説明

車両用清掃装置

【課題】より快適に車室内を清掃できるようにする。
【解決手段】車両周辺の湿度を検出する湿度センサ13からの信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを推定し(S100)、車室内の乗員を検出する赤外線センサ10の検出結果に基づいて車室内に乗員が存在しないか否かを判定し(S104)、雨天または降雪でないと推定され、かつ、車室内に乗員が存在しないと判定された場合、メモリに記憶された清掃パターンに従って清掃ヘッドを移動させながら車室内を吸引清掃する(200)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内を清掃する車両用清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内を清掃する装置として、列車内のシート等の障害物を回避するように列車内を走行しながら床を洗浄清掃する清掃ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−324062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の装置は、列車内の広い空間を走行しながら自動で洗浄清掃する構成となっており、自動車等の車室内を清掃するには不向きである。自動車等の車室内を自動で清掃する装置としては、洗浄ではなく吸引により車室内の埃やゴミを収集すること、乗員の不在時に清掃すること等の条件を満たす必要がある。
【0004】
また、自動車等の車室内は雨天や降雪時に濡れるため、例えば、雨天時に清掃ヘッドで濡れた床を清掃すると、水分がごみ容器に入り込んでしまい、後のごみ容器の交換作業が大変になってしまうといった状況が生じる。また、臭いの原因となり不衛生である。また、雨天時に濡れた床を清掃した後、その清掃ヘッドで車両の座席等を清掃すると、かえって座席を汚してしてしまうといった状況も考えられる。このように、雨天や降雪時に清掃が行われると、ユーザに不快な思いをさせてしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みたもので、より快適に車室内を清掃できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、車両周辺の湿度に応じた信号を出力する湿度検出手段と、湿度検出手段からの信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを推定する状況推定手段と、車室内の乗員を検出する乗員検出手段と、乗員検出手段の検出結果に基づいて車室内に乗員が存在しないか否かを判定する乗員判定手段と、状況推定手段により雨天または降雪でないと推定され、かつ、乗員判定手段により車室内に乗員が存在しないと判定された場合、記憶媒体に記憶された清掃パターンに従って清掃ヘッドを移動させながら車室内を吸引清掃する吸引処理手段と、を備えたことである。
【0007】
このような構成では、雨天または降雪でないと推定され、かつ、車室内に乗員が存在しないと判定された場合、記憶媒体に記憶された清掃パターンに従って清掃ヘッドを移動させながら車室内が吸引清掃されるので、清掃ヘッドから水分を吸い込んでしまったり、清掃ヘッドに水分が付着したりすることなく、より快適に車室内を清掃することができる。また、車室内に乗員が存在しない間に車室内が吸引清掃されるので、乗員は清掃時間を気にすることなく車室内をきれいに保つことができる。
【0008】
また、本発明の第2の特徴は、車室内の清掃領域を撮影する清掃領域撮影手段と、清掃領域撮影手段の撮影画像から吸引処理手段により清掃される車室内の特定の清掃領域に物体が存在するか否かを判定する物体判定手段と、物体判定手段により車室内の特定の清掃領域に物体が存在すると判定された場合、車室内の清掃領域以外の位置に物体を移動させる第1の物体移動手段と、を備えことである。
【0009】
このような構成では、清掃される車室内の特定の清掃領域に物体が存在すると判定された場合、車室内の清掃領域以外の位置に物体が移動させられるので、清掃領域に物体が置かれていても物体の下を清掃することが可能である。
【0010】
また、本発明の第3の特徴は、第1の物体移動手段は、物体の移動前と移動後の位置および向きを記憶手段に記憶させ、吸引処理手段による車室内の特定の清掃領域の清掃が終了した後、記憶手段に記憶された物体の移動前と移動後の位置および向きに基づいて物体を元の位置に戻す第2の物体移動手段を備えたことである。
【0011】
このように、車室内の特定の清掃領域の清掃が終了した後、記憶手段に記憶された物体の移動前と移動後の位置および向きに基づいて物体を元の位置に戻すことができる。
