説明

車両用車輪

【課題】半径方向の荷重により半径方向に撓んでも、軸方向に変形しない車両用車輪を提供する。
【解決手段】車両16に装着された回転軸18に固定される車両用車輪12であって、回転軸18に固定され外周面が円筒形のホイール20と、ホイール20の半径方向外方に位置し車両16の走行面14と接触して撓む可撓性のある接地体22と、接地体22の撓みを許容し、かつ接地体22の軸方向の変位を防止する軸変位防止装置25と、を備える。軸変位防止装置25は、ホイール20の外周面に固定され、外方が開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝30を有する内支持具26と、外端が接地体22の内面に周方向に間隔を隔てて固定され、半径方向内方に延び、内端が支持溝30内に位置する複数の外支持具28とを備える。外支持具28は支持溝30により軸方向変位が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、惑星及び衛星等の天体の表面上を走行する天体走行車両に装着される車両用車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
月面や火星のように、地球上よりも重力が極端に小さく、その表面が非常に粒径の小さい砂地等で形成されている天体で、地球上で使用する車輪を使用すると、車輪の弾性変形が小さいため、接地長が十分に確保できず、車輪の接地圧が局所的に増大する。そのため、地球上で使用する車輪を低重力環境下の天体の砂地で使用すると、車輪の空転が誘発され、もしくは接地圧の極大化により砂地が掘削されて車輪が砂地に潜り込んでしまい、車両が走行不能になるおそれがある。そのため、低重力環境下の天体では、地球上で使用されている車輪を使用することは出来なかった。
【0003】
そこで、従来、惑星や衛星といった、地球とは異なる周囲環境下で走行する車両に装着される車輪としては、特許文献1に記載されたものが知られている。なお、以下の説明において、車輪の回転軸の軸方向を幅方向、もしくは軸方向とする。また、車輪の周方向を単に周方向とし、車輪の半径方向を単に半径方向とする。
【0004】
図1は、従来の天体走行用の車輪2の斜視図である。
図2は、平坦な面を走行する時の従来の天体走行用の車輪2の幅方向断面図である。(A)は接地前の状態であり、(B)は接地後の状態である。
この車輪2は、半径方向の荷重に基づいて幅方向外方に弾性的に突出変形するよう予め屈曲又は湾曲した板ばね4が、幅方向に互いに対向するようにホイール6に配置され、周方向に連続して延びる無端ベルトである接地体8を支えるものである。
例えば月面のような低重力環境下でこの車輪2を使用した場合、板ばね4が車両の荷重に基づいてホイール6と接地体8との距離を縮めつつ、幅方向外方に弾性的に突出変形する。そして、接地領域内にある接地体8は接地面の形状に対応して変形し、接地体8の接地長は長くなる。そのため、接地圧が低減されるため、車輪2が空転したり、砂地に沈下したりするおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3は、歪みを発生した従来の天体走行用の車輪2の幅方向断面図である。(A)は凹凸のある面を走行する場合であり、(B)は永久歪みを発生した場合である。
図3(A)に示すように、特許文献1の車輪2が凹凸のある面を走行すると、半径方向の荷重に基づいて板ばね4が幅方向外方に変形するだけでなく、車輪2の軸方向にも変形してしまうため、軸方向に荷重がかかる場合の走行が不安定になる欠点があった。
【0007】
また、例えば、粒径が比較的そろった砂地等、走行面10が一様であれば図2(B)のように半径方向の変形も一様だが、岩石を含む砂地等の走行面10が一様でない場合、局所的な変形が生じ、図3(B)に示すように車輪2に永久歪みが発生したり、破損したりすることがあった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、半径方向の荷重により半径方向に撓んでも、軸方向に変形しない車両用車輪を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、車両に装着された回転軸に固定される車両用車輪であって、
回転軸に固定され外周面が円筒形のホイールと、
ホイールの半径方向外方に位置し車両の走行面と接触して撓む可撓性のある接地体と、
接地体の前記撓みを許容し、かつ接地体の軸方向の変位を防止する軸変位防止装置と、を備え、
軸変位防止装置は、ホイールの外周面に固定され、外方が開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝を有する内支持具と、
外端が接地体の内面に周方向に間隔を隔てて固定され、半径方向内方に延び、内端が支持溝内に位置する複数の外支持具とを備え、
