説明

車両用障害物等検出装置

【課題】 障害物等検出装置における障害物等までの距離の閾値を、車両の環境又は移動情報及び/又は運転者固有情報に基づいて自動で変更・設定することである。
【解決手段】 超音波センサ3,4,6(距離検出手段)によって検出される車両1と壁面7(障害物等)との距離Lの閾値Kを複数段階に設定し、閾値組S1を設定する。この閾値組S1を初期設定(通常の設定)とする。そして、環境又は移動情報15及び/又は運転者固有情報16に基づいて、閾値組S1を構成する閾値K1〜K4の少なくとも1つが変更された閾値組S2〜S8のいずれかを選択して呼び出し、新たな閾値組Sを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、前記車両の移動上の障害物等又は境界(以下、障害物等という。)までの距離を検出することによって、障害物等の存在を検出する車両用障害物等検出装置に関するものである。なお、車両から障害物等までの距離を検出する装置は、「クリアランスソナー」等と称されている。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、超音波センサを使用した障害物等検出装置について説明する。図1に示されるように、車両の前後のバンパの中央部及び両コーナー部には、超音波センサが埋め込まれている。運転者が障害物等検出装置の操作スイッチをオンにし、かつこのときの車両の走行速度が低速(約10km/h以下)であると、各超音波センサから超音波が発信される。この超音波が障害物等に当たり、反射して戻ってきた超音波を受信することにより、車両から障害物等までの距離が検出される。この距離が、予め車両の記憶手段に記憶された距離の閾値よりも短くなると、報知手段(例えばブザーやディスプレイ)が警告音を鳴らしたり、その旨を表示したりする。
【0003】
従来の障害物等検出装置では、距離の閾値(即ち、ブザーの発生音を異ならせる距離の値)は一定であり、それらを変更させることは不可能ではないにしろ困難である。例えば、特許文献1には、運転者が自身の感覚に合わせたタイミングで距離の閾値を手動で変更できることが記載されているが、その方法は面倒なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−225333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した不具合に鑑み、障害物等検出装置における障害物等までの距離の閾値が、車両の環境又は移動情報及び/又は運転者固有情報に基づいて自動で変更・設定されるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、
車両に搭載され、前記車両の移動上の障害物等又は境界(以下、障害物等という。)を検出する車両用障害物等検出装置であって、
前記車両から前記障害物等までの距離を検出する距離検出手段と、
前記障害物等までの距離に関して運転者への報知のために1以上の距離の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
前記車両の周囲の環境又は移動状況に関する情報を取得する環境又は移動情報取得手段と、
前記車両の運転者の固有情報を取得する運転者固有情報取得手段と、
前記環境又は移動情報及び/又は前記運転者固有情報に基づいて、前記閾値記憶手段に記憶されている閾値を自動で変更する又は自動で設定した閾値を前記閾値記憶手段に記憶する閾値自動変更又は設定手段と、
前記距離検出手段によって検出された距離が、前記閾値記憶手段に記憶されている閾値に到達したか否かを判断する接近度判断手段と、
前記接近度判断手段が、前記検出された距離が前記閾値に到達したと判断したときにそのことを報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る障害物等検出装置(例えば、超音波センサ装置)は上記したように構成され、距離検出手段が車両と障害物等との距離を検出する。そして、そのときの障害物等に対する車両の接近度に基づいて、閾値記憶手段に記憶された距離の閾値を呼び出す。この閾値は、環境又は移動情報及び/又は運転者固有情報に基づいて、閾値自動変更又は設定手段が自動で変更又は設定するので、運転者にとって最適な閾値が呼び出される。このため、運転者が違和感やストレスを感じにくくなる。また、運転者が最も望む(あるいは望むと思われる)形態で障害物等検出装置が動作するという「もてなし」の効果が奏される。