【0012】
また、本発明の第4の特徴は、吸引処理手段は、吸引力の変化に基づいて清掃ヘッドに物体が吸着したか否かを判定する吸着判定手段と、該吸着判定手段により清掃ヘッドに物体が吸着したと判定された場合、予め定められた期間、吸引を停止する吸引停止手段と、を備えたことである。
【0013】
このような構成では、清掃ヘッドに物体が吸着したと判定された場合、予め定められた期間、吸引が停止されるので、清掃ヘッドに吸着した物体を外した上で清掃を再開させることが可能である。
【0014】
また、本発明の第5の特徴は、吸引処理手段により吸引清掃されたごみを収集するごみ容器が満杯になったか否かを検出するごみ量検出手段と、ごみ量検出手段によりごみ容器が満杯になったことが検出された場合、ごみ容器の交換指示を記憶手段に記憶する交換指示制御手段と、記憶手段に記憶されたごみ容器の交換指示を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えたことである。
【0015】
このような構成では、ごみ容器が満杯になったことが検出された場合、ごみ容器の交換指示が記憶手段に記憶され、記憶手段に記憶されたごみ容器の交換指示が表示手段に表示されるので、乗員はごみ容器が満杯になったことを容易に認識することができる。
【0016】
また、本発明の第6の特徴は、清掃領域撮影手段により撮影された複数の画像を比較して特定の物体を吸引したか否かを判定する特定物体吸引判定手段と、特定物体吸引判定手段により特定の物体が吸引されたことが判定された場合、清掃領域撮影手段により撮影された吸引された物体の撮影画像を記憶手段に記憶する特定物体記憶制御手段と、を備え、表示制御手段は、記憶手段に記憶された吸引された物体の撮影画像を表示手段に表示させることである。
【0017】
このような構成では、特定の物体が吸引されたことが判定された場合、吸引された物体の撮影画像が記憶手段に記憶され、記憶手段に記憶された吸引された物体の撮影画像が表示手段に表示されるので、乗員は吸引されては困る物が吸引されたかどうかを容易に確認することが可能である。
【0018】
また、本発明の第7の特徴は、清掃領域撮影手段により撮影される清掃領域を照明する照明手段と、車両周辺の照度を検出する照度検出手段と、照度検出手段の検知信号に基づいて昼間であるか夜間であるかを判定する昼夜判定手段と、昼夜判定手段により夜間であると判定された場合、照明手段に清掃領域を照明させる照明制御手段と、を備えたことである。
【0019】
このように、夜間であると判定された場合、照明手段により清掃領域を照明して清掃領域の画像を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る車両用清掃装置の構成を図1に示す。本車両用清掃装置1は、自動車等の車室内を清掃する装置である。本車両用清掃装置1は、赤外線センサ10、移動カメラ11、車室内カメラ12、湿度センサ13、照度センサ14、ごみ量検出センサ15、入力装置16、ロボットアーム17、清掃ヘッド18、ごみ容器19、照明装置20、吸引機21、表示装置22および制御部23を備えている。なお、ごみ容器19および吸引機21を含む本体は、車両の最後部の座席の後ろに取り付けられている。
【0021】
赤外線センサ10は、ルームミラー近傍の天井に取り付けられ、車室内の各座席の乗員の有無を検出し、検出結果を制御部23へ出力する。
【0022】
移動カメラ11は、ロボットアーム17の先端付近の側部に取り付けられ、このロボットアーム17の先端に取り付けられる清掃ヘッド18の清掃エリアを撮影した画像を制御部23へ出力する。
【0023】
車室内カメラ12は、車室内の天井等に取り付けられ、車室内を撮影した画像を制御部23へ出力する。この車室内カメラ12は、主として座席上に置かれた物体を認識するために設けられている。
【0024】
湿度センサ13は、車両に搭載され、車両周辺の空気の湿度に応じた信号を制御部23へ出力する。
【0025】
照度センサ14は、車両周辺の照度を検出し、車両周辺の照度が基準値以上でありか否かを示す信号を制御部23へ出力する。
【0026】
ごみ量検出センサ15は、ごみ容器19内に設置された赤外線センサにより構成され、ごみ容器19が満杯になると、この赤外線センサにより検知信号が制御部23へ出力されるようになっている。
【0027】
入力装置は16、表示装置22のディスプレイの周囲に設けられた押しボタンスイッチ、表示装置22のディスプレイの前面に重ねて設けられたタッチスイッチ等によって構成されて、乗員のスイッチ操作に応じた信号を制御部23へ出力する。
【0028】
