説明

車両用給電装置

【課題】携帯機の認証を行って、一旦認証できた場合に、その後のスイッチ操作により車両への給電を行って、該給電状態を継続できるようにする。
【解決手段】車両用給電装置1は、携帯機20と無線で通信する通信部6と、通信部6を介して携帯機20と通信して、携帯機20の認証を行う制御部3と、バッテリ15と自動二輪車の電気装置21との間に設けられたリレー7の接点8と、接点8と電気装置21との間に設けられたロータリスイッチ10と、リレー7のコイル9と制御部3とを接続する制御ライン23と、一端がロータリスイッチ10と電気装置21との接続点Pに接続され、他端が制御ライン23に接続された自己保持ライン12とを備える。制御部3は、携帯機20を認証できた場合に、制御ライン23に駆動信号を出力してリレー7のコイル9に通電し、リレー7の接点8をONする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機の認証を行い、スイッチ操作により車両への給電を行う車両用給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている車両用電源制御装置は、携帯機と無線通信して、IDコードを照合することにより、携帯機の認証を行う。そして、携帯機を認証できた場合に、ステアリングロックを解除し、エンジン始動許可状態になる。
【0003】
また、特許文献1の車両用電源制御装置では、電源と車両の電気装置との間に、リレーの接点が設けられている。リレーのコイルは、電源制御部に接続されている。操作スイッチの操作時にON(閉)状態となる第1接点は、電源制御部に接続されている。操作スイッチの操作時にOFF(開)状態となる第2接点は、リレーの接点と車両の電気装置の間と、リレーのコイルとをつなぐライン上に設けられている。
【0004】
そして、操作スイッチが操作されて、第1接点がON状態になると、電源制御部がリレーのコイルに作動電圧を印加して、リレーの接点をON状態にし、車両の電気装置への給電を行う。操作スイッチの操作が解除されて、第2接点がON状態になると、電源からリレーの接点と第2接点とを介してリレーのコイルへ通電される。このため、電源制御部が作動電圧を印加しなくなっても、第2接点がOFF状態にならない限り、リレーの接点はON状態を保持し、車両の電気装置への給電状態が継続される。
【0005】
特許文献2に開示されている車両用電子式制御装置では、電源とマイクロコンピュータとの間に、イグニッションスイッチが設けられている。イグニッションスイッチと並列に、リレーとブレーキスイッチとが設けられている。マイクロコンピュータ側にあるリレーの接点の一端とコイルの一端とは、それぞれ自己保持回路に接続されている。
【0006】
そして、イグニッションスイッチのON操作により、車両の電気装置に給電が行われる。また、リレーのコイルが通電されて、リレーの接点がON状態になり、この接点からの供給電力により、自己保持回路が作動し続ける。このため、イグニッションスイッチがOFF状態になっても、リレーの接点のON状態が保持され、車両の電気装置への給電状態が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−82606号公報
【特許文献2】特開平11−99889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、携帯機の認証を行って、一旦認証できた場合に、その後のスイッチ操作により車両への給電を行って、該給電状態を継続することができる車両用給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用給電装置は、携帯機と無線で通信する通信部と、通信部を介して携帯機と通信して、携帯機の認証を行う制御部と、電源と車両の電気装置との間に設けられ、制御部からの駆動信号に基づいてON、OFFする開閉手段と、この開閉手段と電気装置との間に設けられ、手動操作に基づいてON、OFFする操作スイッチと、制御部と開閉手段とを接続する第1接続線と、一端が操作スイッチと車両の電気装置との接続点に接続され、他端が第1接続線に接続された第2接続線とを備える。制御部は、携帯機を認証できた場合に、第1接続線へ駆動信号を出力して開閉手段をON状態にする。
【0010】
上記によると、制御部が、携帯機の認証を行って、一旦認証できた場合に、開閉手段をON(導通)状態にする。このため、その後の操作スイッチのON操作により、電源から開閉手段と操作スイッチとを通って、車両の電気装置に給電を行うことができる。また、第2接続線から第1接続線を通して、開閉手段に電流が供給される。このため、その後に制御部から開閉手段に駆動信号が供給されなくなっても、開閉手段がON状態を保持し、車両の電気装置への給電状態を継続することができる。
