説明

車両配電制御装置

【課題】電気負荷への安定的な給電を確保する優先順位をユーザによりカスタマイズ可能とする。
【解決手段】車載された複数の電気負荷24(20〜23)に対する電力供給の優先度を記憶する優先度保存部11と、優先度保存部11に記憶された優先度に基づいてバッテリー17から各電気負荷20〜23への給電を制御する制御手段12と、入力操作手段18からのユーザ指令を受信して優先度保存部11に記憶された各電気負荷20〜23の優先度の設定を変更する入力手段13と、優先度保存部11に記憶された各電気負荷20〜23の優先度に関する表示データを表示手段19に送信する出力手段14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両配電制御装置に関し、詳しくは、車両において電源から各電気負荷に給電する電力バランスを制御するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両においてバッテリーから各電気負荷へ給電するトータル電力を平準化し、バッテリーへの負担を軽減する制御が行われている。
例えば、ヘッドランプを点灯させる時には、突入電流が発生して一時的に過大な負荷がかかる。そこで、バッテリーへの突発的な負担を軽減させるために、他の機器の制御を一時的に停止させ、あるいは供給電力を一時的に低下させ、ヘッドランプの駆動電流が定常電流となってから、通常給電を再開するという制御を行っている。
ところが、車両には様々な種類の機器があり、安全上の問題から給電を停止させてはいけない電気負荷が存在する一方で、アミューズメント的な要素が強く給電を停止させても大きな問題がない情報系の電気負荷も存在し、給電確保の優劣が混在している。
【0003】
特開2004−194495号公報では、各負荷毎について安定的な給電確保を要する優先度を設定し、優先度の低いものから順に電力供給の削減または遮断を行うことにより、重要負荷に対する給電を優先確保するようにしている。特に、各負荷の優先度については、負荷の動作状態や車両状態の時間的な変動等に応じて自動的に変更することで、現在の状況に最も合致した最適な電力分配を実現している。
しかしながら、前記公報の技術によれば、車載された制御装置が自動的に電気負荷の優先度の変更を決定してしまい、優先度決定のロジックを変更するすべがないため、ユーザが自ら優先度を変更してカスタマイズを行いたくても不可能であるという問題がある。車両の各種設定を自分専用にカスタマイズ可能とすれば、車両のユニーク性が高まりユーザの満足度向上のためにも有効である。
【特許文献1】特開2004−194495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、重要な負荷への安定的な給電を確保する優先順位をユーザによりカスタマイズ可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、車載された複数の電気負荷に対する電力供給の優先度を記憶する優先度保存部と、
前記優先度保存部に記憶された優先度に基づいて電源から前記各電気負荷への給電を制御する制御手段と、
ユーザ指令を受信して前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度の設定を変更する入力手段と、
前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度に関する表示データを表示手段に送信する出力手段とを備えていることを特徴とする車両配電制御装置を提供している。
【0006】
前記構成とすると、ユーザからの入力操作により優先度保存部に記憶された内容を変更することができ、夫々の電気負荷に対する給電確保の優先順位を修正可能であるので、カスタマイズ性が高まり、顧客満足度を向上することができる。
なお、電気負荷の例としては、ライト制御装置、オーディオ音量制御装置、ディスプレイバックライト制御装置、エンジン制御装置などが挙げられる。
【0007】
前記各電気負荷のうち特定の電気負荷の優先度の設定変更を特定の者のみに許可する認証手段を設けていると好ましい。
【0008】
前記構成とすると、例えば、エンジン制御装置やヘッドライト制御装置といった安全性に関わる重要な負荷の場合には、ユーザが安易に設定変更できないようにしながらも、ディーラー等の特定の者のみに認証を許可して設定変更することができる。認証手段の一例としてはパスワード方式等が考えられ、その場合にはディーラー等の特別に許可された者のみにパスワードを配布するとよい。
【0009】
前記入力手段には、前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度の設定をユーザが変更操作する入力操作手段を接続していると共に、
前記出力手段には、優先度保存部に記憶された各電気負荷の優先度に関する情報を表示する表示手段を接続していると好ましい。
【0010】