ロボットアーム17は、図2に示すように、伸縮可能な円筒状のユニット部17aおよび回転可能な円筒状の複数のアーム部17bが連結された構成となっている。このロボットアーム17の一端は、ごみ容器19および吸引機21を含む本体Aに固定されている。また、ロボットアーム17の先端には、ロボットハンドとして機能するフィンガー部(図示せず)が取り付けられるようになっている。清掃エリアに何らかの物が置かれている場合、このフィンガー部によりその物を掴んで清掃エリア外に移動させることが可能となっている。なお、ロボットアーム17およびフィンガー部は周知技術である(例えば、特開2005−88095号参照)。
【0029】
また、本車両用清掃装置1は、ロボットアーム17の先端側に取り付けられたフィンガー部を、清掃用の清掃ヘッド18に交換して車室内を清掃する機能を備えている。清掃ヘッド18には、図3に示すように、シートの上を吸引する際に用いられるシート用清掃ヘッド18a、すきまを吸引する際に用いられるすきま用清掃ヘッド18b、床の上を吸引する際に用いられる幅広の先端部を有する床用清掃ヘッド18cがある。これらの清掃ヘッド18a〜18cは、予め定められた格納部18dに格納されており、ロボットアーム17の先端部に着脱可能となっている。
【0030】
図4に、ロボットアーム17の先端に清掃ヘッド18が取り付けられた状態で、車室内を清掃する様子を示す。(a)は、後部座席の床を清掃している様子を表す図、(b)は、前部座席の床を清掃している様子を表す図である。図4(a)、(b)に示すように、ロボットアーム17の先端に取り付けられた清掃ヘッド18を移動させながら車室内の各部を清掃するようになっている。なお、清掃ヘッド18により吸引されたごみや埃はロボットアーム17の内部を通過して本体A内のごみ容器19内に収集される。
【0031】
照明装置20は、図3に示したように、ロボットアーム17の先端付近の側部に取り付けられ、制御部23から入力される信号に応じて移動カメラ11の撮影エリアを照明する。
【0032】
吸引機21は、制御部23から入力される信号に応じて回転するモータと、このモータの回転に応じて清掃ヘッド18から空気と一緒にゴミや埃を吸引するタービンはね(いずれも図示せず)を有している。吸引機21のモータの回転に応じてタービンはねが回転すると、清掃ヘッド18から空気と一緒にゴミや埃がロボットアーム17の内部を通りごみ容器19に収集されるようになっている。
【0033】
表示装置22は、液晶等のディスプレイを有し、制御部23から入力される映像信号に応じた映像をディスプレイに表示させる。
【0034】
制御部23は、CPU23a、メモリ23b等を備えたコンピュータとして構成されており、CPU23aはメモリ23bに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。この制御部23には、エンジンECUからエンジンが停止中であるか動作中であるかを示す信号が入力されるようになっている。
【0035】
また、制御部23のメモリ23bには、図5に示すように、車室内を複数の清掃エリアに分けて、清掃エリア毎に、使用する清掃ヘッド18やロボットアーム17の移動経路等を示した清掃パターンが記憶されている。この清掃パターンは、図6に示すように、搭載された車両のシートの位置、形状、配置、床の形状等を考慮してプログラミングされている。
【0036】
図7に、制御部23のフローチャートを示す。制御部23は、イグニッションスイッチの状態と関係なく、図7に示す処理を実施する。
【0037】
まず、湿度センサ13によって検出された湿度が基準値よりも高いか否かに基づいて雨天または降雪であるか否かを推定する(S100)。本実施形態では、雨天や降雪時には車両周辺の湿度が高くなる点に着目し、湿度センサ13から入力される信号に基づいて湿度が基準値(例えば、70%)よりも高いか否かを判定し、湿度が基準値よりも高い場合に雨天または降雪であると推定する。
【0038】
雨天または降雪でない場合、S100の推定を繰り返し、雨天または降雪の場合、S102およびS104にて、車室内に乗員が存在しないか否かを判定する。
【0039】
S102では、エンジンECUから入力される信号に基づいてエンジンが停止中であるか否かを判定する。
【0040】
また、S104では、赤外線センサ10の検出結果に基づいて車室内に乗員が存在するか否かを判定する。
【0041】
本実施形態では、S102にてエンジンが停止中であると判定され、かつ、S104にて車室内に乗員が検出されないと判定された場合、車室内に乗員が存在しないと判定し、S102にてエンジンが動作中であると判定され場合、または、S104にて車室内に乗員が検出たと判定された場合、車室内に乗員が存在すると判定する。
