説明

車両用灯具異常警告装置

【課題】灯具の一部が不灯となった場合に、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性を抑制でき、簡素な構成とする。
【解決手段】並列に接続された複数の電子発光素子1,2に生じた短絡故障又は開放故障を検出して警告する車両用灯具異常警告装置であって、複数の電子発光素子のアノードにそれぞれ接続された複数の第1抵抗器3,4と、複数の電子発光素子のカソードにそれぞれ接続された複数の第2抵抗器5,6と、短絡故障閾値電圧源7と、開放故障閾値電圧源8と、複数の電子発光素子のアノード電圧と短絡閾値電圧をそれぞれ比較する複数の第1比較器9,10と、複数の電子発光素子のカソード電圧と開放閾値電圧をそれぞれ比較する複数の第2比較器11,12と、複数の第1比較器及び複数の第2比較器からの開放故障又は短絡故障の判断結果に基づいて、複数の電子発光素子への供給電流を遮断する遮断スイッチ13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具異常警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばストップランプやテールランプのように自動車の後部に設けられた灯火であって、運転者が走行中に点灯しているか否かを視認し難い灯火の状態を運転者に判別させるために用いられる自動車の灯火異常時警告装置として、特開平11−291816号公報(特許文献1)に開示された技術が知られている。
【0003】
また、上記技術とは別の灯火をLEDにした場合における従来技術を図2を参照して説明する。
【0004】
図2において、メインスイッチ51をONさせると、電源52から遮断スイッチ53を介して抵抗54及びLED56に電流が流れ、LED56が点灯する。同様にして、抵抗55及びLED58にも電流が流れる。LED56又はLED58が開放故障した場合には、LED56又はLED58のアノード電圧が電源電圧近傍まで上昇する。
【0005】
一方、LED56又はLED58が短絡故障した場合には、アノード電圧はグランドまで下降する。これらのことから、LED56のアノード電位を比較器61と比較器62で構成される窓型比較器60で検出することにより、LED56の開放故障及び短絡故障が検出できる。短絡故障とは、アノードとカソードが物理的に接続された場合を示し、半導体が導体化した場合、もしくはアノードと電極を接続する導体とカソードと電極を接続する導体が接触した場合を示す。開放故障とは、半導体が破壊され、アノードとカソードが絶縁された場合を示す。また、アノードと電極を接続する導体が開放状態にある場合とカソードと電極を接続する導体が開放状態になった場合も同じである。
【0006】
ここで、窓型比較器60は比較器61のマイナス側端子に接続された短絡故障閾値電圧源65の電圧よりLED56のアノード電圧が下がれば短絡故障と判断し、比較器62のプラス側端子に接続された短絡故障閾値電圧源66の電圧より上がれば開放故障とみなす構成である。同様にして、LED58の故障についても窓型比較器の比較器71,72により検出することができる。
【0007】
窓型比較器60,70が故障と判断した場合には、ECU80が遮断スイッチ53をOFFし、LED56及びLED58に流れる電流を遮断する。
【0008】
故障に至る状態を図3及び図4を参照して説明する。
図3は、LED56,58が短絡故障した場合のアノード電圧を示している。図3に示すように、LED56,58のアノード電圧は、短絡故障閾値電圧を横切るため、窓型比較器60,70が故障と判断し、一定の回路遅延時間後に、ECU80が遮断スイッチ53をOFFにしてLED56及びLED58への供給電流を遮断する。
【0009】
図4は、LED56,58が開放故障した場合のアノード電圧を示している。図4に示すように、LED56,58のアノード電圧は上昇し、開放故障閾値電圧を横切り、窓型比較器60,70は、故障と判断する。よって、一定の回路遅延時間後、遮断スイッチ53がOFFにされる。
【0010】
【特許文献1】特開平11−291816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載された技術は、灯火の一部が異常であることを運転者に警告するものに過ぎず、そのため、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性があり危険である。危険回避のためには、灯火の一部が異常である場合には、全ての灯火を消灯して危険であることをより明確に運転者に知らせる必要がある。
【0012】
