車両用表示装置
【課題】自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報をより把握し易い態様で表示する。
【解決手段】車両用表示装置10は、他車両の存在を提示する環状の発光表示領域を有する表示出力部15を備えており、方角特定処理部23によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定し、距離特定処理部24によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定し、表示制御処理部25によって、発光表示領域のうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで表示させる。
【解決手段】車両用表示装置10は、他車両の存在を提示する環状の発光表示領域を有する表示出力部15を備えており、方角特定処理部23によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定し、距離特定処理部24によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定し、表示制御処理部25によって、発光表示領域のうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周辺に存在する他車両を認識するための情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両の周辺に存在する他車両を認識するための情報を表示する装置が考えられている。例えば特許文献1に開示されている装置では、自車両の周囲に存在する他車両を警告色で表示したり、点滅させたり、色を反転させたりすること、あるいは、自車両を青色で表示し他車両を赤色で表示することで、自車両の表示と他車両の表示とを区別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の装置は、自車両から一定範囲内、即ち、ディスプレイの枠内に表示できる範囲内に存在する他車両のみを当該他車両の位置通りに表示する構成であり、従って、ディスプレイの枠外に存在する他車両は表示されない。しかしながら、ディスプレイの枠外に存在する他車両、即ち、自車両の遠くに存在する他車両であっても、例えば、高速で走行している場合などには、その他車両にも注意を払う必要がある。この場合、表示の縮尺を変更することで、自車両の遠くに存在する他車両もディスプレイ内に表示することは可能であるが、縮尺が随時変更されるようでは、自車両と他車両との距離や方角を把握し難くなってしまう。
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報をより把握し易い態様で表示することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、車両用表示装置は、他車両の存在を提示する環状の表示領域を有する表示部を備えており、方角特定手段によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定し、距離特定手段によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定し、表示制御手段によって、表示領域のうち方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させる。
【0007】
これにより、発光領域のうち表示されている部分の位置に基づいて、自車両に対する他車両の方角を把握することができ、また、発光領域のうち表示されている部分の長さに基づいて、自車両と他車両との間の距離を把握することができる。即ち、他車両を認識するための情報、つまり、自車両に対する他車両の方角および自車両と他車両との間の距離を、発光領域の表示部分および当該表示部分の長さによって把握することができる。従って、他車両を認識するための情報を当該他車両の位置通りに表示する従来の構成とは異なり、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報は発光領域の表示部分の位置および長さによって表現されるので、より把握し易い態様で表示することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、車両用表示装置は、自車両に対する他車両の危険度を特定する危険度特定手段をさらに備える。そして、表示制御手段は、危険度特定手段が特定する危険度に応じた表示態様で表示領域を表示させる。
これにより、発光領域の表示部分がどのような表示態様で表示されているかに基づいて他車両の危険度も把握することができ、より安全な走行支援を実現することができる。
【0009】
請求項3に記載した発明によれば、表示制御手段は、他車両の位置情報が受信されない場合には発光領域を非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると発光領域を動作状態とする。
これにより、他車両から位置情報が受信されない場合、つまり、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しない場合には、発光領域自体が非動作状態となる。従って、ユーザは、発光領域が動作状態であるのか、あるいは、非動作状態であるのかを確認することにより、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しているのか否かを把握することができる。
【0010】
請求項4に記載した発明によれば、車両用表示装置は、他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部をさらに備える。そして、表示制御手段は、他車両の位置情報が受信されない場合には位置情報受信提示部を非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると位置情報受信提示部を動作状態とする。このように、車両用表示装置は、上記の表示領域とは別に、「他車両の位置情報が受信されたこと」を提示するための専用の提示部を設けた構成とすることも可能である。
【0011】
なお、請求項5に記載した発明のように、発光領域は、例えば、複数の発光素子を環状に配列した構成とすることができる。また、請求項6に記載した発明のように、表示領域は、自車両を示す自車両マークを中心に環状に設けた構成とすることができる。
また、請求項7に記載した発明のように、前記表示部は、前記表示領域を画面上に表示可能に構成し、表示制御手段は、前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させるとともに、当該方角に対応する位置に警告メッセージおよび警告アイコンのうち少なくとも何れか一方を表示する構成とすることができる。これにより、自車両の周辺に存在する他車両に係る情報を、より一層把握し易く提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るものであり、車両用表示装置の構成を概略的に示す機能ブロック図
【図2】車両用表示装置の外観を概略的に示す斜視図
【図3】固定座標系に自車両および他車両の包囲領域を示す円を配置した状態を示す図
【図4】警報表示動作の内容を示すフローチャート
【図5】死角内接近車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図6】他車両が自車両の死角領域内に存在する状態を示す図
【図7】表示出力処理の内容を示すフローチャート
【図8】死角内接近車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図9】走行制御喪失車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図10】他車両が自車両の走行制御喪失車両警戒領域内に存在する状態を示す図
【図11】走行制御喪失車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図12】追い越し車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図13】先行車両が自車両の先行車両警戒領域内に存在し、対向車両が自車両の対向車両警戒領域内に存在する状態を示す図
【図14】追い越し車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図15】緊急ブレーキ車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図16】他車両が自車両の緊急ブレーキ警戒領域内に存在する状態を示す図
【図17】緊急ブレーキ車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図18】前方追突車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図19】他車両が自車両の追突警戒領域内に存在する状態を示す図
【図20】前方追突車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図21】出会い頭接近車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図22】自車両と他車両との進路交点が自車両の出会い頭衝突警戒領域内に存在する状態を示す図
【図23】出会い頭接近車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図24】危険度が高い他車両とともに危険度が低い他車両の存在を報知する場合を示す図
【図25】変形例を示す図2相当図
【図26】他の変形例を示す図2相当図
【図27】発光表示領域の発光部分を点灯する場合の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用表示装置10は、制御部11、車両情報検出部12、情報通信部13、記憶部14、表示出力部15、音声出力部16などを備えている。
制御部11は、図示しないCPU、RAM、ROMおよびI/Oバスなどを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部11は、ROMあるいは記憶部14などの記憶媒体に記憶されているコンピュータプログラムに従って、情報通信動作や情報管理動作、ならびに、詳しくは後述する警報表示動作など車両用表示装置10の動作全般を制御する。また、この制御部11は、コンピュータプログラムを実行することにより、情報送信処理部21、情報受信処理部22、方角特定処理部23、距離特定処理部24、表示制御処理部25、危険度特定処理部26をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、方角特定処理部23は、特許請求の範囲に記載した方角特定手段に相当し、距離特定処理部24は、特許請求の範囲に記載した距離特定手段に相当し、表示制御処理部25は、特許請求の範囲に記載した表示制御手段に相当し、危険度特定処理部26は、特許請求の範囲に記載した危険度特定手段に相当する。
【0014】
車両情報検出部12は、現在位置検出モジュール12a、走行速度検出モジュール12b、走行方向検出モジュール12c、ターンシグナル作動状態検出モジュール12d、ABS作動検出モジュール12e(ABS:Antilock Brake System)、緊急ブレーキ検出モジュール12f、停車検出モジュール12gなど各種の車両情報を検出するためのモジュールを備える。
現在位置検出モジュール12aは、例えば図示しないGPS受信機(GPS:Global Positioning System)を含み、GPS衛星から受信した衛星電波に基づいて、車両用表示装置10が搭載された車両、つまり、自車両の現在位置を検出し、その検出した現在位置を示す現在位置情報を出力する。走行速度検出モジュール12bは、例えば図示しない速度センサを含み、自車両の走行速度を検出し、その検出した走行速度を示す走行速度情報を出力する。走行方向検出モジュール12cは、例えば図示しない方位センサやジャイロセンサなどを含み、自車両の走行方向を検出し、その検出した走行方向を示す走行方向情報を出力する。ターンシグナル作動状態検出モジュール12dは、自車両が備える左側ターンシグナルおよび右側ターンシグナルの作動状態を検出し、その検出した作動状態、つまり、左側ターンシグナルが作動した状態、右側ターンシグナルが作動した状態、および、何れのターンシグナルも作動していない状態のうち何れか1つの状態を示すターンシグナル作動状態情報を出力する。
【0015】
ABS作動検出モジュール12eは、自車両が備える図示しないABS装置が作動した場合に、当該ABS装置が作動したことを示すABS作動情報を出力する。緊急ブレーキ検出モジュール12fは、自車両が備える図示しないブレーキが操作されて自車両の走行速度が所定時間内に所定値以上減速した場合に、自車両が緊急ブレーキしたことを示す緊急ブレーキ作動情報を出力する。停車検出モジュール12gは、自車両の走行速度が0kmとなった場合、あるいは、自車両が備える図示しないサイドブレーキが操作された場合に、自車両が停車したこと示す停車情報を出力する。
【0016】
情報通信部13は、自車両から所定距離内、例えば、150m内に存在する他車両に搭載された車両用表示装置との間で各種の情報を送受信する通信モジュールである。制御部11は、この情報通信部13を介して、車両情報検出部12によって検出された自車両の車両情報、つまり、自車両の現在位置を示す現在位置情報、自車両の走行速度を示す走行速度情報、自車両の走行方向を示す走行方向情報、自車両のターンシグナルの作動状態を示すターンシグナル作動状態情報、自車両のABS装置が作動したことを示すABS作動情報、自車両が緊急ブレーキしたことを示す緊急ブレーキ作動情報、自車両が停車したことを示す停車情報を含む情報、および、自車両に設定された包囲領域を示す包囲領域情報を他車両に送信する。また、制御部11は、この情報通信部13を介して、他車両から送信される当該他車両の車両情報、および、当該他車両の包囲領域情報を受信する。なお、各車両の包囲領域は、この場合、各車両を中心とする円によって設定される。また、各車両に設定される包囲領域の大きさ、つまり、円の半径は、各車両によって固有の値が設定されている。
【0017】
記憶部14は、例えばハードディスクドライブやメモリカードなどの記憶媒体、あるいは、制御部11が備えるRAMなどで構成されており、自車両の車両情報および他車両の車両情報など各種の情報を記憶する記憶領域を有している。なお、他車両の車両情報は、他車両情報リストに格納された状態で記憶部14に記憶されるようになっている。また、この記憶部14は、詳しくは後述する表示出力用の情報を格納する表示出力情報用記憶領域、および、危険度に基づいて読み出した他車両の車両情報を格納する危険車両情報用記憶領域を含む。
【0018】
表示出力部15は、特許請求の範囲に記載した表示部に相当するものであり、この場合、図2に示すように、車両用表示装置10の本体に一体的に組み込まれている。この表示出力部15は、自車両マーク15aと、この自車両マーク15aの周囲に環状、この場合、円環状に設けられた発光表示領域15bとから構成されている。自車両マーク15aは、車両用表示装置10が搭載された車両、つまり、自車両を概念的に示すマークである。発光表示領域15bは、例えばLEDなどの複数の発光素子が円環状に配列されて構成されたものであり、制御部11から与えられる発光出力指令信号に応じて発光することで、他車両の存在を、詳しくは後述する種々の表示態様によって提示する機能を担う。なお、この場合、車両用表示装置10の上下方向が自車両の前後方向に対応し、車両用表示装置10の左右方向が自車両の左右方向に対応している。なお、本実施形態では、表示出力部15を上記したようにメカニカルな構成とする例を示したが、表示出力部15は、例えば、図示しない液晶パネルなどに画像として設ける構成としてもよい。
【0019】
音声出力部16は、図示しないスピーカなどを有し、制御部11から与えられる音声出力指令信号に応じて音声を出力するようになっている。
情報送信処理部21は、情報通信部13を介して、自車両の車両情報を送信する情報送信処理を実行する。この場合、制御部11は、情報送信周期をカウントする図示しないタイマを有しており、このタイマによるカウント値が所定値に達するごとに、情報送信処理部21による情報送信処理を周期的に実行するように構成されている。なお、情報送信処理部21は、情報送信処理を周期的にではなく常時実行するように構成してもよい。
【0020】
情報受信処理部22は、情報通信部13を介して、他車両から送信される当該他車両の車両情報を受信する情報受信処理を実行する。制御部11は、この情報受信処理部22が受信した他車両の車両情報を、他車両情報リストに格納して記憶部14に格納する。
方角特定処理部23は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定する方角特定処理を実行する。また、距離特定処理部24は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定する距離特定処理を実行する。
【0021】