【0042】
したがって、S102にてエンジンが動作中であると判定され場合、または、S104にて車室内に乗員が検出たと判定された場合、S100の判定へ戻る。また、S102にてエンジンが停止中であると判定され、かつ、S104にて車室内に乗員が検出されないと判定された場合、次に、照度センサ14から入力される信号に基づいて夜間であるか否かを判定する(S106)。
【0043】
夜間であると判定された場合、照明装置20に点灯を指示し(S108)、S110へ進む。また、夜間でない、すなわち昼間であると判定された場合には、照明装置20に点灯を指示することなく、S110へ進む。従って、夜間には照明装置20により清掃領域が照明される。
【0044】
S110では、メモリ23bに記憶された清掃パターンの読み込みを行う。
【0045】
次に、清掃エリアI(ただし、Iは変数)にロボットアーム17を移動させる(S112)。具体的には、清掃パターンに従い、ロボットアーム17の先端に予め定められた清掃ヘッド18を取り付け、清掃エリアIの清掃開始位置へロボットアーム17を移動させる。
【0046】
次に、車室内カメラ12からの撮影画像に基づいて清掃エリアIに大きなサイズの物体があるか否かを判定する(S114)。メモリ23bには、清掃エリア毎に、物体が置かれていない状態の撮影画像が記憶されており、この物体が置かれていない状態の撮影画像と、車室内カメラ12から入力される撮影画像とを比較して清掃エリアIに鞄等の予め定められた大きさよりも大きな物体が置かれているか否かを判定する。
【0047】
ここで、清掃エリアIに大きなサイズの物体があると判定された場合、S114の判定はYESとなり、次に、ロボットアーム17の先端に取り付けられた清掃ヘッド18をロボットハンドとして機能するフィンガー部に交換する(S116)。
【0048】
次に、その物体の位置および向きをメモリ23bに記憶させる(S118)。
【0049】
次に、フィンガー部によりその物体を掴んで清掃エリアI以外の清掃エリアへ移動させる(S120)。
【0050】
次に、移動先の物体の位置をメモリ23bに記憶させ(S122)、S114へ戻る。
【0051】
このように、清掃エリアIに大きなサイズの物体が置かれたいた場合には、清掃エリア外へその物体を移動させる処理を実施する。
【0052】
また、大きなサイズの物体が存在しない場合、S114の判定はNOとなり、次に、吸引機21のモータを起動させる(S124)。これにより、吸引機21による吸引が開始され、S200に示す吸引処理が開始される。
【0053】
図8に、この吸引処理のフローチャートを示す。この吸引処理では、まず、清掃ヘッド18に物体が吸着したか否かを判定する(S202)。清掃ヘッド18に物体が吸着すると、吸引力が変化して吸引機21のモータに流れる電流が増加する。制御部23には、このモータに流れる電流に応じた信号が入力されるようになっており、制御部23は、このモータに流れる電流が基準値以上になったか否かに基づいて清掃ヘッド18に物体が吸着したか否かを判定する。
【0054】
清掃ヘッド18に物体が吸着していない場合、S202の判定を繰り返す。また、清掃ヘッド18に物体が吸着すると、S202の判定はYESとなり、吸引を一時停止させる(S204)。具体的には、モータの回転を一定期間停止させた後、モータの始動を再開させる。このように、清掃ヘッド18に物体が吸着した場合には、吸引を一時停止させて清掃ヘッド18から物体を外すようにしている。
【0055】
次に、移動カメラ11によって撮影された清掃ヘッド18の清掃エリアの撮影画像から異物を吸引したか否かを判定する(S206)。具体的には、移動カメラ11から入力される複数の撮影画像を比較して、異物が突然消えたか否かに基づいて、ボタン電池、コイン、ピン、ボタン等の特定の形状の物体が撮影画像から突然消えたか否かに基づいて異物を吸引したか否かを判定する。
【0056】
ここで、異物が吸引された場合、S206の判定はYESとなり、次に、吸引した異物を含む撮影画像をメモリ23bに記憶させ(S208)、S210へ進む。
【0057】
また、異物が吸引されない場合、S206の判定はNOとなり、メモリ23bへの記憶を実施することなく、S210へ進む。
【0058】
S210では、吸引の継続が可能か否かを判定する。清掃ヘッド18に物体が吸着したままの状態や、ロボットアーム17の内部にごみ等がつまった状態では、吸引機21のモータに流れる電流が増加したままとなる。このモータに流れる電流が基準値以上であるか否かに基づいて吸引の継続が可能か否かを判定する。
【0059】