また、図2に示した従来技術によれば、LED56,58が開放故障した場合、図4に示すように、LED56,58のアノード電圧は上昇し、開放故障閾値電圧を横切る。よって、窓型比較器60,70は、故障と判断して、ECU80が一定の回路遅延時間後に、遮断スイッチ53をOFFする。ところが、遮断スイッチ53をOFFすると、LED56,58のアノード電圧は下降し、再び、開放故障閾値電圧を横切り正常な領域に入り、窓型比較器60,70は、再び遮断スイッチ53をONさせてしまう。このため、遮断スイッチ53は、ON/OFFを繰り返してしまうことから、1度開放故障閾値電圧を横切った場合のみ窓型比較器60,70の信号を受信するなどのソフトウェア的な処理が必要であり、ECU80は必ず必要であった。
【0013】
灯具の一部が不灯となった場合に、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性を抑制できるとともに、ECUを必要としない簡素な構成で車両用灯具異常警告装置を実現することが望まれている。
【0014】
本発明の目的は、灯具の一部が不灯となった場合に、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性を抑制できるとともに、ECUを必要としない簡素な構成の車両用灯具異常警告装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両用灯具異常警告装置は、車両用灯具として並列に接続された複数の電子発光素子に生じた短絡故障又は開放故障を検出して異常であることを警告する車両用灯具異常警告装置であって、前記複数の電子発光素子のアノードにそれぞれ接続された複数の第1抵抗器と、前記複数の電子発光素子のカソードにそれぞれ接続された複数の第2抵抗器と、前記電子発光素子の短絡故障を判別するための短絡閾値電圧を出力する短絡故障閾値電圧源と、前記電子発光素子の開放故障を判別するための開放閾値電圧を出力する開放故障閾値電圧源と、前記複数の電子発光素子のアノード電圧と短絡閾値電圧をそれぞれ比較して短絡故障の判断を行う複数の第1比較器と、前記複数の電子発光素子のカソード電圧と開放閾値電圧をそれぞれ比較して開放故障の判断を行う複数の第2比較器と、前記複数の第1比較器及び前記複数の第2比較器からの開放故障又は短絡故障の判断結果に基づいて、前記複数の電子発光素子への供給電流を遮断する遮断スイッチとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、灯具の一部が不灯となった場合に、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性を抑制できるとともに、ECUを必要としない簡素な構成の車両用灯具異常警告装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の車両用灯具異常警告装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具異常警告装置において、異常を警告する車両用灯具としては、少なくとも2つのLED1、LED2を対象としている。この複数のLED1,2は、例えば、ハイビーム、ロービームの組合わせ、ストップランプとテールランプの組合わせ、デイタイムランプとターンランプの組合わせなど、複灯の可能性がある全てのランプに適用可能である。
【0019】
本実施形態の車両用灯具異常警告装置は、車両用灯具として並列に接続された複数のLED1、LED2に生じた短絡故障又は開放故障を検出して異常であることを警告する車両用灯具異常警告装置であって、前記複数のLED1、LED2のアノードにそれぞれ接続された抵抗器3,抵抗器4と、LED1,LED2のカソードにそれぞれ接続された抵抗器5,抵抗器6と、LED1,LED2の短絡故障を判別するための短絡閾値電圧を出力する短絡故障閾値電圧源7と、LED1,LED2の開放故障を判別するための開放閾値電圧を出力する開放故障閾値電圧源8と、LED1,LED2のアノード電圧と短絡閾値電圧を比較して短絡故障判断する比較器9,比較器10と、LED1,LED2のカソード電圧と開放閾値電圧を比較して開放故障判断する比較器11,比較器12と、比較器9と比較器10と比較器11と比較器12からの開放故障又は短絡故障判断結果よりLED1,LED2への供給電流を遮断する遮断スイッチ13とを備え、LED1,LED2のアノード電圧及びカソード電圧から短絡故障と開放故障を検出して、LED1,LED2への供給電力を遮断する。
【0020】
次に、本実施形態の車両用灯具異常警告装置の動作について説明する。