表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角、つまり、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離、つまり、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで表示、この場合、発光させる発光制御処理を実行する。即ち、この発光制御処理では、表示制御処理部25は、図3に示すように、自車両の現在位置を原点とする固定座標系に、自車両の包囲領域を示す円CHOST、および、他車両の包囲領域を示す円CREMOTEを配置する。この場合、自車両に対して他車両が存在する方角は角度θによって特定することができ、自車両と他車両との間の距離は、距離dによって特定することができる。そして、表示制御処理部25は、自車両の包囲領域を示す円CHOSTの中心、つまり、自車両の現在位置から他車両の包囲領域を示す円CREMOTEに接線Lcを引く。そして、その接線Lcによって円CHOSTを切り取り、その切り取った円弧状の部分を、発光制御処理によって発光させる発光部分Eとして特定する。そして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち発光部分Eに対応する部分を所定の発光色によって発光させる。このようにして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで、所定の発光色によって発光させるようになっている。
【0022】
危険度特定処理部26は、自車両に対する他車両の「危険度」を特定する危険度特定処理を実行する。この「危険度」とは、この場合、他車両に自車両が衝突する可能性を示すパラメータであり、危険度が高いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が高く、危険度が低いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が低い。制御部11は、危険度特定処理部26によって特定された「危険度」に応じて、光の三原色であるRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)の各成分を調整することにより、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定するようになっている。この場合、制御部11は、危険度が高いほど発光色のR成分を大きくし、危険度が低いほど発光色のB成分を大きくする調整する。また、制御部11は、危険度判定周期をカウントする図示しないタイマを有しており、このタイマによるカウント値が所定値に達するごとに、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するように構成されている。なお、制御部11は、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するのではなく、例えば、他車両の車両情報を受信するごとに実行するように構成してもよい。
【0023】
次に、上記した構成の車両用表示装置10による警報表示動作について、図4から図24を参照しながら説明する。
図4に示すように、車両用表示装置10の制御部11は、自車両の図示しないアクセサリスイッチがオンされると、記憶部14に記憶されている自車両の車両情報を送信する情報送信処理を実行する(ステップA1)。また、制御部11は、他車両から当該他車両の車両情報を受信したか否かを監視している(ステップA2)。ここで、制御部11は、他車両の車両情報が受信されない場合(ステップA2:NO)には、表示出力部15の発光表示領域15bを非動作状態、つまり、発光表示領域15bを構成する全ての発光素子を発光させない非点灯状態としている。そして、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると(ステップA2:YES)、つまり、自車両の周辺に他車両が存在していることを確認すると、その受信した他車両の車両情報を記憶部14の他車両情報リストに格納して記憶するとともに、表示出力部15の発光表示領域15bをスタンバイ状態、つまり、発光表示領域15bを構成する全ての発光素子を所定の初期発光色で点灯した状態とする(ステップA3)。なお、この場合、所定の初期発光色は「青色」に設定されている。
【0024】
制御部11は、表示出力部15の発光表示領域15bをスタンバイ状態とすると、警報表示処理として、死角内接近車両警報表示処理(ステップA4)、走行制御喪失車両警報表示処理(ステップA5)、追い越し車両警報表示処理(ステップA6)、緊急ブレーキ車両警報表示処理(ステップA7)、前方追突車両警報表示処理(ステップA8)、出会い頭接近車両警報表示処理(ステップA9)を並列的に実行する。制御部11は、自車両のアクセサリスイッチがオンされている間(ステップA10:NO)は、この警報表示動作を繰り返し実行し、アクセサリスイッチがオフ(ステップA10:YES)されると、この警報表示動作を終了する。
次に、これらの警報処理の内容について説明する。
【0025】
(1)死角内接近車両警報表示処理
図5に示すように、この死角内接近車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップB1)。そして、制御部11は、ターンシグナルの作動状態判定処理を実行する(ステップB2)。この判定処理では、制御部11は、記憶部14から読み出した自車両の車両情報に含まれるターンシグナル作動情報に基づいて、左右のターンシグナルの作動状態、つまり、左側ターンシグナルが作動しているのか、右側ターンシグナルが作動しているのか、あるいは、何れのターンシグナルも作動していないのかを判定する。
【0026】
次に、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストから他車両の車両情報を読み出す(ステップB3)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、自車両と他車両との間のオフセットを算出する(ステップB4)。この場合、図6に示すように、制御部11は、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向、つまり、自車両の走行方向に沿う方向のオフセットL1、および、左右方向、つまり、自車両の走行方向に直交する方向のオフセットL2を算出する。
【0027】
そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の死角領域Aa内、この場合、左側死角領域Aa(L)内または右側死角領域Aa(R)内に存在しているか否かを判定する(ステップB5)。なお、この場合、左側死角領域Aa(L)は、自車両の左側後方の領域に設定され、右側死角領域Aa(R)は、自車両の右側後方の領域に設定されている。また、死角領域Aaの前後方向の長さは、自車両の前後方向の長さの概ね3倍程度の長さに設定するとよい。制御部11は、他車両が何れの死角領域Aa(L),Aa(R)内にも存在していない場合(ステップB5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップB6)。
【0028】
制御部11は、他車両が左側死角領域Aa(L)内に存在する場合(ステップB5:YES、且つ、ステップB7:YES)には、左側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップB8)。そして、制御部11は、左側ターンシグナルが作動している場合(ステップB8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップB9)。一方、制御部11は、左側ターンシグナルが作動していない場合(ステップB8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップB10)。
【0029】
また、制御部11は、他車両が右側死角領域Aa(R)内に存在する場合(ステップB5:YES、且つ、ステップB7:NO)には、右側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップB11)。そして、制御部11は、右側ターンシグナルが作動している場合(ステップB11:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップB12)。一方、制御部11は、右側ターンシグナルが作動していない場合(ステップB11:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップB13)。
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、各他車両について、それぞれ危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての他車両について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップB14)を実行する。
【0030】
次に、この表示出力処理の内容について図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。図7に示すように、この表示出力処理では、制御部11は、記憶部14の表示出力情報用記憶領域、および、危険車両情報用記憶領域を初期化する(ステップC1)。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストのソート処理を実行する(ステップC2)。このソート処理では、制御部11は、他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を各他車両に設定された危険度が高い順に並べ替える。
【0031】
次に、制御部11は、ソート処理を施した他車両情報リストから、発光部分および発光色を設定していない他車両のうち危険度が最も高い他車両の車両情報を読み出す(ステップC3)。そして、制御部11は、読み出した車両情報を危険車両情報用記憶領域に記憶する(ステップC4)。そして、制御部11は、自車両の車両情報、および、危険車両情報用記憶領域に記憶した他車両の車両情報に基づいて、その他車両について発光表示領域15bのうち発光させる部分、つまり、発光部分Eを演算する(ステップC5)。そして、制御部11は、その他車両の危険度に応じた発光色を設定する(ステップC6)。この場合、制御部11は、危険度が「High」である場合には発光色を警戒色である「赤色」に設定し、危険度が「Middle」である場合には発光色を注意色である「黄色」に設定し、危険度が「Low」である場合には発光色を安全色である「緑色」に設定する。そして、制御部11は、演算した発光部分Eを示す発光部分情報、および、設定した発光色を特定する発光色情報を、表示出力用情報として記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶する(ステップC7)。
【0032】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を危険度が高いものから順に読み出し、各他車両について、それぞれ表示出力用情報を生成して記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての他車両について表示出力用情報を生成して記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶すると、その表示出力情報用記憶領域に記憶されている各他車両の表示出力用情報のうち危険度が最も高い他車両の表示出力用情報を読み出し(ステップC8)、その表示出力用情報に基づいて、表示出力部15の発光表示領域15bのうち表示出力用情報に含まれる発光部分情報に対応する発光部分Eを、表示出力用情報に含まれる発光色情報に対応する発光色で発光させる(ステップC9)。なお、制御部11は、表示出力情報用記憶領域に記憶されている各他車両の表示出力用情報のうち危険度が最も高い他車両の表示出力用情報のみならず、その他の他車両の表示出力用情報を読み出して、その表示出力用情報に基づいて表示出力部15の発光表示領域15bを発光させることも可能である。
【0033】
以上に説明した死角内接近車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両が車線変更しようとしている側の死角領域内に存在する他車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その他車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その他車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その他車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。
なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。この場合、警告音は、他車両の危険度に応じて異なるパターンで設定されており、例えば、危険度が高いほど警告音の出力周期を早めたり、あるいは、危険度が高いほど警告音を大きくしたりするとよい。
【0034】
図8は、この死角内接近車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図8(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bが「青色」で点灯されていることを白抜きで示している。
【0035】
そして、この場合、図8(b)に示すように、その他車両は自車両の右側死角領域Aa(R)内に存在しており、しかも、自車両は右側ターンシグナルを作動している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側後方に危険度が極めて高い他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bの発光部分Eが「赤色」で点灯されていることを塗りつぶして示している。
【0036】
図8(c)に示すように、車両用表示装置10は、他車両が自車両の右側死角領域Aa(R)内に存在しているとしても、自車両の右側ターンシグナルが作動していない場合には、他車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側後方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bの発光部分Eが「黄色」で点灯されていることをハッチングで示している。
【0037】
(2)走行制御喪失車両警報表示処理
図9に示すように、この走行制御喪失車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップD1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップD2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれているか否かを判断する(ステップD3)。
制御部11は、読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれている場合(ステップD3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図10に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップD4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在しているか否かを判定する(ステップD5)。この場合、走行制御喪失車両警戒領域Abは、自車両の左側前方から右側前方にわたる領域に設定されている。制御部11は、他車両が走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在していない場合(ステップD5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップD6)。なお、制御部11は、ステップD2にて読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれていない場合(ステップD3:NO)にも、このステップD6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0038】
制御部11は、他車両が走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在している場合(ステップD5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップD7)。なお、この衝突余裕時間は、自車両と他車両とが衝突するまでの予測時間である。この衝突余裕時間は、例えば次のようにして演算することができる。即ち、図10に示すように、自車両の現在位置と他車両の現在位置とを結ぶ線分L上に、自車両の速度ベクトルV1のうち線分Lに沿う速度成分v1および他車両の速度ベクトルV2のうち線部Lに沿う速度成分v2を投影し、それら速度成分v1,v2の差、つまり、自車両と他車両との相対速度を求める。そして、その相対速度で線分Lに相当する距離を除算することによって、衝突余裕時間を得ることができる。
【0039】
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップD8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップD8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップD9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップD8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップD10)。
【0040】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報にABS作動情報が含まれる場合には、その他車両を「走行制御喪失車両」とみなし、その「走行制御喪失車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「走行制御喪失車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップD11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0041】