ここで、吸引の継続が不可能であると判定された場合、S210の判定はNOとなり、次に、清掃中断処理を行う(S212)。具体的には、吸引機21のモータ2を停止させる。
【0060】
次に、ロボットアーム17を所定の位置に格納する(S214)。
【0061】
次に、異常終了したことを示す情報をメモリ23bに記憶させ(S216)、本処理を終了する。
【0062】
また、吸引の継続が可能であると判定された場合、S210の判定はYESとなり、図7のS300へ戻る。
【0063】
図7の説明に戻り、S300では、清掃パターンに従って清掃エリアIの清掃を完了したか否かを判定する。
【0064】
清掃が完了していない場合、S300の判定はNOとなり、S200の吸引処理を実施する。
【0065】
そして、清掃エリアIの清掃が完了すると、S300の判定はYESとなり、次に、ロボットアーム17の先端に取り付けられた清掃ヘッド18をロボットハンドとして機能するフィンガー部に交換する(S302)。
【0066】
次に、S120にて移動させた物体を元の位置へ戻す(S304)。具体的には、S118、S122にてメモリ23bに記憶された物体の移動前後の位置を読み出し、フィンガー部によりその物体を掴んで物体を元の位置へ戻す。
【0067】
次に、ごみ容器19が満杯か否かを判定する(S308)。具体的には、ごみ量検出センサ15から入力される信号に基づいてごみ容器19が満杯か否かを判定する。
【0068】
ごみ容器19が満杯になっていない場合、次に、全ての清掃エリアの清掃を完了したか否かを判定する(S310)。
【0069】
全ての清掃エリアの清掃を完了していない場合、S310の判定はNOとなり、次に、清掃エリアI+1へロボットアーム17を移動させ(S312)、S114へ戻る。
【0070】
以下、この清掃エリアI+1を対象に清掃を実施する。このように、清掃パターンに従って、各清掃エリアの清掃を順次実施する。
【0071】
そして、全ての清掃エリアの清掃が完了すると、S310の判定はYESとなり、本処理を終了する。
【0072】
また、途中でごみ容器19が満杯になると、S308の判定はYESとなり、次に、ごみ容器19の交換指示をメモリ23bに記憶させる(S314)。
【0073】
次に、ロボットアーム17を所定の位置に格納し(S316)、本処理を終了する。
【0074】
上記したように、車室内の以下が濡れていない状態で、かつ、車室内の乗員が存在しない状態で、吸引による清掃が実施される。そして、車両に乗員が乗り込むと、清掃に関する情報を表示する清掃状況表示処理が実施される。
【0075】
この清掃状況表示処理のフローチャートを図9に示す。制御部23は、図7に示した処理と並行に、図9に示す処理を実施する。
【0076】
まず、赤外線センサ10の検出結果に基づいて車室内に乗員が存在するか否かを判定する(S400)。
【0077】
ここで、車室内に乗員が存在しない場合、S400の判定を繰り返し実施する。そして、車室内に乗員が乗り込むと、S400の判定はYESとなり、次に、メモリ23bから清掃に関する情報の読み出しを行う(S402)。上述したように、メモリ23bには、吸引した異物を含む撮影画像(S208)、異常終了したことを示す情報(S216)、ごみ容器交換指示を示す情報(S314)等が記憶されるようになっている。
【0078】
次に、清掃結果を表示装置22のディスプレイに表示させる(S404)。これにより、例えば、異物を吸引した場合には吸引した異物を含む撮影画像が表示され、異常終了した場合には異常終了したことを表すメッセージが表示され、ごみ容器が満杯になった場合にはごみ容器の交換指示を表すメッセージが表示される。
【0079】
上記した構成によれば、雨天または降雪でないと推定され、かつ、車室内に乗員が存在しないと判定された場合、記憶媒体に記憶された清掃パターンに従って清掃ヘッドを移動させながら車室内が吸引清掃されるので、清掃ヘッドから水分を吸い込んでしまったり、清掃ヘッドに水分が付着したりすることなく、より快適に車室内を清掃することができる。また、車室内に乗員が存在しない間に車室内が吸引清掃されるので、乗員は清掃時間を気にすることなく車室内をきれいに保つことができる。
【0080】
また、このような清掃により、車室内の埃や花粉等が少なくなるため、涙やくしゃみ等による運転への支障の低減を図ることにもなる。
【0081】
また、清掃される車室内の特定の清掃領域に物体が存在すると判定された場合、車室内の清掃領域以外の位置に物体が移動させられるので、清掃領域に物体が置かれていても物体の下を清掃することが可能である。
【0082】
また、車室内の特定の清掃領域の清掃が終了した後、メモリに記憶された物体の移動前の移動後の位置および向きに基づいて物体を元の位置に戻すことができる。
