説明

車両用灰皿構造

【課題】 車両用灰皿の取付基板の車体後方向側のエッジの美観および手当たり(感触)を向上させる。
【解決手段】 金属製の取付基板15の車体後方側部分を車体前方に向けてコ字状に折り曲げて折曲部15dを形成したので、折曲部15dのエッジが乗員から目視不能になって美観が向上するだけでなく、灰皿本体16を引き出すときに乗員の手が折曲部15dのエッジに触れることがなくなって感触が良好になる。しかも折曲部15dのエッジに形成した切欠き15eをインストルメントパネル11の開口11cに形成したリブ11dに係合させたので、取付基板15をインストルメントパネル11に固定する際の位置決めを容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の取付基板の下面に灰皿本体をスライド自在に支持した灰皿をインストルメントパネルの開口内に配置し、前記開口を通して前記灰皿本体を車体後方に引き出す車両用灰皿構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルに形成した取付穴に灰皿本体を車室側から挿入し、前記取付穴のフランジと灰皿本体のフランジとを結合して灰皿本体をインストルメントパネルに固定し、灰皿本体の開口を開閉自在な灰皿蓋部で覆った車両用灰皿が、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−52698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記従来のものは、灰皿本体をインストルメントパネルに固定し、灰皿本体の開口を開閉自在な灰皿蓋体で覆ったので、灰皿本体の開口を大きく確保することが難しくなって使い勝手が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、金属製の取付基板をインストルメントパネルの開口の上縁に臨むように該インストルメントパネルの内部に固定し、この取付基板の下面に沿ってスライド自在に支持した灰皿本体を前記開口から車室内に引き出せるように構成すれば、灰皿本体の上面を大きく開口させて使い勝手を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、このように構成すると、金属製の取付基板の後端のエッジがインストルメントパネルの開口に露出して美観を損ねたり、灰皿本体を出し入れする際に乗員の手が前記エッジに触れて手当たり(感触)が悪くなる懸念がある。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両用灰皿の取付基板の車体後方向側のエッジの美観および感触を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、金属製の取付基板の下面に灰皿本体をスライド自在に支持した灰皿をインストルメントパネルの開口内に配置し、前記開口を通して前記灰皿本体を車体後方に引き出す車両用灰皿構造において、前記取付基板の車体後方側部分を車体前方に向けてコ字状に折り曲げて折曲部を形成し、前記折曲部の車体前方側の縁部に形成した切欠きを前記インストルメントパネルの開口に形成したリブに係合させたことを特徴とする車両用灰皿構造が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、金属製の取付基板の下面に灰皿本体をスライド自在に支持した灰皿をインストルメントパネルの開口内に配置したので、灰皿本体をインストルメントパネルの開口から車室内に引き出して使用可能な状態にすることができる。取付基板の車体後方側部分を車体前方に向けてコ字状に折り曲げて折曲部を形成したので、折曲部の車体前方側の縁部が乗員から目視不能になって美観が向上するだけでなく、灰皿本体を引き出すときに乗員の手が折曲部の車体前方側の縁部に触れることがなくなって感触が良好になる。しかも折曲部の車体前方側の縁部に形成した切欠きをインストルメントパネルの開口に形成したリブに係合させたので、取付基板をインストルメントパネルに固定する際の位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両のインストルメントパネルの斜視図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】灰皿の斜視図。
【図4】図3の4−4線断面図。
【図5】図3の5−5線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図6に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1に示すように、インストルメントパネル11の中央部に設けられたエアコンの操作パネル12の下方に、シガレットライタ13および灰皿14が設けられる。
【0013】
図2〜図6に示すように、灰皿14は、金属製の取付基板15と、合成樹脂製の灰皿本体16とを備える。取付基板15は金属薄板をプレス成形したもので、矩形状の本体部15aを備えており、本体部15aの車体前方側部分は下向きに折り曲げられてストッパ15bを構成する。本体部15aの左右両側部分は下向きおよび内向きに折り曲げられて断面溝状のガイドレール15c,15cを構成する。本体部15aの車体後方側部分は上側および車体前方側に向けて断面コ字状に折り曲げられて折曲部15dを構成する。折曲部15dの先端のエッジの左右方向中央には、車体後方側に切り欠かれた切欠き15eが形成される。
