の冷媒パス構造の冷媒に切り換えてから、前記第1の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように、前記冷媒切換部を制御するようにすることができる。これによって、反応器によって蓄熱を行うときに、一時的な水和反応から蓄熱状態に瞬時に切り換えることができる。
【0013】
上記の第1の冷媒パス構造及び第2の冷媒パス構造を含む車両用化学蓄熱システムは、前記第2の冷媒パス構造の前記冷媒の温度を検出する温度検出部を更に含み、前記冷却器を、前記蒸発凝縮部の冷媒入口の手前に設け、前記第2冷媒パス構造は、前記熱源及び前記冷却器をバイパスして前記冷媒を循環させ、前記制御部は、前記反応平衡圧より高い水蒸気を前記反応器に供給するときに、前記温度検出部によって検出された前記冷媒の温度に基づいて、前記冷媒の温度が所定温度以上とならないように、前記冷却器の作動を制御するようにすることができる。これによって、反応器の化学蓄熱材の一時的な水和反応により、反応器が過度に自己昇温することを防ぐことができる。
【0014】
第2の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両からの熱供給により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を、冷媒との熱交換によって凝縮させると共に、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、前記水和反応のための水蒸気を前記反応器に供給する蒸発凝縮部と、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を前記反応器に供給するための水蒸気バッファと、前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記反応平衡圧より高い水蒸気を、前記水蒸気バッファから前記反応器へ供給するように制御する制御部と、を含んで構成されている。
【0015】
第2の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、反応器による蓄熱を開始するときに、制御部によって、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を、水蒸気バッファから反応器供給するように制御する。これによって、反応器の化学蓄熱材の水和反応が一時的に生じ、該化学蓄熱材に蓄えられていた熱を利用して、反応器が自己昇温する。
【0016】
このように、反応器による蓄熱を開始するときに、水蒸気バッファから、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を反応器に供給するように制御して、反応器の化学蓄熱材の水和反応を一時的に生じさせ、反応器を自己昇温させることにより、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる。
【0017】
第2の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る冷媒パス構造を更に含むようにすることができる。
【0018】
第2の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、前記蒸発凝縮器から供給される水蒸気の温度を検出する温度検出部と、冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る第1の冷媒パス構造と、熱源をバイパスして、前記反応平衡圧より高い水蒸気を供給させるための冷媒を循環させ得る第2の冷媒パス構造と、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造及び前記第2の冷媒パス構造で循環する冷媒の何れかに切り替える冷媒切換部と、を更に含み、前記制御部は、前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記反応平衡圧より高い水蒸気を、前記水蒸気バッファから前記反応器へ供給するように制御すると共に、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第2の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように前記冷媒切換部を制御し、前記温度検出部によって検出された水蒸気の温度が、前記反応平衡圧以上の飽和蒸気圧となる温度である場合、前記蒸発凝縮器から前記反応器に水蒸気を供給するように制御してから、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように前記冷媒切換部を制御するようにすることができる。これによって、水蒸気バッファの小型化を図ることができる。
【0019】
上記の水蒸気バッファは、前記第2の冷媒パス構造の冷媒との熱交換により、前記水蒸気を供給するようにすることができる。
【0020】
上記の第2の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、前記水蒸気バッファから供給される水蒸気の温度を検出する第2温度検出部を更に含み、前記水蒸気バッファは、前記水蒸気を前記反応器と共に前記蒸発凝縮器に対して供給可能に構成され、前記制御部は、前記水蒸気バッファから前記水蒸気を前記反応器に供給しているときに、前記第2温度検出部によって検出された温度が、前記反応平衡圧より高い飽和蒸気圧となる所定温度以上である場合、前記水蒸気バッファから供給された前記水蒸気の一部を、前記蒸発凝縮器に供給するように制御するようにすることができる。これによって、反応器の化学蓄熱材の一時的な水和反応により、反応器が過度に自己昇温することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係る車両用化学蓄熱システムは、反応器による蓄熱を開始するときに、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を反応器に供給するように制御して、反応器の化学蓄熱材の水和反応を一時的に生じさせ、反応器を自己昇温させることにより、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUを示すブロック図である。
【図3】(A)本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱作動を説明するための図、及び(B)放熱作動を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの一時的な水和反応による反応器の昇温を説明するための図である。