以上に説明した走行制御喪失車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の警戒領域内に存在する走行制御喪失車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その走行制御喪失車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その走行制御喪失車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その走行制御喪失車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0042】
図11は、この走行制御喪失車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図11(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図11(b)に示すように、その他車両は自車両の警戒領域Ab内に存在しており、しかも、ABS装置が作動して走行制御を喪失している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、自車両の左側前方においてABS装置が作動している走行制御喪失車両が存在していることを報知する。なお、図11(c)に示すように、車両用表示装置10は、走行制御喪失車両においてABS装置が非動作状態となった場合には、その走行制御喪失車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0043】
(3)追い越し車両警報表示処理
図12に示すように、この追い越し車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップE1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップE2)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図13に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップE3)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の先行車両警戒領域Ac内に存在しているか否かを判定する(ステップE4)。この場合、先行車両警戒領域Acは、自車両の前方の領域に自車両の走行方向に沿うようにして設定されている。制御部11は、他車両が先行車両警戒領域Ac内に存在していない場合(ステップE4:NO)には、自車両の前方に先行車両が存在しないと判断し、ステップE2に移行して、次の他車両の車両情報を読み出す。
【0044】
制御部11は、他車両が先行車両警戒領域Ac内に存在している場合(ステップE4:YES)には、その他車両を「先行車両」として設定するとともに、記憶部14から先行車両以外の他車両の車両情報を読み出す(ステップE5)。なお、制御部11は、先行車両の危険度を「Middle」に設定する。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および先行車両以外の他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図13に示すように、自車両と先行車両以外の他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL3、および、左右方向のオフセットL4を算出する(ステップE6)。そして、制御部11は、算出したオフセットL3,L4に基づいて、先行車両以外の他車両が自車両の対向車両警戒領域Ad内に存在しているか否かを判定する(ステップE7)。この場合、対向車両警戒領域Adは、自車両の左側前方の領域に設定されている。制御部11は、他車両が対向車両警戒領域Ad内に存在していない場合(ステップE7:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップE8)。
【0045】
制御部11は、他車両が対向車両警戒領域Ad内に存在している場合(ステップE7:YES)には、右側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップE9)。そして、制御部11は、右側ターンシグナルが作動している場合(ステップE9:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップE10)。一方、制御部11は、右側ターンシグナルが作動していない場合(ステップE9:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップE11)。
【0046】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、自車両の先行車両以外の各他車両のうち対向車両警戒領域Ad内に存在する他車両を「対向車両」とみなし、その「対向車両」について、それぞれ危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「対向車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップE12)を実行する。
【0047】
この表示出力処理は、上述した表示出力処理(ステップB14)と概ね同内容であるが、この場合、制御部11は、「先行車両」に対応する発光部分として第1発光部分E1を設定し、「対向車両」に対応する発光部分として第2発光部分E2を設定する。そして、制御部11は、第1発光部分E1の発光色を注意色である「黄色」に設定し、第2発光部分E2の発光色を危険色である「赤色」に設定する。
【0048】
以上に説明した追い越し車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち最も危険度が高い他車両、この場合、自車両が先行車両を追い越すために車線変更しようとする右側の前方に設定された「対向車両警戒領域内に存在する対向車両」、および、自車両の前方に当該自車両の走行方向に沿うように設定された「先行車両警戒領域内に存在する先行車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、それら対向車両および先行車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の方角によって把握することができ、それら対向車両および先行車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の長さによって把握することができ、それら対向車両および先行車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0049】
図14は、この追い越し車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図14(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図14(b)に示すように、自車両の前方に自車両の走行方向に沿うようにして設定された先行車両警戒領域Acには「先行車両」が存在しており、しかも、自車両が先行車両を追い越すために車線変更しようとする右側の前方に設定された対向車両警戒領域Ad内には「対向車両」が存在している。従って、制御部11は、発光表示領域15bのうち対向車両に対応する発光部分E1を危険色である「赤色」で点灯し、発光表示領域15bのうち先行車両に対応する発光部分E2を注意色である「黄色」で点灯する。これにより、自車両の周辺、この場合、右側前方に危険度が極めて高い他車両である「対向車両」が存在し、前方に危険度が比較的高い他車両である「先行車両」が存在していることを報知する。なお、自車両において右側ターンシグナルが非動作状態となった場合には、制御部11は、発光表示領域15bの発光部分E1を注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側前方に危険度が比較的高い「対向車両」が存在していることを報知する。
【0050】
(4)緊急ブレーキ車両警報表示処理
図15に示すように、この緊急ブレーキ車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップF1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップF2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれているか否かを判断する(ステップF3)。
制御部11は、読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれている場合(ステップF3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図16に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップF4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在しているか否かを判定する(ステップF5)。この場合、緊急ブレーキ警戒領域Aeは、自車両の前方の領域に設定され、しかも、上記した先行車両警戒領域よりも自車両の走行方向に沿って長く設定されている。制御部11は、他車両が緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在していない場合(ステップF5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップF6)。なお、制御部11は、ステップF2にて読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれていない場合(ステップF3:NO)にも、このステップF6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0051】
制御部11は、他車両が緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在している場合(ステップF5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップF7)。なお、この衝突余裕時間は、上記したステップD7と同様の演算処理によって得ることができる。
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップF8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップF8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップF9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップF8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップF10)。
【0052】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれる場合には、その他車両を「緊急ブレーキ車両」とみなし、その「緊急ブレーキ車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「緊急ブレーキ車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップF11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0053】
以上に説明した緊急ブレーキ車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の緊急ブレーキ警戒領域内に存在する緊急ブレーキ車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その緊急ブレーキ車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その緊急ブレーキ車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その緊急ブレーキ車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0054】
図17は、この緊急ブレーキ車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図17(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図17(b)に示すように、その他車両は自車両の緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在しており、しかも、緊急ブレーキ、つまり、急制動をしている。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、緊急ブレーキ車両が存在していることを報知する。なお、図17(c)に示すように、車両用表示装置10は、他車両においてブレーキ操作が解除された場合には、他車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0055】
(5)前方追突車両警報表示処理
図18に示すように、この前方追突車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップG1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップG2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれているか否かを判断する(ステップG3)。
【0056】
制御部11は、読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれている場合(ステップG3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図19に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップG4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の追突警戒領域Af内に存在しているか否かを判定する(ステップG5)。この場合、追突警戒領域Afは、自車両の前方の領域に設定されており、上記した先行車両警戒領域よりも長く設定されている。制御部11は、他車両が追突警戒領域Af内に存在していない場合(ステップG5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップG6)。なお、制御部11は、ステップG2にて読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれていない場合(ステップG3:NO)にも、このステップG6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0057】
制御部11は、他車両が追突警戒領域Af内に存在している場合(ステップG5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップG7)。なお、この衝突余裕時間は、上記したステップD2と同様の演算処理によって得ることができる。
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップG8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップG8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップG9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップG8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップG10)。
【0058】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報に停車情報が含まれる場合には、その他車両を「追突警戒車両」とみなし、その「追突警戒車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「追突警戒車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップG11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0059】
以上に説明した前方追突車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の追突警戒領域内に存在する追突警戒車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その追突警戒車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その追突警戒車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その追突警戒車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0060】