外支持具は支持溝により軸方向変位が制限される、ことを特徴とする車両用車輪が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明の車両用車輪によれば、ホイールの外周面に固定され、外方が開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝を有する内支持具と、外端が接地体の内面に周方向に間隔を隔てて固定され、半径方向内方に延び、内端が支持溝内に位置する複数の外支持具とを備え、外支持具は支持溝により軸方向変位が制限されるので、外支持具は常に回転軸に垂直な面上に両端を保って、支持溝内をスライドする。それにより、外支持具の外端は幅方向に移動しないので、接地体を幅方向に移動させずに、周方向と半径方向のみに変形させることができる。したがって、幅方向への車輪の変形を防ぐことができる。
【0011】
また、岩石を含む砂地等の走行面が一様でない場所を走行して局所的な力が接地体や弾性体にかかったとしても、半径方向に移動可能な範囲が制限されて変形しにくいため、弾性体や接地体の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0012】
また、外支持具の内端は常に支持溝に嵌合されることによって、支持溝により外支持具の軸方向変位が制限される。すなわち、半径方向の長さで考えた場合、外支持具と内支持具の長さの合計が、接地前の状態のホイールの外周面から接地体の内周面までの距離(以下、未接地半径距離)よりも大きく創られている。そのため、接地状態のホイールの外周面から接地体の内周面までの距離(以下、接地時半径距離)が未接地半径距離の半分より短くなるほどに車輪が撓むことはない。そのため、車輪の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の天体走行用の車輪の斜視図である。
【図2】平坦な面を走行する時の従来の天体走行用の車輪の幅方向断面図である。
【図3】歪みを発生した従来の天体走行用の車輪の幅方向断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の車両用車輪の接地前の状態の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態の車両用車輪の接地後の状態の説明図である。
【図6】凹凸のある面を走行する本発明の第1実施形態の車両用車輪の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態の車両用車輪の接地前の状態の説明図である。
【図8】凹凸のある面を走行する本発明の第2実施形態の車両用車輪の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図4は、本発明の第1実施形態の車両用車輪12の接地前の状態の説明図である。(A)は回転軸に垂直な面による断面図であり、(B)は(A)のA−A断面図である。
図5は、本発明の第1実施形態の車両用車輪12の接地後の状態の説明図である。(A)は回転軸18に垂直な面による断面図であり、(B)は(A)のB−B断面図である。
本発明の車両用車輪12は、惑星及び衛星等の天体の表面上を走行する天体走行車両16に装着される車輪であり、同じく天体走行車両16に装着された回転軸18に固定されている。
また、本発明の車両用車輪12は、ホイール20、接地体22、弾性体24、軸変位防止装置25とを備える。
また、軸変位防止装置25は、内支持具26と外支持具28を備える。
さらに、内支持具26は一対の平板29を有し、平板29の間に支持溝30を有する。
なお、以下、説明の簡略化のため、支持溝30の回転軸18側の面を底面30a、回転軸18に垂直な支持溝30の側面を幅方向内壁面30bとする。また、接地前の状態のホイール20の外周面から接地体22の内周面までの距離を未接地半径距離Sとする。また、接地状態のホイール20の外周面から接地体22の内周面までの距離を、接地時半径距離Tとする。
【0016】
ホイール20は、回転軸18に固定され、回転軸18と一体に回転する。
また、ホイール20の形状は、外周面が円筒形であることが好ましい。しかし、ホイール20の形状はこれに限らず、回転軸18の軸方向に厚みのある外周面をもち、その外周面が回転軸18と連結されて、回転軸18と一体に回転する形状であれば、どのような形状でもよい。
また、ホイール20の材質は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料が好ましい。しかし、車両16を走行させる天体の環境条件で必要な強度を持つものであれば、その他の材質でもよい。
【0017】
接地体22は、車両16の走行面14と接する部位であり、ホイール20の半径方向外方に位置し、ホイール20と一体に回転する。また、接地体22は可撓性のある無端状のリングであり、車両16の走行面14と接触して撓む。低重力環境下の天体で接地圧を低減させるため、接地体22の幅は広いことが好ましい。また、接地体22の材質は変形しやすいものが好ましい。例えば、接地体22は、周方向に分割されたステンレス鋼やアルミニウム合金の分割セグメントであることが好ましい。もしくは、接地体22は、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料やゴム製の無端状ベルトでもよい。
【0018】