【図5】(A)エンジン排気熱との熱交換による反応器の昇温を説明するための図、及び(B)一時的な水和反応による反応器の昇温を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUによる蓄熱モード遷移制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱モード開始時の様子を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱モードの様子を示すシステム構成図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUによる蓄熱モード遷移制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUによる蓄熱モード遷移制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUによる蓄熱モード遷移制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUによる蓄熱モード遷移制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10について、図1〜図7に基づいて説明する。
【0024】
図1には、車両用化学蓄熱システム10の概略全体構成が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム10は、容器12内における化学蓄熱材用空間としての反応流路14に化学蓄熱材(図示所略)が充填された反応器16を備えている。反応器16を構成する化学蓄熱材は、脱水に伴って蓄熱(吸熱)し、水和(水酸化カルシウムへの復原)に伴って放熱(発熱)する構成とされている。
【0025】
この実施形態では、化学蓄熱材として、アルカリ土類金属の水酸化物の1つである水酸化カルシウム(Ca(OH))が採用されている。したがって、反応器16内では、以下に示す反応で蓄熱、放熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0026】
Ca(OH) ⇔ CaO + H
【0027】
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
Ca(OH) + Q → CaO + H
CaO + HO → Ca(OH) + Q
となる。この化学蓄熱材(Ca(OH))の1kg当たりの蓄熱容量は、略1.86[MJ/kg−Ca(OH)]とされている。
【0028】
さらに、この実施形態では、反応器16の容器12内には、化学蓄熱材に熱を供給するための空気流路18と、化学蓄熱材からの熱を加熱対象に輸送するための冷媒流路(図示省略)とが設けられている。空気流路18、冷媒流路は、それぞれ内部を流れる熱媒、冷媒と反応流路14内の化学蓄熱材との熱交換可能に、該反応流路14に隣接(図示は省略)して設けられている。
【0029】
空気流路18には、熱媒ライン22が接続されている。熱媒ライン22における空気流路18の上流側には、車両用化学蓄熱システム10が適用された自動車の熱源に接続されている。熱媒ライン22の下流端22Aは、大気開放端とされている。
【0030】
この実施形態では、熱媒として、内燃機関EGの排気ガスが採用されている。なお、電気ヒータで加熱された空気を、熱媒として採用してもよい。電気ヒータは、例えば車両用化学蓄熱システム10が適用された自動車が電気モータを駆動源として備える電気自動車やハイブリッド自動車の場合に採用され、バッテリへの充電ができない余剰電力によって作動される構成とすることができる。余剰電力としては、例えば、車両減速に伴う回生エネルギ相当分や、燃料電池等の発電装置を搭載する構成においては、負荷変動に伴う余剰発電量相当分が挙げられる。
【0031】
一方、冷媒流路には、熱輸送ライン(図示省略)が接続されている。熱輸送ラインにおける冷媒流路の上流側にはブロア(図示省略)が設けられており、熱輸送ラインにおける冷媒流路の下流側には、車両用化学蓄熱システム10による加熱対象(図示省略)との熱交換部が設けられている。これにより、車両用化学蓄熱システム10では、反応器16で化学蓄熱材が放熱した熱を加熱対象の加熱(暖機)に供することができる構成とされている。熱輸送ラインの下流端は大気開放端とされている。加熱対象としては、内燃機関EG、該内燃機関EGの排気ガスを浄化するための排気触媒、モータ駆動用のバッテリを統制する構成では該バッテリなどが挙げられ、複数の加熱対象(候補)から一部の加熱対象を選択する構成としても良い。
【0032】
また、車両用化学蓄熱システム10は、反応器16の反応流路14から導入された水蒸気を凝縮する凝縮部、及び水を蒸発させて反応器16に供給する水蒸気を生成する蒸発部としての機能を兼ね備える蒸発・凝縮器30を備えている。蒸発・凝縮器30は、反応器16の反応流路14に水蒸気循環ライン32を介して連通された蒸気流路34と、蒸気流路34内の水蒸気を凝縮すると共に、蒸気流路34内の水を蒸発させるための媒体流路38とが容器40内に形成されて構成されている。媒体流路38は、内部を流れる冷媒、熱媒と蒸気流路34内の水又は水蒸気との熱交換可能に、該蒸気流路34に隣接(図示は省略)して設けられている。
【0033】
蒸気流路34は、水蒸気循環ライン32、反応器16の反応流路14と共に真空脱気されている。水蒸気循環ライン32には、蒸気流路34と反応流路14との連通、非連通を切り替えるための開閉弁42が設けられている。また、蒸気流路34における重力方向の低所は、水循環ライン44を介して水タンク46に連通されている。水循環ライン44には、ウォータポンプ48、開閉弁50が設けられている。水タンク46は、蒸気流路34で凝縮された水を、該蒸気流路34で蒸発させるための水として貯留するようになっている。ウォータポンプ48は、作動することで、水タンク46の水を蒸気流路34に供給するようになっている。
【0034】
媒体流路38には、冷媒循環ライン52が接続されている。冷媒循環ライン52には、冷却器54及び冷媒ポンプ56が媒体流路38と直列を成すように設けられている。これにより、冷媒ポンプ56が作動されることで冷媒が媒体流路38、冷却器54を循環し、媒体流路38における水蒸気の凝縮熱を冷却器54で放熱するようになっている。すなわち、車両用化学蓄熱システム10では、蒸発・凝縮器30を構成する媒体流路38での水蒸気から水への凝縮を維持するための凝縮器冷却系58が構成されているものと捉えることができる。