図20は、この前方追突車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図20(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図20(b)に示すように、その他車両は自車両の追突警戒領域Af内に存在しており、停車している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、自車両の前方において停車中の追突警戒車両が存在していることを報知する。なお、図20(c)に示すように、車両用表示装置10は、追突警戒車両が走行を開始した場合、あるいは、自車両が停車した場合には、その追突警戒車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0061】
(6)出会い頭接近車両警報表示処理
図21に示すように、この出会い頭接近車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップH1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップH2)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の走行方向情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の走行方向情報に基づいて、図22に示すように、自車両の走行方向と他車両の走行方向とが交わる点を進路交点Pとして特定する(ステップH3)。そして、制御部11は、特定した進路交点Pが、自車両に設定された出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在しているか否かを判定する(ステップH4)。
【0062】
制御部11は、進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在しない場合(ステップH4:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップH5)。一方、制御部11は、進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在している場合(ステップH4:YES)には、自車両の速度情報に基づいて、その進路交点Pに自車両が到達するまでの時間を自車両側進路交点到達時間T1として演算する(ステップH6)。また、制御部11は、他車両の速度情報に基づいて、その進路交点Pに他車両が到達するまでの時間を他車両側進路交点到達時間T2として演算する(ステップH7)。そして、制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差を演算(ステップH8)し、その差と所定値とを比較する(ステップH9)。
【0063】
制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差が所定値以下の場合(ステップH9:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップH10)。一方、制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差が所定値よりも大きい場合(ステップH9:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップH11)。
【0064】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、車両情報を読み出した他車両との進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在する場合には、その他車両を「出会い頭衝突警戒車両」とみなし、その「出会い頭衝突警戒車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「出会い頭衝突警戒車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップH12)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0065】
以上に説明した出会い頭接近車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両との進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在する出会い頭衝突警戒車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その出会い頭衝突警戒車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その出会い頭衝突警戒車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その出会い頭衝突警戒車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0066】
図23は、この出会い頭接近車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図23(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図23(b)および図23(c)に示すように、その他車両と自車両との進路交点Pは自車両の出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺に危険度が極めて高い他車両、つまり、出会い頭衝突警戒車両が存在していることを報知する。
【0067】
以上に説明したように本実施形態によれば、車両用表示装置10は、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定するとともに、自車両と他車両との間の距離を特定し、自車両を示す自車両マーク15aを中心に環状に設けられた発光表示領域15bのうち、特定された方角に対応する部分を、特定された距離に応じた長さで発光させる。
【0068】
これにより、発光表示領域15bのうち発光している部分の位置に基づいて、自車両に対する他車両の方角を把握することができ、また、発光表示領域15bのうち発光している部分の長さに基づいて、自車両と他車両との間の距離を把握することができる。即ち、他車両を認識するための情報、つまり、自車両に対する他車両の方角および自車両と他車両との間の距離を、発光表示領域15bの発光部分Eおよび当該発光部分Eの長さによって把握することができる。従って、他車両を認識するための情報を当該他車両の位置通りに表示する従来の構成とは異なり、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報は発光表示領域15bの発光部分Eの位置および長さによって表現されるので、より把握し易い態様で表示することができる。
【0069】
また、車両用表示装置10は、自車両マーク15aを中心に円環状に設けられた発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで「円弧状」に発光させる。これにより、自車両と他車両との間の距離が同一であれば、自車両に対する他車両の方角に関わらず発光表示領域15bの発光部分Eの長さが同一となり、他車両が存在する方角によって距離感が異なることがない。
【0070】
また、車両用表示装置10は、自車両に対する他車両の危険度を特定し、その危険度に応じて発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を異ならせる。これにより、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色に基づいて他車両の危険度も把握することができ、より安全な走行支援を実現することができる。
【0071】
また、車両用表示装置10は、他車両の位置情報が受信されない場合には発光表示領域15bを非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると発光表示領域15bを動作状態とする。これにより、他車両から位置情報が受信されない場合、つまり、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しない場合には、発光表示領域15b自体が非動作状態となる。従って、ユーザは、発光表示領域15bが動作状態であれば、自車両の周辺に他車両が存在していることを把握でき、発光表示領域15bが非動作状態であれば、自車両の周辺に他車両が存在していないことを把握することができる。
【0072】
さらに、車両用表示装置10の制御部11は、危険度が高い他車両とともに危険度が低い他車両の存在を報知することも可能である。この場合、図24(a),(b)に示すように、危険度が高い他車両Hに対応する発光部分E(H)と危険度が低い他車両Lに対応する発光部分E(L)とが重なる可能性がある。このとき、制御部11は、発光部分E(L)と発光部分E(H)とが重なる部分については、発光部分E(H)の発光色を出力する。即ち、制御部11は、発光部分E(L)と発光部分E(H)とが重なる部分については、発光部分E(L)よりも発光部分E(H)を優先して発光出力する。
【0073】
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
車両用表示装置10は、表示制御処理部25による表示制御において、他車両の危険度を発光色を異ならせることによって提示するのみならず、その他の表示態様によっても提示することが可能である。即ち、表示制御処理部25は、危険度特定処理部26が特定した危険度に応じて、例えば、発光表示領域15bの点滅周期、点灯パターン、明度、形などを異ならせるように構成してもよい。点滅周期によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど点滅周期を短くし、危険度が低いほど点滅周期を長くする表示態様が考えられる。また、点灯パターンによって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど点灯パターンの動きを激しくし、危険度が低いほど点灯パターンの動きを緩やかにする表示態様が考えられる。また、明度によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど明度を高くし、危険度が低いほど明度を低くする表示態様が考えられる。また、発光表示領域15bの形によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、図25に示すように、発光表示領域15bの内側および外側にサブ発光表示領域15b1,15b2を設け、危険度が高いほどサブ発光表示領域15b1,15b2も発光させて全体として太い発光ラインを表示し、危険度が低いほどサブ発光表示領域15b1,15b2は発光させず全体として細い発光ラインを表示する表示態様が考えられる。
【0074】
図26に示すように、車両用表示装置10は、他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部30をさらに備える構成としてもよい。この位置情報受信提示部30は、例えばLEDなどの発光素子で構成することができる。そして、制御部11は、他車両の位置情報が受信されない場合には位置情報受信提示部30を非動作状態、この場合、非点灯状態とし、他車両の位置情報が受信されると位置情報受信提示部30を動作状態、この場合、点灯状態とする。これにより、他車両の存否を位置情報受信提示部30によっても把握することができるようになる。即ち、この構成は、上記の発光表示領域15bとは別に、「他車両の位置情報が受信されたこと」を提示するための専用の提示部を設けた構成である。この構成によれば、例えば、他車両から位置情報を受信したが当該他車両が注意を喚起することが不要なほど遠くに存在している場合などには、発光表示領域15bは発光させず、位置情報受信提示部30を発光させることによって、位置情報を受信したことを提示するといった表示制御が可能となる。なお、位置情報受信提示部30は、例えば、図示しない液晶パネルなどに画像として設ける構成としてもよい。この場合、自車両と他車両との位置関係を、例えば、携帯電話機のようにアンテナの数によって表現するようにしてもよい。具体的には、他車両が自車両から遠いほどアンテナの数を少なく表示し、他車両が自車両に近いほどアンテナの数を多く表示する。
【0075】
図27に示すように、車両用表示装置10は、例えば表示出力部15を液晶パネルなどの画面上に画像として表示する構成とした場合には、表示制御処理部25による表示制御処理において、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で表示するとともに、警告メッセージ40や警告アイコン50を表示するように構成してもよい。警告メッセージ40は、自車両の周辺に他車両が存在することを主として文字情報によって提示するものであり、警告アイコン50は、自車両の周辺に他車両が存在することを主として画像情報によって提示するものである。図27に示す表示例は、上記した図8(b)の表示例に対応するものであるが、この図8(b)に示す状況は、自車両の右側死角領域Aa(R)内に他車両が存在し、しかも、自車両が右側に車線変更しようとしている場合であるので、警告メッセージ40の内容としては、例えば車線変更を中止する旨のメッセージを表示するとよい。また、警告アイコン50の内容としては、例えば自車両の右側後方に他車両が接近していることを視覚的に把握することができる画像を表示するとよい。
【0076】
これら警告メッセージ40や警告アイコン50は、その表示位置を固定するのではなく、図27に示すように、発光表示領域15bのうち危険色で表示されている発光部分Eに対応付けて表示するようにするとよい。これにより、自車両に接近する他車両がどこに存在するのか、自車両のどこが危険な状態なのかなどを把握し易くすることができる。また、警告メッセージ40や警告アイコン50の大きさを、危険色で表示されている発光部分Eの長さに合わせて大きくしたり小さくしたりする構成としてもよい。なお、警告メッセージ40や警告アイコン50は、双方を表示するように構成してもよいし、警告メッセージ40および警告アイコン50のうち少なくとも何れか一方を表示するように構成してもよい。
【0077】
発光表示領域15bは、環状に設けるのであれば、円環状に限られるものではない。従って、発光表示領域を、例えば、楕円環状や多角形環状に設けてもよい。また、発光表示領域を、連続的に環状に設けるのではなく、断続的に環状に設けてもよい。
上記した車両用表示装置10は、主として単体の装置として実現されるものであるが、これに限られるものではなく、他の装置と連携して実現する構成としてもよい。即ち、車両用表示装置10は、例えばカーナビゲーション装置などの車載装置に無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を車載装置の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。また、車両用表示装置10は、例えば多機能型携帯通信端末などに無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を多機能型携帯通信端末の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
図面中、10は車両用表示装置、15は表示出力部(表示部)、15aは自車両マーク、15bは発光表示領域(表示領域)、23は方角特定処理部(方角特定手段)、24は距離特定処理部(距離特定手段)、25は表示制御処理部(表示制御手段)、26は危険度特定処理部(危険度特定手段)、30は位置情報受信提示部を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周辺に存在する他車両を認識するための情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両の周辺に存在する他車両を認識するための情報を表示する装置が考えられている。例えば特許文献1に開示されている装置では、自車両の周囲に存在する他車両を警告色で表示したり、点滅させたり、色を反転させたりすること、あるいは、自車両を青色で表示し他車両を赤色で表示することで、自車両の表示と他車両の表示とを区別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の装置は、自車両から一定範囲内、即ち、ディスプレイの枠内に表示できる範囲内に存在する他車両のみを当該他車両の位置通りに表示する構成であり、従って、ディスプレイの枠外に存在する他車両は表示されない。しかしながら、ディスプレイの枠外に存在する他車両、即ち、自車両の遠くに存在する他車両であっても、例えば、高速で走行している場合などには、その他車両にも注意を払う必要がある。この場合、表示の縮尺を変更することで、自車両の遠くに存在する他車両もディスプレイ内に表示することは可能であるが、縮尺が随時変更されるようでは、自車両と他車両との距離や方角を把握し難くなってしまう。
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報をより把握し易い態様で表示することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、車両用表示装置は、他車両の存在を提示する環状の表示領域を有する表示部を備えており、方角特定手段によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定し、距離特定手段によって、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定し、表示制御手段によって、表示領域のうち方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させる。