【0083】
また、清掃ヘッドに物体が吸着したと判定された場合、予め定められた期間、吸引が停止されるので、清掃ヘッドに吸着した物体を外した上で清掃を再開させることが可能である。
【0084】
また、ごみ容器が満杯になったことが検出された場合、ごみ容器の交換指示が記憶手段に記憶され、記憶手段に記憶されたごみ容器の交換指示が表示手段に表示されるので、乗員はごみ容器が満杯になったことを容易に認識することができる。
【0085】
また、特定の物体が吸引されたことが判定された場合、吸引された物体の撮影画像が記憶手段に記憶され、記憶手段に記憶された吸引された物体の撮影画像が表示手段に表示されるので、乗員は吸引されては困る物が吸引されたかどうかを容易に確認することが可能である。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0087】
例えば、上記実施形態では、車両周辺の空気の湿度を検出する湿度センサ13からの信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを判定する例を示したが、例えば、車室内の空気の湿度や車室内の床の湿度を検出する湿度センサを用いて雨天または降雪であるか否かの判定を行うようにしてもよい。
【0088】
また、車両に雨滴センサを搭載し、この雨滴センサからの信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを判定するようにしてもよい。また、車両のワイパーの動作状態を示す信号を取得し、この信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、赤外線センサ10の検知信号に基づいて車室内に乗員が検出されたか否かを判定する例を示したが、例えば、車室内の各シートの設けられた圧力センサによりシートへの乗員の着座の有無を検出して車室内に乗員が検出されたか否かを判定するようにしてもよい。また、車室内のカメラ画像と、車室内に乗員が存在しない状態で撮影した撮影画像を比較して車室内に乗員が検出されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、S102にてエンジンが停止中であると判定され、かつ、S104にて車室内に乗員が検出されないと判定された場合、車室内に乗員が存在しないと判定する例を示したが、例えば、S104にて車室内に乗員が検出されないと判定された場合に、車室内に乗員が存在しないと判定してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、車室内の清掃領域を撮影する移動カメラ11と車室内を撮影する車室内カメラ12を備えた例を示したが、移動カメラ11と車室内カメラ12のいずれか一方のカメラにより両機能を実現するように構成してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、車室内を吸引により清掃する例を示したが、例えば、熱風を窓ガラスの指定位置に吹き付けて窓ガラスの曇りをとる機能を備えてもよい。
【0093】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、湿度センサ13が湿度検出手段に相当し、S100が状況推定手段に相当し、赤外線センサ10が乗員検出手段に相当し、S104が乗員判定手段に相当し、S200が吸引処理手段に相当し、移動カメラ11、車室内カメラ12が清掃領域撮影手段に相当し、S116、S118、S120、S1232が第1の物体移動手段に相当し、メモリ23bが記憶手段に相当し、S302、S304が第2の物体移動手段に相当し、S202が吸着判定手段に相当し、S204が吸引停止手段に相当し、ごみ量検出センサ15がごみ量検出手段に相当し、S308、S314が交換指示記憶制御手段に相当し、S206が特定物体吸引判定手段に相当し、S208が特定物体記憶制御手段に相当し、S404が表示制御手段に相当し、照明装置20が照明手段に相当し、照度センサ14が照度検出手段に相当し、S106が昼夜判定手段に相当し、S108が照明制御手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用清掃装置の構成を示す図である。
【図2】ロボットアームについて説明するための図である。
【図3】清掃ヘッドについて説明するための図である。
【図4】(a)は、後部座席の床を清掃している様子を表す図、(b)は、前部座席の床を清掃している様子を表す図である。
【図5】清掃パターンについて説明するための図である。
【図6】清掃パターンについて説明するための図である。