【0035】
冷媒循環ライン52は、媒体流路38の上流側及び下流側の各々で分岐しており、各分岐点で、冷却水循環ライン62に接続されている。冷却水循環ライン62には、冷却器64、冷却水ポンプ66、及び内燃機関EGが媒体流路38と直列を成すように設けられている。これにより、冷却水ポンプ66が作動されることでエンジン冷却水が内燃機関EG、媒体流路38、冷却器64を循環し、蒸気流路34内の水を蒸発させるようになっている。すなわち、車両用化学蓄熱システム10では、蒸発・凝縮器30の媒体流路38での水の蒸発のための蒸発熱を一時的に付与するための一時的加熱系60が構成されているものと捉えることができる。なお、冷媒循環ライン52は、第1の冷媒パス構造の一例であり、冷却水循環ライン62は、第2の冷媒パス構造の一例である。
【0036】
冷媒循環ライン52と冷却水循環ライン62との2つの接続位置(分岐位置)には、媒体流路38に流れる媒体を、冷媒循環ライン52の冷媒及び冷却水循環ライン62のエンジン冷却水の何れかにするかを切り換える切換バルブ68A、68Bが設けられている。
【0037】
また、車両用化学蓄熱システム10は、蒸発・凝縮器30の媒体流路38での水の蒸発のための蒸発熱を付与するための蒸発器加熱系(図示省略)を備えている。蒸発器加熱系は、熱媒を媒体流路38に流すことにより、蒸気流路34において水を蒸発させて水蒸気を得る構成とされている。蒸発・凝縮器30では、熱媒から水への放熱(熱交換)が行われる構成である。
【0038】
また、図2に示されるように、車両用化学蓄熱システム10は、制御部としての蓄熱ECU82を備えている。蓄熱ECU82は、開閉弁42、50、切換バルブ68A、68B、ウォータポンプ48、冷媒ポンプ56、冷却水ポンプ66、冷却器54、64のそれぞれに電気的に接続されており、これらの動作を制御するようになっている。
【0039】
この蓄熱ECU82には、自動車の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)から適用された自動車の運転状態に応じた信号が入力されるようになっている。また、蓄熱ECU82は、反応器16の化学蓄熱材の温動に対応した信号を出力する化学蓄熱材温センサ88に電気的に接続されている。
【0040】
次に、本実施の形態の原理について説明する。
【0041】
まず、図3(A)に示すように、蓄熱作動時には、蒸発・凝縮器30を、蓄熱温度(424℃)における反応平衡圧レベルの飽和蒸気圧(11.6kPa)により小さい飽和蒸気圧となる温度(40℃)に設定することで、反応器16の脱水反応により得られた水蒸気が、蒸発・凝縮器30に回収される。
【0042】
また、図3(B)に示すように、放熱作動時には、蒸発・凝縮器30を、放熱温度(330℃)における反応平衡圧レベルの飽和蒸気圧(0.65kPa)となる温度(0℃)に設定することで、反応器16に水蒸気を供給し、水和反応により反応器16が昇温し、放熱温度以下の熱利用が可能となる。
【0043】
ここで、蓄熱温度レベル(424℃)にて熱利用する場合、通常の放熱モード以上の飽和蒸気圧力(11.6kPa)となるように蒸発凝縮温度を設定する必要がある。間欠的な蓄熱動作により反応器16の温度が低下するのに対し、図4に示すように、蒸発・凝縮器30を蓄熱温度における反応平衡圧以上の飽和蒸気圧(例えば、23kPa)となる温度(例えば65℃)に設定することにより、図5(B)に示すように、反応器16の顕熱上昇分に必要な反応用水蒸気量を供給し、一時的な水和反応により、脱水反応温度レベルまで昇温が可能となる。このとき、図5(A)に示すような外部熱源(エンジン排気熱)との熱交換による昇温と比較して、内部発熱を利用するため、スムーズな熱発生が可能となる。このため、エンジン作動が再開する直前で、短時間で反応器16を昇温させることができ、短いエンジン作動時間に効率良く昇温させて蓄熱期間を確保することが可能となる。
【0044】
また、蒸発・凝縮器30の媒体流路38に、エンジン冷却水の循環経路である冷却水循環ライン62を接続した加熱パスと、媒体を冷却するための冷媒の循環経路である冷媒循環ライン52を接続した冷却パスとを、切換バルブ68A、68Bで切り換えることにより、一時的な水和反応による反応器16の昇温過程のための蒸気生成を可能とする高温熱源との熱交換モードと、蓄熱再開時に媒体流路38を冷却パスに接続するように切換え、脱水反応で生成する蒸気を凝縮させる冷却モードとを、切換バルブ68A、68Bにより瞬時に切り換えることで、より長い蓄熱期間を確保することが可能となる。
【0045】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0046】
自動車に適用された車両用化学蓄熱システム10の蓄熱ECU82の制御について、図6に示す蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを参照しつつ説明する。なお、車両用化学蓄熱システム10の動作を示す図7、図8において、実線は水、水蒸気、各熱媒等の流体の流れを示しており、想像線は流れのないラインを示しており、白抜きの矢印は熱の移動を示しており、黒塗りのバルブポートは流れの閉止状態を示している。また、図7、図8では、説明すべきモードに関与しない構成要素の図示を省略する場合がある。
【0047】
内燃機関EGが作動開始すると、蓄熱ECU82によって蓄熱モード遷移制御処理ルーチンが実行される。
【0048】
まず、ステップ100において、媒体流路38に、冷却水循環ライン62のエンジン冷却水が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御する。また、開閉弁42、50をそれぞれ開放させると共に、冷却水ポンプ66、冷却器64を作動させる。これにより、図7に示すように、内燃機関EG、蒸発・凝縮器30、冷却器64の順でエンジン冷却水が冷却水循環ライン62を循環する。また、媒体流路38にエンジン冷却水が流れ、蒸発・凝縮器30において、蒸気流路34内の水を蒸発させ、反応流路14に水蒸気が供給される。反応器16は、一時的な水和反応により、自己昇温する。
【0049】
ステップ102では、化学蓄熱材温センサ88からの出力に基づいて、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)以上になったか否かを判定し、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達すると、ステップ104へ移行する。
【0050】