前記構成とすると、ユーザは表示手段に表示された各電気負荷に対する給電確保の優先順位を見ながら、優先度保存部に記憶された各負荷の優先度を変更することができ、現在の各電気負荷の優先度を随時確認することが可能となる。
なお、この表示手段は、車両配電制御装置と一体的に設けてもよいし、別ユニットで設けてもよい。また、別ユニットで設ける場合には、センターパネルに既に設置されている表示手段と共用化するとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、ユーザからの入力操作により優先度保存部に記憶された内容を任意に変更して、夫々の電気負荷に対する給電確保の優先順位を変更可能であるので、カスタマイズ性を向上することができる。また、特定の電気負荷の優先度については特定の者のみに設定変更を許可する認証手段を設ければ、安全性等の面から安易に優先度を下げるべきでない電気負荷への給電を安定的に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は車両内の電力供給系統を示し、バッテリー(電源)17と、各電気負荷(ライト制御装置20、オーディオ音量制御装置21、ディスプレイバックライト制御装置22、エンジン制御装置23)との間に車両配電制御装置10を介設しており、車両配電制御装置10には入力操作手段18および表示手段19を接続している。
【0013】
車両配電制御装置10は、優先度保存部11と、制御手段12と、入力手段13と、出力手段14と、電力分配部15と、認証手段16とを備えている。
優先度保存部11は、車載された複数の電気負荷24、即ち、ライト制御装置20、オーディオ音量制御装置21、ディスプレイバックライト制御装置22およびエンジン制御装置23の夫々に対する電力供給の優先度を記憶保存していると共に、各電気負荷24について安全上等の問題から一般ユーザが変更不可能な優先度についても記憶している。
例えば、ライト制御装置20およびエンジン制御装置23の優先度の許容範囲は1番目〜2番目とし、オーディオ音量制御装置21およびディスプレイバックライト制御装置22の優先度の許容範囲は1番目〜4番目としている。
【0014】
配電制御手段12は、優先度保存部12に記憶された優先度に基づいてバッテリー17から各電気負荷24への給電を制御する。
入力手段13は、入力操作手段18からのユーザ指令を受信して優先度保存部12の設定内容を更新する。
出力手段14は、優先度保存部12に記憶された各電気負荷24の優先度に関するディスプレイ情報を外部の表示手段19に送信する。
電力分配部15は、優先度保存部11に保存された優先順位に基づいて制御手段12からの指令により各電気負荷24に所定の電力を分配供給する。
認証手段16は、優先度保存部11の内容を変更する者が許可された者であるか否かをパスワード認証で確認する。
【0015】
入力操作手段18は、入力手段13に接続され、優先度保存部12に記憶された各電気負荷24の優先度の設定をユーザが変更操作するユーザインターフェースで、認証作業の際のパスワード入力にも用いられる。
表示手段19は、出力手段14に接続され、優先度保存部12に記憶された各電気負荷24の優先度に関する情報をユーザに表示するディスプレイ装置である。
なお、本実施形態では、表示手段19を公知のタッチパネル式として、前記の入力操作手段18を一体化させたものとする。また、表示手段19はCAN等の通信線で車両配電制御装置10に接続して別ユニットで設けているが、車両配電制御装置10と一体的に設けてもよい。別ユニットで設ける場合には、センターパネルに既に設置されている表示手段と共用化するとよい。
【0016】
ライト制御装置20は、車両のヘッドライトを点灯させる電力供給を制御している。
オーディオ音量制御装置21は、車両のセンタークラスタに設置されたオーディオ装置の音量の増減等を制御している。
ディスプレイバックライト制御装置22は、センタークラスタあるいはインストルメントパネルに設置された液晶ディスプレイ装置等のバックライトの点灯を制御している。
エンジン制御装置23は、エンジンの点火や燃料噴射等の各種制御を行っている。
【0017】
図2は表示手段19の画面30を示し、ライト制御装置20、オーディオ音量制御装置21、ディスプレイバックライト制御装置22およびエンジン制御装置23に対応する電気負荷アイコン35を給電確保の優先度の高いものを上から順に並べて表示している。(現段階では上から、ライト制御アイコン31、オーディオ音量制御アイコン32、ディスプレイバックライト制御アイコン33、エンジン制御アイコン34の順で表示されている)また、画面30の右側には、選択された電気負荷アイコン35について優先度を上げる「大」アイコン36と、優先度を下げる「小」アイコン37とを表示している。
即ち、ライト制御アイコン31、オーディオ音量制御アイコン32、ディスプレイバックライト制御アイコン33、エンジン制御アイコン34、「大」アイコン36、「小」アイコン37の夫々をユーザがタッチ入力することで、入力操作手段18の役目を果たしている。
【0018】
次に、図3のフローチャートに基づいて車両配電制御装置10の動作を説明する。