【0007】
これにより、発光領域のうち表示されている部分の位置に基づいて、自車両に対する他車両の方角を把握することができ、また、発光領域のうち表示されている部分の長さに基づいて、自車両と他車両との間の距離を把握することができる。即ち、他車両を認識するための情報、つまり、自車両に対する他車両の方角および自車両と他車両との間の距離を、発光領域の表示部分および当該表示部分の長さによって把握することができる。従って、他車両を認識するための情報を当該他車両の位置通りに表示する従来の構成とは異なり、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報は発光領域の表示部分の位置および長さによって表現されるので、より把握し易い態様で表示することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、車両用表示装置は、自車両に対する他車両の危険度を特定する危険度特定手段をさらに備える。そして、表示制御手段は、危険度特定手段が特定する危険度に応じた表示態様で表示領域を表示させる。
これにより、発光領域の表示部分がどのような表示態様で表示されているかに基づいて他車両の危険度も把握することができ、より安全な走行支援を実現することができる。
【0009】
請求項3に記載した発明によれば、表示制御手段は、他車両の位置情報が受信されない場合には発光領域を非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると発光領域を動作状態とする。
これにより、他車両から位置情報が受信されない場合、つまり、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しない場合には、発光領域自体が非動作状態となる。従って、ユーザは、発光領域が動作状態であるのか、あるいは、非動作状態であるのかを確認することにより、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しているのか否かを把握することができる。
【0010】
請求項4に記載した発明によれば、車両用表示装置は、他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部をさらに備える。そして、表示制御手段は、他車両の位置情報が受信されない場合には位置情報受信提示部を非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると位置情報受信提示部を動作状態とする。このように、車両用表示装置は、上記の表示領域とは別に、「他車両の位置情報が受信されたこと」を提示するための専用の提示部を設けた構成とすることも可能である。
【0011】
なお、請求項5に記載した発明のように、発光領域は、例えば、複数の発光素子を環状に配列した構成とすることができる。また、請求項6に記載した発明のように、表示領域は、自車両を示す自車両マークを中心に環状に設けた構成とすることができる。
また、請求項7に記載した発明のように、前記表示部は、前記表示領域を画面上に表示可能に構成し、表示制御手段は、前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させるとともに、当該方角に対応する位置に警告メッセージおよび警告アイコンのうち少なくとも何れか一方を表示する構成とすることができる。これにより、自車両の周辺に存在する他車両に係る情報を、より一層把握し易く提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るものであり、車両用表示装置の構成を概略的に示す機能ブロック図
【図2】車両用表示装置の外観を概略的に示す斜視図
【図3】固定座標系に自車両および他車両の包囲領域を示す円を配置した状態を示す図
【図4】警報表示動作の内容を示すフローチャート
【図5】死角内接近車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図6】他車両が自車両の死角領域内に存在する状態を示す図
【図7】表示出力処理の内容を示すフローチャート
【図8】死角内接近車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図9】走行制御喪失車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図10】他車両が自車両の走行制御喪失車両警戒領域内に存在する状態を示す図
【図11】走行制御喪失車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図12】追い越し車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図13】先行車両が自車両の先行車両警戒領域内に存在し、対向車両が自車両の対向車両警戒領域内に存在する状態を示す図
【図14】追い越し車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図15】緊急ブレーキ車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図16】他車両が自車両の緊急ブレーキ警戒領域内に存在する状態を示す図
【図17】緊急ブレーキ車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図18】前方追突車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図19】他車両が自車両の追突警戒領域内に存在する状態を示す図
【図20】前方追突車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図21】出会い頭接近車両警報表示処理の内容を示すフローチャート
【図22】自車両と他車両との進路交点が自車両の出会い頭衝突警戒領域内に存在する状態を示す図
【図23】出会い頭接近車両警報表示処理が適用される状況の一例を示す図
【図24】危険度が高い他車両とともに危険度が低い他車両の存在を報知する場合を示す図
【図25】変形例を示す図2相当図
【図26】他の変形例を示す図2相当図
【図27】発光表示領域の発光部分を点灯する場合の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用表示装置10は、制御部11、車両情報検出部12、情報通信部13、記憶部14、表示出力部15、音声出力部16などを備えている。
制御部11は、図示しないCPU、RAM、ROMおよびI/Oバスなどを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部11は、ROMあるいは記憶部14などの記憶媒体に記憶されているコンピュータプログラムに従って、情報通信動作や情報管理動作、ならびに、詳しくは後述する警報表示動作など車両用表示装置10の動作全般を制御する。また、この制御部11は、コンピュータプログラムを実行することにより、情報送信処理部21、情報受信処理部22、方角特定処理部23、距離特定処理部24、表示制御処理部25、危険度特定処理部26をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、方角特定処理部23は、特許請求の範囲に記載した方角特定手段に相当し、距離特定処理部24は、特許請求の範囲に記載した距離特定手段に相当し、表示制御処理部25は、特許請求の範囲に記載した表示制御手段に相当し、危険度特定処理部26は、特許請求の範囲に記載した危険度特定手段に相当する。
【0014】
車両情報検出部12は、現在位置検出モジュール12a、走行速度検出モジュール12b、走行方向検出モジュール12c、ターンシグナル作動状態検出モジュール12d、ABS作動検出モジュール12e(ABS:Antilock Brake System)、緊急ブレーキ検出モジュール12f、停車検出モジュール12gなど各種の車両情報を検出するためのモジュールを備える。
現在位置検出モジュール12aは、例えば図示しないGPS受信機(GPS:Global Positioning System)を含み、GPS衛星から受信した衛星電波に基づいて、車両用表示装置10が搭載された車両、つまり、自車両の現在位置を検出し、その検出した現在位置を示す現在位置情報を出力する。走行速度検出モジュール12bは、例えば図示しない速度センサを含み、自車両の走行速度を検出し、その検出した走行速度を示す走行速度情報を出力する。走行方向検出モジュール12cは、例えば図示しない方位センサやジャイロセンサなどを含み、自車両の走行方向を検出し、その検出した走行方向を示す走行方向情報を出力する。ターンシグナル作動状態検出モジュール12dは、自車両が備える左側ターンシグナルおよび右側ターンシグナルの作動状態を検出し、その検出した作動状態、つまり、左側ターンシグナルが作動した状態、右側ターンシグナルが作動した状態、および、何れのターンシグナルも作動していない状態のうち何れか1つの状態を示すターンシグナル作動状態情報を出力する。
【0015】
ABS作動検出モジュール12eは、自車両が備える図示しないABS装置が作動した場合に、当該ABS装置が作動したことを示すABS作動情報を出力する。緊急ブレーキ検出モジュール12fは、自車両が備える図示しないブレーキが操作されて自車両の走行速度が所定時間内に所定値以上減速した場合に、自車両が緊急ブレーキしたことを示す緊急ブレーキ作動情報を出力する。停車検出モジュール12gは、自車両の走行速度が0kmとなった場合、あるいは、自車両が備える図示しないサイドブレーキが操作された場合に、自車両が停車したこと示す停車情報を出力する。
【0016】
情報通信部13は、自車両から所定距離内、例えば、150m内に存在する他車両に搭載された車両用表示装置との間で各種の情報を送受信する通信モジュールである。制御部11は、この情報通信部13を介して、車両情報検出部12によって検出された自車両の車両情報、つまり、自車両の現在位置を示す現在位置情報、自車両の走行速度を示す走行速度情報、自車両の走行方向を示す走行方向情報、自車両のターンシグナルの作動状態を示すターンシグナル作動状態情報、自車両のABS装置が作動したことを示すABS作動情報、自車両が緊急ブレーキしたことを示す緊急ブレーキ作動情報、自車両が停車したことを示す停車情報を含む情報、および、自車両に設定された包囲領域を示す包囲領域情報を他車両に送信する。また、制御部11は、この情報通信部13を介して、他車両から送信される当該他車両の車両情報、および、当該他車両の包囲領域情報を受信する。なお、各車両の包囲領域は、この場合、各車両を中心とする円によって設定される。また、各車両に設定される包囲領域の大きさ、つまり、円の半径は、各車両によって固有の値が設定されている。
【0017】
記憶部14は、例えばハードディスクドライブやメモリカードなどの記憶媒体、あるいは、制御部11が備えるRAMなどで構成されており、自車両の車両情報および他車両の車両情報など各種の情報を記憶する記憶領域を有している。なお、他車両の車両情報は、他車両情報リストに格納された状態で記憶部14に記憶されるようになっている。また、この記憶部14は、詳しくは後述する表示出力用の情報を格納する表示出力情報用記憶領域、および、危険度に基づいて読み出した他車両の車両情報を格納する危険車両情報用記憶領域を含む。
【0018】
表示出力部15は、特許請求の範囲に記載した表示部に相当するものであり、この場合、図2に示すように、車両用表示装置10の本体に一体的に組み込まれている。この表示出力部15は、自車両マーク15aと、この自車両マーク15aの周囲に環状、この場合、円環状に設けられた発光表示領域15bとから構成されている。自車両マーク15aは、車両用表示装置10が搭載された車両、つまり、自車両を概念的に示すマークである。発光表示領域15bは、例えばLEDなどの複数の発光素子が円環状に配列されて構成されたものであり、制御部11から与えられる発光出力指令信号に応じて発光することで、他車両の存在を、詳しくは後述する種々の表示態様によって提示する機能を担う。なお、この場合、車両用表示装置10の上下方向が自車両の前後方向に対応し、車両用表示装置10の左右方向が自車両の左右方向に対応している。なお、本実施形態では、表示出力部15を上記したようにメカニカルな構成とする例を示したが、表示出力部15は、例えば、図示しない液晶パネルなどに画像として設ける構成としてもよい。
【0019】
音声出力部16は、図示しないスピーカなどを有し、制御部11から与えられる音声出力指令信号に応じて音声を出力するようになっている。
情報送信処理部21は、情報通信部13を介して、自車両の車両情報を送信する情報送信処理を実行する。この場合、制御部11は、情報送信周期をカウントする図示しないタイマを有しており、このタイマによるカウント値が所定値に達するごとに、情報送信処理部21による情報送信処理を周期的に実行するように構成されている。なお、情報送信処理部21は、情報送信処理を周期的にではなく常時実行するように構成してもよい。
【0020】
情報受信処理部22は、情報通信部13を介して、他車両から送信される当該他車両の車両情報を受信する情報受信処理を実行する。制御部11は、この情報受信処理部22が受信した他車両の車両情報を、他車両情報リストに格納して記憶部14に格納する。
方角特定処理部23は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定する方角特定処理を実行する。また、距離特定処理部24は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定する距離特定処理を実行する。
【0021】
表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角、つまり、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離、つまり、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで表示、この場合、発光させる発光制御処理を実行する。即ち、この発光制御処理では、表示制御処理部25は、図3に示すように、自車両の現在位置を原点とする固定座標系に、自車両の包囲領域を示す円CHOST、および、他車両の包囲領域を示す円CREMOTEを配置する。この場合、自車両に対して他車両が存在する方角は角度θによって特定することができ、自車両と他車両との間の距離は、距離dによって特定することができる。そして、表示制御処理部25は、自車両の包囲領域を示す円CHOSTの中心、つまり、自車両の現在位置から他車両の包囲領域を示す円CREMOTEに接線Lcを引く。そして、その接線Lcによって円CHOSTを切り取り、その切り取った円弧状の部分を、発光制御処理によって発光させる発光部分Eとして特定する。そして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち発光部分Eに対応する部分を所定の発光色によって発光させる。このようにして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで、所定の発光色によって発光させるようになっている。
【0022】
危険度特定処理部26は、自車両に対する他車両の「危険度」を特定する危険度特定処理を実行する。この「危険度」とは、この場合、他車両に自車両が衝突する可能性を示すパラメータであり、危険度が高いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が高く、危険度が低いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が低い。制御部11は、危険度特定処理部26によって特定された「危険度」に応じて、光の三原色であるRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)の各成分を調整することにより、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定するようになっている。この場合、制御部11は、危険度が高いほど発光色のR成分を大きくし、危険度が低いほど発光色のB成分を大きくする調整する。また、制御部11は、危険度判定周期をカウントする図示しないタイマを有しており、このタイマによるカウント値が所定値に達するごとに、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するように構成されている。なお、制御部11は、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するのではなく、例えば、他車両の車両情報を受信するごとに実行するように構成してもよい。
【0023】
次に、上記した構成の車両用表示装置10による警報表示動作について、図4から図24を参照しながら説明する。
図4に示すように、車両用表示装置10の制御部11は、自車両の図示しないアクセサリスイッチがオンされると、記憶部14に記憶されている自車両の車両情報を送信する情報送信処理を実行する(ステップA1)。また、制御部11は、他車両から当該他車両の車両情報を受信したか否かを監視している(ステップA2)。ここで、制御部11は、他車両の車両情報が受信されない場合(ステップA2:NO)には、表示出力部15の発光表示領域15bを非動作状態、つまり、発光表示領域15bを構成する全ての発光素子を発光させない非点灯状態としている。そして、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると(ステップA2:YES)、つまり、自車両の周辺に他車両が存在していることを確認すると、その受信した他車両の車両情報を記憶部14の他車両情報リストに格納して記憶するとともに、表示出力部15の発光表示領域15bをスタンバイ状態、つまり、発光表示領域15bを構成する全ての発光素子を所定の初期発光色で点灯した状態とする(ステップA3)。なお、この場合、所定の初期発光色は「青色」に設定されている。