ステップ104では、媒体流路38に、冷媒循環ライン52の冷媒が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御し、また、冷却水ポンプ66、冷却器64を停止させて、蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを終了する。
【0051】
そして、蓄熱モードが開始され、凝縮器冷却系58の冷媒ポンプ56、冷却器54を作動させる。これにより、図8に示すように、冷却器54、蒸発・凝縮器30の順で冷媒が冷媒循環ライン52を循環する。
【0052】
反応器16では、内燃機関EGから供給された熱によって反応流路14の化学蓄熱材が脱水反応を生じ、該化学蓄熱材への蓄熱が成される。そして、化学蓄熱材の脱水反応に伴って生じた水蒸気が水蒸気循環ライン32を介して蒸発・凝縮器30の蒸気流路34に導入されると、該水蒸気が媒体流路38を流れる冷媒との熱交換によって凝縮され、重力にて水タンク46に回収される。水蒸気との熱交換で加熱された冷媒は、冷却器54で外気と熱交換することで冷却される。これにより、反応器16での蓄熱動作が維持される。
【0053】
また、化学蓄熱材温センサ88の信号に基づき、化学蓄熱材の所定値以上の温度上昇(顕熱)を検出すると、蓄熱が完了したと判断し、蓄熱ECU82は、開閉弁42、50をそれぞれ閉止させると共に、凝縮器冷却系58の冷媒ポンプ56、冷却器54を停止させ、蓄熱モードを終了する。
【0054】
また、加熱対象の加熱が必要となり、放熱モードに遷移した場合には、加熱対象の要求熱量(W)を求め、蓄熱ECU82は、要求熱量だけ反応器16(化学蓄熱材)に放熱させるための水和反応量(W)を算出する。また、蓄熱ECU82は、開閉弁42、50をそれぞれ開放させ、ウォータポンプ48を作動させる。
【0055】
次いで蓄熱ECU82は、水和反応を行うために必要な量の水蒸気を蒸発・凝縮器30が発生するように、蒸発器加熱系を制御し、蒸発器加熱系の熱媒は、蒸発・凝縮器30の媒体流路38において、水タンク46から蒸気流路34に供給された水との熱交換(凝縮熱の付与)に供される。これにより、蒸気流路34から反応器16の反応流路14に水蒸気が供給され、反応流路14内の化学蓄熱材が水和反応を生じ、該水和反応に伴い放熱する。この熱は、熱輸送ラインを流れる空気によって加熱対象に輸送され、該加熱対象の加熱(暖機)に寄与する。
【0056】
さらに、蓄熱ECU82は、加熱対象の昇温が完了したか否かを判断し、加熱対象の昇温が完了したと判断した場合、蓄熱ECU82は、開閉弁42、50をそれぞれ閉止させると共に、ウォータポンプ48を停止させ、放熱モードを終了する。
【0057】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムによれば、反応器による蓄熱を開始するときに、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を蒸発・凝縮器から反応器へ供給するように制御して、反応器の化学蓄熱材の水和反応を一時的に生じさせ、反応器を自己昇温させることにより、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる。
【0058】
また、蒸発・凝縮器の媒体流路に、エンジン冷却水の循環経路である冷却水循環ラインを接続した加熱パスと、媒体を冷却するための冷媒の循環経路である冷媒循環ラインを接続した冷却パスとを、切換バルブで切り換えることにより、反応器によって蓄熱を行うときに、一時的な水和反応から蓄熱状態に瞬時に切り換えることができる。
【0059】
また、蓄熱時において反応器を蓄熱可能温度レベルまで昇温するために、外部熱源と熱交換することなく、蒸発・凝縮器を蓄熱温度における反応平衡圧以上の飽和蒸気圧となる温度とすることで、一時的な水和反応による内部発熱を利用して、蓄熱材を自己昇温させることができ、効率よく脱水温度域まで昇温させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム210について、図9及び図10に基づいて説明する。図9には、車両用化学蓄熱システム210の概略全体構成が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム210は、冷媒循環ラインによる冷媒の循環と冷却水循環ラインによるエンジン冷却水の循環とで、冷却器54が兼用されるように、冷却器54が、蒸発・凝縮器30の媒体入口手前に設けられている点で、第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10とは異なる。
【0061】
また、車両用化学蓄熱システム210は、冷却水循環ラインにおける内燃機関EGの下流側に、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサ(図示省略)を設け、蓄熱ECU82は、冷却水温センサに電気的に接続されている。
【0062】
次に、本実施の形態の原理について説明する。
【0063】
一時的な水和反応に必要な蒸気供給用の熱源として、エンジン冷却水(65℃)を利用した場合、高い蒸気飽和圧力(23kPa)が得られる。このとき、脱水反応平衡温度(424℃)となるために、高温レベルの内部熱源の確保が可能となり、温度差による熱伝導が活発となる。さらに伝導経路が蓄熱材の熱伝導のみとなるため外部熱源との熱交換と比較して小さい温度差で、高い熱輸送能力が期待できる。一方、エンジン冷却水が65℃を上回る場合、飽和蒸気圧が過上昇するため、反応平衡温度>424℃となる。このとき、冷媒循環ラインの冷却器54を、冷却水循環ラインによるエンジン冷却水の循環で兼用可能とすることで、エンジン冷却水が65℃を上回った場合に、冷却器54を作動させ、エンジン冷却水の水温を低下させるように制御することができる。
【0064】
第2の実施の形態に係る蓄熱モード遷移制御処理ルーチンについて、図10を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
まず、ステップ100において、媒体流路38に、冷却水循環ライン62のエンジン冷却水が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御する。また、開閉弁42、50をそれぞれ開放させると共に、冷却水ポンプ66、冷却器64を作動させる。
【0066】