ユーザが表示手段19の画面30に表示された各電気負荷35の優先順位を変更する場合、例えば、ディスプレイバックライト制御装置22の優先順位をオーディオ音量制御装置21よりも上に変更したい場合について考える。
まず、ユーザはディスプレイバックライト制御アイコン34を選択する(S1)。次いで、「大」アイコン36を選択すると(S2)、制御手段12は優先度保存部11を参照して変更する優先順位が安全な範囲のものであるかを確認する(S3)。
【0019】
具体的には、ディスプレイバックライト制御装置22の優先度が上から3番目に繰り上がると、オーディオ音量制御装置21の優先度が4番目に繰り下がることになるが、オーディオ音量制御装置21の優先度を4番目とすることが許可されているかを確認する。オーディオ音量制御装置21の優先度の許容範囲は1番目〜4番目でありOKであるので、画面30においてオーディオ音量制御アイコン33とディスプレイバックライト制御アイコン34の表示の順番を入れ替える(S7)。次いで、オーディオ音量制御装置21の優先度を4番目に繰り下げると共にディスプレイバックライト制御装置22の優先度を3番目に繰り上げるように優先度保存部11の内容を更新する(S8)。
【0020】
次に、オーディオ音量制御装置21の優先順位をエンジン制御装置23よりも上に変更したい場合について考える。
まず、ユーザはオーディオ音量制御アイコン33を選択する(S1)。次いで、「大」アイコン36を選択すると(S2)、制御手段12は優先度保存部11を参照して変更する優先順位が安全な範囲のものであるかを確認する(S3)。
具体的には、オーディオ音量制御装置21の優先度が上から2番目に繰り上がると、エンジン制御装置23の優先度が3番目に繰り下がることになるが、エンジン制御装置23の優先度を3番目とすることが許可されているかを確認する。エンジン制御装置23の優先度の許容範囲は1番目〜2番目であり変更不可であるので、表示手段19に警告画面(図示せず)を出力する(S4)。
【0021】
この警告画面にはパスワード入力エリアが設けられているが、ユーザはパスワードを知らないので、適当にパスワードを入力したとしても(S5)、認証手段16での判定がNGとなり処理が終了する。
一方、この操作を行っている者がディーラー等のような専門家であってパスワードを知らされている場合には、警告画面において正しいパスワードが入力されることで(S5)、認証手段16で変更許可の判定がされる(S6)。
次いで、画面30においてエンジン制御アイコン32とオーディオ音量制御アイコン33の表示の順番を入れ替える(S7)。次いで、エンジン制御装置23の優先度を3番目に繰り下げると共にオーディオ音量制御装置21の優先度を2番目に繰り上げるように優先度保存部11の内容を更新する(S8)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の車両配電制御装置を示すブロック図である。
【図2】表示手段の画面を示す図面である。
【図3】優先度の変更処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
10 車両配電制御装置
11 優先度保存部
12 制御手段
13 入力手段
14 出力手段
15 電力分配部
16 認証手段
17 バッテリー(電源)
18 入力操作手段
19 表示手段
24 電気負荷
30 画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載された複数の電気負荷に対する電力供給の優先度を記憶する優先度保存部と、
前記優先度保存部に記憶された優先度に基づいて電源から前記各電気負荷への給電を制御する制御手段と、
入力操作手段からのユーザ指令を受信して前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度の設定を変更する入力手段と、
前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度に関する表示データを表示手段に送信する出力手段とを備えていることを特徴とする車両配電制御装置。
【請求項2】
前記各電気負荷のうち特定の電気負荷の優先度の設定変更を特定の者のみに許可する認証手段を設けている請求項1に記載の車両配電制御装置。
【請求項3】
前記入力手段には、前記優先度保存部に記憶された前記各電気負荷の優先度の設定をユーザが変更操作する入力操作手段を接続していると共に、
前記出力手段には、優先度保存部に記憶された各電気負荷の優先度に関する情報を表示する表示手段を接続している請求項1または請求項2に記載の車両配電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182198(P2006−182198A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377976(P2004−377976)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)