【0024】
制御部11は、表示出力部15の発光表示領域15bをスタンバイ状態とすると、警報表示処理として、死角内接近車両警報表示処理(ステップA4)、走行制御喪失車両警報表示処理(ステップA5)、追い越し車両警報表示処理(ステップA6)、緊急ブレーキ車両警報表示処理(ステップA7)、前方追突車両警報表示処理(ステップA8)、出会い頭接近車両警報表示処理(ステップA9)を並列的に実行する。制御部11は、自車両のアクセサリスイッチがオンされている間(ステップA10:NO)は、この警報表示動作を繰り返し実行し、アクセサリスイッチがオフ(ステップA10:YES)されると、この警報表示動作を終了する。
次に、これらの警報処理の内容について説明する。
【0025】
(1)死角内接近車両警報表示処理
図5に示すように、この死角内接近車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップB1)。そして、制御部11は、ターンシグナルの作動状態判定処理を実行する(ステップB2)。この判定処理では、制御部11は、記憶部14から読み出した自車両の車両情報に含まれるターンシグナル作動情報に基づいて、左右のターンシグナルの作動状態、つまり、左側ターンシグナルが作動しているのか、右側ターンシグナルが作動しているのか、あるいは、何れのターンシグナルも作動していないのかを判定する。
【0026】
次に、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストから他車両の車両情報を読み出す(ステップB3)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、自車両と他車両との間のオフセットを算出する(ステップB4)。この場合、図6に示すように、制御部11は、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向、つまり、自車両の走行方向に沿う方向のオフセットL1、および、左右方向、つまり、自車両の走行方向に直交する方向のオフセットL2を算出する。
【0027】
そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の死角領域Aa内、この場合、左側死角領域Aa(L)内または右側死角領域Aa(R)内に存在しているか否かを判定する(ステップB5)。なお、この場合、左側死角領域Aa(L)は、自車両の左側後方の領域に設定され、右側死角領域Aa(R)は、自車両の右側後方の領域に設定されている。また、死角領域Aaの前後方向の長さは、自車両の前後方向の長さの概ね3倍程度の長さに設定するとよい。制御部11は、他車両が何れの死角領域Aa(L),Aa(R)内にも存在していない場合(ステップB5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップB6)。
【0028】
制御部11は、他車両が左側死角領域Aa(L)内に存在する場合(ステップB5:YES、且つ、ステップB7:YES)には、左側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップB8)。そして、制御部11は、左側ターンシグナルが作動している場合(ステップB8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップB9)。一方、制御部11は、左側ターンシグナルが作動していない場合(ステップB8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップB10)。
【0029】
また、制御部11は、他車両が右側死角領域Aa(R)内に存在する場合(ステップB5:YES、且つ、ステップB7:NO)には、右側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップB11)。そして、制御部11は、右側ターンシグナルが作動している場合(ステップB11:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップB12)。一方、制御部11は、右側ターンシグナルが作動していない場合(ステップB11:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップB13)。
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、各他車両について、それぞれ危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての他車両について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップB14)を実行する。
【0030】
次に、この表示出力処理の内容について図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。図7に示すように、この表示出力処理では、制御部11は、記憶部14の表示出力情報用記憶領域、および、危険車両情報用記憶領域を初期化する(ステップC1)。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストのソート処理を実行する(ステップC2)。このソート処理では、制御部11は、他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を各他車両に設定された危険度が高い順に並べ替える。
【0031】
次に、制御部11は、ソート処理を施した他車両情報リストから、発光部分および発光色を設定していない他車両のうち危険度が最も高い他車両の車両情報を読み出す(ステップC3)。そして、制御部11は、読み出した車両情報を危険車両情報用記憶領域に記憶する(ステップC4)。そして、制御部11は、自車両の車両情報、および、危険車両情報用記憶領域に記憶した他車両の車両情報に基づいて、その他車両について発光表示領域15bのうち発光させる部分、つまり、発光部分Eを演算する(ステップC5)。そして、制御部11は、その他車両の危険度に応じた発光色を設定する(ステップC6)。この場合、制御部11は、危険度が「High」である場合には発光色を警戒色である「赤色」に設定し、危険度が「Middle」である場合には発光色を注意色である「黄色」に設定し、危険度が「Low」である場合には発光色を安全色である「緑色」に設定する。そして、制御部11は、演算した発光部分Eを示す発光部分情報、および、設定した発光色を特定する発光色情報を、表示出力用情報として記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶する(ステップC7)。
【0032】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を危険度が高いものから順に読み出し、各他車両について、それぞれ表示出力用情報を生成して記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての他車両について表示出力用情報を生成して記憶部14の表示出力情報用記憶領域に記憶すると、その表示出力情報用記憶領域に記憶されている各他車両の表示出力用情報のうち危険度が最も高い他車両の表示出力用情報を読み出し(ステップC8)、その表示出力用情報に基づいて、表示出力部15の発光表示領域15bのうち表示出力用情報に含まれる発光部分情報に対応する発光部分Eを、表示出力用情報に含まれる発光色情報に対応する発光色で発光させる(ステップC9)。なお、制御部11は、表示出力情報用記憶領域に記憶されている各他車両の表示出力用情報のうち危険度が最も高い他車両の表示出力用情報のみならず、その他の他車両の表示出力用情報を読み出して、その表示出力用情報に基づいて表示出力部15の発光表示領域15bを発光させることも可能である。
【0033】
以上に説明した死角内接近車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両が車線変更しようとしている側の死角領域内に存在する他車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その他車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その他車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その他車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。
なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。この場合、警告音は、他車両の危険度に応じて異なるパターンで設定されており、例えば、危険度が高いほど警告音の出力周期を早めたり、あるいは、危険度が高いほど警告音を大きくしたりするとよい。
【0034】
図8は、この死角内接近車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図8(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bが「青色」で点灯されていることを白抜きで示している。
【0035】
そして、この場合、図8(b)に示すように、その他車両は自車両の右側死角領域Aa(R)内に存在しており、しかも、自車両は右側ターンシグナルを作動している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側後方に危険度が極めて高い他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bの発光部分Eが「赤色」で点灯されていることを塗りつぶして示している。
【0036】
図8(c)に示すように、車両用表示装置10は、他車両が自車両の右側死角領域Aa(R)内に存在しているとしても、自車両の右側ターンシグナルが作動していない場合には、他車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側後方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。なお、図では、発光表示領域15bの発光部分Eが「黄色」で点灯されていることをハッチングで示している。
【0037】
(2)走行制御喪失車両警報表示処理
図9に示すように、この走行制御喪失車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップD1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップD2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれているか否かを判断する(ステップD3)。
制御部11は、読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれている場合(ステップD3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図10に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップD4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在しているか否かを判定する(ステップD5)。この場合、走行制御喪失車両警戒領域Abは、自車両の左側前方から右側前方にわたる領域に設定されている。制御部11は、他車両が走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在していない場合(ステップD5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップD6)。なお、制御部11は、ステップD2にて読み出した他車両の車両情報にABS作動情報が含まれていない場合(ステップD3:NO)にも、このステップD6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0038】
制御部11は、他車両が走行制御喪失車両警戒領域Ab内に存在している場合(ステップD5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップD7)。なお、この衝突余裕時間は、自車両と他車両とが衝突するまでの予測時間である。この衝突余裕時間は、例えば次のようにして演算することができる。即ち、図10に示すように、自車両の現在位置と他車両の現在位置とを結ぶ線分L上に、自車両の速度ベクトルV1のうち線分Lに沿う速度成分v1および他車両の速度ベクトルV2のうち線部Lに沿う速度成分v2を投影し、それら速度成分v1,v2の差、つまり、自車両と他車両との相対速度を求める。そして、その相対速度で線分Lに相当する距離を除算することによって、衝突余裕時間を得ることができる。
【0039】
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップD8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップD8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップD9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップD8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップD10)。
【0040】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報にABS作動情報が含まれる場合には、その他車両を「走行制御喪失車両」とみなし、その「走行制御喪失車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「走行制御喪失車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップD11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0041】
以上に説明した走行制御喪失車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の警戒領域内に存在する走行制御喪失車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その走行制御喪失車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その走行制御喪失車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その走行制御喪失車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0042】
図11は、この走行制御喪失車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図11(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図11(b)に示すように、その他車両は自車両の警戒領域Ab内に存在しており、しかも、ABS装置が作動して走行制御を喪失している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、自車両の左側前方においてABS装置が作動している走行制御喪失車両が存在していることを報知する。なお、図11(c)に示すように、車両用表示装置10は、走行制御喪失車両においてABS装置が非動作状態となった場合には、その走行制御喪失車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0043】
(3)追い越し車両警報表示処理
図12に示すように、この追い越し車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップE1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップE2)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図13に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップE3)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の先行車両警戒領域Ac内に存在しているか否かを判定する(ステップE4)。この場合、先行車両警戒領域Acは、自車両の前方の領域に自車両の走行方向に沿うようにして設定されている。制御部11は、他車両が先行車両警戒領域Ac内に存在していない場合(ステップE4:NO)には、自車両の前方に先行車両が存在しないと判断し、ステップE2に移行して、次の他車両の車両情報を読み出す。
【0044】