【0011】
また、本発明では、上記車両用給電装置において、開閉手段を、接点とコイルとを有するリレーから構成してもよい。この場合、接点の一端は電源に接続され、接点の他端は操作スイッチに接続され、コイルの一端は第1接続線に接続され、コイルの他端は接地されるように構成すればよい。
【0012】
また、本発明では、上記車両用給電装置において、開閉手段を、第1電極、第2電極、および第3電極を有する半導体スイッチング素子から構成してもよい。この場合、第1電極は電源に接続され、第2電極は操作スイッチに接続され、第3電極は第1接続線に接続されるように構成すればよい。
【0013】
また、本発明では、上記車両用給電装置において、さらに、操作スイッチと車両の電気装置との接続点における電圧を検出する電圧検出部を設けてもよい。この場合、制御部は、携帯機を認証できた後に、操作スイッチがON操作されて、電圧検出部で所定電圧を検出できた場合に、開閉手段への駆動信号の出力を停止するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明では、上記車両用給電装置において、車両の電気装置に、少なくとも車両のエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置が含まれる場合、制御部は、携帯機を認証できた後に、操作スイッチがON操作されて、電圧検出部で所定電圧を検出できた場合に、エンジン制御装置へエンジン始動の許可信号を送信するようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明では、上記車両用給電装置において、制御部は、携帯機を認証できてから所定時間が経過するまでに、電圧検出部で所定電圧を検出できた場合は、開閉手段への駆動信号の出力を停止し、かつ、エンジン制御装置へエンジン始動の許可信号を送信し、携帯機を認証できてから所定時間が経過するまでに、電圧検出部で所定電圧を検出できなかった場合は、エンジン始動の許可信号を送信せずに、開閉手段への駆動信号の出力を停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、携帯機の認証を行って、一旦認証できた場合に、その後のスイッチ操作により車両への給電を行って、該給電状態を継続することができる車両用給電装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用給電装置の構成を示した図である。
【図2】同車両用給電装置の携帯機の認証完了時の状態を示した図である。
【図3】同車両用給電装置の認証完了後のロータリスイッチON操作時の状態を示した図である。
【図4】同車両用給電装置のロータリスイッチOFF操作時の状態を示した図である。
【図5】同車両用給電装置のキースイッチとロータリスイッチのON操作時の状態を示した図である。
【図6】同車両用給電装置の給電動作を示したフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態に係る車両用給電装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る車両用給電装置1の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0020】
車両用給電装置1は、自動二輪車に搭載されている。車両用給電装置1に備わるECU2は、自動二輪車の電気装置21に対して給電を行う電子制御装置である。自動二輪車の電気装置21には、少なくとも自動二輪車のエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置22が含まれる。
【0021】
ECU2には、制御部3と電源回路5と通信部6が備わっている。制御部3は、マイクロコンピュータとメモリから成る。制御部3は、自動二輪車の各電気装置21に備わる制御部と通信ライン19を介して通信を行う。
【0022】
また、制御部3は、ダイオード17と電源回路5とを介して、バッテリ15と接続されている。ダイオード17のアノードはバッテリ15に接続され、カソードは電源回路5に接続されている。電源回路5は、バッテリ電圧を制御部3用の電圧値に変換する。制御部3は、常時バッテリ15から通電されていて、動作可能である。バッテリ15は、本発明の「電源」の一例である。
【0023】