【0008】
前記距離の閾値が複数で、それらの閾値が組となって構成され、
前記閾値自動変更又は設定手段は、前記環境又は移動情報及び/又は前記運転者固有情報に基づいて、前記障害物等に対する車両の接近度に対応する閾値の全部又は一部のみを変更する。
【0009】
具体的には、前記閾値自動変更又は設定手段は、前記距離の閾値に所定の係数を乗じる演算を行うことにより、前記閾値を自動で変更・設定する。
【0010】
また、前記閾値自動変更又は設定手段は、予め設定された複数の距離の閾値から所定のものを選択することにより、前記閾値を自動で変更・設定するようにしてもよい。
【0011】
そして、前記閾値の組で構成される複数の閾値組が予め設定され、
前記閾値自動変更又は設定手段は、前記複数の閾値組のいずれかを選択することにより、前記閾値を自動で変更・設定するようにしてもよい。
【0012】
環境情報は、車両に搭載された明るさ検出手段や降雨状況検出手段によって取得できる。明るさ検出手段として、例えばライトスイッチのオン/オフや明るさセンサ等がある。降雨状況検出手段として、ワイパスイッチのオン/オフやレインセンサ等がある。移動情報は、車両に搭載されたナビゲーション装置による運転履歴によって取得できる。
【0013】
また、運転者固有情報には、運転者の性別、年齢、視力及び運転免許取得年数を含まれていて、運転者がこれらの情報を、例えばナビゲーション装置のタッチパネルを利用して入力する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両1の平面図である。
【図2】超音波センサ装置100の閾値K1〜K4、ディスプレイの距離表示、ブザーの発生音を示す図である。
【図3】超音波センサ装置100のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は車両1の平面図、図2は超音波センサ装置100の閾値K1〜K4、ディスプレイの距離表示、ブザーの発生音を示す図、図3は超音波センサ装置100のブロック図である。
【実施例1】
【0016】
本実施例の超音波センサ装置100(障害物等検出装置)について説明する。図1に示されるように、車両1の後ろ側バンパ2の中央部に所定の間隔をおいて2個の超音波センサ3と、同じく両コーナー部にそれぞれ超音波センサ4が取り付けられている。また、車両1の前側バンパ5の両コーナー部にそれぞれ超音波センサ6が取り付けられている。各超音波センサ3,4,6は、それらの図示しない先端面(マイク面)がバンパ2,5の外側面と面一になるように取り付けられている。各超音波センサ3,4,6の機能は、その検出距離を除いて同一であるため、本明細書では、後ろ側バンパ2の中央部に取り付けられた超音波センサ3について説明する。
【0017】
超音波センサ3の最大検出距離Lmaxは、後ろ側バンパ2の外側面(超音波センサ3のマイク面)から約150cmであり、最小検出距離Lminは、後ろ側バンパ2の外側面(超音波センサ3のマイク面)から約10cmである。即ち、この超音波センサ3を使用して、後ろ側バンパ2の外側面から10〜150cmの間に存する障害物等を検出することができる。
【0018】
図2に示されるように、車両1が障害物等(壁面7)に向かって後退している場合を考える。図2において、最上欄は車両1が後退している状況を示し、その下欄は対応する閾値Kを示し、その下欄は車両1に搭載されているディスプレイ(図示せず)内の表示(以下、この表示を「距離表示」という。)を示し、最下欄はブザーの発生音を示す。本実施例の超音波センサ装置100では、以下のように距離Lの閾値Kが設定されている。即ち、距離Lの閾値Kが、順に第1閾値K1=100cm、第2閾値K2=50cm、第3閾値K3=37.5cm、第4閾値K4=25cmのように4段階で設定されている。車両1が後退し、車両1の後ろ側バンパ2の外側面から壁面7までの距離L(接近度)が約150cm(最大検出距離Lmax)以下になると、超音波センサ3が検出を開始する。しかし、このとき、ディスプレイに距離表示は表示されず、ブザーも警告音を発しない。
【0019】