ステップ102では、化学蓄熱材温センサ88からの出力に基づいて、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)以上になったか否かを判定し、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達すると、ステップ104へ移行する。一方、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達していないと判定された場合、ステップ250において、冷却水温センサからの出力に基づいて、エンジン冷却水の水温が、例えば70℃以上であるか否かを判定し、エンジン冷却水の水温が、70℃未満であると、上記ステップ102へ戻る。一方、エンジン冷却水の水温が、70℃以上である場合には、ステップ252において、冷却器54を作動させて、上記ステップ102へ戻る。
【0067】
ステップ104では、媒体流路38に、冷媒循環ライン52の冷媒が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御して、冷却水ポンプ66、冷却器64を停止させて、蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを終了する。
【0068】
なお、第2の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システム210の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムによれば、冷却パスの冷却器を蒸発・凝縮器の入口付近に設置し、冷却パスおよび加熱パスとで兼用可能な構成とし、高温熱源としてのエンジン冷却水の温度を調整して、蒸発・凝縮器の温度を調整することで、蓄熱材における内部発熱の平衡温度レベルの制御が可能であり、反応器の化学蓄熱材の一時的な水和反応により、反応器が過度に自己昇温することを防ぐことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム310について、図11及び図12に基づいて説明する。図11には、車両用化学蓄熱システム310の概略全体構成が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム310は、反応器16による一時的な水和反応のための水蒸気を供給する蒸発器330を備えている点で、第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10とは異なる。
【0071】
具体的には、車両用化学蓄熱システム310は、水を蒸発させて反応器16に一時的に水蒸気を供給するための蒸発器330を備え、蒸発器330は、反応器16の反応流路14に第2水蒸気循環ライン332を介して連通された蒸気バッファ334と、蒸気バッファ334内の水を蒸発させるための媒体流路338とが容器340内に形成されて構成されている。媒体流路338は、内部を流れる媒体と蒸気バッファ334内の水との熱交換可能に、該蒸気バッファ334に隣接(図示は省略)して設けられている。
【0072】
蒸気バッファ334は、第2水蒸気循環ライン332、反応器16の反応流路14と共に真空脱気されている。第2水蒸気循環ライン332には、蒸気バッファ334と反応流路14との連通、非連通を切り替えるための開閉弁342が設けられている。また、蒸気バッファ334における重力方向の低所は、第2水循環ライン344を介して水タンク46に連通されている。水循環ライン344には、第2ウォータポンプ348、第2開閉弁350が設けられている。第2ウォータポンプ48は、作動することで、水タンク46の水を蒸気バッファ334に供給するようになっている。
【0073】
媒体流路338には、第2冷却水循環ライン362に接続されている。第2冷却水循環ライン362は、内燃機関EGの冷却水出口側と冷却器64の手前とで冷却水循環ライン62と分岐するように設けられ、冷却水循環ライン62のエンジン冷却水が、第2冷却水循環ライン362にも流れるようになっている。これにより、冷却水ポンプ66が作動されることで、エンジン冷却水が内燃機関EG、媒体流路338、冷却器64を循環し、蒸気バッファ334内の水を蒸発させるようになっている。
【0074】
また、車両用化学蓄熱システム310は、蒸気流路34内に、水蒸気の温度を検出する水蒸気温度センサ(図示省略)を設け、蓄熱ECU82は、水蒸気温度センサに電気的に接続されている。
【0075】
次に、本実施の形態の原理について説明する。
【0076】
一時的な水和反応のための蒸発を蒸発・凝縮器30で実現する場合、蒸発温度(65℃)まで温度変化させる必要がある。このとき、蒸発・凝縮器30の容器、蒸発用の水等の熱容量により、温度応答遅れが生じる。このため、一時的な水和反応への瞬時の切り換えが不可能となる。そこで、蒸気バッファ334を一時的な水和反応における蒸発温度(65℃)と設定し、開閉弁42、342により反応器16との接続を切り換えることで、蓄熱温度レベル(424℃)の水和反応を維持するための蒸気圧力への瞬時の切り換えが可能となる。
【0077】
次に、第3の実施の形態に係る蓄熱モード遷移制御処理ルーチンについて、図12を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
まず、ステップ370において、媒体流路38に、冷却水循環ライン62のエンジン冷却水が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御する。また、開閉弁50、350をそれぞれ開放させると共に、冷却水ポンプ66、冷却器64を作動させる。これにより、内燃機関EG、蒸発・凝縮器30、冷却器64の順でエンジン冷却水が冷却水循環ライン62を循環すると共に、第2冷却水循環ライン362を循環する。また、媒体流路38にエンジン冷却水が流れ、第2媒体流路38にエンジン冷却水が流れる。蒸発・凝縮器30において、蒸気流路34内の水を蒸発させると共に、蒸発器330において、蒸気バッファ334内の水を蒸発させる。
【0079】
そして、ステップ372において、開閉弁42を閉鎖させ、ステップ374において、開閉弁342を開放させる。これにより、蒸気バッファ334から反応流路14に水蒸気が供給される。反応器16は、一時的な水和反応により、自己昇温する。
【0080】
ステップ376では、水蒸気温度センサからの出力に基づいて、蒸気流路34内の水蒸気の温度が、蓄熱温度における反応平衡圧以上の飽和蒸気圧(例えば、23kPa)となる温度(例えば65℃)以上になったか否かを判定し、蒸気流路34内の水蒸気の温度が、65℃に到達すると、ステップ378へ進む。
【0081】