【0014】
本体部15aに上方に向けて凹む取付部15f,15fが形成されており、この取付部15f,15fを下から上に貫通し、インストルメントパネル11の前向きの端部11aに嵌合する2個のJナット23,23に螺合する2本のタッピングスクリュー17,17で、取付基板15の後部がインストルメントパネル11に固定される。またインストルメントパネル11の上向きの端部11bにJナット18を嵌合させ、このJナット18にストッパ15bの下部を後から前に貫通する1本のタッピングスクリュー19を螺合することで、取付基板15の前部がインストルメントパネル11に固定される。このとき、取付基板15の折曲部15dの切欠き15eがインストルメントパネル11の開口11cの上縁に形成したリブ11dに車体後方側から係合する。
【0015】
上述のようにしてインストルメントパネル11の開口11cの上縁に沿って固定された取付基板15に前後スライド自在に支持される灰皿本体16は、後壁16a,前壁16bおよび左右の側壁16c,16cを有して上面が開放した容器であり、その後壁16aの上端に把手16dが形成される。灰皿本体16の左右の側壁16c,16cの上縁に沿って土手状のガイド突起16e,16eが形成されており、このガイド突起16e,16eを取付基板15のガイドレール15c,15cにスライド自在に係合させることで、灰皿本体16がインストルメントパネル11の開口11cから車室側に引き出し可能に支持される。
【0016】
灰皿本体16の左右の側壁16c,16cの前上部に支点ピン20,20を介して金属製の内蓋21の前端が枢支される。内蓋21はスプリング22の弾発力で上向きに付勢され、その中間の凸部21aが取付基板15の下面に摺動自在に当接する。
【0017】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0018】
灰皿14をインストルメントパネル11に取り付けるには、先ず取付基板15の折曲部15dの切欠き15eをインストルメントパネル11の開口11cのリブ11dに係合させることで、取付基板15をインストルメントパネル11に対して位置決めする。この状態で、取付基板15の取付部15f,15fを下から上に貫通するタッピングスクリュー17,17をインストルメントパネル11の前向きの端部11aに嵌合するJナット23,23に螺合するとともに、インストルメントパネル11の上向きの端部11bに嵌合するJナット18に取付基板15のストッパ15bの下部を後から前に貫通するタッピングスクリュー19を螺合することで、取付基板15をインストルメントパネル11に固定する。
【0019】
続いて、取付基板15の左右のガイドレール15c,15cに灰皿本体16の左右のガイド突起16e,16eを係合させてインストルメントパネル11の開口11c内に押し込むことで、取付基板15に灰皿本体16を組み付けることができる。灰皿本体16を開口11c内に押し込むとき、灰皿本体16に設けた内蓋21は凸部21aが取付基板15の折曲部15dに当接して下向きに揺動した後、凸部21aが取付基板15の下面に沿って摺動することで、内蓋21は灰皿本体16の内部に収納される。灰皿本体16を引き出したとき、凸部21aを取付基板15の下面に案内された内蓋21は自動的に上方に揺動し、その後端が開口11cの上縁を下側から覆うことで、タバコの火からインストルメントパネル11を保護することができる。
【0020】
このように灰皿本体16をインストルメントパネル11の開口11cから車室側に引き出すので、灰皿本体16の上面を広く開口させて使い勝手を高めることができる。また灰皿本体16を車室側に引き出すと取付基板15の屈曲部15dが乗員から目視可能に露出するが、前記屈曲部15dは車体前方側にコ字状に折り曲げられていて先端の切り口(エッジ)が乗員から見えないため、美観が向上するとともに乗員の手が触れたときの感触が良好になる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0022】
例えば、灰皿本体16の形状や、それを取付基板15にスライド自在に支持する構造は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
11 インストルメントパネル
11c 開口
11d リブ
14 灰皿
15 取付基板
15d 折曲部
15e 切欠き
16 灰皿本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の取付基板(15)の下面に灰皿本体(16)をスライド自在に支持した灰皿(14)をインストルメントパネル(11)の開口(11c)内に配置し、前記開口(11c)を通して前記灰皿本体(16)を車体後方に引き出す車両用灰皿構造において、
前記取付基板(15)の車体後方側部分を車体前方に向けてコ字状に折り曲げて折曲部(15d)を形成し、前記折曲部(15d)の車体前方側の縁部に形成した切欠き(15e)を前記インストルメントパネル(11)の開口(11c)に形成したリブ(11d)に係合させたことを特徴とする車両用灰皿構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84163(P2011−84163A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238274(P2009−238274)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】