車両1から壁面7までの距離Lが、第1閾値K1(100cm)に到達すると、ディスプレイに距離表示が表示される。この距離表示は、ディスプレイに車両1と超音波センサ3の発射波がイラストによって表示される。即ち、ディスプレイに車両1のイラスト8と、超音波センサ3のイラスト9と、超音波センサ3から発射される超音波をイラスト表示する複数個(この場合、3個)のマーク10が点灯表示される。それとともに、ブザーが「ピーッピーッピーッ」という周期の長い断続音を発する。
【0020】
車両1から壁面7までの距離Lが、第2閾値K2(50cm)に到達すると、ディスプレイに表示されたマーク10が1つ少なくなる(2つになる)とともに、ブザーが「ピッピッピッ」という周期の短い断続音を発する。さらに車両1が壁面7に接近し、壁面7までの距離Lが第2閾値K3(37.5cm)に到達すると、ディスプレイに表示されたマーク10がさらに1つ少なくなる(1つになる)とともに、ブザーが「ピピピ」というさらに周期の短い断続音を発する。そして、車両1から壁面7までの距離Lが第4閾値K4(25cm)に到達すると、ディスプレイに表示されたマーク10が表示されなくなって、超音波センサ3のイラスト9が点滅表示されるとともに、ブザーが「ピー」という連続音を発する。このように、本実施例の超音波センサ装置100では、検出された距離Lが複数段階(本実施例の場合、4段階)に設定された閾値K1〜K4に到達したときに、ディスプレイの距離表示を異ならせるとともに、ブザーの発生音を異ならせることによって運転者に注意を喚起している。
【0021】
本実施例の超音波センサ装置100の構成について、図3を参照しながら説明する。距離演算部11は、超音波センサ3,4,6から発信され、障害物等(たとえば、壁面7)に当たり、反射して戻ってくる反射波を受信し、車両1と障害物等との距離Lを検出する。距離演算部11によって検出された距離Lは、判定部12に入力されて各段階の閾値Kと比較される。即ち、検出された距離Lと各段階の閾値Kとの大小(換言すれば検出された距離Lが各段階の閾値Kに到達したか否か)が比較され、その比較結果に応じて、ブザー13を鳴動させる。
【0022】
閾値Kはメモリ14に記憶されていて、メモリ14から呼び出される。閾値Kの初期設定は、例えば超音波センサ3の最大検出距離Lmaxが約150cmで最小検出距離Lminが10cmであるとする。そして、その間の検出距離Lを複数段階(本実施例の場合、4段階)に分け、第1閾値K1(最大値)を100cmとし、第4閾値K4(最小値)を25cmとする。すると、第2閾値K2は第1閾値K1の半分の50cmであり、第3閾値K3は第2閾値K2と第4閾値K4との和の半分の37.5cmである。そして、これらの閾値K1〜K4の組合せを、閾値組Sと記載する。
【0023】
上記した構成は、従来の超音波センサ装置と同様である。本実施例の超音波センサ装置100は、上記した構成に加えて、車両1の周囲の環境又は移動状況に関する情報(以下、環境又は移動情報15という。)と、運転者の固有情報(以下、運転者固有情報16という。)とに基づいてメモリ14に記憶されている閾値組Sの設定を自動で変更・設定するための準備状態指示部17、設定変更指示部18及び設定変更部19とを備える。以下、これらについて説明する。
【0024】
準備状態指示部17は、環境又は移動情報15と運転者固有情報16とに基づいて入力された信号によって作動し、設定変更指示部18に閾値組Sの変更を指示するものである。なお、「準備状態」とは、閾値組S中の閾値K1〜K4が変更される直前の状態をいう。
【0025】
設定変更指示部18は、準備状態指示部16からの信号を受けて、メモリ14に記憶されている閾値組S中の閾値K1〜K4を変更する旨の信号を出力する機能を有する。
【0026】
設定変更部19は、設定変更指示部18からの信号を受けて、メモリ14に記憶されている閾値組S中の閾値K1〜K4を実際に変更する機能を有する。そして、変更された閾値K1〜K4を、最終の閾値組Sとしてメモリ14に入力する。
【0027】
閾値K1〜K4の変更の方法は、閾値K1〜K4に予め設定された係数を乗じる方法と、少なくとも1つの閾値K1〜K4を、予め用意された別の閾値K1〜K4に置換する方法とがあり、いずれの方法を採用してもよい。
【0028】
