説明

車両用空調装置

【課題】 簡単かつ安価な構成であっても、異音を発生させることなく、凝縮水をスムーズに流下させる。
【解決手段】 エバポレータ8の下端側のヘッダ13をウレタンからなる断熱部材14で覆うと共に、該断熱部材14の一部を延設して凝縮水誘導部15を形成する。そして、該凝縮水誘導部15を介して、ユニットケース7に設けた押当部16をエバポレータ8に押し当てる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用空調装置、特に、エバポレータで発生する凝縮水の流下構造に特徴を有する車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両用空調装置として、ケース内に傾斜させて設けたエバポレータで発生した凝縮水をスムーズに流下させるための構成が種々提案されている。
【0003】特開平11−115471号公報や特開平8−104129号公報には、ケースの底面に排水案内部材をエバポレータの傾斜下端側にほぼ接するように設けた構成が開示されている。
【0004】特開平9−216511号公報には、エバポレータの傾斜下端部にケースとは別体で凝縮水案内部材を成形して配置した構成が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記車両用空調装置では、エバポレータで発生し、その下端側に向かって流下する凝縮水が、単にエバポレータに当接させただけの各案内部材を介して排水部へと導かれるに過ぎない。したがって、各案内部材に至った凝縮水量が安定せず、各案内部材へとスムーズに流動しにくいばかりか、少量である場合には空気流れによって飛散するという問題がある。しかも、エバポレータ内を通過する冷媒の流動音が直接案内部材を介してケースに伝わるので、車内側での異音発生の原因となる。特に、後者の構成では、別体の凝縮水案内部材を形成しなければならず、コストアップを招来する。
【0006】そこで、本発明は、簡単かつ安価な構成であっても、異音を発生させることなく、凝縮水をスムーズに流下させることのできる車両用空調装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するための手段として、ユニットケース内にエバポレータを傾斜させて配設し、導入した空気を、下方から上方に向かって流動させることにより、前記エバポレータで冷却・除湿する車両用空調装置において、前記エバポレータの下端側をウレタンからなる断熱部材で覆うと共に、該断熱部材の一部を延設して凝縮水誘導部を形成し、該凝縮水誘導部を介して、前記ユニットケースに設けた押当部をエバポレータに押し当てたものである。
【0008】この構成により、エバポレータで発生した凝縮水は、下方側に向かって流下した後、ウレタンからなる断熱部材の凝縮水誘導部に吸水され、しかも空気流れによっては飛散しにくい状態となった後、押当部を介してスムーズに流下する。また、エバポレータ内を冷媒が流動することにより流動音が発生するが、押当部との間にはウレタンからなる断熱部材の一部である凝縮水誘導部が介在するため、伝達されることはない。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0010】図1及び図2は、本実施形態に係る排水構造を備えた空調ユニットを示す。この空調ユニットは、大略、送風ユニット1と、この送風ユニット1にダクト2を介して接続される配風ユニット3とから構成されている。
【0011】送風ユニット1は、送風ユニットケース4内にブロアモータ5によって回転駆動するファン6(遠心式多翼ファン:シロッコファン)を設けたもので、内気又は外気が導入される。送風ユニットケース4の側壁下部には導出口4aが穿設され、そこにはダクト2の一端側開口部が接続されている。
【0012】配風ユニット3は、配風ユニットケース7内に下方側からエバポレータ8及びヒータコア9を順次配設したものである。配風ユニットケース7の側壁7aには、下方側に導入口10が穿設され、そこには前記ダクト2の他端側開口部が接続されている。
【0013】エバポレータ8は、図3に示すように、扁平チューブ11と波形のフィン12とを交互に積層した構成で、下端部はヘッダ13となっている。エバポレータ8は、前記側壁7aとはほぼ直交する面内で、ヘッダ13側が徐々に下方に向かって傾斜するように配設される。そして、扁平チューブ11内を冷媒が流動することにより、外部を通過する空気を冷却・除湿する。
【0014】ところで、前記ヘッダ13はウレタンからなる断熱部材14で覆われている。断熱部材14の一部は略櫛状で、図4に示すように、エバポレータ8の下面側で、ヘッダ13から扁平チューブ11に沿って、この扁平チューブ11に接するように延設された凝縮水誘導部15となっている。但し、凝縮水誘導部15は、扁平チューブ11の間で、フィン12に沿って形成したり、櫛状ではなく板状としてもよく、いずれにしても断熱部材14を形成する際、同時かつ簡単に得ることができる。
【0015】また、エバポレータ8には、前記凝縮水誘導部15を介して配風ユニットケース7の底面に設けた押当部16が押し当てられている。このため、エバポレータ8内を流動する冷媒の流動音が押当部16に伝達されることがない。また、押当部16は、配風ユニットケース7に形成した排水溝20bの上方側から延設される略三角形の板状体である。このため、エバポレータ8で発生した凝縮水が凝縮水誘導部15からスムーズに押当部16を伝わって排水溝20bへと導かれる。なお、押当部16は、配風ユニットケース7と一体的に形成するのが好ましい。これによれば、既存の配風ユニットケース7の成形用金型に僅かに変更を加えるだけで簡単に得ることができる。