制御部11は、他車両が先行車両警戒領域Ac内に存在している場合(ステップE4:YES)には、その他車両を「先行車両」として設定するとともに、記憶部14から先行車両以外の他車両の車両情報を読み出す(ステップE5)。なお、制御部11は、先行車両の危険度を「Middle」に設定する。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および先行車両以外の他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図13に示すように、自車両と先行車両以外の他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL3、および、左右方向のオフセットL4を算出する(ステップE6)。そして、制御部11は、算出したオフセットL3,L4に基づいて、先行車両以外の他車両が自車両の対向車両警戒領域Ad内に存在しているか否かを判定する(ステップE7)。この場合、対向車両警戒領域Adは、自車両の左側前方の領域に設定されている。制御部11は、他車両が対向車両警戒領域Ad内に存在していない場合(ステップE7:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップE8)。
【0045】
制御部11は、他車両が対向車両警戒領域Ad内に存在している場合(ステップE7:YES)には、右側ターンシグナルが作動しているか否かを判定する(ステップE9)。そして、制御部11は、右側ターンシグナルが作動している場合(ステップE9:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップE10)。一方、制御部11は、右側ターンシグナルが作動していない場合(ステップE9:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップE11)。
【0046】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、自車両の先行車両以外の各他車両のうち対向車両警戒領域Ad内に存在する他車両を「対向車両」とみなし、その「対向車両」について、それぞれ危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「対向車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップE12)を実行する。
【0047】
この表示出力処理は、上述した表示出力処理(ステップB14)と概ね同内容であるが、この場合、制御部11は、「先行車両」に対応する発光部分として第1発光部分E1を設定し、「対向車両」に対応する発光部分として第2発光部分E2を設定する。そして、制御部11は、第1発光部分E1の発光色を注意色である「黄色」に設定し、第2発光部分E2の発光色を危険色である「赤色」に設定する。
【0048】
以上に説明した追い越し車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち最も危険度が高い他車両、この場合、自車両が先行車両を追い越すために車線変更しようとする右側の前方に設定された「対向車両警戒領域内に存在する対向車両」、および、自車両の前方に当該自車両の走行方向に沿うように設定された「先行車両警戒領域内に存在する先行車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、それら対向車両および先行車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の方角によって把握することができ、それら対向車両および先行車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の長さによって把握することができ、それら対向車両および先行車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分E1,E2の発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0049】
図14は、この追い越し車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図14(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図14(b)に示すように、自車両の前方に自車両の走行方向に沿うようにして設定された先行車両警戒領域Acには「先行車両」が存在しており、しかも、自車両が先行車両を追い越すために車線変更しようとする右側の前方に設定された対向車両警戒領域Ad内には「対向車両」が存在している。従って、制御部11は、発光表示領域15bのうち対向車両に対応する発光部分E1を危険色である「赤色」で点灯し、発光表示領域15bのうち先行車両に対応する発光部分E2を注意色である「黄色」で点灯する。これにより、自車両の周辺、この場合、右側前方に危険度が極めて高い他車両である「対向車両」が存在し、前方に危険度が比較的高い他車両である「先行車両」が存在していることを報知する。なお、自車両において右側ターンシグナルが非動作状態となった場合には、制御部11は、発光表示領域15bの発光部分E1を注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、右側前方に危険度が比較的高い「対向車両」が存在していることを報知する。
【0050】
(4)緊急ブレーキ車両警報表示処理
図15に示すように、この緊急ブレーキ車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップF1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップF2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれているか否かを判断する(ステップF3)。
制御部11は、読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれている場合(ステップF3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図16に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップF4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在しているか否かを判定する(ステップF5)。この場合、緊急ブレーキ警戒領域Aeは、自車両の前方の領域に設定され、しかも、上記した先行車両警戒領域よりも自車両の走行方向に沿って長く設定されている。制御部11は、他車両が緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在していない場合(ステップF5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップF6)。なお、制御部11は、ステップF2にて読み出した他車両の車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれていない場合(ステップF3:NO)にも、このステップF6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0051】
制御部11は、他車両が緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在している場合(ステップF5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップF7)。なお、この衝突余裕時間は、上記したステップD7と同様の演算処理によって得ることができる。
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップF8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップF8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップF9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップF8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップF10)。
【0052】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報に緊急ブレーキ作動情報が含まれる場合には、その他車両を「緊急ブレーキ車両」とみなし、その「緊急ブレーキ車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「緊急ブレーキ車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップF11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0053】
以上に説明した緊急ブレーキ車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の緊急ブレーキ警戒領域内に存在する緊急ブレーキ車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その緊急ブレーキ車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その緊急ブレーキ車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その緊急ブレーキ車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0054】
図17は、この緊急ブレーキ車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図17(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図17(b)に示すように、その他車両は自車両の緊急ブレーキ警戒領域Ae内に存在しており、しかも、緊急ブレーキ、つまり、急制動をしている。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、緊急ブレーキ車両が存在していることを報知する。なお、図17(c)に示すように、車両用表示装置10は、他車両においてブレーキ操作が解除された場合には、他車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、左側前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0055】
(5)前方追突車両警報表示処理
図18に示すように、この前方追突車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップG1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップG2)。そして、制御部11は、読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれているか否かを判断する(ステップG3)。
【0056】
制御部11は、読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれている場合(ステップG3:YES)には、自車両の車両情報に含まれる自車両の現在位置情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の現在位置情に基づいて、図19に示すように、自車両と他車両との間のオフセットとして、前後方向のオフセットL1、および、左右方向のオフセットL2を算出する(ステップG4)。そして、制御部11は、算出したオフセットL1,L2に基づいて、他車両が自車両の追突警戒領域Af内に存在しているか否かを判定する(ステップG5)。この場合、追突警戒領域Afは、自車両の前方の領域に設定されており、上記した先行車両警戒領域よりも長く設定されている。制御部11は、他車両が追突警戒領域Af内に存在していない場合(ステップG5:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップG6)。なお、制御部11は、ステップG2にて読み出した他車両の車両情報に停車情報が含まれていない場合(ステップG3:NO)にも、このステップG6に移行して、その他車両の危険度を「Low」に設定する。
【0057】
制御部11は、他車両が追突警戒領域Af内に存在している場合(ステップG5:YES)には、その他車両の車両情報に含まれる現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報と、自車両の現在位置情報、走行速度情報、走行方向情報とに基づいて「衝突余裕時間」を演算する(ステップG7)。なお、この衝突余裕時間は、上記したステップD2と同様の演算処理によって得ることができる。
制御部11は、衝突余裕時間を演算すると、その衝突余裕時間と所定時間とを比較する(ステップG8)。なお、この所定時間は、適宜の時間を設定することができる。そして、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間以下である場合(ステップG8:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップG9)。一方、制御部11は、衝突余裕時間が所定時間よりも大きい場合(ステップG8:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップG10)。
【0058】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、読み出した車両情報に停車情報が含まれる場合には、その他車両を「追突警戒車両」とみなし、その「追突警戒車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「追突警戒車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップG11)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0059】
以上に説明した前方追突車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両の追突警戒領域内に存在する追突警戒車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その追突警戒車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その追突警戒車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その追突警戒車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0060】
図20は、この前方追突車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図20(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図20(b)に示すように、その他車両は自車両の追突警戒領域Af内に存在しており、停車している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が極めて高い他車両、つまり、自車両の前方において停車中の追突警戒車両が存在していることを報知する。なお、図20(c)に示すように、車両用表示装置10は、追突警戒車両が走行を開始した場合、あるいは、自車両が停車した場合には、その追突警戒車両の危険度を「Middle」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを注意色である「黄色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺、この場合、前方に危険度が比較的高い他車両が存在していることを報知する。
【0061】
(6)出会い頭接近車両警報表示処理
図21に示すように、この出会い頭接近車両警報表示処理では、制御部11は、記憶部14から自車両の車両情報を読み出す(ステップH1)。また、制御部11は、記憶部14から他車両の車両情報を読み出す(ステップH2)。そして、制御部11は、自車両の車両情報に含まれる自車両の走行方向情報および他車両の車両情報に含まれる他車両の走行方向情報に基づいて、図22に示すように、自車両の走行方向と他車両の走行方向とが交わる点を進路交点Pとして特定する(ステップH3)。そして、制御部11は、特定した進路交点Pが、自車両に設定された出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在しているか否かを判定する(ステップH4)。
【0062】
制御部11は、進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在しない場合(ステップH4:NO)には、その他車両の危険度を「Low」に設定する(ステップH5)。一方、制御部11は、進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在している場合(ステップH4:YES)には、自車両の速度情報に基づいて、その進路交点Pに自車両が到達するまでの時間を自車両側進路交点到達時間T1として演算する(ステップH6)。また、制御部11は、他車両の速度情報に基づいて、その進路交点Pに他車両が到達するまでの時間を他車両側進路交点到達時間T2として演算する(ステップH7)。そして、制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差を演算(ステップH8)し、その差と所定値とを比較する(ステップH9)。
【0063】