次に、環境又は移動情報15について説明する。本実施例の超音波センサ装置100において、環境又は移動情報15のうちの環境情報とは、例えば夜間や降雨時のように、通常時(晴天時の昼間)よりも運転者の視認性が不良であったり、降雪時や寒冷地において、路面が滑り易くなったりしていること等を示す情報をいう。環境情報のうち、夜間であることは、車両1のスモールランプスイッチやヘッドランプスイッチ(いずれも図示せず)のオン/オフ、現在時刻の取得(例えば18時以降であれば、夜間と推定する。)、車両1に搭載された明るさセンサ(図示せず)によって取得することができる。また、降雨情報は、車両1のワイパスイッチ(図示せず)のオン/オフや、車両1に搭載されているナビゲーション装置(図示せず)によって受信される天気情報や、車両1に搭載されたレインセンサ(図示せず)によって取得することができる。また、降雪情報は、降雨情報と同様に、車両1のワイパスイッチとヒータスイッチ(図示せず)のオン/オフ、車両1に搭載されているナビゲーション装置によって受信される天気情報、車両1に搭載されたスノーセンサ(図示せず)、外気温センサ(図示せず)等によって取得することができる。また、フォグランプ(図示せず)のオン/オフや車両1に搭載されているナビゲーション装置の天気情報によって、霧情報を取得することができる。
【0029】
環境又は移動情報15のうちの移動情報とは、運転者による運転状態の情報をいう。例えば長時間に亘って運転がなされて、運転者の注意力が散漫になっているおそれのある状態(ナビゲーション装置の運転履歴情報によって取得可能)や、超音波センサ装置100が作動する範囲内で、比較的速い速度で後退している(後退速度情報によって取得可能)ため、制動距離が長くなっている状態を示す情報をいう。
【0030】
運転者固有情報16は、例えば運転者の性別、年齢、視力、運転免許取得期間等によって判断されるもので、運転者の技量の度合いを示す。運転者固有情報16は、それぞれの運転者が、自身の性別、年齢、視力、運転免許取得期間等を、例えば車両1に搭載されたタッチディスプレイ(例えば、ナビゲーション装置のディスプレイを使用することができる。)を操作することによってメモリ14に入力され、記憶される。また、予め運転者の技量を、例えばA,B,C,Dの4段階にレベル分けし、運転者が自身のレベルを選択して入力するようにしてもよい。そして、車両1に搭載された顔認識装置や指紋認証装置(いずれも図示せず)により、各運転者と、その運転者に対応する運転者固有情報16とが結び付けられる。運転席に着席した運転者は、顔認識装置や指紋認証装置によって特定され、それに応じてその運転者の運転者固有情報16がメモリ14から呼び出される。
【0031】
ここで、夜間や降雨時のように、通常時(晴天時の昼間)よりも視認性が悪かったり、降雪時のように路面が滑りやすかったりする場合、運転者は慎重を期する運転を行うものと考えられる。このため、閾値K1〜K4が、通常時の閾値K1〜K4よりも大きいものであることが好ましい。また、運転者の技量においても、技量が低い者(例えば、運転免許取得期間の短い者は、技量が低いと推定される。)が運転するときは、閾値K1〜K4が通常時の閾値K1〜K4よりも大きいものであることが好ましい。逆に、技量の高い者が運転するときは、閾値K1〜K4が通常時の閾値K1〜K4よりも小さいものであることが好ましかったり、また、例えば検出された距離Lが第1閾値K1に到達したときであっても、警告音を発しないようにしたりする方が運転者にストレスを与えない場合がある。
【0032】
このため、表1に示されるように、環境又は移動情報15又は運転者固有情報16に対応する各ケースに合わせて、多数種類の閾値K1〜K4の組合せ(閾値組S)をメモリ14に記憶させておく。例えば第1閾値K1が100cm、第2閾値K2が50cm、第3閾値K3が37.5cm、第4閾値K4が25cmのときの閾値組S1を、S1(100,50,37.5,25)のように記載する。そして、このときの閾値組S1を、通常時の閾値組S1(初期設定)とする。夜間や降雨時(降雪時)においては、運転者は慎重を期する運転を行うため閾値K1〜K4を大きくし、閾値組S2(130,65,50,35)を設定する。夜間や降雨時(降雪時)においては、初期設定の閾値組S1(100,50,37.5,25)を、閾値組S2(130,65,50,35)に自動で変更する。また、閾値組S3(120,60,45,30)は、例えば夕方のように通常時より視認性が悪いが、夜間や降雨時(降雪時)ほど視認性が悪くない場合であり、通常時の閾値組S1と比較すると閾値K1〜K4は少し大きく、閾値組S2と比較すると閾値K1〜K4は少し小さい。
【0033】
【表1】

【0034】