【0016】また、エバポレータ8の上方にはエアミックスダンパ17が支軸17aを中心として回動自在に配設されている。
【0017】ヒータコア9は、エアミックスダンパ17によって分流された一方の流路に配設され、内部をエンジン冷却水が流動することにより通過する空気を加熱する。配風ユニットケース7の上部では、ヒータコア9によって加熱された熱風と、エバポレータ8で冷却されてヒータコア9を迂回した冷風とが混合されて所望温度となる。所望温度となった空気は上壁7cの選択されたいずれかの送風口18を介して車内の対応する箇所から送風される。
【0018】前記配風ユニットケース7の下部には排水部19が形成されている。排水部19は、図5に示すように、導入口10から反対側の側壁7bに向かう空気流れの両側領域に形成される第1排水溝20a及び第2排水溝20bと、両排水溝20の最下端部を連通する第3排水溝20cとを備える。第1排水溝20a及び第2排水溝20bは共に、側壁7a側に向かって徐々に下方に傾斜している。その傾斜角度は、凝縮水がスムーズに流下可能なものであればよい。第1排水溝20aは第2排水溝20bに比べて幅広で、所望の傾斜角度を得るために、側壁7bとは離間した位置から形成されている。また、第2排水溝20bの最下端部には排水口21が穿設されている。さらに、第3排水溝20cは、第1排水溝20aの最下端部から排水口21に向かって徐々に傾斜している。したがって、導入口10から導入された空気は、側壁7bに衝突して方向変換された後、大部分は上方のエバポレータ8に向かって流動するが、その一部が支流となって第1排水溝20a、第3排水溝20c、及び第2排水溝20bを流動する。
【0019】次に、前記空調ユニットの動作を説明する。
【0020】ブロアモータ5の駆動により外気又は内気が送風ユニット1からダクト2を介して配風ユニット3内に導入される。導入された空気は、送風ユニットケース4からダクト2を介して配風ユニットケース7内に導入される。導入された空気は直進し、側壁7bに衝突した後、その大部分が本流となって上方に流動し、一部が支流となって第1排水溝20a及び第2排水溝20bへと流動する。
【0021】上方に向かって流動する空気(本流)はエバポレータ8で冷却・除湿される。そして、エアミックスダンパ17によって分流され、一方はヒータコア9で加熱され、他方はそのまま通過し、混合されて所望温度とされた後、車内側へと送風される。
【0022】前記エバポレータ8では、通過する空気を冷却することにより凝縮水が発生する。発生した凝縮水は、エバポレータ8が傾斜して配設されているため、その下端側に向かって流下する。エバポレータ8の下端側のヘッダ13は断熱部材14で覆われ、その凝縮水誘導部15が扁平チューブ11に沿って延設されている。したがって、流下してきた凝縮水が、凝縮水誘導部15に吸収された後、押当部16を介してスムーズに排水部19へと流下する。また、この凝縮水誘導部15は櫛状に形成されて扁平チューブ11に沿って延設されているので、空気流れを妨げることがない。排水部19では、上面で導入口10から側壁7bに向かう空気流れがあり、各排水溝20a,20b,20cで前述のような排水口21に向かう空気流れがあるため、凝縮水はスムーズに排水口21へと流下し、効率的に外部に排出される。
【0023】また、前記エバポレータ8では、内部を冷媒が流動することにより流動音が発生するが、エバポレータ8にはウレタンの一部からなる凝縮水誘導部15を介して押当部16が押し当てられているので、配風ユニットケース7に伝達されることはない。したがって、車内側での異音の発生を抑制することが可能となる。
【0024】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ユニットケースに設けた押当部を、ヘッダを覆う断熱部材の一部である凝縮水誘導部を介してエバポレータに押し当てるようにしたので、発生した凝縮水を、凝縮水誘導部に吸収させた後、押当部を介してスムーズに流下させることができる。また、凝縮水誘導部はウレタンからなる断熱部材の一部で構成されるため、エバポレータ内を冷媒が流動することにより発生する流動音が押当部には伝達されにくく、従って車内側に騒音をもたらすことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係る空調ユニットの正面図である。
【図2】 図1のI−I線断面図である。
【図3】 図1に示すエバポレータの正面図である。
【図4】 図2の部分拡大図(a)及びその部分側面図(b)である。
【図5】 図2の排水部を示す部分破断斜視図である。
【符号の説明】
1…送風ユニット
7…配風ユニットケース
8…エバポレータ
11…扁平チューブ
12…フィン
13…ヘッダ
14…断熱部材
15…凝縮水誘導部
16…押当部
19…排水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユニットケース内にエバポレータを傾斜させて配設し、導入した空気を、下方から上方に向かって流動させることにより、前記エバポレータで冷却・除湿する車両用空調装置において、前記エバポレータの下端側をウレタンからなる断熱部材で覆うと共に、該断熱部材の一部を延設して凝縮水誘導部を形成し、該凝縮水誘導部を介して、前記ユニットケースに設けた押当部をエバポレータに押し当てたことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−260644(P2001−260644A)
【公開日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−78248(P2000−78248)
【出願日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)