制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差が所定値以下の場合(ステップH9:YES)には、その他車両の危険度を「High」に設定する(ステップH10)。一方、制御部11は、自車両側進路交点到達時間T1と他車両側進路交点到達時間T2との差が所定値よりも大きい場合(ステップH9:NO)には、その他車両の危険度を「Middle」に設定する(ステップH11)。
【0064】
以上のようにして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに格納されている各他車両の車両情報を順に読み出し、車両情報を読み出した他車両との進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在する場合には、その他車両を「出会い頭衝突警戒車両」とみなし、その「出会い頭衝突警戒車両」について危険度を設定する。そして、制御部11は、記憶部14の他車両情報リストに車両情報が格納されている全ての「出会い頭衝突警戒車両」について危険度を設定すると、表示出力処理(ステップH12)を実行する。この表示出力処理は、上述した死角内接近車両警報表示処理におけるステップB14の表示出力処理と同内容である。
【0065】
以上に説明した出会い頭接近車両警報表示処理によれば、自車両の周辺に存在する他車両のうち危険度が最も高い他車両、この場合、「自車両との進路交点Pが出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在する出会い頭衝突警戒車両」を、表示出力部15を介して簡易的に報知することができる。しかも、その出会い頭衝突警戒車両が存在する方角を発光表示領域15bの発光部分Eの方角によって把握することができ、その出会い頭衝突警戒車両までの距離を発光表示領域15bの発光部分Eの長さによって把握することができ、その出会い頭衝突警戒車両の危険度を発光表示領域15bの発光部分Eの発光色によって把握することができる。なお、制御部11は、この発光表示領域15bの発光による表示出力に伴い、図示しないスピーカから警告音を出力するように構成してもよい。
【0066】
図23は、この出会い頭接近車両警報表示処理が適用される具体的な状況の一例を示す図である。即ち、図23(a)に示すように、制御部11は、他車両の車両情報を受信すると、非点灯状態であった発光表示領域15bを初期発光色である「青色」で点灯させ、自車両の周辺に他車両が存在していることを報知する。そして、この場合、図23(b)および図23(c)に示すように、その他車両と自車両との進路交点Pは自車両の出会い頭衝突警戒領域Ag内に存在している。従って、制御部11は、その他車両の危険度を「High」に設定し、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で点灯する。これにより、車両用表示装置10は、自車両の周辺に危険度が極めて高い他車両、つまり、出会い頭衝突警戒車両が存在していることを報知する。
【0067】
以上に説明したように本実施形態によれば、車両用表示装置10は、自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定するとともに、自車両と他車両との間の距離を特定し、自車両を示す自車両マーク15aを中心に環状に設けられた発光表示領域15bのうち、特定された方角に対応する部分を、特定された距離に応じた長さで発光させる。
【0068】
これにより、発光表示領域15bのうち発光している部分の位置に基づいて、自車両に対する他車両の方角を把握することができ、また、発光表示領域15bのうち発光している部分の長さに基づいて、自車両と他車両との間の距離を把握することができる。即ち、他車両を認識するための情報、つまり、自車両に対する他車両の方角および自車両と他車両との間の距離を、発光表示領域15bの発光部分Eおよび当該発光部分Eの長さによって把握することができる。従って、他車両を認識するための情報を当該他車両の位置通りに表示する従来の構成とは異なり、自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報は発光表示領域15bの発光部分Eの位置および長さによって表現されるので、より把握し易い態様で表示することができる。
【0069】
また、車両用表示装置10は、自車両マーク15aを中心に円環状に設けられた発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで「円弧状」に発光させる。これにより、自車両と他車両との間の距離が同一であれば、自車両に対する他車両の方角に関わらず発光表示領域15bの発光部分Eの長さが同一となり、他車両が存在する方角によって距離感が異なることがない。
【0070】
また、車両用表示装置10は、自車両に対する他車両の危険度を特定し、その危険度に応じて発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を異ならせる。これにより、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色に基づいて他車両の危険度も把握することができ、より安全な走行支援を実現することができる。
【0071】
また、車両用表示装置10は、他車両の位置情報が受信されない場合には発光表示領域15bを非動作状態とし、他車両の位置情報が受信されると発光表示領域15bを動作状態とする。これにより、他車両から位置情報が受信されない場合、つまり、情報を表示すべき他車両が自車両の周辺に存在しない場合には、発光表示領域15b自体が非動作状態となる。従って、ユーザは、発光表示領域15bが動作状態であれば、自車両の周辺に他車両が存在していることを把握でき、発光表示領域15bが非動作状態であれば、自車両の周辺に他車両が存在していないことを把握することができる。
【0072】
さらに、車両用表示装置10の制御部11は、危険度が高い他車両とともに危険度が低い他車両の存在を報知することも可能である。この場合、図24(a),(b)に示すように、危険度が高い他車両Hに対応する発光部分E(H)と危険度が低い他車両Lに対応する発光部分E(L)とが重なる可能性がある。このとき、制御部11は、発光部分E(L)と発光部分E(H)とが重なる部分については、発光部分E(H)の発光色を出力する。即ち、制御部11は、発光部分E(L)と発光部分E(H)とが重なる部分については、発光部分E(L)よりも発光部分E(H)を優先して発光出力する。
【0073】
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
車両用表示装置10は、表示制御処理部25による表示制御において、他車両の危険度を発光色を異ならせることによって提示するのみならず、その他の表示態様によっても提示することが可能である。即ち、表示制御処理部25は、危険度特定処理部26が特定した危険度に応じて、例えば、発光表示領域15bの点滅周期、点灯パターン、明度、形などを異ならせるように構成してもよい。点滅周期によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど点滅周期を短くし、危険度が低いほど点滅周期を長くする表示態様が考えられる。また、点灯パターンによって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど点灯パターンの動きを激しくし、危険度が低いほど点灯パターンの動きを緩やかにする表示態様が考えられる。また、明度によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、危険度が高いほど明度を高くし、危険度が低いほど明度を低くする表示態様が考えられる。また、発光表示領域15bの形によって他車両の危険度を提示する場合、例えば、図25に示すように、発光表示領域15bの内側および外側にサブ発光表示領域15b1,15b2を設け、危険度が高いほどサブ発光表示領域15b1,15b2も発光させて全体として太い発光ラインを表示し、危険度が低いほどサブ発光表示領域15b1,15b2は発光させず全体として細い発光ラインを表示する表示態様が考えられる。
【0074】
図26に示すように、車両用表示装置10は、他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部30をさらに備える構成としてもよい。この位置情報受信提示部30は、例えばLEDなどの発光素子で構成することができる。そして、制御部11は、他車両の位置情報が受信されない場合には位置情報受信提示部30を非動作状態、この場合、非点灯状態とし、他車両の位置情報が受信されると位置情報受信提示部30を動作状態、この場合、点灯状態とする。これにより、他車両の存否を位置情報受信提示部30によっても把握することができるようになる。即ち、この構成は、上記の発光表示領域15bとは別に、「他車両の位置情報が受信されたこと」を提示するための専用の提示部を設けた構成である。この構成によれば、例えば、他車両から位置情報を受信したが当該他車両が注意を喚起することが不要なほど遠くに存在している場合などには、発光表示領域15bは発光させず、位置情報受信提示部30を発光させることによって、位置情報を受信したことを提示するといった表示制御が可能となる。なお、位置情報受信提示部30は、例えば、図示しない液晶パネルなどに画像として設ける構成としてもよい。この場合、自車両と他車両との位置関係を、例えば、携帯電話機のようにアンテナの数によって表現するようにしてもよい。具体的には、他車両が自車両から遠いほどアンテナの数を少なく表示し、他車両が自車両に近いほどアンテナの数を多く表示する。
【0075】
図27に示すように、車両用表示装置10は、例えば表示出力部15を液晶パネルなどの画面上に画像として表示する構成とした場合には、表示制御処理部25による表示制御処理において、発光表示領域15bの発光部分Eを危険色である「赤色」で表示するとともに、警告メッセージ40や警告アイコン50を表示するように構成してもよい。警告メッセージ40は、自車両の周辺に他車両が存在することを主として文字情報によって提示するものであり、警告アイコン50は、自車両の周辺に他車両が存在することを主として画像情報によって提示するものである。図27に示す表示例は、上記した図8(b)の表示例に対応するものであるが、この図8(b)に示す状況は、自車両の右側死角領域Aa(R)内に他車両が存在し、しかも、自車両が右側に車線変更しようとしている場合であるので、警告メッセージ40の内容としては、例えば車線変更を中止する旨のメッセージを表示するとよい。また、警告アイコン50の内容としては、例えば自車両の右側後方に他車両が接近していることを視覚的に把握することができる画像を表示するとよい。
【0076】
これら警告メッセージ40や警告アイコン50は、その表示位置を固定するのではなく、図27に示すように、発光表示領域15bのうち危険色で表示されている発光部分Eに対応付けて表示するようにするとよい。これにより、自車両に接近する他車両がどこに存在するのか、自車両のどこが危険な状態なのかなどを把握し易くすることができる。また、警告メッセージ40や警告アイコン50の大きさを、危険色で表示されている発光部分Eの長さに合わせて大きくしたり小さくしたりする構成としてもよい。なお、警告メッセージ40や警告アイコン50は、双方を表示するように構成してもよいし、警告メッセージ40および警告アイコン50のうち少なくとも何れか一方を表示するように構成してもよい。
【0077】
発光表示領域15bは、環状に設けるのであれば、円環状に限られるものではない。従って、発光表示領域を、例えば、楕円環状や多角形環状に設けてもよい。また、発光表示領域を、連続的に環状に設けるのではなく、断続的に環状に設けてもよい。
上記した車両用表示装置10は、主として単体の装置として実現されるものであるが、これに限られるものではなく、他の装置と連携して実現する構成としてもよい。即ち、車両用表示装置10は、例えばカーナビゲーション装置などの車載装置に無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を車載装置の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。また、車両用表示装置10は、例えば多機能型携帯通信端末などに無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を多機能型携帯通信端末の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
図面中、10は車両用表示装置、15は表示出力部(表示部)、15aは自車両マーク、15bは発光表示領域(表示領域)、23は方角特定処理部(方角特定手段)、24は距離特定処理部(距離特定手段)、25は表示制御処理部(表示制御手段)、26は危険度特定処理部(危険度特定手段)、30は位置情報受信提示部を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両の存在を提示する環状の表示領域を有する表示部と、
自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、前記自車両に対して前記他車両が存在する方角を特定する方角特定手段と、
自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、前記自車両と前記他車両との間の距離を特定する距離特定手段と、
前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記自車両に対する前記他車両の危険度を特定する危険度特定手段を備え、
前記表示制御手段は、前記危険度特定手段が特定する前記危険度に応じた表示態様で前記表示領域を表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記他車両の位置情報が受信されない場合には前記表示領域を非動作状態とし、前記他車両の位置情報が受信されると前記表示領域を動作状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記他車両の位置情報が受信されない場合には前記位置情報受信提示部を非動作状態とし、前記他車両の位置情報が受信されると前記位置情報受信提示部を動作状態とすることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示領域は、複数の発光素子を環状に配列した構成であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示領域は、自車両を示す自車両マークを中心に環状に設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記表示領域を画面上に表示可能であり、
前記表示制御手段は、前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させるとともに、当該方角に対応する位置に警告メッセージおよび警告アイコンのうち少なくとも何れか一方を表示することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項1】
他車両の存在を提示する環状の表示領域を有する表示部と、
自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、前記自車両に対して前記他車両が存在する方角を特定する方角特定手段と、
自車両の位置情報および他車両の位置情報に基づいて、前記自車両と前記他車両との間の距離を特定する距離特定手段と、
前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記自車両に対する前記他車両の危険度を特定する危険度特定手段を備え、
前記表示制御手段は、前記危険度特定手段が特定する前記危険度に応じた表示態様で前記表示領域を表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記他車両の位置情報が受信されない場合には前記表示領域を非動作状態とし、前記他車両の位置情報が受信されると前記表示領域を動作状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記他車両の位置情報が受信されたことを提示する位置情報受信提示部をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記他車両の位置情報が受信されない場合には前記位置情報受信提示部を非動作状態とし、前記他車両の位置情報が受信されると前記位置情報受信提示部を動作状態とすることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示領域は、複数の発光素子を環状に配列した構成であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示領域は、自車両を示す自車両マークを中心に環状に設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記表示領域を画面上に表示可能であり、
前記表示制御手段は、前記表示領域のうち前記方角特定手段によって特定される方角に対応する部分を前記距離特定手段によって特定される距離に応じた長さで表示させるとともに、当該方角に対応する位置に警告メッセージおよび警告アイコンのうち少なくとも何れか一方を表示することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−80422(P2013−80422A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220959(P2011−220959)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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