【図7】制御部による処理を示すフローチャートである。
【図8】制御部による吸引処理を示すフローチャートである。
【図9】制御部による清掃状況表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1…車両用清掃装置、10…赤外線センサ、11…移動カメラ、12…車室内カメラ、
13…湿度センサ、14…照度センサ、15…ごみ量検出センサ、16…入力装置、
17…ロボットアーム、18…清掃ヘッド、19…ごみ容器、20…照明装置、
21…吸引機、22…表示装置、23…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の湿度に応じた信号を出力する湿度検出手段と、
前記湿度検出手段からの信号に基づいて雨天または降雪であるか否かを推定する状況推定手段と、
前記車室内の乗員を検出する乗員検出手段と、
前記乗員検出手段の検出結果に基づいて車室内に乗員が存在しないか否かを判定する乗員判定手段と、
前記状況推定手段により雨天または降雪でないと推定され、かつ、前記乗員判定手段により前記車室内に乗員が存在しないと判定された場合、記憶媒体に記憶された清掃パターンに従って清掃ヘッドを移動させながら前記車室内を吸引清掃する吸引処理手段と、を備えた車両用清掃装置。
【請求項2】
前記車室内の清掃領域を撮影する清掃領域撮影手段と、
前記清掃領域撮影手段の撮影画像から前記吸引処理手段により清掃される前記車室内の特定の清掃領域に物体が存在するか否かを判定する物体判定手段と、
前記物体判定手段により前記車室内の特定の清掃領域に前記物体が存在すると判定された場合、前記車室内の清掃領域以外の位置に前記物体を移動させる第1の物体移動手段と、を備えことを特徴とする請求項1に記載の車両用清掃装置。
【請求項3】
前記第1の物体移動手段は、前記物体の移動前と移動後の位置および向きを記憶手段に記憶させ、
前記吸引処理手段による前記車室内の特定の清掃領域の清掃が終了した後、前記記憶手段に記憶された前記物体の移動前の移動後の位置および向きに基づいて前記物体を元の位置に戻す第2の物体移動手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の車両用清掃装置。
【請求項4】
前記吸引処理手段は、吸引力の変化に基づいて前記清掃ヘッドに物体が吸着したか否かを判定する吸着判定手段と、
該吸着判定手段により前記清掃ヘッドに物体が吸着したと判定された場合、予め定められた期間、吸引を停止する吸引停止手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用清掃装置。
【請求項5】
前記吸引処理手段により吸引清掃されたごみを収集するごみ容器が満杯になったか否かを検出するごみ量検出手段と、
前記ごみ量検出手段により前記ごみ容器が満杯になったことが検出された場合、前記ごみ容器の交換指示を前記記憶手段に記憶する交換指示記憶制御手段と、
前記記憶手段に記憶された前記ごみ容器の交換指示を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用清掃装置。
【請求項6】
前記清掃領域撮影手段により撮影された複数の画像を比較して特定の物体を吸引したか否かを判定する特定物体吸引判定手段と、
前記特定物体吸引判定手段により前記特定の物体が吸引されたことが判定された場合、前記清掃領域撮影手段により撮影された吸引された物体の撮影画像を前記記憶手段に記憶する特定物体記憶制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記記憶手段に記憶された吸引された物体の撮影画像を表示手段に表示させることを特徴とする請求項5に記載の車両用清掃装置。
【請求項7】
前記清掃領域撮影手段により撮影される前記清掃領域を照明する照明手段と、
前記車両周辺の照度を検出する照度検出手段と、
前記照度検出手段の検知信号に基づいて昼間であるか夜間であるかを判定する昼夜判定手段と、
前記昼夜判定手段により夜間であると判定された場合、前記照明手段に前記清掃領域を照明させる照明制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両用清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12635(P2009−12635A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177280(P2007−177280)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】