第1実施形態の弾性体24は、ホイール20と接地体22とを連結して接地体22の半径方向の荷重を支持し、接地体22とホイール20との距離を伸ばす方向に弾性力を有する。そして、弾性体24は、接地体22が走行面14に接触した際にかかる荷重に応じて、半径方向のホイール20と接地体22との距離を可逆的に収縮させる。また、第1実施形態の弾性体24は、例えば図4(A)に示すように、ホイール20と接地体22の幅方向両端に向かい合って設置されていることが好ましい。しかし、弾性体24の設置位置は、これに限らず、ホイール20と接地体22とを連結して接地体22の半径方向の荷重を支持できれば他の位置でもよい。
また、弾性体24の種類は円環状、ベローズ状、もしくは渦巻状の板ばねやコイルバネが好ましい。もしくは、円環状のワイヤーでもよい。すなわち、弾性体24は、弾性があり、半径方向の荷重を支えることができるものであれば、どのような構造の弾性体24でもよい。
【0019】
軸変位防止装置25は、接地体22の撓みを許容し、かつ接地体22の軸方向の変位を防止する。また、軸変位防止装置25は、ホイール20の外周面に回転軸18に垂直に設置された一対の平板29を有する内支持具26と、外端が接地体22に周方向に複数固定され半径方向内方に延びる外支持具28とを備える。
【0020】
内支持具26は、内周面がホイール20の外周面に固定されている。内支持具26はリング状の円盤であることが好ましい。すなわち、2枚のリング状の平板29が回転軸18に垂直な状態で、向かい合ってホイール20の外周面に設置されていることが好ましい。しかし、これに限らず、内支持具26が半径方向に厚みをもち、ホイール20の外周面に固定されるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、平板29が、周方向に分割されていても良い。
また、内支持具26は、外方がリング状に開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝30を有する。すなわち、支持溝30は、一対の平板29の間に平板29の外周面から半径方向内方に向かって形成される溝であり、回転軸18に垂直な面による断面がリング形の溝である。
内支持具26の材質は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料が好ましい。しかし、車両16を走行させる天体の環境条件で必要な強度を持つものであれば、その他の材質でもよい。
【0021】
外支持具28は、外端が接地体22に周方向に間隔を隔てて複数固定され、半径方向内方に向かって延びる。また、外支持具28の内端は内支持具26の支持溝30内に位置し、支持溝30に嵌合される。
そして、外支持具28は支持溝30により軸方向変位が制限される。すなわち、外支持具28は、平板29に挟まれて、支持溝30内で車輪12の半径方向と周方向に自在にスライドする。
外支持具28は、棒状のピンであることが好ましい。また、外支持具28が車輪12の半径方向と周方向にスライド可能であるように、支持溝30の幅は、所定の隙間34の分、外支持具28の幅方向の幅より大きい。
さらに、半径方向の長さで考えた場合、外支持具28と内支持具26の長さの合計が、未接地半径距離Sよりも大きい。すなわち、外支持具28、内支持具26、及び支持溝30の半径方向の長さは、車輪12の接地前の状態において、外支持具28の内端が常に内支持具26の支持溝30の中に嵌合される長さが必要である。
【0022】
また、外支持具28と内支持具26の半径方向の長さの合計が、未接地半径距離Sよりも大きいので、接地時半径距離Tが未接地半径距離Sの半分より短くなるほど弾性体24が撓むことはない。そのため、弾性体24の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0023】
さらに、内支持具26と外支持具28には、外支持具28が支持溝30から抜けないようにするために、ストッパ32が設けられていることが好ましい。
例えばストッパ32は、幅方向内壁面30bの半径方向外端に、内支持具26の幅方向中央に向かって突出した内方突起32aと、外支持具28の内端に幅方向外方に向かって突出した外方突起32bから構成されていることが好ましい。ストッパ32がこの形状である場合、外支持具28が半径方向外方に引っ張られても、外方突起32bが内方突起32aに当接し、外支持具28の内端を支持溝30内に保持することができる。
しかし、ストッパ32の構成はこれに限らず、外支持具28が支持溝30から抜けなければどのような構造でもよい。
【0024】
図5を使用し、本発明の第1実施形態の車両用車輪12が平坦な走行面14に接地した場合の車両用車輪12の機能を説明する。
例えば、本発明の第1実施形態の車両用車輪12が平坦な走行面14を走行するとき、弾性体24が幅方向外方に撓み、ホイール20と接地体22との距離が縮まる。その際、外支持具28の内端が支持溝30に挿入された状態で、外支持具28が支持溝30内を上下する。外支持具28の内端は支持溝30内で周方向に移動することが可能であるため、外支持具28は周方向に自由に向きを変えることができる。そのため、走行面14の形状に応じて、接地体22が周方向に自由に変形することができ、車輪12の接地面を大きく保つことができる。
【0025】