【0021】
メインスイッチ15をONさせると、電源14から遮断スイッチ13を介して抵抗器3とLED1と抵抗器5に電流が流れ、LED1が点灯する。同様に、抵抗器4とLED2と抵抗器6にも電流が流れ、LED2も点灯する。
【0022】
ここで、比較器9は、プラス入力に接続された短絡故障閾値電圧源7の電圧よりもLED1のアノード電圧が低くなると、短絡故障と判断する。比較器11は、プラス入力に接続された開放故障閾値電圧源8の電圧よりもLED1のカソード電圧が低くなると、開放故障と判断する。LED2についても比較器10と比較器12が同様な振る舞いを行う。上記の比較器9〜比較器12のいずれかが故障と判断した場合には遮断スイッチ13がOFFされ、LED1とLED2への電流が遮断される。抵抗器3,抵抗器4,抵抗器5,抵抗器6は、LED1,LED2の電流を制限する抵抗である。更に、この抵抗器3,抵抗器4,抵抗器5,抵抗器6は、短絡故障又は開放故障を判定する抵抗である。仮に抵抗器3と抵抗器5の合成抵抗をAとして抵抗器3を削除し、遮断スイッチ13を直接LED1に接続して抵抗器5の代わりに合成抵抗Aを接続した場合、LEDを流れる電流は同じであるため、LED1の発光量は同じである。しかし、比較部9のマイナス入力電位は、開放故障でも短絡故障でも電位は変わらない。比較部11のマイナス入力電位は開放故障で電位が下がり、短絡故障で電位が上がる。この現象は従来技術の検出方法である。抵抗器3と抵抗器5の役割は開放故障であっても短絡故障であっても開放故障閾値電圧又は短絡故障閾値電圧より検出電位が下がった場合に反応するように構成されているためLED1をはさんだ構成となっている。抵抗器4と抵抗器6も同様である。
【0023】
本実施形態によれば、灯具の一部が不灯となり、必要十分な光束量を満たさないまま運転者が走行する可能性を軽減できるとともに、ECUを必要としない簡素な構成で車両用灯具異常警告装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の車両用灯具異常警告装置の一実施形態の回路図である。
【図2】従来の車両用灯具異常警告装置の構成を示す回路図である。
【図3】図2の車両用灯具異常警告装置において、LEDが短絡故障しているときのアノード電圧を示すグラフである。
【図4】図2の車両用灯具異常警告装置において、LEDが開放故障しているときのアノード電圧を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
1 LED
2 LED
3 抵抗器
4 抵抗器
5 抵抗器
6 抵抗器
7 短絡故障閾値電圧源
8 開放故障閾値電圧源
9 比較部
10 比較部
11 比較部
12 比較部
13 遮断スイッチ
14 電源
15 メインスイッチ
51 スイッチ
52 電源
53 遮断スイッチ
54 抵抗器
55 抵抗器
56 LED
58 LED
60 窓型比較部
61 比較器
62 比較器
65 短絡故障閾値電圧源
66 開放故障閾値電圧源
70 窓型比較器
71 比較器
72 比較器
80 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具として並列に接続された複数の電子発光素子に生じた短絡故障又は開放故障を検出して異常であることを警告する車両用灯具異常警告装置であって、
前記複数の電子発光素子のアノードにそれぞれ接続された複数の第1抵抗器と、
前記複数の電子発光素子のカソードにそれぞれ接続された複数の第2抵抗器と、
前記電子発光素子の短絡故障を判別するための短絡閾値電圧を出力する短絡故障閾値電圧源と、
前記電子発光素子の開放故障を判別するための開放閾値電圧を出力する開放故障閾値電圧源と、
前記複数の電子発光素子のアノード電圧と短絡閾値電圧をそれぞれ比較して短絡故障の判断を行う複数の第1比較器と、
前記複数の電子発光素子のカソード電圧と開放閾値電圧をそれぞれ比較して開放故障の判断を行う複数の第2比較器と、
前記複数の第1比較器及び前記複数の第2比較器からの開放故障又は短絡故障の判断結果に基づいて、前記複数の電子発光素子への供給電流を遮断する遮断スイッチと
を備えたことを特徴とする車両用灯具異常警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−131138(P2006−131138A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323507(P2004−323507)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)