通信部6は、携帯機20とアンテナを介して無線でRF(Radio Frequency)通信するための回路から成る。携帯機20は、自動二輪車の所有者が保持している。制御部3は、通信部6を介して携帯機20と通信を行い、携帯機20の認証を行う。詳しくは、制御部3は、携帯機20からID信号を受信すると、該信号に含まれるIDコードと、自身に予め記憶されたIDコードとを照合する。そして、制御部3は、IDコード同士が一致した場合に、携帯機20を認証できたと判断する。
【0024】
バッテリ15と自動二輪車の電気装置21とは、IG(イグニッション)ライン16で接続されている。IGライン16上には、リレー7の接点8とロータリスイッチ10とが直列に接続されている。ロータリスイッチ10は、リレー7の接点8と自動二輪車の電気装置21との間に設けられている。
【0025】
詳しくは、IGライン16により、リレー7の接点8の一端(可動接点)は、バッテリ15に接続されている。リレー7の接点8の他端(常開接点)は、ロータリスイッチ10の一端と接続されている。ロータリスイッチ10の他端は、自動二輪車の電気装置21に接続されている。
【0026】
ロータリスイッチ10は、常開型のスイッチである。たとえば、自動二輪車の所有者が図示しない操作ノブを回転操作することにより、ロータリスイッチ10はOFF(開路)状態とON(閉路)状態に切り替わる。ロータリスイッチ10は、本発明の「操作スイッチ」の一例である。
【0027】
IGライン16には、リレー7の接点8と並列にキースイッチ11が接続されている。キースイッチ11は、常開型のスイッチである。たとえば、自動二輪車の所有者が図示しないキーシリンダにキーを挿し込んで、キーを回転操作することにより、キースイッチ11はOFF状態とON状態に切り替わる。
【0028】
リレー7のコイル9と制御部3とは、制御ライン23で接続されている。詳しくは、制御ライン23により、リレー7のコイル9の一端は、ダイオード13を介して制御部3に接続されている。リレー7のコイル9の他端は、接地されている。ダイオード13のアノードは制御部3に接続され、カソードはコイル9の一端に接続されている。制御ライン23は、本発明の「第1接続線」の一例である。
【0029】
制御部3は、制御ライン23にリレー駆動信号を出力して、リレー7のコイル9に通電することにより、接点8をONする。また、制御部3は、制御ライン23へのリレー駆動信号の出力を停止して、リレー7のコイル9への通電を停止することにより、接点8をOFFする。つまり、リレー7のコイル9への通電の有無により、リレー7の接点9がON状態とOFF状態に切り替わる。リレー7は、本発明の「開閉手段」の一例である。
【0030】
ロータリスイッチ10と自動二輪車の電気装置21との接続点Pと、制御ライン23とは、自己保持ライン12で接続されている。つまり、自己保持ライン12により、リレー7のコイル9の一端とロータリスイッチ10の他端とが接続されている。自己保持ライン12は、ダイオード14を有している。ダイオード14のアノードは、ロータリスイッチ10の他端に接続され、カソードは、リレー7のコイル9の一端に接続されている。コイル9の他端は、接地されている。自己保持ライン12は、本発明の「第2接続線」の一例である。
【0031】
制御部3に備わる電圧検出部4と、ロータリスイッチ10の他端と、自動二輪車の電気装置21の間とは、電圧モニタライン18で接続されている。電圧検出部4は、電圧モニタライン18を介して、ロータリスイッチ10と自動二輪車の電気装置21との接続点P、即ちロータリスイッチ10の他端における電圧を検出する。
【0032】
リレー7の接点8とキースイッチ11が両方ともOFF状態にあるときや、ロータリスイッチ10がOFF状態にあるときは、電圧検出部4で検出されるロータリスイッチ10の他端の電圧は、所定のL電圧(ローレベル電圧)になる。また、リレー7の接点8とキースイッチ11の少なくとも一方がON状態にあり、かつ、ロータリスイッチ10がON状態にあるときは、電圧検出部4で検出されるロータリスイッチ10の他端の電圧は、所定のH電圧(ハイレベル電圧)になる。
【0033】
次に、車両用給電装置1の給電動作と給電停止動作を、図2〜図6を参照しながら説明する。
【0034】
制御部3は、携帯機20から発信されたID信号を通信部6により受信すると(図6のステップS1:YES)、そのID信号に含まれるIDコードと予め記憶されたIDコードとを照合して、携帯機20の認証を行う(ステップS2)。
【0035】