そして、ステップ378では、開閉弁342を閉鎖させ、ステップ380において、開閉弁42を開放させる。これにより、蒸気流路34から反応流路14に水蒸気が供給され、反応器16は、一時的な水和反応により、さらに自己昇温する。
【0082】
次のステップ102では、化学蓄熱材温センサ88からの出力に基づいて、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)以上になったか否かを判定し、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達すると、ステップ104へ進む。
【0083】
ステップ104では、媒体流路38に、冷媒循環ライン52の冷媒が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御し、また、冷却水ポンプ66、冷却器64を停止させて、蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを終了する。
【0084】
なお、第3の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システム310の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムによれば、反応器による蓄熱を開始するときに、蒸気バッファから、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を反応器に供給するように制御して、反応器の化学蓄熱材の水和反応を一時的に生じさせ、反応器を自己昇温させることにより、蓄熱を再開するまでの昇温時間を短くすることができる。
【0086】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムについて、図13に基づいて説明する。本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムは、第3の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システム310と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムは、反応器16による一時的な水和反応のための水蒸気を、蒸発器330のみから供給し、蒸発・凝縮器30から供給しない点で、第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム310とは異なる。
【0087】
次に、本実施の形態の原理について説明する。
【0088】
蓄熱時の凝縮と一時的な水和反応のための蒸発とを、蒸発・凝縮器30で両立させた場合、凝縮温度(40℃)と蒸発温度(65℃)の間(温度差25℃)を温度変化させる必要がある。このとき、蒸発・凝縮器30の容器や蒸発用の水等の熱容量により、温度応答遅れが生じる。そこで、蒸発・凝縮器30を蓄熱時における凝縮温度(40℃)に設定し、蒸気バッファ334を一時的な水和反応における蒸発温度(65℃)と設定し、開閉弁42、342により反応器16との接続を切り換えることで、蓄熱温度レベル(424℃)の水和反応を維持するための蒸気圧力から、蓄熱時の凝縮温度における蒸気圧力へ、より瞬時に切り換えることが可能となる。
【0089】
第4の実施の形態に係る蓄熱モード遷移制御処理ルーチンについて、図13を用いて説明する。なお、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0090】
まず、ステップ400において、媒体流路38に、冷媒循環ライン52の冷媒が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御すると共に、冷媒ポンプ56、冷却器54を作動させる。これにより、冷却器54、蒸発・凝縮器30の順で冷媒が冷媒循環ライン52を循環する。
【0091】
そして、ステップ372において、開閉弁42を閉鎖させ、ステップ374において、開閉弁342を開放させる。これにより、蒸気バッファ334から反応流路14に水蒸気が供給される。反応器16は、一時的な水和反応により、自己昇温する。
【0092】
次のステップ102では、化学蓄熱材温センサ88からの出力に基づいて、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)以上になったか否かを判定し、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達すると、ステップ402へ進む。
【0093】
ステップ402では、開閉弁342を閉鎖させ、ステップ404において、開閉弁42を開放させて、蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを終了する。これにより、化学蓄熱材の脱水反応に伴って生じた水蒸気が水蒸気循環ライン32を介して蒸発・凝縮器30の蒸気流路34に導入され、該水蒸気が媒体流路38を流れる冷媒との熱交換によって凝縮される。
【0094】
なお、第4の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システム310の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムによれば、蓄熱時における一時的な蒸気供給を可能とする蒸気バッファを反応器に接続することにより、蒸気バッファからの蒸気供給による一時的な水和反応から、蒸発・凝縮器を凝縮温度に設定した蓄熱反応への移行を瞬時に切り換えることができる。
【0096】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム510について、図14及び図15に基づいて説明する。図14には、車両用化学蓄熱システム510の概略全体構成が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム510は、蒸気バッファ334と、蒸気流路34とが、水蒸気循環ライン32及び第2水蒸気循環ライン332を介して接続されている点で、第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム310とは異なる。
【0097】
具体的には、車両用化学蓄熱システム510は、蒸気バッファ334と媒体流路338とを用いて構成された蒸発器330を備え、蒸気バッファ334は、第2水蒸気循環ライン332、反応器16の反応流路14と共に真空脱気されている。第2水蒸気循環ライン332には、蒸気バッファ334と反応流路14との連通、非連通を切り替えるための開閉弁342が設けられている。
【0098】