閾値組S4〜S6は、運転者固有情報16に基づく閾値K1〜K4の組合せを示す。即ち、閾値組S4(110,55,42.5,30)は、例えば初級者(運転技量の低い者)の場合であり、閾値組S5(90,45,32.5,20)は、例えば上級者(運転技量の高い者)の場合である。さらに、閾値組S6(−,50,37.5,25)のように、運転技量の高い者で、距離Lが大きいときの報知は不要であると考える者のために、閾値K1〜K4の組合せをカスタマイズする(組合せ中の「−」は、閾値K1〜K4を設定しないことを示す。)場合である。
【0035】
このように、本実施例の超音波センサ装置100は、各閾値K1〜K4を設定し、明るさや天候(環境又は移動情報15)及び/又は運転者の技量等(運転者固有情報16)によってその状態における最適な閾値K1〜K4の組合せが選択され、自動で呼び出される。
【0036】
上記は、初期設定の閾値組S1に対して、予め閾値K1〜K4の異なる閾値組S2〜S6を用意し、必要に応じてメモリ14から呼び出す場合である。しかし、閾値組S1を構成する閾値K1〜K4に所定の係数α(この場合、α=1.1)を乗じることによって新たな閾値組S7(110,55,41.2,27.5)を設定してもよい。なお、閾値K1〜K4のすべてに係数αを乗ぜず、少なくとも1つの閾値K1〜K4に係数αを乗じる(例えば、閾値K2にのみ係数α=1.1を乗じる。)ことによって新たな閾値組S8(100,55,37.5,25)を設定してもよい。
【0037】
本実施例の超音波センサ装置100の作用について説明する。運転者が車両1に乗車すると、その車両1に搭載された顔認識装置や指紋認証装置等によって運転者が特定され、メモリ14に記憶されている複数の運転者固有情報16から、その運転者に最適の閾値K1〜K4の組合せ(閾値組S)が選択される。例えば、このときの運転者が初級者であれば閾値組S4が選択され、上級者であれば閾値組S5が選択される。もし運転者が中級者(初級者又は上級者以外の者)であったり、運転者固有情報16がメモリ14に記憶されてなくて、当該運転者を特定することが困難であったりする場合には、初期設定の閾値組S1が選択される。これらの選択は、超音波センサ装置100の設定変更部19が自動で行うため、運転者が何らかの操作をすることは不要である。超音波センサ装置100は、運転者固有情報16に基づいて選択された閾値組Sに基づいて作動する。なお、上級者とされたときであっても、手動で初期設定の閾値組S1が選択されるようにすることは可能である。
【0038】
走行中、運転者が車両1のスモールランプを点灯させると、超音波センサ装置100の設定変更部19は、夕方の閾値組S3を呼び出す。これにより、運転者固有情報16に基づく閾値K1〜K4の組合せが、環境又は移動情報15に基づく閾値K1〜K4の組合せに変更される。この変更は、超音波センサ装置100の設定変更部19が自動で行うため、運転者が何らかの操作をすることは不要である。超音波センサ装置100は、環境又は移動情報15に基づいて選択された閾値組Sに基づいて作動する。換言すれば、本実施例の超音波センサ装置100は、運転者固有情報16よりも環境又は移動情報15を優先して選択する。しかし、上記のように運転者固有情報16に環境又は移動情報15が重ねて選択される場合、それらの各閾値K1〜K4の平均値をとった新規の閾値組Sが設定されるようにしてもよい。
【0039】
上記したように、本実施例の超音波センサ装置100は、運転者を特定したとき、メモリ14に記憶されている運転者固有情報16に基づいてその運転者に最適な閾値組Sを選択したり、設定したりしてそれを呼び出す。また、視認性が不良となった場合には、環境又は移動情報15に基づいてその環境における最適な閾値組Sを選択したり、設定したりしてそれを呼び出す。そして、運転者が上級者(運転技量の高い者)である場合、初級者用の組合せが呼び出されることはなく(運転者が特定されない場合には、初期設定の閾値組S1が呼び出される。)、またその逆も生じないため、運転者が超音波センサ装置100の作動に違和感を感じにくくなる。この結果、運転者にとって最適な閾値組Sによって超音波センサ装置100が作動することとなり、当該運転者が最も望む(或いは、望むと思われる)形態で超音波センサ装置100が動作されるという「もてなし」の効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両における障害物等検出装置、特に超音波センサを使用した障害物等検出装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 超音波センサ装置(障害物等検出装置)