照合の結果、IDコード同士が一致していると、制御部3は、携帯機20を認証できた(認証OK)と判断する(ステップS3:YES、図2の丸数字1)。そして、制御部3は、ダイオード13を介して制御ライン23にリレー駆動信号を出力し、リレー7のコイル9に通電する(図6のステップS4、図2の丸数字2)。これにより、リレー7のコイル9が磁界を発生して、リレー7の接点8がON状態になる(図2の丸数字3)。
【0036】
その後、自動二輪車の所有者の操作により、ロータリスイッチ10がON状態になると(図3の丸数字4)、バッテリ15からリレー7の接点8とロータリスイッチ10とを通って、自動二輪車の電気装置21に給電が行われる(図3の丸数字5)。また、ロータリスイッチ10の他端に所定のH電圧がかかる(図3の丸数字6)。
【0037】
制御部3は、携帯機20を認証できてから所定時間が経過するまで、電圧モニタライン18を通して、ロータリスイッチ10の他端の電圧を読み込む。制御部3は、内部に備わる計時回路により時間の計測を行う。そして、所定時間が経過するまでに(図6のステップS8:NO)、電圧検出部4でH電圧を検出すると(ステップS5:YES)、制御部3は、リレー駆動信号の出力を停止して、リレー7のコイル9への通電を停止する(図6のステップS6、図3の丸数字7)。
【0038】
また、制御部3は、通信ライン19を介して、自動二輪車のエンジン制御装置22へエンジン始動の許可信号を送信する(図6のステップS7、図3の丸数字8)。エンジン制御装置22は、エンジン始動の許可信号を受信した後、バッテリ15からの供給電力により、図示しないスターターモータを駆動させて、エンジンを始動させる。
【0039】
また、ロータリスイッチ10がON状態になると(図3の丸数字4)、バッテリ15→リレー7の接点8→ロータリスイッチ10→自己保持ライン12→リレー7のコイル9の経路に電流が流れ、コイル9が通電される(図3の丸数字9)。このため、制御部3がリレー7のコイル9への通電を停止しても、上記経路を流れる電流により、リレー7の接点8がON状態を保持し(図3の丸数字10)、自動二輪車の電気装置21への給電状態が継続される(図3の丸数字5)。
【0040】
その後、自動二輪車の所有者の操作により、ロータリスイッチ10がOFF状態になると(図4の丸数字1)、バッテリ15から自動二輪車の電気装置21への給電が停止される(図4の丸数字2)。また、自己保持ライン12によるリレー7のコイル9への通電が停止されて(図4の丸数字3)、リレー7の接点8がOFF状態になる(図4の丸数字4)。
【0041】
一方、携帯機20の認証後に、自動二輪車の所有者がロータリスイッチ10を操作せず、ロータリスイッチ10がOFF状態のままである場合は、バッテリ15から自動二輪車の電気装置21に給電が行われず、ロータリスイッチ10の他端にL電圧がかかったままとなる。そして、携帯機20を認証できてから所定時間が経過するまでに、電圧検出部4でH電圧が検出されないと(図6のステップS5:NO、ステップS8:YES)、制御部3は、リレー駆動信号の出力を停止して、リレー7のコイル9への通電を停止する(ステップS9)。この場合、エンジン始動の許可信号が、自動二輪車のエンジン制御装置22へ送信されることはない。
【0042】
また一方、自動二輪車の所有者の操作により、キースイッチ11がON状態になった場合は(図5の丸数字1)、その後にロータリスイッチ10がON状態になると(図5の丸数字2)、バッテリ15からキースイッチ11とロータリスイッチ10とを通って、自動二輪車の電気装置21に給電が行われる(図5の丸数字3)。
【0043】
また、バッテリ15→キースイッチ11→ロータリスイッチ10→自己保持ライン12→リレー7のコイル9の経路に電流が流れ、コイル9が通電される(図5の丸数字4)。これにより、コイル9が磁界を発生して、リレー7の接点8がON状態になる。このため、バッテリ15からキースイッチ11とロータリスイッチ10とを通って自動二輪車の電気装置21に到る給電経路に加えて、バッテリ15からリレー7の接点8とロータリスイッチ10とを通って自動二輪車の電気装置21に到る給電経路が形成される。
【0044】
上記実施形態によると、車両用給電装置1において、制御部3が、携帯機20の認証を行って、一旦認証できた場合に、制御ライン23を通してリレー7のコイル9に通電するので、リレー7の接点8がON状態になる。このため、その後のロータリスイッチ10のON操作により、バッテリ15からリレー7の接点8とロータリスイッチ10とを通って、自動二輪車の電気装置21に給電を行うことができる。また、自己保持ライン12から制御ライン23を通して、リレー7のコイル9が通電される。このため、その後に制御部3からリレー7のコイル9に通電されなくなっても、リレー7の接点8がON状態を保持し、自動二輪車の電気装置21への給電状態を継続することができる。