また、接地体22が大きく変形しても、接地体22がホイール20に当接する前に外支持具28が内支持具26の支持溝30の底面30aに当接するため、接地時半径距離Tが未接地半径距離Sの半分より短くなるほど、接地体22が撓むことはない。そのため、弾性体24や接地体22の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0026】
図6は、凹凸のある面を走行する本発明の第1実施形態の車両用車輪12の説明図である。(A)は回転軸18に垂直な面による断面図であり、(B)は(A)のC−C断面図である。
図6を使用し、本発明の第1実施形態の車両用車輪12が、岩石を含む砂地等の走行面が一様でなく凹凸のある走行面14(以下、凹凸面)を走行する場合の外支持具28と内支持具26の機能を説明する。
まず、図6(B)の回転軸18に垂直な面による断面図で、車両用車輪12が凹凸面に接地した場合を説明する。
支持溝30の幅は、外支持具28が支障なく支持溝30内でスライドできるために所定の隙間34の分、外支持具28の幅方向の幅より大きくなっている。車両用車輪12が凹凸面に接地すると、外支持具28の内端が支持溝30の底面30aや幅方向内壁面30bに当接し、外支持具28の側面が幅方向内壁面30bの半径方向の外端に当接する。そのため、幅方向への外支持具28の移動を支持溝30の幅方向内壁面30bが妨げることができる。すなわち、外支持具28は回転軸18に対して垂直な面に両端を保って、支持溝30内をスライドする。そのため、外支持具28の外端が幅方向に移動しないので、幅方向への接地体22の変性を防ぐことができる。
したがって、この構造により本発明の車両用車輪12は、軸方向に弾性体24がずれて車輪12が変形することを抑えることができる。そのため、接地体22の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0027】
次に、図6(A)で、車両用車輪12が凹凸面に接地した場合を説明する。
本実施形態の支持溝30は周方向に間仕切り26a(図7参照)がない。そのため、外支持具28は半径方向だけではなく、周方向にも自在にスライドすることができる。
すなわち、凹凸面を走行する場合、図6(A)に示すように、車両16が岩石等に乗り上げることにより、接地体22が半径方向内方に局所的に凹むこともある。また、接地体22が半径方向内方に局所的に凹むことにより、その局所の周方向周囲の接地体22は、半径方向外方に突き出る。
その際、局所的に凹んだ部分の接地体22に固定されていた外支持具28は、隣接する外支持具28の内端との距離を広げる方向に内端を移動させ、接地体22の形状に応じて周方向に自在に移動することができる。また、局所的に半径方向外方に突き出た部分の接地体22に固定されていた外支持具28は、接地体22に外端を引っ張られて半径方向外方に移動する。そして、隣り合った外支持具28の内端との距離が近くなる。
【0028】
このように、本実施形態の外支持具28と内支持具26の構造により、半径方向と周方向の外支持具28の移動を妨げずに軸方向の移動のみを制限することができる。それにより、接地体22と弾性体24の軸方向の歪みを防ぎつつ、周方向には自由に変形させることができる。また、外支持具28が支持溝30の底面30aに当接するまで、接地体22と弾性体24を半径方向に自由に変形させることができる。さらに、外支持具28が支持溝30の底面30aに当接することで、必要以上の接地体22と弾性体24を半径方向の変形を制限し、永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0029】
図7は、本発明の第2実施形態の車両用車輪12の接地前の状態の説明図である。(A)は回転軸18に垂直な面による断面図であり、(B)は(A)のD−D断面図である。
図8は、凹凸のある面を走行する本発明の第2実施形態の車両用車輪12の説明図である。(A)は回転軸18に垂直な面による断面図であり、(B)は(A)のE−E断面図である。
本発明の第2実施形態の内支持具26は、その外周面に周方向に複数開口し、幅方向断面が扇形、または矩形の支持溝30を有する。すなわち、第2実施形態の支持溝30は、第1実施形態のリング状の支持溝30が複数の間仕切り26aによって周方向に周方向に複数区切られている。
なお、以下、説明の簡略化のため、間仕切り26aの側面を周方向内壁面30cとする。
【0030】
第2実施形態の弾性体24は、外支持具28の内端と支持溝30の底面30aとを連結し、接地体22の半径方向の荷重を支持する。第2実施形態の弾性体24はコイルバネが好ましい。しかし、弾性体24は、弾性があり、半径方向の荷重を支えることができるものであれば、どのような構造のものでもよい。
すなわち、第2実施形態の車両用車輪12は、外支持具28の内端を半径方向外方にむけて押す。それにより、外支持具28の外端を介して弾性体24の弾性力が接地体22に伝達され、接地体22が走行面14に接した時に周方向に変形することができる。
なお、弾性体24の形態は、第1実施形態と同じ形態であってもよい。
また、弾性体24が、接地体22の内周面と支持溝30の底面30aとを連結して接地体22の半径方向の荷重を支持し、外支持具28が、外端を接地体22の内周面に固定され、弾性体24の中に収められた状態で、半径方向内方へ延びていてもよい。