媒体流路338には、第2冷却水循環ライン362に接続されている。第2冷却水循環ライン362は、内燃機関EGの冷却水出口側と冷却器64の手前とで冷却水循環ライン62から分岐するように設けられている。
【0099】
第2水蒸気循環ライン332は、反応流路14と開閉弁42との間で、水蒸気循環ライン32と接続されており、第2水蒸気循環ライン332の水蒸気が、水蒸気循環ライン32にも流れるように構成されている。
【0100】
また、車両用化学蓄熱システム510は、化学蓄熱材温センサ88及び蒸気流路34内の水蒸気温度センサ(図示省略)を設けると共に、蒸気バッファ334内に、水蒸気の温度を検出する第2水蒸気温度センサ(図示省略)を設け、蓄熱ECU82は、化学蓄熱材温センサ88、水蒸気温度センサ、及び第2水蒸気温度センサに電気的に接続されている。
【0101】
次に、本実施の形態の原理について説明する。
【0102】
蒸発・凝縮器30を凝縮温度(40℃)、蒸発器330を一時的な水和反応のための蒸発温度(65℃)に設定することが可能である。一方、反応器16の昇温においてエンジン冷却水が65℃を上回る場合、第2水蒸気循環ライン332の水蒸気の飽和蒸気圧が過上昇するため、反応平衡温度>424℃となる。このとき、蒸発・凝縮器30と反応器16とを接続する開閉弁42を間欠的に開くことで、第2水蒸気循環ライン332の水蒸気の蒸気圧力の過上昇を抑制し、反応器16の温度を制御することができる。反応器16の温度応答性を向上させることにより、エンジン作動が再開する直前にて短時間で反応器を昇温させることができ、短いエンジン作動時間に効率良く昇温させて蓄熱期間を確保することが可能となる。さらに、反応器16の温度を必要以上(>脱水反応温度)に昇温することを防ぐことにより、反応器16の化学蓄熱材の熱の有効利用を図ることができる。
【0103】
第5の実施の形態に係る蓄熱モード遷移制御処理ルーチンについて、図15を用いて説明する。なお、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0104】
まず、ステップ370において、媒体流路38に、冷却水循環ライン62のエンジン冷却水が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御する。また、開閉弁50、350をそれぞれ開放させると共に、冷却水ポンプ66、冷却器64を作動させる
【0105】
そして、ステップ372において、開閉弁42を閉鎖させ、ステップ374において、開閉弁342を開放させる。
【0106】
次のステップ550では、第2水蒸気温度センサからの出力に基づいて、蒸気バッファ334内の水蒸気の温度が、一時的な水和反応のための蒸発温度を超えた温度、例えば70℃以上であるか否かを判定し、蒸気バッファ334内の水蒸気の温度が、70℃以上になると、ステップ552において、開閉弁42を間欠的に開放させ、ステップ376へ移行する。これにより、反応流路14へ供給される蒸気圧力の過上昇が抑制される。一方、蒸気バッファ334内の水蒸気の温度が、70℃未満である場合には、ステップ554において、開閉弁42を閉鎖し、ステップ376へ移行する。
【0107】
ステップ376では、水蒸気温度センサからの出力に基づいて、蒸気流路34内の水蒸気の温度が、蓄熱温度における反応平衡圧以上の飽和蒸気圧(例えば、23kPa)となる温度(例えば65℃)以上になったか否かを判定し、蒸気流路34内の水蒸気の温度が、65℃に到達すると、ステップ378へ進むが、一方、蒸気流路34内の水蒸気の温度が、65℃未満である場合には、上記ステップ550へ戻る。
【0108】
そして、ステップ378では、開閉弁342を閉鎖させ、ステップ380において、開閉弁42を開放させる。
【0109】
次のステップ102では、化学蓄熱材温センサ88からの出力に基づいて、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)以上になったか否かを判定し、反応器16の温度が、蓄熱温度(424℃)に到達すると、ステップ104へ進む。
【0110】
ステップ104では、媒体流路38に、冷媒循環ライン52の冷媒が流れるように、切換バルブ68A、68Bを制御して、冷却水ポンプ66、冷却器64を停止させて、蓄熱モード遷移制御処理ルーチンを終了する。
【0111】
なお、第5の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システム510の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
以上説明したように、第5の実施の形態に係る車両用化学蓄熱システムによれば、蓄熱時における一時的な蒸気供給を可能とする蒸気バッファと、蒸発・凝縮器とを接続し、蒸気バッファからの水蒸気を一部回収して、水蒸気の圧力を調整し、蒸発・凝縮器の温度を調整することで、蓄熱材における内部発熱の平衡温度レベルの制御が可能であり、反応器の化学蓄熱材の一時的な水和反応により、反応器が過度に自己昇温することを防ぐことができる。
【0113】
なお、上記の第5の実施の形態では、蒸気バッファ334と、蒸発・凝縮器30とから、一時的な水和反応のための水蒸気を供給する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上述した第4の実施の形態のように、蒸気バッファ334のみから、一時的な水和反応のための水蒸気を供給するように制御してもよい。これによって、蒸気バッファ334からの蒸気供給による一時的な水和反応から、蒸発・凝縮器30を凝縮温度に設定した蓄熱反応への移行を、より瞬時に切り換えることができる。
【0114】
また、上記の第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、反応器の温度が424℃以上となったか否かにより、一時的な水和反応の終了タイミングを判断する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、一時的な水和反応のための水蒸気の供給を開始してから、反応器の温度が424℃まで昇温するのにかかる予め求められた所要時間を経過したか否かにより、一時的な水和反応の終了タイミングを判断するようにしてもよい。
【0115】
また、上記した実施形態では、蒸発器としての機能と凝縮器としての機能とを併せ持つ蒸発・凝縮器30を備えて車両用化学蓄熱システムが構成された例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、車両用化学蓄熱システムが、独立して構成された蒸発器、凝縮器を備えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10、210、310、510 車両用化学蓄熱システム