【0045】
また、本実施形態では、携帯機20を認証できた後に、リレー7のコイル9へ通電し、ロータリスイッチ10がON操作されて、電圧検出部4でH電圧を検出できた場合に、リレー7のコイル9への通電を停止する。このため、バッテリ15の電力が無駄に消費されるのを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、携帯機20を認証できた後に、ロータリスイッチ10がON操作されて、電圧検出部4でH電圧を検出できた場合に、自動二輪車のエンジン制御装置22へエンジン始動の許可信号を送信する。このため、自動二輪車のエンジン制御装置22は、エンジン始動の許可信号を受信した後、バッテリ15からの供給電力により、スターターモータを駆動させて、エンジンを始動させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、携帯機20を認証できてから所定時間が経過するまでに、ロータリスイッチ10がON操作されて、電圧検出部4でH電圧を検出できたか否かを確認している。そして、所定時間内にH電圧を検出できた場合には、エンジン始動を許可し、所定時間内にH電圧を検出できなかった場合には、エンジン始動を許可しない。このため、自動二輪車のセキュリティを高く保持することができる。
【0048】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、図6に示したように、制御部3が、ロータリスイッチ10の他端におけるH電圧を検出した後、リレー7のコイル9への通電を停止してから(ステップS6)、エンジン始動の許可信号を送信する(ステップS7)例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。制御部3が、H電圧を検出した後に、エンジン始動の許可信号を送信してから、リレー7のコイル9への通電を停止してもよい。あるいは、ステップS6とステップS7の両動作を並行して行うようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、開閉手段として、リレー7を用いた例を挙げたが、本発明はこれのみに限るものではない。これ以外に、たとえば、トランジスタやFETなどの半導体スイッチング素子を開閉手段として用いてもよい。
【0050】
図7に示す他の実施形態では、開閉手段として、トランジスタ24を用いている。トランジスタ24は、第1電極であるコレクタと、第2電極であるエミッタと、第3電極であるベースとを有している。コレクタはIGライン16を介してバッテリ15に接続され、エミッタはロータリスイッチ10に接続され、ベースは抵抗25を介して制御ライン23に接続されている。ベースとグランドとの間には、抵抗26が接続されている。制御部3から、制御ライン23および抵抗25、26を介して、トランジスタ24のベースに駆動信号(Hレベル信号)が与えられると、トランジスタ24はONする。制御部3からの駆動信号が停止すると、トランジスタ24はOFFする。
【0051】
トランジスタ24がONすると、その後のロータリスイッチ10のON操作により、バッテリ15からトランジスタ24のコレクタとエミッタとロータリスイッチ10とを通って、自動二輪車の電気装置21に給電を行うことができる。また、自己保持ライン12から制御ライン23を通して、トランジスタ24のベースに電流が供給される。このため、その後に制御部3がトランジスタ24のベースへの駆動信号の供給を停止しても、トランジスタ24がON状態を保持し、自動二輪車の電気装置21への給電状態を継続することができる。
【0052】
なお、図7に示した構成の車両用給電装置1で、図6に示した動作を行う場合は、図6のステップS4で、リレー7のコイル9に通電する代わりに、トランジスタ24のベースに駆動信号を供給すればよい。また、ステップS6とステップS9で、リレー7のコイル9への通電を停止する代わりに、トランジスタ24のベースへの駆動信号の供給を停止すればよい。
【0053】
また、図7においては、開閉手段を構成する半導体スイッチング素子として、トランジスタ24を例に挙げたが、トランジスタに代えて、FETを用いてもよい。FETの場合は、ドレインが第1電極、ソースが第2電極、ゲートが第3電極にそれぞれ対応する。
【0054】