【0031】
図8を使用し、本発明の第2実施形態の車両用車輪12が、凹凸面を走行する場合の外支持具28と内支持具26の機能を説明する。
第2実施形態の車両用車輪12は、内支持具26が周方向に複数の間仕切り26aを有することにより、外支持具28の内端が支持溝30の底面30a、幅方向内壁面30b、または周方向内壁面30cに当接し、外支持具28の側面が幅方向内壁面30bの半径方向の外端や周方向内壁面30cの半径方向外端に当接する。そのため、支持溝30が幅方向への外支持具28の移動を防ぐ。それにより、外支持具28は回転軸18に垂直な面上に両端を保って、支持溝30内をスライドする。それにより、外支持具28の外端は幅方向に移動しないので、接地体22の幅方向の変性を防ぐことができる。したがって、この構造により本発明の車両用車輪12は、車両用車輪12の軸方向に弾性体24がずれて車輪12が変形することを抑えることができる。
【0032】
また、周方向内壁面30cがあるので、外支持具28の内端が間仕切り26aよりも周方向に移動することがない。それにより、ホイール20の内周面から内支持具26の底面30aまでの距離が、常にその距離の半分より長く保たれる。そのため、接地体22の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0033】
その他の構成と効果は、第1実施形態と同様である。
【0034】
上述した本発明の車両用車輪12によれば、ホイール20の外周面に固定され、外方が開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝30を有する内支持具26と、外端が接地体の内面に周方向に間隔を隔てて固定され、半径方向内方に延び、内端が支持溝30内に位置する複数の外支持具28とを備え、外支持具28は支持溝30により軸方向変位が制限されるので、外支持具28は常に回転軸18に垂直な面上に両端を保って、支持溝30内をスライドする。それにより、外支持具28の外端は幅方向に移動しないので、接地体22を幅方向に移動させずに、周方向と半径方向のみに変形させることができる。したがって、幅方向への車両用車輪12の変形を防ぐことができる。
【0035】
また、岩石を含む砂地等の走行面14が一様でない場所を走行して局所的な力が接地体22や弾性体24にかかったとしても、半径方向に移動可能な範囲が制限されて変形しにくいため、弾性体24や接地体22の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0036】
また、外支持具28の内端は常に支持溝30に嵌合されることによって、支持溝30により外支持具28の軸方向変位が制限される。すなわち、半径方向の長さで考えた場合、外支持具28と内支持具26の半径方向の長さの合計が、未接地半径距離Sよりも大きく創られている。そのため、接地時半径距離Tが未接地半径距離Sの半分より短くなるほどに車輪12が撓むことはない。そのため、車輪12の永久歪みの発生や破損を防ぐことができる。
【0037】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
2 車輪、4 板ばね、6,20 ホイール、
8,22 接地体、10 走行面、
12 車両用車輪、
14 走行面、16 天体走行車両、
18 回転軸、24 弾性体、
25 軸変位防止装置、
26 内支持具、26a 間仕切り、
28 外支持具、29 平板、
30 支持溝、30a 底面、30b 幅方向内壁面、30c 周方向内壁面、
32 ストッパ、32a 内方突起、32b 外方突起、
34 隙間、
S 未接地半径距離、T 接地時半径距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着された回転軸に固定される車両用車輪であって、
回転軸に固定され外周面が円筒形のホイールと、
ホイールの半径方向外方に位置し車両の走行面と接触して撓む可撓性のある接地体と、
接地体の前記撓みを許容し、かつ接地体の軸方向の変位を防止する軸変位防止装置と、を備え、
軸変位防止装置は、ホイールの外周面に固定され、外方が開口し軸方向に一定の間隔を有するリング状の支持溝を有する内支持具と、
外端が接地体の内面に周方向に間隔を隔てて固定され、半径方向内方に延び、内端が支持溝内に位置する複数の外支持具とを備え、
外支持具は支持溝により軸方向変位が制限される、ことを特徴とする車両用車輪。
【請求項2】
支持溝は周方向に複数区切られる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用車輪。
【請求項3】
接地体は接地体とホイールとの距離を伸ばす方向に弾性力を有する弾性体により半径方向の荷重を支持される、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95405(P2013−95405A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243365(P2011−243365)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)