14 反応流路
16 反応器
18 空気流路
30 蒸発・凝縮器
32、332 水蒸気循環ライン
34 蒸気流路
38、338 媒体流路
42、342 開閉弁
52 冷媒循環ライン
54 冷却器
62、362 冷却水循環ライン
64 冷却器
68A、68B切換バルブ
82 蓄熱ECU
88 化学蓄熱材温センサ
330 蒸発器
334 蒸気バッファ
EG 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からの熱供給により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を、冷媒との熱交換によって凝縮させると共に、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、前記水和反応のための水蒸気を前記反応器に供給する蒸発凝縮部と、
前記反応器による蓄熱を開始するときに、蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を、前記蒸発凝縮器から前記反応器へ供給するように制御する制御部と、
を含む車両用化学蓄熱システム。
【請求項2】
冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る第1の冷媒パス構造と、
熱源をバイパスして、前記反応平衡圧より高い水蒸気を供給させるための冷媒を循環させ得る第2の冷媒パス構造と、
前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造及び前記第2の冷媒パス構造で循環する冷媒の何れかに切り替える冷媒切換部と、を更に含み、
前記制御部は、前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第2の冷媒パス構造の冷媒に切り換えてから、前記第1の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように、前記冷媒切換部を制御する請求項1記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項3】
前記第2の冷媒パス構造の前記冷媒の温度を検出する温度検出部を更に含み、
前記冷却器を、前記蒸発凝縮部の冷媒入口の手前に設け、
前記第2冷媒パス構造は、前記熱源及び前記冷却器をバイパスして前記冷媒を循環させ、
前記制御部は、前記反応平衡圧より高い水蒸気を前記反応器に供給するときに、前記温度検出部によって検出された前記冷媒の温度に基づいて、前記冷媒の温度が所定温度以上とならないように、前記冷却器の作動を制御する請求項2記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項4】
車両からの熱供給により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を、冷媒との熱交換によって凝縮させると共に、冷媒との熱交換によって水を蒸発させることで、前記水和反応のための水蒸気を前記反応器に供給する蒸発凝縮部と、
蓄熱により放出される水蒸気の反応平衡圧より高い水蒸気を前記反応器に供給するための水蒸気バッファと、
前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記反応平衡圧より高い水蒸気を、前記水蒸気バッファから前記反応器へ供給するように制御する制御部と、
を含む車両用化学蓄熱システム。
【請求項5】
冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る冷媒パス構造を更に含む請求項4記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項6】
前記蒸発凝縮器から供給される水蒸気の温度を検出する温度検出部と、
冷却器をバイパスして、水蒸気を凝縮させるための冷媒を循環させ得る第1の冷媒パス構造と、
熱源をバイパスして、前記反応平衡圧より高い水蒸気を供給させるための冷媒を循環させ得る第2の冷媒パス構造と、
前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造及び前記第2の冷媒パス構造で循環する冷媒の何れかに切り替える冷媒切換部と、を更に含み、
前記制御部は、前記反応器による蓄熱を開始するときに、前記反応平衡圧より高い水蒸気を前記水蒸気バッファから前記反応器へ供給するように制御すると共に、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第2の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように前記冷媒切換部を制御し、前記温度検出部によって検出された水蒸気の温度が、前記反応平衡圧以上の飽和蒸気圧となる温度である場合、前記蒸発凝縮器から前記反応器に水蒸気を供給するように制御してから、前記蒸発凝縮部において熱交換される冷媒を、前記第1の冷媒パス構造の冷媒に切り換えるように前記冷媒切換部を制御する請求項4記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項7】
前記水蒸気バッファは、前記第2の冷媒パス構造の冷媒との熱交換により、前記水蒸気を供給する請求項6記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項8】
前記水蒸気バッファから供給される水蒸気の温度を検出する第2温度検出部を更に含み、
前記水蒸気バッファは、前記水蒸気を前記反応器と共に前記蒸発凝縮器に対して供給可能に構成され、
前記制御部は、前記水蒸気バッファから前記水蒸気を前記反応器に供給しているときに、前記第2温度検出部によって検出された温度が、前記反応平衡圧より高い飽和蒸気圧となる温度以上である場合、前記水蒸気バッファから供給された前記水蒸気の一部を、前記蒸発凝縮器に供給するように制御する請求項4〜請求項7の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−237106(P2011−237106A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108622(P2010−108622)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)