また、上記実施形態では、本発明の操作スイッチとして、ロータリスイッチ10を用いた例を挙げたが、本発明はこれのみに限るものではない。このような回転操作式タイプのスイッチ以外に、たとえば、押しボタンタイプのスイッチや、タンブラタイプのスイッチなどのような、種々の操作形態をとるスイッチを用いてもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、自動二輪車に搭載される車両用給電装置1に本発明を適用した例を挙げたが、自動二輪車以外の車両で使用される車両用給電装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用給電装置
3 制御部
4 電圧検出部
6 通信部
7 リレー(開閉手段)
8 リレーの接点
9 リレーのコイル
10 ロータリスイッチ(操作スイッチ)
12 自己保持ライン(第2接続線)
15 バッテリ(電源)
20 携帯機
21 自動二輪車の電気装置
22 エンジン制御装置
23 制御ライン(第1接続線)
24 トランジスタ(開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機と無線で通信する通信部と、
前記通信部を介して前記携帯機と通信して、前記携帯機の認証を行う制御部と、
電源と車両の電気装置との間に設けられ、前記制御部からの駆動信号に基づいてON、OFFする開閉手段と、
前記開閉手段と前記電気装置との間に設けられ、手動操作に基づいてON、OFFする操作スイッチと、
前記制御部と前記開閉手段とを接続する第1接続線と、
一端が前記操作スイッチと前記車両の電気装置との接続点に接続され、他端が前記第1接続線に接続された第2接続線と、を備え、
前記制御部は、前記携帯機を認証できた場合に、前記第1接続線へ前記駆動信号を出力して前記開閉手段をON状態にする、ことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用給電装置において、
前記開閉手段は、接点とコイルとを有するリレーから構成され、
前記接点の一端は、前記電源に接続され、
前記接点の他端は、前記操作スイッチに接続され、
前記コイルの一端は、前記第1接続線に接続され、
前記コイルの他端は、接地されている、
ことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用給電装置において、
前記開閉手段は、第1電極、第2電極、および第3電極を有する半導体スイッチング素子から構成され、
前記第1電極は、前記電源に接続され、
前記第2電極は、前記操作スイッチに接続され、
前記第3電極は、前記第1接続線に接続されている、
ことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用給電装置において、
前記操作スイッチと前記車両の電気装置との接続点における電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記携帯機を認証できた後に、前記操作スイッチがON操作されて、前記電圧検出部で所定電圧を検出できた場合に、前記開閉手段への前記駆動信号の出力を停止する、ことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用給電装置において、
前記車両の電気装置には、少なくとも車両のエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置が含まれ、
前記制御部は、前記携帯機を認証できた後に、前記操作スイッチがON操作されて、前記電圧検出部で所定電圧を検出できた場合に、前記エンジン制御装置へエンジン始動の許可信号を送信する、ことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用給電装置において、
前記制御部は、
前記携帯機を認証できてから所定時間が経過するまでに、前記電圧検出部で所定電圧を検出できた場合は、前記開閉手段への駆動信号の出力を停止し、かつ、前記エンジン制御装置へエンジン始動の許可信号を送信し、
前記携帯機を認証できてから所定時間が経過するまでに、前記電圧検出部で所定電圧を検出できなかった場合は、前記エンジン始動の許可信号を送信せずに、前記開閉手段への駆動信号の出力を停止する、ことを特徴とする車両用給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63717(P2013−63717A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204130(P2011−204130)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)