3,4,6 超音波センサ(距離検出手段)
7 壁面(障害物等)
12 判定部(接近度判断手段)
13 ブザー(報知手段)
14 メモリ(閾値記憶手段)
15 環境又は移動情報
16 運転者固有情報
19 設定変更部(閾値自動変更又は設定手段)
K,K1〜K4 閾値
L 距離
S,S1〜S8 閾値組
α 係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の移動上の障害物等又は境界(以下、障害物等という。)を検出する車両用障害物等検出装置であって、
前記車両から前記障害物等までの距離を検出する距離検出手段と、
前記障害物等までの距離に関して運転者への報知のために1以上の距離の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
前記車両の周囲の環境又は移動状況に関する情報を取得する環境又は移動情報取得手段と、
前記車両の運転者の固有情報を取得する運転者固有情報取得手段と、
前記環境又は移動情報及び/又は前記運転者固有情報に基づいて、前記閾値記憶手段に記憶されている閾値を自動で変更する又は自動で設定した閾値を前記閾値記憶手段に記憶する閾値自動変更又は設定手段と、
前記距離検出手段によって検出された距離が、前記閾値記憶手段に記憶されている閾値に到達したか否かを判断する接近度判断手段と、
前記接近度判断手段が、前記検出された距離が前記閾値に到達したと判断したときにそのことを報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする車両用障害物等検出装置。
【請求項2】
前記距離の閾値が複数で、それらの閾値が組となって構成され、
前記閾値自動変更又は設定手段は、前記環境又は移動情報及び/又は前記運転者固有情報に基づいて、前記障害物等に対する車両の接近度に対応する閾値の全部又は一部のみを変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項3】
前記閾値自動変更又は設定手段は、前記距離の閾値に所定の係数を乗じる演算を行うことにより、前記閾値を自動で変更・設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項4】
前記閾値自動変更又は設定手段は、予め設定された複数の距離の閾値から所定のものを選択することにより、前記閾値を自動で変更・設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項5】
前記閾値の組で構成される複数の閾値組が予め設定され、
前記閾値自動変更又は設定手段は、前記複数の閾値組のいずれかを選択することにより、前記閾値を自動で変更・設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項6】
前記車両には、当該車両の周囲の明るさを検出するための明るさ検出手段と、当該車両の周囲の降雨状況を検出する降雨状況検出手段とが搭載され、
前記車両の周囲の環境に関する情報は、前記明るさ検出手段及び/又は前記降雨状況検出手段とによって取得されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項7】
前記車両の運転者固有情報は、運転者の性別、年齢、視力及び運転免許取得年数を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車両用障害物等検出装置。
【請求項8】
前記距離検出手段は、車両の外方に向けて発射波を発信し、障害物等に当たって反射した反射波を受信することによって前記車両から前記障害物等までの距離を検出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車両用障害物等検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−64080(P2012−64080A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208894(P2010−208894)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】